特許第6781915号(P6781915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781915
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】重金属用不動態化剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20201102BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20201102BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C09K3/00 S
   C02F1/28 C
   B09C1/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-546804(P2019-546804)
(86)(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公表番号】特表2020-514495(P2020-514495A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】CN2017113084
(87)【国際公開番号】WO2018196367
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】201710291510.2
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519216910
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石 林
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104845626(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105969364(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1125702(CN,A)
【文献】 国際公開第2009/001720(WO,A1)
【文献】 特開2010−88991(JP,A)
【文献】 特開2017−225964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C02F 1/28
B09C 1/08
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio−GPG/FX
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属用不動態化剤であって、原料の成分は、A成分とB成分を含み、
前記A成分の原料は、A成分に占める質量百分率を基準に、
黄鉄鉱15〜80と、生石灰5〜80と、還元鉄粉5〜70とを含み、
前記B成分の原料は、B成分に占める質量百分率を基準に、
粘土鉱物30〜80と、無水硫酸ナトリウム3〜40とを含むことを特徴とする重金属用不動態化剤。
【請求項2】
前記黄鉄鉱は、純度が96%以上であり、且つカドミウム、鉛、亜鉛、水銀、ニッケル、クロム、銅又はヒ素を含む有害重金属元素を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の重金属用不動態化剤。
【請求項3】
前記生石灰は、粉末状であり、酸化カルシウムの含有量が90%より大きく、且つ有毒有害物質を含まないことを特徴とする請求項1に記載の重金属用不動態化剤。
【請求項4】
前記還元鉄粉において、鉄の含有量は、98%以上であり、炭素の含有量は、0.01%以下であり、リン及び硫黄の含有量は、いずれも0.03%以下であり、還元減量は、0.1〜0.2%であり、前記還元鉄粉の粒度は、100メッシュより大きいことを特徴とする請求項1に記載の重金属用不動態化剤。
【請求項5】
前記粘土鉱物は、カオリナイト、モンモリロナイト、イライト又は硅藻土を含み、前記粘土鉱物は、微粒子状であり、粒度が200メッシュより大きく、粘土鉱物の純度が75%より大きいことを特徴とする請求項1に記載の重金属用不動態化剤。
【請求項6】
前記無水硫酸ナトリウムにおいて、NaSOの含有量は、99%以上であることを特徴とする請求項1に記載の重金属用不動態化剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の重金属用不動態化剤の製造方法であって、
前記質量百分率で、A成分のうちの各成分を混合して、ボールミリングし、乾燥させて成形し、次に還元炉において加熱して活性化させ、冷却させて粉砕し、一次製品Iを得る、一次製品Iを製造するステップ(1)と、
前記質量百分率で、B成分のうちの各成分を混合した後、ボールミリングし、乾燥させて成形し、飽和蒸気で加熱して養生し、冷却させて粉砕し、一次製品IIを得る、一次製品IIを製造するステップ(2)と、
製造した一次製品Iと一次製品IIを混合して粉砕し、包装して前記重金属用不動態化剤を得るステップ(3)とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
ステップ(1)において、前記ボールミリングとは、混合物における各材料を粒子径200メッシュ以上になるまでボールミリングすることであり、前記乾燥とは、材料を含水率が6%未満になるまで乾燥させることであり、前記成形とは、乾燥後の混合材料を粒子径1〜3cmの球状粒子に加工することであり、前記加熱活性化の温度は、100〜1200℃であり、加熱活性化の時間は、0.5〜4時間であり、加熱活性化の雰囲気は、酸素逃散能が4%以下の還元雰囲気であり、前記冷却方式は、空冷又は水冷であり、前記冷却とは、40℃以下に冷却させることであり、前記粉砕とは、粒度100メッシュ以上に粉砕することであることを特徴とする請求項7に記載の重金属用不動態化剤の製造方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記ボールミリングとは、混合物における各材料を粒子径200メッシュ以上になるまでボールミリングすることであり、前記乾燥とは、ボールミリングした混合材料を含水率が6%未満になるまで乾燥させることであり、前記成形とは、乾燥後の混合材料を長さ30〜40cm、幅10〜15cm、厚み3〜5cmのブロックに加工することであり、前記飽和蒸気で加熱して養生する温度は、175〜210℃、養生時間は、6〜24時間、養生圧力は、1.25〜1.65MPaであり、前記冷却方式は、空冷又は水冷であり、前記冷却とは、40℃以下に冷却させれることであり、前記粉砕とは、粒度100メッシュ以上に粉砕することであることを特徴とする請求項7に記載の重金属用不動態化剤の製造方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、前記一次製品Iの一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める質量百分率は、5〜85%であり、前記一次製品IIの一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める質量百分率は、15〜95%であり、前記粉砕とは、混合材料を粒度100メッシュ以上に粉砕することであることを特徴とする請求項7に記載の重金属用不動態化剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水/土壤における重金属元素の処理及び不動態化の分野に関し、具体的には、重金属用不動態化剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界では、黄鉄鉱及び粘土鉱物は、いずれも優れた重金属吸着材料であり、環境汚染防止の分野に幅広く使用され得る。しかし、どのように両方のそれぞれの優位性を活用して複数種の重金属に対して優れた硬化処理効果を示す重金属用不動態化剤の製品を製造するかは、解決しようとする主な課題となっている。黄鉄鉱は、一般的な金属硫化物鉱物として、自然状態では安定的であり、重金属元素への硬化処理率が低い。たとえば、黄鉄鉱で廃水における六価クロムイオンを処理できるが、pH=3〜6の微酸性環境では、黄鉄鉱による六価クロムの除去率が20−30%しかない。研究者により(石俊仙、魯安懐、盧暁英.自然状態の黄鉄鉱及び加熱変性黄鉄鉱によるクロム含有廃水の処理の実験研究[J].鉱物岩石地球化学通報、1999、18(14):226〜229.)黄鉄鉱と還元鉄粉が共存する条件で、(200−305℃)加熱して活性化させることで、重金属処理剤の製品を製造することが研究された報道があった。
【0003】
粘土鉱物も、自然界において最も一般的な二次層状珪酸塩鉱物であり、2:1:1型のイライト、2:1型のモンモリロナイト、1:1型のカオリナイトなどを含む。1:1型のカオリナイト(好適な構造式AlSi10(OH)、実際の構造式AlSi10(OH))は、層間隔が7.2Åであり、層間力(水素結合力)が高く、格子置換がほとんどなく、カチオン交換量が小さく(30−150mmol/kg土壌)、比表面積が小さく(9−70m/g土壌)、このため、汚染物吸着能力が弱い。それに対して、2:1型のモンモリロナイト(好適な構造式AlSi20(OH).nHO、実際の構造式(1/2Ca、Na)(MgAl4−x)(Si20)(OH).nHO)は、層間隔が9.6−40Åに達し、層間力(ファンデルワールス力)が弱く、格子置換が発生しており、Al3+がMg2+、Fe2+及びZn2+などにより置換され、発生した負電荷がNa又はCa2+により平衡化され、カチオン交換量が大きく(700−1300mmol/kg土壌)、比表面積が大きく(600−850m/g土壌)、このため、汚染物吸着能力が高い。2:1:1型のイライト(好適な構造式Al(Si20)(OH)、実際の構造式(K)Al(Si8−xAl)O20(OH)20)は、性能が中等であり、層間隔が10.0Åに達し、層間力(静電気力)が強く、格子置換が発生しやすく、置換位置が主にSi−Oにあり、置換の数がモンモリロナイトより大きく、発生した負電荷が等量のKで平衡化され、カチオン交換量が200−400mmol/kg土壌に達し、比表面積が65−180m/g土壌であり、汚染物吸着能力が1:1型のカオリナイト及び2:1型のモンモリロナイトに比べて中等である。しかしながら、自然界では、粘土鉱物は、風や雨により浸食されたり、形成されてから長期間が経過していたりするので、活性が低下し、汚染における汚染物への吸着能力が大幅に下がる。
【0004】
このため、環境汚染における重金属の処理及び不動態化のために、新規な複合重金属用不動態化剤を製造することは、きわめて重要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点に対して、本発明は、重金属用不動態化剤及びその製造方法を提供する。
【0006】
本発明の技術案は、以下のとおりである。黄鉄鉱を主原料として、生石灰及び還元鉄粉を副材料として配合し、加熱過程に黄鉄鉱中の鉄及び硫黄元素を活性化させて、硫化鉄、硫黄粉、硫化カルシウムなどの化合物を生成し、一次製品Iを製造し、それによって土壤におけるヒ素、水銀、カドミウムなどの重金属元素と反応させることで、これらを沈殿させて硬化し、また、粘土鉱物(カオリナイト、モンモリロナイト、イライト、硅藻土)を無水硫酸ナトリウム(無水芒硝)と混合し、飽和蒸気で高圧蒸気により加熱して、活性粘土鉱物を主成分とした一次製品IIを製造し、これで廃水/土壤における重金属元素、及び一次製品Iで反応させて沈殿した重金属元素を吸着することによって、複合手段で廃水/土壤における重金属元素を対処して、汚染物の排出を削減させる目的を達成させる。
【0007】
本発明では、重金属用不動態化剤の製造の技術案は、以下のとおりである。まず、黄鉄鉱(FeS含有量≧96%)、生石灰(CaO≧90%)及び還元鉄粉(Fe≧98%)を秤量して混合し、ボールミリング、乾燥、成形、還元焙焼、冷却、粉砕、包装などの工程を経て、重金属用不動態化剤の一次製品Iを製造し、次に、粘土鉱物(カオリナイト、モンモリロナイト、イライト又は硅藻土)(純度≧75%)及び無水硫酸ナトリウム(NaSO≧99%)を秤量して混合した後、ボールミリングし、乾燥させて成形し、飽和蒸気炉において加圧加熱をし、反応生成物を冷却させて粉砕し、一次製品IIを得て、最後に、一次製品Iと一次製品IIを混合して、100メッシュ以上に破砕し、包装袋に詰めて、重金属用不動態化剤を得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術案は、具体的には、以下のとおりである。
【0009】
重金属用不動態化剤であって、原料の成分は、A成分とB成分とを含み、
前記A成分の原料は、A成分に占める質量百分率(%)で、
黄鉄鉱15〜80と、
生石灰5〜80と、
還元鉄粉5〜70とを含み、
前記B成分の原料は、B成分に占める質量百分率(%)で、
粘土鉱物30〜80と、
無水硫酸ナトリウム3〜40とを含む。
【0010】
さらに、前記黄鉄鉱は、純度が96%以上であり、且つ、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、ニッケル、クロム、銅又はヒ素を含む有害重金属元素を含有しない。
【0011】
さらに、前記生石灰は、粉末状であり、酸化カルシウムの含有量が90%より大きく、且つ有毒有害物質を含有しない。
【0012】
さらに、前記還元鉄粉において、鉄の含有量は、98%以上であり、炭素の含有量は、0.01%以下であり、リン及び硫黄の含有量は、いずれも0.03%以下であり、還元減量は、0.1〜0.2%である。
【0013】
さらに、前記還元鉄粉の粒度は、100メッシュより大きい(0.15mm未満)。
【0014】
さらに、前記粘土鉱物は、カオリナイト、モンモリロナイト、イライト又は硅藻土を含む。
【0015】
さらに、前記粘土鉱物は、微粒子状であり、粒度が200メッシュより大きく(0.074mm未満)、粘土鉱物の純度が75%より大きい。
【0016】
さらに、前記無水硫酸ナトリウムにおいて、NaSO含有量は、99%以上である。
【0017】
前記重金属用不動態化剤の製造方法であって、
前記質量百分率で、A成分における各成分を混合してボールミリングし、乾燥させて成形し、次に還元炉において加熱して活性化させ、冷却させて粉砕し、一次製品Iを得る、一次製品Iを製造するステップ(1)と、
前記質量百分率で、B成分のうちの各成分を混合した後、ボールミリングし、乾燥させて成形し、飽和蒸気で加熱して養生し、冷却させて粉砕し、一次製品IIを得る、一次製品IIを製造するステップ(2)と、
製造した一次製品Iと一次製品IIを混合して、粉砕して包装し、前記重金属用不動態化剤を得るステップ(3)とを含む。
【0018】
さらに、ステップ(1)において、前記ボールミリングとは、混合物における各材料を粒子径200メッシュ以上(0.074mm未満)になるまでボールミリングすることである。
【0019】
さらに、ステップ(1)において、前記乾燥とは、含水率が6%未満になるまで乾燥させることである。
【0020】
さらに、ステップ(1)において、前記成形とは、乾燥後の混合材料を粒子径1〜3cmの球状粒子に加工することである。
【0021】
さらに、ステップ(1)において、前記加熱活性化の温度は、100〜1200℃であり、加熱活性化の時間は、0.5〜4時間であり、加熱活性化の雰囲気は、酸素逃散能が4%以下の還元雰囲気である。
【0022】
さらに、ステップ(1)において、前記冷却方式は、空冷又は水冷である。
【0023】
さらに、ステップ(1)において、前記冷却とは、40℃以下に冷却させることである。
【0024】
さらに、ステップ(1)において、前記粉砕とは、粒子径が100メッシュ以上(0.15mm未満)に粉砕することである。
【0025】
さらに、ステップ(2)において、前記ボールミリングとは、混合物における各材料を粒子径が200メッシュより大きくなるまで(0.074mm未満)ボールミリングすることである。
【0026】
さらに、ステップ(2)において、前記乾燥とは、ボールミリングした混合材料を含水率が6%未満になるまで乾燥させることである。
【0027】
さらに、ステップ(2)において、前記成形とは、乾燥後の混合材料を長さ30〜40cm、幅10〜15cm、厚み3〜5cmのブロックに加工することである。
【0028】
さらに、ステップ(2)において、前記飽和蒸気で加熱して養生する温度は、175〜210℃であり、養生時間は、6〜24時間であり、養生圧力は、1.25−1.65MPaである。
【0029】
さらに、ステップ(2)において、前記冷却方式は、空冷又は水冷である。
【0030】
さらに、ステップ(2)において、前記冷却とは、40℃以下に冷却させることである。
【0031】
さらに、ステップ(2)において、前記粉砕とは、粒度100メッシュ以上(0.15mm未満)に粉砕することである。
【0032】
さらに、ステップ(3)において、前記一次製品Iの一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める質量百分率は、5〜85%である。
【0033】
さらに、ステップ(3)において、前記一次製品IIの一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める質量百分率は、15〜95%である。
【0034】
さらに、ステップ(3)において、前記粉砕とは、材料を100メッシュ以上(0.15mm未満)に粉砕することである。
【発明の効果】
【0035】
従来技術に比べて、本発明は、下記利点及び有益な効果を有する。
(1)本発明に係る重金属用不動態化剤は、複数種の重金属に対して優れた硬化処理効果を有し、重金属濃度5−50mg/Lの廃水1Lに本発明の重金属用不動態化剤2gを添加したところ、ヒ素の除去率が90%以上に達し、クロム、鉛、銅、カドミウムの除去率が97%以上に達し、このため、廃水における重金属の処理に対しては、製剤の添加量が小さく、作用するまでの時間が短く、重金属の除去率が高いという特徴を有する。
(2)本発明に係る重金属用不動態化剤は、土壌との適合性が良いので、土壤の二次汚染を引き起こすことがなく、且つ、不動態化効果が高く、本発明の重金属用不動態化剤の使用量が1ムーあたりの農地に対して200−300キログラムであり、作物の果実における重金属の含有量を20−70%低下させ、平均で30%以上低下させる。
(3)本発明に係る重金属用不動態化剤は、原料が天然のものであって入手しやすく、低コストであり、且つ重金属の除去率が高いという利点を有するので、応用価値が高く、市場への普及が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例における一次製品Iの製造プロセスの模式的フローチャートである。
図2】実施例における一次製品IIの製造プロセスの模式的フローチャートである。
図3】実施例における重金属用不動態化剤の製造成形プロセスの模式的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、特定の実施例にて本発明をさらに説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0038】
本発明の特定の実施実施では、重金属用不動態化剤の原料の成分は、A成分とB成分とを含み、
前記A成分の原料は、A成分に占める質量百分率(%)で、
黄鉄鉱15〜80と、
生石灰5〜80と、
還元鉄粉5〜70とを含み、
前記B成分の原料は、B成分に占める質量百分率(%)で、
粘土鉱物30〜80と、
無水硫酸ナトリウム3〜40とを含む。
【0039】
重金属用不動態化剤の製造ステップは、以下のとおりである。
(1)一次製品Iの製造
前記質量百分率で、A成分のうちの各成分を混合して、ボールミリングし、乾燥させて成形し、次に還元炉において加熱して活性化させ、冷却させて粉砕し、包装して一次製品Iを得る。製造プロセスの模式的フローチャートは、図1に示される。
(2)一次製品IIの製造
前記質量百分率で、B成分のうちの各成分を混合した後、ボールミリングし、乾燥させて成形し、飽和蒸気で加熱して養生し、冷却させて粉砕し、一次製品IIを得る。製造プロセスの模式的フローチャートは、図2に示される。
(3)製造した一次製品Iと一次製品IIを混合して粉砕し、包装して前記重金属用不動態化剤を得る。製造成形プロセスの模式的フローチャートは、図3に示される。
【0040】
実施例1
重金属用不動態化剤であって、原料の成分は、A成分とB成分とを含み、
A成分の原料は、A成分に占める質量百分率(%)で、
黄鉄鉱15と、
生石灰15と、
還元鉄粉70とを含み、
黄鉄鉱は、純度がFeS含有量=97.5%であり、且つ、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、ニッケル、クロム、銅、ヒ素を含む有害重金属元素を含有せず、生石灰は、粉末状であり、酸化カルシウムの含有量がCaO含有量=94%であり、且つ有毒有害物質を含有せず、還元鉄粉において、鉄の含有量は、Fe含有量=99.3%であり、炭素の含有量は、0.006%であり、リン及び硫黄の含有量は、それぞれ0.01%及び0.02%であり、還元減量は、0.15%であり、還元鉄粉の粒度は、120メッシュであり、
B成分の原料は、B成分に占める質量百分率(%)で、
カオリナイト80と、
無水硫酸ナトリウム20とを含み、
カオリナイトは、純度78%、粒度325メッシュであり、無水硫酸ナトリウムにおいて、NaSO含有量は、99.8%であった。
【0041】
上記重金属用不動態化剤の製造には、下記ステップを含む。
(1)一次製品Iの製造
前記質量百分率で、A成分のうちの各成分を混合して、全部を粒子径が220メッシュになるまでボールミリングし、含水率が5.5%になるまで乾燥させ、次に、粒子径2.5cmの球状粒子に加工し、さらに、還元炉において、酸素逃散能3%の還元雰囲気で、1200℃に加熱して0.5時間活性化させ、30℃に冷却させた後、120メッシュに粉砕し、一次製品Iを得た。
(2)一次製品IIの製造
前記質量百分率で、B成分のうちの各成分を混合した後、粒子径が325メッシュになるまでボールミリングし、含水率が5.6%になるまで乾燥させ、次に長さ30センチメートル×幅10センチメートル×厚み3センチメートルのブロックに加工し、ブロックを1.45MPaの飽和蒸気で189℃に加熱して8時間養生し、35℃に冷却させた後、粒度120メッシュに粉砕し、一次製品IIを得た。
(3)製造した一次製品Iと一次製品II(一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める百分率基準で、一次製品Iは、85%、一次製品IIは、15%を占める)を混合し、120メッシュに粉砕した後、包装して、前記重金属用不動態化剤を得た。
【0042】
製造した重金属用不動態化剤の廃水中の重金属の不動態化への適用
広東省東莞のある電気メッキ工場からは、大量の重金属を含有したCr3+濃度789mg/L、Cu2+濃度=1034mg/Lの廃水を排出した。前記廃水溶液1Lに製造した重金属用不動態化剤2gを添加して、117r/minの撹拌速度で30分間撹拌し、濾過した後に測定したところ、濾液では、Cr3+濃度13mg/L、Cu2+濃度=23mg/Lであり、重金属元素である三価クロムに対する一回除去率は、99.8%であり、このことから、銅イオンに対する一回除去率は、99.9%であり、性能に優れた重金属用不動態化剤の製品であった。
【0043】
実施例2
重金属用不動態化剤であって、原料の成分は、A成分とB成分とを含み、
A成分の原料は、A成分に占める質量百分率(%)で、
黄鉄鉱45と、
生石灰5と、
還元鉄粉50とを含み、
黄鉄鉱は、純度がFeS含有量=96.5%%であり、且つカドミウム、鉛、亜鉛、水銀、ニッケル、クロム、銅、ヒ素を含む有害重金属元素を含有せず、生石灰は、粉末状であり、酸化カルシウムの含有量がCaO含有量=93.2%であり、且つ有毒有害物質を含有せず、還元鉄粉において、鉄の含有量は、Fe含有量=98.3%であり、炭素の含有量は、0.005%であり、リン及び硫黄の含有量は、それぞれ0.008%及び0.015%であり、還元減量は、0.12%であり、還元鉄粉の粒度は、125メッシュであり、
B成分の原料は、B成分に占める質量百分率(%)で、
イライト60と、
無水硫酸ナトリウム40とを含み、
イライトは、純度76%、粒度320メッシュであり、無水硫酸ナトリウムにおいて、NaSO含有量は、99.5%であった。
【0044】
上記重金属用不動態化剤の製造には、下記ステップを含む。
(1)一次製品Iの製造
前記質量百分率で、A成分のうちの各成分を混合して、全部を粒子径が210メッシュになるまでボールミリングし、含水率が5.8%になるまで乾燥させ、次に、粒子径1cmの球状粒子に加工し、さらに、還元炉において、酸素逃散能2.5%の還元雰囲気で、800℃に加熱して4時間活性化させ、25℃に冷却させた後、110メッシュに粉砕し、一次製品Iを得た。
(2)一次製品IIの製造
前記質量百分率で、B成分のうちの各成分を混合した後、粒子径が250メッシュになるまでボールミリングし、含水率が5.4%になるまで乾燥させ、次に長さ40センチメートル×幅15センチメートル×厚み5センチメートルのブロックに加工し、ブロックを1.65MPaの飽和蒸気で209℃に加熱して23時間養生し、39℃に冷却させた後、粒度110メッシュに粉砕し、一次製品IIを得た。
(3)製造した一次製品Iと一次製品II(一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める百分率基準で、一次製品Iは、60%、一次製品IIは、40%を占める)を混合し、110メッシュに粉砕した後、包装して、前記重金属用不動態化剤を得た。
【0045】
製造した重金属用不動態化剤の廃水中の重金属の不動態化への適用
山西省のあるリン酸肥料工場がりん石膏を処理して排出した廃水において、Cr3+濃度387mg/L、Cd2+濃度=18mg/L、pH=5.76であった。前記廃水溶液1Lに製造した重金属用不動態化剤3gを添加して、107r/minの撹拌速度で45分間撹拌し、濾過した後に測定したところ、濾液では、Cr3+濃度11mg/L、Cd2+濃度=0.4mg/Lであり、このことから、重金属元素である三価クロムに対する一回除去率は、97.16%であり、カドミウムイオンに対する一回除去率は、97.78%であり、処理後の廃水は、pH=7.61であり、性能に優れた重金属用不動態化剤の製品であった。
【0046】
実施例3
重金属用不動態化剤であって、原料の成分は、A成分とB成分とを含み、
A成分の原料は、A成分に占める質量百分率(%)で、
黄鉄鉱70と、
生石灰20と、
還元鉄粉10とを含み、
黄鉄鉱は、純度がFeS含有量=99.5%であり、且つカドミウム、鉛、亜鉛、水銀、ニッケル、クロム、銅、ヒ素を含む有害重金属元素を含有せず、生石灰は、粉末状であり、酸化カルシウムの含有量がCaO含有量=91.7%であり、且つ有毒有害物質を含有せず、還元鉄粉において、鉄の含有量は、Fe含有量=99.1%であり、炭素の含有量は、0.008%であり、リン及び硫黄の含有量は、それぞれ0.009%及び0.017%であり、還元減量は、0.14%であり、還元鉄粉の粒度は、121メッシュであり、
B成分の原料は、B成分に占める質量百分率(%)で、
モンモリロナイト80と、
無水硫酸ナトリウム20とを含み、
モンモリロナイトは、純度78.4%、粒度250メッシュであり、無水硫酸ナトリウムにおいて、NaSO含有量は、99.1%であった。
【0047】
上記重金属用不動態化剤の製造には、下記ステップを含む。
(1)一次製品Iの製造
前記質量百分率で、A成分のうちの各成分を混合して、全部を粒子径が220メッシュになるまでボールミリングし、含水率が5.7%になるまで乾燥させ、次に、粒子径3cmの球状粒子に加工し、さらに、還元炉において、酸素逃散能1.9%の還元雰囲気で、100℃に加熱して2.5時間活性化させ、28℃に冷却させた後、105メッシュに粉砕し、一次製品Iを得た。
(2)一次製品IIの製造
前記質量百分率で、B成分のうちの各成分を混合した後、粒子径が230メッシュになるまでボールミリングし、含水率が5.1%になるまで乾燥させ、次に長さ35センチメートル×幅13センチメートル×厚み4センチメートルのブロックに加工し、ブロックを1.45MPaの飽和蒸気で185℃に加熱して18時間養生し、32℃に冷却させた後、粒度105メッシュに粉砕し、一次製品IIを得た。
(3)製造した一次製品Iと一次製品II(一次製品Iと一次製品IIの全質量に占める百分率基準で、一次製品Iは、50%、一次製品IIは、50%を占める)を混合し、105メッシュに粉砕した後、包装して、前記重金属用不動態化剤を得た。
【0048】
製造した重金属用不動態化剤の土壤中の重金属の不動態化への適用
広東白雲区の土壤を測定した結果、それにおける重金属は、Cr3+濃度=835mg/kg土壤、Pb2+濃度=571mg/kg土壤、Cd2+濃度=0.7mg/kg土壤であり、土壤pH=6.16であり、1ムーの稲田に製造した重金属用不動態化剤の製品を300キログラム施用したところ、空白に比べて、米粒における重金属である、クロムは、56%、鉛は、63%、カドミウムは、39%低下しており、このため、重金属を含む農地に対して良好な実施効果を奏した。
図1
図2
図3