特許第6781878号(P6781878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781878
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】シリコン基板上への導電性皮膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/56 20060101AFI20201102BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20201102BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20201102BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20201102BHJP
   C25D 5/50 20060101ALI20201102BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20201102BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C25D3/56 101
   C23C28/02
   C25D5/12
   C25D7/12
   C25D5/50
   H01L21/288 E
   H01L21/28 301R
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-180829(P2016-180829)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-44218(P2018-44218A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092439
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 博隆
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】友松 ゆい
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0305066(US,A1)
【文献】 特表2001−500195(JP,A)
【文献】 特開2013−229596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D1/00−7/12
C23C24/00−30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に導電性皮膜を形成する方法において、
(S1)上記シリコン基板上に電気ニッケル−リンメッキ浴を用いてニッケル−リン皮膜からなる下地皮膜を形成する工程と、
(S2)当該下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程と、
上記下地皮膜形成工程(S1)及び導電性皮膜形成工程(S2)の間に下地皮膜を30〜160℃で熱処理する工程(S12)を介在させるか、又は
上記工程(S2)の後に下地皮膜及び導電性皮膜を30〜160℃で熱処理する工程(S3)を付加することからなり、
上記電気ニッケル−リンメッキ浴は、
(a)可溶性ニッケル塩と、
(b)リンを含む化合物と、
(c)アミノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、糖質、アミノアルコール類、ポリカルボン酸類、ポリアミン類より選ばれた錯化剤と、
(d)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤より選ばれた界面活性剤と、
(e)ホウ酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ニッケル、コハク酸、アスコルビン酸より選ばれた緩衝剤と、
(f)サッカリン及びその塩、ベンゼンスルホン酸及びその塩、トルエンスルホン酸及びその塩、ナフタレンスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、ブチンジオール、エチレンシアンヒドリン、クマリン、プロパギルアルコールより選ばれた光沢剤
とを含有することを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【請求項2】
工程(S12)又は工程(S3)が温水により30〜100℃で熱処理することを特徴とする請求項1に記載のシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【請求項3】
上記錯化剤(c)が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸より選ばれたオキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸又はその塩の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【請求項4】
電気ニッケル−リンメッキ浴のpHが3.0〜8.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【請求項5】
上記下地皮膜の膜厚が0.01〜10.0μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【請求項6】
上記導電性皮膜を電気メッキ、無電解メッキ、スパッタリング又は蒸着で形成し、
当該導電性皮膜が銅、スズ、銀、金、ニッケル、ビスマス、パラジウム、白金、アルミニウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛、クロムより選ばれた金属又はこれらの金属の合金からなる皮膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコン基板上に導電性皮膜を形成する方法に関して、メッキ皮膜の形成が難しいシリコン基板上に高い密着力で銅、スズ、銀などの導電性皮膜を良好に形成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料のシリコンは本来的に電気を通し難いために、シリコン基板の表面に銅、銀、スズなどの導電性皮膜を形成しようとしても、メッキなどによる表面処理は困難であり、たとえ、メッキ皮膜を形成できたとしても基板との間で良好な密着性を確保することは容易でない。
【0003】
そこで、シリコン基板などの半導体基板にメッキ皮膜を形成した後に、銅、スズ、銀などの導電性皮膜を形成する従来技術を挙げると、次の通りである。
(1)特許文献1
光電池や太陽電池などのドープ半導体の前面上の導電トラックの下層にニッケルなどのメッキ皮膜を形成し、この下層上に銅メッキ皮膜を形成する(請求項1〜3)。
上記ニッケル皮膜を形成する電気ニッケル液などには商品名が記載されるが([0051])、具体的な成分の言及はない。
また、上記銅皮膜を形成するための電気銅メッキ液は、1価の銅イオン([0017])と、還元剤(亜硫酸塩、ボラン類、ヒドラジンなど;[0018])と、錯化剤(オキシカルボン酸、アミノカルボン酸などではなく、イミド類、ヒダントイン類など;[0019])と、導電性塩(クエン酸塩、グルコン酸塩など;[0021])などを含む。
【0004】
(2)特許文献2
シリコンウエハーからなる基板に、所定組成の電気ニッケルメッキ液を用いてニッケル柱(バンプ)を形成する方法である(請求項1〜9)。
上記電気ニッケルメッキ液は、ニッケル塩と、スルファミン酸イオンと、緩衝剤(ホウ酸、クエン酸、乳酸など)と、塩化物イオンと、所定のアルカンスルホン酸又はアルケンスルホン酸(塩)を含有する(請求項7〜9、[0013]〜[0016])。
また、ニッケルメッキ液には湿潤剤などの添加剤を含有できる([0018])。
基板の例として、予め銅などの金属を被覆したシリコンウエハーを挙げる一方で([0021])、実施例では、金属被覆に言及しないシリコンウエハーにニッケルメッキを施している([0045])。
実施例1〜13には、スルファミン酸ニッケルと、塩化ニッケルと、ホウ酸と、プロペンスルホン酸塩(或は、ナフタレンスルホン酸塩やエチルヘキシル硫酸塩など)とを含む電気ニッケルメッキ液が記載される([0046]、表1)。
【0005】
(3)特許文献3
基板(具体例はなし)の表面に下地金属膜を形成し、所定の金属錯体を含むメッキ液に浸漬して電気メッキを行い、金属錯体に含まれる金属の皮膜を当該下地金属膜の表面に形成する(請求項1〜2)。下地金属膜はチタン、シリコンなどであり、メッキ液に含まれる金属錯体はギ酸銅、ギ酸ニッケル、ギ酸コバルトである(請求項2、[0012])。
実施の形態では、下地金属膜はチタン、チタン上に被覆する金属は銅皮膜であるが([0019]〜[0024])、チタンをシリコンに、銅皮膜をニッケル皮膜に代替できることが記載される([0019])。
【0006】
【特許文献1】特開2012−237060号公報
【特許文献2】特開2016−121377号公報
【特許文献3】特開2011−149097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ITO膜などの透明導電膜は比抵抗が大きいため、透明導電膜上に銅、銀、スズなどの導電性皮膜を形成する場合、特公平3−040452号公報、特開昭63−255377号公報、特開昭64−076032号公報、特開2011−195893号公報に示すように、透明導電膜と導電性皮膜の間に所定のメッキ皮膜を介在させたり、所定の組成を有する銅メッキ浴などを用いて導電性皮膜を電気メッキするなどの特定の処理を駆使する必要がある
一方、シリコン基板は上記透明導電膜と同様に比抵抗が大きいため、シリコン基板上に導電性皮膜を形成することは容易でない。例えば、前記特許文献2のように、所定のアルケンスルホン酸或はその塩と、ホウ酸やクエン酸などの緩衝剤とを含むニッケルメッキ液を用いてシリコン基板上に電気メッキを行っても、形成されたニッケル皮膜は基板に対して明らかな密着不良となるため(後述の比較例2参照)、実際問題として、当該文献2の手法では、シリコン基板上にニッケル皮膜を介して銅や銀などの導電性皮膜を密着性良く形成することは困難である。
【0008】
本発明は、シリコン基板上に銅、スズ、銀などの導電性皮膜を強固に密着形成することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、シリコン基板上に導電性皮膜を形成する場合、基板と導電性皮膜の間にニッケル系の下地皮膜を介在させることを基本方式として、当該下地皮膜の種類と下地皮膜形成用のメッキ浴の組成について鋭意研究を重ねた。
その結果、上記ニッケル系皮膜としてニッケル皮膜ではなくニッケル−リン皮膜を選択し、且つ、下地皮膜を形成するための電気ニッケル−リンメッキ浴に所定の錯化剤と界面活性剤と光沢剤などを併用添加すると、下地皮膜をシリコン基板上に強固に密着形成でき、もって当該シリコン基板上に導電性皮膜を密着良く形成できること、また、上記下地皮膜のニッケル−リン皮膜を所定の低温度域で熱処理すると、シリコン基板に対する下地皮膜の密着力をさらに強化できることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明1は、シリコン基板上に導電性皮膜を形成する方法において、
(S1)上記シリコン基板上に電気ニッケル−リンメッキ浴を用いてニッケル−リン皮膜からなる下地皮膜を形成する工程と、
(S2)当該下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程と、
上記下地皮膜形成工程(S1)及び導電性皮膜形成工程(S2)の間に下地皮膜を30〜160℃で熱処理する工程(S12)を介在させるか、又は
上記工程(S2)の後に下地皮膜及び導電性皮膜を30〜160℃で熱処理する工程(S3)を付加することからなり、
上記電気ニッケル−リンメッキ浴は、
(a)可溶性ニッケル塩と、
(b)リンを含む化合物と、
(c)アミノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、糖質、アミノアルコール類、ポリカルボン酸類、ポリアミン類より選ばれた錯化剤と、
(d)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤より選ばれた界面活性剤と、
(e)ホウ酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ニッケル、コハク酸、アスコルビン酸より選ばれた緩衝剤と、
(f)サッカリン及びその塩、ベンゼンスルホン酸及びその塩、トルエンスルホン酸及びその塩、ナフタレンスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、ブチンジオール、エチレンシアンヒドリン、クマリン、プロパギルアルコールより選ばれた光沢剤
とを含有することを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法である。
【0011】
本発明2は、上記本発明1において、工程(S12)又は工程(S3)が温水により30〜100℃で熱処理することを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法である。
【0012】
本発明3は、上記本発明1又は2において、上記錯化剤(c)が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸より選ばれたオキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸又はその塩の少なくとも一種であることを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法である。
【0014】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、電気ニッケル−リンメッキ浴のpHが3.0〜8.0であることを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法である。
【0015】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、上記下地皮膜の膜厚が0.01〜10.0μmであることを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法。
【0016】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、上記導電性皮膜を電気メッキ、無電解メッキ、スパッタリング又は蒸着で形成し、
当該導電性皮膜が銅、スズ、銀、金、ニッケル、ビスマス、パラジウム、白金、アルミニウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛、クロムより選ばれた金属又はこれらの金属の合金からなる皮膜であることを特徴とするシリコン基板上への導電性皮膜形成方法である。
【発明の効果】
【0017】
従来、シリコン基板上に銅、スズなどの導電性皮膜をメッキしようとしても、透明電極膜上に導電性皮膜を形成する場合と同様に、導電性皮膜を円滑にメッキ形成することは容易でなく、仮りに皮膜を形成できたとしても充分な密着力を確保できず、密着不良となる問題があった。
本発明では、シリコン基板と導電性皮膜の間にニッケル系の下地皮膜を介在させるとともに、このニッケル系皮膜にニッケル−リン皮膜を選択し、且つ、電気ニッケル−リンメッキ浴を所定の錯化剤と界面活性剤と光沢剤などが共存した組成に特化して下地皮膜を形成するとともに、下地皮膜形成工程と導電性皮膜形成工程との中間段階か、或いは、導電性皮膜形成工程の後段階に所定の低温域(30〜160℃)で熱処理を施すことで、下地皮膜をシリコン基板に強固に密着し、もって当該下地皮膜を介してシリコン基板上に導電性皮膜を密着良く形成できる。
【0018】
ちなみに、冒述の特許文献2の実施例1〜4には、シリコンウエハーからなる基板に、塩化ニッケルと、スルファミン酸ニッケルと、緩衝剤(ホウ酸)と、添加剤(プロペンスルホン酸塩)とを含有する電気ニッケルメッキのスルファミン酸浴を用いて、ニッケル皮膜を形成することが夫々記載され(請求項1〜5、[0045]〜[0048]及び表1)、さらには、ニッケルメッキ浴に緩衝剤としてホウ酸の他に、クエン酸、乳酸などを使用できることや、湿潤剤などを添加できることが記載される([0016]、[0018])。尚、上記プロペンスルホン酸塩はアリルスルホン酸塩と同義である。
そこで、上記特許文献2に準拠して、同文献2の実施例1〜5の各メッキ浴(表1)を基本に、さらにクエン酸を付加した電気ニッケルメッキ浴を用いてシリコン基板の上にニッケル皮膜を形成することも考えられるが、実際にこのニッケルのスルファミン酸浴を用いて電気メッキを行っても、シリコン基板上に形成したニッケル皮膜には剥離が生じて密着力不足になり、本発明のような強固な密着力を実現することはできなかった(後述する比較例2参照)。
【0019】
本発明方法においては、シリコン基板にニッケル−リン皮膜を下張りする工程(S1)と、当該下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程(S2)を実施するだけで、実用上、シリコン基板上に導電性皮膜を良好に形成できるが、これらの工程(S1)と(S2)の間に、或は、工程(S2)の後に、下地皮膜或はさらに導電性皮膜を熱処理する工程を付加することで、シリコン基板に対する下地皮膜の密着力をより強化できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、シリコン基板上にニッケル−リン皮膜よりなる下地皮膜を介して、銅、スズ、銀などの導電性皮膜を形成する方法であって、下地皮膜を所定の錯化剤、界面活性剤、光沢剤などを含む特定組成の電気ニッケル−リン浴を用いて電着皮膜を形成するとともに、この下地皮膜を形成する工程と、下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程の中間に、或は、導電性皮膜の形成工程後に下地皮膜、或いはさらに導電性皮膜を所定の低温域(30〜160℃)で熱処理することにより、シリコン基板に対するニッケル−リンの下地皮膜の密着力を強化する方法である。
上記シリコン基板は、シリコンウエハーなどに不純物をドープした単結晶シリコン半導体或は多結晶シリコン半導体、又は非晶質シリコン層を形成したシリコン半導体などを包含する概念である。
【0021】
本発明1は、次の下地形成工程(S1)と導電性皮膜形成工程(S2)と、熱処理工程(S12)又は(S3)とからなる。
上記熱処理工程(S12)又は(S3)については後述する。
(S1)シリコン基板上に電気ニッケル−リンメッキ浴を用いてニッケル−リン皮膜からなる下地皮膜を形成する工程
(S2)当該下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程
そして、上記工程(S1)で用いる電気ニッケル−リンメッキ浴は、
(a)可溶性ニッケル塩と、
(b)リンを含む化合物と、
(c)アミノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、糖質、アミノアルコール類、ポリカルボン酸類、ポリアミン類より選ばれた錯化剤と、
(d)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤より選ばれた界面活性剤と、
(e)所定の緩衝剤と、
(f)所定の光沢剤
とを必須成分とする。
【0022】
上記可溶性ニッケル塩(a)はメッキ浴中にニッケルイオンを供給可能であれば良く、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、酸化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、有機スルホン酸のニッケル塩などが挙げられ、硫酸ニッケル、酸化ニッケルなどが好ましい。
また、上記リンを含む化合物(b)としては、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、ヒドロキシエチレンジアミンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及びこれらの塩が挙げられる。
上記可溶性ニッケル塩(a)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.01〜3.0モル/L、好ましくは0.05〜2.0モル/L、より好ましくは0.1〜1.5モル/Lである。
上記リンを含む化合物(b)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.05〜2.0モル/L、好ましくは0.1〜1.0モル/L、より好ましくは0.1〜0.8モル/Lである。
【0023】
上記電気ニッケル−リンメッキ浴に含有する錯化剤(c)はメッキ浴中で主にニッケル錯体を形成する化合物であり、電極電位の変化に対する陰極電流密度の変化を緩やかにして、ニッケル系皮膜の析出を容易にする機能を果たすもので、アミノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、糖質、アミノアルコール類、ポリカルボン酸類、ポリアミン類よりなる群から選ばれる。
上記アミノカルボン酸類には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸及びこれらの塩などが挙げられ、NTA、EDTAが好ましい。
上記オキシカルボン酸類には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、グルコヘプトン酸及びこれらの塩などが挙げられ、クエン酸、酒石酸、グルコン酸及びこれらの塩が好ましい。
上記糖質には、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルツロース(パラチノース)、キシロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元イソマルツロース、グルコノラクトンなどが挙げられ、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコールが好ましい。
上記アミノアルコール類には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどが挙げられ、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンが好ましい。
上記ポリカルボン酸類としては、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、マロン酸及びこれらの塩などが挙げられ、コハク酸が好ましい。
上記ポリアミン類には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンなどが挙げられ、エチレンジアミンが好ましい。
上記錯化剤(c)としては、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、糖質が好ましく、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸及びこれらの塩、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどが好適である。
上記錯化剤(c)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.001〜2モル/Lであり、好ましくは0.05〜0.8モル/L、より好ましくは0.1〜0.5モル/Lである。
【0024】
上記電気ニッケル−リンメッキ浴に含有する界面活性剤(d)はノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤より選ばれ、シリコン基板と下地皮膜の密着性を増進する。
上記ノニオン系界面活性剤としては、一般的に、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、エチレンジアミン・テトラポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン、ポリエチレングリコール、ラウリルアルコールポリエトキシレートなどが好適である。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどが好適である。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
上記界面活性剤(d)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.1〜50g/Lであり、好ましくは1〜40g/L、より好ましくは5〜35g/Lである。
上述のように、本発明のニッケル−リンメッキ浴では、密着性を増す見地からノニオン性、両性界面活性剤の添加を必須要件とするが、これらの界面活性剤に加えて、カチオン性、アニオン性界面活性剤を併用添加することを排除するものではない。
但し、メッキ浴に本発明の所定の界面活性剤を添加することなく、カチオン性又はアニオン性界面活性剤を単独添加しても、メッキ浴の安定性や下地皮膜の密着性に寄与しない点は後述の試験例(比較例7参照)に示す通りである。
【0025】
上記電気ニッケル−リンメッキ浴に含有する所定の緩衝剤(e)はシリコン基板に対する下地皮膜の密着性を向上するとともに、メッキ浴の安定剤としても作用する。
所定の緩衝剤(e)としては、ホウ酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ニッケル、コハク酸、アスコルビン酸などが挙げられ、ホウ酸、炭酸ナトリウムが好ましい。
上記緩衝剤(e)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.05〜1.5モル/Lであり、好ましくは0.05〜1.0モル/L、より好ましくは0.1〜0.6モル/Lである。
【0026】
上記電気ニッケル−リンメッキ浴に含有する所定の光沢剤(f)はシリコン基板に対するニッケル−リン皮膜の密着性を向上する作用をする。
上記所定の光沢剤(f)としては、サッカリン及びその塩、ベンゼンスルホン酸及びその塩、p−トルエンスルホン酸及びその塩、ナフタレンスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、ブチンジオール(具体的には、2−ブチン−1,4−ジオールなど)、エチレンシアンヒドリン、クマリン、プロパギルアルコールなどが挙げられ、特に、ベンゼンスルホン酸又はその塩とサッカリン、ナフタレンスルホン酸又はその塩とサッカリン、ブチンジオールとベンゼンスルホン酸又はその塩、ブチンジオールとナフタレンスルホン酸又はその塩、アリルスルホン酸又はその塩とサッカリン、アリルスルホン酸又はその塩とプロパギルアルコール、ベンゼンスルホン酸又はその塩とプロパギルアルコール、ナフタレンスルホン酸又はその塩とプロパギルアルコールなどのように2種、或はそれ以上を併用することが好ましい。
上記光沢剤(f)は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は0.001〜0.15モル/Lであり、好ましくは0.005〜0.07モル/L、より好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
【0027】
本発明の電気ニッケル−リンメッキ浴はシリコン基板上にニッケル−リン皮膜を下地形成することを目的とするが、メッキ浴のpHは3.0〜8.0が適当であり、好ましくは4.0〜6.0である。
また、下地形成工程(S1)において、電気メッキの際の陰極電流密度は0.01〜5.0A/dm2、好ましい範囲0.05〜2.0A/dm2である。
上記下地皮膜の形成工程(S1)において、下地皮膜となるニッケル−リン皮膜は上層に導電性皮膜を形成するに足る導電性と密着力を付与できれば良いので、厚く形成する必要はない。従って、その膜厚は0.01〜10.0μm、好ましくは0.01〜8.0μm、より好ましくは0.01〜5.0μmである。
【0028】
次いで、下地皮膜の形成工程(S1)で被覆されたニッケル−リン皮膜の上に、上層皮膜として導電性皮膜を形成する工程(S2)を説明する。
上記導電性皮膜は導電性を有する公知の皮膜であれば特段の制約はないが、例えば、銅、スズ、銀、金、ニッケル、ビスマス、パラジウム、白金、アルミニウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛、クロムより選ばれた金属又はこれらの金属の合金が挙げられる。
導電性金属を構成する金属としては、銀、銅、ニッケル、スズ、パラジウム、金、ビスマスが好適である。また、上記金属の合金としては、ニッケル−タングステン合金、ニッケル−モリブデン合金、ニッケル−スズ合金、スズ−銀合金、スズ−ビスマス合金、スズ−銅合金、スズ−亜鉛合金、金−スズ合金などが好適である。
上記導電性皮膜は電気メッキ、無電解メッキ、スパッタリング又は蒸着などにより形成することができ、この中では、生産性の見地からメッキ方式が好ましいが、スパッタリング又は蒸着を排除するものではない。
【0029】
本発明はシリコン基板上に下地皮膜を介して導電性皮膜を形成することを特徴とするが、導電性皮膜は単層で形成しても良いが、2層、3層などの複層で形成することもできる。
複層の導電性皮膜を例示すれば、ニッケル、銅、コバルト、ビスマス、亜鉛、クロム、鉄などから選ばれた金属、又はこれらの金属の合金を下層(つまり、下地皮膜に臨む側)とし、スズ、銅、金、銀などを上層とした2層の導電性皮膜を挙げることができる。
また、複層の導電性皮膜の最上層をスズ、ニッケル、コバルト、クロム、銀、パラジウム及びこれらの合金などで形成すると、最上層の表面に銀色の美麗な外観を付与できる。
【0030】
一方、本発明1は、前述したように、上記下地皮膜形成工程(S1)と導電性皮膜形成工程(S2)に、さらに熱処理工程を追加した導電性皮膜形成方法である。
熱処理の第一の方法は、下地皮膜形成工程(S1)と導電性皮膜形成工程(S2)の間に熱処理工程(S12)を介在させたもので、この中間熱処理方式は次の工程からなる。
(S1)シリコン基板上に電気ニッケル−リンメッキ浴を用いてニッケル−リン皮膜からなる下地皮膜を形成する工程
(S12)下地皮膜を30℃以上で熱処理する工程
(S2)当該下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程
下地皮膜を形成した後、30℃以上で下地皮膜を熱処理すると、シリコン基板に対する下地皮膜の密着力をより向上することができ、もって、導電性皮膜をシリコン基板にさらに強固に密着形成できる。
熱処理温度としては30〜160℃が適しており、特に30〜100℃が好適である。
熱処理温度を上げても、密着力を向上する効果はあまり変わらず、却って下地皮膜に熱歪みが生じて密着力に悪影響を及ぼし、或は、下地皮膜を酸化するリスクがあるうえ、無駄なエネルギーの投入により生産性も低下する。この点に鑑みると、熱処理温度の上限は160℃程度が好ましい。また、本発明では、下地皮膜形成工程(S1)の後、熱処理を行わなくてもシリコン基板への下地皮膜の密着性は熱処理した場合に類することから(後述の参考例1〜3参照)、熱処理の下限は30℃程度とした。
一方、熱処理の第二の方法は、導電性皮膜形成工程(S2)の後に熱処理工程(S3)を付加したもので、この後段階熱処理方式は次の工程からなる。
(S1)シリコン基板上に電気ニッケル−リンメッキ浴を用いてニッケル−リン皮膜からなる下地皮膜を形成する工程
(S2)下地皮膜上に導電性皮膜を形成する工程
(S3)当該下地皮膜及び導電性皮膜を30℃以上で熱処理する工程
第二の方法における熱処理の温度条件は第一の方法と同様で良い。
上記熱処理(中間及び後段階の熱処理方式ともに共通である)はオーブン加熱、ドライヤーによる熱風加熱、温水或いはオイルバスへの浸漬などの様々な態様を選択できるが、例えば、30〜100℃の温水処理(温水に浸漬する湯煎)を選択すると、湯煎による低温度域での加熱処理なので、熱エネルギーの軽減化と処理の簡便化を図り、生産性を向上できる。
【実施例】
【0031】
以下、シリコン基板上に下地皮膜(ニッケル−リン皮膜)を形成するための電気ニッケル−リンメッキ浴、導電性皮膜を形成するためのメッキ浴、並びに上記シリコン基板上に当該下地皮膜を介して導電性皮膜を形成する方法の実施例を述べるとともに、シリコン基板に対するニッケル−リン皮膜の密着性の評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0032】
《シリコン基板上に導電性皮膜を形成する方法の実施例》
下記の実施例1〜30のうち、実施例1はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)の例で、リンを含む化合物(b)が亜リン酸水素塩、錯化剤(c)がクエン酸、界面活性剤(d)がノニオン性界面活性剤、緩衝剤(e)がホウ酸、光沢剤(f)がサッカリンとアリルスルホン酸の併用成分であるニッケル−リンのスルファミン酸浴を用いて下地皮膜を形成し、加熱処理した後、電気メッキで銅の導電性皮膜を形成した例(上記中間熱処理方式の例)である。
実施例2は上記実施例1を基本として、水溶性ニッケル塩を変更した例である。実施例3〜4は実施例1を基本として、リンを含む化合物(b)を変更した例である。実施例5は実施例2を基本として、リンを含む化合物(b)を変更した例である。実施例6〜7は実施例1を基本として錯化剤(c)を変更した例で、実施例6はニトリロ三酢酸、実施例7はグルコン酸塩、実施例8は実施例5を基本として錯化剤(c)をソルビトールに変更した例である。実施例9は実施例1を基本として、緩衝剤(e)を炭酸ナトリウムに変更した例である。実施例10〜13は実施例1を基本として光沢剤(f)を変更した例で、実施例10はサッカリンとベンゼンスルホン酸の併用、実施例11はアリルスルホン酸とプロパギルアルコールの併用、実施例12はベンゼンスルホン酸とブチンジオールの併用、実施例13はナフタレンスルホン酸塩とブチンジオールの併用例である。実施例14〜15は実施例1を基本としてノニオン性界面活性剤(d)の種類を変更した例であり、実施例16は実施例1を基本として界面活性剤(d)を両性界面活性剤に変更した例である。実施例17は実施例1を基本として、導電性皮膜を形成する電気銅メッキ浴の組成を変更した例である。
実施例18は実施例1を基本として導電性皮膜をニッケル皮膜に変更した例である。実施例19は実施例1を基本として導電性皮膜をスズ皮膜に変更した例である。実施例20は実施例1を基本として導電性皮膜をスズ−ビスマス合金皮膜に変更した例である。実施例21は実施例1を基本として導電性皮膜を無電解メッキで形成した銀皮膜に変更した例である。実施例22は実施例1を基本として導電性皮膜をパラジウム皮膜に変更した例である。実施例23〜27は実施例1を基本として、熱処理の条件を変更した例である。
実施例28〜30は上記中間熱処理方式に替えて、導電性皮膜形成工程(S2)の後に熱処理する方式(後段階熱処理方式)に変更した例であり、実施例28は実施例1を基本とし(導電性皮膜は銅)、実施例29は実施例19を基本とし(導電性皮膜はスズ)、実施例30は実施例21を基本とした例(導電性皮膜は銀)である。
尚、参考例1は実施例1を基本として、下地皮膜と導電性皮膜の形成の間の熱処理を排除した例である。参考例2は同じく実施例2を基本として熱処理を排除した例、参考例3は実施例3を基本として熱処理を排除した例である。
【0033】
一方、下記の比較例1〜8のうち、比較例1はシリコン基板上に下地皮膜を形成せずに、導電性皮膜形成用のメッキ浴を用いて直接に電気メッキしたブランク例である。
比較例2は実施例1を基本として、メッキ浴にリンを含む化合物(b)を欠いた例であり、アルミニウム合金上にニッケル−リン皮膜ではなく、ニッケルの下地皮膜を介して電気メッキにより導電性皮膜を形成した例である。即ち、冒述の特許文献2にはホウ酸、クエン酸、乳酸などの緩衝剤や湿潤剤を使用できることが記載されている点に鑑みて([0016]、[0018])、同文献2の実施例1〜5([0046]、表1)に具体的に開示されたクエン酸、界面活性剤を含む電気ニッケルメッキ浴を用いてニッケル皮膜を形成したもので、いわば、特許文献2のニッケル浴に準拠した例である。
比較例3は実施例1を基本として下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤(c)を欠いた例、同じく比較例4はメッキ浴に本発明の界面活性剤(d)を欠いた例、比較例5はメッキ浴に本発明の緩衝剤(e)を欠いた例、比較例6はメッキ浴に本発明の光沢剤(f)を欠いた例である。
比較例7は下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の界面活性剤に替えてカチオン性界面活性剤を用いた例である。
比較例8は公知のワット浴を用いてシリコン基板上にニッケル−リン皮膜ではなく、ニッケルの下地皮膜を形成し、その上に電気メッキにより導電性皮膜を形成した例である。
【0034】
(1)実施例1
先ず、5cm×5cm角のシリコン基板を試料とし、下記に示す工程(S1)、工程(S12)、工程(S2)に基づいて順次処理した(下記の実施例2〜30、比較例1〜8も同じ)。
(S1)下地皮膜の形成工程
上記試料(シリコン基板)を水酸化ナトリウム(3重量%)で25℃、3分の条件でアルカリ脱脂し、下記(A)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件により試料上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
上記亜リン酸水素ナトリウム水和物はリンを含む化合物(b)、クエン酸は錯化剤(c)、クミンフェノールのエチレンオキシド付加物はノニオン性界面活性剤(d)、ホウ酸は緩衝剤(e)、サッカリンとアリルスルホン酸は複合光沢剤(f)である。
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:5.0%
(S12)熱処理工程
ニッケル−リン皮膜を形成したシリコン基板を下記条件で湯煎した。
[熱処理条件]
湯煎温度:70℃
湯煎時間:3分
(S2)導電性皮膜の形成工程
熱処理を施したシリコン基板に下記(B)の銅メッキ浴と電気メッキ条件により導電性皮膜を形成し、水洗した後、乾燥処理した。
(B)導電性皮膜:銅
次の組成で電気銅メッキ浴を建浴した。
硫酸銅5水和物(Cu2+として) 0.8モル/L
硫酸 1.0モル/L
塩酸 1.8モル/L
ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド 1.0mg/L
ポリエチレングリコール(分子量4000) 1.0g/L
ポリエチレンイミン 3.0mg/L
[電気メッキ条件]
浴温:25℃
電流密度:5A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ膜厚]
膜厚:17μm
【0035】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(水溶性ニッケル塩を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.3μm
リンの含有率:6.0%
【0036】
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(リンを含む化合物を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
次亜リン酸ナトリウム 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 5.0
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.1A/dm2
メッキ時間:2分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.01μm
リンの含有率:4.5%
【0037】
(4)実施例4
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(リンを含む化合物を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
ニトリロトリス(メチレンホスホン酸) 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:5.5%
【0038】
(5)実施例5
上記実施例2を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(リンを含む化合物を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例2と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
次亜リン酸ナトリウム 0.5モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.3μm
リンの含有率:5.5%
【0039】
(6)実施例6
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(錯化剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
ニトリロ三酢酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.0
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.1μm
リンの含有率:7.0%
【0040】
(7)実施例7
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(錯化剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
グルコン酸ナトリウム 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 5.0
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:5.0%
【0041】
(8)実施例8
上記実施例5を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(錯化剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例5と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.3μm
リンの含有率:5.5%
【0042】
(9)実施例9
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(緩衝剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
炭酸ナトリウム 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:3.0%
【0043】
(10)実施例10
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(光沢剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ベンゼンスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:3.0%
【0044】
(11)実施例11
上記実施例2を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(光沢剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例2と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
アリルスルホン酸 0.02モル/L
プロパギルアルコール 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.3μm
リンの含有率:6.0%
【0045】
(12)実施例12
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(光沢剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
ブチンジオール 0.02モル/L
ベンゼンスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:5.0%
【0046】
(13)実施例13
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(光沢剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
ブチンジオール 0.02モル/L
ナフタレンスルホン酸ナトリウム 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:5.0%
【0047】
(14)実施例14
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(界面活性剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
エチレンジアミンテトラポリオキシエチレン(EO2モル)
−ポリオキシプロピレン(PO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:3.0%
【0048】
(15)実施例15
上記実施例5を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(界面活性剤を変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例5と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
次亜リン酸 0.5モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
エチレンジアミンテトラポリオキシエチレン(EO2モル)
−ポリオキシプロピレン(PO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.0
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:5.5%
【0049】
(16)実施例16
上記実施例1を基本として、工程(S1)のニッケル−リンメッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した(界面活性剤を両性界面活性剤に変更)。
工程(S12)〜工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド 20g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:3.0%
【0050】
(17)実施例17
上記実施例1を基本として、導電性皮膜の形成工程(S2)で用いる電気銅メッキ浴と電気メッキ条件を次の通り変更した。
工程(S1)〜工程(S12)の処理条件は実施例1と同じである。
(B)導電性皮膜:銅
次の組成で電気銅メッキ浴を建浴した。
硫酸銅5水和物(Cu2+として) 0.1モル/L
エチレンジアミン 0.3モル/L
硫酸アンモニウム 1.5モル/L
グリシン 0.3モル/L
α,α′−ビピリジル 30mg/L
pH(28%アンモニアで調整) 7.0
[電気メッキ条件]
浴温:50℃
電流密度:1A/dm2
メッキ時間:13分
[メッキ膜厚]
膜厚:3μm
【0051】
(18)実施例18
上記実施例1を基本として、導電性皮膜の形成工程(S2)において、導電性皮膜をニッケル皮膜に変更した。
工程(S1)〜工程(S12)の処理条件は実施例1と同じである。
(B)導電性皮膜:ニッケル
次の組成で電気ニッケルメッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.15モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.5モル/L
ホウ酸 0.7モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.0
[電気メッキ条件]
浴温:60℃
電流密度:1A/dm2
メッキ時間:5分
[メッキ膜厚]
膜厚:1.0μm
【0052】
(19)実施例19
上記実施例2を基本とし、導電性皮膜の形成工程(S2)において導電性皮膜をスズ皮膜に変更した。
工程(S1)〜工程(S12)の処理条件は実施例2と同じである。
(B)導電性皮膜:スズ
次の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.5モル/L
メタンスルホン酸 1.0モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10モル) 10g/L
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:2A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ膜厚]
膜厚:10μm
【0053】
(20)実施例20
上記実施例5を基本とし、導電性皮膜の形成工程(S2)において導電性皮膜をスズ−ビスマス合金皮膜に変更した。
工程(S1)〜工程(S12)の処理条件は実施例5と同じである。
(B)導電性皮膜:スズ−ビスマス合金
次の組成で電気スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.6モル/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 0.02モル/L
メタンスルホン酸 1.0モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10モル) 10g/L
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:2A/dm2
メッキ時間:5分
[メッキ膜厚]
膜厚:5.0μm
ビスマスの析出率:2%
【0054】
(21)実施例21
上記実施例1を基本とし、導電性皮膜の形成工程(S2)において導電性皮膜を銀皮膜に変更し、この銀皮膜を無電解メッキにより形成した。
工程(S1)〜工程(S12)の処理条件は実施例1と同じである。
(B)導電性皮膜:銀
次の組成で無電解銀メッキ浴を建浴した。
硝酸銀(Ag+として) 0.01モル/L
コハク酸イミド 0.05モル/L
イミダゾール 0.05モル/L
[電気メッキ条件]
浴温:50℃
メッキ時間:60分
[メッキ膜厚]
膜厚:1μm
【0055】
(22)実施例22
上記実施例5を基本とし、導電性皮膜の形成工程(S2)において導電性皮膜をパラジウム皮膜に変更した。
工程(S1)〜工程(S12)の処理条件は実施例5と同じである。
(B)導電性皮膜:パラジウム
次の組成で電気パラジウムメッキ浴を建浴した。
硫酸パラジウム(Pd2+として) 0.02モル/L
硫酸 0.4モル/L
リン酸 0.6モル/L
亜硫酸 0.006モル/L
[電気メッキ条件]
浴温:25℃
電流密度:0.6A/dm2
メッキ時間:20分
[メッキ膜厚]
膜厚:1.5μm
【0056】
(23)実施例23
上記実施例1を基本とし、熱処理工程(S12)の湯煎条件を変更した。
工程(S1)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(S12)熱処理工程
ニッケル−リン皮膜を下地皮膜として形成したシリコン基板を下記条件で湯煎した。
[熱処理条件]
湯煎温度:50℃
湯煎時間:10分
【0057】
(24)実施例24
上記実施例1を基本とし、熱処理工程(S12)の湯煎条件を変更した。
工程(S1)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(S12)熱処理工程
ニッケル−リン皮膜を下地皮膜として形成したシリコン基板を下記条件で湯煎した。
[熱処理条件]
湯煎温度:100℃
湯煎時間:1分
【0058】
(25)実施例25
上記実施例1を基本とし、熱処理工程(S12)の加熱条件を変更した。
工程(S1)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(S12)熱処理工程
ニッケル−リン皮膜を下地皮膜として形成したシリコン基板をドライヤーにより下記条件で熱風加熱した。
[熱処理条件]
熱風加熱の温度:100℃
加熱時間:20分
【0059】
(26)実施例26
上記実施例1を基本とし、熱処理工程(S12)の加熱条件を変更した。
工程(S1)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(S12)熱処理工程
ニッケル−リン皮膜を下地皮膜として形成したシリコン基板を下記条件でオーブン加熱した。
[熱処理条件]
オーブン加熱温度:100℃
加熱時間:15分
【0060】
(27)実施例27
上記実施例1を基本とし、熱処理工程(S12)の加熱条件を変更した。
工程(S1)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(S12)熱処理工程
ニッケル−リン皮膜を下地皮膜として形成したシリコン基板を下記条件でオーブン加熱した。
[熱処理条件]
オーブン加熱温度:150℃
加熱時間:10分
【0061】
(28)実施例28
本実施例28は前記実施例1を基本とする。
前記実施例1では、下地皮膜の形成工程(S1)→熱処理工程(S12)→導電性皮膜の形成工程(S2)により順次処理したが、本実施例28では下地皮膜の形成工程(S1)→導電性皮膜の形成工程(S2)→熱処理工程(S3)により順次処理したもので、銅皮膜を導電性皮膜として、いわゆる後段階熱処理方式の例である。
即ち、実施例1に基づき、下地皮膜の形成工程(S1)の後、中間段階の熱処理(S12)を行わず、導電性皮膜の形成工程(S2)の後に熱処理(S3)を実施したものであり、熱処理の条件(湯煎温度:70℃、湯煎時間:3分)は実施例1と同じである。
【0062】
(29)実施例29
本実施例29は前記実施例19を基本とする。
本実施例29では、上記実施例28と同様に、下地皮膜の形成工程(S1)→導電性皮膜の形成工程(S2)→熱処理工程(S3)により順次処理したもので、スズ皮膜を導電性皮膜として、いわゆる後段階熱処理方式の例である。
即ち、実施例19に基づき、下地皮膜の形成工程(S1)の後、中間段階の熱処理(S12)を行わず、導電性皮膜の形成工程(S2)の後に熱処理(S3)を実施したものであり、熱処理の条件(湯煎温度:70℃、湯煎時間:3分)は、実施例19が基本とする実施例1と同じである。
【0063】
(30)実施例30
本実施例30は前記実施例21を基本とする。
本実施例30では、上記実施例28と同様に、下地皮膜の形成工程(S1)→導電性皮膜の形成工程(S2)→熱処理工程(S3)により順次処理したもので、銀皮膜を導電性皮膜として、いわゆる後段階熱処理方式の例である。
即ち、実施例21に基づき、下地皮膜の形成工程(S1)の後、中間段階の熱処理(S12)を行わず、導電性皮膜の形成工程(S2)の後に熱処理(S3)を実施したものであり、熱処理の条件(湯煎温度:70℃、湯煎時間:3分)は、実施例21が基本とする実施例1と同じである。
【0064】
(31)参考例1
本参考例1は前記実施例1を基本とする。
前記実施例1では、下地皮膜の形成工程(S1)→熱処理工程(S12)→導電性皮膜の形成工程(S2)により順次処理したが、本参考例1では中間工程の熱処理を行わなかった。
即ち、熱処理工程(S12)を経ずに、下地皮膜の形成工程(S1)の後、導電性皮膜の形成工程(S2)に直接移行した。
【0065】
(32)参考例2
本参考例2は前記実施例2を基本とし、上記参考例1と同様に、熱処理を行わなかった。
即ち、本参考例2では、熱処理工程(S12)を経ずに、下地皮膜の形成工程(S1)の後、導電性皮膜の形成工程(S2)に直接移行した。
【0066】
(33)参考例3
本参考例3は前記実施例3を基本とし、上記参考例1と同様に、熱処理を行わなかった。
即ち、本参考例3では、熱処理工程(S12)を省略し、下地皮膜の形成工程(S1)の後、導電性皮膜の形成工程(S2)に直接移行した。
【0067】
(34)比較例1
前記実施例1を基本として、工程(S1)〜工程(S12)を行わず、シリコン基板上に直ちに工程(S2)に基づいて(B)に記載の銅メッキ浴を用いて(同(B)のメッキ条件で)電気メッキを行った。
しかしながら、シリコン基板上への導電性皮膜(銅皮膜)の形成を試みたが、粉状の析出物が生成しただけで、銅メッキ皮膜は形成されなかった。
【0068】
(35)比較例2
前記実施例1の下地形成用メッキ浴からリン化合物(b)を欠落させたメッキ浴を用いて工程(S1)を行ったもので、冒述の特許文献2の準拠例である。
即ち、前記実施例1を基本として、工程(S1)、工程(S12)及び工程(S2)を順次行ったが、上記工程(S1)では、下記(A)に示す通り、リン化合物を含まないメッキ浴並びにメッキ条件でニッケルの下地皮膜を形成した。
工程(S12)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケルメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケルメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.1μm
【0069】
(36)比較例3
前記実施例1を基本として、実施例1の下地皮膜形成用メッキ浴から本発明の錯化剤(c)を欠落させたメッキ浴を用いて工程(S1)を行った。
その結果、メッキ浴に沈殿が発生して、シリコン基板上に下地皮膜は形成されなかった。
従って、続く工程(S12)及び工程(S2)の処理を行うことができなかった。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
【0070】
(37)比較例4
前記実施例1を基本として、実施例1の下地皮膜形成用メッキ浴から本発明の界面活性剤(d)を欠落させたメッキ浴を用いて工程(S1)を行った。
工程(S12)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:1.0%
【0071】
(38)比較例5
前記実施例1を基本として、実施例1の下地皮膜形成用メッキ浴から本発明の緩衝剤(e)を欠落させたメッキ浴を用いて工程(S1)を行った。
工程(S12)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:1.0%
【0072】
(39)比較例6
前記実施例1を基本として、実施例1の下地皮膜形成用メッキ浴から本発明の光沢剤(f)を欠落させたメッキ浴を用いて工程(S1)を行った。
工程(S12)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
ポリオキシエチレンクミンフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:1.0%
【0073】
(40)比較例7
前記実施例1を基本として、実施例1の下地皮膜形成用メッキ浴の界面活性剤を本発明のノニオン性界面活性剤からカチオン性界面活性剤に替えたメッキ浴を用いて工程(S1)を行った。
工程(S12)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ニッケル−リンメッキ浴の組成と電気メッキ条件
次の組成で電気ニッケル−リンメッキ浴を建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.45モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸水素ナトリウム2.5水和物 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
アリルスルホン酸 0.01モル/L
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 20g/L
pH(24%水酸化ナトリウムで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.5A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:1.0%
【0074】
(41)比較例8
前記実施例1を基本として、実施例1の下地皮膜形成用メッキ浴(ニッケル−リンメッキ浴)を、公知のワット浴に代替して工程(S1)を行った。
工程(S12)及び工程(S2)の処理条件は実施例1と同じである。
(A)ワット浴の組成と電気メッキ条件
次の組成でワット浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.15モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.5モル/L
ホウ酸 0.7モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.0
[電気メッキ条件]
浴温:60℃
電流密度:1A/dm2
メッキ時間:5分
[メッキ皮膜]
膜厚:1.0μm
【0075】
《シリコン基板に対する下地皮膜の密着性の評価試験例》
そこで、上記実施例1〜30、参考例1〜3並びに比較例1〜8の各導電性皮膜の形成方法を上記シリコン基板からなる試料に適用して、得られた導電性皮膜に粘着テープを貼り付けて、粘着テープを剥離した場合に、当該導電性皮膜と一体に密着形成された下地皮膜とシリコン基板との境界に着目して、当該境界を起点として下地皮膜がシリコン基板から剥離するか否かを観察し、シリコン基板に対する密着性の優劣を下記の基準に基づいて評価した。
◎:下地皮膜はシリコン基板から剥離しなかった。
○:下地皮膜はシリコン基板から部分的に剥離した。
×:下地皮膜はシリコン基板から全面的に剥離した。
【0076】
下表はその試験結果である。
但し、上述の通り、比較例1、3ではシリコン基板上に導電性皮膜、或は、下地皮膜を形成でなかったので、下表の「−−」は上記剥離試験自体を行わなかったことを示す。
密着性 密着性 密着性
実施例1 ◎ 実施例16 ◎ 参考例1
実施例2 ◎ 実施例17 ◎ 参考例2
実施例3 ◎ 実施例18 ◎ 参考例3
実施例4 ◎ 実施例19 ◎
実施例5 ◎ 実施例20 ◎ 比較例1 −−
実施例6 ◎ 実施例21 ◎ 比較例2 ×
実施例7 ◎ 実施例22 ◎ 比較例3 −−
実施例8 ◎ 実施例23 ◎ 比較例4 ×
実施例9 ◎ 実施例24 ◎ 比較例5 ×
実施例10 ◎ 実施例25 ◎ 比較例6 ×
実施例11 ◎ 実施例26 ◎ 比較例7 ×
実施例12 ◎ 実施例27 ◎ 比較例8 ×
実施例13 ◎ 実施例28 ◎
実施例14 ◎ 実施例29 ◎
実施例15 ◎ 実施例30 ◎
【0077】
《試験結果の評価》
上表によると、比較例1では下地皮膜を形成せず、シリコン基板上に直接に導電性皮膜(銅皮膜)を形成しようとしたが、銅皮膜は得られず、粉状の析出物が得られたのみであった。
これに対して、ニッケル−リンの下地皮膜を介してシリコン基板上に導電性皮膜を形成し、下地皮膜に対して熱処理した実施例1〜30では、銅、スズ、銀、ニッケル、パラジウムなどの導電性皮膜の種類に拘わらず、いずれも下地皮膜はシリコン基板に良好に密着しており、従って、シリコン基板上に下地皮膜を介して導電性皮膜を密着性良く形成できることが裏付けられた。
【0078】
次いで、上記比較例2、或は比較例8はシリコン基板上に電気メッキで形成する下地皮膜にニッケル−リン皮膜ではなくニッケル皮膜を選択したもので、具体的には、比較例2は冒述の特許文献2に準拠した例、比較例8は公知のワット浴を用いた例であるが、いずれの場合にあっても、シリコン基板に対するニッケル皮膜の密着性はニッケル−リン皮膜に大きく劣り、従って、シリコン基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
これら比較例2又は比較例8に実施例1〜30を対比すると、電気を通し難いシリコン基板上にニッケル系の下地皮膜を形成する場合、ニッケル皮膜では密着性に劣るため、強固な密着性を実現するには、ニッケルではなくニッケル−リンの電着皮膜を選択することの重要性が判断できる。
特に、比較例2が準拠した冒述の特許文献2に着目すると、同文献2に記載された電気ニッケルのスルファミン酸浴は、シリコンウエハーからなる基板を被メッキ物とする点(請求項1と5)、ホウ酸とプロペンスルホン酸塩(=アリルスルホン酸塩と同義)を含み、緩衝剤としてクエン酸や乳酸を使用できる点(請求項1〜2、[0016]、[0046])、湿潤剤(但し、具体的な言及はない)を使用できる点([0018])で、本発明の電気ニッケル−リンメッキ浴と共通するが、浴種がニッケル浴である点で本発明のメッキ浴と大きく異なる。
比較例2には特許文献2に具体的に言及のないノニオン性界面活性剤を湿潤剤として加入したが(この点で、比較例2は本発明の下地形成用メッキ浴からリン化合物(b)を抜いたメッキ浴ということができる)、それにも拘わらず、本発明のニッケル−リンメッキ浴と比較例2のニッケル浴において、シリコン基板に対する下地皮膜の密着性が大きく異なることに鑑みると、やはり、この浴種の相違、即ち、リン化合物のメッキ浴への添加の有無が、シリコン基板に対する密着性に大きく影響したことが推定される。
【0079】
上記比較例3は本発明のニッケル−リンメッキ浴に錯化剤(c)を含まないメッキ浴であるが、錯化剤を欠くためにメッキ浴の安定性が悪く、沈殿が発生して浴の機能が失われたため、下地皮膜形成工程(S1)自体を行うことができなかった。
従って、実施例1〜30を比較例3に対比すると、下地皮膜をシリコン基板上に円滑に形成するためには、浴を安定にする機能を果たす錯化剤のニッケル−リンメッキ浴への添加が必須であることが分かる。
また、ニッケル−リンメッキ浴に緩衝剤(e)を含まない比較例5では、シリコン基板に対するニッケル−リン皮膜の密着性に劣り、従って、シリコン基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できないことから、実施例1〜30を比較例5に対比すると、シリコン基板上に下地皮膜を強固に密着させるためには、ニッケル−リンメッキ浴への緩衝剤の添加が必要であることが分かる。
【0080】
比較例4はニッケル−リンメッキ浴に本発明の特定の界面活性剤(d)を含まない例であり、比較例7は本発明が特定する以外の界面活性剤(カチオン性界面活性剤)を含む例であるが、いずれの場合においても、シリコン基板に対するニッケル−リン皮膜の密着性に劣り、従って、シリコン基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できないことから、実施例1〜30をこれら比較例4又は比較例7に対比すると、シリコン基板上に下地皮膜を強固に密着させるためには、ニッケル−リンメッキ浴に添加する界面活性剤をノニオン性又は両性に特化する必要があることが分かる。
比較例6はニッケル−リンメッキ浴に本発明の特定の光沢剤(f)を含まない例であるが、シリコン基板に対するニッケル−リン皮膜の密着性に劣り、従って、シリコン基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できないことから、実施例1〜30をこの比較例6に対比すると、シリコン基板上に下地皮膜を強固に密着させるためには、ニッケル−リンメッキ浴への本発明の光沢剤(f)の添加が必須であり、特に、所定の光沢剤(f)の複合が好ましいことが分かる。
【0081】
そこで、実施例1〜30を詳細に検討する。
実施例1〜17、23〜28は導電性皮膜が銅皮膜、実施例18は同じくニッケル皮膜、実施例19、29は同じくスズ皮膜、実施例20は同じくスズ−ビスマス合金皮膜、実施例21、30は同じく銀皮膜、実施例22は同じくパラジウム皮膜である。
これら実施例を総合すると、所定の錯化剤、界面活性剤、光沢剤などを含有する本発明の電気メッキ浴で形成したニッケル−リンの下地皮膜を介することで、シリコン基板上に銅、スズ、ニッケル、銀、パラジウムの各種単独金属、或は、スズ−ビスマス合金からなる導電性皮膜を共に密着性良く形成できることが分かる。
【0082】
導電性皮膜が共に銅皮膜である実施例1〜17において、下地皮膜形成用の電気メッキ浴の錯化剤、界面活性剤、光沢剤、ニッケル塩、リン化合物などの種類を変更した例であるが、メッキ浴に所定成分を含む条件を満たす限り、下地形成用のニッケル−リンメッキ浴の組成を自由に選択しても、シリコン基板に対する下地皮膜の強固な密着性を共に保持できることが判断される。
例えば、実施例1〜5、9〜17は下地形成用電気メッキ浴に含有する錯化剤にクエン酸を用いた例、実施例6は同じくニトリロ三酢酸、実施例7は同じくグルコン酸塩、実施例8は同じく糖質を用いた例であるが、特定の錯化剤のうちのいずれを選択しても、下地皮膜の密着性を良好に確保できた。
また、実施例16は下地形成用の電気メッキ浴に含有する界面活性剤に両性界面活性剤を用いた例、他の実施例は同じくノニオン性界面活性剤を用いた例であるが、ノニオン性及び両性のいずれの界面活性剤を選択しても、同じく下地皮膜の密着性を良好に確保できた。
実施例1〜9は下地形成用電気メッキ浴に含有する光沢剤にアリルスルホン酸とサッカリンの複合、実施例10はベンゼンスルホン酸とサッカリンの複合、実施例11はアリルスルホン酸とプロパギルアルコールの複合、実施例12はベンゼンスルホン酸とブチンジオールの複合、実施例11はナフタレンスルホン酸とブチンジオールの複合例であるが、特定の光沢剤のうちのいずれを選択しても、或は、いずれを組み合わせても下地皮膜の密着性を良好に確保できた。
実施例1と2はニッケル塩を変更した例、実施例1と2と8はリン化合物を変更した例であるが、これらの自由な選択に対して、共に下地皮膜の良好な密着性は変わらなかった。
【0083】
一方、下地皮膜の熱処理に着目すると、実施例23〜27は熱処理工程(S12)での加熱条件を実施例1から変更した例であるが、実施例1(70℃、3分間の湯煎)に対して加熱条件(加熱時間、温度)を変更し、或は、熱処理の種類(湯煎、熱風処理、オーブン加熱など)を変更しても、共に下地皮膜の強固な密着性は変わらなかった。
また、実施例1〜27が下地皮膜の形成工程(S1)と導電性皮膜の形成工程(S2)の間に熱処理する中間熱処理方式であるのに対して、実施例28〜30は導電性皮膜の形成工程(S2)の後に熱処理する後段階熱処理方式であるが、中間段階と後段階のいずれの熱処理方式をとっても、共にシリコン基板への下地皮膜の強固な密着力は変わらず、従って、シリコン基板上に各種導電性皮膜を密着性良く形成できた。この実施例28〜30では、導電性皮膜を銅、スズ、銀の各種金属に変化させているが、中間、或は後段階のいずれの熱処理方式をとっても、各種の導電性皮膜をシリコン基板上に密着性良く形成できることが判断できる。
尚、実施例1〜30では下地皮膜形成工程(S1)と導電性皮膜形成工程(S2)に熱処理工程(工程(S12)、又は工程(S3))を付加しているのに対して、参考例1〜3はこの熱処理工程を省略した例であるが、熱処理をしない場合にあっても、下地皮膜はシリコン基板に対して部分剥離はあるものの、実用的な密着性を担保できた。
従って、当該密着性の確保には熱処理の有無は問わないが、熱処理工程を付加することで、シリコン基板に対する下地皮膜の密着性をさらに強固にでき、シリコン基板に導電性皮膜を形成する際の信頼性を向上できる。しかも、所定の低温度域の熱処理を施せば良いので、生産性が高い。
【0084】
実施例1〜30によれば、シリコン基板上に下地皮膜を強固に形成するには、0.3μm以下のごく薄い下地皮膜を形成すれば足り、特に、実施例3に見るように、0.01μmのような極めて薄い皮膜でも充分であることが分かる。
従って、シリコン基板上に銅、スズ、銀などの導電性皮膜を形成しようとする場合、ニッケル−リン皮膜を電気メッキで薄く下張りするだけで上記導電性皮膜を強固に密着できるので、煩雑な作業を必要とせず、生産性を向上できる。