特許第6781872号(P6781872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6781872レーザ照射装置および薄膜トランジスタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781872
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】レーザ照射装置および薄膜トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20201102BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20201102BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20201102BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H01L29/78 627G
   H01L21/268 J
   H01L29/78 618C
   H01L21/20
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-142773(P2016-142773)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-14401(P2018-14401A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(74)【代理人】
【識別番号】100185971
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 玲子
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−297751(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/084702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/20
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生する光源と、
薄膜トランジスタに被着されたアモルファスシリコン薄膜の互いに異なる複数の領域に前記レーザ光を照射する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズは、前記薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極の間が複数のチャネル領域によって並列して接続されるように、前記アモルファスシリコン薄膜の前記互いに異なる複数の領域に前記レーザ光を照射する、
レーザ照射装置。
【請求項2】
前記投影レンズは、前記アモルファスシリコン薄膜の前記互いに異なる複数の領域に前記レーザ光を照射して、当該アモルファスシリコン薄膜をレーザアニールしてポリシリコン薄膜を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記投影レンズは、前記互いに異なる複数の領域の各々に対して、所定の回数の前記レーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記投影レンズは、複数のマイクロレンズであることを特徴とする
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記複数のマイクロレンズ上に配置され、前記互いに異なる複数の領域に対応するレーザ光の透過領域が設けられた複数の投影マスクを、さらに備え、
前記複数の投影マスクの各々は、少なくとも一つのマイクロレンズに割り当てられることを特徴とする請求項4に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
薄膜トランジスタに含まれるソース電極とドレイン電極との間に被着されたアモルファスシリコン薄膜の第1の領域にレーザ光を照射して、ポリシリコン薄膜を形成する第1のステップと、
前記第1の領域に前記レーザ光を照射した後、前記アモルファスシリコン薄膜の第2の領域に前記レーザ光を照射して、前記ポリシリコン薄膜を形成する第2のステップと、を含み、
前記第2のステップにおいて、前記ソース電極と前記ドレイン電極の間が複数の前記ポリシリコン薄膜によって並列して接続されるように、前記アモルファスシリコン薄膜において前記第1の領域とは異なる前記第2の領域に前記レーザ光を照射する、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記第1のステップおよび前記第2のステップにおいて、前記アモルファスシリコン薄膜に前記レーザ光を照射して、当該アモルファスシリコン薄膜をレーザアニールすることにより、前記ポリシリコン薄膜を形成すること、
を特徴とする請求項6に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記第1のステップにおいて、前記第1の領域に対して、第1のマイクロレンズを用いて前記レーザ光を照射し、
前記第2のステップにおいて、前記第2の領域に対して、第2のマイクロレンズを用いて前記レーザ光を照射すること
を特徴とする請求項6または7に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記第1のステップにおいて、前記第1の領域に対応する透過領域が設けられた第1の投影マスクを介して、前記レーザ光を前記アモルファスシリコン薄膜に照射し、
前記第2のステップにおいて、前記第2の領域に対応する透過領域が設けられた第2の投影マスクを介して、前記レーザ光を前記モルファスシリコン薄膜に照射すること
を特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタの形成に関するものであり、特に、薄膜トランジスタ上のアモルファスシリコン薄膜にレーザ光を照射して、ポリシリコン薄膜を形成するためのレーザ照射装置よび薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆スタガ構造の薄膜トランジスタとして、アモルファスシリコン薄膜をチャネル領域に使用したものが存在する。ただ、アモルファスシリコン薄膜は電子移動度が小さいため、当該アモルファスシリコン薄膜をチャネル領域に使用すると、薄膜トランジスタにおける電荷の移動度が小さくなるという難点があった。
【0003】
そこで、アモルファスシリコン薄膜の所定の領域をレーザ光により瞬間的に加熱することで多結晶化し、電子移動度の高いポリシリコン薄膜を形成して、当該ポリシリコン薄膜をチャネル領域に使用する技術が存在する。
【0004】
例えば、特許文献1には、チャネル領域にアモルファスシリコン薄膜形成し、その後、このアモルファスシリコン薄膜にエキシマレーザ等のレーザ光を照射してレーザアニールすることにより、短時間での溶融凝固によって、ポリシリコン薄膜に結晶化させる処理を行うことが開示されている。特許文献1には、当該処理を行うことにより、薄膜トランジスタのソースとドレイン間のチャネル領域を、電子移動度の高いポリシリコン薄膜とすることが可能となり、トランジスタ動作の高速化が可能になる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−100537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の薄膜トランジスタでは、ソースとドレイン間のチャネル領域が、一か所(一本)のポリシリコン薄膜により形成されている。そのため、薄膜トランジスタの特性は、一か所(一本)のポリシリコン薄膜に依存することになる。
【0007】
ここで、エキシマレーザ等のレーザ光のエネルギ密度は、その照射(ショット)ごとにばらつきが生じるため、当該レーザ光を用いて形成されるポリシリコン薄膜の電子移動度にもばらつきが生じる。そのため、当該ポリシリコン薄膜を用いて形成される薄膜トランジスタの特性も、レーザ光のエネルギ密度のばらつきに依存してしまう。
【0008】
その結果、ガラス基板に含まれる複数の薄膜トランジスタの特性には、ばらつきが生じてしまう可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、ガラス基板に含まれる複数の薄膜トランジスタの特性のばらつきを抑制可能なレーザ照射装置よび薄膜トランジスタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態におけるレーザ照射装置は、レーザ光を発生する光源と、薄膜トランジスタに被着されたアモルファスシリコン薄膜の互いに異なる複数の領域に当該レーザ光を照射する投影レンズと、を備え、当該投影レンズは、当該薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極の間が複数のチャネル領域によって並列して接続されるように、当該アモルファスシリコン薄膜の当該互いに異なる複数の領域に当該レーザ光を照射することを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態におけるレーザ照射装置において、当該投影レンズは、当該アモルファスシリコン薄膜の当該互いに異なる複数の領域に当該レーザ光を照射して、当該アモルファスシリコン薄膜をレーザアニールしてポリシリコン薄膜を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態におけるレーザ照射装置において、当該投影レンズは、当該互いに異なる複数の領域の各々に対して、所定の回数の当該レーザ光を照射することを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態におけるレーザ照射装置において、当該投影レンズは、複数のマイクロレンズであることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態におけるレーザ照射装置は、マイクロレンズ上に配置され、当該互いに異なる複数の領域に対応するレーザ光の透過領域が設けられた複数の投影マスクを、さらに備え、当該マイクロレンズは、当該複数の投影マスクの各々を順番に切り替えながら、当該アモルファスシリコン薄膜の互いに異なる複数の領域に当該レーザ光を照射して、当該ポリシリコン薄膜を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態における薄膜トランジスタは、ガラス基板上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、当該ソース電極と当該ドレイン電極との間に形成される複数のチャネル領域と、を含み、当該複数のチャネル領域の各々は、アモルファスシリコン薄膜がレーザアニールされたポリシリコン薄膜によって形成され、当該ソース電極と当該ドレイン電極とは、当該複数のチャネル領域により並列して接続されることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態における薄膜トランジスタは、当該複数のチャネル領域の各々は、互いに同じ幅であることを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態における薄膜トランジスタの製造方法は、薄膜トランジスタに含まれるソース電極とドレイン電極との間に被着されたアモルファスシリコン薄膜の第1の領域にレーザ光を照射して、ポリシリコン薄膜を形成する第1のステップと、当該第1の領域に当該レーザ光を照射した後、当該アモルファスシリコン薄膜の第2の領域に当該レーザ光を照射して、当該ポリシリコン薄膜を形成する第2のステップと、を含み、当該第2のステップにおいて、当該ソース電極と当該ドレイン電極の間が複数の当該ポリシリコン薄膜によって並列して接続されるように、当該アモルファスシリコン薄膜において当該第1の領域とは異なる当該第2の領域に当該レーザ光を照射することを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態における薄膜トランジスタの製造方法は、当該第1のステップおよび当該第2のステップにおいて、当該アモルファスシリコン薄膜に当該レーザ光を照射して、当該アモルファスシリコン薄膜をレーザアニールすることにより、当該ポリシリコン薄膜を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明の一実施形態における薄膜トランジスタの製造方法は、当該第1のステップにおいて、当該第1の領域に対して、第1のマイクロレンズを用いて前記レーザ光を照射し、当該第2のステップにおいて、前記第2の領域に対して、第2のマイクロレンズを用いて前記レーザ光を照射することを特徴とする。
【0020】
本発明の一実施形態における薄膜トランジスタの製造方法は、当該第1のステップにおいて、当該第1の領域に対応する透過領域が設けられた第1の投影マスクを介して、当該レーザ光を当該モルファスシリコン薄膜に照射し、当該第2のステップにおいて、当該第2の領域に対応する透過領域が設けられた第2の投影マスクを介して、当該レーザ光を当該モルファスシリコン薄膜に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガラス基板に含まれる複数の薄膜トランジスタの特性のばらつきを抑制可能な、レーザ照射装置よび薄膜トランジスタの製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態におけるレーザ照射装置10の構成例を示す図である。
図2】所定の領域がアニール化された薄膜トランジスタ20の例を示す模式図である。
図3】レーザ照射装置10がレーザ光14を照射するガラス基板30の例を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態における、レーザ照射装置10を用いたレーザアニールの例を示す図である。
図5】マイクロレンズアレイ13に設けられた投影マスクパターン15の構成例を示す模式図である。
図6】マイクロレンズアレイ13に設けられた投影マスクパターン15の他の構成例を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態における、マイクロレンズアレイ13の構成例を示す図である。
図8】薄膜トランジスタ20に形成されるポリシリコン薄膜22の例を示す模式図である。
図9】本発明の第2の実施形態におけるレーザ照射装置10の構成例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態におけるマスク30と薄膜トランジスタ20の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ照射装置10の構成例を示す図である。
【0025】
本発明の第1の実施形態において、レーザ照射装置10は、薄膜トランジスタ(TFT)20のような半導体装置の製造工程において、例えば、チャネル領域形成予定領域のみにレーザ光を照射してアニールし、当該チャネル領域形成予定領域を多結晶化するための装置である。
【0026】
レーザ照射装置10は、例えば、液晶表示装置の周辺回路などの画素の薄膜トランジスタを形成する際に用いられる。このような薄膜トランジスタを形成する場合、まず、ガラス基板30上にAl等の金属膜からなるゲート電極を、スパッタによりパターン形成する。そして、低温プラズマCVD法により、ガラス基板30上の全面にSiN膜からなるゲート絶縁膜を形成する。その後、ゲート絶縁膜上に、例えば、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン薄膜21を形成する。そして、図1に例示するレーザ照射装置10により、アモルファスシリコン薄膜21のゲート電極上の所定の領域にレーザ光14を照射してアニールし、当該所定の領域を多結晶化してポリシリコン化する。
【0027】
図1に示すように、レーザ照射装置10において、レーザ光源11から出射されたレーザ光は、カップリング光学系12によりビーム系が拡張され、輝度分布が均一化される。レーザ光源11は、例えば、波長が308nmや248nmなどのレーザ光を、所定の繰り返し周期で放射するエキシマレーザである。
【0028】
その後、レーザ光は、マイクロレンズアレイ13上に設けられた投影マスクパターン15(図示しない)の複数の開口(透過領域)により、複数のレーザ光14に分離され、アモルファスシリコン薄膜21の所定の領域に照射される。マイクロレンズアレイ13には、投影マスクパターン15が設けられ、当該投影マスクパターン15によって所定の領域にレーザ光14が照射される。そして、アモルファスシリコン薄膜21の所定の領域が瞬間加熱されて溶融し、アモルファスシリコン薄膜21の一部がポリシリコン薄膜22となる。
【0029】
ポリシリコン薄膜22は、アモルファスシリコン薄膜21に比べて電子移動度が高く、薄膜トランジスタ20において、ソース23とドレイン24とを電気的に接続させるチャネル領域に用いられる。なお、図1の例では、マイクロレンズアレイ13を用いた例を示しているが、必ずしもマイクロレンズアレイ13を用いる必要はなく、1個の投影レンズを用いてレーザ光14を照射してもよい。なお、実施形態1では、マイクロレンズアレイ13を用いて、ポリシリコン薄膜22を形成する場合を例にして説明する。
【0030】
図2は、所定の領域がアニール化された薄膜トランジスタ20の例を示す模式図である。なお、薄膜トランジスタ20は、最初にポリシリコン薄膜22を形成し、その後、形成されたポリシリコン薄膜22の両端にソース23とドレイン24を形成することで、作成される。
【0031】
図2(a)に示す薄膜トランジスタは、ソース23とドレイン24との間に、一本のポリシリコン薄膜22が形成されている。なお、レーザ照射装置10は、1つの薄膜トランジスタ20に対して、マイクロレンズアレイ13の一列(または一行)に含まれる例えば20個のマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を照射する。すなわち、レーザ照射装置10は、1つの薄膜トランジスタ20に対して、20ショットのレーザ光14を照射する。その結果、薄膜トランジスタ20において、アモルファスシリコン薄膜21の所定の領域が瞬間加熱されて溶融し、ポリシリコン薄膜22となる。レーザ照射装置10は、なお、マイクロレンズアレイ13の一列(または一行)に含まれるマイクロレンズ17の数は、20に限られず、複数であればいくつであってもよい。
【0032】
ここで、エキシマレーザにおいて、パルス間の安定性は、0.5%程度である。すなわち、レーザ照射装置10は、1ショットごとに、そのレーザ光14のエネルギ密度に0.5%程度のばらつきを生じさせる。そのため、レーザ照射装置10によって形成されるポリシリコン薄膜22の電子移動度にも、ばらつぎが生じてしまう可能性がある。
【0033】
具体的には、レーザ光14を照射されたことにより形成されたポリシリコン薄膜22の電子移動度は、当該ポリシリコン薄膜22に最後に照射されたレーザ光14のエネルギ密度、すなわち最後のショットのエネルギ密度に依存する。上述したように、レーザ光14のエネルギ密度は1ショットごとにばらつきがある。すなわち、ポリシリコン薄膜22はエネルギ密度にばらつきのあるレーザ光14によりその電子移動度が決定されるため、ガラス基板30上の複数の薄膜トランジスタ20に含まれるポリシリコン薄膜22の各々は、電子移動度にばらつきが生じる可能性がある。ポリシリコン薄膜22の電子移動度は、薄膜トランジスタ20の特性を決定するため、複数の薄膜トランジスタ20の各々は、その特性にばらつきが生じることがある。例えば、ガラス基板30に含まれる隣接する薄膜トランジスタ20は、互いにその特性にばらつきが生じてしまう可能性がある。そして、このように特性にばらつきがある複数の薄膜トランジスタ20を含むガラス基板30を液晶表示装置の液晶に用いた場合、表示むらが生じてしまう恐れがある。
【0034】
そこで、図2(b)に示すように、本発明の第1の実施形態では、複数のポリシリコン薄膜22が形成され、その後、当該複数のポリシリコン薄膜22の両端にソース23とドレイン24とが形成される。複数のポリシリコン薄膜22の各々は、レーザ光14のエネルギ密度は1ショットごとにばらつきがあることから、その電子移動度にばらつきが生じる可能性がある。前述したように、ポリシリコン薄膜22の電子移動度は、当該ポリシリコン薄膜22に最後に照射されたレーザ光14のエネルギ密度、すなわち最後のショットのエネルギ密度に依存するからである。
【0035】
ただし、薄膜トランジスタ20のソース23とドレイン24は、当該複数のポリシリコン薄膜22により並列して接続されるため、複数のポリシリコン薄膜22間において電子移動度のばらつきが平均化される。ソース23とドレイン24間に、例えば4本のポリシリコン薄膜22を設けた場合、4本のポリシリコン薄膜22の各々の電子移動性はばらつきが生じるが、ソース23とドレイン24間の電子移動性は、当該4本のポリシリコン薄膜22の各々の電子移動性のばらつきを平均化した値となる。
【0036】
すなわち、ガラス基板30に含まれる複数の薄膜トランジスタ20の各々において、ソース23とドレイン24との間の電子移動度は、当該ソース23と当該ドレイン24との間に形成されるポリシリコン薄膜22の数の分だけ、そのばらつきが平均化される。
【0037】
上記のとおり、薄膜トランジスタ20のソース23とドレイン24間のポリシリコン薄膜22が1本の場合、各薄膜トランジスタ20間の特性のばらつきは、レーザ光14の1ショットごとのエネルギ密度の0.5%程度のばらつきに依存してしまう。一方、薄膜トランジスタ20のソース23とドレイン24間のポリシリコン薄膜22が複数の場合、当該複数のポリシリコン薄膜22の各々の電子移動性は、レーザ光14の1ショットごとのエネルギ密度の0.5%程度のばらつきに依存するが、ソース23とドレイン24間の電子移動性のばらつきは、当該複数のポリシリコン薄膜22の各々のばらつきを平均化したものとなる。そのため、各薄膜トランジスタ20間の特性は、ソース23とドレイン24間のポリシリコン薄膜22が1本の場合よりも、複数本の場合の方が、ばらつきが少なくなる。その結果、本発明の第1の実施形態において、複数の薄膜トランジスタ20の各々の特性のばらつきが低減され、液晶表示装置の液晶における表示ムラが生じることを抑制することができる。
【0038】
図2(b)において、薄膜トランジスタ20は、ソース23とドレイン24との間に、複数のポリシリコン薄膜22が形成されている。図2(b)の例では、ソース23とドレイン24との間に、4本のポリシリコン薄膜22が形成されている。なお、本発明の第1の実施形態において、ソース23とドレイン24との間のポリシリコン薄膜22は4本に限られず、複数であればよい。
【0039】
各ポリシリコン薄膜22は、例えば、その幅が4μmである。なお、各ポリシリコン薄膜22の幅は、4μmに限られず、例えば7μmなどであってもよい。各ポリシリコン薄膜22の幅は、電子移動性やオフ電流を考慮して決定される。例えば、ポリシリコン薄膜22の幅が長くなると、電子移動度は大きくなるが、オフ電流の大きさが無視できないものとなるため、要求される薄膜トランジスタ20の特性を考慮して、各ポリシリコン薄膜22の幅が決定される。また、ポリシリコン薄膜22の幅は、薄膜トランジスタ20に形成される当該ポリシリコン薄膜22の数を考慮して決定してもよい。また、ポリシリコン薄膜22の幅や数は、薄膜トランジスタ20の大きさに基づいて、決定してもよい。なお、図2(b)の例では、各ポリシリコン薄膜22の幅は、互いに同一であってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0040】
また、各ポリシリコン薄膜22間の幅は、所定の幅であればよく、各ポリシリコン薄膜22間相互の影響を及ぼさないような幅にすることが望ましい。各ポリシリコン薄膜22間の幅は、薄膜トランジスタ20に形成されるポリシリコン薄膜22の数や幅、または、当該薄膜トランジスタ20の大きさ等に基づいて決定してもよい。
【0041】
各ポリシリコン薄膜22は、レーザ照射装置10に含まれるマイクロレンズアレイ13に含まれるマイクロレンズ17を用いて、例えば5ショット分のレーザ光14を照射されることにより形成される。そして、上述したように、各ポリシリコン薄膜22の電子移動度は、レーザ光14の最後のショットに依存する。そのため、4本のポリシリコン薄膜22の各々の電子移動度は、互いに、レーザ光14の1ショットごとのエネルギ密度の0.5%程度のばらつきに依存する。
【0042】
ただ、図2(b)に示すように、ソース23とドレイン24との間は複数のポリシリコン薄膜22により並列に形成されるため、ショット間のばらつきが平均化される。そのため、薄膜トランジスタ20の特性のばらつきも平均化されることになる。よって、液晶表示装置の液晶における表示ムラが生じることを抑制することができる。
【0043】
なお、薄膜トランジスタ20全体の大きさは、当該薄膜トランジスタ20に形成される複数のポリシリコン薄膜22の数に応じて、変更してもよい。例えば、形成されるポリシリコン薄膜22の数が多ければ、それに応じて、薄膜トランジスタ20の大きさを大きくしてもよい。
【0044】
図3は、レーザ照射装置10がレーザ光14を照射するガラス基板30の例を示す模式図である。図3に示すように、ガラス基板30は、複数の画素31を含み、当該画素31の各々に薄膜トランジスタ20を備える。薄膜トランジスタ20は、複数に画素31の各々における光の透過制御を、電気的にON/OFFすることにより実行するものである。図3に示すように、ガラス基板30には、所定の間隔「H」で、アモルファスシリコン薄膜21が設けられている。当該アモルファスシリコン薄膜21の部分は、薄膜トランジスタ20となる部分である。
【0045】
レーザ照射装置10は、アモルファスシリコン薄膜21の所定の領域にレーザ光14を照射する。ここで、レーザ照射装置10は所定の周期でレーザ光14を照射し、レーザ光14が照射されていない時間にガラス基板30を移動させ、次のアモルファスシリコン薄膜21の箇所に当該レーザ光14が照射されるようにする。図3に示すように、ガラス基板30は、移動方向に対して、所定の間隔「H」でアモルファスシリコン薄膜21が配置される。そして、レーザ照射装置10は、所定の周期で、ガラス基板30上に配置されたアモルファスシリコン薄膜21の部分に、レーザ光14を照射する。
【0046】
レーザ照射装置10は、まず、図3の領域Aにある複数のアモルファスシリコン薄膜21に対して、マイクロレンズアレイ13に含まれる第1のマイクロレンズ17aを用いて、レーザ光14を照射する。その後、ガラス基板30を所定の間隔「H」だけ移動させる。ガラス基板30が移動している間、レーザ照射装置10は、レーザ光14の照射を停止する。そして、ガラス基板30が「H」だけ移動した後、レーザ照射装置10は、マイクロレンズアレイ13に含まれる第2のマイクロレンズ17bを用いて、図2の領域Bにある複数のアモルファスシリコン薄膜21に対して、レーザ光14を照射する。この場合に、図2の領域Aにある複数のアモルファスシリコン薄膜21は、マイクロレンズアレイ13において第1のマイクロレンズ17aに隣接する第2のマイクロレンズ17bによって、レーザ光14が照射される。レーザ光14を照射する。このように、ガラス基板30に含まれるアモルファスシリコン薄膜21は、マイクロレンズアレイ13の一列(または一行)に該当する複数のマイクロレンズ17により、レーザ光14を照射される。
【0047】
なお、レーザ照射装置10は、ガラス基板30が「H」だけ移動した後、一旦停止した当該ガラス基板30に対してレーザ光14を照射してもよいし、移動し続けている当該ガラス基板30に対してレーザ光14を照射してもよい。
【0048】
図4は、本発明の第1の実施形態における、レーザ照射装置10を用いたレーザアニールの例を示す図である。図4の例では、マイクロレンズアレイ13は、一列(または一行)に4つのマイクロレンズ17を含む。なお、マイクロレンズアレイ14の一列(または一行)に含まれるマイクロレンズ17の数は、4つに限られず、いくつであってもよい。
【0049】
まず、レーザ照射装置10は、マイクロレンズアレイ13に含まれるマイクロレンズ17aを用いて、第1の薄膜トランジスタ20aの第1の領域25a1にレーザ光14を照射する。その結果、第1の領域25a1において、アモルファスシリコン薄膜21が瞬間加熱されて溶融し、ポリシリコン薄膜22となる。なお、アモルファスシリコン薄膜21は、薄膜トランジスタ30の全体に形成されていても、ガラス基板30上の全面に形成されていてもよい。
【0050】
次に、レーザ照射装置10が、レーザ光14の照射を停止している間、ガラス基板30が所定の間隔、図2の例では「H」、移動する。そして、レーザ照射装置10は、マイクロレンズアレイ13に含まれるマイクロレンズ17bを用いて、第1の薄膜トランジスタ20aの第2の領域25a2にレーザ光14を照射し、ポリシリコン薄膜22とする。同時に、レーザ照射装置10は、マイクロレンズアレイ13に含まれるマイクロレンズ17aを用いて、第2の薄膜トランジスタ20bの第1の領域25b1にレーザ光14を照射し、ポリシリコン薄膜22とする。この場合において、上述したように、ガラス基板30は、移動し続けていてもよいし、レーザ光14を照射するときだけ一旦静止してもよい。
【0051】
続けて、レーザ照射装置10は、レーザ光14の照射を停止している間、ガラス基板30が所定の間隔、移動する。そして、レーザ照射装置10は、マイクロレンズ17cを用いて、第1の薄膜トランジスタ20aの第3の領域25a3にレーザ光14を照射し、ポリシリコン薄膜22とする。同時に、レーザ照射装置10は、マイクロレンズ17bを用いて第2の薄膜トランジスタ20bの第2の領域25b2に、マイクロレンズ17aを用いて第3の薄膜トランジスタ20cの第1の領域25c1に、それぞれレーザ光14を照射し、ポリシリコン薄膜22とする。
【0052】
さらに、レーザ照射装置10は、ガラス基板30が「H」移動した後、マイクロレンズ17dを用いて第1の薄膜トランジスタ20aの第4の領域25a4に、マイクロレンズ17cを用いて第2の薄膜トランジスタ20bの第3の領域25b3に、マクロレンズ17bを用いて第3の薄膜トランジスタ20cの第2の領域25c2に、マイクロレンズ17aを用いて第4の薄膜トランジスタ20dの第1の領域25d1に、それぞれレーザ光14を照射し、ポリシリコン薄膜22とする。
【0053】
上記のとおり、レーザ照射装置10は、マイクロレンズアレイ13に含まれる複数のマイクロレンズ17を順次用いて、薄膜トランジスタ20の所定の領域にレーザ光14を照射し、当該所定の領域をポリシリコン薄膜22とする。そして、複数のマイクロレンズ17の各々によって照射される領域が異なるため、薄膜トランジスタ20の複数の領域を、ポリシリコン薄膜22とすることができる。
【0054】
なお、図4の例では、マイクロレンズアレイ13の一列(または一行)に含まれるマイクロレンズ17の数は4つであるが、4つに限られず、例えば20個などであってもよい。マイクロレンズアレイ13の一列(または一行)に含まれるマイクロレンズ17の数が20個の場合、最初の5個(1〜5個目)により第1の領域(例えば、25a1など)にレーザ光14を照射し、次の5個(6〜10個目)により第2の領域(例えば、25a2)にレーザ光14を照射し、次の5個(11〜15個目)により第3の領域(例えば、25a3)にレーザ光14を照射し、最後の5個(16〜20個目)により第4の領域(例えば、25a4)にレーザ光14を照射する。その結果、1つの領域(第1〜第4の領域の各々)に対して、5ショットのレーザ光14が照射されることになる。
【0055】
図5は、マイクロレンズアレイ13に設けられた投影マスクパターン15の構成例を示す模式図である。図5に示すように、本発明の第1の実施形態では、複数の投影マスクパターン15を用いて、薄膜トランジスタ20に複数のポリシリコン薄膜22を形成する。複数の投影マスクパターン15には、少なくとも1つのマイクロレンズ17が割り当てられる。
【0056】
レーザ照射装置10は、1つの投影マスクパターン15に割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を照射する。図5の例のように、4つの投影マスクパターン15を用いる場合、例えば、各投影マスクパターン15には、5つのマイクロレンズ17が割り当てられる。なお、1つの投影マスクパターン15に割り当てられるマイクロレンズ17の数は、いくつであってもよい。また、異なる投影マスクパターンの各々に割り当てられるマイクロレンズ17の数は、同数であっても、異なる和であってもよい。
【0057】
図5に例示する複数の投影マスクパターン15は、透過領域16を含む。レーザ光14は、当該透過領域16を透過し、薄膜トランジスタ20上のアモルファスシリコン薄膜21に投射される。複数の投影マスクパターン15の各々は、薄膜トランジスタ20上に形成されるポリシリコン薄膜22の各々に対応しており、各投影マスクパターン15における透過領域16の幅は、例えば4μmである。なお、各投影マスクパターン15の透過領域の幅16は、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0058】
レーザ照射装置10が、1つの薄膜トランジスタ20に複数のマイクロレンズ17を用いてレーザ光14を照射する場合、複数の投影マスクパターン15の各々を当該複数のマイクロレンズ17の少なくとも一つに割り当てる。4つの投影マスクパターン15を用いる場合、レーザ照射装置10は、1つの薄膜トランジスタ20に対して20個のマイクロレンズ17を用いてレーザ光14を照射するのであれば、1つの投影マスクパターン15には5つのマイクロレンズ17を割り当てる。その結果、レーザ照射装置10は、1つの投影マスクパターン15を用いて、5ショット分のレーザ光14を、薄膜トランジスタ20に照射することになる。その結果、薄膜トランジスタ20上のアモルファスシリコン薄膜21の所定の領域は、1つの投影マスクパターン15を用いて、5ショット分のレーザ光14を照射される。その結果、薄膜トランジスタ20上には、4か所(4本)のポリシリコン薄膜22が形成される。
【0059】
図5の例では、ガラス基板30の移動方向(スキャン方向)に対して、投影マスクパターン15の透過領域16は、直交するように設けられる。なお、投影マスクパターン15の透過領域16は、ガラス基板30の移動方向(スキャン方向)に対して必ずしも直交する必要はなく、該移動方向(スキャン方向)に対して平行(略平行)に設けられていてもよい。
【0060】
図6は、マイクロレンズアレイ13に設けられた投影マスクパターン15の他の構成例を示す模式図である。図6に示すように、投影マスクパターン15の透過領域16は、ガラス基板30の移動方向(スキャン方向)に対して、平行(略平行)に設けられていてもよい。
【0061】
図7は、本発明の第1の実施形態における、マイクロレンズアレイ13の構成例を示す図である。図7に示すように、マイクロレンズアレイ13のスキャン方向の列(または行)には、20個のマイクロレンズ17が含まれる。なお、マイクロレンズアレイ13に含まれるマイクロレンズ17の数は、いくつであってもよい。
【0062】
図7に例示するように、複数のマイクロレンズ17の各々は、図6に例示する投影マスクパターンのいずれかが割り当てられる。図7の例では、スキャン方向から最初の1〜5個目のマイクロレンズ17には、透過領域16aを含む投影マスクパターン15aが割り当てられる。また、次の6〜10個目のマイクロレンズ17には、透過領域16bを含む投影マスクパターン15bが割り当てられる。さらに、11〜15個目のマイクロレンズ17には、透過領域16cを含む投影マスクパターン15cが割り当てられる。最後に、16〜20個目のマイクロレンズには、透過領域16dを含む投影マスクパターン15dが割り当てられる。
【0063】
なお、1つの投影マスクパターン15に割り当てられるマイクロレンズ17の数は、いくつであってもよい。異なる投影マスクパターン15の各々は、同数のマイクロレンズ17が割り当てられても、異なる数のマイクロレンズ17が割り当てられてもよい。また、図7の例のように、スキャン方向から順番に、投影マスクパターン15をマイクロレンズ17に割り当てるのではなく、例えばランダムに割り当ててもよい。例えば、投影マスクパターン15aは、スキャン方向から1個目、6個目、8個目、10個目および15個目といったように、ランダムにマイクロレンズ17を割り当ててもよい。
【0064】
本発明の第1の実施形態におけるレーザ照射装置10は、図7に例示するように、異なる投影マスクパターン15が割り当てられた複数のマイクロレンズ17を用いて、薄膜トランジスタ20の複数の領域をレーザ光14で照射し、ポリシリコン薄膜22を形成する。
【0065】
図8は、薄膜トランジスタ20に形成されるポリシリコン薄膜22の例を示す模式図である。図8に示すように、薄膜トランジスタ20において、複数のポリシリコン薄膜22は、図6に示す複数の投影マスクパターン15を用いて、順々に形成される。
【0066】
まず、図5(a)の投影マスクパターン15に割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、図8(a)のポリシリコン薄膜22aが形成される。レーザ照射装置10は、例えば、投影マスクパターン15aが割り当てられた5つのマイクロレンズ17を用いて、5ショット分のレーザ光14を照射する。その後、図5(b)の投影マスクパターン15bに割り当てられた5つのマイクロレンズ17を用いて、5ショット分のレーザ光14を照射し、図8(b)のポリシリコン薄膜22bが形成される。同様にして、図5(c)の投影マスクパターン15cが割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、図8(c)のポリシリコン薄膜22cが形成され、図5(d)の投影マスクパターン15dが割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、図8(d)のポリシリコン薄膜22dが形成される。
【0067】
上記のとおり、レーザ照射装置10において、複数の投影マスクパターン15の各々に少なくとも1つ以上のマイクロレンズ17割り当てることで、薄膜トランジスタ20の複数の領域に、ポリシリコン薄膜22を形成することができる。
【0068】
このように、本発明の第1の実施形態では、複数の投影マスクパターン15の各々にマイクロレンズ17を割り当てることで、薄膜トランジスタ20のソース23とドレイン24間に、複数のポリシリコン薄膜22を形成することができる。そして、複数のポリシリコン薄膜22の各々は、電気的に接続させるチャネル領域に用いられる。
【0069】
次に、レーザ照射装置10を用いて、図2に例示する本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタ20を作成する方法について、説明する。
【0070】
まず、レーザ照射装置10は、第1工程において、図5(a)の投影マスクパターン15aに割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第1の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第1の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(a)のポリシリコン薄膜22aとなる。レーザ照射装置10は、例えば、投影マスクパターン15aに割り当てられた5つのマイクロレンズ17を用いて、第1の領域に5ショット分のレーザ光14を照射する。
【0071】
続いて、レーザ照射装置10は、第2工程において、図5(b)の投影マスクパターン15bに割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第2の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第2の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(b)のポリシリコン薄膜22bとなる。レーザ照射装置10は、例えば、投影マスクパターン15bに割り当てられた5つのマイクロレンズ17を用いて、第2の領域に5ショット分のレーザ光14を照射する。
【0072】
同様にして、レーザ照射装置10は、第3工程において、図5(c)の投影マスクパターン15cに割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第1の所定の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第3の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(c)のポリシリコン薄膜22cとなる。レーザ照射装置10は、例えば、投影マスクパターン15cに割り当てられた5つのマイクロレンズ17を用いて、第3の領域に5ショットのレーザ光14を照射する。
【0073】
続けて、レーザ照射装置10は、第4工程において、図5(d)の投影マスクパターン15dに割り当てられたマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第4の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第4の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(d)のポリシリコン薄膜22dとなる。レーザ照射装置10は、例えば、投影マスクパターン15dに割り当てられた5つのマイクロレンズ17を用いて、5ショット分のレーザ光14を照射する。
【0074】
ガラス基板30は、1つのマイクロレンズ17によりレーザ光14が照射されるごとに、所定の距離だけ移動する。所定の距離は、図2に例示するように、ガラス基板30における複数の薄膜トランジスタ20間の距離「H」である。レーザ照射装置10は、ガラス基板30を当該所定の距離移動させる間、レーザ光14の照射を停止する。
【0075】
ガラス基板30が所定の距離「H」を移動した後、レーザ照射装置10は、マイクロレンズアレイ13に含まれるマイクロレンズ17を用いて、レーザ光14を照射する。
【0076】
ガラス基板30の薄膜トランジスタ20の所定の領域に、レーザアニールを用いてポリシリコン薄膜22を形成した後、別の工程において、当該薄膜トランジスタ20に、ソース23とドレイン24とが形成される。
【0077】
このように、本発明の第1の実施形態では、複数の投影マスクパターン15を用いて、薄膜トランジスタ20上に、複数のポリシリコン薄膜22が設けられる。その結果、ガラス基板30に含まれる複数の薄膜トランジスタ20の各々において、ソース23とドレイン24との間の電子移動度は、そのばらつきが平均化された値となる。したがって、本発明の第1の実施形態において、複数の薄膜トランジスタ20の各々の特性のばらつきが低減されるため、液晶表示装置の液晶における表示ムラが生じることを抑制することができる。
【0078】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、マイクロレンズアレイ13の代わりに、1個の投影レンズ18を用いて、レーザアニールを行う場合の実施形態である。
【0079】
図9は、本発明の第2の実施形態におけるレーザ照射装置10の構成例を示す図である。図9に示すように、本発明の第2の実施形態におけるレーザ照射装置10は、レーザ光源11と、カップリング光学系12と、投影マスクパターン15と、投影レンズ18とを含む。なお、レーザ光源11と、カップリング光学系12とは、図1に示す本発明の第1の実施形態におけるレーザ光源11と、カップリング光学系12と同様の構成であるため、詳細な説明は省略される。
【0080】
レーザ光は、投影マスクパターン15(図示しない)の複数の開口(透過領域)を透過し、投影レンズ18により、アモルファスシリコン薄膜21の所定の領域に照射される。その結果、アモルファスシリコン薄膜21の所定の領域が瞬間加熱されて溶融し、アモルファスシリコン薄膜21の一部がポリシリコン薄膜22となる。
【0081】
ここで、第2の実施形態のように投影レンズ18を用いた場合であっても、複数のポリシリコン薄膜22の各々は、レーザ光14のエネルギ密度が1ショットごとにばらつきがあることから、その電子移動度にばらつきが生じてしまう。第1の実施形態でも述べたように、ポリシリコン薄膜22の電子移動度は、当該ポリシリコン薄膜22に最後に照射されたレーザ光14のエネルギ密度、すなわち最後のショットのエネルギ密度に依存する。
【0082】
ただし、薄膜トランジスタ20には、複数のポリシリコン薄膜22が設けられるため、当該複数のポリシリコン薄膜22間において電子移動度のばらつきが平均化される。その結果、薄膜トランジスタ20において、ソース23とドレイン24間の電子移動性は、4本のポリシリコン薄膜22の各々の電子移動性のばらつきを平均化した値となる。そのため、本発明の第2の実施形態においても、複数の薄膜トランジスタ20の各々の特性のばらつきが低減され、液晶表示装置の液晶における表示ムラが生じることを抑制することができる。
【0083】
本発明の第2の実施形態においても、レーザ照射装置10は所定の周期でレーザ光14を照射し、レーザ光14が照射されていない時間にガラス基板30を移動させ、次のアモルファスシリコン薄膜21の箇所に当該レーザ光14が照射されるようにする。第2の実施形態においても、図3に示すように、ガラス基板30は、移動方向に対して、所定の間隔「H」でアモルファスシリコン薄膜21が配置される。そして、レーザ照射装置10は、所定の周期で、ガラス基板30上に配置されたアモルファスシリコン薄膜21の部分に、レーザ光14を照射する。
【0084】
ここで、投影レンズ18を用いる場合、レーザ光14が、当該投影レンズ18の光学系の倍率で換算される。すなわち、投影マスクパターン15のパターンが、投影レンズ18の光学系の倍率で換算され、ガラス基板30上の所定の領域がレーザアニールされる。
【0085】
図10は、本発明の第2の実施形態における投影マスクパターン15と薄膜トランジスタ20の関係を示す図である。なお、図10に例示する投影マスクパターン15は、その一部を図示するものである。
【0086】
図10に示すように、投影マスクパターン15には、所定のパターンで、透過領域16が設けられている。図10に示すように、投影マスクパターン15には、例えば、4種類の透過領域16(16a乃至16d)が設けられている。レーザ光14は、投影マスクパターン15上の透過領域16を通過し、投影レンズ18に入射する。すなわち、本発明の第2の実施形態では、レーザ照射装置10は、1回のレーザ光14の照射で、複数の薄膜トランジスタ20の所定の領域をレーザアニールする。なお、図10の例では、投投影マスクパターン15には、4種類の透過領域16が設けられているが、透過領域16は4種類に限られず、ガラス基板30上の薄膜トランジスタ20上に形成するポリシリコン薄膜22の数(本数)に応じて、複数の種類が設けられる。
【0087】
また、図10の例では、異なる種類の透過領域16(例えば、透過領域16aと透過領域b)が隣接しているが、同じ種類の透過領域16が隣接していてもよい。図10の例では、投影マスクパターン15の一列(又は一行)に、4種類の透過領域16が1つずつ含まれているが、当該一列(又は一行)には、4種類の透過領域16が複数含まれていてもよい。例えば、投影マスクパターン15の一列(一行)には、透過領域16a乃至16dの各々が、4つずつ含まれていてもよい。
【0088】
ここで、図10に例示するように、投影マスクパターン15のマスクパターンは、投影レンズ18の光学系の倍率で換算され、ガラス基板30上の所定の領域がレーザアニールされる。図10の例では、投影レンズ18の光学系の倍率は約2倍であるため、投影マスクパターン15のマスクパターンは、約1/2(0.5)倍され、ガラス基板30の所定の領域がレーザアニールされる。なお、投影レンズ18の光学系の倍率は、約2倍に限られず、どのような倍率であってもよい。投影マスクパターン15のマスクパターンは、投影レンズ18の光学系の倍率に応じて、ガラス基板30上の所定の領域がレーザアニールされる。例えば、投影レンズ18の光学系の倍率が4倍であれば、投影マスクパターン15のマスクパターンは、約1/4(0.25)倍され、ガラス基板30の所定の領域がレーザアニールされる。
【0089】
図10に示すように、ガラス基板30の移動方向(スキャン方向)に対して、投影マスクパターン15の透過領域16は、直交するように設けられる。ただし、投影マスクパターン15の透過領域16は、ガラス基板30の移動方向(スキャン方向)に対して必ずしも直交する必要はなく、該移動方向(スキャン方向)に対して平行(略平行)に設けられていてもよい。
【0090】
なお、投影レンズ18が倒立像を形成する場合、ガラス基板30に照射される投影マスクパターン15の縮小像は、投影レンズ18のレンズの光軸を中心に180度回転したパターンとなる。一方、投影レンズ18が正立像を形成する場合、ガラス基板30に照射される投影マスクパターン15の縮小像は、当該投影マスクパターン15そのままとなる。図10の例では、正立像を形成する投影レンズ18を用いているため、投影マスクパターン15のパターンが、ガラス基板30上にそのまま縮小されている。
【0091】
次に、レーザ照射装置10を用いて、本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタ20を作成する方法について、説明する。
【0092】
まず、レーザ照射装置10は、第1工程において、投影マスクパターン15のマスクパターン16aおよび投影レンズ18を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第1の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第1の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(a)のポリシリコン薄膜22aとなる。その後、レーザ照射装置10のレーザ光14の照射が停止している間に、ガラス基板30を所定の距離「H」移動させる。
【0093】
続いて、レーザ照射装置10は、第2工程において、投影マスクパターン15のマスクパターン16bおよび投影レンズ18を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第2の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第2の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(b)のポリシリコン薄膜22bとなる。その後、レーザ照射装置10のレーザ光14の照射が停止している間に、ガラス基板30を所定の距離「H」移動させる。
【0094】
同様にして、レーザ照射装置10は、第3工程において、投影マスクパターン15のマスクパターン16cおよび投影レンズ18を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第3の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第3の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(c)のポリシリコン薄膜22cとなる。その後、レーザ照射装置10のレーザ光14の照射が停止している間に、ガラス基板30を所定の距離「H」移動させる。
【0095】
続けて、レーザ照射装置10は、第4工程において、投影マスクパターン15のマスクパターン16dおよび投影レンズ18を用いて、レーザ光14を薄膜トランジスタ20の第3の領域に照射する。その結果、薄膜トランジスタ20の第4の領域のアモルファスシリコン薄膜21が、瞬間加熱されて溶融し、図8(d)のポリシリコン薄膜22dとなる。
【0096】
上記のとおり、本発明の第2の実施形態では、投影レンズ18を用いて、薄膜トランジスタ20上に、複数のポリシリコン薄膜22が設けられる。その結果、ガラス基板30に含まれる複数の薄膜トランジスタ20の各々において、ソース23とドレイン24との間の電子移動度は、そのばらつきが平均化された値となる。したがって、本発明の第2の実施形態において、複数の薄膜トランジスタ20の各々の特性のばらつきが低減されるため、液晶表示装置の液晶における表示ムラが生じることを抑制することができる。
【0097】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」「直交」等の記載がある場合に、これらの各記載は厳密な意味ではない。すなわち、「垂直」「平行」「平面」「直交」とは、設計上や製造上等における公差や誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」「実質的に直交」という意味である。なお、ここでの公差や誤差とは、本発明の構成・作用・効果を逸脱しない範囲における単位のことを意味するものである。
【0098】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合に、これらの各記載は厳密な意味ではない。すなわち、「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上や製造上等における公差や誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。なお、ここでの公差や誤差とは、本発明の構成・作用・効果を逸脱しない範囲における単位のことを意味するものである。
【0099】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上記実施の形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 レーザ照射装置
11 レーザ光源
12 カップリング光学系
13 マイクロレンズアレイ
14 レーザ光
15 投影マスクパターン
16 透過領域
17 マイクロレンズ
18 投影レンズ
20 薄膜トランジスタ
21 アモルファスシリコン薄膜
22 ポリシリコン薄膜
23 ソース
24 ドレイン
25 領域
30 ガラス基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10