(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作変数の入力値を探索する工程にて探索された前記操作変数の複数の入力値に基づき、前記操作変数として、前記液化天然ガスプラントの運転に実際に使用する入力値を決定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の運転指針探索方法。
前記外乱として、前記液化天然ガスプラントの設置エリアの外気温度、前記液化天然ガスプラントへの天然ガスの供給圧力、天然ガスの組成、天然ガスの供給温度、天然ガスの供給量からなる外乱群から選択された外乱を含むことを特徴とする請求項1に記載の運転指針探索方法。
前記機械学習は、ディープニューラルネットワーク、サポートベクターリグレッション、ランダムフォレストリグレッション、部分最小二乗法の少なくとも1つの手法を用いて前記プラントモデルを作成することを特徴とする請求項1に記載の運転指針探索方法。
前記冷媒が、前記液化用冷媒により液化される前の前記天然ガスの予冷却を行う予冷用冷媒、または前記液化用冷媒の冷却を行う冷媒冷却用冷媒の少なくとも一方を含む場合に、前記プロセス変数群はさらに前記予冷却後の天然ガスの温度、前記冷却後の液化用冷媒の温度の少なくとも一つを前記制御変数、または前記他のプロセス変数として含むことを特徴とする請求項5に記載の運転指針探索方法。
前記プラントモデル作成部は、前記外乱として、前記液化天然ガスプラントの設置エリアの外気温度、前記液化天然ガスプラントへの天然ガスの供給圧力、天然ガスの組成、天然ガスの供給温度、天然ガスの供給量からなる外乱群から選択された外乱についての外乱データを用いて機械学習を行うことを特徴とする請求項7に記載の運転指針探索システム。
前記プラントモデル作成部は、ディープニューラルネットワーク、サポートベクターリグレッション、ランダムフォレストリグレッション、部分最小二乗法の少なくとも一つの手法を用いて前記プラントモデルを作成することを特徴とする請求項7に記載の運転指針探索システム。
前記冷媒が、前記液化用冷媒により液化される前の前記天然ガスの予冷却を行う予冷用冷媒、または前記液化用冷媒の冷却を行う冷媒冷却用冷媒の少なくとも一方を含む場合に、
前記プラントモデル作成部は、さらに前記予冷却後の天然ガスの温度、前記冷却後の液化用冷媒の温度の少なくとも一つを前記制御変数、または前記他のプロセス変数として含む前記プロセス変数群から選択されたプロセス変数の運転データを用いて機械学習を行うことを特徴とする請求項10に記載の運転指針探索システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、液化天然ガスプラントを効率的に運転するための運転指針を探索する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運転指針探索方法は、液化天然ガスプラントの運転指針探索方法であって、
前記液化天然ガスプラントは、
屋外に設けられ、液化用冷媒を用い、天然ガスを液化して液化天然ガスを得る液化用熱交換器と、前記液化用冷媒を含む、前記液化天然ガスプラント内で用いられる冷媒が気化した後の冷媒ガスを圧縮する圧縮機とを備えることと、
前記液化天然ガスプラントには、制御の対象を設定値に近づける調節が行われる制御の対象の機器が複数含まれていることと、
前記制御の対象の機器を含む、前記液化天然ガスプラントを構成する複数の機器に設けられた測定器を介して運転データを取得可能な各機器の運転状態に係る変数をプロセス変数と呼ぶとき、前記プロセス変数は、前記調節に係る操作変数と、前記制御の対象に係る制御変数と、これら操作変数、制御変数には相当しない他のプロセス変数とにより構成されることと、
前記プロセス変数が取得される対象となる複数の対象機器についての制御変数及び操作変数
と、前記圧縮機の圧縮動力を少なくとも含む前記他のプロセス変数と、のプロセス変数の実績値を示す運転データと、前記プロセス変数
の実績値に影響を及ぼす外乱の実績値を示す外乱データと、を含む複数のデータセットを取得する工程と、
前記データセットを取得する工程にて取得した複数のデータセットに基づき、コンピュータを用いた機械学習により、前記操作変数及び外乱から選択した入力値に応じた、前記
制御変数及び他のプロセス変数から選択した出力値
(少なくとも前記圧縮動力を含む)の対応関係を複数含むプラントモデルを作成する工程と、
前記プラントモデルを作成する工程にて作成したプラントモデルに対して前記外乱の入力値と前記操作変数の初期値とを与え、コンピュータを用いた強化学習により、前記液化天然ガスの出口温度が予め設定された制約温度以下となる条件下で、前記液化天然ガスの単位生産量当たりの前記圧縮動力が最小となる前記操作変数の入力値を探索する工程と、を含むことと、を特徴とする。
【0009】
前記運転指針探索方法は以下の特徴を備えてもよい。
(a)前記操作変数の入力値を探索する工程にて探索された前記操作変数の複数の入力値に基づき、前記操作変数として、前記液化天然ガスプラントの運転に実際に使用する入力値を決定する工程を含むこと。
(b)前記外乱として、前記液化天然ガスプラントの設置エリアの外気温度、前記液化天然ガスプラントへの天然ガスの供給圧力、天然ガスの組成、天然ガスの供給温度、天然ガスの供給量からなる外乱群から選択された外乱を含むこと。
(c)前記機械学習は、ディープニューラルネットワーク、サポートベクターリグレッション、ランダムフォレストリグレッション、部分最小二乗法少なくとも1つの手法を用いて前記プラントモデルを作成すること。
(d)
前記制御変数、または前記圧縮機の圧縮動力以外の前記
他のプロセス変数として、前記液化用熱交換器の入口側の天然ガスの温度、前記液化用熱交換器の入口側の液化用冷媒温度、液化用冷媒圧縮機吐出圧からなるプロセス変数群から選択されたプロセス変数を含み、前記操作変数として、前記液化用冷媒のガス流量、前記液化用冷媒の液体流量、前記液化用冷媒の組成、前記圧縮機が回転駆動機により駆動される場合の回転数、または前記圧縮機のインレットガイドベーン開度からなる操作変数群から選択された
プロセス変数を含むこと。前記冷媒が、前記液化用冷媒により液化される前の前記天然ガスの予冷却を行う予冷用冷媒、または前記液化用冷媒の冷却を行う冷媒冷却用冷媒の少なくとも一方を含む場合に、前記プロセス変数群はさらに前記予冷却後の天然ガスの温度、前記冷却後の液化用冷媒の温度の少なくとも一つを
前記制御変数、または前記他のプロセス変数として含むこと。
【0010】
また、本発明の運転指針探索システムは、液化天然ガスプラントの運転指針探索システムであって、
前記液化天然ガスプラントが、
屋外に設けられ、液化用冷媒を用い、天然ガスを液化して液化天然ガスを得る液化用熱交換器と、前記液化用冷媒を含む、冷媒が気化した後の冷媒ガスを圧縮する圧縮機とを備える
ことと、
前記液化天然ガスプラントには、制御の対象を設定値に近づける調節が行われる制御の対象の機器が複数含まれていることと、
前記制御の対象の機器を含む、前記液化天然ガスプラントを構成する複数の機器に設けられた測定器を介して運転データを取得可能な各機器の運転状態に係る変数をプロセス変数と呼ぶとき、前記プロセス変数は、前記調節に係る操作変数と、前記制御の対象に係る制御変数と、これら操作変数、制御変数には相当しない他のプロセス変数とにより構成されることと、を有するとき、
前記運転指針探索システムは、
前
記プロセス変数が取得される対象となる複数の対象機器についての制御変数及び操作変数
と、前記圧縮機の圧縮動力を少なくとも含む前記他のプロセス変数と、のプロセス変数の実績値を示す運転データと、前記プロセス変数
の実績値に影響を及ぼす外乱の実績値を示す外乱データと、を含む複数のデータセットを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部にて取得した複数のデータセットに基づき、コンピュータを用いた機械学習により、前記操作変数及び外乱から選択した入力値に応じた、前記
制御変数及び他のプロセス変数から選択した出力値
(少なくとも前記圧縮動力を含む)の対応関係を複数含むプラントモデルを作成するプラントモデル作成部と、
前記プラントモデル作成部にて作成したプラントモデルに対して前記外乱の入力値と前記操作変数の初期値とを与え、コンピュータを用いた強化学習により、前記液化天然ガスの出口温度が予め設定された制約温度以下となる条件下で、前記液化天然ガスの単位生産量当たりの前記圧縮動力が最小となる前記操作変数の入力値を探索する運転指針探索部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、液化天然ガスプラントのプラントモデルを機械学習により作成し、さらに強化学習を行って液化天然ガスの単位生産量当たりの冷媒の圧縮動力が最小となる操作変数の値を探索するので、外乱に応じた最適な運転を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本例の運転指針探索方法が適用されるLNGプラント1の構成例である。
本来のLNGプラント1は、前処理により不純物が除去されたNG(天然ガス)を予冷熱交換器31にて予冷却し、スクラブカラム32にて気液分離した後、液化用熱交換器である極低温主熱交換器(MCHE:Main Cryogenic Heat Exchanger)33にて液化、過冷却してLNGを得る。スクラブカラム32にて気液分離された液体は、精留部34にて精留され、精留の際に分離された軽質成分はMCHE33へと送られてLNGとなる。
【0014】
NGの液化・過冷却を行う液化用冷媒としては、窒素と、炭化水素であるメタン、エタン、プロパンとを含む冷媒原料群から選択した複数種類の冷媒原料を混合した混合冷媒(MR:Mixed Refrigerant)が用いられる。
NGの液化・過冷却に使用されたMRは、気体の状態でMCHE33から流出し、ガスタービン(G/T)などにより駆動される複数のMR圧縮機36にて順次、圧縮され、各MR圧縮機36の出口側に設けられたMRクーラー204(ACHE(Air-Cooled Heat Exchanger)2により構成される)にて冷却される。圧縮・冷却後のMRは、MR冷却器37にてさらに冷却されてからMCHE33へと再供給される。MRは、LNGプラント1内で用いられる冷媒の1つに相当する。
【0015】
本例のLNGプラント1は、予冷熱交換器31にてNGの予冷を行う冷媒、及びMR冷却器37にてMRの冷却を行う冷媒として、プロパンまたはプロピレンの単一成分からなるC3冷媒を用いている。NGの予冷やMRの冷却に使用されたC3冷媒についても、圧縮・冷却された後、予冷熱交換器31やMR冷却器37へと再供給される。
液体C3冷媒は、不図示の膨張弁を介して降圧され、断熱膨張により温度低下した状態でC3冷却器31、37に供給されて各被冷却流体(NGやMR)を冷却する。C3冷媒は、LNGプラント1内で用いられる冷媒の1つに相当する。
【0016】
C3冷媒圧縮機35の後段には、圧縮の過程で温度上昇した気体C3冷媒を気体の状態で冷却するためのデスーパーヒーター201と、デスーパーヒーター201にて冷却された気体C3冷媒をさらに冷却して凝縮させるコンデンサー202と、コンデンサー202から流出した液体C3冷媒を溜めるレシーバー(受槽)353と、液体C3冷媒をさらに冷却して過冷却状態とするサブクーラー203とが、上流側からこの順に設けられている。サブクーラー203にて過冷却された液体C3冷媒は、既述の膨張弁を介して再びC3冷却器31、37に送られる。これらデスーパーヒーター201、コンデンサー202及びサブクーラー203についてもACHE2により構成される。
【0017】
LNGプラント1は、上述の各圧縮機(C3冷媒圧縮機35、MR圧縮機36)、MR冷却器37、予冷熱交換器31、スクラブカラム32、精留部34の各精留塔、MCHE33、NGの前処理を行う各種前処理設備など、多数の機器により構成されている。これらの機器には、塔槽や熱交換器などの静機器、ポンプなどの動機器などが含まれている。
【0018】
そしてこれらの機器の中には、外気温度の変化など、外乱のある条件下で操作変数を調節することにより、制御変数を設定値に近付ける制御が行われる多数の機器(本例の「対象機器」に相当する)が設けられている。また、対象機器の運転状態は、圧力計(PI)、温度計(TI)、流量計(FI)、組成分析計(AI)や各圧縮機35、36の動力を計測する動力計測器(SC)などの各種測定器(不図示)により測定される。
【0019】
各種測定器は、上述の制御対象の機器の操作変数、制御変数の他、制御対象とはなっていない機器(本例の「対象機器」に相当する)における各種の測定値も測定することもできる。以下、各種測定器を用いてデータを取得可能な操作変数、制御変数、及びこれら以外の変数
(他のプロセス変数)をまとめてプロセス変数という。プロセス変数の実績値を示す運転データは、各種測
定器にて直接計測して得られたデータであってもよいし、計測した結果に基づいて算出したデータであってもよい。
【0020】
また、LNGプラント1には、LNGプラント1が設置されているエリアの外気温度や風向、風速、NGの供給圧力、NGの組成などの外乱の測定を行う各種測定器(不図示)が設けられている。これら外乱の実績値を示す外乱データについても、各種測定器にて直接計測して得られたデータや、計測した結果に基づいて算出したデータが用いられる。
LNGプラント1に設けられた各種測定器は、時系列に沿って、測
定器ごとに予め設定されたデータ取得間隔(例えば1秒間隔や1分間隔)にて運転データや外乱データ、またはこれらの算出用のデータを取得する。
【0021】
図2は、本例の運転指針探索システム4の構成例である。運転指針探索システム4は、上述の運転データ及び外乱データを用いて、所定の外乱条件下にてLNGの単位生産量当たりの圧縮機(本例ではC3冷媒圧縮機35、MR圧縮機36)の動力(圧縮動力)が最小となる操作変数の入力値の探索を行う。以下、LNGの単位生産量当たりの圧縮機動力を「SP(Specific Power)」ともいう。
【0022】
運転指針探索システム4は、LNGプラント1から時系列に沿って取得された運転データと外乱データとのデータセットを多数取得するデータ取得部と、これら多数のデータセットに基づき、機械学習によりLNGプラント1のプラントモデルを作成するプラントモデル作成部41と、このプラントモデルを用い、強化学習により前記SPが最小となる操作変数の入力値を探索する運転指針探索部42とを備えている。
【0023】
本例の運転指針探索システム4は、例えばLNGプラント1が設置されているエリアから遠隔の地に設けられたコンピュータにより構成することができる。この場合は、データ取得部は、データ通信によりLNGプラント1から前記多数のデータセットを取得するデータ通信部として構成される。データ取得部は、所定の期間(例えば1週間や1ヶ月)中にLNGプラント1にて取得された全運転データ、外乱データを取得する。これらのデータ中にはプラントモデル作成部41にてプラントモデルの機械学習に用いる運転データ及び外乱データが含まれている。なお、全データの取得に替えて、前記機械学習に用いる運転データ、外乱データを予め選択して、これらのデータのみを取得してもよい。
【0024】
時系列に沿った各時点における運転データと外乱データとの組をデータセットとするとき、プラントモデル作成部41は、多数のデータセットを用いて機械学習により、前記操作変数及び外乱の入力値に応じた、プロセス変数(操作変数を除く)の出力値の対応関係を表すプラントモデルを作成する。例えばプラントモデル作成部41は、当該機械学習を実行するためのプログラムを搭載したコンピュータにより構成される。
【0025】
プラントモデル作成部41は、公知のディープニューラルネットワーク、サポートベクターリグレッション、ランダムフォレストリグレッション、部分最小二乗法の少なくとも1つの手法を用いて機械学習を実施してもよい。また、これらの手法を2つ以上組み合わせて機械学習を実施してもよい。
【0026】
プラントモデル作成部41は、少なくとも圧縮機(C3冷媒圧縮機35、MR圧縮機36)の圧縮動力を含む運転データを用いて前記機械学習を実行する。さらにこの運転データには、
制御変数、または圧縮機の圧縮動力以外の他のプロセス変数として、MCHE33の入口側のNGの温度、MCHE33の入口側のMR温度、MR圧縮機36の吐出圧、MR圧縮機36の動力などからなるプロセス変数群から選択された少なくとも1つのプロセス変数を用いて機械学習を実施することができる。またNGの予冷またはMRの冷却用のC3冷媒を用いるLNGプラント1においては、前記プロセス変数群には、さらに予冷却後のNGの温度、冷却後のMRの温度の少なくとも一つをプロセス変数として含んでもよい。
【0027】
また本例のプラントモデル作成部41は、MR冷媒のガス流量、MR冷媒の液体流量、MR冷媒の組成、圧縮機(C3冷媒圧縮機35、MR圧縮機36)が回転駆動機により駆動される場合の回転数、またはこれら圧縮機のインレットガイドベーン開度などからなる操作変数群から選択された少なくとも1つの操作変数
であるプロセス変数の運転データを用いて機械学習を実施することができる。
機械学習に用いる運転データには、上述のプロセス変数群や操作変数群に列挙した各
プロセス変数に限定されず、
上に例示したもの以外のプロセス変数の運転データを含んでもよい。
【0028】
またプラントモデル作成部41は、外乱として、LNGプラント1の設置エリアの外気温度、LNGプラント1へのNGの供給圧力、NGの組成、NGの供給温度、NGの供給量などからなる外乱群から選択された外乱についての外乱データを用いて機械学習を行うことができる。
【0029】
運転指針探索部42は、プラントモデル作成部41にて作成したプラントモデル用い、強化学習により、既述のSPが最小となる操作変数の入力値を探索する。例えば運転指針探索部42は、当該強化学習を実行するためのプログラムを搭載したコンピュータにより構成される。
例えば運転指針探索部42は、公知のプロキシマルポリシーオプティマイゼーションやディープキューネットワークなどの深層強化学習によりSPが最小となる操作変数の入力値を探索する場合を例示することができる。なお、運転指針探索部42は、深層強化学習に限定されず、他の種類の強化学習により前記操作変数の入力値の探索を行うように構成してもよい。
【0030】
特に運転指針探索部42は、MCHE33からのLNGの出口温度が予め設定された制約温度以下となる条件下で前記探索を行う点に特徴を有している。この制約を加えることにより、非現実的な操作変数の入力値が探索される可能性を効果的に排除することができる。
【0031】
上述の構成を備える運転指針探索システム4を用い、SPが最小となる操作変数の入力値を探索する手法について
図3〜9を参照しながら説明する。
はじめに、LNGプラント1から運転指針探索システム4へと運転データ及外乱データのデータセットを多数セット取得する(
図3の処理P1)。
【0032】
次いで、これらのデータセットに基づき、機械学習によりプラントモデルを作成する(同処理P2)。
図4のフローに基づき当該処理の内容を詳しく説明する。
はじめに、取得したデータセットから、異常データを含むデータセットや、一部の運転データ、外乱データが欠損したデータセットなどを除く前処理を行う(ステップS201)
【0033】
しかる後、プラントモデルの作成に用いる変数(プロセス変数、外乱)と機械学習のモデルタイプ(既述のディープニューラルネットワーク、サポートベクターリグレッションなどやその組み合わせ)を選択する(ステップS202)。変数には、少なくとも圧縮動力を含み、さらに既述のプロセス変数群から選択したプロセス変数やその他のプロセス変数、外乱群から選択した外乱やその他の外乱を選択することができる。
【0034】
次いで、プラントモデル作成部41にて機械学習によりプラントモデルの作成を行う(ステップS203)。
図5(a)〜(c)は、作成されたプラントモデルの出力の一部を示している。例えば
図5(a)〜(c)は外乱の1つである外気温度と、プロセス変数であるMCHE33入口のNGの温度、MCHE33入口のMR温度、MR圧縮機36吐出圧力との各対応関係を示している。プラントモデルにおいては、選択された外乱や操作変数と、プロセス変数(操作変数を除く)との対応関係が多数組取得される。
【0035】
しかる後、作成されたプラントモデルがLNGプラント1の実運転から乖離しているか否かの確認を行う(
図4のステップS204)。例えば外乱や操作変数の変化方向に対して実際の因果関係や物理法則などに反したプロセス変数の対応関係が作成されていないか、LNGプラント1の実際の運転を熟知した評価者が評価を行う。
【0036】
そして、乖離が大きい場合には(ステップS204;NO)、変数やモデルタイプの選択を変更し(ステップS202)、再度、機械学習を行う(ステップS203)。また、乖離が小さい場合には(ステップS204;YES)、運転指針探索部42による機械学習を終了する(エンド)。
【0037】
次いで、運転指針探索部42を用いて作成したプラントモデルを用い、公知の深層強化学習により、SPが最小となる操作変数の入力値を探索する(
図3の処理P3)。
図7に示すように、運転指針探索部42は既述のプラントモデルを含む環境421と、強化学習エージェント422とを用いて強化学習を実施する。環境421は、外乱及び操作変数の入力値を受け取り、前記プラントモデルを用いて指定されたプロセス変数(操作変数を除く)の値を出力する。
【0038】
強化学習エージェント422は、環境421から出力されたプロセス変数の値(状態)、及びこの値を用いて報酬計算を行った結果を取得し、予め設定された学習方針に従って、前記報酬を向上させる(プラントモデルより得られるSPの値を低下させる)ことが可能な新たな操作変数の組を作成する。学習方針としては、ディープキューネットワークなどのバリューベースや、プロキシマルポリシーオプティマイゼーションなどのポリシーベースを例示できる。
【0039】
図6を用い、
図3に記載の処理P3の具体的な内容を説明すると、初めに環境421から出力されたプロセス変数の値を評価するための報酬計算用の関数を作成する(ステップS301)。また、強化学習エージェント422の学習方針を決定する(ステップS302)。
【0040】
次いで、プラントモデル作成部41にて作成したプラントモデルを環境421として用い、強化学習エージェント422の強化学習を実施する(ステップS303)。このとき、強化学習の開始時には、外乱の入力値と、操作変数の適当な初期値とを環境421に与え、
図7に示す強化学習のループを繰り返す。そして、1回の学習ループにおける報酬の向上幅が無視小となったら、強化学習を終える(エンド)。
【0041】
図9(a)は、LNGプラント1におけるSPの実績値の経時変化を示している。また、
図9(b)は、
図9(a)の実績値が得られた期間中の運転データ、外乱データを用いてプラントモデルを作成し、当該期間中の外乱の条件下で強化学習を行って求めた操作変数の入力値により推定されるSPの予測値を示している。SPの実績値、予測値は、共通の値を100%として規格化した値を示してある。
【0042】
図9(a)によると、昼夜の温度変化に応じてSPが大きく変化していることが確認される。即ち、温度が上昇する昼の期間中はSPが上昇している。
一方、強化学習の結果得られる最適なSPの値は、非常に短い間隔で大きく変動し、巨視的にみると
図9(b)に示すように所定のバンド幅を持って変化することが確認された。このとき、強化学習の結果得られた操作変数の入力値をそのままLNGプラント1における操作変数の設定値とすることは、非常に短い間隔で設定値を変化させることとなり現実的ではない。
【0043】
そこで、LNGプラント1にて実際に使用する入力値を求める場合には、
図8に示すように、強化学習の結果を用い、ある時刻の操作変数と外乱の入力値に対する、その時刻以降の操作変数の入力値を計算する(ステップS401)。この結果、各時点においてSPを最小化することが可能な操作変数の入力値が出力される。次いで、
図9(a)の過去のSPの実績値とSPの予測値との残渣の大小などを判断指標として、安定して運転可能な、実運転で使用する操作変数の入力値(即ち設定値)を定める。
【0044】
この結果、
図9(b)中に横線で示すように、プラントモデル上、SPの値が最適に近くなる操作変数の設定値を決定することができる。この設定値を運転指針として利用し、所定の外乱条件下におけるLNGプラント1の新たな操作変数として用い、SPの値を低減する運転を行うことができる。
【0045】
本例の運転指針探索システム4によれば、LNGプラント1のプラントモデルを機械学習により作成し、さらに強化学習を行って液化天然ガスの単位生産量当たりの圧縮動力が最小となる操作変数の値を探索するので、外乱に応じた最適な運転を行うことができる。
特に、プラントモデル作成のために運転データや外乱データとしてプロセス変数や外乱の実績値を用いているので、プラントシミュレーションのようにシミュレーション結果と実運転とが乖離することによって最適値の妥当性が判断できないことや、シミュレーションが収束する条件を個別に探索する必要がない。この結果、多数の外乱やプロセス変数を用い、精度の高い予測を高速で行うことができる。
【0046】
ここで、上述の実施形態では、NGの予冷及びMR(液化用冷媒)の冷却を行うためにC3冷媒を用いるLNGプラント1について本例の運転指針探索方法を適用した例を説明した。但し、本例の運転指針の探索方法を適用可能なLNGプラント1は、
図1に示す例に限定されない。
例えば予冷用冷媒や冷媒冷却用冷媒(本例ではC3冷媒)を用いず、液化用冷媒である混合冷媒(MR)のみを用いた1段階圧力式MR方式のLNGプラント1であってもよい。
【0047】
また、予冷用冷媒を用いる場合においても、単独の液化用冷媒(冷媒原料:窒素やメタン)を用いたLNGプラント1でもよい。反対に、予冷用冷媒についてもプロパンやプロピレンなどの単独の冷媒原料を用いる場合に限定されず、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの混合冷媒を用いてもよい。また、窒素やメタンを冷媒原料とする過冷却用冷媒を用いてLNGを過冷却する過冷却器を備えたLNGプラント1であってもよい。
この他、プロパン冷媒、エチレン冷媒、メタン冷媒を用いて、NGを順次、冷却することによりLNGを得るカスケード方式のLNGプラント1に対しても、本技術を適用することができる。
【0048】
また、運転指針探索システム4はLNGプラント1の設置エリアの遠隔地に設ける場合に限定されない。操業管理システムの一部として、LNGプラント1の制御室に設けてもよい。
【解決手段】液化天然ガスプラントの運転指針探索方法は、複数の対象機器についてのプロセス変数の運転データと外乱データとのデータセットを取得し、機械学習により、操作変数及び外乱の入力値に応じたプロセス変数の出力値の対応関係を表すプラントモデルを作成する。次いで強化学習により、液化天然ガスの出口温度が予め設定された制約温度以下となる条件下で、単位生産量当たりの圧縮動力が最小となる前記操作変数の入力値を探索する。