特許第6781811号(P6781811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781811
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】抗菌革、その製造方法、及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C14B 15/12 20060101AFI20201026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201026BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20201026BHJP
   A41D 31/30 20190101ALN20201026BHJP
【FI】
   C14B15/12
   B32B27/00 101
   A43B23/02 101A
   !A41D31/30
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-156025(P2019-156025)
(22)【出願日】2019年8月28日
(65)【公開番号】特開2020-169309(P2020-169309A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】201910272448.1
(32)【優先日】2019年4月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519313426
【氏名又は名称】厦門信得利投資発展有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】陳偲勇
(72)【発明者】
【氏名】許明輝
(72)【発明者】
【氏名】楊利国
(72)【発明者】
【氏名】劉子巧
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第108894005(CN,A)
【文献】 特開2015−067790(JP,A)
【文献】 特開2014−074247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C14B1/00−99/00
A41D31/30
A43B23/02
B32B1/00−43/00
B68F1/00−3/04
C14C1/00−99/00
D06N1/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順番に接合された表面層、中間基材層、底層、及び基布層を含み、
前記表面層の祖成分は、
80〜100重量部の有機シリコーンと、
8〜10重量部の硬化剤と、
3〜5重量部のカルボキシメチルキチン銀と、
6〜12重量部のジメチコンと、
所定重量部の変性されたナノシリカと、を含み、
前記所定重量部と前記表面層の総重量部との比が1.9%以下であることを特徴とする抗菌革。
【請求項2】
10〜30重量部の変性された層状複水酸化物をさらに含み、
前記変性された層状複水酸化物は、ステアリン酸ナトリウムと層状複水酸化物とが(3〜5):100の重量部比で変性し形成され、
前記変性されたナノシリカと前記変性された層状複水酸化物との重量部比が、8%以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌革。
【請求項3】
前記変性されたナノシリカは、プロピルトリメチルシランとナノシリカとが(12−18):100の重量部比で変性し形成されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌革。
【請求項4】
前記ジメチコンは、高粘度ジメチコン及び低粘度ジメチコンで構成されており、前記高粘度ジメチコンの粘度が100〜300mPa・s/25℃であり、前記低粘度ジメチコンの粘度が50mPa・s/25℃であり、前記低粘度ジメチコンの重量部が2〜3であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌革。
【請求項5】
80〜100重量部の有機シリコーンと、8〜10重量部の硬化剤と、3〜5重量部のカルボキシメチルキチン銀と、10〜30重量部の変性された層状複水酸化物とを混合し、一次スラリーを形成し、
4〜9重量部の粘度が100〜300mPa・s/25℃である高粘度ジメチコンで、前記一次スラリーの粘度を100000〜120000mPa・s/25℃まで調整し、二次スラリーを形成し、
所定量の変性されたナノシリカを前記二次スラリーと混合し、充分に攪拌することで三次スラリーを形成し、
前記変性されたナノシリカと前記変性された層状複水酸化物との重量部比が、8%以上であり、前記変性されたナノシリカと総重量部との比が1.9%以下であり、
前記三次スラリーを剥離紙/膜の表面にコーティングし、コーティング厚さが0.1mmであり、多段式温度差を有するオーブンに入れ、前記多段式温度差を有するオーブンは、110℃の低温領域、120℃の中温領域、及び130℃の高温領域を有し、コーティング膜を、前記低温領域で1分間焼き、前記中温領域で2分間焼き、
前記中温領域から出したコーティング膜に、2〜3重量部の粘度が50mPa・s/25℃より小さい低粘度ジメチコンをコーティングし、前記高温領域で1分間焼くことで、表面層を得る、表面層を製造するステップS1と、
順番に、中間基材層、底層、及び基布層を製造するステップS2と、を含む抗菌革の製造方法。
【請求項6】
前記変性された層状複水酸化物は、
ステアリン酸ナトリウムと層状複水酸化物とを(3〜5):100の重量部比で混合し、反応ケトルに入れ、75〜85℃の温度領域で一時間撹拌し、その間、10〜15分間隔で超音波分散を一回3〜5分で行う方法で作られることを特徴とする請求項5に記載の抗菌革の製造方法。
【請求項7】
前記変性されたナノシリカは、所定量のプロピルトリメチルシランを加水分解液に入れ、70〜75℃で30±5分間加水分解し、加水分解反応物を得るステップと、
所定量のナノシリカを所定量の無水エタノールに入れ超音波分散を10〜15分間行い、分散液を得るステップと、
前記加水分解反応物と前記分散液とを混合し、反応ケトルで80〜85℃まで加熱し、恒温で4時間撹拌してから室温まで冷却し、冷却液を得るステップと、
前記冷却液を遠心分離し、湿度が一定するまで乾燥し、変性されたナノシリカを得るステップと、を含む方法で作られ、
前記加水分解液は、体積割合が75%より大きいエタノールと、濃度が0.1mol/Lの塩酸を1:1の体積比で作られ、
各添加物の比率は下記の表に示す通りであることを特徴とする請求項5に記載の抗菌革の製造方法。
【請求項8】
ケース、バッグ、靴、服、運動器具、及び医療機器に応用されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革材料の製造領域に関し、詳しくは、抗菌革の製造方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、国内外の人工革生産においての製造方法は、主に、乾式ポリウレタン革製造方法、湿式ポリウレタン革製造方法、及び、水性ポリウレタン製造方法を含む。これらの製造方法は、いずれも、生産において、溶剤タイプのポリウレタン樹脂を使用する必要がある。溶剤タイプのポリウレタン樹脂には、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、ブタノンなどの有毒有害の化学溶剤が含まれるため、揮発や及び残留することで、環境及び人々に大きな害を与える。
【0003】
出願人は、多大な研究開発を行い、有機シリコーン及び環境に優しい賦形剤を用いて製造する環境に優しい合成革を開発した。しかしながら、使用シーンに応じてこの環境に優しい合成革を改良していないため、その応用が制限されている。
例えば、革の抗菌性の場合、ケース、バック、靴、服、運動器具、及び医療機器などの接触環境が複雑であり、特に、運動器具、及び医療機器の場合、異なる人と接触することや、接触する頻度が高く、抗菌性がないと、黴菌が繁殖し、カビが発生し、臭くなり、病気を広げる媒質となる。
また、革の難燃性、耐磨耗性も考量すべき要因の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、有機シリコーンで作られた環境に優しい合成革の特定的な課題が少ない。本発明は、ケース、バック、靴、服、及び、機材に応用される抗菌革の解決案を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による抗菌革は、順番に接合された表面層、中間基材層、底層、及び基布層を含む。表面層の祖成分は、80〜100重量部の有機シリコーンと、8〜10重量部の硬化剤と、3〜5重量部のカルボキシメチルキチン銀と、6〜12重量部のジメチコンと、所定重量部の変性されたナノシリカと、を含む。所定重量部と表面層の総重量部との比が1.9%以下である。
【0006】
さらに、10〜30重量部の変性された層状複水酸化物をさらに含む。変性された層状複水酸化物は、ステアリン酸ナトリウムと層状複水酸化物とが(3〜5):100の重量部比で変性し形成される。変性されたナノシリカと変性された層状複水酸化物との重量部比が、8%以上である。
【0007】
さらに、変性されたナノシリカは、プロピルトリメチルシランとナノシリカとが(12〜18):100の重量部比で変性し形成される。
【0008】
さらに、ジメチコンは、高粘度ジメチコン及び低粘度ジメチコンで構成されており、高粘度ジメチコンの粘度が100〜300mPa・s/25℃であり、低粘度ジメチコンの粘度が50mPa・s/25℃であり、低粘度ジメチコンの重量部が2〜3である。
【0009】
また、本発明による抗菌革の製造方法は、表面層を製造するステップS1と、順番に、中間基材層、底層、及び基布層を製造するステップS2と、を含む。ステップS1は、80〜100重量部の有機シリコーンと、8〜10重量部の硬化剤と、3〜5重量部のカルボキシメチルキチン銀と、10〜30重量部の変性された層状複水酸化物とを混合し、一次スラリーを形成する。そして、4〜9重量部の粘度が100〜300mPa・s/25℃である高粘度ジメチコンで、一次スラリーの粘度を100000〜120000mPa・s/25℃まで調整し、二次スラリーを形成する。そして、所定量の変性されたナノシリカを二次スラリーと混合し、充分に攪拌することで三次スラリーを形成する。そして、変性されたナノシリカと変性された層状複水酸化物との重量部比が、8%以上であり、変性されたナノシリカと総重量部との比が1.9%以下である。そして、三次スラリーを剥離紙/膜の表面にコーティングし、コーティング厚さが0.1mmであり、多段式温度差を有するオーブンに入れ、多段式温度差を有するオーブンは、110℃の低温領域、120℃の中温領域、及び130℃の高温領域を有し、コーティング膜を、低温領域で1分間焼き、中温領域で2分間焼く。そして、中温領域から出したコーティング膜に、2〜3重量部の粘度が50mPa・s/25℃より小さい低粘度ジメチコンをコーティングし、高温領域で1分間焼くことで、表面層を得る。
さらに、変性された層状複水酸化物は、ステアリン酸ナトリウムと層状複水酸化物とを(3〜5):100の重量部比で混合し、反応ケトルに入れ、75〜85℃の温度領域で一時間撹拌し、その間、10〜15分間隔で超音波分散を一回3〜5分で行う。
【0010】
さらに、変性されたナノシリカは、所定量のプロピルトリメチルシランを加水分解液に入れ、70〜75℃で30±5分間加水分解し、加水分解反応物を得るステップと、所定量のナノシリカを所定量の無水エタノールに入れ超音波分散を10〜15分間行い、分散液を得るステップと、加水分解反応物と分散液とを混合し、反応ケトルで80〜85℃まで加熱し、恒温で4時間撹拌してから室温まで冷却し、冷却液を得るステップと、冷却液を遠心分離し、湿度が一定するまで乾燥し、変性されたナノシリカを得るステップと、を含む方法で作られる。加水分解液は、体積割合が75%より大きいエタノールと、濃度が0.1mol/Lの塩酸を1:1の体積比で作られる。各添加物の比率は下記の表に示す通りである。
【0011】


【0012】
本発明による抗菌革は、ケース、バッグ、靴、服、運動器具、及び医療機器に応用される。
【0013】
上述構成により、本発明は、背景技術に比べ、以下のメリットを有する。
1.本発明ではカルボキシメチルキチン銀を抗菌剤として使用し、キトサンが安全無毒であり、天然で広範囲抗菌可能であり、生物受容生が良いメリット、及び、ナノ銀の殺菌効果が長いメリットを融合した。二つの成分で殺菌することで、単一抗菌剤より効果が優れる。同時に、キトサンがナノ銀をコーティングすることで、徐放の効果を有する。同時に、変性されたナノシリカは革の汚れにくい性能、破れにくい性能、及び耐磨耗生を改善し、その活性を利用してジメチコンと反応し、網状の微孔性フィルム構造を形成する。膠質の力学性能を向上させるとともに、カルボキシメチルキチン銀の固定作用を増強し、水洗いに耐える性能を高める。
2.本発明では、層状複(複金属)(ここでの複金属は金属イオンをいい、重金属ではない)水酸化物を難燃剤としており、効果の高い難燃性能を実現する。同時に、層状複水酸化物の分解温度は低温端及び高温端を含み、難燃温度の範囲を広くし、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム難燃剤の長所を兼具した。また、ナノシリカの比表面積が大きく、密度が小さく、燃焼するときに、熔融面に集まる。よって、層状複水酸化物とともに、密な炭層を形成し、熔融面と外部との熱量及び物質の伝達を遮り、協同で難燃剤の役割を果たし、層状複水酸化物の使用量を減少する。
3.本発明では、ナノシリカ及び層状複水酸化物に対して改良を行い、ナノシリカと層状複水酸化物とが集まる現象を避け、より良い分散性を与えた。同時に、それと有機シリコーン基材との適合性を良くした。
4.本発明では、高粘度ジメチコンと低粘度ジメチコンとを配合して使用し、表面層の繊細な質感を高める。また、低粘度ジメチコンの高い浸透性を利用し、微孔薄膜の中の微孔に対して充填を行い、層状複水酸化物及びナノシリカが基材の中にしっかりと固定されるようにする。
5.本発明は、製造過程にて有毒物質、有害物質を使用しないため、安全であり、環境に優しい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、技術手段、及び、効果を明確に説明するために、以下、実施例で、本発明をさらに詳しく説明する。ここで説明する実施例は、本発明を解釈するものであり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0015】
(実施例1)
抗菌革の表面層を製造する。
【0016】
80〜100重量部の有機シリコーンと、8〜10重量部の硬化剤と、10〜30重量部の変性された層状複水酸化物と、3〜5重量部のカルボキシメチルキチン銀とを混合し、一次スラリーを形成する。
【0017】
4〜9重量部の粘度が100〜300mPa・s/25℃である高粘度ジメチコンで、一次スラリーの粘度を100000〜120000mPa・s/25℃まで調整し、二次スラリーを形成する。
【0018】
所定量の変性されたナノシリカを粘度が調整された二次スラリーと混合し、充分に攪拌することで三次スラリーを形成する。
【0019】
変性されたナノシリカと変性された層状複水酸化物との重量部比が、8%以上であり、変性されたナノシリカと総重量部との比が1.9%以下である。
【0020】
三次スラリーを剥離紙/膜の表面にコーティングする。コーティング厚さは0.1mmである。その後、多段式温度差を有するオーブンに入る。多段式温度差を有するオーブンは、110℃の低温領域、120℃の中温領域、及び130℃の高温領域を有する。コーティング膜を、低温領域で1分間焼き、その後、中温領域で2分間焼く。
【0021】
中温領域から出したコーティング膜に、2〜3重量部の粘度が50mPa・s/25℃より小さい低粘度ジメチコンをコーティングし、高温領域で1分間焼くことで、表面層を得る。
【0022】
詳細例を以下の表の通り示す。
【0023】
表の中で、Aは有機シリコーンを表し、Bは硬化剤を表し、Cは変性された層状複水酸化物を表し、Dは高粘度ジメチコンを表し、Eは低粘度ジメチコンを表し、Fは変性されたナノシリカを表し、Gはカルボキシメチルキチン銀を表す。表の中で、ある組成成分の数値が0であり、単一のステップでこの組成成分を添加するためのであれば、このステップをなくす。
【0024】
本実施例で使われる有機シリコーンは、100%のポリシロキサンであり、分子式はaSiO・nHOである。硬化剤は、100%のポリシロキサンであり、分子式はbSiO・nHOである。a及びbは重合度でありいずれも2より大きく、a>bである。nは1〜3である。述べられた有機シリコーンは「厦門しん創利シリコーン有限会社」が生産した付加型シリコーンであり、述べられた硬化剤は「厦門しん創利シリコーン有限会社」が生産した付加型シリコーン硬化剤である。変性された組成成分については、後で詳しく説明する。
【0025】
抗菌実験:
サンプル1、3、5、7、9、14及び15を参照し、抗菌テスト片を作る。抗菌テスト片に対し毎回25分の通常洗浄を行う。大腸菌及び黄色ブドウ球菌をテスト黴菌として、黴菌抑制テストを行う(20ml菌液、濃度5*106cfu.ml−1、寒天培地を添加、温度37度、24時間保温)。結果は以下のとおりである。
【0026】
上述のテスト片からわかるように、変性されたナノシリカの増加に従って、テスト片の抗菌素子の耐洗浄性能が高まる。これは、適量の変性されたシリカが、ジメチコンと網状に似たような構造を構成し、カルボキシメチルキチン銀を獲得するのに有利であるためである。テスト片9は、比較的に低い抗菌値を表す。これは、多過ぎる変性されたナノシリカが集まって、カルボキシメチルキチン銀の均一な分布を影響した可能性がある。
【0027】
テスト片7と14との比較からわかるように、低粘度ジメチコンが添加されていないと、本体に発生する微孔構造及び加熱過程にて形成された微小孔は、抗菌素子を収容する同時に、それを容易に流失し、耐洗浄性能が下がる。
【0028】
難燃性実験:上述のサンプルは表面層のみを作るためである。実際の応用において、中間基材層、底層、及び基布層を含む。よって、表面層は、厚みが比較的に薄い。しかし、難燃材料基準であるANSI/UL−94−1985基準のB級難燃性等級実験によると、サンプルの厚みは、最低3mm必要であった。よって、サンプル1〜12の配合比率を参照し、長さが127、幅が12.7、最小厚みが3mmである難燃性テスト片1〜12(製造過程にて、乾燥時間は線形的に増加する)を作り、表面層の難燃性をテストする。
【0029】
その結果は以下のとおりである。
【0030】
難燃性テスト片1と難燃性テスト片2との比較結果からわかるように、変性されたナノシリカが添加された後、表面層の難燃性が著しく高まる。
【0031】
難燃性テスト片1〜4の比較結果からわかるように、定量で変性された複水酸化物の場合、変性されたナノシリカの含有量の増加にしたがって、テスト片の難燃性効果が著しくなる。これは、変性されたナノシリカと変性された複水酸化物とが著しい協同的な難燃性作用を有することを意味する。
【0032】
難燃性テスト片4〜9の比較結果からわかるように、変性されたナノシリカと変性された複水酸化物との比が8%に達したとき、難燃性効果の向上は、限度に近づく。微量な向上はナノシリカ本来の難燃性効果と関連する。
【0033】
難燃性テスト片9〜13の比較結果からわかるように、変性された複水酸化物の組成成分が増加するとき、難燃性効果も向上する。
【0034】
力学性能試験:難燃性テスト片で力学性能テストを行い、結果は以下のとおりである。
【0035】
難燃性テスト片1〜7の測定結果からわかるように、変性されたナノシリカの増加に従って、表面層の力学性能が改善されている。これは、変性されたナノシリカが高い比表面積及び高い活性を有し、有機シリコーンと結合して網状構造を形成し、力学性能を改善するためである。
【0036】
難燃性テスト片7〜9の測定結果からわかるように、変性されたナノシリカの添加値は、総重量部の1.9%であるのが好ましい。変性されたナノシリカのさらなる増加により、表面層の力学性能反応が低くなる。これは、多過ぎる変性されたナノシリカが所定部位で集まる現象が発生し、応力が集中し、表面層の力学性能を低下させたことが原因となる。よって、難燃性素子と材料の引張り強さとは、相対的に矛盾する関係であることがわかる。本発明は、両者に対して調整を行ない、例えば、サンプル7、サンプル11〜13が、引張り強さ及び難燃性において、通常のシリコーン革より優れるようにした。しかし、実際の応用時においては、ニーズに基づき、重点を置くべきである。
【0037】
洗浄実験:
難燃性テスト片7及び14の配合比率を参照し、洗浄テスト片を製造する。異なることは、変性されていない層状複水酸化物とナノシリカとを用いて、比較用テスト片1及びテスト片2を製造する。難燃性テスト片7、14、及び15を選んで洗浄試験を行い、洗浄は、正常の洗浄条件を模擬し毎回25分濯ぐ。その後、乾燥したテスト片を用い、難燃性実験を繰り返す。結果は以下のとおりである(各値は燃焼速度を代表する。単位はmm/分間である。)。
【0038】
比較用テスト片1及び比較用テスト片2と難燃性テスト片7との比較から、変性するか否かは、難燃素子の革の中での固定座用への影響が非常に大きい。比較用テスト片1は、多く洗浄された後、その難燃性能が著しく低下する。その原因は、変性されていない難燃性素子と有機シリコーンとの混和性が悪いからである。
【0039】
比較用テスト片1と比較用テスト片2との比較、及び、難燃性テスト片7と難燃性テスト片14との比較から、低粘度ジメチコンを添加したテスト片が難燃性素子に対する吸着効果が比較的に良いことがわかる。これは、それが高い浸透性を有し、薄膜の微孔構造の中に浸潤し、微孔に対して充填を行い、同時に、低温区域及び中温区域で生成可能な気泡の不良に対して補い、難燃性素子を固定すると同時に、表面層の素地がもっと繊細となるようにする。
【0040】
難燃性テスト片7と難燃性テスト片14との比較から、難燃性テスト片14には比較的に多い低粘度ジメチコンが添加されているが、難燃性素子の固定作用の増加に対して著しくないことがわかる。
【0041】
実施例2
本実施例では、本発明で使用する変性された層状複水酸化物について説明する。
変性された層状複水酸化物:ステアリン酸ナトリウムと層状複水酸化物(中性PH値)とを(3〜5):100の重量部比で混合し、反応ケトルに入れ、75〜85℃の温度領域で一時間撹拌し、その間、10〜15分間隔で超音波分散を一回3〜5分で行う。
【0042】
配合比率が活性化指数に対する影響
【0043】
出願人の研究では、初めの時、ステアリン酸ナトリウムの増加により、活性化指数が急速に上昇し、ステアリン酸ナトリウムが層状複水酸化物の含有量の約5%まで増加すると活性化指数が安定に近づき(1に近い)、継続的に増加すると、活性化指数が安定に近づくことを発見した。また、限度の量を超えたステアリン酸ナトリウムは材料の力学性能に影響を与える。
【0044】
反応温度が活性化指数に対する影響
【0045】
初めの時、温度の増加により、ステアリン酸ナトリウムはまず層状複水酸化物の活性が最も大きい部分に吸着し、活性指数が急激に上昇し、その後、50〜70℃の温度領域で平穏に増加する領域に入り、75〜85℃の温度領域で波頭に達し、その後、温度の上昇に従い下降する勢いを表すことがわかる。
【0046】
実施例3
変性されたナノシリカの製造:所定量のプロピルトリメチルシラン(KH560)を加水分解液に入れ、70〜75℃で30±5分間加水分解し、加水分解反応物を得る。所定量のナノシリカを所定量の無水エタノールに入れ、超音波分散を10〜15分間行い、分散液を得る。加水分解反応物と分散液とを混合し、反応ケトルで80〜85℃まで加熱し、恒温で4時間撹拌してから室温まで冷却し、冷却液を得る。冷却液を遠心分離し、湿度が一定するまで乾燥し、変性されたナノシリカを得る。
【0047】
加水分解液は、体積割合が75%より大きいエタノールと、濃度が0.1mol/Lの塩酸を1:1の体積比で作られる。
【0048】
各添加物の比率は下記の表に示す通りである。
配合比率がグラフト率に対する影響

【0049】
プロピルトリメチルシランの使用量が増加することにより、グラフト率が著しく上昇する。しかし、ミニシリカとの比が15%となるとき、最高となる。プロピルトリメチルシランの使用量が多すぎ、余分のプロピルトリメチルシランは、自ら集まり易くなり、顆粒の間にコアセルバートが生成する。また、シリコーンアニオンが発生し、ナノシリカの表面にグラフトするプロピルトリメチルシランが解重合となり、グラフト率の低下を招く。
【0050】
反応温度がグラフト率に対する影響

【0051】
温度の上昇により、グラフト率が著しく上昇し、80〜85℃領域で最高値となる。その後、温度が高すぎるため、ブラウン運動が激し過ぎるため、ナノシリカが衝突する確率が増加し、寄り集まる現象が容易に発生し、グラフト率が安定に近づき、微妙に下がる。
【0052】
実施例4
実施例1に基づき、他の層の製造を行う。
中間基材層を製造する。有機シリコーン80〜120重量部と硬化剤10重量部とを混合し、有機シリコーンスラリーを作る。調色剤を8〜60重量部添加し、0〜20重量部のビニルシリコーンオイルで、述べられた有機シリコーンP41スラリーを、粘度が250000〜300000mPa・s/25℃となるよう調整する。その後、表面層の表面に、0.1mmの厚みでコーティングし、段階的な乾燥(実施例1の中での多段式温度差を有するオーブンを使用する)を行い、中間基材層を形成する。
【0053】
底層を製造し、基布層と貼り合わせる。
有機シリコーン80〜120重量部と硬化剤10重量部とを混合し、有機シリコーンスラリー2を作り、ナノシリカ2〜5重量部、及びシランカップリング剤を2〜5重量部、を添加する。そして、0〜20重量部のビニルシリコーンオイルで、粘度が15000〜25000mPa・s/25℃となるようスラリーを調整し、中間基材層の表面に、0.15mmの厚みでコーティングし、基布層と貼り合わせる。段階的な乾燥(実施例1の中での多段式温度差を有するオーブンを使用する)を行い、最終的にシリコーン革を形成する。
【0054】
述べられた基布層は、ニット生地、織物、スーパーファイバー、模造スエード、または、ポリエステル布である。
【0055】
底層を製造するときに、シランカップリング剤は、トリメトキシシラン、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、または、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランから選ばれる。分子の拡散作用、または、カップリング作用により、カップリング剤は、ナノシリカの中、または、有機シリコーンの中に移行し、それと基布層との貼り合わせ効果を増加する。
【0056】
実施例5
実施例1または実施例4で製造された抗菌革は、表面層が良好な抗菌性能、難燃性能を有し、表面の火傷を有効に防止することができる。また、繊細な質感、及び、比較的に良い力学性能(耐摩耗、引っ張り強さ)を有し、製造過程において有害物質を添加せず、環境に極めて優しく、箱、バッグ、靴、服、運動器具、及び医療機器の実質的なニーズを満足することができる。
【0057】
上述は、本発明の好ましい実施形態であり、本発明の保護範囲は、これに制限されない。この技術領域に詳しい技術者は、本発明の開示されている技術範囲内において、変化または代替案を容易に想到することができ、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。よって、本発明の保護範囲は本発明の特許請求の範囲に準ずる。