【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・発行日:平成28年3月3日 ・刊行物:第63回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集 20p−W9−1 ・開催日:平成28年3月20日 集会名:第63回応用物理学会春季学術講演会 開催場所:東京工業大学(東京都目黒区大岡山2−12−1) ・発行日:平成28年4月1日 ・刊行物:第111回日本医学物理学会学術大会報文集 医学物理 第36巻 Sup.1 p.189 ・開催日:平成28年4月14日 ・集会名:第111回日本医学物理学会学術大会(電子ポスター発表) ・開催場所:パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい1−1−1) ・開催日:平成28年4月16日 ・集会名:第111回日本医学物理学会学術大会(口頭発表) ・開催場所:パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい1−1−1) ・発行日:平成28年8月24日 ・刊行物:応用物理学会放射線分科会 放射線 第41巻第4号 2016年7月 p.187−p.190
【文献】
Marie H. Richard,Design study of a Compton camera for prompts-gamma imaging during ion beam therapy,Th`ese de l’universit´e de Lyon,フランス,l’universit´e de Lyon,2012年 1月22日,pp. 1-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形
態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0013】
〔実施形態〕
(コンプトンカメラの動作原理)
図1は、量子コリメータ型イメージング装置で使用されるコンプトンカメラの動作原理を説明する図である。
図1のコンプトンカメラは、散乱体及び吸収体の2枚の位置感応型放射線検出器を用い、光子線が散乱体でコンプトン散乱を行う位置とエネルギーと、その後吸収体で光電吸収を行なう位置とエネルギーとを精密に計測することにより、コンプトン散乱角θ(光子線の飛来方向)を算出する。コンプトンカメラは、この原理を用いて、光子線源のイメージングを行う。コンプトンカメラは、原理的に、コリメータを必要としない。コンプトンカメラの散乱体としてシリコン(Si)を、吸収体としてテルル化カドミウム(CdTe)の半導体素子を用いることにより、広いエネルギー範囲を高いエネルギー分解能でイメージング可能である。コンプトンカメラの散乱体や吸収体は、これらに限定されるものではない。散乱体及び吸収体は平面状であり、平行に配置される。
【0014】
散乱角θは、次のように求められる。
【数1】
ここで、m
eは電子の静止質量、cは真空中の光速、E
1は散乱体で電子に与えられるエネルギー、E
2は吸収体で吸収される光子のエネルギーである。E
1は、光子線が散乱体で失うエネルギーである。E
1+E
2は、コンプトンカメラに入射される放射線がコンプトンカメラで失うエネルギーである。ここで、線源からの放射線がコンプトンカメラに入射され、散乱体で散乱して吸収体で吸収されるとすると、E
1+E
2が線源から放出される放射線のエネルギーである。光子が散乱された位置(第1位置)と、散乱された光子が吸収された位置(第2位置)とが分かれば、光子の飛来方向を第1位置と第2位置とを結ぶ直線を中心線とし、第1位置を頂点とし、中心線と母線とのなす角をθとする円錐の側面内に線源が存在することが分かる。1つの線源から放出される複数の方向の光子を検出することで、線源が存在し得る位置を示す複数の円錐の側面を求めることができる。複数の円錐の側面の重なる位置が線源の位置であると求められる。
【0015】
(人体から放出される放射線)
図2は、人体から放出される放射線の例を示す図である。腫瘍に蓄積するベータ核種を用いた放射線薬剤(β線薬剤)を人体に投与することにより、放射性薬剤が腫瘍に蓄積する。放射性薬剤は、β線を放出するため、β線の放出位置が分かれば、腫瘍の位置がわかる。人体内において、β線は、曲がりながら進行するのにともなって、制動X線を放出する。β線の体内飛程は11mm以下である。ここでは、制動X線の放出位置は、β線の放出位置と同じとみなす。よって、人体から放出される制動X線の放出位置を求めることは、β線の放出位置を求めることであり、腫瘍の位置を求めることになる。β線は人体内での飛程が非常に短く、人体の外で検出することは難しい。一方、制動X線は、人体外でも検出することが可能である。よって、本実施形態のイメージング装置は、人体外にコンプトンカメラを配置し、制動X線の放出位置を求めることで、人体内の腫瘍の位置を求めることができる。なお、本実施形態のイメージング装置は、人体内の腫瘍に限定されず、物質内の線源の位置を求めることができる。
【0016】
量子コリメータを用いた光子線源のイメージングでは、入射光子線のエネルギーは、量子コリメータ(散乱体)での測定値と後段検出器(吸収体)での測定値との合計と仮定する。この場合、後段検出器で光電吸収ではなくコンプトン散乱が生じた場合には入射光子
線のエネルギーを過小評価することになる。また、測定イベントの中には、制動X線の発生後、コンプトンカメラへの入射前に、いずれかの場所で散乱した光子も含まれる。これは、制動X線の発生源の位置と異なる位置でのイベント(フェイクイベント)による光子となる。
【0017】
制動X線等の連続エネルギーを持つ光子線の場合、入射する光子のエネルギーが決まっていないため、正規のイベント(制動X線の発生源による光子)と上記のフェイクイベントとを測定されたエネルギーによって区別することが難しい。そのため、ガンマ線の様な特定エネルギーを持つ光子線源をイメージングする手法と同様に行うことは困難である。そこで、ここでは、イメージングに使用するエネルギー領域を制限することによって、上記フェイクイベントの割合を最小化し、精度の高いイメージングを行う。
【0018】
図3は、物質内のコバルト57線源から放出されるガンマ線等のエネルギースペクトルの例を示す図である。
図3のグラフの横軸はエネルギーで、縦軸は検出されるイベント数である。コバルト57は、γ崩壊して122keVのガンマ線を放出する。
図3の例では、122keVにガンマ線のピークがある。ここで、上記のコンプトンカメラにおいて、E
1+E
2を122keVとすることで、イメージングを行うことで、線源の位置を正確に求めることができる。
【0019】
図4は、物質内のイットリウム90線源から放出されるベータ線等のエネルギースペクトルの例を示す図である。
図4のグラフの横軸はエネルギーで、縦軸は検出されるイベント数である。イットリウム90は、β崩壊して2.28MeVのベータ線を放出する。
図4の例では、ベータ線のピークが存在しない。ベータ線は物質内で止まるからである。ここでは、ベータ線の進行にともなって制動X線が放出されている。制動X線のエネルギーは、ベータ線のエネルギーよりも低い。また、制動X線が物質内で散乱された放射線も、ベータ線のエネルギーよりも低い。制動X線が物質内で散乱された放射線の飛来方向は、ベータ線源の方向と異なることが多い。よって、ベータ線源の方向を求める際、制動X線が物質内で散乱された放射線は、ノイズとなる。制動X線によって、ベータ線源の方向を精度よく算出するには、ノイズを減らすことが求められる。
【0020】
(構成例)
図5は、本実施形態のシステム構成例を示す図である。本実施形態のシステム10は、イメージング装置100及び放射線源を含む物質200を備える。イメージング装置100は、コンプトンカメラ110及び情報処理装置120を含む。物質200は、コンプトンカメラ110の近傍に配置される。物質200には、位置を特定する対象の放射線源が含まれるとする。コンプトンカメラ110は、物質200の近傍において、移動できるようにされ、複数の位置から放射線を検出してもよい。情報処理装置120は、コンプトンカメラ110で取得した信号を処理する。物質200は、例えば、腫瘍に蓄積するベータ核種を用いた放射線薬剤を投与された人体である。ここでは、物質200で、ベータ線が放出され、当該ベータ線が物質200内で曲がりながら制動X線を放出するとする。
【0021】
コンプトンカメラ110は、
図1に示すように、散乱体及び吸収体を含む。コンプトンカメラ110は、放射線が入射される毎に、散乱体において放射線が入射した位置及びエネルギー(電子に与えられたエネルギー)、吸収体において放射線が入射した位置及びエネルギー(吸収されたエネルギー)を検出する。コンプトンカメラ110は、検出した結果を、情報処理装置120に出力する。コンプトンカメラ110として、周知のコンプトンカメラが使用され得る。
【0022】
図6は、イメージング装置の情報処理装置の機能ブロックの例を示す図である。情報処理装置120は、取得部121、確率算出部122、位置算出部123、格納部124を
含む。
【0023】
取得部121は、コンプトンカメラ110から、入射される放射線の、散乱体における位置及びエネルギー、吸収体における位置及びエネルギーを取得する。取得部121は、取得した情報を、格納部124に格納する。
【0024】
確率算出部122は、物質200から放射されうる放射線のエネルギーの範囲について、エネルギー毎に、入射前に散乱される放射線の割合、コンプトンカメラ110の吸収体で散乱される放射線の割合を算出する。確率算出部122は、算出結果を格納部124に格納する。
【0025】
位置算出部123は、取得部121で取得された情報、及び、確率算出部122で算出された算出結果に基づいて、放射線源の位置を算出する。
【0026】
格納部124は、情報処理装置120で使用される情報等を格納する。
【0027】
図7は、コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図7に示すコンピュータ90は、一般的なコンピュータの構成を有している。情報処理装置120は、
図7に示すようなコンピュータ90を用いることによって、実現される。
図7のコンピュータ90は、プロセッサ91、メモリ92、記憶部93、入力部94、出力部95、通信制御部96を有する。これらは、互いにバスによって接続される。メモリ92及び記憶部93は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。コンピュータのハードウェア構成は、
図7に示される例に限らず、適宜構成要素の省略、置換、追加が行われてもよい。
【0028】
コンピュータ90は、プロセッサ91が記録媒体に記憶されたプログラムをメモリ92の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、所定の目的に合致した機能を実現することができる。
【0029】
プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。
【0030】
メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。メモリ92は、主記憶装置とも呼ばれる。
【0031】
記憶部93は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスク
ドライブ(HDD、Hard Disk Drive)である。また、記憶部93は、リムーバブルメデ
ィア、即ち可搬記録媒体を含むことができる。リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、あるいは、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)のようなディスク記録媒体である。記憶部93は、二次記憶装置とも呼ばれる。
【0032】
記憶部93は、各種のプログラム、各種のデータ及び各種のテーブルを読み書き自在に記録媒体に格納する。記憶部93には、オペレーティングシステム(Operating System :OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。記憶部93に格納される情報は、メモリ92に格納されてもよい。また、メモリ92に格納される情報は、記憶部93に格納されてもよい。
【0033】
オペレーティングシステムは、ソフトウェアとハードウェアとの仲介、メモリ空間の管理、ファイル管理、プロセスやタスクの管理等を行うソフトウェアである。オペレーティングシステムは、通信インタフェースを含む。通信インタフェースは、通信制御部96を
介して接続される他の外部装置等とデータのやり取りを行うプログラムである。外部装置等には、例えば、他のコンピュータ、外部記憶装置等が含まれる。
【0034】
入力部94は、キーボード、ポインティングデバイス、ワイヤレスリモコン、タッチパネル等を含む。また、入力部94は、カメラのような映像や画像の入力装置や、マイクロフォンのような音声の入力装置を含むことができる。
【0035】
出力部95は、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electroluminescence)パ
ネル、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、PDP(Plasma Display Panel)等の表示装置、プリンタ等の出力装置を含む。また、出力部95は、スピーカのような音声の出力装置を含むことができる。
【0036】
通信制御部96は、他の装置と接続し、コンピュータ90と他の装置との間の通信を制御する。通信制御部96は、例えば、LAN(Local Area Network)インタフェースボード、無線通信のための無線通信回路、有線通信のための通信回路である。LANインタフェースボードや無線通信回路は、インターネット等のネットワークに接続される。
【0037】
情報処理装置120を実現するコンピュータは、プロセッサが補助記憶装置に記憶されているプログラムを主記憶装置にロードして実行することによって、取得部121、確率算出部122、位置算出部123としての機能を実現する。一方、格納部124は、主記憶装置または補助記憶装置の記憶領域に設けられる。
【0038】
情報処理装置120における一連の処理は、ハードウェアにより実行させることも、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0039】
プログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくても、並列的または個別に実行される処理を含む。プログラムを記述するステップの一部が省略されてもよい。
【0040】
(動作例)
図8は、イメージング装置の情報処理装置による位置算出の動作フローの例を示す図である。
【0041】
S101では、情報処理装置120の確率算出部122は、物質200の放射線源とコンプトンカメラ110までの間に存在する物質量を見積もり、物質200内のβ線源からのベータ線によって発生する制動X線のうち、散乱せずにコンプトンカメラ110に入射する光子線(直接入射光子)の割合と、いずれかの位置で散乱してコンプトンカメラ110に入射する光子線(散乱光子)の割合とを算出する。確率算出部122は、例えば、物質200に対するX線CT(Computer Tomography)データ及びモンテカルロシミュレー
ション等により、直接入射光子の割合、散乱光子の割合を算出することができる。一般に、散乱光子の割合は、低エネルギー側で高くなる。直接入射光子の飛来方向は、ベータ線源の方向であるとみなされる。
【0042】
次に、確率算出部122は、コンプトンカメラ110の吸収体で散乱が起こる割合を見積もる。コンプトンカメラ110の吸収体で散乱が起こる割合は、当該吸収体に入射する光子のエネルギーに依存する。吸収体で散乱が起こる割合は、高エネルギー側で高くなる。確率算出部122は、吸収体に入射されるエネルギー毎に、吸収体で散乱が起こる割合を見積もる。
【0043】
さらに、確率算出部122は、直接入射光子の割合と、散乱光子の割合と、吸収体で散
乱が起こる割合とから、直接入射光子が散乱体で散乱されて吸収体で(散乱されずに)吸収される放射線の割合を算出する。コンプトンカメラで、直接入射光子が散乱体で散乱されて吸収体で(散乱されずに)吸収されるイベントを、正しいイベントという。正しいイベントの場合、直接入射光子のエネルギーE
0は、散乱体で電子に与えられるエネルギーE
1と吸収体で吸収されるエネルギーE
2との和である(E
0=E
1+E
2)。
【0044】
図9は、正しいイベントの割合の、コンプトンカメラで検出される放射線のエネルギー(E
1+E
2)依存性の例を示す図である。
図9のグラフでは、横軸はコンプトンカメラで検出される放射線のエネルギー(E
1+E
2)を示し、縦軸は正しいイベントの割合を示す。
図9の例では、250keV付近で、正しいイベントの割合が最も高くなっている。即ち、イメージング装置100が、250keV近傍のデータを用いて、ベータ線の線源の方向を求めることで、ベータ線の線源の位置の精度が向上する。正しいイベントの割合が最も高くなるエネルギーは、ベータ線源や物質200の種類、大きさ、物質200までの距離等に依存する。
【0045】
S102では、取得部121は、コンプトンカメラ110から、コンプトンカメラ110で検出した、散乱体において放射線が入射した位置及びエネルギー、吸収体において放射線が入射した位置及びエネルギーを取得する。コンプトンカメラ110には、物質200から放射線(光子線)が入射される。取得部121は、取得した情報を、格納部124に格納する。
【0046】
S103では、位置算出部123は、確率算出部122の算出結果に基づいて、取得する放射線のエネルギーの範囲を決定する。位置算出部123は、正しいイベントの割合が最も高くなるエネルギーを含む範囲を取得する放射線のエネルギーの範囲として決定する。エネルギーの範囲の幅は、コンプトンカメラ110で取得された放射線の量によって決定してもよい。例えば、コンプトンカメラ110で取得された放射線の量が少ない場合(例えば、測定時間が短い場合)、エネルギーの幅を大きくする。放射線の量が少ないとベータ線源の位置の精度が低下するおそれがあるからである。また、例えば、コンプトンカメラ110で取得された放射線の量が多い場合、エネルギーの幅を小さくする。エネルギーの幅を小さくすることで、正しいイベントの割合をより多くすることができ、ベータ線源の位置の精度を向上させることができる。ここでは、例えば、正しいイベントの割合が
図9のようであるとすると、エネルギーの範囲を、200keVから300keVと決定する。
【0047】
位置算出部123は、コンプトンカメラ110で検出した放射線のエネルギー(E
1+E
2)が、決定したエネルギーの範囲に含まれるものを、格納部124から抽出する。位置算出部123は、抽出した放射線について、それぞれ、放射線の線源を示す円錐の側面を求める。円錐の側面が多く通る点ほど、放射線の線源の位置である可能性が高い。
【0048】
図10は、線源の位置の算出結果の例を示す図である。
図10は、コンプトンカメラ110から所定の距離における平面の線源の位置の算出結果を示す。
図10の例では、図の中心ほど(色が黒いほど)、円錐の側面が多く通っていることを示す。即ち、
図10の例では、中心付近に行くほど、放射線の線源の位置である可能性が高いことを示しており、周囲に行くほど、放射線の線源の位置である可能性が低いことを示している。これにより、イメージング装置100は、放射線の線源の位置を求めることができる。仮に、コンプトンカメラ110から線源までの距離が当該所定の距離であるとすると、
図10の中心付近が放射線の線源の位置であると考えられる。位置算出部123は、3次元空間の各点において、円錐の側面が通る数を計数し、最も多く通る点を、放射線の線源の位置としてもよい。実際に、
図10の図の中心付近に相当する位置に線源が存在する。
【0049】
図11は、線源の位置の算出結果のエネルギー依存性を示す図である。
図11は、コンプトンカメラ110から所定の距離における平面の線源の位置の算出結果を示す。
図11の例では、位置算出部123が決定するエネルギーの範囲を、仮に、100−140keV、140−200keV、200−300keV、300−400keV、400−500keV、500−700keV、700−1300keVとしたときの線源の位置の算出結果を示す。200−300keVの算出結果は、
図10の例と同じである。
図11の例では、
図10の例と同様に、色が黒いほど、円錐の側面が多く通っていることを示す。200−300keVの例では、放射線の線源の位置である可能性が高い部分が小さいが、200−300keVの範囲からエネルギーの範囲が小さくなるにつれて、放射線の線源の位置である可能性が高い部分が大きくなっている。また、200−300keVの範囲からエネルギーの範囲が大きくなるにつれて、放射線の線源の位置である可能性が高い部分がまだらになっている。即ち、200−300keVの範囲から離れるほど、線源の位置の精度が低下している。よって、例えば、イメージング装置100が、すべてのエネルギーの範囲を用いて算出する場合、算出される放射線の線源の位置の精度は低下する。
【0050】
(実施形態の作用、効果)
従来の「発生光子のエネルギーに応じたピーク部分のイベントを使用する」というイメージング手法では連続エネルギーを持つ光子線源を正確に可視化することは困難であった。イメージング装置100によれば、制動X線のような連続エネルギーを持つ光子線源の位置の算出が可能となる。
【0051】
物理コリメータ型のイメージング装置では光子線のエネルギーに合わせたコリメータを使用する必要があり、連続エネルギーを持つ光子線源の位置の算出は、難しい。本実施形態の量子コリメータ型のイメージング装置100は、幅広いエネルギーの光子線を用いてイメージングを行うことができる。イメージング装置100により、最適なエネルギー範囲の設定が行えれば、より高い精度で線源の位置の算出が可能となる。
【0052】
イメージング装置100は、直接入射光子の割合と、散乱光子の割合と、吸収体で散乱が起こる割合とを算出する。イメージング装置100は、これらの割合から、直接入射光子が散乱体で散乱されて吸収体で吸収されるイベント(正しいイベント)の起こる割合を、コンプトンカメラ110で検出される放射線のエネルギー(E
1+E
2)毎に算出する。コンプトンカメラ110で検出される放射線のエネルギーは、入射される放射線が、コンプトンカメラ110で失うエネルギーである。
【0053】
例えば、人体において、ベータ核種であるイットリウム90で標識されたゼヴァリンが悪性リンパ腫の治療に用いられている。しかし純β−放出核種のイメージングが困難なため、ガンマ核種であるヨウ素111で標識されたゼヴァリンを事前に投与し、擬似的に薬物動態を測定している。しかし、この手法では時間もコストもかかるうえ、標識核種の違いによる動態の違いが懸念される。イメージング装置110によりイットリウム90標識薬のままイメージングが可能となれば、コスト削減を削減しながら正確な薬物動態の把握が行えるようになる。
【0054】
以上の実施形態の構成は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。
【0055】
〈コンピュータ読み取り可能な記録媒体〉
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0056】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体内には、CPU、メモリ等のコンピュータを構成する要素を設け、そのCPUにプログラムを実行させてもよい。
【0057】
また、このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0058】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。