(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6781966
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】容器引っ掛け棒およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
B25J 1/00 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
B25J1/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-41769(P2020-41769)
(22)【出願日】2020年3月11日
【審査請求日】2020年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714009924
【氏名又は名称】鈴木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁子
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−78176(JP,A)
【文献】
特許第6569035(JP,B1)
【文献】
特開昭64−40284(JP,A)
【文献】
特開2015−50867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を引っ掛けて入手するための容器引っ掛け棒であって、
隙間を介して対向する一対の爪部を有する引っ掛け部と、先端部において、
前記引っ掛け部を回動自在に支持する筒状の柄部と、
前記筒状の柄部の内側に収容され、先端部において、
前記引っ掛け部に回動自在に連結し、前進後退することによって、
前記引っ掛け部を傾動させる伝達棒と、
前記柄部の基端部に操作レバーを有し、前記伝達棒の基端部に連結し、
前記操作レバーの回転を、一対の雄ねじと雌ねじとの噛み合わせにより、
前記伝達棒の前進後退の動きに転換させるねじ機構と、を備える容器引っ掛け棒。
【請求項2】
前記ねじ機構は、
前記伝達棒の前記基端部に設けられた雌ねじと、
前記操作レバーとともに回転する雄ねじと、当該雄ねじを回転自在かつ前進後退不能に
前記柄部の前記基端部に支持する、ねじ支持部材と、を有する、
請求項1に記載の容器引っ掛け棒。
【請求項3】
前記ねじ機構は、
前記柄部の前記基端部に固定的に設けられた雌ねじと、
前記操作レバーとともに回転する雄ねじと、
前記雄ねじを前記伝達棒の前記基端部に回転自在に連結する、ねじ連結部材と、を有する、
請求項1に記載の容器引っ掛け棒。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の容器引っ掛け棒の使用方法であって、
前記引っ掛け部の一対の爪部の隙間に容器の縁部を挿入させた後、
前記操作レバーの回転操作によって前記柄部に対する前記引っ掛け部の角度を調整することにより前記爪部に容器の重さを加えて前記爪部を前記容器の外側面に圧着させる状態とし、そのままの状態で前記容器を持ち上げる容器引っ掛け棒の使用方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の容器引っ掛け棒の使用方法であって、
前記引っ掛け部の一対の爪部の隙間に容器の縁部を挿入させた後、
前記操作レバーの回転操作によって前記柄部に対する前記引っ掛け部の角度を調整することにより
前記爪部に容器の重さを加えて前記柄部に対する前記引っ掛け部の角度を固定して前記爪部を前記容器の外側面に圧着させる状態とし、そのままの状態で前記容器を持ち上げて前記容器を離れた場所に置いた後、
前記操作レバーの回転操作することによって、前記角度の元に戻して前記容器を前記爪部から外す容器引っ掛け棒の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所や離れた場所に置かれた容器を入手する容器引っ掛け棒およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭では高所に置かれた容器を入手するには、踏台や脚立を利用し、また離れた所ではマジックハンドの使用が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】6569035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来の方法では、踏台や脚立を利用する場合は転倒する可能性があって危険性を伴う。そして狭い場所では踏台や脚立を安定して設置することができない場合もあって不便である。また、車椅子利用者や足に障害がある人にとっては、踏台や脚立の利用は無理であるため、自力で入手するのは不可能であった。
【0005】
また、高所に置かれた物体に対応することができるマジックハンドは少なく、また離れた場所に置かれた場合、マジックハンドでは物体を直接掴み取るため、物体の形体に制限があり、繊細な物体では形体を損なう場合もあった。特許文献1に記載の技術は、この問題を解決しようとするものであるが、柄部内に備えた手元角度調整機構は、引っ掛け部の爪部から伸びる線材を柄部の接続部内の回動軸を介して挿入し、柄部の基端部の把持部内の手元角度調整機構に連結させることで、手元角度調整機構の操作で爪部の角度を調整することが可能である手元角度調整機構を有する引っ掛け棒であったが、手元角度調整機構の回転体をレバーで調整する場合は爪部の角度の微調整が難しく、また引っ掛け部の角度の調整と、固定の解除が必要であったため、固定装置の強度も必要で角度調整機構部の設置にスペースが必要で設置するのに費用が掛ってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、踏台や脚立に乗らず、またマジックハンドを利用することなく離れた場所の容器を入手したり置いたりすることを、より簡単な機構で可能にすることである
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成する為に、隙間を介して対向する一対の爪部を有する引っ掛け部と、引っ掛け部から延びる筒状の柄部と、柄部の内側には引っ掛け部と連結した伝達棒と雄ねじ棒を収容させ、柄部の基端部にねじ棒を回転操作出来る操作レバーを備え、操作レバーの操作で雄ねじ棒を回転させて、その回転を伝達棒では前進後退の動きに転換することで引っ掛け部の角度を傾斜させることを可能にして、離れた場所や狭い場所に置かれた容器を入手できることができるようにした。
【0008】
この引っ掛け棒は、手元の操作レバーの回転操作が雄ねじ棒の螺旋運動により伝達棒の前進後退の直進運動に転換して、連結した引っ掛け部の爪部を傾斜させることを可能にしたので、操作レバーの操作で引っ掛け部の爪部の傾斜を細かく調整するだけでなく固定も出来るようにした。これで容器の重さや形態の違いで爪部の角度を微調整したい場合は手元の操作レバーの回転の調整だけで出来るようにしただけでなく、手元角度調整機能のように固定や解除の必要がなくなるので操作を簡素化し、また把持部内の手元操作機構部も削除できるのでコストも重量も大幅に削減できる。
【0009】
引っ掛け部の角度を大きく変えたい時は、操作レバーの回転数が必要であるが、雄ネジ棒のピッチの幅を大きくすることで回転数を少なくすることを可能し、また回転数が必要な場合でも操作レバーを把持することなく指で回転操作が出来るような形体にしたので操作レバーの回転操作が楽に出来るようにした。
【0010】
引っ掛け棒の柄部が移動可能の場合は、引っ掛け部の一対の爪部の隙間に容器の縁部を挿入させて容器の上部の内側に爪部を密着させると共に、もう片側の爪部を容器の外側面に密着させ、柄部を容器側に押すことによって、容器の内側の爪部が容器を手前に倒すと共に容器の外側面の爪部がその反対側に容器を押す状態となり、そのままの状態で容器を持ち上げて、容器が引っ掛け部から落ちない。
【0011】
また、柄部の移動が不可能な場合は、操作レバーを回転操作して引っ掛け部の傾斜を調整する事で、引っ掛け部の一対の爪部の隙間に容器の縁部を挿入させた後、操作レバーの操作で引っ掛け部を傾斜させて、引っ掛け部の爪部を容器の上部内面と容器下部側面に圧着させることで、容器を持ち上げても爪部から落ちることなく容器が入手することができる。
【0012】
容器を離れた場所に設置したい場合は、引っ掛け部一対の爪部の隙間に容器の縁部を挿入させて、引っ掛け部が容器の側面に圧着するように引っ掛け部を傾斜させた状態にすれば、容器を離れた場所に設置する事が出来る。また、容器を設置した後に容器の側面に圧着して爪部を外すように柄部を動かせば爪部を容器から外すことが出来る。しかし、柄部を動かすことが出来ない場合は操作レバーの回転調整で引っ掛け部の傾斜を調整し容器の側面に圧着した爪部を容器から外すことが出来るので、狭い場所に容器を設置することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多様な場所に置かれた容器を引っ掛け棒で入手することが可能になる。また健常者にとっては容器の設置場所が取得可能な場所であっても、車椅子や足に障害がある人にとっては障害物がある場合や狭くて容器の傍に近寄れない場合でも、離れた場所から容器を入手したり、別の場所に移動させたりすることができるようになる。また、引っ掛け部の角度の調整が操作レバーの回転操作だけで出来るようにしたので、角度の調整と固定が同時に出来るので構造がより簡素し、重量も軽減されると共にコスト削減にもなり、また操作方法を簡素化したので手に障害がある方でも操作可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる引っ掛け棒の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる引っ掛け棒の柄部基端部に雌ねじを設置した斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる引っ掛け部で容器が上部に置かれている場合の爪部の動作を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる引っ掛け棒で容器が下部に置かれている場合の爪部の操作を示す図である。
【
図6】引っ掛け部と柄部の接続部に伝達棒を接続した図である。
【
図7】伝達棒と雄ねじ棒間でねじ機構を設けた内部図である。
【
図8】伝達棒に篏合接続した雄ねじ棒と柄部基端部間でねじ機構を設けた内部図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態にかかる引っ掛け棒の概要図である。この引っ掛け棒は、引っ掛け部1と、引っ掛け部1と回動自在に支持する筒状の柄部3と、柄部3には引っ掛け部1と回動自在に連結させた伝達棒4を収容させて、伝達棒4の基端部の内側には雌ねじ5aを備えさせて雄ネジ棒6とねじ機構を構成するように雄ねじ6を接続させて、雄ネジ棒6の基端部には雄ネジ6の回転操作を可能にした操作レバー7を柄部3の基端部に備えさせた。また、操作レバー7は柄部3の基端部と回転自在に支持されるだけで前進後退しないように設けられる。回転レバー7の操作で雄ねじ棒6を回転させると、伝達棒の雌ねじ5aと噛み合うことで、伝達棒4の前進後退の動きに転換される。伝達棒4の前進後退の動きは回動自在に接続した引っ掛け部1を、押引することにより、引っ掛け部の角度を調整する。それにより、引っ掛け部1の爪部1aと爪部1bは容器の側面に圧着することが出来て容器を入手できる(
図5、7参照)。
【0017】
図2は、本発明の実施形態にかかる引っ掛け棒の概要図である。この引っ掛け棒は、引っ掛け部1と、引っ掛け部1と回動自在に支持する筒状の柄部3と、柄部3には引っ掛け部1と回動自在に連結させた伝達棒4を収容させて、伝達棒4の基端部内には雄ネジ棒6を回転自在に篏合接続させて、雄ねじ棒6の基端部には雄ねじ棒6の回転操作出来るように操作レバー7を備えさせた。また、柄部基端部の内側には雄ねじ6と螺合するように雌ねじ6aを設けて、ねじ機構を構成する。操作レバー7の回転操作で雄ネジ棒6は柄部の基端部で前進後退し、この動きが篏合接続5した伝達棒4に伝わる。伝達棒4の前進後退の動きは回動自在に接続した引っ掛け部1を押引することにより、引っ掛け部の角度を調整する。それにより、引っ掛け部1の爪部1aと爪部1bは容器の側面に圧着することが出来て容器を入手できる(
図5、8参照)。
【0018】
図3に示されているのは、容器が平行か高い場所に置かれている場合で、この場合は、引っ掛け部1の爪部1aを容器の上部内側に、爪部1bを容器の外側面に密着させた後、柄部3を容器側に押すことによって、爪部1aが容器を手前に倒すと共に爪部1bがその反対側に容器を押す状態となる。このようにすることによって、爪部1aと爪部1bでは容器に対して相反する力が働き、爪部1aが容器の内側面に密着し、爪部1bが容器の外側面に密着した状態で容器を持ち上げると、爪部1bに容器の重さが加わると共に爪部上部1aには爪部1bとは反対方向に力が働く。このため、一対の爪部1a爪部1bに容器の外側面が圧着し、容器を落とすことなく入手することができる様になる。
【0019】
図4に示されているのは、容器が平行か高い低い場所に置かれている場合で、引っ掛け部1の爪部1bを容器の上部内側に、爪部1aを容器の外側面に密着させた後、柄部3を容器から離すことによって、爪部1bが容器を手前に倒すと共に爪部1aがその反対側に容器を押す状態となる。このようにすることによって、爪部1aと爪部1bでは容器に対して相反する力が働き、爪部1bが容器の内側面に密着し、爪部1aが容器の外側面に密着した状態で容器を持ち上げると、爪部1aに容器の重さが加わると共に爪部1bには爪部1aとは反対方向に力が働く。このため、一対の爪部1a爪部1bに容器の外側面が圧着し、容器を落とすことなく入手することができる様になる。
【0020】
しかし、容器の置かれている位置によっては、入手したい容器の縁に引っ掛け部1の爪部1a爪部1bを挿入しにくい場合がある、その場合は柄部3を動かさず、操作レバー7の操作で容器の縁部に一対の爪部1a爪部1bを挿入させた後、操作レバー7でさらに傾斜させて爪部1a爪部1bが容器の縁部に圧着することで、容器が爪部から外れることなく入手できることを可能にした。
【0021】
また、容器を入手するだけでなく、手元の容器の縁を引っ掛け部1の爪部1a爪部1bの隙間に挿入させたのち容器が爪部1a爪部1bに圧着するように柄部3を動かして容器を爪部1aと爪部1bに圧着させて、容器が爪部1a爪部1bから落ちない状態にすれば、容器を離れた場所に設置することができる。また、容器を置いたのち柄部を動かすのが難しい場合でも操作レバー7を回転操作することで引っ掛け部1の傾斜を変えて一対の爪部1a爪部1bを容器から外すことができるようにした。
【0022】
図7、8に示したように柄部の基端部の操作レバー7を回転操作するだけで、柄部内に収容した雄ねじ棒6の回転の動きがねじ機構によって、伝達棒4の前進後退の動きに転換されて、その前進後退の動きで引っ掛け部1を傾斜させるので、ねじ機構により細かい角度調整が出来るのに加え、操作レバー7の操作を止めると引っ掛け部1の傾斜を固定出来る。すなわち、引っ掛け部1の傾斜を固定するためのストッパーなどの機構を別途要しない。ストッパーを要せず、ねじ機構を設けるだけなので重量が軽減し、コストも削減出来た。また、引っ掛け棒の使用方法が操作レバー7の回転操作のみで出来るので操作レバー7を把持することなく指などで回転操作できるようにしたので手に障害を持った人でも指の操作で容器を取得できるようにした。
【0023】
図1,
図2の引っ掛け棒は伝達棒4を回動自在に引っ掛け部1に連結した引っ掛け棒の説明であるが、引っ掛け部1と柄部3を回動自在に接続した接続部2に伝達部4を回動自在4bに接続しても手元の操作レバーの操作が引っ掛け部を傾斜させることが出来る引っ掛け棒を提供できる(
図6参照)。この形態では、伝達棒4が接続部2を介して引っ掛け部1に回動自在に連結しており、したがって、伝達棒4が引っ掛け部1に回動自在に連結していることに変わりはない。
【0024】
この引っ掛け棒は、対向する一対の爪部1a爪部1bに容器の縁部を引っ掛けて、容器の重さを利用して爪部1a爪部1bに圧着することによって容器を入手することができる。このため、この引っ掛け棒は、爪部1a爪部1bに引っ掛けることが可能な容器であれば容器でなく物体でも入手することができる。また、この引っ掛け棒は、爪部1a爪部1bを容器の縁部に圧着させて容器を入手するので、把持することができないような繊細な物体でもあってもその物体が、容器に収納することが可能であれば物体を入手することができる。また、容器は、爪部1a爪部1bに容器の縁部が引っ掛かり、容器を持ち上げた時に容器の外側面が容器に収納されている物体の重さに耐えるだけの強度があればよい。また、容器の形体も、縁部が爪部1a爪部1bに引っ掛かることが可能な容器であれば多種多様の材質や形体の良い。ただ容器を入手することができるが、容器が滑り易い材質でつくられている場合、爪部1a爪部1bの表面には滑りにくい材質を用いた方がより安全な取得に繋がると思われる。
【符号の説明】
【0025】
1 引っ掛け部
1a爪部
1b爪部
2 引っ掛け部と柄部の接続部
3 柄部
3a柄部の基端部と雄ネジ部支持部
4 伝達棒
4a伝達棒と引っ掛け部の可動連結部
4b引っ掛け部と柄部の接続部に連結した伝達棒
5 伝達棒と雄ねじ部の篏合接続部
5a伝達棒の内側の雌ねじ部
6 雄ねじ棒
6a柄部基端部の雌ねじ部
7 操作レバー
【要約】
【課題】 上述の従来の方法では、踏台や脚立を利用する場合は転倒する可能性があって危険性を伴う。そして狭い場所では踏台や脚立を安定して設置することができない場合もあって不便である。また、車椅子利用者や足に障害がある人にとっては、踏台や脚立の利用は無理であるため、自力で入手するのは不可能であった。
【解決手段】隙間を介して対向する一対の爪部を有する引っ掛け部と、引っ掛け部から延びる柄部とを備え、柄部に対する引っ掛け部の角度を調節出来るようにした操作レバーを柄部の基端部に備えた事で、様々な高さに置かれた容器を入手及び設置可能にした。
【選択図】
図1