【実施例】
【0034】
蒸留モノグリセライド−グルテン改質物のホグレ性評価
グルテンと蒸留モノグリセライドから得られる蒸留モノグリセライド−グルテン改質物のホグレ性を検証するために、種々の乳化剤を用いて組成物を調製し、該組成物を配合した麺類のホグレ性を評価した。
【0035】
実施例1:蒸留モノグリセライド−グルテン改質物の調製
小麦粉100質量部に、水70質量部を加えて混練して生地(ドウ)を得た。このドウを水洗して澱粉を除去し、小麦グルテン(生グルテン)を得た。この生グルテン100質量部に対して、加熱溶解した蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)を1質量部、5質量部、10質量部、15質量部、または20質量部をそれぞれ添加し、フードカッターを用いて均一になるまで混練した。混練物を凍結乾燥した後、水冷型石臼粉砕機(ミクロパウダー:有限会社ウエスト製)を用いて粉砕して蒸留モノグリセライド−グルテン改質物の粉末(ホグレ組成物)を得た(それぞれ、実施例1(1)、実施例1(5)、実施例1(10)、実施例1(15)、実施例1(20)とする)。
【0036】
比較例1:反応モノグリセライド含有グルテン組成物の調製
蒸留モノグリセライドの代わりに、反応モノグリセライド(ポエムOL−200V:理研ビタミン株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして反応モノグリセライド−グルテン組成物を得た。
【0037】
比較例2:有機酸モノグリセライド−グルテン組成物の調製
蒸留モノグリセライドの代わりに、有機酸モノグリセライド(ポエムK−37V:理研ビタミン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機酸モノグリセライド−グルテン組成物を得た。
【0038】
比較例3:蒸留モノグリセライド−小麦粉・加工デンプン混合物
小麦粉(白椿:日清製粉株式会社)80質量部、加工デンプン(あさがお:松谷化学工業株式会社)20質量部を混合したものに蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)0.5質量部を加えて、フードカッターを用いて均一になるまで混合し、蒸留モノグリセライド−小麦粉・加工デンプン混合物を得た。
【0039】
比較例4:蒸留モノグリセライド−そば粉、小麦粉、加工デンプン混合物
そば粉(千寿月:日穀製粉株式会社)40質量部、小麦粉(特金龍:柄木田製粉株式会社)40質量部、加工デンプン(あさがお:松谷化学工業株式会社)20質量部を混合したものに蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)0.5質量部を加えて、フードカッターを用いて均一になるまで混合し、蒸留モノグリセライド−小麦粉・加工デンプン混合物を得た。
【0040】
比較例5:蒸留モノグリセライド−小麦粉、加工デンプン混合物
小麦粉(特ことぶき:日本製粉株式会社)80質量部、加工デンプン(あさがお:松谷化学工業株式会社)20質量部を混合したものに蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)0.5質量部を加えて、フードカッターを用いて均一になるまで混合し、蒸留モノグリセライド−小麦粉、加工デンプン混合物を得た。
【0041】
<試験例>
試験1(茹でうどんのホグレ性)
各組成物(実施例1および比較例1〜3)を使用して茹でうどんを作製し、そのホグレ性および風味を評価した。
【0042】
茹でうどんの作製
万能ミキサー(株式会社品川工業所製)に表1に示した配合に基づいて、小麦粉、加工デンプン、各組成物を加え混合した後、さらに、食塩を水に溶解して調製した水溶液を加え、8分間混合し、生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ2.5mmになるまで圧延し、切刃9番角を用いて切断して生うどんを得た。この生うどんを熱湯で8分間茹であげて水道水で30秒間洗った後、約5℃の水に30秒間浸漬して、茹でうどんを得た。
【0043】
また、対照として、各組成物を添加しない茹でうどんを同様に作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
ホグレ性、風味の評価
作製した茹でうどんをポリスチレン製の容器に充填・密封し、10℃で24時間保存した。保存後の茹でうどんを表2の評価基準に従い10名のパネラーにより、ホグレ性および風味を評価した。また、結果を表3に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果からわかるように、実施例1のホグレ組成物を使用して作製した茹でうどんは、比較例および対照のものを使用して作製したものに比べてホグレ性に優れていた。また、実施例の方法を用いて製造した、ホグレ組成物は比較例3の方法を用いて調製した組成物と比較して風味への影響が改善された。
【0049】
試験2(茹でそばのホグレ性)
各組成物(実施例1ならびに比較例1、2、および4)を使用して茹でそばを作製し、そのホグレ性および風味を評価した。
【0050】
茹でそばの作製
万能ミキサー(株式会社品川工業所製)に表4に示した配合に基づいて、そば粉、小麦粉、加工デンプン、各組成物を加え混合した後、さらに、水を加え、8分間混合し、生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ1.2mmになるまで圧延し、切刃14番角を用いて切断して生そばを得た。この生そばを熱湯で2分間茹であげて水道水で30秒間洗った後、約5℃の水に30秒間浸漬して、茹でそばを得た。
【0051】
また、対照として、各組成物を添加しない茹でそばを同様に作製した(表4の2−9)。
【0052】
【表4】
【0053】
ホグレ性、風味の評価
作製した茹でそばをポリスチレン製の容器に充填・密封し、10℃で24時間保存した。保存後の茹でそばを表2の評価基準に従い10名のパネラーにより、ホグレ性および風味を評価した。その結果を表5に示した。
【0054】
【表5】
【0055】
表5の結果からわかるように、実施例1のホグレ組成物を使用して作製した茹でそばは、比較例および対照のものを使用して作製したものに比べてホグレ性に優れていた。また、実施例の方法を用いて製造した、ホグレ組成物は比較例4の方法を用いて調製した組成物と比較して風味への影響が改善された。
【0056】
試験3(茹で中華のホグレ性)
各組成物(実施例1ならびに比較例1、2および5)を使用して茹で中華を作製し、そのホグレ性および風味を評価した。
【0057】
茹で中華の作製
万能ミキサー(株式会社品川工業所製)に表6に示した配合に基づいて、小麦粉、加工デンプン、各組成物を加え混合した後、さらに、かん粉、食塩を水に溶解して調製した水溶液を加え、8分間混合し、生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ1.5mmになるまで圧延し、切刃18番角を用いて切断して生中華を得た。この生中華を熱湯で2分間茹であげて水道水で30秒間洗った後、約5℃の水に30秒間浸漬して、茹で中華を得た。
【0058】
また、対照として、各組成物を添加しない茹で中華を同様に作製した(表6の3−9)。
【0059】
【表6】
【0060】
ホグレ性、風味の評価
作製した茹で中華をポリスチレン製の容器に充填・密封し、10℃で24時間保存した。保存後の茹で中華を表8の評価基準に従い10名のパネラーにより、ホグレ性および風味を評価した。ホグレ性については、「容易にほぐれる」を10、「どちらともいえない」を5、「ほぐれない」を1とする10段階評価で評価した。風味については、「風味が良い」を10、「どちらともいえない」を5、「風味が悪い」を1とする10段階評価で評価した(表2)。結果を表7に示した。
【0061】
【表7】
【0062】
表7の結果からわかるように、実施例1のホグレ組成物を使用して作製した茹で中華は、比較例および対照のものを使用して作製したものに比べてホグレ性に優れていた。また、実施例の方法を用いて製造した、ホグレ組成物は比較例5の方法を用いて調製した組成物と比較して風味への影響が改善された。
【0063】
試験4(ノンフライ即席麺のホグレ性)
各組成物(実施例1ならびに比較例1、2、および5)を使用してノンフライ即席麺を作製し、そのホグレ性および風味を評価した。
【0064】
ノンフライ即席麺の作製
万能ミキサー(株式会社品川工業所製)に表8に示した配合に基づいて、小麦粉、加工デンプン、各組成物を加え混合した後、さらに、かん粉、食塩を水に溶解して調製した水溶液を加え、8分間混合し、生地を得た。この生地から製麺機(株式会社福田麺機製)を用いて製麺し、室温で1時間熟成させた。熟成後、厚さ1.1mmになるまで圧延し、切刃16番角を用いて切断して生中華を得た。この生中華を蒸し器で5分間蒸しあげ、型枠に詰めて90℃の乾燥機で約1時間乾燥した。
【0065】
また、対照として、各組成物を添加しないノンフライ麺を同様に作製した(表8の4−9)。
【0066】
【表8】
【0067】
ホグレ性、風味の評価
作製したノンフライ即席麺を発泡スチロール容器に入れ、沸騰水を注ぎ4分間湯戻しした。湯戻し後のノンフライ即席麺を表2の評価基準に従い10名のパネラーにより、ホグレ性および風味を評価した。ホグレ性については、「容易にほぐれる」を10、「どちらともいえない」を5、「ほぐれない」を1とする10段階評価で評価した。風味については、「風味が良い」を10、「どちらともいえない」を5、「風味が悪い」を1とする10段階評価で評価した(表2)。結果を表9に示した。
【0068】
【表9】
【0069】
表9の結果からわかるように、実施例1のホグレ組成物を使用して作製したノンフライ即席麺は、比較例および対照のものを使用して作製したものに比べてホグレ性に優れていた。また、実施例の方法を用いて製造した、ホグレ組成物は比較例5の方法を用いて調製したホグレ組成物と比較して風味への影響が改善された。
【0070】
蒸留モノグリセライド−グルテン改質物のゲル物性評価
蒸留モノグリセライドによるグルテンの改質効果を検証するために、蒸留モノグリセライドを用いて改質グルテン粉末を調製し、該粉末から作製した加熱ゲルの物性を評価した。
【0071】
蒸留モノグリセライド−グルテン改質物の調製1
実施例1と同様にして蒸留モノグリセライド−グルテン改質物を調製した。小麦粉100質量部に水70質量部を加えて混練して生地(ドウ)を得た。このドウを水洗して澱粉を除去し、小麦グルテン(生グルテン)を得た。この生グルテン100質量部に加熱溶解した蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)1質量部、5質量部、10質量部、15質量部または20質量部をそれぞれ添加し、フードカッターを用いて均一になるまで混練した。混練物を凍結乾燥した後、水冷型石臼粉砕機を用いて粉砕して蒸留モノグリセライド−グルテン改質物の粉末を得た(それぞれ、実施例1(1)、実施例1(5)、実施例1(10)、実施例1(15)、実施例1(20)とする)。
【0072】
測定サンプルの作製1
蒸留モノグリセライド−グルテン改質物の粉末100gに水150gを加え、フードカッターを用いて均一になるまで混練してドウを得た。このドウを30gずつケーシングチューブに入れ、両端をクリップで止め、蒸し器で85℃にて60分間加熱し、加熱ゲルを得た。この加熱ゲルを水道水にて冷却し、冷蔵庫(5℃)にて一晩保存した。冷却されたゲルを、ゲル高さが15mmになるようにカットし、インキュベーター(25℃)にて保存したものを測定サンプルとした。
【0073】
対照サンプルの作製1
対照として、蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)を添加していない生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕して得た非改質グルテン粉末を用い、測定サンプルと同様に調製して対照サンプル1(無添加区)とした。
【0074】
対照サンプルの作製2
対照として、対照サンプルの作製1で得た対照サンプル(無添加)粉末76.7gに水150gを加え、フードカッターを用いて均一になるまで混練してドウを得た。さらにこのドウに加熱溶解した蒸留モノグリセライド(サンソフト8070V:太陽化学株式会社)23.3gを添加し、均一になるまで混練し、測定サンプルと同様に加熱ゲル化処理を行ない、対照サンプル2(10%)とした(最終配合を測定サンプルの蒸留モノグリセライド(10%)と同じにした。
【0075】
物性評価
測定サンプル(加熱ゲル)の物性評価を、レオメーター(EZ−test:島津製作所製)を用いて行った。測定条件は表10に示す通りである。得られたデータを、無添加区の測定値を100%とした時の相対値としてグラフ化した(
図1)。
【0076】
【表10】
【0077】
図1の結果からわかるように、蒸留モノグリセライド−グルテン改質物粉末から作製した加熱ゲルの弾性率は、非改質グルテン粉末から作製した加熱ゲルと比較して非常に低かった。このことは、グルテンに蒸留モノグリセライドを混練することにより、物性が変化した事を示す。また、生グルテンに蒸留モノグリセライドを添加後、乾燥、粉砕を行ったものから得た加熱ゲルと、蒸留モノグリセライドを添加後に乾燥、粉砕工程を行わなかったものから得た加熱ゲルを比較すると乾燥、粉砕工程を行ったものから得た加熱ゲルの方が弾性率が低かった。このことは、蒸留モノグリセライドを添加後に乾燥、粉砕工程を行う事で、物性が変化した事を示す。