(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781829
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/40 20060101AFI20201026BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20201026BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20201026BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20201026BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20201026BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20201026BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20201026BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20201026BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20201026BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20201026BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20201026BHJP
A61K 31/538 20060101ALI20201026BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20201026BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20201026BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20201026BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20201026BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20201026BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20201026BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20201026BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
A61K31/40
A61K31/56
A61K31/4704
A61K47/06
A61K9/12
A61K9/72
A61K47/04
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/24
A61K31/538
A61K31/167
A61K31/137
A61K31/58
A61K31/573
A61P11/06
A61P11/00
A61P43/00 121
A61M15/00 Z
【請求項の数】105
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-515227(P2019-515227)
(86)(22)【出願日】2017年9月18日
(65)【公表番号】特表2019-529428(P2019-529428A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】GB2017052761
(87)【国際公開番号】WO2018051130
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】1615917.0
(32)【優先日】2016年9月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1620519.7
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・コール
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェームズ・ノークス
【審査官】
古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−528470(JP,A)
【文献】
特表2014−505717(JP,A)
【文献】
特表2014−513146(JP,A)
【文献】
「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素にかかる当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数」等の改正案の概要,環境省 経済産業省,2016年 2月 9日,p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61M 15/00
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)臭化グリコピロニウム、プロピオン酸フルチカゾン、及び任意選択により、インダカテロール及びマレイン酸インダカテロールからなる群から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬からなる薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超の水を含有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満の酸素を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超の酸素を含有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記臭化グリコピロニウムが、微粉化形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記薬物成分が、インダカテロール及びマレイン酸インダカテロールからなる群から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬が、微粉化形態である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記プロピオン酸フルチカゾンが、微粉化形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01〜2.5重量%から成る、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量%から成る、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記噴射剤成分の少なくとも90重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記噴射剤成分の少なくとも99重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記噴射剤成分が、完全に1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記噴射剤成分が、0.5〜10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物の少なくとも95重量%が、前記2つの成分(i)及び(ii)からなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
極性賦形剤をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記極性賦形剤がエタノールである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
極性賦形剤を含まない、請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
エタノールを含まない、請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記2つの成分(i)及び(ii)から完全になる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
酸安定剤を含まない、請求項1〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
コーティングされていないアルミニウム容器に25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つの薬学的に許容される臭化グリコピロニウム及び不純物の総重量に基づいて、0.8重量%未満の前記臭化グリコピロニウムの分解に由来する不純物を生ずる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に、前記臭化グリコピロニウム及び不純物の総重量に基づいて、1.0重量%未満の前記臭化グリコピロニウムの分解に由来する不純物を生ずる、請求項1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される前記臭化グリコピロニウムの少なくとも96.0重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器に25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後、及びコーティングされていないアルミニウム容器に40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に組成物中に存在する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記組成物の最初の薬学的活性の少なくとも96.0%が、コーティングされていないアルミニウム容器に25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後、及びコーティングされていないアルミニウム容器に40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に保持される、請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
定量噴霧式吸入器から送達されたときに、前記臭化グリコピロニウムの放出量の少なくとも35重量%である前記臭化グリコピロニウムの微粒子分率を生ずる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
懸濁液の形態である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
溶液の形態である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記医薬組成物が、有孔微細構造体を含まない、請求項1〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する、密封容器。
【請求項35】
コーティングされていないアルミニウム缶である、請求項34に記載の密封容器。
【請求項36】
定量噴霧式吸入器(MDI)と共に使用するための加圧エアロゾル容器である、請求項34又は35に記載の密封容器。
【請求項37】
請求項36に記載の密封容器を備える、定量噴霧式吸入器(MDI)。
【請求項38】
前記加圧エアロゾル容器に取り付けられたノズル及びバルブアセンブリと、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、及びシクロオレフィンコポリマーゴムから選択されるエラストマー材料製の、前記容器と前記ノズル/バルブアセンブリとの間に密封を提供するためのガスケットと、を備える、請求項37に記載の定量噴霧式吸入器。
【請求項39】
呼吸器障害を患っている又は患う可能性が高い患者を前記患者に治療有効量又は予防有効量の薬剤を投与することにより治療するための薬剤の製造における、請求項1〜33のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項40】
前記呼吸器障害が、喘息又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記薬剤が、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して前記患者に送達可能である、請求項39又は40に記載の使用。
【請求項42】
噴射剤成分と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む方法。
【請求項43】
前記医薬組成物の含水量を、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満に維持するように、前記医薬組成物の調製のための成分及び条件を選択することをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記得られた医薬組成物の酸素含有量が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満である、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩が、臭化グリコピロニウムである、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩が、微粉化形態である、請求項42〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記薬物成分が、少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)をさらに含む、請求項42〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬が、インダカテロール、オロダテロール、ホルモテロール、ビランテロール、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬が、インダカテロール及びマレイン酸インダカテロールからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬が、微粉化形態である、請求項47〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記薬物成分が、少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含む、請求項42〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ブデソニド、ベクロメタゾン、ベクロメタゾン、及びフルチカゾンからなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロン酸フルチカゾン、及びプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、微粉化形態である、請求項51〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01〜2.5重量%を構成する、請求項42〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量を構成する、請求項42〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記噴射剤成分の少なくとも90重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項42〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記噴射剤成分の少なくとも99重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記噴射剤成分が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項42〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記噴射剤成分が、0.5〜10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項57〜60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記医薬組成物の少なくとも95重量%が、前記薬物成分及び前記噴射剤成分からなる、請求項42〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記医薬組成物が、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成をさらに含む、請求項42〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
極性賦形剤をさらに含む、請求項42〜64のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記医薬組成物が、極性賦形剤を含まない、請求項42〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物が、エタノールを含まない、請求項42〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬組成物が、薬物成分及び噴射剤成分から完全になる、請求項42に記載の方法。
【請求項70】
コーティングされていないアルミニウム容器に25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づいて、0.8重量%未満の前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する不純物を生ずる、請求項42〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づいて、1.0重量%未満の前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する不純物を生ずる、請求項42〜70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の少なくとも96.0重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器に25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後、及びコーティングされていないアルミニウム容器に40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に組成物中に存在する、請求項42〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記組成物の最初の薬学的活性の少なくとも96.0%が、コーティングされていないアルミニウム容器中で25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後、及びコーティングされていないアルミニウム容器に40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に保持される、請求項42〜71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記医薬組成物が、懸濁液の形態である、請求項42〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記医薬組成物が、溶液の形態である、請求項42〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
酸安定剤を含まない、請求項42〜75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記医薬組成物が、有孔微細構造体を含まない、請求項42〜76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記医薬組成物が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)を噴射剤として用いること以外は同じである医薬組成物と比較して、安定化される、請求項42〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
噴射剤成分と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む薬物成分と、を含む医薬組成物のエアロゾル化性能を改善する方法であって、前記方法が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項80】
定量噴霧式吸入器から送達されたときに、前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の放出量の少なくとも35重量%である前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の微粒子フラクションを生ずる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記医薬組成物を40℃及び75%相対湿度で1ヶ月貯蔵した後に、放出量中の前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の微粒子フラクションが、前記少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の放出量の少なくとも35重量%である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記医薬組成物が、請求項1〜33のいずれか一項に記載される組成物である、請求項79〜81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記医薬組成物のエアロゾル化性能が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)を噴射剤として用いること以外は同じである医薬組成物と比較して、改善される、請求項79〜82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記薬物成分が臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びプロピオン酸フルチカゾンを含み、前記医薬組成物が定量噴霧式吸入器から送達されるときの放出量中の各薬物の微粒子フラクションが、その薬物の放出量の少なくとも40重量%である、請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項85】
前記放出量中の臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びフルチカゾンプロピオネートの前記微粒子フラクションが、40℃及び75%相対湿度で1ヶ月貯蔵された後に観察される、請求項84に記載の医薬組成物。
【請求項86】
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01〜2.5重量%を構成し、かつ、前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量%を構成する、請求項84又は85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
前記噴射剤成分の少なくとも90重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項84〜86のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項88】
前記噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項89】
前記噴射剤成分の少なくとも99重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
前記噴射剤成分が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項84〜86のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項91】
前記噴射剤成分が、0.5〜10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項87〜90のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項92】
前記組成物の少なくとも95重量%が、前記2つの成分(i)及び(ii)からなる、請求項84〜91のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項93】
少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、請求項84〜92のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項94】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項95】
極性賦形剤をさらに含む、請求項84〜94のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項96】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項97】
極性賦形剤を含まない、請求項84〜94のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項98】
完全に前記2つの成分(i)及び(ii)からなる、請求項84〜91のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項99】
(i)酸安定剤及び(ii)有孔微細構造体の一方又は両方を含まない、請求項84〜97のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項100】
前記薬物成分を構成する化合物を、該化合物が前記医薬組成物中に存在する割合とほぼ同じ割合で送達するように適合された、請求項1〜33及び84〜99のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項101】
臭化グリコピロニウム、プロピオン酸フルチカゾン、及び任意選択により、インダカテロール及びマレイン酸インダカテロールからなる群から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬からなる薬物成分と、噴射剤成分と、を含む医薬組成物の地球温暖化係数(GWP)を低下させる方法であって、前記方法が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項102】
前記使用される噴射剤成分の少なくとも90重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記使用される噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記医薬組成物が、請求項2〜33のいずれか一項に記載の通りである、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記使用される噴射剤成分が、250未満の地球温暖化係数(GWP)を有する、請求項42〜83及び101〜104のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤を使用する定量吸入器(MDI)などの医療用デバイスからの薬物製剤の送達に関する。より具体的には、本発明は、HFA−152a噴射剤及び噴射剤中に溶解又は懸濁された薬物製剤を含む医薬組成物、及びそれらの組成物を含有する医療用デバイスに関する。本発明の医薬組成物は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用する加圧エアロゾル容器からの送達に特に適している。
【背景技術】
【0002】
MDIは、最も重要な種類の吸入薬物送達システムであり、当業者に周知である。MDIは、薬物が溶解、懸濁、又は分散された液化噴射剤を用いて、別個の正確な量の薬物を患者の気道に必要に応じて送達するように設計される。MDIの設計及び操作は、多くの標準的教科書及び特許文献に記載されている。MDIはいずれも、薬物製剤を収容する加圧容器、ノズル、及び作動したときに制御された量の薬物をノズルを通して分与することができるバルブアセンブリとを備える。ノズル及びバルブアセンブリは、典型的には、マウスピースを具備するハウジングの中に配置されている。薬物製剤は、薬物が溶解、懸濁、又は分散された噴射剤を含み、極性賦形剤、界面活性剤、及び防腐剤などの他の物質をまた含有し得る。
【0003】
噴射剤をMDIで充分に機能させるためには、噴射剤が多くの特性を有する必要がある。該特性には、適切な沸点及び蒸気圧が含まれ、これにより噴射剤は室温で密閉容器中において液化することができるが、低い周囲温度でも薬物を霧状の製剤として送達するためにMDIを作動させた際に充分に高い圧力を生じることができる。さらに、噴射剤は、急性及び慢性毒性が低く、心臓感作に対する許容限界が高くなければならない。噴射剤は、薬物、容器、並びにMDIデバイスの金属及び非金属構成要素との接触において化学的安定性が高く、MDIデバイス中の任意のエラストマー材料から低分子量物質を抽出する(extract)傾向が低くなければならない。噴射剤はまた、使用時に薬物の再現性ある送達を可能にするように、均一な溶液、安定した懸濁液、又は安定した分散液中に充分な時間、薬物を維持することが可能でなければならない。薬物が噴射剤の懸濁液中にある場合、液体中の薬物粒子の急激な沈降又は浮揚を避けるために、液体噴射剤の密度は固体薬物の密度と同様であることが望ましい。最後に、噴射剤は、使用時に患者に重大な燃焼の危険性を与えてはならない。特に、気道中で空気と混ざったときに、不燃性であるか又は可燃性の低い混合物が形成されなければならない。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(R−12)は、特性の好適な組み合わせを有し、しばしばトリクロロフルオロメタン(R−11)と混合されて、長年に渡って最も広く使用されたMDI噴射剤であった。ジクロロジフルオロメタン及びトリクロロフルオロメタンなどの完全に及び部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン(CFC)が地球の保護オゾン層を破壊しているという国際的な懸念により、その製造及び使用を厳しく制限し、最終的には完全に廃止すると規定したモントリオール議定書の協定を多くの国が締結した。ジクロロジフルオロメタン及びトリクロロフルオロメタンは、冷凍用途については1990年代に段階的に廃止されたが、モントリオール議定書におけるエッセンシャルユース(essential use)の例外の結果として、MDIの分野では少ない程度で未だ使用されている。
【0005】
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)は、R−12の代わりの冷媒及びMDI噴射剤として導入された。1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)はまた、MDIの分野においてジクロロテトラフルオロエタン(R−114)の代替の噴射剤として導入され、この用途のために、場合によっては単独で又はHFA−134aと混合して使用される。
【0006】
HFA−134a及びHFA−227eaは低いオゾン破壊係数(ODP)を有するが、それぞれ1430及び3220の地球温暖化係数(GWP)を有し、これは、特にそれらが大気中に放出される場合の散布的な使用に関しては、現在では一部の規制団体によっては高すぎるとみなされている。
【0007】
最近、特に注目を集めている1つの工業分野は、European Mobile Air Conditioning Directive(2006/40/EC)の結果としてHFA−134aの使用が規制管理下となっている、自動車用空調セクターである。産業界は、自動車用空調及び他の用途における、低い温室効果温暖化係数(GWP)及びオゾン破壊係数(ODP)を有するHFA−134aの多くの可能性ある代替手段を開発している。これらの代替手段の多くは、ヒドロフルオロプロペン、特に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)及び1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)などのテトラフルオロプロペンを含む。
【0008】
提案されているHFA−134aに対する代替手段は低いGWPを有するが、成分の多く(例えば、フルオロプロペンのうちのいくつか)の毒素学上の性状は不明であり、仮に使用されたとしてもMDIの分野における使用について長年に渡って許容される可能性は低い。
【0009】
グリコピロレート(グリコピロニウムとしても知られる)は、COPDの治療に使用される長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)である。グリコピロレートは、薬物成分に長時間作用性β2刺激薬(LABA)がまた含まれている併用療法の一部として典型的に使用される。
【0010】
残念ながら、ホルモテロールをMDIを用いた送達に好適な形態で製剤化することは、その物理的及び化学的安定性が制限されることに起因して困難であることが立証されている。この問題は、有機又は無機酸などの酸安定剤を薬物製剤に入れることによってこれまで対処されてきた。しかしながら、薬物製剤において酸安定剤を使用すると、腐食の問題を回避する場合には製剤を収容するための高価なコーティングされた缶を使用する必要がある。
【0011】
MDIを使用して送達することができ、HFA−134a及びHFA−227eaと比較して低いGWPを有する噴射剤を使用した、サルメテロールベースの医薬組成物が必要とされている。酸安定剤を使用せずに満足できる安定性を示す医薬組成物がまた必要とされている。
【発明の開示】
【0012】
我々は、特に製剤が少量の水を含有する場合に、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤を使用することによって、MDIにおけるグリコピロレートベース製剤の使用に関連する問題を克服し得ることを見出した。これらの製剤は、化学的安定性の改善、薬物送達の改善のためのエアロゾル化(aerosolisation)性能の改善、良好な懸濁安定性、GWPの低下、標準的なコーティングされていないアルミニウム缶との良好な適合性、並びに標準的なバルブ及び密封(seal)との良好な適合性を示すことができる。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、
(i)少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムを含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物、例えば、医薬懸濁液又は医薬溶液が提供される。
【0014】
本発明の第1の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量を基準として、500ppm未満の水を含有する。特に、医薬組成物が、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する場合、化学的安定性の改善が見られる。医薬組成物の含水量について言及する場合、組成物中の自由水(free water)の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水(hydrated)薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は水を含まない。あるいは、第1の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、
(i)少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムを含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物、例えば、医薬懸濁液又は医薬溶液であって、
医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する、医薬組成物が提供される。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は酸素を含まない。あるいは、第1の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。酸素含有量がより低いことが好ましいが、その理由は、それにより薬物化合物の分解が減少する傾向にあり、より化学的安定性の高い組成物が得られるからである。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、
(i)少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムを含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物、例えば、医薬懸濁液又は医薬溶液であって、
医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の酸素を含有する、医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明の医薬組成物は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して気道に送達するのに好適である。
【0019】
本明細書に開示される全ての態様及び実施形態における本発明の医薬組成物中の少なくとも1つのグリコピロレートの薬学的に許容される塩は、好ましくは、微粉化形態である。さらに、本明細書に開示される全ての態様及び実施形態における本発明の医薬組成物は、好ましくは、有孔微細構造(perforated microstructure)を含まない。
【0020】
少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩は、噴射剤中に分散又は懸濁させることができる。そのような懸濁液中の薬物粒子は、好ましくは、直径100ミクロン未満、例えば、50ミクロン未満であるしかしながら、別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、例えばエタノールなどの極性賦形剤の補助により噴射剤に溶解された、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む溶液である。
【0021】
本発明の第1の態様の医薬組成物は、グリコピロレート(グリコピロニウムとしても知られる)の薬学的に許容される塩を含む。グリコピロレートは四級アンモニウム塩である。好適な薬学的に許容される対イオンには、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、p−クロロ安息香酸塩、ジフェニル酢酸塩又はトリフェニル酢酸塩、o−ヒドロキシ安息香酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸塩、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、及びベンゼンスルホン酸塩が含まれる。好ましい化合物は、臭化グリコピロニウムとしても知られるグリコピロレートの臭化物塩である。
【0022】
したがって、本発明の上記の医薬組成物において、少なくとも1つの医薬として許容されるグリコピロレートの塩は、好ましくは臭化グリコピロニウムである。
【0023】
本発明の第1の態様の医薬組成物中の薬物成分の量は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて0.01〜2.5重量%の範囲である。好ましくは、薬物成分は、医薬組成物の総重量の0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜2.0重量%、特に0.05〜1.5重量%を構成する。薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩から本質的になるか、又は完全にそれからなることができる。「から本質的になる」との用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)及び/又は少なくとも1つのコルチコステロイドなどの他の薬物を含有してもよい。
【0024】
本発明の第1の態様の医薬組成物中の噴射剤成分は、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む。したがって、噴射剤成分がHFA−152aに加えて他の噴射剤化合物を含み得る可能性を除外しない。例えば、噴射剤成分は、例えば、HFA−227ea、HFA−134a、ジフルオロメタン(HFA−32)、プロパン、ブタン、イソブタン、及びジメチルエーテルから選択される1つ以上の追加のヒドロフルオロカーボン又は炭化水素噴射剤化合物をさらに含んでもよい。好ましい追加の噴射剤は、HFA−227ea及びHFA−134aである。
【0025】
HFA−134a又はHFA−227eaなどの追加の噴射剤化合物を含む場合、噴射剤成分の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは50重量%がHFA−152aでなければならない。典型的には、HFA−152aは、噴射剤成分の少なくとも90重量%、例えば90〜99重量%を構成する。好ましくは、HFA−152aは、噴射剤成分の少なくとも95重量%、例えば95〜99重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を構成する。
【0026】
好ましい実施形態において、噴射剤成分は、250未満、より好ましくは200未満、さらにより好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する。
【0027】
特に好ましい実施形態において、噴射剤成分はHFA−152aから完全になり、したがって本発明の医薬組成物は唯一の噴射剤としてHFA−152aを含む。「から完全になる」という用語は、言うまでもなく、HFA−152aの製造に使用されるプロセスの後に存在し得る少量の、例えば、最大で数百ppmの不純物の存在を除外しないが、但し、それらが医療用途における噴射剤の安定性に影響しないことを条件とする。好ましくは、HFA−152a噴射剤は、10ppm以下、例えば0.5〜10ppm、より好ましくは5ppm以下、例えば1〜5ppmの不飽和不純物、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、及びクロロ−フルオロエチレン化合物を含有する。
【0028】
本発明の医薬組成物中の噴射剤成分の量は、医薬組成物中の薬物及び他の成分の量に応じて変わる。典型的には、噴射剤成分は、医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量%を構成する。好ましくは、噴射剤成分は、医薬組成物の総重量の90.0〜99.99重量%、より好ましくは96.5〜99.99重量%、特に97.5〜99.95重量%を構成する。
【0029】
一実施形態において、本発明の第1の態様の医薬組成物は、上記で列挙した2つの成分(i)及び(iiから本質的になり、好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0030】
一実施形態において、本発明の第1の態様の医薬組成物は、エタノールなどの極性賦形剤をさらに含む。極性賦形剤は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して送達される呼吸器障害を治療するための医薬組成物中で従前より使用されている。極性賦形剤は、溶媒、共溶媒、担体溶媒、及びアジュバントとも称される。極性賦形剤を含めることで、界面活性剤又は薬物が噴射剤に可溶化し、及び/又は医薬組成物が貯蔵されている容器からノズル出口に該組成物が通過する際に該組成物が接触する定量噴霧式吸入器の表面における薬物粒子の沈着を抑制するように作用し得る。極性賦形剤はまた、薬物が好適な極性賦形剤と混合される2段階充填プロセスにおいて増量剤として使用される。最も一般的に使用される極性賦形剤は、エタノールである。極性添加剤を使用する場合、極性添加剤は、典型的には、医薬組成物の総重量を基準として、0.5〜10重量%の量、好ましくは1〜5重量%の量で存在することになる。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様の医薬組成物は、エタノールなどの極性添加剤を含まない。
【0032】
本発明の第1の態様の医薬組成物はまた、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分を含んでもよい。MDIの医薬製剤でこれまで使用されてきた種類の界面活性剤化合物を、本発明の医薬組成物において使用することができる。好ましい界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される。オレイン酸という用語は、必ずしも純粋な(9Z)−オクタデカ−9−エン酸((9Z)−octadec−9−enoic acid)を指すものではない。医療用途における界面活性剤としての使用のために販売される場合、オレイン酸は典型的にはいくつかの脂肪酸の混合物であり、(9Z)−オクタデカ−9−エン酸がその主な脂肪酸であり、例えば、界面活性剤の総重量に基づいて少なくとも65重量%で存在する。
【0033】
好ましい実施形態において、界面活性剤成分は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、オレイン酸、及びレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物から本質的になり、さらにより好ましくはそれから完全になる。特に好ましい実施形態において、界面活性剤成分は、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つの界面活性剤から本質的になり、さらにより好ましくはそれから完全になる。「から本質的になる」という用語は、界面活性剤成分の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、列挙した界面活性剤からなることを意味する。
【0034】
界面活性剤成分を使用する場合、該成分は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、0.1〜2.5重量%の量、好ましくは0.2〜1.5重量%の量で存在する。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様の医薬組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0036】
本発明の医薬組成物は、長時間作用性β2刺激薬(LABA)も含んでもよい。慢性閉塞性肺疾患の治療のためにこれまで使用され、MDIを使用して送達することができる長時間作用性β2刺激薬のいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適な長時間作用性β2刺激薬には、ホルモテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、サルメテロール、インダカテロール、オロダテロール及びビランテロール、並びにそれらの薬学的に許容される塩などのそれらの薬学的に許容される誘導体が含まれる。好ましい化合物には、インダカテロール、オロダテロール、ホルモテロール、及びビランテロール、並びにそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。特に好ましい化合物は、インダカテロール及びその薬学的に許容される塩、特にマレイン酸インダカテロールである。
【0037】
したがって、本発明の第2の態様は、
(i)少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムと、少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)、特にインダカテロール、オロダテロール、ホルモテロール、ビランテロール、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)と、を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物、例えば、医薬懸濁液又は医薬溶液を提供する。
【0038】
本発明の第2の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量を基準として、500ppm未満の水を含有する。好ましくは、本発明の第2の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA−152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい態様において、本発明の第2の態様の医薬組成物は水を含まない。あるいは、第2の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明の第2の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は酸素を含まない。あるいは、第2の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。酸素含有量がより低いことが好ましいが、その理由は、それにより薬物化合物の分解が減少する傾向にあり、より化学的安定性の高い組成物が得られるからである。
【0040】
好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じた通りである。
【0041】
本発明の第2の態様の医薬組成物中の薬物成分及び噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、並びに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)から本質的になるか、又は完全にそれからなることができる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)からなることを意味する。
【0042】
一実施形態において、本発明の第2の態様の医薬組成物は、上記に列挙した2つの成分(i)及び(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0043】
別の実施形態において、本発明の第2の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方又は両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0044】
本発明の第2の態様の特に好ましい実施形態において、薬物成分は、臭化グリコピロニウム、並びにインダカテロール、オロダテロール、ホルモテロール、ビランテロール、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)、特にインダカテロール及びマレイン酸インダカテロールを含む。好ましくは、臭化グリコピロニウム及び少なくとも1つの選択された長時間作用性β2刺激薬は、本発明の第2の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質(pharmaceutical active)である。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明の第2の態様の医薬組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0046】
本発明の医薬組成物はまた、コルチコステロイドを含む。喘息及び慢性閉塞性肺疾患の治療のためにこれまで使用され、MDIを使用して送達することができるコルチコステロイドのいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適なコルチコステロイドには、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、及びフルチカゾン、並びにそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。好ましい化合物には、ブデソニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロン酸フルチカゾン、及びプロピオン酸フルチカゾンが含まれる。
【0047】
したがって、本発明の第3の態様は、
(i)少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムと、少なくとも1つのコルチコステロイド、特にフルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン及びベクロメタゾン、並びそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つのコルチコステロイドと、を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物、例えば、医薬懸濁液又は医薬溶液を提供する。
【0048】
本発明の第3の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましい実施形態において、本発明の第3の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA−152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい態様において、本発明の第3の態様の医薬組成物は水を含まない。あるいは、第3の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明の第3の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は酸素を含まない。あるいは、第3の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。酸素含有量がより低いことが好ましいが、その理由は、それにより薬物化合物の分解が減少する傾向にあり、より化学的安定性の高い組成物が得られるからである。
【0050】
好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0051】
本発明の第3の態様の医薬組成物中の薬物成分及び噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、並びに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び少なくとも1つのコルチコステロイドから本質的になるか、又はそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び少なくとも1つのコルチコステロイドからなることを意味する。
【0052】
一実施形態において、本発明の第3の態様の医薬組成物は、上記に列挙した2つの成分(i)及び(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0053】
別の実施形態において、本発明の第3の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方又は両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0054】
本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態において、薬物成分は、臭化グリコピロニウムと、ブデソニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロン酸フルチカゾン、及びプロピオン酸フルチカゾンから選択される少なくとも1つのコルチコステロイドと、を含む。好ましくは、臭化グリコピロニウム及び少なくとも1つの選択されたコルチコステロイドが、本発明の第3の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明の第3の態様の医薬組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0056】
本発明の医薬組成物はまた、長時間作用性β2刺激薬(LABA)及びコルチコステロイドを含んでもよい。喘息及び慢性閉塞性肺疾患の治療にこれまで使用され、MDIを使用して送達することができる長時間作用性β2刺激薬のいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適かつ好ましい長時間作用性β2刺激薬は、本発明の第2の態様に関して上記で論じた通りである。好適かつ好ましいコルチコステロイドは、本発明の第3の態様について上記で論じた通りである。
【0057】
したがって、本発明の第4の態様は、
(i)少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムと、少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)、特にインダカテロール、オロダテロール、ホルモテロール、ビランテロール、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)と、少なくとも1つのコルチコステロイド、特にフルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、及びベクロメタゾンから選択される少なくとも1つのコルチコステロイド、並びにそれらの薬学的に許容される塩と、を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物、例えば、医薬懸濁液又は医薬溶液が提供される。
【0058】
本発明の第4の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましい実施形態において、本発明の第4の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA−152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい態様において、本発明の第4の態様の医薬組成物は水を含まない。あるいは、第4の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明の第4の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は酸素を含まない。あるいは、第4の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。酸素含有量がより低いことが好ましいが、その理由は、それにより薬物化合物の分解が減少する傾向にあり、より化学的安定性の高い組成物が得られるからである。
【0060】
好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第一の態様の医薬組成物に関して上記で論じた通りである。
【0061】
本発明の第4の態様の医薬組成物中の薬物成分及び噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、並びに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩と、少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)と、少なくとも1つのコルチコステロイドとから本質的になるか、又は完全になることができる。「から本質的になる」との用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩と、少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)と、少なくとも1つのコルチコステロイドと、を含む薬物成分からなることを意味する。
【0062】
一実施形態において、本発明の第4の態様の医薬組成物は、上記で列挙した2つの成分(i)及び(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0063】
別の実施形態において、本発明の第4の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方又は両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0064】
本発明の第4の態様の特に好ましい実施形態において、薬物成分は、臭化グリコピロニウムと、インダカテロール、オロダテロール、ホルモテロール、ビランテロール及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬(LABA)、特にインダカテロール及びマレイン酸インダカテロールと、ブデソニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロン酸フルチカゾン、及びプロピオン酸フルチカゾンから選択される少なくとも1つのコルチコステロイドと、を含む。好ましくは、臭化グリコピロニウムと、少なくとも1つの選択された長時間作用性β2刺激薬と、少なくとも1つの選択されたコルチコステロイドとは、本発明の第4の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0065】
特に好ましい実施形態において、本発明の第4の態様の医薬組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0066】
臭化グリコピロニウムなどのグリコピロレート塩と、噴射剤と、を含む医薬組成物における1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤の使用は、噴射剤としてHFA−134a又はHFA−227eaのいずれかを含有する製剤で示す安定性と比較して、サルメテロール化合物の安定性を予想外に改善することができることが見出された。
【0067】
したがって、本発明の第5の態様において、噴射剤成分と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む方法を提供する。
【0068】
本発明の第5の態様の安定化方法における医薬組成物は、懸濁液又は溶液であってもよい。
【0069】
特に、医薬組成物が、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する場合、化学的安定性の改善をもたらすことができる。医薬組成物の含水量について言及する場合、組成物中の自由水含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は水を含まない。あるいは、本発明の第5の態様で記述した医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いで組成物をそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0070】
したがって、本発明の第5の態様の好ましい実施形態において、噴射剤成分と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することと、医薬組成物の含水量を医薬組成物の総重量に基づいて100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満に維持するように、医薬組成物の調製のための成分及び条件を選択することと、を含む方法が提供される。
【0071】
実際には、上記で述べた低い水分レベルの医薬組成物の調製には、噴射剤成分が通常は最終デバイスにおいて最大の質量であるので、好適に低い含水量の噴射剤成分を使用し、次いで医薬組成物を好適に乾燥された条件下、例えば乾燥窒素雰囲気下で調製することを伴う。乾燥条件下での医薬組成物の調製は周知であり、関与する技術は当業者に充分に理解されている。最終デバイスにおいて低い含水量を得るための他の工程には、デバイスの組立て前及び組立て中に、缶及びバルブ構成部品を、湿度制御された雰囲気中、例えば乾燥窒素又は空気中で乾燥し、貯蔵することが含まれる。医薬組成物が有意な量のエタノールを含有する場合、エタノール及び噴射剤の含水量を、例えば含水量を好適に低いレベルまで低下するように乾燥させることによって制御することが重要であり得る。好適な乾燥技術は当業者には周知であり、モレキュラーシーブ又は他の無機乾燥剤及び膜乾燥プロセスの使用を含む。
【0072】
本発明の第5の態様の安定化方法において、好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で記載した通りである。さらに、本発明の第5の態様の安定化方法における薬物成分及び噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、並びに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0073】
本発明の第5の態様の安定化方法における薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩から本質的になるか、又はそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのグリコピロレート塩からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬をさらに含んでもよい。コルチコステロイド及び/又は長時間作用性β2刺激薬を含む場合、好適かつ好ましいコルチコステロイド及び好適かつ好ましい長時間作用性β2刺激薬は、本発明の第2及び第3の態様の医薬組成物について上記で記載した通りである。
【0074】
一実施形態において、本発明の第5の態様の安定化方法における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分及び噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、該2つの成分からなることを意味する。
【0075】
別の実施形態において、本発明の第5の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方又は両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0076】
特に好ましい実施形態において、本発明の第5の態様の方法において提供される医薬組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0077】
1つの好ましい安定化方法において、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に得られた医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づいて、0.8重量%未満、好ましくは0.6重量%未満の少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する不純物を生じる。
【0078】
1つの好ましい安定化方法において、40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に得られた医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づいて、1.2重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.8重量%未満の少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する不純物を生じる。
【0079】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬を含む、別の好ましい安定化方法において、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に得られた医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づいて、1.0重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.6重量%未満の少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する不純物を生じる。
【0080】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬を含む、さらに別の好ましい安定化方法において、40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に得られた医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づいて、1.2重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.8重量%未満の少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する不純物を生じる。
【0081】
さらに別の好ましい安定化方法において、調製直後の医薬組成物中に最初に(originally)含有される少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の少なくとも95.0重量%、好ましくは少なくとも96.0重量%、より好ましくは少なくとも97.0重量%が、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後及び40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に組成物中に存在する。
【0082】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬を含む、さらに別の好ましい安定化方法において、調製直後の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の少なくとも95.0重量%、好ましくは少なくとも96.0重量%、より好ましくは少なくとも97.0重量%が、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後及び40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に組成物中に存在する。
【0083】
さらに好ましい安定化方法において、組成物の最初の薬学的活性の少なくとも95.0%、好ましくは少なくとも96.0%、より好ましくは少なくとも97.0%が、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後及び40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に保持される。
【0084】
本発明の第1、第2、第3、及び第4の態様の1つの好ましい医薬組成物は、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に、1.0重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.6重量%未満の少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する総不純物を生じる。
【0085】
本発明の第1、第2、第3、及び第4の態様の別の好ましい医薬組成物は、40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に、1.2重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.8重量%未満の少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の分解に由来する総不純物を生じる。
【0086】
上で示した不純物の重量%は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩及び不純物の総重量に基づく。
【0087】
本発明の第1、第2、第3、及び第4の態様のさらに好ましい医薬組成物において、調製直後の本発明の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の少なくとも95.0重量%、好ましくは少なくとも96.0重量%、より好ましくは少なくとも97.0重量%が、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後及び40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に組成物中に存在する。
【0088】
本発明の第1、第2、第3、及び第4の態様のさらに好ましい医薬組成物において、本発明の医薬組成物の最初の薬学的活性の少なくとも95.0%、好ましくは少なくとも96.0%、より好ましくは少なくとも97.0%が、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後及び40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月貯蔵された後に保持される。
【0089】
上記の安定化方法における医薬組成物の貯蔵について言及する場合、特に、コーティングされていないアルミニウム容器中でのそれらの組成物の貯蔵を指す。同様に、上記の医薬組成物の貯蔵について言及する場合、特に、コーティングされていないアルミニウム容器中でのそれらの貯蔵を指す。
【0090】
定量噴霧式吸入器を使用して送達されるように設計された臭化グリコピロニウムなどのグリコピロレート塩及び噴射剤を含む医薬組成物における1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤の使用は、噴射剤としてHFA−134a又はHFA−227eaのいずれかを使用したときに観察される性能と比較して、組成物が定量噴霧式吸入器から送達されたときに、医薬組成物のエアロゾル化性能を予想外に改善できることが見出された。特に、放出量中のグリコピロレート塩の微粒子フラクション(fine particle fraction)は、典型的には、グリコピロレート塩の放出量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも45重量%を構成する。放出量中のグリコピロレート塩の微粒子フラクションは、医薬組成物がMDIキャニスタに充填された直後及び任意の長期貯蔵の前に観察されるだけでなく、ストレス保存条件下での貯蔵後、例えば40℃及び75%の相対湿度で1ヶ月貯蔵した後でも観察される。
【0091】
したがって、本発明の第6の態様において、噴射剤成分と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む薬物成分と、を含む医薬組成物のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む方法が提供される。
【0092】
本発明の第6の態様の方法における医薬組成物は、懸濁液又は溶液であってもよい。
【0093】
本発明の第6の態様の好ましい態様において、噴射剤成分と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩を含む薬物成分と、を含む医薬組成物のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することと、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩の放出量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%の微粒子フラクションを生ずる医薬組成物を提供することと、を含む方法が提供される。
【0094】
放出量の微粒子フラクションを増加させることは非常に有益であり、その理由は、微薬物粒子は、肺の深い細気管支経路及び肺胞経路に浸透して、喘息発作又はCOPDの作用の軽減を最大化することができるからである。
【0095】
微粒子フラクションは、当該技術分野において広く認識された用語である。微粒子フラクションは、有効な肺胞薬物送達のために最も望ましい粒径範囲であると一般に受け入れられている5μm未満の直径を有する放出されるエアロゾル粒子の質量分率の尺度である。
【0096】
本発明の第6の態様の方法において、好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で記載した通りである。さらに、本発明の第6の態様の医薬組成物中の薬物成分及び噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、並びに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0097】
本発明の第6の態様の方法における薬物成分は、臭化グリコピロニウムなどの少なくとも1つのグリコピロレート塩から本質的になるか、又はそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのグリコピロレート塩からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬をさらに含んでもよい。コルチコステロイド及び/又は長時間作用性β2刺激薬を含む場合、好適かつ好ましいコルチコステロイド薬及び好適かつ好ましい長時間作用性β2刺激薬は、本発明の第2及び第3の態様の医薬組成物について上記に記載した通りである。
【0098】
一実施形態において、本発明の第6の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分及び噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、該2つの成分からなることを意味する。
【0099】
本発明の第6の態様の医薬組成物はまた、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方又は両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた通りである。
【0100】
本発明の第6の態様の特に好ましい実施形態において、薬物成分は、臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びプロピオン酸フルチカゾンを含み、医薬組成物が定量噴霧式吸入器から送達されるときの放出量中の各薬物の微粒子フラクションは、その薬物の放出量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%である。放出量中の臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びプロピオン酸フルチカゾンの微粒子フラクションは、医薬組成物がMDIキャニスタに充填された直後及び任意の長期貯蔵の前に観察されるだけでなく、ストレス保存条件下での貯蔵後、例えば40℃及び75%の相対湿度で1ヶ月貯蔵存した後でも観察される。さらに、この好ましい実施形態において、驚くべきことに、HFA−134aを噴射剤として使用した場合とは異なり、製剤化された3種の薬物の比率は放出量で実質的に保持できることが見出された。
【0101】
本発明の医薬組成物は、例えば定量噴霧式吸入器(MDI)を使用した加圧エアロゾル容器からのグリコピロレート塩、並びに、含める場合にはコルチコステロイド及び長時間作用性β2刺激薬化合物の送達に特に有用である。この用途のために、本医薬組成物を加圧エアロゾル容器内に含有し、HFA−152a噴射剤が微細なエアロゾルスプレーとして薬物を送達する働きをする。
【0102】
本発明の医薬組成物は、バルブ潤滑剤などの加圧MDI用の薬物製剤中で従来使用される種類の1つ以上の他の添加物を含んでもよい。医薬組成物中に他の添加物を含む場合、該添加物は、通常、当該技術分野における慣例的な量で使用される。
【0103】
本発明の医薬組成物は、通常、薬剤送達デバイスに関連して使用される加圧容器又はキャニスタ中で貯蔵される。そのように貯蔵されるとき、医薬組成物は、通常、液体である。好ましい実施形態において、加圧容器は、定量噴霧式吸入器(MDI)での使用のために設計される。特に好ましい実施形態において、加圧容器は、コーティングされたアルミニウム缶又はコーティングされていないアルミニウム缶であり、特に後者である。
【0104】
したがって、本発明の第7の態様は、本発明の第1、第2、第3、又は第4の態様の医薬組成物を収容する加圧容器を提供する。第8の態様において、本発明は、本発明の第1、第2、第3、又は第4の態様の医薬組成物を収容する加圧容器を有する薬剤送達デバイス、特に定量噴霧式吸入器を提供する。
【0105】
定量噴霧式吸入器は、典型的には、分与される医薬組成物を収容する容器に固着される(crimped)ノズル及びバルブアセンブリを備える。エラストマーガスケットを使用して、容器とノズル/バルブアセンブリとの間に密封を提供する。好ましいエラストマーガスケット材料は、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、及びシクロオレフィンコポリマーゴムであり、その理由は、これらがHFA−152aと良好な適合性を示し、またHFA−152aが容器から透過するのを防止又は制限する良好なバリアを提供し得るからである。
【0106】
本発明の医薬組成物は、呼吸器障害、特に喘息若しくは慢性閉塞性肺疾患を患っている又は患う可能性が高い患者を治療するための医薬品において使用される。
【0107】
したがって、本発明はまた、呼吸器障害、特に喘息若しくは慢性閉塞性肺疾患を患っている又は患う可能性のある患者を治療するための方法であって、患者に治療有効量又は予防有効量の上記で論じた医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。医薬組成物は、好ましくは、MDIを使用して患者に送達される。
【0108】
本発明の医薬組成物を調製し、圧力充填及び冷却充填などの当該技術分野で標準的な技術を使用して、MDIデバイスを充填することができる。例えば、医薬組成物は、少なくとも1つのグリコピロレート塩、任意選択により少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬、任意選択により界面活性剤成分、並びにHFA−152a含有噴射剤を必要な割合で好適な混合容器中で一緒に混合するという簡単な混合操作により調製することができる。当該技術分野で一般的であるように、混合は撹拌によって促進することができる。好都合には、HFA−152aを含有する噴射剤を液化して、混合を助長する。医薬組成物を別々の混合容器中で作製する場合、該医薬組成物を、薬剤送達デバイス、特にMDIの一部として使用される加圧容器などの保存用加圧容器に移すことができる。
【0109】
本発明の医薬組成物はまた、エアロゾルキャニスタ又はバイアルなどの加圧容器の閉ざされた空間内で調製することができ、最終的にはここから組成物がMDIなどの薬剤送達デバイスを使用してエアロゾルスプレーとして放出される。この方法では、秤量した量の少なくとも少なくとも1つのグリコピロレート塩、並びに任意選択により少なくとも1つのコルチコステロイド及び/又は少なくとも1つの長時間作用性β2刺激薬化合物を蓋のない(open)容器に入れる。次いで、バルブを容器に固着し、任意選択によりまずバルブを通して容器を排気した後、液体形態のHFA−152a含有噴射剤成分をバルブを通して圧力下で容器に入れる。界面活性剤成分は、含める場合には薬物成分と混合してもよく、あるいは単独で又は噴射剤成分との予備混合物(premix)としてのいずれかでバルブを装着した後に容器に入れることができる。次いで、混合物全体を例えば激しい撹拌又は超音波槽を使用することによって処理し、薬物を噴射剤成分中に分散させることができる。好適な容器は、プラスチック製、金属製、例えば、アルミニウム製又はガラス製であってもよい。好ましい容器は、金属製、特に、コーティングされていても又はコーティングされていなくてもよいアルミニウム製である。コーティングされていないアルミニウム容器が特に好ましい。
【0110】
容器には、複数回の用量を提供するのに充分な医薬組成物を充填してもよい。MDI中で使用される加圧エアロゾルキャニスタは、典型的には、50〜150回の個別用量を含有する。
【0111】
本発明はまた、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレートの塩、特に臭化グリコピロニウムを含む薬物成分と、噴射剤成分と、を含む医薬組成物の地球温暖化係数(GWP)を低減する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む方法を提供する。この方法は、全ての態様及び実施形態における本明細書に開示される全ての医薬組成物の調製に適用可能である。
【0112】
好ましくは、使用される噴射剤成分の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%が、HFA−152aである。特に好ましい実施形態において、使用される噴射剤成分は完全にHFA−152aである。
【0113】
使用される噴射剤成分は、好ましくは250未満、より好ましくは200未満、さらにより好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する。
【実施例】
【0114】
本発明をこれから以下の実施例によって例示するが、本発明は該実施例により限定されるものではない。
【0115】
実施例1
噴射剤としてHFA−134a又はHFA−152aのいずれかを使用して、定量噴霧式吸入器(MDI)から送達される臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びプロピオン酸フルチカゾンの併用薬物製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を調べるために、多くの実験を行った。
【0116】
臭化グリコピロニウム、インダカテロール及びプロピオン酸フルチカゾンの医薬製剤をHFA−134a又はHFA−152a(Mexichem、UK)中で調製した。薬物を標準的なコーティングされていない14mlのアルミニウムキャニスタ(C128、Presspart、Blackburn、UK)へ直接秤量した。次いで、キャニスタに50μLのバルブ(Bespak、Kings Lynn、UK)を固着し、続いて、手動Pamasolクリンパ(crimper)/充填機(Pamasol、Switzerland)を使用して、噴射剤をバルブを通してキャニスタに充填した。最後に、キャニスタを20分間超音波処理して、薬物の懸濁液中の分散を助長した。臭化グリコピロニウムの名目量(nominal dose)は50μgであり、インダカテロールの名目量は100μgであり、プロピオン酸フルチカゾンの名目量は125μgであった。
【0117】
製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を、Next Generation Impactorを使用して、下記の方法を用いて調製直後(時間t=0)に試験した。次いで、製剤を、40℃及び75%相対湿度でのストレス保存条件下で(バルブを下げた状態で(valve down))、1ヶ月貯蔵した。ストレス保存条件下で1ヶ月貯蔵した後、医薬製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を、前述のとおり、Next Generation Impactorを使用し、下記の方法を用いて再度試験した。
【0118】
Next Generation Impactor(NGI、Copley Scientific、Nottingham UK)を真空ポンプ(GE Motors、NJ、USA)に接続した。試験前にNGIシステムのカップをヘキサン中の1%v/vシリコーン油でコーティングし、粒子の反発をなくした。各実験について、バルブを3回作動させて、薬局方ガイドラインに従い、30L.分
−1でNGIに放出した。エアロゾル化後にNGI装置を取り除き、アクチュエータ及びNGIの各部を体積が既知であるHPLC移動相に洗い流した.NGIの各部に沈着した薬物の質量を、HPLCによって決定した。このプロトコルを各キャニスタについて3回繰り返し、続いて、微粒子量(fine particle dose)(FPD)及び放出量の微粒子フラクション(FPF
ED)を決定した。
【0119】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、エアロゾル化研究後の薬物含有量を決定した(以下を参照のこと)。粒径5μmの250mmx4.6mm Hypersil ODS C
18カラム(Fisher、Loughborough)又は相当物をプロピオン酸フルチカゾンの分析に使用した。粒径3μmの50mmx4.6mm Nucleosil 100−3C
18HDカラム又は相当物を臭化グリコピロニウム及びインダカテロールの分析に使用した。
【0120】
カラムを、どの薬物を分析するかに応じて220nm及び235nmの波長で操作されるUV検出器に連結した。周囲温度でオートサンプラーを操作し、分析のために100μlの試料をカラムに注入した。クロマトグラフィー条件を以下の表1及び2に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0121】
結果を以下の表4〜6に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【0122】
上記の表4及び5のデータから明らかなように、微粒子量及び放出量の微粒子フラクションは、併用薬物製剤中の3種の薬物全てについて、HFA−134aに対して、噴射剤としてHFA−152aを使用した場合の方が有意に高いことは明らかである。このことは有用な薬物送達量の増加を表している。この改善された性能はまた、40℃及び75%相対湿度での1ヶ月間のストレス保存後で観察される。
【0123】
全ての薬物が約30%の微粒子フラクションを達成するHFA−134a製剤とは対照的に、HFA−152a製剤は45%〜50%の微粒子フラクションを送達する。したがって、HFA−152aは、3種の薬物全てについて劇的により効果的で効率的な送達をもたらし、それにより効果的な治療量を送達するために使用される薬物量を減少させ、治療費を減少させ、患者に悪影響となる口及び消化管を通った薬物の全身的な吸収の可能性を減少させるという有意な利益がもたらされる。
【0124】
さらに、HFA−134aベースの製剤のMMADは、臭化グリコピロニウムについて約2.6μm〜インダカテロールについて4.8μmの範囲であるが、HFA−152aによって送達される粒子は、2.9μm〜3.5μmの範囲の概ね同等のサイズを有する。3種の薬物全体についての粒径のこのより高い均一性は、3種の薬物すべてが標的肺組織に対して正しい比率で送達されることを確実にするのに極めて重要である。粒径の不一致は不均一な送達をもたらし得、それにより薬物沈着に差異が出て、薬物間の治療的相乗効果が低下する。したがって、データは、HFA−152aが特定の薬物及び異なる薬物間の両方において粒子凝集の程度を最小にするように作用することを示している。
【0125】
実施例2
HFA−134a及びHFA−152a中の臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びプロピオン酸フルチカゾンの安定性を、ゼロ時(T=0)と、コーティングされていないアルミニウム缶中、バルブを下げた状態で、40℃及び75%の相対湿度(RH)並びに25℃及び60%の相対湿度(RH)で1ヶ月間(T=1M)及び3ヶ月間(T=3M)貯蔵した後とで調べた。
【0126】
薬物製剤を上記の実施例1に記載した通りに調製し、上記の実施例1に記載したHPLC技術を使用して分析した。
【0127】
コーティングされていないアルミニウム缶中のHFA−152a及びHFA−134a中の臭化グリコピロニウム、インダカテロール、及びプロピオン酸フルチカゾンの併用薬物製剤の化学的安定性を調べた結果をそれぞれ、以下の表7〜12に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0128】
上記の表7〜12のデータから、HFA−134aではなくHFA−152aがエアロゾル化噴射剤として使用された場合、臭化グリコピロニウム、インダカテロール及びフルチカゾンプロピオネートは全て、加速試験(accelerated test)条件下で優れた化学的安定性を示すことが分かる。