(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸気の供給を受ける蒸気供給部と、供給された蒸気を使用する蒸気使用部と、使用後の蒸気を排出する蒸気排出部と、を備える蒸気使用設備を監視する監視システムであって、
前記蒸気排出部に設けられた蒸気トラップの温度を検出するトラップ温度センサ、および、前記蒸気トラップに流入する蒸気の温度を検出する蒸気温度センサ、の少なくとも1つである温度センサと、
前記蒸気トラップに流入する蒸気の圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記温度センサによる温度検出値および当該温度検出値を統計処理した温度統計データの少なくとも1つ、ならびに、前記圧力センサによる圧力検出値および当該圧力検出値を統計処理した圧力統計データの少なくとも1つが、いずれも所定の基準を逸脱するときに、前記蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断し、
前記圧力検出値および前記圧力統計データの少なくとも1つが所定の基準を逸脱し、かつ、前記温度検出値および前記温度統計データが所定の基準を満たすときに、前記蒸気供給部に設けられた蒸気供給弁に異常の発生または兆候があると判断する監視システム。
異常の発生または兆候があると判断したときに、当該異常が発生していることを前記蒸気使用設備の管理者に対して報知可能な異常報知部を備える請求項1に記載の監視システム。
蒸気の供給を受ける蒸気供給部と、供給された蒸気を使用する蒸気使用部と、使用後の蒸気を排出する蒸気排出部と、を備える蒸気使用設備を監視する監視プログラムであって、
前記蒸気排出部に設けられた蒸気トラップの温度を検出するトラップ温度センサ、および、前記蒸気トラップに流入する蒸気の温度を検出する蒸気温度センサ、の少なくとも1つからの信号を検出する温度検出機能と、
前記蒸気トラップに流入する蒸気の圧力を検出する圧力センサからの信号を検出する圧力検出機能と、
前記温度検出機能による温度検出値および当該温度検出値を統計処理した温度統計データの少なくとも1つ、ならびに、前記圧力検出機能による圧力検出値および当該圧力検出値を統計処理した圧力統計データの少なくとも1つが、いずれも所定の基準を逸脱するときに、前記蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断し、前記圧力検出値および前記圧力統計データの少なくとも1つが所定の基準を逸脱し、かつ、前記温度検出値および前記温度統計データが所定の基準を満たすときに、前記蒸気供給部に設けられた蒸気供給弁に異常の発生または兆候があると判断する判断機能と、コンピュータに実行させる監視プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術においては、蒸気制御器自身の状態を検出することを要し、異常の兆候に対する応答速度が十分ではない場合があった。
【0007】
そこで、より早期に異常の兆候を捉えることができる監視システムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る監視システムは、蒸気の供給を受ける蒸気供給部と、供給された蒸気を使用する蒸気使用部と、使用後の蒸気を排出する蒸気排出部と、を備える蒸気使用設備を監視する監視システムであって、前記蒸気排出部に設けられた蒸気トラップの温度を検出するトラップ温度センサ、および、前記蒸気トラップに流入する蒸気の温度を検出する蒸気温度センサ、の少なくとも1つである温度センサと、前記蒸気トラップに流入する蒸気の圧力を検出する圧力センサと、を備え、前記温度センサによる温度検出値および当該温度検出値を統計処理した温度統計データの少なくとも1つ、ならびに、前記圧力センサによる圧力検出値および当該圧力検出値を統計処理した圧力統計データの少なくとも1つが、いずれも所定の基準を逸脱するときに、前記蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断
し、前記圧力検出値および前記圧力統計データの少なくとも1つが所定の基準を逸脱し、かつ、前記温度検出値および前記温度統計データが所定の基準を満たすときに、前記蒸気供給部に設けられた蒸気供給弁に異常の発生または兆候があると判断することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る監視方法は、蒸気の供給を受ける蒸気供給部と、供給された蒸気を使用する蒸気使用部と、使用後の蒸気を排出する蒸気排出部と、を備える蒸気使用設備を監視する監視方法であって、前記蒸気排出部に設けられた蒸気トラップの温度、および、前記蒸気トラップに流入する蒸気の温度、の少なくとも1つを検出する温度検出工程と、前記蒸気トラップに流入する蒸気の圧力を検出する圧力検出工程と、前記温度検出工程における温度検出値および当該温度検出値を統計処理した温度統計データの少なくとも1つ、ならびに、前記圧力検出工程における圧力検出値および当該圧力検出値を統計処理した圧力統計データの少なくとも1つが、いずれも所定の基準を逸脱するときに、前記蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断
し、前記圧力検出値および前記圧力統計データの少なくとも1つが所定の基準を逸脱し、かつ、前記温度検出値および前記温度統計データが所定の基準を満たすときに、前記蒸気供給部に設けられた蒸気供給弁に異常の発生または兆候があると判断する判断工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る監視プログラムは、蒸気の供給を受ける蒸気供給部と、供給された蒸気を使用する蒸気使用部と、使用後の蒸気を排出する蒸気排出部と、を備える蒸気使用設備を監視する監視プログラムであって、前記蒸気排出部に設けられた蒸気トラップの温度を検出するトラップ温度センサ、および、前記蒸気トラップに流入する蒸気の温度を検出する蒸気温度センサ、の少なくとも1つからの信号を検出する温度検出機能と、前記蒸気トラップに流入する蒸気の圧力を検出する圧力センサからの信号を検出する圧力検出機能と、前記温度検出機能による温度検出値および当該温度検出値を統計処理した温度統計データの少なくとも1つ、ならびに、前記圧力検出機能による圧力検出値および当該圧力検出値を統計処理した圧力統計データの少なくとも1つが、いずれも所定の基準を逸脱するときに、前記蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断
し、前記圧力検出値および前記圧力統計データの少なくとも1つが所定の基準を逸脱し、かつ、前記温度検出値および前記温度統計データが所定の基準を満たすときに、前記蒸気供給部に設けられた蒸気供給弁に異常の発生または兆候があると判断する判断機能と、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
これらの構成によれば、機器の異常が深刻になって蒸気使用設備を停止せざるをえないような状態に陥る前に、予防的に機器の修理、点検などを行うことができる。特に、蒸気の温度および圧力は、蒸気トラップ自身に係る物理量(温度や振動など)に比べて、機器の異常に対する応答が早いため、従来の監視システムと比べて早期に異常の兆候を捉えることができる。
また、これらの構成によれば、蒸気トラップに加えて、蒸気供給弁に係る異常の兆候も捉えることができる。そのため、蒸気使用設備のどの部分にどのような異常が生じているのかを高い精度で推測しうるので、適切な保守作業を行いやすく、生産機会が損なわれにくい。
【0012】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0015】
本発明に係る監視システムは、一態様として、異常の発生または兆候があると判断したときに、当該異常が発生していることを前記蒸気使用設備の管理者に対して報知可能な異常報知部を備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、異常の発生または兆候があることを、管理者が速やかに認識できるので、生産機会が一層損なわれにくい。
【0017】
本発明に係る監視システムは、一態様として、前記蒸気トラップは、当該蒸気トラップに生じた閉塞物を自動的に除去可能な自動クリーニング機構を備え、前記蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断したときに、前記自動クリーニング機構を作動させることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、人為的な保守作業を伴うことなく異常またはその兆候を解消しうるので、生産機会が一層損なわれにくい。
【0019】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る監視システム、監視方法、および監視プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る監視システムを適用した監視システム1を用いて蒸気使用設備2を監視する方法を例として説明する。なお、監視システム1には、本発明に係る監視プログラムがインストールされている。
【0022】
なお、本願に係る特許請求の範囲、明細書、図面、および要約書において、「蒸気使用設備」とは、蒸気から取り出した運動エネルギーにより駆動する機器、蒸気が有する熱エネルギーを消費して対象物を加熱する機器などの、蒸気が有するエネルギーを消費して稼働する設備を表す。蒸気使用設備としては、蒸気タービン、温水製造ユニット、プレス機、オートクレーブ、反応器、加熱器などが例示されるが、これらの設備に限定されない。
【0023】
〔蒸気使用設備の基本構成〕
まず、本実施形態に係る監視システム1が監視対象とする蒸気使用設備2の構成について説明する。蒸気使用設備2は、蒸気の供給を受ける蒸気供給部21と、蒸気が有するエネルギーを消費して稼働する蒸気使用部22と、使用後の蒸気を排出する蒸気排出部23と、を備える(
図1)。蒸気供給部21、蒸気使用部22、および蒸気排出部23に設けられた各機器間は、蒸気配管24によって蒸気が流通可能に接続されている。また、蒸気使用設備2全体の動作を制御する設備制御部25を備える。蒸気使用設備2は、定期整備などに伴う計画的な停止期間と、機器の修理および交換などの保守点検を行うための突発的な停止期間とを除いて、原則的に連続して運転される。
【0024】
蒸気供給部21は、蒸気使用設備2が設置されたプラントの蒸気供給系統(不図示)から蒸気の供給を受ける部分であり、制御弁21a(蒸気供給弁の例)によって、蒸気供給系統から受け入れる蒸気の量を制御する。制御弁21aは、設備制御部25によりその開度が制御される。より具体的には、蒸気使用部22における蒸気の温度、圧力などの制御パラメータが所望の範囲になるように、制御弁21aの開度が設備制御部25によりフィードバック制御される。
【0025】
また、蒸気供給部21には、蒸気供給系統から受け入れた蒸気の温度を検出するための供給側蒸気温度センサ21bが設けられている。供給側蒸気温度センサ21bの検出信号は設備制御部25に入力され、設備制御部25による蒸気使用設備2の制御において、受け入れた蒸気の温度が参酌される。
【0026】
蒸気使用部22では、蒸気供給部21から流入した蒸気が持つエネルギーが、蒸気使用機器22aを駆動する熱または動力として消費される。したがって、蒸気使用部22から蒸気排出部23に排出される蒸気の温度および圧力は、蒸気供給部21が受け入れた蒸気の温度および圧力より低い。
【0027】
なお、蒸気使用部22に設けられた駆動部および各種センサ(いずれも不図示)は、設備制御部25と通信可能に接続されており、設備制御部25によって蒸気使用部22の動作が制御される。
【0028】
蒸気排出部23は、蒸気使用部22で使用した後の蒸気を系外に排出する部分であり、蒸気トラップ23aによって蒸気の排出を制御する。蒸気トラップ23aは、内部に溜まったドレンの量が一定量を超えると、自動的に開弁して溜まったドレンを系外に排出した後、自動的に再び閉弁する機構を有する。なお、蒸気トラップ23aには、蒸気トラップ23aにおける蒸気の排出経路であるオリフィス部分に生じた閉塞物を自動的に除去する自動クリーニング機構(不図示)が備えられている。かかる自動クリーニング機構は、後述するように監視システム1によりその動作が制御される。
【0029】
また、蒸気排出部23には、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の温度を検出するための排出側蒸気温度センサ23bが設けられている。排出側蒸気温度センサ23bの検出信号は、設備制御部25に入力され、設備制御部25による蒸気使用設備2の制御において、排出される蒸気の温度が参酌される。また、排出側蒸気温度センサ23bの検出信号は、監視システム1の監視制御部12にも入力され、後述するように監視システム1による蒸気使用設備2の状態の判断にも使用される。
【0030】
さらに、蒸気排出部23には、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の圧力を検出するための圧力センサ11が設置されている。圧力センサ11の検出信号は、監視システム1の監視制御部12に入力され、後述するように監視システム1による蒸気使用設備2の状態の判断にも使用される。
【0031】
〔監視システムの基本構成〕
次に、本実施形態に係る監視システム1の構成について説明する。監視システム1は、圧力センサ11、排出側蒸気温度センサ23b(蒸気温度センサの例)、および監視制御部12を備える(
図1、
図2)。前述のとおり、圧力センサ11および排出側蒸気温度センサ23bは、いずれも蒸気排出部23に設けられており、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の温度および圧力を検出可能である。
【0032】
なお、排出側蒸気温度センサ23bの検出値は、設備制御部25による蒸気使用設備2の制御と、監視システム1による蒸気使用設備2の監視との双方に用いられるため、排出側蒸気温度センサ23bは、蒸気使用設備2の構成要素であると同時に、監視システム1の構成要素でもある。この構成により、生産管理用のセンサを監視用にも用いることができるため、センサの設置数を低減できる。
【0033】
監視制御部12は、信号入力部12a、演算部12b、異常報知部12c、クリーニング制御部12d、記憶部12e、および表示部12fを有する。排出側蒸気温度センサ23bおよび圧力センサ11の検出信号は、信号入力部12aに入力され、演算部12bに渡される。
【0034】
演算部12bは、排出側蒸気温度センサ23bおよび圧力センサ11の検出信号に基づいて、蒸気使用設備2の状態を判断する。より具体的には、蒸気トラップ23aおよび制御弁21aに異常が発生しているか否かを判断する。
【0035】
演算部12bにおいて、蒸気トラップ23aおよび制御弁21aの少なくとも1つに異常が発生していると判断すると、異常報知部12cは、当該異常が発生していることを蒸気使用設備2の管理者に対して報知するための信号を発信する。かかる信号は、光や音などの管理者が直接に認知できる態様の信号であってもよいし、電話や電子メールなどの手段によって管理者が報知を受けられるように通信機器を制御する信号であってもよい。
【0036】
また、演算部12bにおいて、蒸気トラップ23aに異常が発生していると判断すると、クリーニング制御部12dは、蒸気トラップ23aに備えられた自動クリーニング機構を動作する信号を発信する。かかる信号は蒸気トラップ23aに入力され、自動クリーニング機構が作動する。
【0037】
記憶部12eには、信号入力部12aに入力された排出側蒸気温度センサ23bおよび圧力センサ11の検出信号や、演算部12bにより演算されて生成された情報など、監視システム1が取り扱う情報が蓄積される。
【0038】
また、本実施形態においては、表示部12fに、検出された温度および圧力の現在値、履歴値、および各種統計データ、ならびにその他の各種情報が表示され、蒸気使用設備2の管理者がこれらの情報を適宜確認できる。
【0039】
〔蒸気使用設備の典型的な異常〕
ここで、蒸気使用設備2に異常が発生していると判断する方法を説明する前提として、蒸気使用設備2に起こりうる2つの典型的な異常について説明する。
【0040】
まず、蒸気トラップ23aの詰まり異常について説明する。蒸気プラントを流通する蒸気は、不純物、異物、ならびに、配管などの構成要素からの脱落物および溶出物、などの物質を同伴する場合がある。このような物質は、配管系の末端部に配置される蒸気トラップ23aにおいて堆積および析出しやすく、特に、蒸気の排出経路であるオリフィス部分に堆積および析出しやすい。蒸気トラップ23aの開閉制御を精密に行うため、オリフィス部分は狭窄に形成されているので、オリフィス部分に発生した異物はドレンの円滑な排出を妨げうる。より具体的には、異物発生の程度が小さいときにはドレンの排出が不安定になり、異物発生の程度が大きいときにはオリフィス部分が完全に閉塞してドレンの排出が行われなくなる。ここで、ドレンの排出が不安定な状態においては、蒸気トラップ23aの設計上の所定量を超えてドレンが溜まり、何らかのきっかけで一時的に閉塞が解消されてドレンが排出され、やがて再び所定量を超えたドレンが溜まる、という動作が繰り返されることが典型的である。
【0041】
蒸気トラップ23aに詰まり異常が生じているときは、蒸気トラップ23aに所定量を超えたドレンが溜まることで、蒸気トラップ23aの温度が正常時に比べて低下する。そして、この影響を受けて、ドレンに流入する蒸気の温度も低下する。さらに、ドレンの排出が想定どおりに行わないため、蒸気配管24内の蒸気の圧力が上昇する。
【0042】
次に、制御弁21aの異常について説明する。前述の通り、制御弁21aは、蒸気使用部22における蒸気の温度、圧力などの制御パラメータが所望の範囲になるように、その開度が設備制御部25によってフィードバック制御されるものであるが、制御弁21aを構成する弁自体は、グローブ弁、ゲート弁などの機械的な弁で構成されている。したがって、制御弁21aを構成する機械部品が腐食や摩耗などにより劣化すると、制御弁21aが想定通りに制御されない場合がある。たとえば、制御弁21aの可動部に腐食が生じ、その開閉動作が円滑に行われない場合、設備制御部25から開弁または閉弁すべき命令を表す信号を受信したときに、実際の開弁動作または閉弁動作の応答が遅れる。その結果、蒸気配管24内の蒸気の圧力の振れ幅が大きくなる。一方、蒸気の温度は、瞬時値および振れ幅の双方において、正常時とさほど変わらない。
【0043】
〔本実施形態に係る監視方法〕
上記の典型的な異常を念頭に置くと、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の温度および圧力に基づいて、蒸気トラップ23aおよび制御弁21aにおいて現に発生している異常の有無、および、そのような異常の兆候を検知することができる。この目的のため、監視システム1は、蒸気使用設備2が運転しているか停止しているかに関わらず、連続的に蒸気使用設備2を監視する。特に、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の温度および圧力を、常に検知し続けている。
【0044】
演算部12bは、信号入力部12aに入力された排出側蒸気温度センサ23bおよび圧力センサ11の検出信号の現在値および履歴値に基づいて、温度および圧力のトレンドグラフ3を生成する(
図3〜8)。ここで、蒸気使用設備2が正常に運転しているときは、温度および圧力の値は、所定の基準値範囲(所定の基準の例)を満たす値に維持される。したがって、温度トレンドグラフ31aおよび圧力トレンドグラフ32aは、いずれもほぼ横ばいの曲線を描く。
図3および
図4に示したトレンドグラフ3a(温度トレンドグラフ31aおよび圧力トレンドグラフ32a)においては、温度180℃付近、圧力0.9MPa付近で安定している。
【0045】
図5および
図6は、蒸気トラップ23aに詰まり異常が発生した場合のトレンドグラフ3の例(トレンドグラフ3b)を示している。温度トレンドグラフ31b(
図5)において、12月11日頃から温度が徐々に下がり始め、12月16日頃には160℃付近まで低下したことが看取できる。また、12月16日以降の温度の振れ幅が、12月11日以前の温度の振れ幅より大きいことも看取できる。加えて、圧力トレンドグラフ32b(
図6)において、12月11日頃から圧力が徐々に上がり始め、またその振れ幅が徐々に大きくなっていったことが看取できる。
【0046】
このように、トレンドグラフ3bから看取できる温度および圧力の挙動は、蒸気トラップ23aに詰まり異常が生じた場合に見られる前述の挙動に対応している。したがって演算部12bは、排出側蒸気温度センサ23bによる温度検出値のトレンド(温度検出値を統計処理した温度統計データの例)において中央値の低下および振れ幅の増大が見られること(所定の基準を逸脱することの例)、および、圧力センサ11による圧力検出値のトレンド(圧力検出値を統計処理した圧力統計データの例)において中央値の上昇および振れ幅の増大が見られること(所定の基準を逸脱することの例)の双方が発生しているとき、蒸気トラップ23aに詰まり異常(異常の例)が発生していると判断する。より具体的には、温度および圧力の中央値および振れ幅について所定の基準値範囲を設定し、温度および圧力の双方について当該基準値範囲を逸脱したときに、蒸気トラップ23aに異常の発生または兆候があると判断する。
【0047】
図7および
図8は、制御弁21aに腐食による固着が発生した場合のトレンドグラフ3の例(トレンドグラフ3c)を示している。圧力トレンドグラフ32c(
図8)において、12月16日頃から圧力の振れ幅が徐々に増大したことが看取できる。一方、温度トレンドグラフ31c(
図7)は、図示された全期間を通じてほぼ一定の挙動を示している。
【0048】
このように、トレンドグラフ3cから看取できる温度および圧力の挙動は、制御弁21aの開閉動作が円滑に行われない場合に見られる前述の挙動に対応している。したがって演算部12bは、圧力センサ11による圧力検出値のトレンド(圧力検出値を統計処理した圧力統計データの例)において振れ幅の増大が見られる(所定の基準を逸脱することの例)一方で、排出側蒸気温度センサ23bによる温度検出値のトレンド(温度検出値を統計処理した温度統計データの例)は正常時とほぼ同等である(所定の基準を満たすことの例)とき、制御弁21aに異常が発生していると判断する。この場合においても、より具体的には、温度および圧力の中央値および振れ幅について所定の基準値範囲を設定し、圧力のみについて当該基準値範囲を逸脱したときに、制御弁21aに異常の発生または兆候があると判断する。
【0049】
従来、蒸気トラップ23aや制御弁21aのような蒸気制御機器に係る異常の検出は、これらの機器自身に係る温度および振動などの物理量の検出値、または、目視点検に基づいて行われていた。本実施形態の監視システム1においては、蒸気制御機器に係る物理量ではなく、これらの機器を流通する蒸気の温度および圧力に基づいて、これらの機器に係る異常の発生または兆候を判断することに特徴がある。蒸気の温度および圧力は、機器自身に係る物理量に比べて敏感に変動するため、機器の異常の兆候が小さい段階においても、その兆候を捉えることができる。特に、蒸気の圧力が極めて小さな異常にも応答することを、本発明者の鋭意検討により初めて発見した。
【0050】
したがって、機器の異常が深刻になって蒸気使用設備2を停止せざるをえないような状態に陥る前に、予防的に機器の修理、点検などを行うことができる。これによって、機器の保守作業を、定期整備などに伴う計画的な停止期間に計画することができ、蒸気使用設備2による生産の機会を最大化しうる。
【0051】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る監視システム、監視方法、および監視プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0052】
上記の実施形態では、監視システム1が、蒸気トラップ23aおよび制御弁21aに係る異常の発生または兆候があることを判断可能に構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る監視システムは、蒸気トラップに係る異常の発生または兆候のみを判断可能に構成されていてもよい。
【0053】
上記の実施形態では、監視システム1が、排出側蒸気温度センサ23bの検出信号に基づいて、蒸気トラップ23aに係る異常の発生または兆候があることを判断可能に構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る監視システムは、蒸気トラップの温度を検出するトラップ温度センサの検出信号に基づいて、蒸気トラップに係る異常の発生または兆候があることを判断可能に構成されていてもよい。すなわち、本発明に係る監視システムにおいて、温度センサは、トラップ温度センサおよび蒸気温度センサの少なくとも1つでありうる。
【0054】
上記の実施形態では、監視システム1が、温度検出値および圧力検出値のトレンドに基づいて、蒸気トラップ23aおよび制御弁21aに係る異常の発生または兆候があることを判断可能に構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る監視システムは、温度および圧力の検出値そのものに基づいて異常の発生または兆候があることを判断可能に構成されていてもよい。また、温度および圧力の検出値を統計処理した温度統計データおよび圧力統計データを用いる場合、上記の実施形態で説明した、トレンド、中央値、および振れ幅のほか、標準偏差、最頻値、最大値、および最小値など、任意の方法により抽出した統計データを用いてよい。なお、温度および圧力のいずれか一方については検出値そのものを用い、他方については統計データを用いてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、監視システム1が、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の温度および圧力に基づいて異常の発生または兆候があることを判断する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る監視システムは、監視対象とする蒸気使用設備に係る任意の物理量を、追加的に判断根拠としうる。かかる物理量としては、蒸気の流量、蒸気トラップの振動、蒸気使用機器の回転数などが例示されるが、これらに限定されない。
【0056】
上記の実施形態では、監視システム1が、温度検出値および圧力検出値のトレンドに基づいて、蒸気トラップ23aおよび制御弁21aに係る異常の発生または兆候があることを判断可能に構成されている例について説明するにあたり、具体的なトレンドグラフ3の例を示した。しかし、本発明に係る監視システムにおいて、異常の発生または兆候があることを判断するために用いる情報は、
図3〜8に図示したトレンドグラフ3のように管理者(人間)が理解しやすい形式である必要性はなく、演算処理に適した形式であれば特に限定されない。
【0057】
上記の実施形態では、監視システム1が、表示部12fを備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る監視システムは、入出力部(ユーザーインターフェース)を備えなくてもよい。ただし、入出力部(ユーザーインターフェース)を備える場合、管理者が情報の把握および監視システムの操作をしやすい点で好ましい。
【0058】
上記の実施形態では、監視システム1が1つの蒸気使用設備2を監視する構成について説明した。しかし、本発明に係る監視システム1は、複数の蒸気使用設備2を同時に監視しうる。
【0059】
上記の実施形態では、蒸気供給部21より上流側の蒸気供給系統は、監視システム1の監視対象とされていない構成を例として説明した。しかし、本発明に係る監視システム1は、蒸気使用設備に加え、当該蒸気使用設備に蒸気を供給する蒸気供給系統についても監視対象としうる。
【0060】
上記の実施形態では、蒸気トラップ23aが自動クリーニング機構を備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る監視システムが監視対象とする蒸気使用設備に備えられる蒸気トラップは、自動クリーニング機構を備えなくてもよい。たとえば、蒸気トラップが、自動クリーニング機構に代えて、操作によりオリフィス部分に生じた閉塞物を除去できる手動クリーニング機構を備えている場合、異常の発生または兆候があることを認識した管理者から指示を受けた作業者が、手動クリーニング機構を操作してもよい。
【0061】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
蒸気使用設備2を監視する監視システムは、蒸気排出部23に設けられた蒸気トラップ23aの温度を検出するトラップ温度センサ、および、蒸気トラップ23aに流入する蒸気の温度を検出する蒸気温度センサ23b、の少なくとも1つである温度センサと、蒸気トラップに流入する蒸気の圧力を検出する圧力センサ11と、を備え、温度センサによる温度検出値および当該温度検出値を統計処理した温度統計データの少なくとも1つ、ならびに、圧力センサによる圧力検出値および当該圧力検出値を統計処理した圧力統計データの少なくとも1つが、いずれも所定の基準を逸脱するときに、蒸気トラップに異常の発生または兆候があると判断する。