特許第6781844号(P6781844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781844
(24)【登録日】2020年10月20日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】ベルト式研削工具
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/06 20060101AFI20201026BHJP
   B24B 21/00 20060101ALI20201026BHJP
   B24B 55/00 20060101ALI20201026BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   B24B23/06
   B24B21/00 Z
   B24B55/00
   B24B55/02 D
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-537001(P2019-537001)
(86)(22)【出願日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2019013541
(87)【国際公開番号】WO2019208086
(87)【国際公開日】20191031
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2018-86634(P2018-86634)
(32)【優先日】2018年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保全
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−30463(JP,U)
【文献】 実開昭55−115758(JP,U)
【文献】 特開2014−166668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 21/00 − 23/08
55/00 − 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを備える工具本体と、
該工具本体に対して回転自在に取り付けられたアイドルプーリと、
該モータによって回転駆動され、該アイドルプーリとの間に掛け回される無端研削ベルトを支持する筒状の外周部を有するドライブプーリと、
少なくとも一部が該外周部の径方向内側に配置され、該ドライブプーリとともに回転して該外周部の内側を該ドライブプーリの回転軸線の方向に通過する空気の流れを生じさせるファンと、
該外周部の一方の側端縁に該回転軸線の方向で隣接して配置されるカバープレート部を有し、該工具本体との間に該ドライブプーリを収容する収容空間を画定するカバーであって、該カバープレート部に該外周部の内周面に対する径方向内側の位置で該収容空間に開口する内側開口部、及び該外周部の該内周面に対する径方向外側の位置で該収容空間に開口する外側開口部が形成されている、カバーと、
該収容空間内において、該内側開口部から該外周部の内側を通り、該外周部の他方の側端縁を廻り、該外周部の外側を通って該外側開口部に至る通気経路と、
を備え、
該ファンが回転されたときに、外部の空気が該内側開口部と該外側開口部とのうちの一方から該収容空間の中に吸引され、該通気経路に沿って流れて、該内側開口部と該外側開口部とのうちの他方から該収容空間の外に排出されるようにされた、ベルト式研削工具。
【請求項2】
該カバープレート部が、該外周部の該内周面の径方向内側の位置から径方向外側の位置にまで延びるスロット穴を有し、該内側開口部と該外側開口部とが該スロット穴の一部として形成されている、該請求項1に記載のベルト式研削工具。
【請求項3】
該スロット穴が、該回転軸線の放射方向に対して湾曲して延びている、請求項2に記載のベルト式研削工具。
【請求項4】
該スロット穴が人の指が入らない大きさとされている、請求項2又は3に記載のベルト式研削工具。
【請求項5】
該ドライブプーリが、該モータに駆動連結された回転軸に連結される中心固定部と、該外周部から該中心固定部にまで延びる連結部とをさらに備え、該連結部に該回転軸線の方向に貫通する貫通孔が形成されており、該通気経路が該貫通孔を通るようにされた、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベルト式研削工具。
【請求項6】
該ファンが回転されたときに、外部の空気が、該通気経路に沿って、該内側開口部から該収容空間の中に吸引され、該外周部の内側を通り、該貫通孔を通過してから該外周部の該他方の側端縁を廻り、該外周部の外側を通って該外側開口部から該収容空間の外に排出されるようにされた、請求項5に記載のベルト式研削工具。
【請求項7】
該ファンが該外周部の周方向に第1間隔で配置された複数の羽根を有し、該貫通孔が該周方向に該第1間隔とは異なる第2間隔で複数配置されている、請求項5又は6に記載のベルト式研削工具。
【請求項8】
該ファンと該ドライブプーリの該連結部との間に該回転軸線の方向での隙間が形成されている、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のベルト式研削工具。
【請求項9】
モータを備える工具本体と、
該工具本体に対して回転自在に取り付けられたアイドルプーリと、
該モータによって回転駆動され、該アイドルプーリとの間に掛け回される無端研削ベルトを支持する筒状の外周部を有するドライブプーリと、
少なくとも一部が該外周部の径方向内側に配置され、該ドライブプーリとともに回転して該外周部の内側を該ドライブプーリの回転軸線の方向に通過する空気の流れを生じさせるファンと、
該外周部の一方の側端縁に該回転軸線の方向で隣接して配置されるカバープレート部を有し、該工具本体との間に該ドライブプーリを収容する収容空間を画定するカバーであって、該カバープレート部に該外周部の内周面に対する径方向内側の位置で該収容空間に開口する内側開口部から該外周部の該内周面に対する径方向外側の位置で該収容空間に開口する外側開口部にまで延びるスロット穴が形成されている、カバーと、
を備え、
該ファンが回転されたときに、外部の空気が該スロット穴から該収容空間の中に吸引され、該外周部の内側を通って該収容空間の外に排出されるようにされた、ベルト式研削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式研削工具に関し、より詳細には、無端研削ベルトを冷却する機能を備えたベルト式研削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式研削工具は、回転自在に配置されたアイドルプーリと、モータにより回転駆動されるドライブプーリと、これらアイドルプーリとドライブプーリとに掛け回される無端研削ベルトとを備え、ドライブプーリの回転に伴って回転駆動される無端研削ベルトを研削対象物に押し当てることにより該研削対象物の研削を行なうようにした工具である(特許文献1)。このようなベルト式研削工具では、研削作業中に無端研削ベルトが研削対象物との間の摩擦により加熱される。
【0003】
無端研削ベルトが加熱されることに伴ってドライブプーリやモータ軸なども熱くなり、特にそれらを回転支持するベアリングが熱により劣化することがあった。このような問題に対して、例えば特許文献2に示すベルトサンダにおいては、ドライビングローラにファンを設けて、ドライビングローラとともにファンを回転させることで外気を工具内部に吸引するようにしている。吸引された空気はドライビングローラの内側を通って別の集塵ファンによりダストバック内へ導かれる。これにより、空気がドライビングローラの軸やそれを回転支持するベアリングの周囲を流れることになり、それら部材が空気の流れによって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−166668
【特許文献2】実公平6−13827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無端研削ベルトが加熱されたときのもう一つの問題として、無端研削ベルトの破断がある。無端研削ベルトは、通常、帯状の材料の両端を接着剤で接着することにより無端のベルト形状としているが、接着部分が過度に熱くなると接着剤が溶解してベルトが破断してしまうことがある。上述の従来のベルトサンダにおいてもドライビングローラを冷却することにより無端研削ベルトは間接的にある程度は冷却されるが、該ベルトサンダでは主としてドライビングローラの軸やベアリングを冷却する構造となっており、無端研削ベルトに対する冷却効果は十分でない。
【0006】
そこで本発明は、アイドルプーリとドライブプーリとに掛け回された無端研削ベルトを効率よく冷却することができるようにしたベルト式研削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
モータを備える工具本体と、
該工具本体に対して回転自在に取り付けられたアイドルプーリと、
該モータによって回転駆動され、該アイドルプーリとの間に掛け回される無端研削ベルトを支持する筒状の外周部を有するドライブプーリと、
少なくとも一部が該外周部の径方向内側に配置され、該ドライブプーリとともに回転して該外周部の内側を該ドライブプーリの回転軸線の方向に通過する空気の流れを生じさせるファンと、
該外周部の一方の側端縁に該回転軸線の方向で隣接して配置されるカバープレート部を有し、該工具本体との間に該ドライブプーリを収容する収容空間を画定するカバーであって、該カバープレート部に該外周部の内周面に対する径方向内側の位置で該収容空間に開口する内側開口部、及び該外周部の該内周面に対する径方向外側の位置で該収容空間に開口する外側開口部が形成されている、カバーと、
該収容空間内において、該内側開口部から該外周部の内側を通り、該外周部の他方の側端縁を廻り、該外周部の外側を通って該外側開口部に至る通気経路と、
を備え、
該ファンが回転されたときに、外部の空気が該内側開口部と該外側開口部とのうちの一方から該収容空間の中に吸引され、該通気経路に沿って流れて、該内側開口部と該外側開口部とのうちの他方から該収容空間の外に排出されるようにされた、ベルト式研削工具を提供する。
【0008】
当該ベルト式研削工具においては、ファンによって収容空間の中に吸引された空気が、ドライブプーリの外周部の内側だけでなく外側も通過するようになっている。そのためドライブプーリだけでなく外周部の外周面上に支持されている無端研削ベルトも直接冷却されるようになる。これにより、無端研削ベルトをより効率よく冷却することができ、熱による無端研削ベルトの破断を防止することが可能となる。
【0009】
具体的には、該カバープレート部が、該外周部の該内周面の径方向内側の位置から径方向外側の位置にまで延びるスロット穴を有し、該内側開口部と該外側開口部とが該スロット穴の一部として形成されているようにすることができる。
【0010】
好ましくは、該スロット穴が、該回転軸線の放射方向に対して湾曲して延びているようにすることができる。直線的な穴に比べて開口面積を大きくすることができ、より効率よく空気を収容空間の中に吸引することが可能となる。
【0011】
好ましくは、該スロット穴が人の指が入らない大きさとされている。これにより指が回転するドライブプーリや無端研削ベルトに誤って接触して怪我をすることを防止することが可能となる。なお、「人の指が入らない大きさ」とは、使用環境に合わせて選択されたテストフィンガーが収容空間の中にまで通らない大きさを意味する。
【0012】
具体的には、該ドライブプーリが、該モータに駆動連結された回転軸に連結される中心固定部と、該外周部から該中心固定部にまで延びる連結部とをさらに備え、該連結部に該回転軸線の方向に貫通する貫通孔が形成されており、該通気経路が該貫通孔を通るようにすることができる。
【0013】
さらに具体的には、該ファンが回転されたときに、外部の空気が、該通気経路に沿って、該内側開口部から該収容空間の中に吸引され、該外周部の内側を通り、該貫通孔を通過してから該外周部の該他方の側端縁を廻り、該外周部の外側を通って該外側開口部から該収容空間の外に排出されるようにすることができる。
【0014】
好ましくは、該ファンが該外周部の周方向に第1間隔で配置された複数の羽根を有し、該貫通孔が該周方向に該第1間隔とは異なる第2間隔で複数配置されているようにすることができる。
【0015】
さらに好ましくは、該ファンと該ドライブプーリの該連結部との間に該回転軸線の方向での隙間が形成されているようにすることができる。これにより、貫通孔がファンによって塞がれないようにすることが可能となる。
【0016】
また本発明は、
モータを備える工具本体と、
該工具本体に対して回転自在に取り付けられたアイドルプーリと、
該モータによって回転駆動され、該アイドルプーリとの間に掛け回される無端研削ベルトを支持する筒状の外周部を有するドライブプーリと、
少なくとも一部が該外周部の径方向内側に配置され、該ドライブプーリとともに回転して該外周部の内側を該ドライブプーリの回転軸線の方向に通過する空気の流れを生じさせるファンと、
該外周部の一方の側端縁に該回転軸線の方向で隣接して配置されるカバープレート部を有し、該工具本体との間に該ドライブプーリを収容する収容空間を画定するカバーであって、該カバープレート部に該外周部の内周面に対する径方向内側の位置で該収容空間に開口する内側開口部から該外周部の該内周面に対する径方向外側の位置で該収容空間に開口する外側開口部にまで延びるスロット穴が形成されている、カバーと、
を備え、
該ファンが回転されたときに、外部の空気が該スロット穴から該収容空間の中に吸引され、該外周部の内側を通って該収容空間の外に排出されるようにされた、ベルト式研削工具を提供する。
【0017】
このベルト式研削工具によれば、カバーに設けられたスロット穴がドライブプーリの外周部の内側から外側にまで延びているため、ファンによって外部の空気が収容空間に吸引されるときに、空気が側端縁において外周部に吹き付けられるようになる。また、スロット穴の開口面積が大きくなりより多くの空気を吸引できるようになる。これらにより、ドライブプーリを効率よく冷却することが可能となる。
【0018】
以下、本発明に係るベルト式研削工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るベルト式研削工具の側面図である。
図2図1のベルト式研削工具のカバーを取り外した状態の側面図である。
図3図1のA−A線に沿った部分断面図である。
図4】カバーの第2実施形態を示す図である。
図5】カバーの第3実施形態を示す図である。
図6】カバーの第4実施形態を示す図である。
図7】カバーの第5実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るベルト式研削工具10は、図1乃至図3に示すように、長手軸線Lの方向に延びる工具本体12と、工具本体12の先端部14において回転自在に取り付けられたアイドルプーリ16と、工具本体12が有する電動モータ18に駆動連結された回転軸20に固定されたドライブプーリ22とを備える。アイドルプーリ16とドライブプーリ22との間には無端研削ベルト24が掛け回されている。ドライブプーリ22は、電動モータ18により図2で見て反時計回りに回転駆動され、これに伴い無端研削ベルト24も同方向に回転される。工具本体12には無端研削ベルト24の内周面24aに沿うようにシュー25が取り付けられており、回転する無端研削ベルト24をシュー25で内側から支持されている位置で研削対象物に押し当てることにより、該研削対象物に対する研削作業を行なうようになっている。
【0021】
ドライブプーリ22は、図3に示すように、回転軸20に固定される筒状の中心固定部26と、無端研削ベルト24を支持する筒状の外周部28と、中心固定部26と外周部28とを連結するようにドライブプーリ22の回転軸線Rに対する放射方向に延びる連結部30とを有する。ドライブプーリ22は回転軸20に螺合された六角ナット32によって回転軸20に対して固定されている。回転軸線Rの方向での外周部28の両側の側端縁28a、28bには、無端研削ベルト24が脱落しないようにするためのフランジ部34がそれぞれ設けられている。
【0022】
ドライブプーリ22の外周部28の径方向内側にはファン36が設けられている。ファン36は、中心固定部38と、中心固定部38から径方向外側に延びる羽根40とを有する。図2から分かるように、羽根40は周方向で等間隔に5枚配置されている。ファン36は、中心固定部38に六角ナット32の一部を受け入れた状態で、固定ネジ42によって六角ナット32に固定されている。六角ナット32を受け入れている中心固定部38の内周面38aは六角ナット32の外径に合わせた六角形となっていて、ファン36が六角ナット32に対して回転方向で確実に固定されるようにしている。固定ネジ42は、その端面42aが回転軸20の端面20aに突き当たった状態で固定されている。これにより、六角ナット32及び固定ネジ42が緩みにくいようにしている。ファン36と六角ナット32との間にはOリング44が配置されているが、これはファン36を固定ネジ42の頭に押し付けてファン36のガタツキを防止するためのものである。ファン36は、その全体が外周部28の内側に位置しているが、外周部28の外側に一部が飛び出すような形状とすることもできる。
【0023】
ドライブプーリ22の連結部30には、回転軸線Rの方向に貫通する貫通孔46が形成されている。この貫通孔46は、図2ではファン36の羽根40により一部が隠れて見えていないが、周方向で等間隔に8つ設けられている。ファン36の羽根40と貫通孔46とを周方向で異なる間隔で配置することにより、ドライブプーリ22に対してファン36を回転方向でのどのような向きで取付けた場合でも、全ての貫通孔46の正面が羽根40で遮られてしまう状態にはならないようにできる。また、ファン36の羽根40とドライブプーリ22の連結部30との間には回転軸線Rの方向での隙間48が形成されており、連結部30の貫通孔46がファン36の羽根40によって塞がれないようにして後述する空気の流れを妨げないようにしている。
【0024】
工具本体12にはさらに固定ネジ50によってカバー52が取り付けられている。カバー52は、固定ネジ50によって工具本体12に固定される固定部54と、回転軸線Rの方向で外周部28の一方の側端縁28aに隣接して配置されるカバープレート部56を有し、工具本体12との間にドライブプーリ22を収容する収容空間58を画定している。カバープレート部56には、図1に示すように、回転軸線Rの放射方向に対して湾曲して延びる複数のスロット穴60が設けられている。このスロット穴60は、ドライブプーリ22の外周部28の内周面28cの径方向内側の位置から径方向外側の位置にまで延びていて、外周部28の内周面28cに対する径方向内側の位置で収容空間58に開口する内側開口部62と、径方向外側の位置で収容空間58に開口する外側開口部64とを有している。なお、スロット穴60は、人の指が収容空間58内にまで入らない大きさとされている。具体的には、使用環境に合わせて適宜選択されるテストフィンガーが収容空間58内にまで入らない大きさに設計されている。当該実施形態の設計に用いたテストフィンガーは国際規格IEC60529に基づくものである。カバープレート部56の中心付近には、ドライブプーリ22の回転方向を示す矢印形状の穴66が形成されている。
【0025】
当該ベルト式研削工具10においては、上記構成により、図3に矢印で示すような通気経路68が形成される。この通気経路68は、カバー52の内側開口部62からドライブプーリ22の外周部28の内側を通り、連結部30の貫通孔46を通過してから外周部28の他方の側端縁28bを廻り、外周部28の外側を通って外側開口部64に至る。上述のようにドライブプーリ22の内側に配置されたファン36は回転軸20に対して固定されているため、ドライブプーリ22を回転駆動するとドライブプーリ22とともに回転する。ファン36が回転すると、ファン36によってドライブプーリ22の外周部28の内側を回転軸線Rの方向に通過する空気の流れが生じる。そうすると、空気が通気経路68に沿って流れるようになる。具体的には、外部の空気が、内側開口部62から収容空間58の中に吸引され、ファン36が配置されているドライブプーリ22の外周部28の内側を通り、貫通孔46を通過してドライブプーリ22の外側に出る。貫通孔46を通過した空気は、収容空間58の内周面58aに当たって径方向外側に向きを変えて、外周部28の他方の側端縁28bを廻る。該空気はさらに外周部28の外側を通って、外側開口部64から収容空間58の外に排出される。外側開口部64から排出された空気の一部は、スロット穴60に沿って、又は一旦カバー52の外側に出てから、再び内側開口部62から収容空間58内に吸引される。また、収容空間58の前方部分58b(図1及び図2で見て上方の部分)及び下方部分58c(図1及び図2で見て左方の部分)は開放されているため、収容空間58内に吸引された空気の一部は貫通孔46を通過した後にこれら前方部分58b及び下方部分58cから収容空間58の外に排出される。前方部分58b及び下方部分58cは無端研削ベルト24が通過する部分であるため、前方部分58b及び下方部分58cから排出される空気の一部は、無端研削ベルト24に吹き付けられることになる。
【0026】
このように当該ベルト式研削工具10においては、ファン36によって収容空間58の中に吸引された外部の空気がドライブプーリ22の外周部28の内側と外側を両方とも通過するため、ドライブプーリ22をより効率的に冷却できる。よって、ドライブプーリ22を介して無端研削ベルト24をより効率よく冷却できる。また、通気経路68を流れる空気は外周部28の外側を通過する際に無端研削ベルト24にも直接当たるため、無端研削ベルト24を直接冷却することもできる。これにより、従来のベルト式研削工具10に比べて、無端研削ベルト24の冷却をより効率よく行うことが可能となり、熱による無端研削ベルト24の破断を防止することができる。
【0027】
また上記実施形態においては、スロット穴60がドライブプーリ22の外周部28の内側から外側にまで延びていて外周部28の一方の側端縁28aの部分にも位置しているため、スロット穴60から空気が吸引される際に空気が側端縁28aにおいて外周部28に吹き付けられるようになる。これによっても、ドライブプーリ22の冷却を効率よく行うことが可能となり、熱による無端研削ベルト24の破断をより確実に防止することができる。また、収容空間58の前方部分58b及び下方部分58cから排出される空気の一部は、無端研削ベルト24に吹き付けられるため、これによっても無端研削ベルト24を冷却することが可能となる。
【0028】
カバー52に設けられた内側開口部62及び外側開口部64の形状や配置は任意に変更可能である。例えば図4に示すカバー152においては、内側開口部162と外側開口部164とが独立した穴として形成されている。ただしこの場合には、ドライブプーリ22の外周部28に空気は吹き付けられなくなる。図5に示すカバー252においては、スロット穴260が折れ曲がった形状となっており、外側開口部264の面積がより大きくなるようにしている。図6に示すカバー352においては、スロット穴360の湾曲方向が図1のカバー52とは逆になっている。図7に示すカバー452においては、直線状の長いスロット穴460−1と短いスロット穴460−2とが周方向で交互に配置されている。これらのスロット穴並びに内側開口部及び外側開口部の形状や配置は例示であり、これら以外の形態とすることもできる。
【0029】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では外部の空気を内側開口部から吸引して外側開口部から排出するようにしているが、ドライブプーリの回転方向を逆にするか又はファンの羽根の向きを逆にするなどして、空気が逆向きに流れるようにしてもよい。すなわち、外部の空気を外側開口部から収容空間の中に吸引して、ドライブプーリの外周部の外側を通し外周部の他方の側端縁を廻り連結部の貫通孔を通過して外周部の内側を通って、内側開口部から収容空間の外に排出するようにしてもよい。また、収容空間に吸引された空気がドライブプーリの外周部に直接吹き付けられる構成と、外周部の内側と外側を通る通気経路に沿って流れる構成は両方備えていることが望ましいが、必ずしも両方備えている必要はなくどちらか一方のみの構成だけでも従来技術に対して十分に優れた冷却効果を得ることが可能である。また、ファンの羽根や連結部の貫通孔の数は変更しても良い。上記実施形態は電動モータを備える電動式のベルト式研削工具であるが、電動モータに代えてエアモータを採用した空気式のベルト式研削工具としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 ベルト式研削工具
12 工具本体
14 先端部
16 アイドルプーリ
18 電動モータ
20 回転軸
20a 端面
22 ドライブプーリ
24 無端研削ベルト
24a 内周面
25 シュー
26 中心固定部
28 外周部
28a 側端縁
28b 側端縁
28c 内周面
30 連結部
32 六角ナット
34 フランジ部
36 ファン
38 中心固定部
38a 内周面
40 羽根
42 固定ネジ
42a 端面
44 Oリング
46 貫通孔
48 隙間
50 固定ネジ
52 カバー
54 固定部
56 カバープレート部
58 収容空間
58a 内周面
58b 前方部分
58c 下方部分
60 スロット穴
62 内側開口部
64 外側開口部
66 矢印形状の穴
68 通気経路
152 カバー
162 内側開口部
164 外側開口部
252 カバー
260 スロット穴
264 外側開口部
352 カバー
360 スロット穴
452 カバー
460−1 長いスロット穴
460−2 短いスロット穴
L 長手軸線
R 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7