特許第6781911号(P6781911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781911
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】単一指向性ダイナミックマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/08 20060101AFI20201102BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20201102BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H04R9/08
   H04R9/02 102A
   H04R1/32 320
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-39660(P2016-39660)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2017-158038(P2017-158038A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−186797(JP,U)
【文献】 特開2009−071752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/08
H04R 1/32
H04R 9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路中に形成されている磁気ギャップと、
センタードームとその周囲のサブドームを有し音波を受けて振動する振動板と、
前記振動板に固着されて前記磁気ギャップに位置し前記振動板と一体となって振動するボイスコイルと、
前記磁気回路を保持するユニットケースと、
前記ユニットケースの外周に沿い前記ユニットケースの中心軸線方向に形成されていて前記振動板の背面側の空間と外部空間とをつなぐ連通路と、
前記振動板の前記サブドームの背面側の空間に前記連通路の一端側開口から離間して配置されることにより前記振動板の背面側空間と前記連通路をつなぐ空気層を狭くするリング状の部材である薄空気層形成部材と、
を有する単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項2】
前記振動板の前記センタードームの背面側の空間に、前記センタードームの背面側空間の容積を制限する容積制限部材が配置されている請求項1記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項3】
前記容積制限部材は、前記センタードームの背面との間に一定間隔の間隙を保っている請求項2記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項4】
前記磁気回路は、ヨーク、磁石、ポールピースを含む磁気回路構成部材からなり、前記磁気回路構成部材は前記ユニットケースに取り付けられている請求項1、2または3記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項5】
前記薄空気層形成部材は前記ユニットケースに取り付けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【請求項6】
前記薄空気層形成部材は、前記サブドームとの対向面が前記サブドームの曲面に対応して円弧状になっている請求項1乃至5のいずれかに記載の単一指向性ダイナミックマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一指向性ダイナミックマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
単一指向性ダイナミックマイクロホンは、無指向性成分と双指向性成分を組み合わせることによって単一指向性を得ている。無指向性成分は抵抗制御に依存し、双指向性成分は質量制御に依存する。単一指向性を実現するためには、抵抗成分の周波数応答を平坦にする必要があり、振動板の背面の近くに音響抵抗を配置している。
【0003】
振動板の背面には、センタードームとサブドームの境界に沿ってボイスコイルが固着されており、振動板の背面側の空気室がボイスコイルによってセンタードーム側とサブドーム側に分割されている。ボイスコイルは磁極間に形成されている磁気ギャップ内に位置しており、磁極間の音響質量と音響抵抗がボイスコイルで分割されている。上記音響質量と音響抵抗は、ボイスコイルの内周側の音響質量と音響抵抗、ボイスコイルの外周側の音響質量と音響抵抗に分割され、これらの音響質量と音響抵抗が上記空気室を接続しているのと等価になっている。
【0004】
空気室の音響質量と音響抵抗は共振し、共振によって周波数応答に凹凸を作り、音響特性を悪くする。このような共振による悪影響をなくすために、特許文献1に記載されているように、ボイスコイルの背面側の空気室の容積を可能な限り小さくするように工夫したものがある。特許文献1記載の発明のように振動板の背面側の空気室の容積を小さくすると、上記空気室のスチフネスが高くなることから、共振周波数を高くすることができる。共振周波数を主要収音帯域よりも高くすることにより、主要収音帯域の周波数応答の凹凸を防ぐことができる。
【0005】
特許文献1記載の発明では、ボイスコイル後方の後部空気室と、この後部空気室に連通する第2空気室を備え、第2空気室の容積を制限しかつ弾性力を有する薄板状の音響抵抗体を配置している。上記音響抵抗体は、ボイスコイルがその最大変位内で接触することができる位置に、張力を付与して配置することにより、振動板が大きく変位したときに生じる衝撃音を軽減するようになっている。
【0006】
特許文献2には、ボイスコイルの背面側の空気室の存在による共振を回避することができるダイナミックマイクロホンが記載されている。特許文献2に記載されているダイナミックマイクロホンは、音響抵抗が配置されているボイスコイル背面側の第1空気室とボイスコイル背面側の第2空気室とを音波の連通路でつないだものである。上記連通路が磁気ギャップ部の音響質量を短絡することになって上記音響質量は実質的に無効になり、上記第2空気室の音響容量と音響質量との共振が防止され、良好な周波数応答を得ることができる。
【0007】
図8は、従来の単一指向性ダイナミックマイクロホンの一例を示す。図8において、符号1はユニットケースを、2はヨークを、3は磁石を、4は外ヨークを、5は振動板を、6はボイスコイルを、8はポールピースをそれぞれ示している。ヨーク2と、磁石3と、外ヨーク4と、ポールピース8で磁気回路を構成し、外ヨーク4の内周面とポールピース8の外周面との間に磁気ギャップが形成されている。
【0008】
振動板5は、センタードーム51とその周囲のサブドーム52を有してなり、振動板5の背面側にはセンタードーム51とサブドーム52の境界に沿って円筒形状のボイスコイル6の一端が固着されている。ボイスコイル6は前記磁気ギャップを貫いて配置されている。振動板5が音波を受けて振動するとボイスコイル6も振動板5と一体となって振動し、磁気ギャップ内の磁束をボイスコイル6が横切ることにより、ボイスコイル6は音波に対応した音声信号を出力する。
【0009】
図8に示す従来例では、単一指向性を得るために、ユニットケース1の外周側上部に、振動板5(サブドーム52)の背面側空間と外部空間とをつなぐ連通路30が形成されている。連通路30には、振動板5に対して実効的に音圧を与える空気の位置すなわち振動板と同時に動く空気の中心位置である後部音響端子がある。
【0010】
連通路30の一部には、スポンジや布などからなる音響抵抗20が配置されている。前記後部音響端子から取り込まれる音波は、連通路30の音響質量と音響抵抗20を経て振動板5(サブドーム52)の背面側に導かれる。振動板5の低域共振を制動して指向周波数応答を整えるために、上記の構成にして、音響質量と直列に音響抵抗20を接続したのと等価にしている。
【0011】
音響抵抗20は振動板5に近いほど効果的である。音響抵抗20が振動板5に近ければ近いほど、振動板5の背面側の空気室の容積が小さくなり、後部音響端子から取り込まれる音波が振動板5に近い位置で振動板5に加えられる。結果として共振周波数が高くなり、既に述べたとおり、共振周波数を主要収音帯域よりも高くして、主要収音帯域の周波数応答の凹凸を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013−55466号公報
【特許文献2】特開2013−55397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術をさらに改良し、振動板の背面側の空間の容積を小さくすることが容易で、主要収音帯域の周波数応答の凹凸がなく、安定した指向周波数応答を得ることができる単一指向性ダイナミックマイクロホンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る単一指向性ダイナミックマイクロホンは、
磁気回路中に形成されている磁気ギャップと、
センタードームとその周囲のサブドームを有し音波を受けて振動する振動板と、
前記振動板に固着されて前記磁気ギャップに位置し前記振動板と一体となって振動するボイスコイルと、
前記磁気回路を保持するユニットケースと、
前記ユニットケースの外周に沿い前記ユニットケースの中心軸線方向に形成されていて前記振動板の背面側の空間と外部空間とをつなぐ連通路と、
前記振動板の前記サブドームの背面側の空間に前記連通路の一端側開口から離間して配置されることにより前記振動板の背面側空間と前記連通路をつなぐ空気層を狭くするリング状の部材である薄空気層形成部材と、
を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
薄空気層形成部材が振動板の背面側の空間にあることにより、振動板の背面側の空間の容積が制限され、共振周波数が主要収音帯域よりも高くなり、主要収音帯域の周波数応答の凹凸を防ぐことができる。薄空気層形成部材は、振動板の背面側の空間から連通路の一端側開口に至る空間を狭く制限し、音響抵抗としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る単一指向性ダイナミックマイクロホンの実施例を示す縦断面図である。
図2】前記実施例中の薄空気層形成部材を示す縦断面図である。
図3】前記実施例の要部を示す拡大縦断面図である。
図4】本発明の別の実施例の要部を示す拡大縦断面図である。
図5】本発明のさらに別の実施例の要部を示す拡大縦断面図である。
図6】本発明のさらに別の実施例の要部を示す拡大縦断面図である。
図7】本発明の各実施例に用いられているユニットホルダの平面図である。
図8】従来の単一指向性ダイナミックマイクロホンの例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る単一指向性ダイナミックマイクロホンの実施例について図面を参照しながら説明する。図8に示す従来例と同じ構成部分には共通の符号を付している。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
図1において、本実施例に係る単一指向性ダイナミックマイクロホンは、ユニットケース1をベースにして各部材が組み立てられている。ユニットケース1はほぼ円筒形状をしていて、ユニットケース1の下半部内方には内筒7が嵌められて固着されている。ユニットケース1の内周には、内筒7よりも上方において拡径されることにより段部12が形成され、拡径部分に、ヨーク2、磁石3、外ヨーク4、ポールピース8からなる磁気回路構成部材が嵌められ、段部12にヨーク2が接している。
【0019】
ヨーク2は周壁を有する皿状の部材で、内方の中心部に周壁から間隔をおいて平板状の磁石3が固着されている。磁石3の上には平板状のポールピース8が重ねられて固着されている。ヨーク2の周壁の上面にはリング状の外ヨーク4が重ねられて固着されている。ヨーク2の外周面と外ヨーク4の外周面は共通の円筒面上にある。外ヨーク4とポールピース8は、それぞれの上面と下面が共通の平面上にある。
【0020】
磁石3は厚さ方向すなわち図1において上下方向に着磁されて、N極とS極が上下方向に分かれている。外ヨーク4の内周面とポールピース8の外周面との間には適宜の間隔で円筒状の空間が形成されている。この円筒状の空間は磁気ギャップになっていて、磁石3から出た磁束が前記磁気ギャップを均一な密度で通っている。
【0021】
ユニットケース1の上端外周縁には突堤15が形成され、突堤15よりも内周側には突堤15の上面よりも低い位置に段部14が形成されている。段部14には振動板5の外周縁部が固着されている。振動板5は、球面の一部を切り取った形のセンタードーム51と、センタードーム51の外周に続く縦断面形状が円弧状のサブドーム52と、サブドーム52の外周に続く平坦な外周縁部を有する。振動板5の外周縁部がユニットケース1の段部14に接着されている。振動板5は、音波を受けると、センタードーム51とサブドーム52が音波に従い前後方向に振動する。
【0022】
振動板5の背面側(図1において下面側)には、センタードーム51とサブドーム52の境界に沿って、細線が円筒形状に巻き回されて形成されているボイスコイル5の一端が固着されている。ボイスコイル5は前記磁気ギャップを貫いている。ボイスコイル5は外ヨーク4からもポールピース8からも離間している。周知の通り、振動板5が音波を受けると、振動板5と一体的にボイスコイル5が振動し、磁気ギャップを通る磁束とボイスコイル5との電磁変換作用により、ボイスコイル5が音波に対応する音声信号を生成する。
【0023】
ユニットケース1の突堤15にはイコライザー22の下端外周部が固着されている。イコライザー22は、外部からの音波を振動板5に導くための孔を有する。この孔は前部音響端子を構成している。イコライザー22は、振動板5の保護部材を兼ねている。イコライザー22の下面側中心部は振動板5のセンタードーム51の形に合わせてドーム状に形成され、センタードーム51との間に一定間隔の隙間が保たれている。
【0024】
前記磁気ギャップは、振動板5の背面側の空間と、磁石3の外周面とヨーク2の周壁の内周面との間に生じている空間40を連通させている。空間40は、ヨーク2の底部に開けられている適宜数の孔を通じて前記内筒7の内部空間に連通している。
【0025】
ユニットケース1には、図7にも示すように、複数の連通路30が周方向に等間隔でかつユニットケース1の中心軸を中心とした円弧に沿う形に形成されている。連通路30は、振動板5のサブドーム52に対応する位置にあってユニットケース1の中心軸線方向に形成されている。ユニットケース1は、連通路30の下部が外部空間に開放されている。したがって、連通路30は、振動板5の背面側の空間と外部空間とをつないでいる。連通路30には、振動板5に対して実効的に音圧を与える空気の位置すなわち振動板と同時に動く空気の中心位置である後部音響端子が含まれている。後部音響端子を有することによって、本実施例に係るマイクロホンの指向性は単一指向性になっている。
【0026】
ユニットケース1には、連通路30の一端側(図1において上端側)の開口に重なって薄空気層形成部材10が固着されている。薄空気層形成部材10は、図2に示すように、外周縁部が下方に折り曲げられて極低い周壁101が形成されるとともに、中心孔102が形成されたリング状の部材である。
【0027】
図3にも示すように、振動板5の外周縁部が固着されているユニットケース1の段部14よりも内周側でありかつ段部14よりも低い位置に第2の段部がある。この第2の段部はポールピース8の上面と同一面にある。前記第2の段部に薄空気層形成部材10の周壁101が係合されて固着されている。薄空気層形成部材10の中心孔102の径はボイスコイル6の外径よりも大きく、薄空気層形成部材10の半径方向の幅は、振動板5のサブドーム52の半径方向の幅よりも小さい。
【0028】
薄空気層形成部材10は、振動板5のサブドーム52の背面側にサブドーム52と重なる位置に配置されるとともにサブドーム52に接触しない大きさに設定されている。薄空気層形成部材10は、その周壁101が前述のようにユニットケース1の前記第2の段部に固着されることにより、振動板5(サブドーム52)の背面側の空間にあって連通路30の一端側開口30Aから離間して配置されている。そして、薄空気層形成部材10と磁気回路との空隙により薄空気層が形成されている。
【0029】
前述のように薄空気層形成部材10の半径方向の幅は、振動板5のサブドーム52の半径方向の幅よりも小さいので、サブドーム52の背面側の空間は、薄空気層と連通路30の一端側開口30Aと連通路30を通る経路で外部空間と繋がっている。具体的には、薄空気層形成部材10は外ヨーク4との間に所定間隔をもって、一端側開口30Aから内側に延びて形成されている。
【0030】
薄空気層形成部材10の連通路30の一端側開口からの離間度合いは薄空気層形成部材10の周壁101の高さに依存する。周壁101の高さは低いため、薄空気層形成部材10の連通路30の一端側開口からの離間度合いは小さく、振動板5の背面側空間と連通路30をつなぐ空間は狭くなっている。
【0031】
振動板5のセンタードーム51の背面側空間にも容積制限部材18が配置され、センタードーム51の背面側空間の容積も制限されている。容積制限部材18も、ほぼ球体の一部を切断した形になっていて、平坦面がポールピース8の上面に固着され、球面がセンタードーム51の背面に対向している。容積制限部材18の球面とセンタードーム51の背面との間には一定間隔で間隙が保たれている。
【0032】
以上説明した単一指向性ダイナミックマイクロホンの実施例は、振動板5のサブドーム52の背面側空間に薄空気層形成部材10が存在することにより、サブドーム52の背面側空間の容積が小さくなっている。また、薄空気層形成部材10が存在することにより、後部音響端子から取り込まれる音波が薄空気層の抵抗で振動板5の背面の直近に加えられる。サブドーム52の背面側空間の容積が小さくなることにより、共振周波数を主要収音帯域よりも高くすることができ、主要収音帯域の周波数応答の凹凸を防ぐことができる。
【0033】
薄空気層形成部材10が存在することにより、薄空気層形成部材10を音響抵抗として機能させることができる。従来のように布や不織布などのように吸湿性のある素材を音響抵抗として用いた場合、湿度の変化などによって周波数応答などの音響特性が変動しやすい。しかし、本発明の実施例によれば、薄空気層形成部材10による薄空気層を音響抵抗として利用するため、湿度の変化などに影響されない安定した音響特性を得ることができる。
【0034】
次に、本発明に係る単一指向性ダイナミックマイクロホンの要部である薄空気層形成部材およびその周辺の各種変形例について説明する。
【0035】
[実施例2]
図4は実施例2を示す。実施例2は、前記実施例1における薄空気層形成部材10よりも、半径方向の幅を小さくした薄空気層形成部材50を用いたものである。その他のユニットケース1、外ヨーク4、振動板5、連通路30などの構成は前記実施例1と同じである。実施例1の場合よりも、振動板5のサブドーム52の背面側空間から連通路30に至る薄空気層の長さが短く、音響抵抗が小さくなる。また、サブドーム52の背面側空間の容積は実施例1の場合よりも大きくなり、共振周波数は実施例1の場合よりも低くなる。薄空気層形成部材50の半径方向の大きさをどのように設定するかは、求める音響特性に対応して設定すればよい。
【0036】
[実施例3]
図5は実施例3を示す。実施例3は、上面を振動板5のサブドーム52の円弧に対応させて断面形状を円弧状に形成した薄空気層形成部材60を用いたものである。薄空気層形成部材60の半径方向の幅は任意であるが、図5に示す実施例3における薄空気層形成部材60の半径方向の幅は、前記実施例1の薄空気層形成部材10とほぼ同じになっている。実施例3によれば、薄空気層形成部材60によって、振動板5のサブドーム52の背面側の空間容積がさらに小さくなり、共振周波数がさらに高くなり、主要収音帯域の周波数応答の凹凸を防ぐことが容易になる。
【0037】
[実施例4]
図6は実施例4を示す。実施例4は、実施例1の薄空気層形成部材10と同じ構成の薄空気層形成部材10を用いているが、その固着部の構成が異なっている。図6に示すように、振動板5の外周縁の固着部である段部14に対して薄空気層形成部材10の周壁101を固着する第2の段部16が、これまで説明してきた実施例に比較して大きな段差をもって形成されている。段部14よりも内周側に第2の段部16があり、段部14よりも下段に第2の段部16がある。
【0038】
図6に示す実施例4によれば、振動板5と薄空気層形成部材10の周壁101を離間させることができるため、振動板5の周縁部に付着している接着剤が薄空気層形成部材10との隙間に浸透することを防止することができる。これにより、振動板5の音波による振動が阻害されるというような不具合を防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ユニットケース
2 ヨーク
3 磁石
4 外ヨーク
5 振動板
6 ボイスコイル
7 内筒
8 ポールピース
10 薄空気層形成部材
14 段部
16 段部
18 容積制限部材
30 連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8