特許第6782020号(P6782020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6782020食品タンパク質結着剤、これを含む食品組成物及びこれを用いた食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782020
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】食品タンパク質結着剤、これを含む食品組成物及びこれを用いた食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20201102BHJP
   A23L 29/294 20160101ALI20201102BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20201102BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20201102BHJP
   A23L 13/40 20160101ALI20201102BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20201102BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20201102BHJP
【FI】
   A23L29/00
   A23L29/294
   A23J3/00 502
   A23J3/14
   A23L13/40
   A23L13/60 Z
   A23L17/00 101C
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-27014(P2018-27014)
(22)【出願日】2018年2月19日
(65)【公開番号】特開2019-140944(P2019-140944A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】391004126
【氏名又は名称】株式会社キティー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝木 宏之
(72)【発明者】
【氏名】金井 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 和将
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−238073(JP,A)
【文献】 特開2000−000079(JP,A)
【文献】 特開2000−060431(JP,A)
【文献】 食肉加工ハンドブック,1980年,pp.303-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−13/70
A23L 17/00−17/60
A23J 3/00−3/34
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食酢と、炭酸塩と、食塩と、アスコルビン酸類と、アスコルビン酸オキシダーゼとを含有することを特徴とする食品タンパク質結着剤。
【請求項2】
乳化剤、乳タンパク、卵白及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1成分を更に含有していることを特徴とする、請求項1記載の食品タンパク質用結着剤。
【請求項3】
上記食酢が醸造酢及び/又は合成酢であることを特徴とする、請求項1記載の食品タンパク質用結着剤。
【請求項4】
炭酸塩を3〜32重量%、食塩を0.5〜25重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項1記載の食品タンパク質用結着剤。
【請求項5】
請求項1〜いずれか一項記載の食品タンパク質結着剤と、タンパク質含有食材とを含む食品組成物。
【請求項6】
上記タンパク質含有食材は、畜肉、魚介肉及び植物に由来するタンパク質を含有する食材であることを特徴とする、請求項記載の食品組成物。
【請求項7】
上記タンパク質含有食材は、挽肉及び/又はすり身であることを特徴とする請求項記載の食品組成物。
【請求項8】
請求項1〜いずれか一項記載の食品タンパク質結着剤とタンパク質含有食材とを混合することを特徴とする食品の製造方法。
【請求項9】
上記食品タンパク質結着剤にタンパク質含有食材を浸漬処理することを特徴とする請求項記載の食品の製造方法。
【請求項10】
上記タンパク質含有食材は、畜肉、魚介肉及び植物に由来するタンパク質を含有する食材であることを特徴とする、請求項記載の食品の製造方法。
【請求項11】
上記タンパク質含有食材は、挽肉及び/又はすり身であることを特徴とする請求項記載の食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉等のタンパク質含有食材に適用され、当該タンパク質含有食材の結着性を向上させる品タンパク質結着剤、これを含む食品組成物及びこれを用いた食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結着剤とは、食品同士が互いに密着する性質を向上する又は付与するための添加剤である。例えば、結着剤としては、燐酸塩及びポリ燐酸塩類を主成分とするものが知られている。燐酸塩及びポリ燐酸塩類は、畜肉加工食品の肉質改良剤(保水性と弾力性の改良)としての高い効果に加え、肉に結着性を付与させる効果も優れている。よって、燐酸塩及びポリ燐酸塩類を主成分とする結着剤は、例えば、ハム、ソーセージ、ハンバーグなど広い範囲で利用されている。
【0003】
しかしながら、燐酸塩及びポリ燐酸塩を摂取することに起因する健康被害が懸念されており、燐酸塩及びポリ燐酸塩を主成分とする結着剤に代替する技術の普及が望まれている。燐酸塩等の代替となる結着剤としては、トランスグルタミナーゼが挙げられる。トランスグルタミナーゼを主成分とする結着剤は、現在もっとも利用されており、畜肉加工食品やかまぼこなどの水産練り製品、生めん類で結着性と弾力性とを持たせるために用いられている。しかしながら、トランスグルタミナーゼは、結着剤としての効果を得るための添加量、反応時間、反応温度及び反応pHの範囲が制限されており、使用方法が難しいといった問題があった。トランスグルタミナーゼを主成分とする結着剤は、このような使用条件を誤ると逆に食感を著しく悪化させるといった問題がある。特に、トランスグルタミナーゼを主成分とする結着剤は、温度と反応時間の相関が高く、使用の際の環境条件によって効果にバラつき生じるため、安定した効果を得ることが難しい。
【0004】
また、食品に含まれるタンパク質を結着させる可能性があるもう一つの方法として、デヒドロ-L-アスコルビン酸(DAsA)を使用する方法が報告されている。例えば、非特許文献1には、DAsAに肉質改良(保水性と弾力性の改良)の効果があることが報告されている。このような知見に基づいて、アスコルビン酸オキシターゼとL-アスコルビン酸(AsA)とを併用して食品中でDAsAを生成させ、その結果、肉質を改良させる方法が公知となっている(特許文献1及び2)。しかしながら、DAsAの食肉に対する肉質改良効果(保水性と弾力性の向上効果)及び結着効果は極めて弱いため、DAsAを主成分とする結着剤及びアスコルビン酸オキシターゼとAsAとを主成分とする結着剤は、ほとんど工業的に利用されていないのが現状である。
【0005】
ところで、食酢、炭酸塩、食塩を含む水溶液、或いは当該水溶液に有機酸(又は有機酸塩)を添加した水溶液を食肉へ含浸させることで、加熱調理後における歩留まりの向上、食感及び食味の改良に高い効果を有することが報告されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3に開示された肉質改良剤は、塊の食肉に含浸させるものであり、たんぱく質の結着効果は知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R. Yoshinaka, M. Shiraishi and S. Ikeda: Bull. Japan. Soc. Sci. Fish., 38, 511-515 (1972)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3831850号
【特許文献2】特許第3702709号
【特許文献3】特許第2912915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、タンパク質を含む食材を用いた食品において、安全性が高く、且つ結着効果に優れた結着剤が求められていた。そこで、本発明は、タンパク質を含む食材を用いた食品に対して優れた結着効果を奏し、且つ安全な結着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、食酢と、炭酸塩と、食塩とを含有する組成物にこれまで知られていなかった食品中のタンパク質を強く結着する効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下を包含する。
(1)食酢と、炭酸塩と、食塩とを含有することを特徴とする食品タンパク質結着剤。
(2)アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼをさらに含有していることを特徴とする、(1)記載の食品タンパク質用結着剤。
(3)乳化剤、乳タンパク、卵白及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1成分を更に含有していることを特徴とする、(1)記載の食品タンパク質用結着剤。
(4)上記食酢が醸造酢及び/又は合成酢であることを特徴とする、(1)記載の食品タンパク質用結着剤。
(5)炭酸塩を3〜32重量%、食塩を0.5〜25重量%の割合で含むことを特徴とする、(1)記載の食品タンパク質用結着剤。
(6)上記(1)〜(5)いずれか記載の食品タンパク質結着剤と、タンパク質含有食材とを含む食品組成物。
(7)上記タンパク質含有食材は、畜肉、魚介肉及び植物に由来するタンパク質を含有する食材であることを特徴とする、(6)記載の食品組成物。
(8)上記タンパク質含有食材は、挽肉及び/又はすり身であることを特徴とする、(6)記載の食品組成物。
(9)上記(1)〜(5)いずれか記載の食品タンパク質結着剤とタンパク質含有食材とを混合することを特徴とする、食品の製造方法。
(10)上記食品タンパク質結着剤にタンパク質含有食材を浸漬処理することを特徴とする、(9)記載の食品の製造方法。
(11)上記タンパク質含有食材は、畜肉、魚介肉及び植物に由来するタンパク質を含有する食材であることを特徴とする、(9)記載の食品の製造方法。
(12)上記タンパク質含有食材は、挽肉及び/又はすり身であることを特徴とする、(9)記載の食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る食品タンパク質結着剤は、既に食品へ利用され安全性が確認されている組成であって、且つ極めて優れた結着効果を奏することができる。したがって、本発明に係る食品タンパク質結着剤を利用することで、上記結着効果に起因して優れた食感の食品組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る食品タンパク質結着剤、これを含む食品組成物及びこれを用いた食品の製造方法を説明する。
【0013】
本発明に係る食品タンパク質結着剤は、食酢と、炭酸塩と、食塩とを主成分として含有する。
【0014】
本発明に係る食品タンパク質結着剤に使用される食酢としては、特に限定されず、醸造酢及び合成酢の何れであっても良い。醸造酢としては、特に限定されないが、例えば、リンゴ酢、ブドウ酢、シェリー酢及びバルサミコ酢等の果実酢、米酢、玄米酢、粕酢、麦芽酢及びはと麦酢等の穀物酢、並びに醸造アルコールを原料に製造されるアルコール酢を挙げることができる。また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸の希釈液に砂糖類、酸味料、調味料、甘味料及び食塩等を加えたもの若しくはそれらに醸造酢を加えたものを挙げることができる。本発明に係る食品タンパク質結着剤の食酢としては、特に醸造酢を使用することが好ましく、醸造酒のなかでも果実酢を使用することがより好ましい。
【0015】
また、本発明に係る食品タンパク質結着剤に使用される食酢としては、溶液状のものであっても良いし、粉末状のものであってもよい。溶液状の食酢としては、特に限定されないが、4〜5%程度の酸度(酢酸を初めとする酸成分全体の重量%)を含むものを使用することができる。なお、より酸度の高い食酢を、酸度が当該範囲となるように希釈して使用することもできる。また、粉末状の食酢としては、溶液状の食酢を噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結真空乾燥(フリーズドライ)、真空減圧乾燥又はドラム乾燥法などで作製したものを使用することができる。
【0016】
本発明に係る食品タンパク質結着剤に使用される炭酸塩は、食品添加物として利用される、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。例えば、炭酸塩として炭酸ナトリウムを使用する場合、無水物、一水和物及び十水和物の何れであっても良い。
【0017】
本発明に係る食品タンパク質結着剤に使用される食塩は、特に限定されず、塩化ナトリウムを含有する如何なる組成の食塩を挙げることができる。例えば、ミネラル成分を含有する天然塩、天然塩からにがり成分を除去したミネラル塩、及び岩塩を挙げることができる。
【0018】
また、本発明に係る食品タンパク質結着剤において、食酢と炭酸塩と食塩の組成比は特に限定されない。例えば、炭酸塩を3〜32重量%とすることができ、3〜25重量%とすることが好ましく、3〜20重量%とすることがより好ましく、5〜20重量%とすることが最も好ましい。炭酸塩の組成比をこの範囲とすることで、食品タンパク質結着剤のpHを中性からアルカリ性に維持することができるとともに、食品の風味を維持することができる。また、例えば、食塩を0.5〜25重量%(塩化ナトリウム換算)とすることができ、6〜25重量%(塩化ナトリウム換算)とすることが好ましく、9〜25重量%(塩化ナトリウム換算)とすることがより好ましく、11〜22重量%(塩化ナトリウム換算)とすることが最も好ましい。食塩の組成比をこの範囲とすることで、タンパク質に対する結着効果を高く維持することができる。
【0019】
食酢と炭酸塩と食塩の組成比を上述の範囲とすることで、タンパク質含有食材に対して特に優れた結着効果を達成することができる。
【0020】
ところで、本発明に係る食品タンパク質結着剤は、アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼをさらに含有していることが好ましい。アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼを組み合わせて食品に添加すると、食品中でデヒドロ-L-アスコルビン酸(DAsA)が生成し、その結果、肉質を改良できることが提案されている(特許第3831850号及び特許第3702709号)。デヒドロ-L-アスコルビン酸(DAsA)については、R. Yoshinaka, M. Shiraishi and S. Ikeda: Bull. Japan. Soc. Sci. Fish., 38, 511-515 (1972)で指摘されるように、保水性と弾力性の改良効果を僅かながら示す。ここでアスコルビン酸類とは、アスコルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸を含む意味である。アスコルビン酸塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム等を挙げることができる。
【0021】
本発明に係る食品タンパク質結着剤は、上述したように食酢、炭酸塩及び食塩からなる組成に加えて、アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼをさらに含有することで、上述したように食酢、炭酸塩及び食塩からなる組成による結着効果と、DAsAによる結着効果とが相乗的に発揮される。言い換えると、本発明に係る食品タンパク質結着剤は、アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼによる結着効果を大幅に向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る食品タンパク質結着剤、すなわち、少なくとも食酢、炭酸塩及び食塩を含む組成物は、溶液状であっても良いし、粉末状であっても良い。
【0023】
本発明に係る食品タンパク質結着剤は、溶液状の食酢を使用し、他の成分を食酢に溶解することで水溶液として調製することができる。当該水溶液は、特にpHが中性〜アルカリ域となるように調整されることが好ましく、更にpHが弱アルカリ域となるように調整されることがより好ましい。本発明に係る食品タンパク質結着剤におけるpHの調整には、例えば、クエン酸、乳酸及び酒石酸等の有機酸を利用することができる。すなわち、本発明に係る食品タンパク質結着剤は、食酢、炭酸塩及び食塩に更に、クエン酸、乳酸及び酒石酸等の有機酸を含む中性〜アルカリ性の水溶液、好ましくは弱アルカリ性の水溶液とすることができる。本発明に係る食品タンパク質結着剤は、pHをこの範囲とすることで重曹味を抑え、優れた食味とすることができる。
【0024】
一方、本発明に係る食品タンパク質結着剤は、粉末状の食酢を使用し、他の成分と混合することで粉末として調製することができる。また、本発明に係る食品タンパク質結着剤は、溶液状の食酢を使用し、他の成分を食酢に溶解した溶液を準備し、得られた溶液を噴霧乾燥により乾燥して粉末として調製することができる。
【0025】
なお、本発明に係る食品タンパク質結着剤には、食感を調整する目的で種々の添加剤を混合しても良い。例えば、ジューシーさ、しなやかさ、歯ごたえ、弾力、喉ごしといった食感を調製するために、乳化剤、乳タンパク、ゼラチン及び卵白から選ばれる少なくとも1つの成分を添加することができる。ここで、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチン等を挙げることができる。
【0026】
上述のように構成される本発明に係る食品タンパク質結着剤は、タンパク質含有食材に対して結着効果、すなわちタンパク質含有食材同士を密着させる効果を示す。ここで、タンパク質含有食材とは、成分にタンパク質を含有している限り特に限定されないが、例えば、畜肉、魚介肉及び植物を挙げることができる。本発明に係る食品タンパク質結着剤が溶液状の場合、タンパク質含有食材に混合処理するか、タンパク質含有食材を浸漬処理することでタンパク質含有食材に対して結着効果を奏することができる。また、本発明に係る食品タンパク質結着剤が粉末状の場合、タンパク質含有食材に混合処理することでタンパク質含有食材に対して結着効果を奏することができる。
【0027】
畜肉、魚介肉及び植物の種類は、特に限定されず、食品として利用できる如何なるものも使用することができる。例えば、畜肉としては、牛肉、豚肉、羊肉、馬肉及び鶏肉を挙げることができる。なお、タンパク質含有食材としては、畜肉以外にも、鹿肉、猪肉、熊肉や鯨肉等の食材として利用される肉類を挙げることができる。魚介肉としては、すけとうだら、ほっけ、あじ、まいわし、きんときだい、いとよりだい、しろぐち、たちうお、はも、ほしざめ、よしきりざめ、れんこだい及びくろかじき等の魚類、いか、えび及びかに等の甲殻類、ほたて等の貝類を挙げることができる。植物としては、イネ属植物、コムギ属植物、オオムギ属植物及びカラスムギ属植物等の種子を挙げることができる。
【0028】
なお、これらタンパク質含有食材は、上述した具体的な食材を単独又は複数種類を組み合わせて使用することができる。
【0029】
特に、タンパク質含有食材としては、上述した畜肉等の肉類を細かく切断する或いは磨り潰してなる挽肉や、上述した魚介肉を細かく切断する或いは磨り潰してなるすり身であることが好ましい。本発明に係る食品タンパク質結着剤は、当該挽肉や当該すり身に対して優れた結着効果を示すことで、優れた食感の食品を製造することができる。
【0030】
本発明に係る食品タンパク質結着剤を利用して製造する食品としては、特に限定されないが、例えば、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール、サラミ及びナゲット等の畜肉を利用した食品、蒸しかまぼこ、焼きかまぼこ、ちくわ、はんぺん、つみれ、さつま揚げ及びフィッシュソーセージ等の魚介類を利用した食品、並びに、うどん、そば、パスタ、素麺及び米粉麺等の植物種子を利用した食品を挙げることができる。
【0031】
本発明に係る食品タンパク質結着剤によれば、上述した食品の食感を向上させることができる。より具体的に、本発明に係る食品タンパク質結着剤によれば、上述したタンパク質含有食材同士の結着効果を高めることに起因して、歯ごたえ及び弾力性が高くなるといった独特の食感を達成することができる。なお、食品の歯ごたえは、食品の硬さで評価することができる。例えば、テクスチャーアナライザを使用して検査対象の食品の最大試験力を測定し、最大試験力に基づいて食品の硬さ、すなわち食品の歯ごたえを評価することができる。また、食品の弾力については、例えば、テクスチャーアナライザを使用して検査対象の食品に対して負荷を加えて形成されたくぼみの変位を測定し、変位の比に基づいて評価することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(1)食品タンパク質結着剤の配合例
食品タンパク質結着剤の組成を表1に示した。なお、表中の数値は、重量%[単位]を示している。
【0034】
【表1】
【0035】
(2)食品タンパク質結着剤の調整
表1に示した配合に基づいて各原材料を混合し、比較例(I〜IV)及び実施例(I、II)の食品タンパク質用結着剤を調整した。
【0036】
(3)食品タンパク質結着剤を用いたソーセージの作製
ソーセージ用原材料として、豚赤身ひき肉(粗挽き4.8mm)、豚背脂ひき肉及び食塩を準備した。表2に示した配合に基づき下記方法にてソーセージ用生地及びソーセージ試作品1〜6を作製した。なお、表中の数値の単位はgである。
【0037】
【表2】
【0038】
先ず、食品タンパク質結着剤に表2に示した所定量の水を加え、良く分散後、室温で30分間静置した。また、豚赤身挽き肉、豚背脂挽き肉、氷水をステンレスボールに量り取り、冷蔵庫で静置した。次に、静置しておいた原材料と塩をフードプロセッサー(型式:MK−K81;パナソニック社製)に入れカッティングを行い、ソーセージ生地を作製した。そして、作製したソーセージ生地をステンレスボールへ移し、冷蔵庫内で一晩静置した。
【0039】
次に、静置したソーセージ生地を再度フードプロセッサー(型式:MK−K81;パナソニック社製)に入れカッティングを行った。得られたソーセージ生地をビニール袋にとり、真空包装機(型式:V−380G;東静電気社製)で脱気を行い、ウインナー用コラーゲンケーシングに充填した。充填後、スチームコンベクションオーブン(型式:SCOS-4RS;ニチワ電機株式会社)で78℃、20分間分加熱をした後、室温で30分間放冷し、ケーシング詰めしたソーセージ試作品1〜6を作製した。
【0040】
(4)ソーセージ試作品1〜6の評価
(4−1)加熱歩留りの評価
ソーセージ試作品1〜6の加熱前と加熱放冷後の重量を測定し、歩留まりを求めた。以下の計算式より歩留まり(%)を求めた。
【0041】
歩留まり(%)=A/B×100
A:加熱放冷後のソーセージの重さ(g)
B:加熱前のソーセージの重さ(g)
【0042】
(4−2)食感(硬さ、弾力性)の測定方法
作製したソーセージ試作品1〜6を用いて下記評価方法でテクスチャー測定し、硬さ及び弾力性の評価を行った。
【0043】
先ず、ソーセージ試作品1〜6を厚さ約2cmにスライスし、試験片とした。テクスチャーアナライザEZ-S形(島津製作所社製)を用い、底部が円形で直径10mmのプランジャーを毎秒10mmで試験片に負荷を加えて、その最大試験力(N)を硬さとして測定・記録した。また、プランジャーで試験片に2回の繰返し圧縮負荷(負荷→除荷→負荷→除荷)を加え、そのくぼみ変位の比を弾力性として計測・記録した。
【0044】
(4−3)結果
ソーセージ試作品1〜6について、上述した加熱歩留まり、硬さ及び弾力性について測定した結果を表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】
ソーセージ試作品1〜6について測定した加熱歩留りとは、熱処理によって流出した肉の水分や油分等の量を評価している。よって、食品タンパク質結着剤による結着性が高いほど水分や油分などの流出が抑制され、加熱歩留りの数値(%)は維持(100%により近い数値)される。言い換えると、加熱歩留りの数値が高い試作品ほど、ジューシーな食感を有することとなる。表3に示すように、本発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品5及び6では、比較例I〜IVの結着剤を使用した場合と比較して優れた加熱歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。
【0047】
また、ソーセージ試作品1〜6について測定した硬さとは、ソーセージを変形させるのに必要な力であってソーセージ試作を形づくっている内部結合力を示している。このためソーセージ試作品1〜6について測定した硬さは、ソーセージを食べた時の歯ごたえを示す指標となる。表3に示すように、本発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品5は一般的なソーセージ製造で用いられるリン酸塩を使用した試作品2と同等の硬さを示していた。さらに、本発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品6においては最も硬さの値が高くなることがわかった。このように、発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品5及び6では、比較例I〜IVの結着剤を使用した場合と比較して同等又は優れた硬さを示し、優れた歯ごたえを有することがわかった。
【0048】
さらに、ソーセージ試作品1〜6について測定した弾力性とは、ソーセージに加えられた外力による変形が、当該外力を取り去った時に戻る割合を示している。このため、このためソーセージ試作品1〜6について測定した弾力性は、ソーセージを食べた時の弾力感を示す指標となる。表3に示すように、本発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品5は一般的なソーセージ製造で用いられるリン酸塩を使用した試作品2と同等の弾力性を示していた。さらに、本発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品6においては最も弾力性の値が高くなることがわかった。このように、発明の食品タンパク質結着剤を使用して作製した試作品5及び6では、比較例I〜IVの結着剤を使用した場合と比較して同等又は優れた弾力性を示し、優れた弾力感(ぷりぷりした食感)を有することがわかった。
【0049】
表3に示した結果から、本発明の食品タンパク質結着剤(実施例I)は、一般的なソーセージ製造で用いられるリン酸塩を主成分とする結着剤(比較例II)と同等の加熱歩留まり、硬さ及び弾力性を示したことから、結着剤としての十分な性能を有することが明らかとなった。さらに、本発明の食品タンパク質結着剤(実施例II)は、一般的なソーセージ製造で用いられるリン酸塩を主成分とする結着剤(比較例II)や実施例Iの結着剤と比較して優れた加熱歩留まり、硬さ及び弾力性を示したことから、結着剤として極めて優れた性能を有することが明らかとなった。
【0050】
また、表3に示した結果から、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸オキシダーゼを結着剤として使用した試作品4では、加熱歩留まり、硬さ及び弾力性ともに良好な結果が得られなかった。この結果から、アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼは結着剤として十分な性能を有しないことが示された。
【0051】
さらに、従来使用されているリン酸塩を結着剤とした試作品2と、リン酸塩並びにアスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸オキシダーゼを結着剤とした試作品3とを比較すると、加熱歩留まり、硬さ及び弾力性の全て項目において同程度であることがわかる。この結果より、リン酸塩からなる結着剤と、アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼからなる結着剤とを併用しても、相乗的な結着効果は得られないことが明らかとなった。
【0052】
これに対して、本発明の食品タンパク質結着剤(食酢、炭酸塩及び食塩)を用いた試作品5と、食酢、炭酸塩及び食塩に加えてアスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸オキシダーゼを結着剤とした試作品6とを比較すると、試作品6については試作品5よりも、加熱歩留まり、硬さ及び弾力性の全て項目において極めて優れていることがわかる。このように、食酢、炭酸塩及び食塩からなる結着剤と、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸オキシダーゼからなる結着剤との併用効果が示された。すなわち、上述のように試作品2と試作品3との比較結果からは予測できない、食酢、炭酸塩及び食塩からなる結着剤と、アスコルビン酸類及びアスコルビン酸オキシダーゼからなる結着剤との相乗効果が示された。
【0053】
(5)官能検査方法
トレーニングを積んだパネラー5名によってソーセージの食感について評点法官能検査を行った。この評点法官能検査では、ソーセージ試作品1の「歯ごたえ」「弾力」「総合評価」を4とした上で、残りの試作品に関する「歯ごたえ」「弾力」「総合評価」について1(非常に悪い)〜4(普通)〜7(非常に良い)で評価した。
【0054】
歯ごたえは、軟らかすぎるまたは硬すぎる食感を非常に悪い(1点)とし、適度な歯ごたえを有すると食感を非常に良い(7点)とした。弾力については、ぷりぷりとした弾力のない食感を非常に悪い(1点)とし、ぷりぷりとした弾力を有する食感を非常に良い(7点)とした。また、ここでの総合評価とは、歯ごたえと弾力を加味した全体の食感がソーセージとして好ましいかどうかに関する評価である。
ソーセージ試作品2〜6に関する評点法官能検査の結果を表4に示した。
【0055】
【表4】
【0056】
表4に示したように、実施例I及びIIの結着剤は、従来使用されているリン酸塩を使用していないにもかかわらず、リン酸塩を使用した場合と同等の又はリン酸塩を使用した場合よりも優れた評点法官能検査結果を得ることができた。特に、アスコルビン酸ナトリウムとアスコルビン酸オキシダーゼを添加した実施例IIの結着剤は、極めて優れたタンパク質結着性を達成できることに加え、食品の歩留りを向上させ、適度な歯ごたえ及び弾力を付与できることが確認できた。