(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端部が密閉されるシリンダ部を有し、前記シリンダ部の前記両端部のうち少なくとも一方が開閉可能に密閉される開閉端部となる、高圧ガスを蓄圧する蓄圧容器であって、
前記開閉端部の内周面に、雌ねじが形成され、該雌ねじに螺合される雄ねじを外周面に有するねじ込み部と、前記ねじ込み部の軸方向内側に位置して軸方向内側面を受圧面とする蓋部と、を有し、
前記蓋部は内周側に軸方向外側に伸びる延材部を有し、該延材部は前記ねじ込み部の軸方向内側端側に当接して、前記ねじ込み部の外周側の軸方向内側面と前記蓋部の外周側の軸方向外側面とを離隔させており、
さらに、前記蓋部は、前記開閉端部の内周面に沿った大径部と、前記延材部として前記大径部の外周面よりも内周側に位置して前記大径部の軸方向外側に突き出す突き出し部とを有し、
前記ねじ込み部は、前記突き出し部が挿入される凹部を前記雄ねじの内周側に有し、該凹部は、前記突き出し部の軸方向外側端が底面に当接した状態で、前記ねじ込み部の軸方向内側面と前記蓋部の大径部の軸方向外側面とが離隔して隙間が確保される深さを有し、
前記突き出し部の外周面よりも内周側位置に、前記突き出し部よりも軸方向外側に伸びる軸部からなる第2の突き出し部を有し、前記ねじ込み部には、前記第2の突き出し部が凹入される第2の凹部を有し、前記第2の凹部は、前記ねじ込み部を貫通しており、
前記突き出し部の長さは、前記開閉端部の雌ねじと前記ねじ込み部の雄ねじとの間のかみ合いにおいて、かみ合いの軸方向内側2山目を越え、かつ前記かみ合いの長さの54%以下であり、
前記突き出し部の外周側の位置が、前記ねじ込み部の雄ねじの高さを含めた径方向厚さ(T2)に対し、内周側から45%〜80%の位置にあり、かつ、リガメント部の厚さT3がねじ山の高さ(山の頂と谷底の距離)の180%以上、あるいは、ねじのピッチの120%以上であることを特徴とする蓄圧容器。
前記第2の凹部の内周面に雌ねじが形成され、前記第2の突き出し部の外周面に前記第2の凹部の雌ねじに螺合する雄ねじを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄圧容器。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ステーションなどに用いられる高圧の水素蓄圧器では、Cr−Mo鋼などの高強度低合金鋼などが蓄圧器用の材料として用いられるが、蓄圧器の内表面にき裂が存在した場合、水素と、き裂の先端が接触し、水素環境脆化が生じてき裂の進展が加速し、破壊に至る懸念がある。
一般的な蓄圧器で、開閉用のねじ部が直接水素と接する様な蓄圧器構造である場合は、ねじ部における応力集中部で水素環境脆性が生じ易くなり、蓄圧器の破壊安全性を著しく損なうことになる。水素以外にも内部充填物が金属を脆化させる性質である場合、同様の現象を引き起こす懸念がある。
そこで、非特許文献1、2に示されるように、ねじ部が直接内部に充填した水素と接することの無い、ねじ込みナット蓋構造とすることにより、ねじ底での水素環境脆性を避けることができ、より安全性を高めることが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1、2に示されるねじ込みナット蓋構造では、かみ合っている雄ねじと雌ねじに軸方向荷重が作用すると、ねじ山の荷重分担は均一にならず、はめ合いの第一ねじ山に最大荷重が作用し、2山目以降のねじ山の荷重分担は漸減する。このため、特に第一ねじ山からの疲労き裂発生が懸念される。
例えば水素ステーション用の蓄圧器では1日100回程度の車両への充てんが想定されるため、10年使用した場合は数十万回の疲労強度を保証しなければならず、ねじ部の疲労強度が確保されていなければ、安全性が確保できず、水素ステーションでは安心して使用することができないという問題がある。
【0005】
図7に示されるmodel1の形態は上記で説明した従来例であるが、従来例に対し、ボディーのねじ山の高さを部分的にテーパー状に低くすることによって「ひっかかりの高さ」を漸減させ、第一ねじ山の荷重分担を低減させることが検討される(model2〜4)。model2は、第1ねじ山より、1:10のテーパーを設けたものである。model3は、第1、第2ねじ山は山の高さを低くし、第3ねじ山より1:10のテーパーをつけたものである。model4は、model3と同様にねじ山の形状を定め、蓋に切り欠きを設けたものである。
【0006】
図7のModel1の最大Mises(ミーゼス)応力は434MPaであるのに対し、Model2では323MPa, Model3では306MPaであり、Model4では、蓋に切欠きを入れて第3ねじ谷底以降のねじ谷底に分担させた結果、最小の296MPaまで低減させることができる。しかし、テーパーねじは加工精度が要求され、コストが増加するし、一度蓋を閉めてしまうと再びあけることが工業上は困難であることから、この提案は現実的ではない。
【0007】
本願発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、開閉蓋構造において、十分な疲労強度を確保するとともに開閉が容易な蓄圧容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の蓄圧容器のうち、第1の形態は、両端部が密閉されるシリンダ部を有し、前記シリンダ部の前記両端部のうち少なくとも一方が開閉可能に密閉される開閉端部となる、高圧ガスを蓄圧する蓄圧容器であって、
前記開閉端部の内周面に、雌ねじが形成され、該雌ねじに螺合される雄ねじを外周面に有するねじ込み部と、前記ねじ込み部の軸方向内側に位置して軸方向内側面を受圧面とする蓋部と、を有し、
前記蓋部は内周側に軸方向外側に伸びる延材部を有し、該延材部は前記ねじ込み部の軸方向内側端側に当接して、前記ねじ込み部の外周側の軸方向内側面と前記蓋部の外周側の軸方向外側面とを離隔させており、
さらに、前記蓋部は、前記開閉端部の内周面に沿った大径部と、前記延材部として前記大径部の外周面よりも内周側に位置して前記大径部の軸方向外側に突き出す突き出し部とを有し、
前記ねじ込み部は、前記突き出し部が挿入される凹部を前記雄ねじの内周側に有し、該凹部は、前記突き出し部の軸方向外側端が底面に当接した状態で、前記ねじ込み部の軸方向内側面と前記蓋部の大径部の軸方向外側面とが離隔して隙間が確保される深さを有し、
前記突き出し部の外周面よりも内周側位置に、前記突き出し部よりも軸方向外側に伸びる軸部からなる第2の突き出し部を有し、前記ねじ込み部には、前記第2の突き出し部が凹入される第2の凹部を有し、前記第2の凹部は、前記ねじ込み部を貫通しており、
前記突き出し部の長さは、前記開閉端部の雌ねじと前記ねじ込み部の雄ねじとの間のかみ合いにおいて、かみ合いの軸方向内側2山目を越え、かつ前記かみ合いの長さの54%以下であ
り、
前記突き出し部の外周側の位置が、前記ねじ込み部の雄ねじの高さを含めた径方向厚さ(T2)に対し、内周側から45%〜80%の位置にあり、かつ、リガメント部の厚さT3がねじ山の高さ(山の頂と谷底の距離)の180%以上、あるいは、ねじのピッチの120%以上であることを特徴とする。
【0009】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記シリンダ部に設けられ前記蓋部の軸方向内側への移動を所定位置で規制するストッパを有することを特徴とする。
【0011】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記突き出し部が小径部からなることを特徴とする。
【0012】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記大径部と前記突き出し部とが別体または一体になっていることを特徴とする。
【0014】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記第2の凹部が前記ねじ込み部を貫通していることを特徴とする。
【0015】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記第2の凹部の内周面に雌ねじが形成され、前記第2の突き出し部の外周面に前記第2の凹部の雌ねじに螺合する雄ねじを有することを特徴とする。
【0016】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記第2の突き出し部は、前記大径部と一体になっていることを特徴とする。
【0019】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記シリンダ部が直筒の円筒シリンダからなることを特徴とする。
【0020】
他の形態の蓄圧容器の発明は、前記他の形態の発明において、前記シリンダ部の外周面に繊維強化プラスチックがフープ巻されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シリンダ部端部の蓋の開閉が容易であり、工場出荷時ならびに運用中の定期的な検査時に内部の微小き裂検査が可能であり、その開閉構造のねじ構造は耐疲労特性、疲労き裂進展特性を確保できる。例えば水素ステーション用蓄圧器においては、定期的に内部にき裂がないことを確認しながら繰り返しの使用、余寿命に対する安全性を保証することができ、水素ステーションの運用コスト、蓄圧器更新費用を低減することが可能となり、より一層水素社会の普及に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の水素ガス蓄圧器10は、鋼製の円筒シリンダ部1と円筒シリンダ部1の両端部を開閉可能に密閉する蓋部2と蓋部2を固定するねじ込み部3を有している。水素ガス蓄圧器10は、本発明の蓄圧容器に相当する。また、この実施形態では、円筒シリンダ部1の両端部は開閉端部である。従来の水素ガス蓄圧器では、両端の口を絞ったマンネスマン式、エルハルト式の継ぎ目なし容器(いわゆるボンベ)が使用されることがあるが、開口部が小さいため、直接的に内面のき裂の検査をすることが出来ず、き裂の有無が十分に確認できず、工場出荷時ならびに運用中の安全性が確保できない。このため、円筒シリンダ部を有することで、内面のき裂検査が容易になる。
また、円筒シリンダ部1、蓋部2およびねじ込み部3の材料は特に限定されるものではないが、円筒シリンダ部1の材質として、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、またはその他の低合金鋼(ステンレス鋼を除く。)などを用いることができる。これら引張強さを有することで、高い容器強度をもたらす。蓋部2、ねじ込み部3の材質は、上記円筒シリンダ部1と同じ材質としてもよく、また、その他の材質により構成されるものであってもよい。さらに、蓋部2、ねじ込み部3の各部材において異なる材質のものを用いることができる。
【0024】
円筒シリンダ部1は、鋼によって直筒状に形成されている。その製造方法は特に限定されるものではないが、欠陥の少ない加工方法が望ましく、例えば、鍛造や押し出しなどによって一体に成形される。
円筒シリンダ部1は、内面1Aを鏡面加工して傷のない状態とするのが望ましい。円筒シリンダ部1の穴は、内面1Aを有する部分で直円筒形状に形成されており、鏡面加工も容易に行うことができる。内面1Aは、蓄圧された水素の圧力が負荷される部分である。
鏡面加工により、肉厚方向で深さ0.5mm、表面長さで1.6mm以上の傷を有さない表面形状に確実にして、水素脆化による亀裂進展を防止する。なお、このサイズを超える傷が円筒シリンダ部1の内面に残っていると、水素脆化による亀裂が進展しやすくなり、疲労亀裂寿命を低下させる。
【0025】
円筒シリンダ部1は、その軸方向両端内面が内面1Aよりも大径とした穴部1Bが形成されており、軸方向内側の一部を除いてその内面に、ねじ込み部3が螺合される雌ねじ部1Cが形成されている。ねじ込み部3は、外周面に前記雌ねじ部1Cに螺合される雄ねじ部30を有している。なお、円筒シリンダ部1におけるねじ込み構造は、両端側で同じ構造になっているが、両端側で異なる構造とすることも可能である。
【0026】
蓋部2は、ねじ込み部3の軸方向内側に位置しており、軸方向内側面に当たる大径部20と、大径部20の軸方向内側に連続して内面1Aと小隙間を形成する内側軸部21とを有している。内面1Aと内側軸部21との間には適宜にシール部を設けることができる。
大径部20が位置する軸方向の所定位置では、軸方向内側に内面1Aの外側端が位置して大径部20の内面と当接して大径部20の内側への移動を規制する。したがって内面1Aの外側端は、本発明のストッパ1Dに相当する。
【0027】
また、大径部20の軸方向外側には、大径部20よりも小径とした同軸の突き出し部22が円柱形状で形成されている。突き出し部22は、本発明の延材部に相当する。なお、この実施形態では、突き出し部22は円柱形状のものとして説明しているが、突き出し部、すなわち延材部の形状は特に限定されるものではなく、また、複数で構成されていてもよい。
また、大径部20の軸方向外側には、突き出し部22よりも小径とした同軸で円柱形状の軸部23が軸方向外側に延伸している。なお、突き出し部22は、大径部20と一体となったものでもよく、また、大径部20と別体になったものであってもよい。ここでは一体となったものとしている。大径部20から軸部23に亘って軸方向に貫通する水素通気穴25Dが形成されている。軸部23は、本発明における第2の突き出し部に相当する。なお、この実施形態では、軸部23は円柱形状のものとして説明しているが、軸部、すなわち第2の突き出し部の形状は特に限定されるものではなく、また、複数で構成されていてもよい。
【0028】
一方、ねじ込み部3は、前記軸部23が貫通する貫通穴31が形成され、さらに軸方向内側では、前記突き出し部22が凹入される円柱形状の凹部32が形成されている。貫通穴31は、本発明の第2の凹部に相当する。
凹部32は、突き出し部22の軸方向先端面が凹部32の底面に当接した状態で、ねじ込み部3の軸方向内側先端面と大径部20の軸方向外側先端面とは接触することなく互いに離隔して隙間が形成される。なお、突き出し部22の接触幅は、
図2BのT1で示される。
また、ねじ込み部3が所定の位置までねじ込まれると、大径部20の軸方向内側面とストッパ1Dに当たって大径部20の移動が規制される。
また、ねじ込み部3の内面に雌ねじを形成し、軸部23の外周面に雄ねじを形成し、互いに螺合をするようにしてもよい。
【0029】
なお、突き出し部22の長さは、雌ねじ部1Cとねじ込み部の雄ねじ部30との間のかみ合いにおいて、かみ合いの内側2山目以上であり、かつ前記かみ合いの長さL(
図2B示)の54%以下であることが望ましい。突き出し部の長さが短すぎると、突き出し部による効果が小さくなる。一方、突き出し部22の長さは長いほど効果が得られるが、あまりに長いと応力低減の効果が飽和する。
【0030】
また、突き出し部22の外周側の位置が、ねじ込み部の雄ねじの高さを含めた径方向厚さ(
図2B示T2)に対し、内周側から45%〜80%の位置にあり、かつ突き出し部22の外周側の位置がねじ込み部の雄ねじに近いと(T2の80%超)、ねじ底近傍における応力分布に影響をおよぼしてしまう。突き出し部22の外周側の位置が雄ねじから遠いと(T2の45%未満)第一ねじ山の荷重分担軽減効果が小さくなってしまう。
また、リガメント部(ねじ込み部の雄ねじを含め、突き出し部外側に位置する外周厚さ;T3の厚さの部分)の厚さが薄くなりすぎると工作物を誤ってぶつけるなどすると変形するなどの問題が生じるため、リガメント部の厚さ(
図2B示T3)はねじ山の高さ(山の頂と谷底の距離)の180%以上、あるいは、ねじのピッチの120%以上であるのが望ましい。 一方、突き出し部の位置が内周側にあって径が小さいと、突き出し部による効果が得られにくくなる。
【0031】
本実施形態では、円筒シリンダ部1に対し、内面側から高圧を負荷して自緊処理を行うことができる。自緊処理では、円筒シリンダ部1が外周方向に膨張して内周側で塑性変形をすることで残留応力が残り、強度を増加させ、一方で外周側は弾性変形領域となる。
【0032】
上記で構成される水素ガス蓄圧器は、ライナーを円筒状とすることで、精密な機械加工が可能となり、0.5mm深さ以上の加工傷が生じないように十分な品質管理が可能である。
また、内部検査も、ナット蓋を取り外すことで容易かつ正確に行うことができ、品質精度が向上する。検査後も、ナット蓋を円筒シリンダに容易に取り付けて使用状態にすることができ、作業負担も小さい。
【0033】
本実施形態の開閉蓋構造では、内圧の応力が蓋部2の大径部20から直接ねじ込み部3に伝わることはなく、突き出し部22を通してねじ込み部3の軸方向内側橋よりも外側において凹部32の底面を通してねじ込み部3に応力が伝わる。この結果、第一ねじ山に最大荷重がかかることなくできるだけねじ山全体に、均等に荷重が伝わるようにすることができる。
【0034】
本実施形態の水素ガス蓄圧器は、水素ステーションとして水素を使用する自動車などの用途に使用することができる。
例えば、燃料電池水素自動車に70MPa程度の水素を供給する水素ステーション(圧縮水素スタンド)用の蓄圧器として使用することができる。例えば、1日に65台、年間20,000回、15年間で400,0000回もの繰り返し内圧を受けることになる。このような耐久性を確保するために、本実施形態の水素ガス蓄圧器は、高強度、軽量を実現し、都市部などに設置する水素ステーションにおいて、絶対的な安全性、高信頼性を提供することができる。しかも耐疲労特性向上のために、部品点数を増やさず、改善によるコスト、質量は改善前と同等に抑えられる。
【0035】
また、ねじ込み部3を外して蓋部2の開閉を容易に行うことができ、内部点検なども容易に行うことができる。
したがって、内面の微小き裂検査が可能であり、蓋の開閉は定期的な内面き裂検査の際に、繰り返しの開閉が簡便に行える。
【0036】
(実施形態2)
円筒シリンダ部1には、
図3に示すように、外周側に繊維強化プラスチック4をフープ巻きすることができる。他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
この際の繊維の種別やプラスチックの種別は本発明としては特に限定されるものではないが、繊維は炭素繊維、プラスチックにはエポキシ樹脂などを用いることができる。繊維には、連続繊維を用いるのが望ましい。また、繊維の太さも特に限定されるものではなく、強度の兼ね合いなどから決定することができる。本発明としては、円筒シリンダ部1の外周側に繊維強化プラスチックを巻かないものであってもよい。
【0037】
繊維強化プラスチックには、熱硬化性樹脂に繊維を含浸させながら円筒状の鋼材ライナーに巻きつけていき、樹脂を硬化させるために所定の温度に加熱させる。加熱に際してはプラスチックとともに円筒シリンダ部1も加熱され、円筒シリンダ部1の膨張、収縮が生じる。
また、円筒シリンダ部1に対し、内面側から高圧を負荷して自緊処理を行うことができる。自緊処理では、円筒シリンダ部1が外周方向に膨張して内周側で塑性変形をすることで残留応力が残り、強度を増加させ、一方で外周側は弾性変形領域となる。この際に円筒シリンダ部1の外周径が膨張して繊維強化プラスチック4との間の隙間をなくし、円筒シリンダ部1が繊維強化プラスチック4に密着した状態にする。これにより、所望の強度を確実に確保するとともに、水素を蓄圧する際の円筒シリンダ部1の変形を抑え、耐久性を向上させる。
【0038】
(実施形態3)
なお、上記実施形態1、2では、リガメント部と突き出し部22とがほぼ沿った位置にあるものとしたが、突き出し部22の外周面と、リガメント部の内周面とが明確な隙間を有するものとしてもよい。
【0039】
図4Aは、ねじ込み部3Aのリガメント部に、厚さを薄くした内側リガメント部33Aと、厚さを厚くした外側リガメント部34Aとを有する構成を示している。この実施形態でも、突き出し部22は、ねじ込み部3Aの凹部32Aに接触することができる。なお、この実施形態では、リガメント部を2段に構成したが、さらに数を増やしてもよい。また、リガメント部の一部が突き出し部に接触または近接する構造としたが、リガメント部全体が突き出し部と明確な隙間を有するようにしてもよい。
【0040】
図4Bは、ねじ込み部3Bのリガメント部に、外側に向けて次第に厚さが厚くなる傾斜リガメント部34Bを有する構成を示している。この実施形態でも、突き出し部22は、ねじ込み部3Bの凹部32Bに接触することができる。なお、この実施形態では、リガメント部の内周面が外側に向けて緩やかに厚さを増加させているが、外側に向けて直線的に厚さを増加させるものであってもよい。また、リガメント部全体が突き出し部と明確な隙間を有するようにしたが、リガメント部の一部が突き出し部に接触または近接する構造としてもよい。
【実施例1】
【0041】
以下に、本発明の実施例を比較例と比較して説明する。
図5のうちA図は本実施形態1による開閉端部の構造を示すものであり、B図は、突き出し部を有していない比較例を示すものである。比較例では、大径部の軸方向外側面とねじ込み部の軸方向内側先端面とが直接接触している。
図5A、Bの蓄圧容器で、内圧82MPaで圧力を付加した場合の圧力分布を示している。
実施例(A図)では、軸方向内側の雌ねじに加わる負荷を低減することができ、比較例(B図)に対し、ねじ底に発生する最大応力を2割程度軽減することができ、疲労亀裂が発生しにくくなる。
【実施例2】
【0042】
次に、実施形態の密閉構造において、突き出し部の長さを変えて円筒シリンダの開閉端部と突き出し部にかかる応力を82MPaまたは35MPaとした。供試材1は、実施例1で用いた比較例である。なお、開閉端部の雌ねじとねじ込み部の雄ねじのかみ合い長さは186mmである。
その結果を表1に示す。表に示されるように、かみ合い長さに対し、突き出し部を有する実施例は、いずれも突き出し部を設けない場合よりも応力が低減された。そして、ねじ山の加重分担は均一になり、はめ合いの第一ねじ山の最大荷重が顕著に軽減された。
【0043】
【表1】
【0044】
以上、本発明について、上記実施形態および実施例に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは本実施形態に対する適宜の変更が可能である。