特許第6781978号(P6781978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781978
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】立体物造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/236 20170101AFI20201102BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20201102BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20201102BHJP
【FI】
   B29C64/236
   B33Y30/00
   B33Y50/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-79318(P2016-79318)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-189885(P2017-189885A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】309026303
【氏名又は名称】株式会社 ミタテ工房
(73)【特許権者】
【識別番号】516110479
【氏名又は名称】柚山 精一
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】見舘 昭治
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/141782(WO,A1)
【文献】 特開2015−199195(JP,A)
【文献】 特開2016−022641(JP,A)
【文献】 特開2009−160859(JP,A)
【文献】 特開2008−18494(JP,A)
【文献】 特開平10−272570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00 − 99/00
B25J 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを用いて分割された領域ごとに層を造形して立体的な造形物を造形するようにした立体物造形装置において、
前記造形物を造形するための設計データを抽出して、二次元層を造形するための領域を分割する分割手段と、
当該分割手段によって分割された領域ごとに各ノズルを駆動させる駆動手段とを備え、
前記駆動手段を、一対の平行なリニアガイドと、当該一対のリニアガイドに跨るように設けられた複数の縦軸ガイドとを有するように構成するとともに、
当該縦軸ガイドに、それぞれ独立して駆動可能な複数のノズルを設け、
前記リニアガイドおよび縦軸ガイドに沿って、前記縦軸ガイドに設けられた複数のノズルを駆動させるようにしたことを特徴とする立体物造形装置。
【請求項2】
前記分割手段が、下層の分割領域における境界部分と境界部分を一致させないように二次元層の領域を分割させるようにしたものである請求項1に記載の立体物造形装置。
【請求項3】
前記分割手段が、二次元層の水平面内で直交するX軸方向とY軸方向のそれぞれの境界部分をずらすように上層の分割領域を設定するようにしたものである請求項1に記載の立体物造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンターと称される立体物造形装置に関するものであり、より詳しくは、複数のノズルを用いて同時並行的に造形物を造形できるようにした立体物造形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、3Dプリンターと称される立体物造形装置は、熱溶解積層法(FDM法)や光造形法(STL法)、粉末焼結法(SLS法)などを用いて造形物を造形するものが一般的に普及している。このうち、熱溶解積層法は、熱で溶かした樹脂をノズルから噴出させて1層ずつ積み上げていくものであり、光造形法は、紫外線の照射で硬化する光硬化性樹脂をノズルから噴出させて紫外線レーザーを照射させ、これによって成形された層を順次積み上げて行くようにしたものである。また、粉末焼結法は、粉末状の材料に高出力のレーザー光線を照射して焼結させ、その焼結させた層を順次積層していくようにしたものである。
【0003】
ところで、このような立体物造形装置は、いずれも設計データを輪切りにした層(以下、二次元層と称する)の領域内でノズルを往復動させて造形された二次元層を順次積み上げることで三次元的な造形物を造形するようにしているが、現状では、各層を造形する際に非常に時間がかかるため、大きな造形物を造形する場合は数十時間もかかってしまう場合がある。
【0004】
このため、ノズルを複数設けてそれらを同時並行的に駆動させることで、一つの造形物を迅速に造形できるようにした方法も提案されている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1には、光造形法で造形物を造形する際に、ノズルを複数設け、それらを各駆動領域内で駆動させて二次元層を造形し、また、その際に各領域の境界部分のオーバーラップする部分に紫外線を照射させることで、境界部分を分かりにくくした立体物造形装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−199195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような複数のノズルで造形物を造形していく際、各ノズルの駆動領域が予め特定されているため、造形物の形状によっては、輪切りにされた二次元層のうち特定の領域のノズルのみが多く稼働し、それ以外のノズルが待機しなければならないような場合を生じうる。このため、ノズルを複数設けたとしても、そのノズルの数に比例して造形時間を短縮することができないといった問題を生じうる。
【0008】
また、このように予め特定された駆動領域でノズルを駆動させて二次元層を積層する場合、その領域の境界部分が上下に一致してしまうと、その境界部分が弱くなったり、あるいは、その造形物が水などを入れるような容器である場合は、その境界部分から水漏れしてしまうという問題も生ずる。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、複数のノズルを用いて分割された領域を並行して造形していく際に、可能な限り迅速に造形物を造形できるようにした立体物造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、複数のノズルを用いて分割された領域ごとに層を造形して立体的な造形物を造形するようにした立体物造形装置において、前記造形物を造形するための設計データを抽出して二次元層を造形するための領域を分割する分割手段と、当該分割手段によって分割された領域ごとに各ノズルを駆動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段を、一対の平行なリニアガイドと、当該一対のリニアガイドに跨るように設けられた複数の縦軸ガイドとを有するように構成するとともに、当該縦軸ガイドに、それぞれ独立して駆動可能な複数のノズルを設け、前記リニアガイドおよび縦軸ガイドに沿って、前記縦軸ガイドに設けられた複数のノズルを駆動させるようにしたことを特徴としたものである。
【0011】
また、このような発明において、下層の分割領域における境界部分と境界部分を一致させないように二次元層の領域を分割させるようにする。
【0012】
さらには、二次元層の水平面内で直交するX軸方向とY軸方向のそれぞれの境界部分をずらすように上層の分割領域を設定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のノズルを用いて分割された領域ごとに層を造形して立体的な造形物を造形するようにした立体物造形装置において、前記造形物を造形するための設計データを抽出して、二次元層を造形するための領域を分割する分割手段と、当該分割手段によって分割された領域ごとに各ノズルを駆動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段を、一対の平行なリニアガイドと、当該一対のリニアガイドに跨るように設けられた複数の縦軸ガイドとを有するように構成するとともに、当該縦軸ガイドに、それぞれ独立して駆動可能な複数のノズルを設け、前記リニアガイドおよび縦軸ガイドに沿って、前記縦軸ガイドに設けられた複数のノズルを駆動させるようにしたので、それぞれのノズルの駆動領域をオーバーラップさせることができ、造形時間を短縮することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態における立体物造形装置のノズルの配置状態を示す図
図2】同形態における縦軸ガイドに複数のノズルを設けた図
図3】同形態における機能ブロックを示す図
図4】同形態における二次元層と分割領域の境界部分を示す図
図5】同形態における分割領域をずらした状態を示す図
図6】同形態における動作のフローチャートを示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を示す立体物造形装置1について図面を参照して説明する。
【0016】
この実施の形態における立体物造形装置1は、図3の機能ブロック図に示すように、立体物を造形するための設計データを受け付けて記憶させる記憶手段2と、この記憶手段2に記憶された設計データを読み出して二次元層を造形するための二次元層データを生成する駆動データ生成手段3と、この二次元層データを各ノズル51A〜Dの駆動領域に対応する分割領域S1〜S5(図4参照)に分割する分割手段4と、この分割手段4で分割された二次元層データに従って複数のノズル51A〜Dを駆動させる駆動手段5とを備えるようにしたものである。そして、特徴的に、図1などに示すように、ノズル51A〜Dを駆動させる際に、X軸方向に沿った一対のリニアガイド52を設けるとともに、そのリニアガイド52に跨るように複数の縦軸ガイド53をY軸方向に設け、これらのリニアガイド52と縦軸ガイド53に沿ってノズル51A〜DをX軸方向およびY軸方向に移動させるようにしたものである。そして、このようにノズル51A〜Dを移動させるようにすることで、ノズル51A〜Dの駆動領域をオーバーラップさせて、造形時間を短縮できるようにしたものである。以下、本実施の形態における立体物造形装置1の構成について詳細に説明する。
【0017】
まず、記憶手段2は、立体物を造形する際に必要となる設計データを記憶する。この設計データは、パソコンなどにインストールされた3DCADソフトウェアや3DCGソフトウェアなどを用いて作成される。この作成されたデータは細かい三角形の集合体に変換したSTL形式のデータとして保存される。
【0018】
駆動データ生成手段3は、この記憶手段2に保存されている設計データを読み出して、造形を指示する際に必要となるSTLデータを水平面に輪切りにした二次元層データを作成して、駆動手段5に出力する。
【0019】
この駆動手段5は、この駆動データ生成手段3から出力された二次元層データに従ってノズル51A〜Dを移動させ、先端から材料を噴出させて二次元層を造形していくように構成される。この造形方法としては、前述のような熱溶解積層法(FDM法)や光造形法(STL法)、粉末焼結法(SLS法)などを用いることができるが、ここでは熱溶解積層法を用いるものとする。この駆動手段5で二次元層を造形する場合、図1に示すように、複数のノズル51A〜DにABS樹脂やPLA樹脂などの熱可塑性樹脂を溶解して供給し、その溶解された樹脂をノズル51A〜Dの先端から噴出させるようにする。これらのノズル51A〜DはX軸方向、Y軸方向に移動させる駆動機構50に取り付けられており、二次元層データに基づいてX軸方向やY軸方向にノズル51A〜Dを駆動させて熱可塑性樹脂を噴出させる。そして、この二次元層の造形が終了した後に、ノズル51A〜DをZ軸方向に移動させ、上層の二次元層データに基づいて同様に二次元層を造形していくようにする。
【0020】
この駆動機構50は、ステージの対向する側辺に設けられた一対のリニアガイド52そのリニアガイド52に直交するように跨って設けられる複数の縦軸ガイド53とを有し、そのリニアガイド52に沿って縦軸ガイド53をモーター(図示せず)でX軸方向に移動させるとともに、縦軸ガイド53に沿ってノズルをY軸方向にモーター(図示せず)で移動させられるように構成されている。このノズルは、図1示すように、縦軸ガイド53に一つ設けるようにしてもよいし、あるいは、図2示すように縦軸ガイド53に複数設けてそれぞれを独立に移動させるようにしてもよい。そして、この縦軸ガイド53をX軸方向に移動させることで、図1図2に示すように、隣接する縦軸ガイド53に設けられたノズル51A〜Dの駆動領域をオーバーラップさせるようにし、それぞれの領域内でX軸方向に分割して二次元層を造形できるようにする。なお、縦軸ガイド53に複数のノズルを設ける場合は、さらに、Y軸方向にも分割して二次元層を造形することができる。
【0021】
このような立体物造形装置1において、本実施の形態では、各ノズル51A〜Dに対応して二次元層の領域を分割させる分割手段4を設けるようにしている。
【0022】
この分割手段4は、各ノズル51A〜Dの移動範囲内で同時並行的に二次元層を造形できるように二次元層の領域を分割するとともに、下側に隣接する層の境界部分Bと一致させないように分割領域S1〜S5を設定するようにしている。
【0023】
この分割領域S1〜S5を設定する場合、二次元層データを読み出し、例えば、その造形される二次元層の分割して所定値の範囲内で同じになるようにする。そして、このように分割された二次元層領域のデータをそれぞれのノズル51A〜Dの駆動手段5に出力し、ノズル51A〜Dを最適な位置に移動させて二次元層を造形する。このように図形面積をほぼ同じとなるように二次元層の領域を分割すれば、各ノズル51A〜Dの駆動領域を平均化にして作業時間を短縮化できるようにする。
【0024】
次に、この層の上側の層を造形する場合、同様にして、その造形される二次元層をX軸方向に5分割して二次元層を造形していくが、この際、下層の分割領域S1〜S5の境界部分Bと一致させないように上層の分割領域S1〜S5を設定する。この上層の分割領域S1〜S5を設定する場合、下層の分割領域と同様に、図形面積が同じになるように分割領域を設定すると、境界部分Bが一致してしまう場合がある。このような場合は、その設定された境界をX軸方向に+δxだけずらし、また、縦軸ガイド53に複数のノズルを設けている場合は、Y軸方向にも境界を+δyだけずらすようにする。以下、同様にして上層の境界部分Bをずらすように設定していく。
【0025】
次に、このように構成された立体物造形装置1の動作フローについて図6を用いて説明する。
【0026】
まず、立体物を造形する際、パソコンを用いて設計された設計データを記憶手段2に記憶させておき、その記憶手段2に記憶された設計データを読み出す(ステップS1)。そして、駆動データ生成手段3を用いて最下層の二次元層データを生成し(ステップS2)、その生成された二次元層データから二次元層の図形面積が所定範囲内で同じになるように二次元層を分割する(ステップS3)。
【0027】
そして、このように分割された二次元層のデータを駆動手段5に出力し(ステップS7)、ノズル51A〜Dを駆動して二次元層を造形していく(ステップS8)。この際、ノズル51A〜DをX軸方向に移動させる場合、リニアガイド52の範囲内で縦軸ガイド53を移動させ、また、Y軸方向に移動させる場合は、縦軸ガイド53の範囲内で移動させる。
【0028】
次に、この二次元層の造形が完了した場合は、ステージを下降させるかノズル51A〜Dを上昇させ、同様に、設計データから二次元層データを生成して(ステップS1、S2)、二次元層データを分割する(ステップS3)。このとき、造形する層が2層目以降の場合は(ステップS4:Yes)、下層の分割領域S1〜S5の境界部分Bと一致しているか否かを確認し(ステップS5)、一致している場合は、境界部分をX軸方向に+δx、Y軸方向に+δyだけずらし(ステップS6)、一致していない場合は、その設定された分割領域S1〜S5を設定する。そして、このように設定された分割領域S1〜S5の二次元層データを駆動手段5に出力し(ステップS7)、二次元層を造形していく(ステップS8)。
【0029】
以下、同様にして境界部分Bを交互にずらしながら最終層まで積み上げていき(ステップS9)、最終的な立体的造形物を造形する。
【0030】
このように上記実施の形態によれば、複数のノズル51A〜D、51a〜dを用いて分割領域S1〜S5ごとに二次元層を造形して立体的造形物を造形するようにした立体物造形装置1において、立体的造形物を造形するための設計データを抽出して、二次元層を造形する領域を分割する分割手段4と、この分割手段4によって分割された分割領域S1〜S5ごとに各ノズル51A〜D、51a〜dを駆動させる駆動手段5とを備え、この駆動手段5を、一対の平行なリニアガイド52と、当該一対のリニアガイド52に跨るように設けられた複数の縦軸ガイド53とを有するように構成するとともに、当該縦軸ガイド53に、それぞれ独立して駆動可能な複数のノズル51A〜D、51a〜dを設け、前記リニアガイド3及び縦軸ガイド53に沿って、前記縦軸ガイド53に設けられた複数のノズル51A〜D、51a〜dを駆動させるようにしたので、駆動領域をオーバーラップさせることができ、造形時間を短縮することができるようになる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、熱溶解積層法で立体的造形物を造形するようにしたが、これ以外の法を用いて立体的造形物を造形する場合にも同様の構成を適用することができる。
【0033】
また、上記実施の形態では、二次元層を分割する場合、5分割するようにしたが、分割領域の数については2つであってもよいし、あるいは6つ以上であってもよい。また、分割領域の形状についてはどのような形状であってもよい。
【0034】
さらには、上記実施の形態では、各二次元層の図形面積がほぼ同じになるように領域を分割するようにしたが、各ノズル51A〜Dの駆動領域から外れた位置で二次元層を造形しなければならない場合は、そのノズル51A〜Dの駆動領域の範囲内で分割領域を設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・・立体物造形装置
2・・・記憶手段
3・・・駆動データ生成手段
4・・・分割手段
5・・・駆動手段
50・・・駆動機構
51A〜D、a〜d・・・ノズル
52・・・リニアガイド
53・・・縦軸ガイド
S1〜S5・・分割領域
B・・・境界部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6