(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームは、一端及び他端にそれぞれ雄ねじが形成され、前記固定手段は、前記複数の孔のうち一つを上方から下方に向かって通過した前記フレームの一端が螺合するよう
に前記突出部に設けられた雌ねじと、前記複数の孔のうち他の一つを上方から下方に向かって通過した前記フレームの他端が螺合するように前記突出部に設けられた雌ねじとを有する請求項3に記載の植物育成容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、植物育成容器を用いてベランダや軒先等で植物、例えば野菜を育てる場合、畑で育てる場合に比べて成長が遅いことがよくある。特に、春や秋の寒い時期にその差が歴然とすることがある。これは、植物育成容器の場合、畑に比べ用土の体積が小さいために、外気温の低下により地温が下がり易く、また、建物の壁等に遮られて日照時間も畑に比べて短いことが原因として考えられる。
【0005】
ベランダや軒先等で植物、例えば野菜を育てたいという気持ちが出ても、上記のように植物育成容器での栽培が畑での栽培に大きく劣ることを知っている者や、植物育成容器での栽培に失敗した経験を有する者や、そのような話を周りから聞いている者は、なかなか実行に移さない。又は、実行した場合でも、上記のようにベランダや軒先での環境が畑と比べ劣っていることに起因し、栽培が思うようにいかず、途中で止めてしまう場合もよくある。
【0006】
一方、上記のようにベランダや軒先等における植物育成容器を用いた栽培環境を改善するため、市販の保温カバー等を植物育成容器に装着する方法もある。しかし、市販の保温カバー等は高価であるにも拘わらず、風雨、日光等により1年程度でカバーに破損が発生する場合もあり、カバーを支持するフレームに破損や曲がりが発生する場合もある。このような事情も植物育成容器での栽培を止める、又は始めない原因となっている。
【0007】
また、市販の保温カバー、防虫カバー、保湿カバー等は、植物育成容器に充填した用土の上方にトンネルを形成し、トンネル内に配置される植物を保温するものである。しかし、畑と同様の地温の維持まではできていない状況であり、市販の保温カバー、防虫カバー、保湿カバー等でトンネルを形成して野菜を育てても、外気温によってはその成長が畑に劣ることがよくある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、費用や手間を抑えながら植物の成長速度および/又は成長完了時の成長度合を改善可能な植物育成容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様に係る植物育成容器は、底部と、底部の外周部から上方に向かって延びる側壁部とを有し、底部と側壁部とで囲まれる収容部に用土を収容する容器本体と、前記側壁部の外周面から水平方向外側に突出する下側突出部と、前記側壁部の上端部に設けられると共に該上端部を上下方向に貫通する複数の孔であって、保温カバー、保湿カバー、又は防虫カバーのフレームが上下方向に挿通する複数の孔と、前記各孔を挿通した各フレームの端をそれぞれ前記下側突出部に固定する固定手段とを備え、前記下側突出部は、前記側壁部の高さ方向の中央又は中央より下側の前記側壁部の外周面から水平方向外側に向かって突出すると共に、前記側壁部の外周面の全周に亘って連続的に又は間欠的に設けられている。
【0010】
第1の態様によれば、カバーの各フレームの端側が各孔と固定手段の2点で支持され、また、固定手段によって各フレームの端が固定される下側突出部は側壁部の高さ方向の中央又は中央より下側に設けられ、各孔は側壁部の上端部に設けられ、各孔と固定手段とは上下方向にある程度間隔をおいて配置されている。このため、フレームにフレーム軸と直交する方向の力(フレームを曲げる方向の力)が加わっても、各フレームの端側がある程度離れた2点で支持されているので、フレームに曲がりや破損が発生し難い。また、各フレームの端が1つの孔に差し込まれて支持される場合、風等によりフレームの端が孔から抜ける場合や、フレームに加わる力により孔が変形する場合も考えられるが、各フレームの端側がある程度離れた2点で支持されているので、フレームが容器本体から無用に外れることが防止され、フレームを支える各孔や固定手段の変形や破損も防止される。
【0011】
さらに、側壁部の高さ方向の中央又は中央より下側の側壁部の外周面から水平方向外側に向かって側壁部の全周に亘って突出する下側突出部が設けられている。このため、容器本体にフレームを取付けた後、保温カバー、保湿カバー、又は防虫カバーとして下方に開口する袋形状のカバーをフレームの上方から被せると共に、下側突出部が全周に亘って覆われる位置までカバーの下側開口部を下方に移動させ、下側開口部を下側突出部に取付けるか、下側開口部を下側突出部の下方で開口が小さくなるように結ぶだけで、カバーを容器本体に装着することができ、このように装着したカバーは位置ずれが起こりにくい。
【0012】
このようにカバーを装着すると、下側突出部の上方において、カバーと側壁部との間に隙間(空気層)が形成される。この空気層には各フレームの端側が配置されているので、風等によりカバーが側壁部側に押される場合に、各フレームの端側がカバーと側壁部との間の空気層を維持することに役立つ。また、下側突出部は側壁部の中央又は中央より下側に設けられているので、側壁部の広範囲に空気層が形成されることになる。カバーは当然にある程度の透光性があるので、カバーを通過した日光が側壁部に当たり側壁部および容器本体内の用土の温度を上昇させ、一方、外気や風は空気層が設けられた側壁部には直接当たらない。
【0013】
空気層は良好な断熱性を有するので、上記作用により、容器本体内の用土の温度が日光により上昇し易く、一度上昇した温度を維持することもできる。さらに良いことに、朝や夕方のように太陽の仰角が小さい時に側壁部が日光を受け、それが保温される傾向があるので、朝早くから用土の温度を上昇させることができ、太陽が沈む前にも用土の温度を上昇させて、それを太陽が沈んだ後に暫く維持することができる。
【0014】
ここで、野菜等の植物の多くは、ある程度の成長度合、例えば本葉が数枚生える頃、茎が太くなり始める頃迄は、ある一定の限られた環境でなければ成長が遅い、又は成長せずに枯れる傾向がある。また、まいた種が発芽し本葉が出始める頃迄は特にその傾向が顕著である。例えば、関東地方で12月〜2月にプランターに充填した用土に種をまいても、ほとんど発芽せずに、種が腐ってしまう。前記ある一定の限られた環境として、一定温度以上であることや、水分が十分であることや、強い風に当てないこと等がある。
【0015】
一方、本葉が数枚生える頃や、茎が太くなり始める頃を過ぎると、野菜等の植物の多くは成長が安定し、温度が低い条件が数日続いたり、多少強い風に当たったりしても、植物自体が有する生命力により成長を維持し、植物自体に再度環境が整うのを待つ余裕が出てくる。このように、野菜等の植物の多くにとって、種まき後や、本葉が数枚生える前や、茎が太くなり始める前に、外気温が低い時でも用土の温度を高くすると共に維持し、これにより用土表面近くの空気の温度も高くすると共に維持し、さらにカバーにより風よけをするのは、栽培を成功させる上で大変重要である。
【0016】
また、日本は四季があり、冬から春にかけては気温が徐々に上がって、秋から冬にかけては気温が徐々に下がっていく。このため、植物の種類に応じて種まきや育成に適した月がある程度決まっており、例えば関東地方でゴーヤを栽培する場合、4月頃に種まきを行い、5月の日光が強くなる時期につるを成長させ、6月の梅雨の時期には日光は少ないが徐々につるを成長させ、7月の梅雨明けの時期から実をつけるようにするのが一つの適した方法であると考える。
【0017】
ここで、ゴーヤは25℃程度の温度に数時間達する状況が数日続かないと発芽せず、また、発芽した後に気温が下がると成長が遅くなるか、成長が止まり、良い苗とならない。しかし、4月の関東地方は最高気温が25℃に達する日が少ない。また、ベランダや軒下は日照時間が短い場合も多く、そのためより発芽や発芽後の成長が良くない。5月になり最高気温が25℃を超える日が多くなった頃に種を植えると、十分成長しない状態で梅雨に入ってつるを十分に伸ばすことができず、7月以降の収穫量に影響が出る。このように、関東地方で日照時間が限られるベランダや軒下で安定してゴーヤを育成するのは結構難しい状況である。
【0018】
第1の態様によれば、外気温が低い時でも用土の温度を高くすると共に維持し、これにより用土表面近くの空気の温度も高くすると共に維持し、さらにカバーにより風よけできるので、関東地方で日照時間が限られているベランダや軒下で安定して発芽および発芽後の育成を行うことが可能である。さらに、通常よりも早いタイミングで種まきしても、発芽および発芽後の育成を行うことも可能になるので、早い時期の収獲も可能になる。そして、従来は種まき時期が決まっていることにより、思い立った時には種まきの時期を逸しているという状況が発生し易かったが、種まき可能な期間を長くし、例えば秋まき野菜の時等はかなり寒くなってからでも種まきが可能になるので、思い立った時に栽培を始められるという利点もある。
【0019】
本発明の第2の態様に係る植物育成容器は、底部と、底部の外周部から上方に向かって延びる側壁部とを有し、底部と側壁部とで囲まれる収容部に用土を収容する容器本体と、保温カバー、保湿カバー、又は防虫カバー用のフレームと、前記側壁部の外周面から水平方向外側に突出する下側突出部と、前記側壁部の上端部に設けられると共に該上端部を上下方向に貫通する複数の孔であって、前記フレームの端側が上下方向に挿通する複数の孔と、前記各孔を挿通した各フレームの端をそれぞれ前記下側突出部に固定する固定手段とを備え、前記下側突出部は、前記側壁部の高さ方向の中央又は中央より下側の前記側壁部の外周面から水平方向外側に向かって突出すると共に、前記側壁部の外周面の全周に亘って連続的に又は間欠的に設けられている。
【0020】
第2の態様も第1の態様と同様に下側突出部、各孔、および固定手段を有しているので、第1の態様と同様の上記作用を奏する。
【0021】
本発明の第3の態様に係る植物育成容器は、底部と、底部の外周部から上方に向かって延びる4つの側面壁を有する側壁部とを備え、底部と側壁部とで囲まれる収容部に用土を収容する平面視略長方形の容器本体と、前記長方形の長辺に対応する側壁部の側面壁から水平方向外側に突出する下側突出部と、前記長方形の長編に対応する側面壁の上端部に設けられると共に該上端部を上下方向に貫通する複数の孔であって、保温カバー、保湿カバー、又は防虫カバーのフレームが上下方向に挿通する複数の孔と、前記各孔を挿通した各フレームの端をそれぞれ前記下側突出部に固定する固定手段とを備え、前記下側突出部は、前記長辺に対応する側面壁の高さ方向の中央又は中央より下側の前記側面壁から水平方向外側に向かって突出している。
【0022】
第3の態様も第1の態様と同様に下側突出部、各孔、および固定手段を有しているので、第1の態様と同様の上記作用を奏する。
【0023】
本発明の第4の態様に係る植物育成方法は、植物育成容器を用いた植物育成方法であって、前記植物育成容器は、底部と、底部の外周部から上方に向かって延びる側壁部とを有し、底部と側壁部とで囲まれる収容部に用土を収容する容器本体と、保温、保湿、又は防虫目的のカバー用のフレームと、前記側壁部の外周面から水平方向外側に突出する下側突出部と、前記側壁部の上端部に設けられると共に該上端部を上下方向に貫通する複数の孔であって、前記フレームの端側が上下方向に挿通する複数の孔と、前記各孔を挿通した各フレームの端をそれぞれ前記下側突出部に固定する固定手段とを備え、前記下側突出部は、前記側壁部の高さ方向の中央又は中央より下側の前記側壁部の外周面から水平方向外側に向かって突出すると共に、前記側壁部の外周面の全周又は略全周に亘って設けられており、この方法は、前記各孔を挿通した前記各フレームの端をそれぞれ前記下側突出部に前記固定手段により固定するフレーム固定ステップと、下方に開口する形状のカバーを前記フレームが固定手段により固定された容器本体に上方から被せるカバー装着ステップとを有し、前記カバー装着ステップでは、前記カバーによって前記下側突出部の外周の少なくとも上端側が全周に亘って覆われるように、前記カバーを前記容器本体に被せるようにしている。
【0024】
第4の態様も、各孔を挿通した各フレームの端をそれぞれ下側突出部に固定手段により固定し、下方に開口する形状のカバーをフレームが固定手段により固定された容器本体に上方から被せ、この時、カバーによって下側突出部の少なくとも上端側が全周に亘って覆われるようにカバーを容器本体に被せるので、第1の態様で説明した作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フレームの曲がりや破損が防止され、フレームが容器本体から無用に外れることが防止され、フレームを支える各孔や固定手段の変形や破損も防止されるので、一度購入した容器本体やフレームを長く使用することができ、フレーム等を再購入する費用や、外れたフレームを元に戻す手間等を少なくすることができる。さらに、フレームの曲がりや破損を防止することにより、カバーの位置ずれや、カバーの破損も抑制することができ、さらに、上記のように下側突出部まで覆うカバーは位置ずれが生じ難いので、位置ずれや破損の対応の手間や費用も少なくすることができる。
【0026】
また、透光性を有するカバーと、カバーと側壁部との間の空気層とにより、用土の温度を上昇させ、その温度を維持することができるので、植物の成長速度および/又は成長完了時の成長度合を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る植物育成容器の使用状態説明図である。
【
図2】第1の実施形態に係る植物育成容器の正面図である。背面図は正面図と同一にあらわれるため省略する。
【
図3】第1の実施形態に係る植物育成容器の左側面図である。右側面図は左側面図と同一にあらわれるため省略する。
【
図4】第1の実施形態に係る植物育成容器の平面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る植物育成容器の底面図である。
【
図6】マルチを装着した状態の第1の実施形態に係る植物育成容器の平面図である。
【
図7】マルチを装着した状態の第1の実施形態に係る植物育成容器の長手方向断面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る植物育成容器の
図4におけるX−X矢視方向断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る植物育成容器の
図12におけるY−Y矢視方向断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係る植物育成容器の正面図である。右側面図および左側面図は正面図と同一にあらわれるため省略する。
【
図11】第2の実施形態に係る植物育成容器の背面図である。
【
図12】第2の実施形態に係る植物育成容器の平面図である。
【
図13】第2の実施形態に係る植物育成容器の底面図である。
【
図14】第2の実施形態に係る植物育成容器の使用状態説明図である。
【
図15】第2の実施形態に係る植物育成容器の第1変形例を示す下側突出部の要部平面図である。
【
図17】第2の実施形態に係る植物育成容器の第1変形例を示すフレームの要部正面図である。
【
図18】第2の実施形態に係る植物育成容器の第2変形例を示す下側突出部の要部平面図である。
【
図19】第2の実施形態に係る植物育成容器の変形例の底面図である。
【
図20】
図2において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図21】
図3において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図22】
図4において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図23】
図5において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図24】
図8において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図25】
図9において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図26】
図10において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図27】
図11において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図28】
図12において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図29】
図13において、外観的に特に特徴のある部分を実線であらわし、その他の部分を破線であらわしたものである。
【
図31】各鉢の小松菜の本葉の長さを測定した結果を示す表である。
【
図32】2016年1月17日の実施例の小松菜の様子を示す写真である。
【
図33】2016年1月17日の比較例1の小松菜の様子を示す写真である。
【
図34】2016年1月17日の比較例2の小松菜の様子を示す写真である。
【
図35】実施例においてカバー40で覆った様子を示す写真である。
【
図36】比較例1においてカバー40で覆った様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る植物育成容器について図面を参照して以下に説明する。
本発明の第1の実施形態に係る植物育成容器は、
図1〜8に示すように、底部11と、底部11の外周部から上方に向かって延びる側壁部12とを有し、底部11と側壁部12とで囲まれる収容部13に用土Sを収容する容器本体10と、保温、保湿、又は防虫等の目的のカバー用の1つ又は複数(本実施形態では3本)のフレーム20と、側壁部12の上端部から水平方向外側に向かって突出する上側突出部12aと、上側突出部12aに設けられると共に上側突出部12aを上下方向に貫通する複数の孔12bと、側壁部12の外周面から水平方向外側に突出する下側突出部12cと、前記各孔12bを挿通したフレーム20の端をそれぞれ下側突出部12cに固定する固定構造とを備えている。上側突出部12aは側壁部12の上端部の一部を形成している。上側突出部12aは必ずしも側壁部12の最上端と同じ高さに位置する必要は無く、上側突出部12aの上面が当該最上端から2〜3cm程度、又は3〜5cm程度下方に配置されていても、上側突出部12aは側壁部12の上端部の一部を形成するものとする。
【0029】
この植物育成容器は平面視で略長方形であり、このため、4つの側面壁により側壁部12が形成されている。
本実施形態では、容器本体10の下端側である側壁部12の下端の1箇所又は複数個所に排水孔12eが形成され、排水孔12eはプラスチック製の栓やゴム製の栓(図示せず)によって開閉可能に構成されている。排水孔12eを底部11に設けることも可能である。栓が無い構成とすることも可能であり、排水孔を他の公知の構成とすることも可能である。
【0030】
下側突出部12cは、
図3のように、側壁部12の下端から見て、側壁部12の高さの20%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって突出し、側壁部12の外周面の全周に亘って設けられている。
本実施形態では、容器本体10はプラスチック製であり、上側突出部12aと下側突出部12cとの間の側壁部12は、収容部12に収容する用土Sと外部の空気とを仕切る実質1枚の板であり、模様等の他に当該側壁から突出する構成を極力有しないことが好ましい。上側突出部12aと下側突出部12cとの間の側壁部12の80%以上の面積、より好ましくは90%以上の面積で、前記側壁から突出する構成を有しないことが好ましい。
【0031】
ここで、例えば下側突出部12cが斜め下方や斜め上方に向かって側壁部12から外側に延びているとしても、水平方向外側に突出している事には変わりはないので、前記のように水平方向外側に向かって突出していることになる。また、例えば下側突出部12cが側壁部12の外周面に沿って上方又は下方に向かって延びた後に、斜め下方や斜め上方に向かって外側に延び、その後に再び上方や下方に向かって延びているとしても、水平方向外側に突出している事に変わりはないので、前記のように水平方向外側に向かって突出していることになる。
【0032】
下側突出部12cの外周長は、市販のビニール袋の開口部周長と同等に、又はそれより少し短く(例えば1〜3cm程度短く)形成されている。例えば、市販の45Lの透明又は半透明のビニール袋に合せる場合、当該ビニール袋のサイズは65cm×80cmで開口部の周長は130cmなので、下側突出部12cの外周長は130cm程度又は127〜129cm程度に形成される。市販されている他の規格サイズのビニール袋の開口部周長と同等に、又はそれより少し短く(例えば1〜3cm程度短く)形成することも可能である。本実施形態では、市販の30Lの透明又は半透明のビニール(50cm×70cm)をカバー40として使用し、下側突出部12cの外周長は98〜99cm程度に形成されている。
【0033】
本実施形態では、上側突出部12aの外周長は、下側突出部12cの外周長と同等又はそれより少し短く形成されている。
下側突出部12cには固定構造として複数の雌ねじ孔12dが設けられ、平面視において、各雌ねじ孔12dは上側突出部12aに設けられた各孔12bに略対応した位置に配置されている。
フレーム20はプラスチック製の棒であり、その両端に雄ねじ20aが形成されている。フレーム20は可撓性、および曲げに抗する復元力を発生する弾性を有することが望ましく、プラスチック、硬質ゴム、カーボンファイバー等の材質から成る。なお、金属製とすることも可能である。
【0034】
上記のように構成された植物育成容器を使用する場合について以下説明する。
先ず、
図1および7のように、容器本体10の収容部13の底部に1〜3mm程度の細かな目のプラスチック製の網51を配置する。この時、収容部13の底部に底上げ用のプラスチック片52を配置し、網51を収容部13の底部から浮かすことが好ましい。
続いて、収容部13内に肥料入りの用土Sを側壁部12の最上端とほぼ同じ高さ位置まで充填し、用土Sの上にマルチ53を被せる。マルチ53は黒色等のビニール袋であれば何でも良い。そして、マルチ53の種をまく位置に育成用開口53aを形成し、育成用開口53aの近傍に水及び肥料供給用開口53bを形成する。そして、育成用開口53aの位置の用土に種をまき、水及び肥料供給用開口53bから水を供給する。水及び肥料供給用開口53bの位置の用土に
図7のように凹部を設けておくと、水及び肥料を供給し易い。なお、網51、プラスチック片52、およびマルチ53は有っても無くても良い。
【0035】
一方、3本のフレーム20の端をそれぞれ雌ねじ孔12dに固定する。このために、1本目のフレーム20の一端側を上側突出部12aの孔12bに上方から下方に向かって通過させると共に、該一端に形成された雄ねじ20aを対応する雌ねじ孔12dに螺合する。この時、必要十分な螺合位置を超えて螺合させておく。次に、当該1本目のフレーム20の他端側を上側突出部12aの他の孔12bに上方から下方に向かって通過させると共に、該他端に形成された雄ねじ20aを対応する雌ねじ孔12dに螺合する。この他端の螺合の際、一端側の雄ねじ20aも抜ける方向に回るが、上記のように必要十分な螺合位置を超えて螺合させてあるので、一端側の雄ねじ20aが対応する雌ねじ孔12dから抜けることはない。これを他2本のフレーム20についても行う。
【0036】
続いて、前述の市販の30Lのビニール袋であるカバー40をフレーム20が固定された容器本体10に上方から被せる。この時、カバー40の下端側(開口側)によって下側突出部12cの外周の少なくとも上端側が全周に亘って覆われるように、カバー40を容器本体10に被せる。
【0037】
この時、カバー40の開口部側をクリップ等の固定部材により下側突出部12cに取付ける処置、カバー40の開口部を下側突出部12cの下側で結ぶことにより当該開口部の開口径を小さくする処置等の簡単な処置により、カバー40の開口部側が下側突出部12cから外れないようにすることができる。
または、カバー40の下端が下側突出部12cを超えて数cm以上下方に位置するように、カバー40を容器本体10に被せるだけで、カバー40が上側突出部12a、下側突出部12c、および各フレーム20の端側に接触し、さらに下側突出部12cの下側に配置されるカバー40の開口部は自然に萎んだり撓んだりするので、前記固定部材の取付けや前記結ぶ作業を行わなくても、カバー40の開口部側を下側突出部12cから外れないようにすることができる。
【0038】
本実施形態によれば、各フレームの端側が各孔12bと各雌ねじ孔12dの2点で支持され、また、各雌ねじ孔12dによって各フレームの端が固定される下側突出部12cは、側壁部12の下端から見て、側壁部12の高さの20%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって突出し、各孔12bは側壁部12の上端部に設けられ、各孔12bと各雌ねじ孔12dとは上下方向にある程度間隔をおいて配置されている。このため、フレーム20にその軸と直交する方向の力(フレーム20を曲げる方向の力)が加わっても、各フレームの端側がある程度離れた2点で支持されているので、フレーム20に曲がりや破損が発生し難い。また、各フレームの端が1つの孔に差し込まれて支持される構造では、風等によりフレームの端が孔から抜ける場合や、フレームに加わる力により孔が変形する場合も考えられるが、各フレームの端側がある程度離れた2点で支持されているので、フレーム20が容器本体10から無用に外れることが防止され、フレーム20を支える各孔12bや各雌ねじ孔12dの変形や破損も防止される。
【0039】
さらに、側壁部12の下端から見て、側壁部12の高さの20%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって下側突出部12cが突出している。このため、容器本体10にフレーム20を取付けた後、保温カバー、保湿カバー、又は防虫カバーとして下方に開口する袋形状のカバー40をフレーム20の上方から被せると共に、下側突出部12cが全周に亘って覆われる位置までカバー40の下側開口部を下方に移動させ、下側開口部を下側突出部12cに取付けるか、下側開口部を下側突出部12cの下方で開口が小さくなるように結ぶだけで、カバー40を容器本体10に装着することができ、このように装着したカバー40は位置ずれが起こりにくい。
【0040】
このようにカバー40を装着すると、下側突出部12cの上方において、カバー40と側壁部12との間に隙間(空気層)が形成される。この空気層には各フレームの端側が配置されているので、風等によりカバー40が側壁部12側に押される場合に、各フレームの端側がカバー40と側壁部12との間の空気層を維持することに役立つ。また、下側突出部12cは側壁部12の高さの20%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって延びているので、側壁部12の広範囲に空気層が形成されることになる。カバー40は当然にある程度の透光性があるので、カバー40を通過した日光が側壁部12に当たり側壁部12および容器本体10内の用土の温度を上昇させ、一方、外気や風は空気層が設けられた側壁部12には直接当たらない。
【0041】
空気層は良好な断熱性を有するので、上記作用により、容器本体10内の用土の温度が日光により上昇し易く、一度上昇した温度を維持することもできる。さらに良いことに、朝や夕方のように太陽の仰角が小さい時に側壁部10が日光を受け、それが保温される傾向があるので、朝早くから用土の温度を上昇させることができ、太陽が沈む前にも用土の温度を上昇させて、それを太陽が沈んだ後に暫く維持することができる。
【0042】
本実施形態では、側壁部12の下端から見て、側壁部12の高さの20%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって下側突出部12cが突出しているが、側壁部12の中央又は中央より下側の側壁部の外周面から水平方向外側に向かって突出するように下側突出部12cを形成しても、上記と同様の作用効果を奏する。
なお、上側突出部12aにより側壁部12に向かう日光が遮られることを考慮すると、下側突出部12cを、側壁部12の高さの35%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって延びるように形成することが実質的に有効である。さらに、下側突出部12cを、側壁部12の高さの20%の位置よりも下側の側壁部12の外周面から水平方向外側に向かって延びるように形成すると、様々な日照条件に対応することができるので、実質的により有利である。
【0043】
また、本実施形態では、カバー40として市販の透明又は半透明の袋を簡単に利用することができる。市販の袋は1個当たりの価格が極めて安価であるため、破損等が生じた際に新品に交換しても、その費用は極めて限られている。また、季節や気温に応じて上側突出部12aよりも上方のカバー40に適宜孔をあけることにより、風通しやカバー40内の温度を容易に調整することができ、その孔の数や位置を任意に設定することができ、さらに失敗した場合や気温が変化した場合に新たなカバー40に費用をかけずに交換することができる。
【0044】
例えば、種まきは、種に光が届くように地表から数mmや1cm程度の所に種をまき、その発芽率を良くするためには、種の近傍の温度を所定温度以上とし、種の近傍の水分を維持し、種に光が届くようにする必要がある。プランター等に直まきする場合は、地表が乾かないように、また、地表に冷たい風が当たらないように、水分を含んだ新聞紙や不織布等で地表を覆い、種の近傍の水分を維持すること等が、植物栽培を指南する本等で推奨されている場合もある。しかし、新聞紙や不織布は風で飛びやすく、実際はうまくいかない事が多い。また、不織布や新聞紙は光を遮る。一方、温度と湿度を電力等を用いて維持する育苗器を用いることも考えられるが、育苗器は高価であり、発芽およびその後の短期間だけ用いる機器であるにも拘わらず場所を取る。
【0045】
本実施形態では、地温を上げ維持することができる。また、簡単にカバー40を着脱でき、カバー40にあける通気孔を少なくすることにより、良好に風をよけ、地表が乾かないようにすることができ、また、外気温に対しカバー40内の温度をかなり高くすることもできる。2月下旬から3月上旬等の寒い時期でも地温や雰囲気温度を25℃以上にすることも可能である。このように、新聞紙等で地表を覆わなくても保湿できるので、種に光が届きやすい。加えて、上側突出部12aよりも下には通気孔をあけないようにすると、空気層の保温性能を向上することができる。通気孔の位置、量、大きさは季節や気温に応じて適宜変更することができる。このため、寒い時期や、日照量が少ない場所でも、良好に発芽させることができる。
【0046】
発芽後、ある程度の成長度合、例えば本葉が数枚生える成長度合や、茎が太くなり始める成長度合まで、カバー40の通気孔の数、位置、大きさを適宜調整し、高い地温、風よけ、保湿等を行いながら、成長を促進することも可能である。これにより、早期に安定成長に移行させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、フレーム20の一端側および他端側のそれぞれを孔12bと雌ねじ孔12dの2点で支持している。また、フレーム20は曲げに抗する復元力を有する。このため、一端側および他端側のそれぞれが孔12bと雌ねじ孔12dの2点で支持されたフレーム20は、
図1に示すように、上側突出部12aの上方で水平方向外側に向かって膨らむ(
図1の矢印Aの方向に膨らむ)。この時、各孔12bはフレーム20の端側が挿通するように形成されているので、各孔12b内でフレーム20がこじり方向に変位することができる。このため、各孔12bと各雌ねじ孔12dの間の各フレームの端側が水平方向内側に向かって撓む(
図1の矢印Bの方向に撓む)。この撓みにより上側突出部12aの上方でフレーム20が矢印Aの方向により膨らみ易くなる。この膨らみは植物が延びるスペースを形成する。多くの植物は上方に延びるにつれて幅方向に拡がる傾向があるので、この膨らみにより植物が十分に成長することができるようになる。
【0048】
1本のフレーム20の両端を雌ねじ孔12dに固定するのではなく、2本のフレーム20の下端をそれぞれ雌ねじ孔12dに固定し、2本のフレーム20の上端側をその軸が互いに平行になるように接続しても、上記と同様に矢印Aの膨らみと矢印Bの撓みが生ずる。
【0049】
また、本実施形態では、フレーム20の端の雄ねじ20aを下側突出部12cの雌ねじ孔12dに螺合することにより、フレーム20を容器本体10に固定できるので、フレーム20の着脱が極めて容易でありながら、フレーム20が風等で無用に外れないように確実に固定することができる。また、着脱も容易であり、取外した後に場所を取らない。
【0050】
本発明の第2の実施形態に係る植物育成容器は、
図9〜14に示すように、平面視で略長方形の第1の実施形態に係る植物育成容器に対し、平面視が略丸形状である点を除き、第1の実施形態に係る植物育成容器と同様の構成を有すると共に、同様の作用効果を奏する。このため、本実施形態の詳細な説明は省き、第1の実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0051】
なお、第1および第2の実施形態と異なる固定構造を用いることも可能である。例えば、
図15〜17に示すように、下側突出部12cにその外周部から内側に延びる溝12fを設け、フレーム20の端側に小径部20bを設け、小径部20bが溝12fと係合するように構成しても良い。この場合、小径部20bの外径を溝12fの最大幅に対し同等に、又は少し小さく形成すると、フレーム20の軸方向の移動が規制される。また、
図15に示すように、溝12f内に幅が広い幅広部と幅が狭い幅狭部が容器本体10の外側から内側に向かって交互にあらわれるようにすると、フレーム20の端の固定位置を水平方向に調整できる。または、フレーム20の端に小径部20bを設けず、フレーム20の端を単に下側突出部12cに設けた孔や溝12fに嵌合するだけの構造とすることも可能である。
【0052】
または、
図18に示すように、下側突出部12cやフレーム20と別部材の先割れ部50aを有する固定片としてのクリップ50によって、フレーム20の端を下側突出部12cに固定することも可能である。クリップ50は周知のターンクリップ(ダブルクリップとも称される)の先端に先割れ部50aを形成したものである。フレーム20の端は先割れ部50aに水平方向や上下方向に係合し、フレーム20の端が下側突出部12cに固定される。この時、フレーム20の端側に小径部20bがあると、より確実に固定される。クリップ50の他の固定片により固定することも可能である。
【0053】
または、フレーム20の端側に固定片を固定し、固定片を下側突出部12cに固定することにより、フレーム20の端を下側突出部12cに固定することも可能である。この場合でも、固定片はフレーム20の端側に水平方向および上下方向に係合していると言える。
その他の公知の手段によりフレーム20の端を下側突出部12cに固定することも可能である。
【0054】
なお、第1の実施形態では、平面視略長方形の容器本体10の側面部12の4つの側面壁の全てに下側突出部が設けられているものを示した。ここで、平面視略長方形の容器本体10の場合、特にその長辺が短辺の1.5培以上の長さを有する場合、長辺部を構成する側面壁のみに下側突出部を設けても良い。この場合でも、長編部を構成する側面壁の面積が大きいので、この範囲に日光が当たるように容器本体を配置することにより、上記空気層等の効果が得られる。
【0055】
また、第1および第2の実施形態では、下側突出部12cが側面部12の全周に亘って連続的に設けられるものを示した。これに対し、上記空気層が形成されるように側面部12の外周面に下側突出部12cを設ける場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。このような場合は、下側突出部12dが側面部12の略全周に亘って設けられているものとする。例えば、
図19のように、下側突出部12dを側面部12の略全周に亘って間欠に設けることも可能である。
図19は、特徴が分かり易くなるように、上側突出部12aが記載されていない。この場合でも、カバー40の開口部近傍で下側突出部12d同士の隙間が軽く閉鎖されるので、上記空気層が形成され、その空気層が各フレームの端側によって維持されるので、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
上記各実施形態において、フレーム20同士を別のフレーム、紐等の接続部材で接続することも可能であり、また、フレームとして、複数のフレーム20が元々接続部材で恒久的に接続されたものを使用することも可能であり、これらの場合でも前述と同様の作用効果を奏する。
また、上記各実施形態において、カバー40を、1mm以下の細かな穴を周知の防虫ネットを下方が開口する袋状に形成したものや、下方が開口する袋状に形成された不織布や、その他の公知のカバーに置き換えることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を奏し得る。
また、上記各実施形態において、底部11の上面を排水孔12eに向かって下り傾斜をなすように形成することも可能である。
また、日光による温度上昇と空気層による保温効果をより効率的に得るため、容器本体10を黒、青、茶等の色に形成することも有効である。一方、上側突出部12aと下側突出部12cとの間のカバー40に大き目の孔を多数あけるだけで、季節等により空気層の保温効果を弱めることもできる。また、上側突出部12aと下側突出部12cとの間に遮光性のカバーを装着すれば、その範囲の容器本体は光を受けなくなり温度上昇が防止され、空気層が存在するので、温度上昇の防止も効果的に行うことができる。
【0057】
なお、上記各実施形態および各変形例において、用土Sを側壁部12の最上端の位置まで充填し、用土Sの上面をマルチ53で覆うと共に各開口53a,53bをあけ、容器本体10の下端側に栓で開閉される排水孔12eがある場合に水やりする場合、先ず、排水孔12eを栓で閉鎖した状態で、開口53bから用土全体に水が行きわたるまで入れる。開口53aの位置の用土Sに水が少し浮くまで入れても良い。これにより、開口53aの位置の種がまかれた用土Sを荒らさずに、用土全体に水を行きわたらせることができる。また、無用に多くの水を使わなくて済む。そして、暫く置いた後に栓を抜き、排水穴12eから排水を行う。この時、夏場の暑い時期は、全て排水するのではなく、排水途中で栓で排水孔12eを閉じても良い。このように側壁部12の最上端の位置まで用土Sを充填しても、マルチ53で覆っているので、用土Sを荒らさずに最小限の水で水やりでき、用土Sがこぼれることは殆どない。この構成を用いると、容器本体10の高さ寸法を小さくすることができ、水を節約でき、しかも種の発芽やその後の育成をコントロールし易い。
【0058】
アップルウェアー(登録商標)株式会社製の平面視が円形のプラスチック製の鉢(7号鉢;φ215×152および土容量が2.7Lと表示されたもの)を用いて、下記実験を行った。当該鉢には上側突出部12aが元々形成されている。上側突出部12aは鉢側面から約20mm程度径方向外側に突出している。
【0059】
実験例は、当該鉢に外径が約245mmであり、厚さが約10mmである発泡プラスチック製のクリーム色の下側突出部12cを取付けた。また、上側突出部12aには周方向に間隔をおいて4つの孔12bを設けた。下側突出部12cにも上側突出部12aの穴12bに対応した位置にそれぞれ孔12dを設けた。この実験例では、下側突出部12cの孔12dは雄ねじ孔ではなく単なる貫通孔となっている。
この実験例では、下側突出部12cは当該鉢の高さ方向の下から20%程度の位置に取付けられている。
【0060】
また、当該鉢に花ごころ(登録商標)社製のわたしの野菜の土をすり切り一杯まで充填し、その用土の上を黒色等のビニール袋から成るマルチ53で覆い、マルチ53に育成用開口53aと水及び肥料供給用開口53bを形成した。また、水及び肥料供給用開口53bの位置の用土に
図7のように凹部を設けた。
また、本実験例ではフレーム20として針金を用いた。2本の針金を用意し、先ず、一方の針金の一端側をある1つの孔12bに上方から下方に向かって挿通させて対応する下側突出部12cの孔12dに固定した。この際、針金の一端側を曲げ、例えば孔12dに巻き付けることにより、針金の一端側を孔12dに固定する。また、当該針金の他端側を対角位置に配置された孔12bに上方から下方に向かって挿通させて対応する下側突出部12cの孔12dに同様に固定した。他方の針金も同様に固定した。
【0061】
そして、市販の30Lの透明なビニール袋であるカバー40をフレーム20が固定された当該鉢に上方から被せた。この時、カバー40の下端側(開口側)によって下側突出部12cが全周に亘って覆われるように、カバー40を容器本体10に被せ、カバー40の下端側(開口側)を複数の洗濯バサミによって下側突出部12cに固定した。
今回、市販の30Lのビニール袋の下端側(開口側)の内径が上側突出部12aや下側突出部12cの外径に比べかなり大きかったため、当該ビニール袋の周方向の一部を切除すると共に、当該ビニール袋の切断された部分を黒のビニールテープで接続することにより、当該ビニール袋の下端側(開口側)の内径を上側突出部12aや下側突出部12cの外径より若干大きくなるよう設定した。
【0062】
比較例1では、当該鉢に下側突出部12cを取付けずに、当該鉢に花ごころ社製のわたしの野菜の土をすり切り一杯まで充填し、その用土の上を黒色等のビニール袋から成るマルチ53で覆い、マルチ53に育成用開口53aと水及び肥料供給用開口53bを形成した。また、水及び肥料供給用開口53bの位置の用土に
図7のように凹部を設けた。
その後、マルチ53と用土に挿通するように複数本のフレームを用土に立て、市販の30Lの透明なビニール袋であるカバー40をフレーム20が固定された当該鉢に上方から被せた。この時、ビニール袋の下端に縦に切込みを入れ、当該切込みで分離された2箇所を上側突出部12aの下側で結ぶことにより、カバー40を当該鉢に固定した。
【0063】
比較例2では、当該鉢に下側突出部12cを取付けずに、当該鉢に花ごころ社製のわたしの野菜の土をすり切り一杯まで充填し、その用土の上を黒色等のビニール袋から成るマルチ53で覆い、マルチ53に育成用開口53aと水及び肥料供給用開口53bを形成した。また、水及び肥料供給用開口53bの位置の用土に
図7のように凹部を設けた。比較例2では、カバー40を用いなかった。
【0064】
実施例、比較例1、および比較例2の用土にトーホク社製の小松菜の種(各鉢に対し同じもの)を10〜20粒ずつまき、9時頃〜14時頃まで日光があたるベランダにこれらの鉢を配置した。種まき時に各鉢の用土にたっぷりと水をかけ、その後、1週間半〜2週間前後に1度ずつ約同量の水を各鉢の用土にかけた。
なお、実施例のカバー40は、上記のようにビニール袋を切断した後に黒のビニールテープで接続しているので、その隙間を介してカバー40の内外の空気が入れ替えられる。実施例と同等の空気の入れ替えが行われるように、比較例1のカバー40には切込みを入れた。
【0065】
種まきを2015年12月7日に行ってから2016年1月16日迄の天候状況、9時〜14時の間における日照時間、気温、各鉢の発芽を確認した日を
図30に示す。なお、ここで発芽を確認した日とは、双葉が土から完全に立上ると共に完全に開いた状態になった日を言う。
12月9日に種まきをした後に、12月10、11、13、14、および15日と日照時間が短い日が続いたため、発芽が少し遅れたものと思われる。また、実施例と比較例1の双葉が完全に開いた日を確認したのは同日であるが、これも、12月9日に種まきをした後に、12月10、11、13、14、および15日と日照時間が短い日が続いたためであると考えている。
【0066】
また、2016年1月17日に各鉢の小松菜の本葉の長さを測定した結果を
図31に示す。当該測定では、最も長いものから3つずつ測定を行い、平均値を得た。結果を見ると、実施例は比較例1に対し優位に本葉が長くなっていることがわかる。なお、
図32は2016年1月17日の実施例の小松菜の様子を示す写真であり、
図33は2016年1月17日の比較例1の小松菜の様子を示す写真であり、
図34は2016年1月17日の比較例2の小松菜の様子を示す写真である。実施例と比較例1の写真の比較からわかるように、比較例1の本葉は実施例の本葉に比べ葉の面積が明らかに小さく、この点でも実施例は比較例1に対し成長がはやいと言える。
【0067】
なお、2014年の12月から2015年の2月に同じ小松菜を同様の方法で栽培した際、種まき後40日程度の時期には、本葉は前記実施例と同様の大きさであったが、種蒔き後60〜80日後には十分な大きさに成長をしていたため、実施例の小松菜もあと20〜40日程度で十分な大きさに成長すると思われる。
さらに、2015年12月9日という十分に寒くなった時期に種まきをしたので、実施例、比較例1および比較例2に害虫はつかなかった。このように、寒い時期は害虫の被害を受け難いという利点がある。
【0068】
図35は実施例においてカバー40で覆った様子を示す写真である。このように、フレーム20が上側突出部12aの孔12bおよび下側突出部12cの孔12dによって支持されるので、針金のようなフレーム20であっても簡単に且つしっかりと固定される。また、固定のために用土にフレーム20を挿し込む必要が無いので、フレーム20によって用土が荒れることが無い。実施例ではフレーム20として針金を使用したので、安価にフレーム20を作成することができる。さらに、針金は形状を自由に変えることができるので、育てる植物に応じて用土の上のスペースを拡げることができる。実施例では小松菜の本葉が横に拡がるスペースを確保するため、上側突出部12aの上方のフレーム20が上側突出部12aよりも径方向外側に配置されるようにフレーム20を湾曲させている。一方、
図36は比較例1においてカバー40で覆った様子を示す写真である。
【0069】
上記のように、孔12bと孔12dによりフレーム20が簡単且つ確実に固定されるので、上側突出部12aと下側突出部12cとの間のスペースに他の部材を設けることも容易になる。例えば、上側突出部12aと下側突出部12cとの間のスペースに断熱材、スペーサー、保温部材、発熱部材等を入れることも容易となる。例えば、複数の小さな空気袋を有する周知の透明なエアークッション、周知の発泡材、発泡材から成る周知の網目状の緩衝材、黒色のゴム発泡材から成る網目状の緩衝材を入れることができる。これらを入れると、風の強い時等の地温の維持に貢献する。