特許第6781830号(P6781830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781830
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4704 20060101AFI20201026BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20201026BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20201026BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20201026BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20201026BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20201026BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   A61K31/4704
   A61K47/06
   A61K9/12
   A61K9/72
   A61K47/04
   A61K47/32
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/24
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P43/00 121
   A61K31/58
   A61K31/573
   A61K31/56
   A61M15/00 Z
【請求項の数】76
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-515269(P2019-515269)
(86)(22)【出願日】2017年9月18日
(65)【公表番号】特表2019-529430(P2019-529430A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】GB2017052757
(87)【国際公開番号】WO2018051128
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】1615910.5
(32)【優先日】2016年9月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1620516.3
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・コール
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェームズ・ノークス
【審査官】 古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−528470(JP,A)
【文献】 特表2014−505717(JP,A)
【文献】 特表2014−513146(JP,A)
【文献】 AAPS PharmSciTech,2014年,Vol.15, No.2,p.434-455
【文献】 「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素にかかる当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数」等の改正案の概要,環境省 経済産業省,2016年 2月 9日,p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61M 15/00
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)インダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物からなる薬物成分と、
(ii)少なくとも90重量%が1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である噴射剤成分と、を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超の水を含有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満の酸素を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超の酸素を含有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのインダカテロール化合物が、微粉化形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01〜2.5重量%から成る、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量%から成る、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記噴射剤成分の少なくとも99重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記噴射剤成分が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記噴射剤成分が、0.5〜10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物の少なくとも95重量%が、前記2つの成分(i)および(ii)からなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
極性賦形剤をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
極性賦形剤を含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
エタノールを含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
完全に前記2つの成分(i)および(ii)からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解から0.15重量%未満の不純物を生ずる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解から0.3重量%未満の不純物を生ずる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の少なくとも98.0重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器中で40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、前記組成物中に存在する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
懸濁液の形態である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記懸濁液中の薬物粒子が、前記HFA−152a含有噴射剤中の薬物粒子の完全分散後に沈殿するまでに少なくとも1.5分かかる、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
溶液の形態である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬組成物が、有孔微細構造体を含まない、請求項1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する、密封容器。
【請求項29】
コーティングされていないアルミニウム缶である、請求項28に記載の密封容器。
【請求項30】
定量噴霧式吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾル容器である、請求項28または請求項29に記載の密封容器。
【請求項31】
請求項30に記載の密封容器を備える、定量噴霧式吸入器(MDI)。
【請求項32】
呼吸器障害を患っているまたは患う可能性が高い患者を前記患者に治療有効量または予防有効量の薬剤を投与することにより治療するための薬剤の製造における、請求項1〜27のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項33】
前記呼吸器障害が、喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記薬剤が、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して前記患者に送達可能である、請求項32または33に記載の使用。
【請求項35】
噴射剤成分と、インダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項36】
前記医薬組成物の含水量を、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満に維持するように、前記医薬組成物の調製のための成分および条件を選択することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記得られた医薬組成物の酸素含有量が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つのインダカテロール化合物が、微粉化形態である、請求項35〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記薬物成分が、少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含む、請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾンからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、微粉化形態である、請求項39〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01〜2.5重量%から成り、かつ、前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量%から成る、請求項35〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記噴射剤成分の少なくとも90重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項35〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記噴射剤成分の少なくとも99重量%が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記噴射剤成分が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)である、請求項35〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記噴射剤成分が、0.5〜10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項44〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記医薬組成物の少なくとも95重量%が、前記薬物成分および前記噴射成分からなる、請求項35〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記医薬組成物が、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、請求項35〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
極性賦形剤をさらに含む、請求項35〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記医薬組成物が、極性賦形剤を含まない、請求項35〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記医薬組成物が、エタノールを含まない、請求項35〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記医薬組成物が、完全に前記薬物成分および前記噴射剤成分からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項57】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後、前記医薬組成物が、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解から0.15重量%未満の不純物を生ずる、請求項35〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後、前記医薬組成物が、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解から0.3重量%未満の不純物を生ずる、請求項35〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのインダカテロール化合物の少なくとも98.0重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、前記組成物中に存在する、請求項35〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記医薬組成物が、懸濁液の形態である、請求項35〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記医薬組成物が、溶液の形態である、請求項35〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記医薬組成物が、有孔微細構造体を含まない、請求項35〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記医薬組成物が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)を噴射剤として用いること以外は同じである医薬組成物と比較して、安定化される、請求項35〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
噴射剤成分と、前記噴射剤成分中に懸濁される、インダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の沈殿時間を増加させる方法であって、前記方法が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項65】
前記懸濁液中の薬物粒子が、前記HFA−152a含有噴射剤中の薬物粒子の完全分散後に沈殿するまでに少なくとも1.5分かかる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記医薬組成物の沈殿時間が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)を噴射剤として用いること以外は同じである医薬組成物と比較して、増加される、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
噴射剤成分と、インダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項68】
前記方法が、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の放出用量の少なくとも40重量%である前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の微粒子フラクションを得る、医薬組成物を提供する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
噴射剤成分と、インダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む、医薬組成物の貯蔵後のエアロゾル化性能を改善する方法であって、前記方法が、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項70】
前記方法が、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後でさえ、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の放出用量の少なくとも30重量%である前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の微粒子フラクションを得る、医薬組成物を提供する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記医薬組成物のエアロゾル化性能が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)を噴射剤として用いること以外は同じである医薬組成物と比較して、改善される、請求項67〜70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記医薬組成物が、請求項1〜27のいずれか一項に記載される組成物である、請求項64〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
定量噴霧式吸入器から送達されたときに、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の放出用量の少なくとも40重量%である前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の微粒子フラクションを得る、請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
定量噴霧式吸入器から送達されたときに、40℃および75%の相対湿度で3カ月間貯蔵された後でも、前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の放出用量の少なくとも30重量%である前記少なくとも1つのインダカテロール化合物の微粒子フラクションを得る、請求項1〜27および73のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記加圧エアロゾル容器に取り付けられたノズルおよびバルブアセンブリと、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、およびシクロオレフィンコポリマーゴムから選択されるエラストマー材料製の、前記容器と前記ノズル/バルブアセンブリとの間に密封を提供するためのガスケットと、を備える、請求項31に記載の定量噴霧式吸入器。
【請求項76】
酸安定剤を含まない、請求項1〜19、21〜27、73、および74のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤を使用する定量噴霧式吸入器(MDI)などの医療用デバイスからの薬物製剤の送達に関する。より具体的には、本発明は、HFA−152aの噴射剤および噴射剤中に溶解または懸濁された薬物製剤を含む医薬組成物、ならびにそれらの組成物を含有する医療用デバイスに関する。本発明の医薬組成物は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用する加圧エアロゾル容器からの送達に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
MDIは、吸入薬物送達系の最も重要な種類であり、当業者には周知である。MDIは、薬物が溶解、懸濁、または分散された液化噴射剤を用いて、別個の正確な量の薬物を患者の気道に必要に応じて送達するように設計される。MDIの設計および操作は、多くの標準テキストおよび特許文献に記載されている。これらは全て、薬物製剤を収容する加圧容器、ノズル、および起動時に制御された量の薬物を、ノズルを通して分注することができるバルブアセンブリを備える。ノズルおよびバルブアセンブリは、典型的には、マウスピースを備え付けた筐体の中に位置する。薬物製剤は、薬物が溶解、懸濁、または分散した噴射剤を含み、極性賦形剤、界面活性剤、および防腐剤などの他の物質を含有してもよい、噴射剤を含むであろう。
【0003】
噴射剤をMDI中で十分に機能させるためには、噴射剤がいくつかの特性を有する必要がある。これらは、適切な沸点および蒸気圧を含むことで、室温の閉鎖された容器中で液化し得るが、周囲温度が低くても、MDIを起動して薬物を噴霧製剤として送達するときに十分な高圧を生じさせるようにする。さらに、噴射剤は、急性および慢性毒性が低く、心臓感作に対する許容限界が高くなければならない。噴射剤は、薬物、容器、ならびにMDIデバイスの金属および非金属構成要素との接触において化学的安定性が高く、MDIデバイス中の任意のエラストマー材料から低分子量物質を抽出する(extract)傾向が低くなければならない。噴射剤はまた、使用時に薬物の再現性ある送達を可能にするように、均一な溶液、安定した懸濁液、または安定した分散液中に充分な時間、薬物を維持することが可能でなければならない。薬物が、噴射剤中の懸濁液の中にある場合、液体噴射剤の密度は、液体における薬物粒子の急激な沈降または浮上を避けるために、固体薬物の密度に望ましく類似している。最後に、噴射剤は、使用中の患者に重大な燃焼リスクを示すべきでない。特に、気道中で空気と混ざったときに、不燃性であるかまたは可燃性の低い混合物が形成されなければならない。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(R−12)が、特性の好適な組み合わせを保有し、長年、最も広く使用されているMDI噴射剤(トリクロロフルオロメタン(R−11)と混合されることが多い)であった。ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロフルオロメタンなどの完全におよび部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン(CFC)が地球の保護オゾン層を破壊しているという国際的な懸念から、多くの国がモントリオール議定書の協定を締結し、その製造および使用を厳しく制限し、最終的には完全に廃止すると規定した。ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロフルオロメタンは、冷凍用途では1990年代に廃止されたが、MDIセクターにおいては、モントリオール議定書における必須用途のための例外を受けて、依然として少量で使用されている。
【0005】
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)は、R−12の代わりの冷媒およびMDI噴射剤として導入された。1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227ea)はまた、MDIの分野においてジクロロテトラフルオロエタン(R−114)の代替の噴射剤として導入され、この用途のために、場合によっては単独でまたはHFA−134aと混合して使用される。
【0006】
HFA−134aおよびHFA−227eaは低いオゾン破壊係数(ODP)を有するが、それぞれ1430および3220の地球温暖化係数(GWP)を有し、これは、特にそれらが大気中に放出される場合の散布的な使用に関しては、現在では一部の規制団体によっては高すぎるとみなされている。
【0007】
最近、特に注目を集めている1つの工業分野は、European Mobile Air Conditioning Directive(2006/40/EC)の結果としてHFA−134aの使用が規制管理下となっている、自動車用空調セクターである。産業界は、自動車用空調および他の用途における、低い温室効果温暖化係数(GWP)およびオゾン破壊係数(ODP)を有するHFA−134aの多くの可能性ある代替手段を開発している。これらの代替手段の多くは、ヒドロフルオロプロペン、特に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)などのテトラフルオロプロペンを含む。
【0008】
提案されているHFA−134aに対する代替手段は低いGWPを有するが、成分の多く(例えば、フルオロプロペンのうちのいくつか)の毒素学上の性状は不明であり、仮に使用されたとしてもMDIの分野における使用について長年に渡って許容される可能性は低い。
【0009】
インダカテロール(5−[(1R)−2−[(5,6−ジエチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン)は、多数の呼吸器関連傷害であるが、特に慢性閉塞性肺障害(COPD)の治療および管理に使用される長時間作用型β−2アゴニスト(LABA)である。インダカテロール治療は非常に効果的であるが、これらの治療の多くにおけるインダカテロールの性能は、グルコピロニウムブロミド(3−[2−シクロペンチル(ヒドロキシ)フェニルアセトキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミド)(グリコピロレート)などの長時間作用型ムスカリン性アゴニスト(LAMA)と組み合わせて投与することによって改善され得る。
【0010】
残念ながら、インダカテロールをMDIを用いて送達に好適な形態で製剤化することは、その物理的および化学的安定性が制限されていることに起因して、困難であることが立証されている。結果として、市販の吸入製品は現在、薬物が薬学的に許容される固体担体上に分散され、乾燥粉末送達デバイスを使用して噴射剤なしで肺に送達される乾燥粉末送達技術を利用する。
【0011】
MDIを使用して送達することができ、HFA−134aおよびHFA−227eaと比較してGWPが低下した噴射剤を使用する、インダカテロールの医薬組成物が必要とされている。改善された安定性を示すインダカテロールの医薬組成物もまた必要とされている。
【発明の開示】
【0012】
1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤を使用することによって、特に製剤が少量の水を含有する場合に、MDIにおけるインダカテロールベースの製剤の使用に関連する問題を克服できることを見出した。これらの製剤は、化学的安定性の改善、薬物送達の改善のためのエアロゾル化(aerosolisation)性能の改善、良好な懸濁安定性、GWPの低下、標準的なコーティングされていないアルミニウム缶との良好な適合性、ならびに標準的なバルブおよび密封(seal)との良好な適合性を示すことができる。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液が提供され、該組成物は、
(i)インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0014】
本発明の第1の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量を基準として、500ppm未満の水を含有する。特に、医薬組成物が、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有するときに、化学的安定性の改善が観察される。医薬組成物の含水量について言及する場合、組成物中の自由水(free water)の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水(hydrated)薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第1の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含み、
医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は酸素を含まない。あるいは、第1の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含み、
組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の酸素を含有する。
【0018】
本発明の医薬組成物は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して気道に送達するのに好適である。
【0019】
本明細書に開示される全ての態様および実施形態における本発明の医薬組成物中の少なくとも1つのインダカテロール化合物は、好ましくは、微粉化形態である。さらに、本明細書に開示される全ての態様および実施形態における本発明の医薬組成物は、好ましくは、有孔微細構造体(perforated microstructure)を含まない。
【0020】
少なくとも1つのインダカテロール化合物は、噴射剤中に分散または懸濁させることができる。そのような懸濁液中の薬物粒子は、好ましくは、直径100ミクロン未満、例えば、50ミクロン未満である。好ましい実施形態では、懸濁液中の薬物粒子は、3ミクロン未満の直径を有する。
【0021】
代替の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えばエタノールなどの極性賦形剤の補助により噴射剤に溶解された、少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む溶液である。
【0022】
インダカテロールの好適な薬学的に許容される誘導体には、とりわけ、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される水和物、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される塩の溶媒和物、薬学的に許容されるプロドラッグの溶媒和物、薬学的に許容される塩の水和物、および薬学的に許容されるプロドラッグの水和物が含まれる。インダカテロールの好ましい薬学的に許容される誘導体は、その薬学的に許容される塩、特にマレイン酸インダカテロールである。特に好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物中の少なくとも1つのインダカテロール化合物は、インダカテロール自体またはマレイン酸インダカテロールである。
【0023】
したがって、本発明の上記の医薬組成物では、少なくとも1つのインダカテロール化合物は、好ましくは、インダカテロール自体またはマレイン酸インダカテロールから選択されるのが好ましい。
【0024】
本発明の第1の態様の医薬組成物中の薬物成分の量は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、0.01〜2.5重量%の範囲であろう。好ましくは、薬物成分は、医薬組成物の総重量の0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜2.0重量%、特に0.05〜1.5重量%を構成するであろう。薬物成分は、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、グリコピロレートおよび/または少なくとも1つのコルチコステロイドなどの他の薬物を含んでもよい。
【0025】
本発明の第1の態様の医薬組成物中の噴射剤成分は、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む。したがって、噴射剤成分がHFA−152aに加えて他の噴射剤化合物を含み得る可能性を除外しない。例えば、噴射剤成分は、例えば、HFA−227ea、HFA−134a、ジフルオロメタン(HFA−32)、プロパン、ブタン、イソブタン、およびジメチルエーテルから選択される1つ以上の追加のヒドロフルオロカーボンまたは炭化水素噴射剤化合物をさらに含んでもよい。好ましい追加の噴射剤は、HFA−227eaおよびHFA−134aである。
【0026】
HFA−134aまたはHFA−227eaなどの追加の噴射剤化合物を含む場合、噴射剤成分の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは50重量%がHFA−152aでなければならない。典型的には、HFA−152aは、噴射剤成分の少なくとも90重量%、例えば90〜99重量%を構成するであろう。好ましくは、HFA−152aは、噴射剤成分の少なくとも95重量%、例えば95〜99重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を構成するであろう。
【0027】
好ましい実施形態では、噴射剤成分は、250未満、より好ましくは200未満、さらにより好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する。
【0028】
特に好ましい実施形態では、噴射剤成分は、HFA−152aから完全になり、したがって本発明の医薬組成物は、唯一の噴射剤としてHFA−152aを含む。「から完全になる」という用語は、言うまでもなく、HFA−152aの製造に使用されるプロセスの後に存在し得る少量の、例えば、最大で数百ppmの不純物の存在を除外しないが、但し、それらが医療用途における噴射剤の安定性に影響しないことを条件とする。好ましくは、HFA−152aの噴射剤は、10ppm以下、例えば0.5〜10ppm、より好ましくは5ppm以下、例えば1〜5ppmの不飽和不純物、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、およびクロロ−フルオロエチレン化合物を含有する。
【0029】
本発明の医薬組成物中の噴射剤成分の量は、医薬組成物中の薬物および他の成分の量に応じて変わるであろう。典型的には、噴射剤成分は、医薬組成物の総重量の80.0〜99.99重量%を構成するであろう。好ましくは、噴射剤成分は、医薬組成物の総重量の90.0〜99.99重量%、より好ましくは96.5〜99.99重量%、特に97.5〜99.95重量%を構成するであろう。
【0030】
一実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、上記で列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0031】
別の実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、エタノールなどの極性賦形剤をさらに含む。極性賦形剤は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して送達される呼吸器障害を治療するための医薬組成物中でこれまでに使用されている。これらはまた、溶媒、共溶媒、担体溶媒、およびアジュバントとも称される。これらを含めることで、界面活性剤または薬物が噴射剤に可溶化し、および/または医薬組成物が保存されている容器からノズル出口に該組成物が通過する際に該組成物が接触する定量噴霧式吸入器の表面上に薬物粒子の沈着を抑制するように作用し得る。これらはまた、薬物が好適な極性賦形剤と混合される2段階充填プロセスにおいて増量剤として使用される。最も一般的に使用される極性賦形剤は、エタノールである。極性賦形剤を使用する場合、極性賦形剤は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、0.5〜10重量%の量、好ましくは1〜5重量%の量で存在する。
【0032】
好ましい一実施形態では、本発明の医薬組成物は、エタノールなどの極性賦形剤を含まない。
【0033】
本発明の第1の態様の医薬組成物はまた、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分を含んでもよい。MDIの薬学的製剤でこれまで使用されてきた種類の界面活性剤化合物を、本発明の医薬組成物において使用することができる。好ましい界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される。オレイン酸という用語は、必ずしも純粋な(9Z)−オクタデカ−9−エン酸を指すものではない。医療用途における界面活性剤としての使用のために販売される場合、オレイン酸は典型的にはいくつかの脂肪酸の混合物であり、(9Z)−オクタデカ−9−エン酸がその主な脂肪酸であり、例えば、界面活性剤の総重量に基づいて少なくとも65重量%で存在する。
【0034】
好ましい実施形態では、界面活性剤成分は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、オレイン酸、およびレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物から本質的になり、さらにより好ましくはそれから完全になる。特に好ましい実施形態では、界面活性剤成分は、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つの界面活性剤から本質的になり、さらにより好ましくはそれから完全になる。「から本質的になる」という用語は、界面活性剤成分の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、列挙した界面活性剤からなることを意味する。
【0035】
界面活性剤成分を使用する場合、該成分は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、0.1〜2.5重量%の量、好ましくは0.2〜1.5重量%の量で存在する。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、有機酸および無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0037】
本発明の医薬組成物は、グリコピロレートの薬学的に許容される塩(グリコピロニウムとしても知られる)も含み得る。グリコピロレートは、四級アンモニウム塩である。好適な対イオンには、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、p−クロロ安息香酸塩、ジフェニル酢酸塩、またはトリフェニル酢酸塩、o−ヒドロキシ安息香酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸塩、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、およびベンゼンスルホン酸塩が含まれる、薬学的に許容される対イオンである。好ましい化合物は、臭化グリコピロニウムとしても知られるグリコピロレートの臭化物塩である。
【0038】
したがって、本発明の第2の態様は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体、特にインダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物と、少なくとも1つのグリコピロレートの薬学的に許容される塩、特に臭化グリコピロニウムと、を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0039】
本発明の第2の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましくは、本発明の第2の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA−152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られ得ることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第2の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、酸素を含まない。あるいは、第2の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0041】
好ましいインダカテロール化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じたとおりである。
【0042】
本発明の第2の態様の医薬組成物中の薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。薬物成分は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物および少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩からなることを意味する。
【0043】
一実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、上記に列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0044】
別の実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0045】
本発明の第2の態様の特に好ましい実施形態では、薬物成分は、臭化グリコピロニウムと組み合わせたインダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む。好ましくは、少なくとも1つの選択されたインダカテロール化合物および臭化グリコピロニウムは、本発明の第2の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0046】
本発明の医薬組成物はまた、コルチコステロイドも含む。喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用され、MDIを使用して送達することができるコルチコステロイドのいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適なコルチコステロイドには、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、およびフルチカゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、特にそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。好ましい化合物には、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンが挙げられる。最も好ましいコルチコステロイドは、ブデソニド、モメタゾン、フルチカゾン、およびベクロメタゾン、特にブデソニドおよびモメタゾン、とりわけブデソニドである。
【0047】
したがって、本発明の第3の態様は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体、特にインダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物と、少なくとも1つのコルチコステロイド、特にフルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、およびベクロメタゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つのコルチコステロイド、とりわけブデソニドと、を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0048】
本発明の第3の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましくは、本発明の第3の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA−152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られ得ることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第3の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、酸素を含まない。あるいは、第3の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0050】
好ましいインダカテロール化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じたとおりである。
【0051】
本発明の第3の態様の医薬組成物中の薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。薬物成分は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および少なくとも1つのコルチコステロイドから本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物および少なくとも1つのコルチコステロイドからなることを意味する。
【0052】
一実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、上記に列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0053】
別の実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0054】
本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態では、薬物成分は、ブデソニドと組み合わせたインダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む。好ましくは、少なくとも1つの選択されたインダカテロール化合物およびブデソニドは、本発明の第3の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0055】
本発明の医薬組成物は、グリコピロレート塩およびコルチコステロイドも含み得る。上記に論じられるグリコピロレート塩およびコルチコステロイドのいずれも使用することができる。好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第2の態様について上記で論じたとおりである。好適かつ好ましいコルチコステロイドは、本発明の第3の態様について上記で論じたとおりである。
【0056】
したがって、本発明の第4の態様は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体、特にインダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩、特に臭化グリコピロニウムと、少なくとも1つのコルチコステロイド、特にフルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、およびベクロメタゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つのコルチコステロイド、とりわけブデソニドと、を含む薬物成分と、
(ii)1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0057】
本発明の第4の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。本発明のこの第4の態様では、医薬組成物は、好ましくは、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA−152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られ得ることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第4の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記の量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、酸素を含まない。あるいは、第4の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記の量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0059】
好ましいインダカテロール化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じたとおりである。
【0060】
本発明の第4の態様の医薬組成物中の薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。薬物成分は、少なくとも1つのインダカテロール化合物、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩、および少なくとも1つのコルチコステロイドから本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩、および少なくとも1つのコルチコステロイドからなることを意味する。
【0061】
一実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、上記で列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0062】
別の実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0063】
本発明の第4の態様の特に好ましい実施形態では、薬物成分は、インダカテロールおよびマレイン酸インダカテロールから選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物、臭化グリコピロニウム、ならびにブデソニドを含む。好ましくは、少なくとも1つの選択されたインダカテロール化合物、臭化グリコピロニウム、およびブデソニドは、本発明の第4の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0064】
インダカテロール自体またはマレイン酸インダカテロールなどのインダカテロール化合物と、噴射剤と、を含有する医薬組成物における1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤の使用は、噴射剤としてHFA−134aまたはHFA−227eaのいずれかを含有する製剤で示す安定性と比較して、インダカテロール化合物の安定性を予想外に改善することができることが見出された。
【0065】
したがって、本発明の第5の態様では、噴射剤成分と、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法を提供する。
【0066】
本発明の第5の態様の安定化方法における医薬組成物は、懸濁液または溶液であってもよい。
【0067】
特に、医薬組成物が、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する場合、化学的安定性の改善をもたらすことができる。医薬組成物の含水量について言及する場合、組成物中の自由水含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、水を含まない。あるいは、本発明の第5の態様で記述した医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いで組成物をそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0068】
したがって、本発明の第5の態様の好ましい実施形態では、噴射剤成分と、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することと、医薬組成物の含水量を、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満に維持するように、医薬組成物の調製のための成分および条件を選択することと、を含む、方法を提供する。
【0069】
実際には、上記で述べた低い水分レベルの医薬組成物の調製には、噴射剤成分が通常は最終デバイスにおいて最大の質量であるので、好適に低い含水量の噴射剤成分を使用し、次いで医薬組成物を好適に乾燥された条件下、例えば乾燥窒素雰囲気下で調製することを伴う。乾燥条件下での医薬組成物の調製は周知であり、関与する技術は当業者に十分に理解されている。最終デバイスにおいて低い含水量を得るための他の工程には、デバイスの組み立て前および組み立て中に、缶およびバルブ構成部品を、湿度制御された雰囲気中、例えば乾燥窒素または空気中で乾燥し、保存することが含まれる。医薬組成物が有意な量のエタノールを含有する場合、エタノールおよび噴射剤の含水量を、例えば含水量を好適に低いレベルまで低下するように乾燥させることによって制御することが重要であり得る。好適な乾燥技術は当業者には周知であり、モレキュラーシーブまたは他の無機乾燥剤および膜乾燥プロセスの使用を含む。
【0070】
本発明の第5の態様の安定化方法では、好適かつ好ましいインダカテロール化合物およびその誘導体は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で記載したとおりである。加えて、本発明の第5の態様の安定化方法における薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0071】
本発明の第5の態様の安定化方法における薬物成分は、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物から本質的になるか、またはそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩(以下、便宜上グリコピロレート塩ともいう)をさらに含み得る。コルチコステロイドおよび/またはグリコピロレート塩が含まれる場合、好適かつ好ましいコルチコステロイドおよび好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第2および第3の態様の医薬組成物について上記で記載したとおりである。
【0072】
一実施形態では、本発明の第5の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分および噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0073】
代替の実施形態では、本発明の第5の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0074】
1つの好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解からの不純物を、0.25重量%未満、好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満生むことになる。
【0075】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩も含む、別の好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解からの不純物を、0.25重量%未満、好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満生むことになる。
【0076】
さらに好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解からの不純物を、0.3重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満生むことになる。
【0077】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩も含む、別の好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解からの不純物を、0.3重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満生むことになる。
【0078】
さらに別の好ましい安定化方法では、調製直後の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのインダカテロール化合物の少なくとも98.0重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に組成物中に存在する。
【0079】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩も含む、さらに別の好ましい安定化方法では、調製直後の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのインダカテロール化合物の少なくとも98.0重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に組成物中に存在する。
【0080】
さらに好ましい安定化方法では、組成物の最初の薬学的活性の少なくとも98.0%、好ましくは少なくとも98.5%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存された後に保持される。
【0081】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様の1つの好ましい医薬組成物は、40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後に、少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解からの総不純物を0.25重量%未満、好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満生むことになる。
【0082】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様の別の好ましい医薬組成物は、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、少なくとも1つのインダカテロール化合物の分解からの総不純物を0.3重量%未満、好ましくは0.25重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満生むことになる。
【0083】
上記で示した不純物の重量%は、少なくとも1つのインダカテロール化合物および不純物の総重量に基づいている。
【0084】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様のさらに好ましい医薬組成物では、調製直後の本発明の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのインダカテロール化合物の少なくとも98.0重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に組成物中に存在する。
【0085】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様のさらに別の好ましい医薬組成物では、本発明の医薬組成物の最初の薬学的活性の少なくとも98.0%、好ましくは少なくとも98.5%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に保持される。
【0086】
上記の安定化方法における医薬組成物の保存について言及する場合、特に、コーティングされていないアルミニウム容器中でのそれらの組成物の保存を指す。同様に、上記の医薬組成物の保存について言及する場合、特に、コーティングされていないアルミニウム容器中でのそれらの保存を指す。
【0087】
噴射剤中に分散または懸濁されるインダカテロール化合物を含有する医薬組成物中に、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤の使用は、HFA−134aまたはHFA−227eaのいずれかが噴射剤として使用されるときに観察される沈殿時間と比較して、噴射剤中に完全に分散された後に微粒子薬物が沈殿するまでにかかる時間を予想外に増加させ得ることが見出された。
【0088】
したがって、本発明の第6の態様では、噴射剤成分と、この噴射剤成分中に懸濁される、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の沈殿時間を増加させる方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法を提供する。
【0089】
本発明の第6の態様の好ましい一実施形態では、沈殿時間は、HFA−152aを含有する噴射剤中に完全に分散させた後、少なくとも1.5分、より好ましくは少なくとも1.8分である。
【0090】
本発明の第6の態様の方法では、好適かつ好ましいインダカテロール化合物およびその誘導体は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第6の態様の方法において典型的かつ好ましい量の薬物成分および噴射剤成分、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0091】
本発明の第6の態様の方法における薬物成分は、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物から本質的になるか、またはそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩(グリコピロレート塩)をさらに含み得る。コルチコステロイドおよび/またはグリコピロレート塩が含まれる場合、好適かつ好ましいコルチコステロイドおよび好適かつ好ましいグリコピロレート塩は、本発明の第2および第3の態様の医薬組成物について上記のとおりである。
【0092】
一実施形態では、本発明の第6の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分および噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0093】
代替の実施形態では、本発明の第6の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0094】
定量噴霧式吸入器を使用して送達されるように設計されたインダカテロールまたはマレイン酸インダカテロールなどのインダカテロール化合物を含有する医薬組成物における1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤の使用は、HFA−134aまたはHFA−227eaのいずれかを噴射剤として使用したときに観察される性能と比較して、その組成物が定量噴霧式吸入器から送達されたときに、医薬組成物のエアロゾル化性能を予想外に改善することできることが見出された。特に、放出用量のインダカテロール化合物の微粒子フリクションは、典型的には、放出用量のインダカテロール化合物の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%を含む。本明細書には、特に、医薬組成物がMDIキャニスタに充填された直後、および任意の長期保存前に観察される放出用量について言及している。
【0095】
したがって、本発明の第7の態様では、噴射剤成分と、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法を提供する。
【0096】
本発明の第7の態様の方法における医薬組成物は、懸濁液または溶液であってもよい。
【0097】
本発明の第7の態様の好ましい実施形態では、噴射剤成分と、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することと、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、少なくとも1つのインダカテロール化合物の放出用量の少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%である少なくとも1つのインダカテロール化合物の微粒子フリクションを生ずる医薬組成物を提供することと、を含む方法を提供する。
【0098】
放出用量の微粒子フリクションを増加させることは、肺の深い細気管支経路および肺胞経路に浸透して、喘息発作またはCOPDの作用の軽減を最大化することができる、微細薬物粒子であるため、非常に有益である。
【0099】
微粒子フリクションは、当該技術分野において広く認識された用語である。これは、5μmを下回る直径を有する放出されたエアロゾル粒子の質量分率の尺度であり、有効な肺胞薬物送達のために最も望ましい粒径範囲であると一般に受け入れられている。
【0100】
本発明の第7の態様の方法では、好適かつ好ましいインダカテロール化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第7の態様の方法において典型的かつ好ましい量の薬物成分および噴射剤成分、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0101】
本発明の第7の態様の方法における薬物成分は、インダカテロールまたはマレイン酸インダカテロールなどの少なくとも1つのインダカテロール化合物から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩および/または少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含み得る。グリコピロレート塩および/またはコルチコステロイドが含まれる場合、好適かつ好ましいグリコピロレート塩および好適かつ好ましいコルチコステロイドは、本発明の第2および第3の態様の医薬組成物について上記のとおりである。
【0102】
一実施形態では、本発明の第7の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分および噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0103】
代替の実施形態では、本発明の第7の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0104】
定量噴霧式吸入器を使用して送達されるように設計されたインダカテロールまたはマレイン酸インダカテロールなどのインダカテロール化合物を含有する医薬組成物における1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤の使用はまた、HFA−134aまたはHFA−227eaのいずれかを噴射剤として使用したときに観察される性能と比較して、その組成物が定量噴霧式吸入器から送達されたときに貯蔵された後、医薬組成物のエアロゾル化性能を予想外に改善することできることが見出された。特に、医薬組成物を40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後の放出用量におけるインダカテロール化合物の微粒子フリクションは、放出用量のインダカテロール化合物の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%である。
【0105】
したがって、本発明の第8の態様では、噴射剤成分と、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の保存後のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法を提供する。
【0106】
本発明の第8の態様の方法における医薬組成物は、懸濁液または溶液であってもよい。
【0107】
本発明の第8の態様の好ましい実施形態では、噴射剤成分と、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の保存後のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することと、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、医薬組成物を40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後でさえ、少なくとも1つのインダカテロール化合物の放出用量の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%である少なくとも1つのインダカテロール化合物の微粒子フリクションを生ずる医薬組成物を提供することと、を含む、方法を提供する。
【0108】
長期保存後の放出用量の微粒子フリクションを増加させることは、非常に有益である。上で説明したとおり、これは、肺の深い細気管支経路および肺胞経路に浸透して、喘息発作またはCOPDの作用の軽減を最大化することができる、微細薬物粒子である。したがって、保存後に高い微粒子フリクションを保持することは、医薬組成物が最初に製造されてから相当の期間が経過したとしても、MDIの使用者が、依然として医学的に満足な用量の薬物を受け取るはずであることを意味する。
【0109】
本発明の第8の態様の方法では、好適かつ好ましいインダカテロール化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第8の態様の方法において典型的かつ好ましい量の薬物成分および噴射剤成分、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0110】
本発明の第8の態様の方法における薬物成分は、インダカテロールまたはマレイン酸インダカテロールなどの少なくとも1つのインダカテロール化合物から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのインダカテロール化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つの薬学的に許容されるグリコピロレート塩および/または少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含み得る。グリコピロレート塩および/またはコルチコステロイドが含まれる場合、好適かつ好ましいグリコピロレート塩および好適かつ好ましいコルチコステロイドは、本発明の第2および第3の態様の医薬組成物について上記のとおりである。
【0111】
一実施形態では、本発明の第8の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分および噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0112】
代替の実施形態では、本発明の第8の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0113】
本発明の医薬組成物は、例えば定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して、加圧エアロゾル容器からインダカテロール化合物、ならびに、含む場合にはコルチコステロイドおよびグリコピロレート塩の送達に特に有用である。この用途のために、医薬組成物を加圧エアロゾル容器中に含有し、HFA−152a噴射剤は微細なエアロゾルスプレーとして薬物を送達する働きをする。
【0114】
本発明の医薬組成物は、バルブ潤滑剤などの加圧MDI用の薬物製剤中で従来使用される種類の1つ以上の他の添加物を含んでもよい。他の添加物を医薬組成物中に含む場合、それらは、通常、当該技術分野における慣例的な量で使用される。
【0115】
本発明の医薬組成物は、通常、薬剤送達デバイスに関連して使用される加圧容器またはキャニスタ中で保存される。そのように保存されるとき、医薬組成物は、通常、液体である。好ましい実施形態では、加圧容器は、定量噴霧式吸入器(MDI)での使用のために設計される。特に好ましい実施形態では、加圧容器は、コーティングされたアルミニウム缶またはコーティングされていないアルミニウム缶、特に後者である。
【0116】
したがって、本発明の第9の態様は、本発明の第1、第2、第3、または第4の態様の医薬組成物を収容する加圧容器を提供する。第10の態様では、本発明は、本発明の第1、第2、第3、または第4の態様の医薬組成物を収容する加圧容器を有する薬剤送達デバイス、特に定量噴霧式吸入器を提供する。
【0117】
定量噴霧式吸入器は、典型的には、分注される医薬組成物を収容する容器に固着される(crimped)ノズルおよびバルブアセンブリを備える。エラストマーガスケットを使用して、容器とノズル/バルブアセンブリとの間に密封をもたらす。好ましいエラストマーガスケット材料は、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、およびシクロオレフィンコポリマーゴムであり、その理由は、これらがHFA−152aと良好な適合性を示し、またHFA−152aが容器から透過するのを防止または制限する良好なバリアを提供し得るからである。
【0118】
本発明の医薬組成物は、呼吸器障害、特に喘息もしくは慢性閉塞性肺疾患を患っているか、または患う可能性が高い患者を治療するための医薬品において使用される。
【0119】
したがって、本発明はまた、呼吸器障害、特に喘息もしくは慢性閉塞性肺疾患を患っているか、または患う可能性が高い患者を治療するための方法であって、患者に治療有効量または予防有効量の上記で論じた医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。医薬組成物は、好ましくは、MDIを使用して患者に送達される。
【0120】
本発明の医薬組成物を調製し、圧力充填および冷却充填などの当該技術分野において標準とされる技術を使用して、MDIデバイスを充填することができる。例えば、医薬組成物は、少なくとも1つのインダカテロール化合物、任意に、少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つのグリコピロレート塩、任意に、界面活性剤成分、ならびにHFA−152aを含有する噴射剤を必要な割合で好適な混合容器中で一緒に混合するという簡単な混合操作により調製することができる。混合は、当該技術分野で一般的であるように、撹拌によって促進することができる。好都合には、HFA−152aを含有する噴射剤を液化して、混合を助長する。医薬組成物を別々の混合容器中で作製する場合、該医薬組成物を、薬剤送達デバイス、特にMDIの一部として使用される加圧容器などの保存用加圧容器に移すことができる。
【0121】
本発明の医薬組成物はまた、エアロゾルキャニスタまたはバイアルなどの閉ざされた空間内で調製することができ、最終的にここから組成物がMDIなどの薬剤送達デバイスを使用してエアロゾルスプレーとして放出される。この方法では、秤量した量の少なくとも1つのインダカテロール化合物、任意に、少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つのグリコピロレート塩を蓋のない(open)容器に入れる。次いで、バルブを容器に固着し、任意に、まずバルブを通して容器を排気した後、液体形態のHFA−152aを含有する噴射剤成分をバルブを通して圧力下で容器に入れる。界面活性剤成分は、含める場合には薬物(複数可)と混合してもよく、あるいは単独でまたは噴射剤成分との予備混合物(premix)としてのいずれかでバルブを装着した後に容器に入れることができる。次いで、混合物全体を、例えば激しい撹拌または超音波槽を使用することによって処理し、噴射剤/界面活性剤の混合物中に薬物を分散させることができる。好適な容器は、プラスチック、金属、例えば、アルミニウム、またはガラスで作製され得る。好ましい容器は、金属、特に、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよいアルミニウムで作製される。コーティングされていないアルミニウム容器が特に好ましい。
【0122】
容器には、複数の用量を提供するのに十分な医薬組成物が充填され得る。MDI中で使用される加圧エアロゾルキャニスタは、典型的には、50〜150回の個別用量を含有する。
【0123】
本発明はまた、インダカテロールおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのインダカテロール化合物を含む薬物成分と、噴射剤成分と、を含む医薬組成物の地球温暖化係数(GWP)を低下させる方法であって、1,1−ジフルオロエタン(HFA−152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法も提供する。この方法は、全ての態様および実施形態における本明細書に開示される全ての医薬組成物の調製に適用可能である。
【0124】
好ましくは、使用される噴射剤成分の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%が、HFA−152aである。特に好ましい実施形態では、使用される噴射剤成分は、完全にHFA−152aである。
【0125】
使用される噴射剤成分は、好ましくは250未満、より好ましくは200未満、さらにより好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有するであろう。
【実施例】
【0126】
本発明をこれから以下の実施例によって例示するが、本発明は該実施例により限定されるものではない。
【0127】
実施例1
初期調製後、およびストレス保存条件下で貯蔵された後に、HFA−134aまたはHFA−152aのいずれかを噴射剤として使用して、定量噴霧式吸入器(MDI)から送達されるインダカテロールの薬学的製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を調査するために、いくつかの実験が行われた。
【0128】
インダカテロールの薬学的製剤を、HFA−134aまたはHFA−152a(Mexichem、UK)のいずれかで調製した。薬物を、標準的なコーティングされていない14mlのアルミニウムキャニスタ(C128、Presspart、Blackburn、UK)に直接秤量した。インダカテロールの公称用量は、100μgであった。次いで、キャニスタに50μLのバルブ(Bespak、Kings Lynn、UK)を固着し、続いて、手動Pamasolクリンパ(crimper)/充填機(Pamasol、Switzerland)を使用して、噴射剤をバルブを通してキャニスタに充填した。最後に、キャニスタを20分間超音波処理して、懸濁液中の薬物の分散を助長した。
【0129】
製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を、Next Generation Impactorを使用して、下記の方法を用いて調製直後(時間t=0)に試験した。次いで、製剤を、ストレス保存条件下(バルブを下げて)、40℃および75%の相対湿度で1カ月間および3カ月貯蔵された。ストレス保存条件下で1カ月間および3カ月貯蔵された後、薬学的製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を、下記の方法を用いて、前述のとおりにNext Generation Impactorを使用して再度試験した。
【0130】
Next Generation Impactor(NGI、Copley Scientific、Nottingham UK)を、真空ポンプ(GE Motors、NJ、USA)に接続した。試験前に、NGIシステムのカップを、ヘキサン中の1%v/vシリコーン油でコーティングして、粒子の反発をなくした。各実験について、バルブを3回作動させて、薬局方ガイドラインに従い、30L.分−1でNGIに放出した。エアロゾル化後にNGI装置を取り除き、アクチュエータおよびNGIの各部を体積が既知であるHPLC移動相に洗い流した。NGIの各部品に沈着した薬物の質量を、HPLCによって決定した。このプロトコルを各キャニスタについて3回繰り返し、続いて、微粒子量(FPD)および放出用量の微粒子フリクション(FPFED)を決定した。
【0131】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、エアロゾル化研究後の薬物含有量を決定した。分析には、粒径が3.0μmの50mm×4.6mmのNucleosil 100−3 C18カラムを使用した。カラムを、220nmの波長で操作されるUV検出器に連結した。オートサンプラを5℃で動作させ、分析のために100μlの試料をカラムに注射した。クロマトグラフィー条件を以下の表1および2に示す。
【表1】
【0132】
移動相の組成物は、以下の表2に示されるように変化した。
【表2】
【0133】
結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0134】
HFA−152aをインダカテロールを送達するための噴射剤として使用した場合、微粒子用量および放出用量の微粒子フリクションは、HFA−134aと比較してかなり高いことが、上記の表3のデータから見ることができる。加えて、HFA−134aを噴射剤として使用した場合、薬学的製剤を、ストレス保存条件下、40℃および75%の相対温度で1カ月間および3カ月貯蔵された後、エアロゾル化性能は、HFA−152を使用した場合よりもさらに劇的に減少した。特に、微粒子用量および放出用量の微粒子フリクションは、はるかに減少した。
【0135】
実施例2
HFA−134aおよびHFA−152a中のインダカテロールの化学的安定性を、時間ゼロ(T=0)と、コーティングされていないアルミニウム缶中、バルブを下げた状態で(valve down)、40℃および75%の相対湿度(RH)ならびに25℃および60%の相対湿度(RH)で1カ月間(T=1M)および3カ月間(T=3M)貯蔵された後とで調べた。
【0136】
薬物製剤を、上の実施例1に記載したとおりに調製し、上の実施例1に記載したHPLC技術を使用して分析した。
【0137】
コーティングされていないアルミニウム缶の中に入ったHFA−152aおよびHFA−134a中のインダカテロール薬物製剤の化学的安定性の調査結果を、それぞれ、以下の表4および表5に示す。
【表4】
【表5】
【0138】
インダカテロールの薬学的製剤が、エアロゾル化噴射剤としてのHFA−152aとともに混合されたときに優れた化学的安定性を呈することは、上の表4および5におけるデータから見ることができる。
【0139】
実施例3
インダカテロールおよびHFA−134aまたはHFA−152aのいずれかを含有する製剤を、PETバイアル中で調製し、製剤の懸濁安定性を、Turbiscan MA 2000を使用して決定した。Turbiscan計器は、平底の5mLの円筒形ガラスセルに沿って移動する読み取りヘッドを有し、最大試料高80mmで、40μmごとに透過光および後方散乱光の読み値を取る。読み取りヘッドは、近赤外線パルスおよび2つの同期検出器を使用する。透過検出器は、0°でサスペンションチューブを通して透過した光を拾い、後方散乱検出器は、135°で生成物による後方光を受ける。
【0140】
異なる製剤のフロックの沈殿およびサイズを、下の表6に示す。
【表6】
【0141】
インダカテロールの薬学的製剤が、エアロゾル化噴射剤としてのHFA−152aとともに混合されたときに著しく優れた沈殿性能を呈することは、上の表6におけるデータから見ることができる。