特許第6782014号(P6782014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6782014-逆止弁、及び、流動性補修材注入器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782014
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】逆止弁、及び、流動性補修材注入器
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   E04G23/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-19844(P2017-19844)
(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公開番号】特開2018-127782(P2018-127782A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】595124158
【氏名又は名称】原化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】原 琢磨
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−159349(JP,A)
【文献】 特開2015−078573(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3155053(JP,U)
【文献】 米国特許第5881523(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
B05C 5/00− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の注入器に用いられるものであり、前記注入器の筒体内に挿入される胴体を備えた逆止弁であって、
前記胴体が、
前記胴体の先端面に開口するスリットと、
前記胴体が前記筒体内に挿入された状態で、前記胴体の先端部側面において前記筒体の内側周面と接触して前記スリットの幅方向に押圧される部分である被押圧部と、
前記被押圧部が前記筒体の内側周面と接触している状態で、前記胴体の先端部側面において前記筒体の内側周面に対して所定距離離間している部分である逃げ部と、を備え、
前記逃げ部が、前記胴体の先端部側面において前記スリットの長さ方向と交差するように配置されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記スリットが、前記胴体の先端面内で開口するように形成されている請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】
前記先端面に対して垂直な方向から視た場合に、前記被押圧部が前記胴体の先端部側面において前記スリットを幅方向に挟むように一対配置されている請求項1又は2記載の逆止弁。
【請求項4】
前記被押圧部が、前記胴体の先端部側面における概略部分円筒側面である請求項1乃至3いずれかに記載の逆止弁。
【請求項5】
前記先端面に対して垂直な方向から視た場合に、前記逃げ部が前記胴体の先端部側面において前記スリットを長さ方向に挟むように一対配置されている請求項1乃至4いずれかに記載の逆止弁。
【請求項6】
前記逃げ部が、前記スリットの長さ方向の中点を中心として前記被押圧部よりも半径方向内側に配置された前記胴体の先端部側面である請求項1乃至5いずれかに記載の逆止弁。
【請求項7】
前記胴体の基端側から半径方向に広がり、前記筒体に溶着される溶着部をさらに備えた請求項1乃至6いずれかに記載の逆止弁。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の逆止弁と、
前記逆止弁が取り付けられる前記筒体と、を具備する注入機構を備え、
前記注入機構が、前記逆止弁に流動性補修材供給源と接続され、補修対象へ流動性補修材を注入するように構成された流動性補修材注入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリート構造物や壁等に発生したクラック等の補修対象に流動性補修材を注入するための流動性補修材注入器等に用いられる逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等において内部まで進展したクラックを補修する場合、接着剤等の流動性補修材を外表面のクラック開口から内部まで行き渡らせるには、流動性補修材に所定の圧力をかけて注入する必要がある。
【0003】
このような接着剤の注入作業には特許文献1で示されるような注入器が用いられる。具体的にこの注入器は、先端が補修対象であるクラックの開口を塞ぐように取り付けられ、基端が接着剤の供給源であるグリスガン等が接続口に接続される注入機構と、前記注入機構から分岐し設けられる蓄圧機構とを備えたものである。
【0004】
このような注入器の注入機構に対してグリスガンを接続して接着剤をクラック内へ注入すると、クラック内の流路抵抗により注入される接着剤の一部が前記注入機構から前記蓄圧機構内に流入する。
【0005】
前記注入機構からグリスガンがはずされて接着剤をクラック側に押圧する力がなくなると、クラック内部で高圧となった接着剤が逆流して外部へ出ようとするが、前記蓄圧機構において圧縮された気体が仕切り部材を前記注入機構側へと押圧し、前記蓄圧機構内の接着剤がクラック側へと流入するように構成されている。
【0006】
前記注入機構の接続口からグリスガンが外された状態でも前記注入機構内において高圧となった接着剤が当該接続口から外部へと漏れださないようにして、クラック内へと接着剤が流入し続けるようにするために前記注入機構は筒体内に挿入されて取り付けられた逆止弁により接続口が形成されている。
【0007】
この逆止弁は、軟質の樹脂材で成型されたものであり、前記筒体内に挿入される円筒状の胴体と、前記胴体の基端側において半径方向外側に広がり、前記筒体に対して溶着される溶着部とを備えたものである。前記逆止弁の前記胴体は先端側が閉口した状態で成型された後、その先端部を刃物で切断することでグリスガンを挿入するためのスリットが形成される。
【0008】
ところで、前記逆止弁は軟質の樹脂材で形成されているため、スリット形成時には胴体が変形しないように治具で固定する等して切断作業を行わなくてはならない。このため、逆止弁の製造に係る手間や製造コストが低減しにくい。かといって、治具等を用いずに前記胴体を切断しようとすると、胴体が変形して所望の位置や大きさのスリットを形成できず、歩留まりが悪くなってしまう。
【0009】
また、予めスリットが形成されるように樹脂成型することも考えられるが、円筒形状の胴体の先端面にスリットを形成した場合、前記筒体に前記胴体を挿入しただけでは十分にスリットが閉じられず、前記注入機構内において接着剤が高圧となると前記逆止弁から外部への漏れが発生することがある。加えて、例えば前記筒体の内径に対して円筒状に形成された前記胴体の先端部の外径を大きくし過ぎると、穴が強く閉じられるようになる可能性はあるものの今度はグリスガンの先端を逆止弁に対して挿入するのに抵抗が強くなりすぎてしまい、使い勝手が悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−004205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、樹脂成型によりスリットを形成して製造コストを低減しつつ、スリットを強く閉じて筒体内の高圧の流動性補修材が逆流するのを防ぐことができ、外側から筒体内へは小さい力でグリスガン等を差し込むことができる逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る逆止弁は、筒体内に挿入される胴体を備えた逆止弁であって、前記胴体が、前記胴体の先端面に開口するスリットと、前記胴体が前記筒体内に挿入された状態で、前記胴体の先端部側面において前記筒体の内側周面と接触して前記スリットの幅方向に押圧される部分である被押圧部と、前記被押圧部が前記筒体の内側周面と接触している状態で、前記胴体の先端部側面において前記筒体の内側周面に対して所定距離離間している部分である逃げ部と、を備え、前記逃げ部が、前記胴体の先端部側面において前記スリットの長さ方向と交差するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、前記逃げ部があるので前記被押圧部が前記筒体の内側周面により押されて前記スリットを幅方向に閉じるように前記胴体の先端部が変形すると、その一部が前記逃げ部側へと逃げることができる。このため、前記スリットは長さ方向に押圧されることがなく、前記スリットの端部に変形による微小穴が形成されないようにすることができる。したがって、前記胴体の先端面にある前記スリットの全体を強く閉じることができるので、前記逆止弁の先端側にある高圧の流動性補修材による逆流が生じないようにすることができる。さらに筒体の内部へ流動性補修材を注入する際に前記逆止弁に対してグリスガン等を差し込む場合には、前記逃げ部側へ前記胴体の一部が移動できるのでそれほど力を入れなくても差し込むことができる。
【0014】
また、本発明に係る逆止弁であれば例えば先端面を貫通するような簡単な形状でスリットを樹脂成型することができる。したがって、樹脂成型後に前記胴体に対して刃物を用いた切断により前記スリットを形成する必要がなく、加工の手間や製造コストを低減できる。
【0015】
前記スリットを簡単な構造の金型を用いて樹脂成型できるようにするには、前記スリットが、前記胴体の先端面内で開口するように形成されていればよい。
【0016】
前記胴体を前記筒体内へ挿入しただけで前記スリットを幅方向に強く挟み込み閉じられる力を大きくするには、前記先端面に対して垂直な方向から視た場合に、前記被押圧部が前記胴体の先端部側面において前記スリットを幅方向に挟むように一対配置されていればよい。
【0017】
前記被押圧部での前記筒体の内側周面との接触面積を大きくし、より強い力が前記スリットの幅方向に対して掛かるようにするには、前記被押圧部が、前記胴体の先端部側面における概略部分円筒側面であればよい。
【0018】
前記被押圧部からの力により前記胴体の先端部における前記スリットの長さ方向への変形が極力妨げられないようにし、前記スリットを長さ方向に挟み込む方向へ力が発生しないようにするには、前記先端面に対して垂直な方向から視た場合に、前記逃げ部が前記胴体の先端部側面において前記スリットを長さ方向に挟むように一対配置されていればよい。
【0019】
前記筒体内に前記胴体が挿入された後においても前記逃げ部が前記筒体の内側周面に対して接触しないようにするための具体的な構成としては、前記逃げ部が、前記スリットの長さ方向の中点を中心として前記被押圧部よりも半径方向内側に配置された前記胴体の先端部側面であるものが挙げられる。
【0020】
前記筒体に対して前記逆止弁を強固に固定できるようにするには、例えば前記胴体の基端側から半径方向に広がり、前記筒体に溶着される溶着部をさらに備えたものであればよい。なお、前記筒体に対して前記逆止弁を固定する方法は溶着のみに限られるものではなく、その他の手段により固定するようにしてもよい。
【0021】
本発明に係る逆止弁と、前記逆止弁が取り付けられる前記筒体と、を具備する注入機構を備え、前記注入機構が、前記逆止弁に流動性補修材供給源と接続され、補修対象へ流動性補修材を注入するように構成された流動性補修材注入器であれば、製造の手間やコストを抑えながら、前記注入機構内の流動性補修材が高圧になった場合でも前記逆止弁を介した逆流を防ぐことができる。さらに、前記逃げ部があることにより逆止弁に対して例えばグリスガン等を差し込む際の抵抗についても小さくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明に係る逆止弁であれば、前記被押圧部により前記スリットは閉じられる方向に力を作用させながら、前記逃げ部により前記スリットが長さ方向に押し潰される力は発生させないようにすることができるので、前記スリットを幅方向に強く閉じることができる。さらに、グリスガン等を差し込む際の前記筒内における前記胴体先端部の変形は前記逃げ部により許容されるので、それほど力を加えなくても楽に差し込むことができる。また、例えば前記スリットを先端面だけを貫通させるような単純な形状にすることができるので樹脂成型により予め前記スリットを形成でき、加工に係る手間や製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る逆止弁を備えた流動性補修材注入器の模式的斜視図。
図2】同実施形態における流動性補修材注入器の模式的分解図。
図3】同実施形態における逆止弁の模式的斜視図。
図4】同実施形態における逆止弁の六面図。
図5】同実施形態における逆止弁が筒体内に挿入された状態を示す模式的断面拡大図。
図6】同実施形態における筒体内に逆止弁が挿入された状態でグリスガンが差し込まれた状態を示す模式的断面拡大図。
図7】同実施形態における流動性補修材注入器の注入動作を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る逆止弁及びそれを用いた流動性補修材注入器について各図を参照しながら説明する。
【0025】
本実施形態の流動性補修材注入器は、土木工事等においてコンクリート構造物C等に生じた補修対象であるクラックAOに流動性補修材として接着剤Lを注入する補修作業に用いられる接着剤注入器100である。より具体的には図1の斜視図に示すようにこの接着剤注入器100は、コンクリート構造物CにおいてクラックAOが外表面に開口している部分に固定されて、接着剤Lの供給源であるグリスガン等の仲介をする。そして、この接着剤注入器100を構成する部品は金属を使用せずに樹脂により形成されており、使用後は分別等を行うことなくそのまま全体を廃棄できるようにしてある。
【0026】
この接着剤注入器100は、補修対象のあるコンクリート構造物C等に対して垂直に取り付けられる部分であり、グリスガンからクラックAOへと接着剤Lが流通する注入機構INと、前記注入機構INに対して直交するように分岐させて設けてあり、グリスガンにより接着剤Lが注入されている時に接着剤Lの一部が内部へ流入して内部の気体Gが圧縮されるように構成してある蓄圧機構TNとからなるものである。
【0027】
図1の斜視図に示すように前記注入機構INは、この接着剤注入器100において細円筒状の部分であり、基端に接着剤供給源であるグリスガンに接続される接続口CPが形成してあり、先端にクラックAOと対向して取り付けられ、当該クラックAOへ接着剤Lを注入する注入口IPが形成してある。
【0028】
より具体的には、図2の分解図に示すように前記注入機構INは、前記注入口IPが形成されており、クラックAOのあるコンクリート構造物Cに取り付けられる座金1と、先端が前記座金1に取り付けられ、側面に前記中空容器4が接続された筒体2と、前記筒体2の基端側に挿入されており、前記接続口CPを形成する逆止弁3とから構成してある。
【0029】
前記座金1は、中央部に前記注入口IPが開口する薄円板部11と、その注入口IPを囲い前記薄円板部11の上面に対して垂直に突出した円筒部12とからなる。前記薄板円板部11の下面外周部は、クラックAOの開口している周囲の壁面に固定材Fにより粘着されて固定される。この固定材Fは圧縮又は引っ張り方向には強い粘性を示すが、せん断方向には弱い粘性を示すためクラックAO内に接着剤Lを注入した後で前記接着剤注入器100を取り外す際には、壁の表面に沿った方向に移動させることで容易に取り外すことができる。前記円筒部12は中空であって、内部に前記筒体2と螺合するめねじが切ってある。
【0030】
前記筒体2は、図3に示すように前記円筒部12よりも細い中空円筒状のものであり、基端側には前記逆止弁3において平円板リング状に形成された溶着部31が例えば熱溶着される台座部23が形成してある。なお、溶着部31は台座部23に対して溶着してあればよく、熱溶着以外の方法で溶着させてもよい。そして、この筒体2の内部では前記逆止弁3の胴体32が収容される。また、前記筒体2の先端の外側周面に前記円筒部12と螺合するおねじ21が切ってある。さらに、前記筒体2は図2(b)の断面図に示すようにその側面中央部であり、前記逆止弁3が収容された状態でその先端近傍に前記蓄圧機構TN内と連通する連通孔22が形成してある。この筒体2の内部は基端側から先端側に進むにつれて先細るように構成してあり、筒体2内で接着剤が硬化した場合には先端側から取り出せないように構成してある。また、前記台座部23に対しては前記逆止弁3の溶着部31が熱溶着されているので基端側からも硬化した接着剤は取り出すことはできない。仮に逆止弁3を無理に前記筒体2から取り外した場合には当該逆止弁3は固定されずその機能が発揮されないため前記筒体2からクラックAO内に対して接着剤に圧力をかけて注入することができなくなる。したがって、筒体2内において余った接着剤が硬化するほど放置されていた場合には前記接着剤注入器100を再利用することはできず、古い接着剤と新しい接着剤が混ざった状態でクラックAO内に注入されて低品質の補修工事が実施されることを未然に防ぐことができる。
【0031】
前記逆止弁3はグリスガンが差し込まれた状態ではその胴体32の先端面に形成されたスリット33が開き、前記筒体2内へ接着剤Lが流通するが、グリスガンが外された状態では前記スリット33が閉じられて、筒体2内の接着剤Lが接続口CPから外部へと流出しないように構成してある。この逆止弁3はエラストマー等の柔軟性を有した樹脂で形成してある。また、前記胴体32における先端部の最大外径は、筒体2の内径よりも大きく設定してある。さらに、前記台座部23に対して前記溶着部31のみを溶着するので、前記筒体2に対して前記逆止弁3により気密を保ちながら固定して組み付けしやすい。
【0032】
次に前記逆止弁3の詳細な構造について図3乃至図6を参照しながら説明する。なお、図4の六面図については、左側面図は右側面図と対称に表れるために省略してあり、背面図は正面図に対して対称に表れるため省略してある。また、図4にはA−A線断面図も記載してある。図3の斜視図、及び図4の六面図に示されるように前記逆止弁3は、先端が閉鎖された筒状に形成された前記胴体32と、前記胴体の基端から半径方向に広がるように概略円板状に形成された前記溶着部31とを備えている。
【0033】
前記胴体32は、基端から先端に進むにつれて若干外径が小さくなるようにテーパが形成された細円錐台形状を有している。前記胴体32の先端面内に開口するスリット33が形成してある。すなわち、このスリット33は図4の平面図及び底面図に示されるようにその切れ込みが前記胴体32の先端部側面には至らないように形成してある。図4の断面図に示されるように前記胴体32の先端部はほぼ中実となるように構成してあり、前記スリット33は前記胴体33の軸方向へ延びて、胴体32の内部底面に開口するようにしてある。前記スリット33は、樹脂成型時から前記胴体32の先端面に形成してあり、刃物による追加工によって形成しなくてもよいようにしてある。
【0034】
前記胴体32の先端部側面には前記筒体2に対して挿入された状態において前記筒体2の内側周面と接触する被押圧部34が一対対向するように形成してある。一対の前記被押圧部34は、図4の底面図に示されるように前記胴体32の先端面に対して垂直な方向から視た場合に、前記スリット33を幅方向に挟むように配置してある。これらの被押圧部34は、前記胴体32が前記筒体2に挿入された状態で前記スリット33を幅方向に挟み込む方向へ前記胴体32の先端部を押圧するように構成してある。また、前記被押圧部34は図3及び図4に示されるように部分円筒側面として形成してある。
【0035】
さらに前記胴体32の先端部側面には、前記被押圧部34よりも半径方向へ凹ませて形成した逃げ部35が形成してある。この逃げ部35は、図5に示されるように前記被押圧部34が前記筒体2の内側周面と接触している状態で、前記胴体32の先端部側面において前記筒体2の内側周面に対して所定距離離間するように構成してある。本実施形態では図4の底面図に示されるように前記逃げ部35は前記胴体32の先端部側面において前記スリット33の長さ方向と交差するように一対配置してある。すなわち、前記胴体32の先端面に対して垂直な方向から視た場合に一対の逃げ部35は前記スリット33を長さ方向に対して挟み込むように形成してある。本実施形態では逃げ部35の側面は角柱の側面をなすようにしてあり、前記スリット33の延伸方向との交点に角中の角が配置されるようにしてある。すなわち、スリット33の端部から逃げ部35の壁面までの間が一定距離離してあり、スリット33が形成される位置が多少ずれてもスリット33の端部が則壁面まで到達することがないようにしてある。また、前記逃げ部35は、前記スリットの長さ方向の中点を中心として前記被押圧部34よりも半径方向内側に配置してある。
【0036】
このように構成された逆止弁3による作用及び効果について説明する。図5の逆止弁3が前記筒体2内に挿入された状態での断面拡大図に示すように前記胴体32が前記筒体2内に挿入されると前記被押圧部34は前記筒体2の内側周面に接触し、半径方向内側へと押圧されることになる。すると前記胴体32の先端部は半径方向内側へと圧縮されて、前記スリット33が幅方向に閉じられるように変形する。この際、胴体32の先端部の一部は被押圧部34からの力に対して垂直な方向にある前記逃げ部35側へと膨出することなる。この状態においても図5(a)のB−B線断面図である図5(b)に示されるように逃げ部35は前記筒体2の内側周面には接触しない。したがって、前記胴体32の先端部は前記スリット33の長さ方向に圧縮する力を受けない。このように前記スリット33の幅方向を閉じる力しか受けていないので前記スリット33を密着させて強く閉じることができる。また、このような状態で前記スリット33を長さ方向に圧縮するような力が同時にかかることによって前記スリット33がひしゃげて当該スリット33の端部に微小な開口が形成されることがない。
【0037】
一方、図6に示されるように前記接続口CPを介してグリスガンGGがスリット33に差し込まれた場合には、前記胴体32の先端部の一部は前記逃げ部35側へと押し出される。このため、グリスガンGGを差し込むことによる胴体32の先端部における更なる圧縮変形は軽減されるため、グリスガンGGの先端はそれほど力を込めて差し込まなくても前記筒体2内まで到達させることができる。図5及び図6に示されるように、前記被押圧部34と前記逃げ部35が前記胴体32の先端部に形成されていることにより、前記筒体2内において高圧となった接着剤Lが逆止弁3を介して外部に漏れないように密閉しつつ、外側から逆止弁3へグリスガンGG等を差し込む際の抵抗は小さくすることができる。
【0038】
また、前記注入機構INを構成する、前記座金1、前記筒体2、及び、前記逆止弁3はそれぞれの中心軸が一直線上で合致するように構成してあるので、前記接続口CPに接続されたグリスガンからクラックAOに向かって接着剤Lが押し出された際に、その力をほとんどロスすることなく伝達させることができる。したがって、クラックAO内に埃や砂粒等で閉塞されている箇所があったとしても、接着剤Lの圧力により飛ばしながらクラックAO内のすみずみまで接着剤Lを行きわたらせることができる。
【0039】
次に前記蓄圧機構TNについて説明する。
【0040】
前記蓄圧機構TNは、図1及び図2に示すように前記接着剤注入器100において太円筒部分に相当するものであり、基端が前記注入機構INに取り付けられ、先端が開口した中空筒4と、前記中空筒4内においてその基端及び先端の間をがたなく摺動可能に設けられた仕切り部材5と、前記中空筒4の先端部を気密に封止する蓋体6とを具備するものである。すなわち、この蓄圧機構TNは前記中空筒4と前記蓋体6の2つの分割されたパーツで構成してある。また、前記中空筒4は、前記筒体2と組み合わされた状態で、1つのパーツとして一体成型してある。さらに、前記中空筒4は、前記筒体2に対して直交するように設けてあり、クラックAOから見て前記筒体2の基端と前記中空筒4の反クラック側の側面が略同じ高さにあるようにしてある。
【0041】
また、本実施形態では前記中空筒4の先端側外側周面と前記蓋体6との間には雄ねじ71と雌ねじ72からなる螺合構造7が形成してあり、前記蓋体6は前記中空筒に対して軸方向に進退可能に構成してある。このため、前記蓋体6を回転させることで前記蓋体6の前記中空筒4内における突出量を変更し、前記中空筒4内における前記仕切り部材5と前記蓋体6との間の気体の圧力を加圧又は減圧できる。
【0042】
前記中空筒4は概略中空円筒形状をなす透明樹脂によりその内部が透けて見えるように構成したシリンダである。図1及び図2に示すようにこの中空筒4の外側周面には基端側から先端側へと目盛が付してあり、前記注入機構INから当該中空筒4内に流入した接着剤Lの量が目視で分かるようにしてある。また、この中空筒4の先端側には前記蓋体6が取り付けられる雄ねじ71が形成してある。前記中空筒4の先端部と前記注入機構INの側面との間を連通する連通孔は中空筒4の基端面の中心に開口させてあり、前記仕切り部材5により押し出される接着剤Lが注入機構IN内へスムーズに流入するようにしてある。
【0043】
前記仕切り部材5は、前記中空筒4の内側周面と気密に篏合するものであり、当該中空筒4の内径と略同じ直径を有した概略扁平中実円筒状のピストンである。この仕切り部材5は注入開始時に前記中空筒4の基端に略密着した状態となるように取り付けてあり、前記注入機構INに接続されたグリスガンGGにより接着剤Lの注入が開始されて、前記中空筒4内にも接着剤Lが入ってくると中空筒4の先端側へと移動していくようにしてある。この際、前記中空筒4内は前記仕切り部材5により仕切られているので、中空筒4内の先端側には気体Gのみが存在し、中空筒4内の基端側にのみ接着剤Lがある状態になる。つまり、前記中空筒4内に封入されていた気体Gは前記仕切り部材5があるために前記注入機構IN側にある接着剤L内へは漏れ出ない。したがって、接着剤L内に気泡が発生することもなく、クラックAO内で「す」が入った状態で接着剤Lが固まるような不十分な補修結果となることを防げる。
【0044】
また、この仕切り部材5の厚みについては、前記連通孔22から接着剤Lが前記中空筒4内に流入して押された際に当該仕切り部材5が倒れず、その平板部分が前記中空筒4の半径方向断面と平行となった姿勢のままで摺動するように設定してある。
【0045】
前記蓋体6は、前記中空筒4の内部において先端から基端側へ一部を突出させた状態で取り付けられるとともに、その突出量が任意に変更できるように構成してある。また、この蓋体6により前記中空筒4内の先端側、すなわち前記中空筒4内において前記仕切り部材5と前記蓋体6との間は気密に封止されるようにしてある。
【0046】
より具体的には、図2の断面図に示すように前記蓋体6は、前記中空筒内へ挿入される中栓体61と、前記中栓体61と外側端に接続され、前記中空筒の外側周面を覆うように設けられる外筒62と、を具備する二重管構造を有するものである。
【0047】
前記中栓体61は、概略中空円筒状でその外径が前記中空筒4の内径とほぼ同じもしくは若干大きく形成してある。前記中栓体61の外側周面には半径方向外側に吐出する複数の凸条63が形成してある。前記凸条63は前記中空筒4に形成されている雄ねじ71のねじ山間の距離とほぼ同じ間隔で設けてある。ここで、樹脂成型により中空筒4の雄ねじ71を形成すると収縮により引けが生じ中空筒の内側周面において雄ねじ71の裏側に当たる部分が半径方向外側へ若干凹む部分が存在する。前記凸条63はこのような凹みがあっても前記中栓体61が中空筒4の内側周面に対して当接するので、気密性を保つことができる。
【0048】
前記外筒62は前記蓋体6が前記中空筒4に対して取り付けられた状態において前記中空筒4の先端側外側周面を覆うものであり、その内側周面には雌ねじ72が形成してある。前記外筒62は前記中栓体61とほぼ同じ軸方向長さを有しており、同心軸状に配置してある。また前記外筒62の外側周面には軸方向に延びるリブが複数等間隔で形成してあり、ユーザが手で掴んで滑らないように把持部が形成してある。
【0049】
前記螺合構造7は、前記中空筒4の外側周面に形成された雄ねじ71と前記蓋体6の外筒62の内側周面に形成された雌ねじ72とから構成してあり、ネジ山の幅がねじ溝の幅よりも小さく形成してある。言い換えると、本実施形態では雄ねじ71と雌ねじ72のネジ山は一方の側面のみが当接した状態で係合するようにしてある。このため、前記中空筒4内の気体が所定圧力に達していない状態では、前記蓋体6は回さなくても軸方向にスライド移動可能である。言い換えると、前記蓋体6により中空筒4内が十分に加圧され、接着剤LがクラックAO内へと導入されるのに適した圧力がかかっているかどうかについてユーザは蓋体6を軸方向に押し込んだ時の触感等でも簡単に確認できる。また、仕切り部材5の動きによっても内部の圧力状態を把握でき、その管理が容易である。
【0050】
このように構成された本実施形態の接着剤注入器100の使用方法について図1図7を参照しながら説明する。
【0051】
まず、接着剤注入器は図1に示されるように壁等のクラック開口を塞ぐように取り付けられ、その後接続口CPにグリスガンが接続されて接着剤Lが注入される。なお、接着剤Lの注入開始前は図1に示されるように仕切り部材5は前記中空筒4の基端側にある。グリスガンからは少なくとも前記蓄圧機構TN内に所定量以上の接着剤Lが流入するようにして図7(a)に示されるように前記仕切り部材5は中空筒の先端側まで接着剤Lにより移動する。この状態になった時点でグリスガンは外される。この結果、仕切り部材5と前記蓋体6の中栓体61の先端との間にある気体は圧縮されて加圧された状態となり、前記仕切り部材5は中空筒4の先端側へと押されることになる。このため、クラックAO内の流路抵抗があったとしても中空筒4内の接着剤LはクラックAO内へ押し流されることになる。前記注入機構IN内の接着剤Lは高圧状態となっているが、前記被押圧部34及び前記逃げ部35の作用により前記スリット33は強く閉じられているので、前記注入機構IN内から接着剤Lが外部へと逆流せずクラックAO内へのみ流入させることができる。
【0052】
しばらくすると図7(b)に示されるように前記蓄圧機構TN内の接着剤LがクラックAO内に流入して減少する事により前記中空筒4内において前記仕切り部材5と前記中栓体61との間の空間が拡大し、気体が減圧して接着剤Lが押される力が小さくなってしまう。
【0053】
接着剤注入器100内に残っている少量の接着剤LをクラックAO内にさらに充填してクラックAO内のすみずみまで接着剤Lを十分に行きわたらせるためにユーザは前記蓋体6を中空筒4に対して回転させることで中空筒4の基端側に移動させる。この結果、図7(c)に示されるように中空筒4内における仕切り部材5と中栓体61との間の空間は圧縮されて再び内部を加圧できる。このため、中空筒内に少量の接着剤Lが残っている場合でも再びグリスガンで接着剤Lを追い足ししなくてもクラックAO内へと注入することができる。
【0054】
加えて、接着剤注入器100を壁から外す場合には前記蓋体6を回転させて中空筒4の先端側へ移動させて解圧することで接着剤Lへの圧力を小さくし、取り外す際に注入口から接着剤Lが飛び散らないようにすることもできる。
【0055】
次に本実施形態の逆止弁3を具備する接着剤注入器100全体の効果について説明する。
【0056】
前記蓋体6が前記螺合構造7により前記中空筒4の軸方向に対して進退可能に設けられているので、前記中空筒4内の気体の圧縮状態を適宜変更してクラックAO内に接着剤Lを注入するのに適した圧力を保つことが工具等を用いずに簡単にできる。
【0057】
また、前記螺合構造7があるので前記中空筒4内の気体が圧縮されて抵抗力が大きくなってもそれほど大きな力を加えなくても前記蓋体6を前記中空筒4内へと押し込んでいくことができ、加圧に必要となる力を従来よりも小さくできる。加えて、本実施形態の逆止弁3はスリット33が強く閉じられるので、前記蓋体6により加圧して接着剤Lが高圧状態となっても前記逆止弁3から逆流して外部に漏れ出すことを防げる。
【0058】
さらに前記蓋体6は二重管構造を有しており、ユーザにより把持される前記外筒62と前記中栓体61の軸方向の位置をほぼ同じにすることができるので、前記蓄圧機構TNの軸方向長さを小さく形成することができ、全体の外形寸法を小さく構成することができる。このため、クラックが近接して複数ある場合でも前記接着剤注入器100を鑑賞させずに設けやすい。また、加圧や解圧するために前記蓄圧機構TNの先端側に別の工具や器具を取り付ける必要がないので、前記接着剤注入器100が近接して設けられている場合でも加圧や解圧の作業を行いやすい。
【0059】
本発明のその他の実施形態について説明する。
【0060】
前記実施形態では逆止弁3は被押圧部34と逃げ部35を一対ずつ備えていたが例えばスリット33に対して片側だけに設けるようにしても構わない。また、本発明に係る逆止弁は前記実施形態に示される注入器だけに用いられるものではなく、その他の種々の注入器に対して適用可能である。特に内部の液体や流動性補修材が高圧となる用途に対して好適に用いることができる。また、逆止弁自体を製造する手間やコストについても従来のものと比較して低減できる。
【0061】
被押圧部34及び逃げ部35の形状は前記実施形態に記載されたものに限られない。すなわち、前記被押圧部34は、前記胴体32が前記筒体2内に挿入された状態で、前記胴体32の先端部側面において前記筒体2の内側周面と接触して前記スリット33の幅方向に押圧される部分でよい。また、前記逃げ部35は、前記被押圧部34が前記筒体2の内側周面と接触している状態で、前記胴体32の先端部側面において前記筒体2の内側周面に対して所定距離離間している部分であればよい。より具体的には、被押圧部34が円筒側面以外の形状で例えば軸方向に延びる平面を有していてもよいし、前記逃げ部についても角柱状の壁面を有する者に限られず、例えば軸方向に延びる平面を有するものであってもよい。
【0062】
スリット33に対する被押圧部34及び逃げ部35の配置については前記実施形態に限られるものではない。すなわち、被押圧部34によるスリット33の押圧方向を示すベクトルがスリット33を幅方向に横切るようなものであればよい。また、前記逃げ部35についてもスリット33の長さ方向が前記逃げ部35と交差する、あるいは斜めに横切るように構成されていればよい。
【0063】
逆止弁3を筒体2に対して固定するための構造は溶着に限られるものではなく、その他の固定部材を用いて逆止弁3と筒体2とが一体となるように固定してもよい。
【0064】
螺合構造7については前記中空筒4と前記蓋体6との間に設けられていればよく、中空筒4の内側周面に雌ねじ72が形成され、蓋体6の中栓体61の外側周面に雄ねじ71を形成するようにしてもよい。また、中栓体61による気密性をより向上させるために中栓体61の内側端にパッキンを設けてもよい。
【0065】
前記蓋体6については、かならずしも二重管構造を有するものでなくてもよく、例えば中栓体の外側端からさらに外側に突出するようにユーザにより蓋体6を回転させるために把持される把持部を形成しても構わない。
【0066】
前記蓄圧機構TNは、前記注入機構INに対して直交して設けられたものでなく、斜めに取り付けられるものであってもよい。要するに、前記注入機構INから分岐して前記蓄圧機構TNが設けられるものであればよい。また、前記蓄圧機構TNを構成する前記中空筒4の形状は円筒管形状のみに限られるものではない。例えば、前記中空筒4を基端側が先端側よりも細い二段円筒形状にしてもよい。このようなものにすれば、前記注入機構INに対して前記中空筒4が突出している長さ寸法を短くして接着剤注入器100自体をコンパクトに構成することができる。しかも、前記蓋体6が取り付けられる際に中空筒4内に押し込む気体の体積も大きくできるので、前記実施形態と同等又はそれ以上に前記中空筒4内の気体を予圧しておくこともできる。
【0067】
前記実施形態では補修対象はクラックAOであったが、その他の補修対象に本発明を用いても構わない。また、流動性補修材の一例として接着剤Lを挙げたが、例えば、コーキング材等のその他のものにも本発明の流動性補修材注入器は用いることができる。また、流動性補修材供給源はグリスガンに限られるものではなく、例えばシリンジ等により人力で補修対象内に流動性補修材を注入するようにしてもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0069】
100・・・接着剤注入器(流動性補修材注入器)
IN ・・・注入機構
TN ・・・蓄圧機構
1 ・・・座金
11 ・・・薄円板部
12 ・・・円筒部
2 ・・・筒体
21 ・・・おねじ
22 ・・・連通孔
23 ・・・台座部
3 ・・・逆止弁
31 ・・・溶着部
32 ・・・胴体
33 ・・・スリット
34 ・・・被押圧部
35 ・・・逃げ部
4 ・・・中空筒
5 ・・・仕切り部材
6 ・・・蓋体
61 ・・・中栓体
62 ・・・外筒
63 ・・・凸条
7 ・・・螺合構造
71 ・・・雄ねじ
72 ・・・雌ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7