(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ダブルタイヤ用のハブ装置としては、以下の特許文献1に記載されている装置がある。このハブ装置は、固定軸と、駆動ハブと、遊星歯車機構と、外輪ハブと、内輪ハブと、差動機構と、外側ブッシュと、内側ブッシュと、ブレーキ装置と、を備える。
【0003】
固定軸は、円筒状を成し、回転軸線を中心として回転する車軸の外周側に配置されている。駆動ハブは、固定軸の外周側に配置され、車軸の回転に伴って回転軸線を中心として回転する。遊星歯車機構は、車軸の回転速度を減速させて、この車軸の回転力を駆動ハブに伝える。外輪ハブは、駆動ハブの外周側であって、回転軸線が延びる軸方向の一方側である外側に配置されている。この外輪ハブは、回転軸線を中心として駆動ハブに対して相対回転可能である。内輪ハブは、駆動ハブの外周側であって、軸方向の他方側である内側に配置されている。この内輪ハブは、回転軸線を中心として駆動ハブに対して相対回転可能である。
【0004】
差動機構は、駆動ハブの回転を外輪ハブ及び内輪ハブに伝達しつつ、外輪ハブと内輪ハブとの回転差を許容する。外側ブッシュは、駆動ハブの外周側で且つ外輪ハブの内周側であって、差動機構よりも外側に配置されている。この外側ブッシュは、駆動ハブに対して外輪ハブを相対回転可能に支持して、ラジアル荷重を受けることが可能である。内側ブッシュは、駆動ハブの外周側で且つ内輪ハブの内周側であって、差動機構よりも内側に配置されている。この内側ブッシュは、駆動ハブに対して内輪ハブを相対回転可能に支持して、ラジアル荷重を受けることが可能である。
【0005】
ブレーキ装置は、車軸の外周側で且つ内側ブッシュ及び内輪ハブの内周側であって、差動機構よりも内側に配置されている。このブレーキ装置は、回転軸線を中心として円板状の複数のブレーキディスクを有する。このブレーキ装置は、駆動ハブを回転不能に拘束することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、複数のブレーキディスクの外径寸法が、複数のブレーキディスクの外周側に配置されている内側ブッシュ及び内輪ハブの存在により制約を受け、複数のブレーキディスクの外径寸法を大きくすることが難しい。このため、特許文献1に記載の技術では、ブレーキディスクの外径を小さくする一方で、ブレーキディスクの枚数を多くすることで、ブレーキ性能を確保する必要がある。よって、特許文献1に記載の技術では、ブレーキディスクの枚数増加に伴って、装置のコストが増加する。
【0008】
そこで、本発明は、差動機構よりも軸方向における内側の領域に、回転軸線に対する径方向に広い空間を確保することができるハブ装置、及びこのハブ装置を備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る一態様のハブ装置は、
回転軸線を中心に回転する車軸の外周側に配置され、前記車軸の回転に伴って前記回転軸線を中心として回転する駆動ハブと、前記駆動ハブの外周側であって、前記回転軸線が延びる軸方向の一方側である外側に配置され、前記回転軸線を中心として前記駆動ハブに対して相対回転可能な外輪ハブと、前記駆動ハブの外周側であって、前記外輪ハブに対して前記軸方向の他方側である内側に配置され、前記回転軸線を中心として前記駆動ハブに対して相対回転可能な内輪ハブと、前記駆動ハブの回転を前記外輪ハブ及び前記内輪ハブに伝達しつつ、前記外輪ハブと前記内輪ハブとの回転差を許容する差動機構と、前記駆動ハブの外周側で且つ前記内輪ハブの内周側であって前記差動機構よりも前記内側に配置され、前記駆動ハブに対して前記内輪ハブを相対回転可能に支持して、ラジアル荷重及びスラスト荷重を受けることが可能な転がり軸受と
、前記車軸の外周側であって前記差動機構よりも前記内側に配置され、前記駆動ハブを回転不能に拘束することが可能なブレーキ装置と、を備える。
前記転がり軸受は、前記軸方向で前記ブレーキ装置と前記差動機構との間に配置されている。前記内輪ハブの前記内側の端は、前記ブレーキ装置の前記外側の端よりも前記外側である。
【0010】
駆動ハブに対して内輪ハブを相対回転可能に支持して、ラジアル荷重を受けることが可能な部品としては、本態様の転がり軸受けの他、回転軸線を中心として円筒状を成すブッシュがある。このブッシュで、ラジアル荷重を受ける場合、ブッシュにかかる面圧を抑えつつ、大きな荷重を受けるためには、このブッシュにおける軸方向の長さを長くする必要がある。一方、転がり軸受で、ラジアル荷重を受ける場合、同じ荷重を受けるブッシュと比べて、軸方向の長さをブッシュよりも短くすることができる。
【0011】
本態様では、ラジアル荷重を受けることが可能な部品として、ブッシュよりも軸方向の長さを短くすることができる転がり軸受を用いる。しかも、本態様の転がり軸受は、内輪ハブからのスラスト荷重も受けることできる。このため、本態様では、車軸の外周側であって差動機構よりも内側の領域に、内輪ハブからスラスト荷重及びラジアル荷重を受ける部品(転がり軸受)の存在しない空間を広く確保することができる。よって、本態様では、車軸の外周側であって差動機構よりも内側の領域に、回転軸線に対する径方向に広い空間を確保することができる。
本態様では、この空間に、ブレーキ装置が配置されている。しかも、本態様では、ブレーキ装置の外周側に内輪ハブが存在しない。このため、本態様では、ブレーキ装置が回転軸線を中心として円板状の複数のディスクを備えていれば、各ディスクの外径寸法を大きくすることができる。各ディスクの外径寸法を大きくすることができれば、複数のディスクの枚数を減らすことができる。従って、本態様では、ハブ装置のコストを抑えることができる。
【0016】
以上のいずれかの前記態様のハブ装置において、前記転がり軸受は、複数の円錐ころを有する第一円錐ころ軸受と、複数の円錐ころを有する第二円錐ころ軸受と、を備えてもよい。この場合、前記回転軸線上で前記第一円錐ころ軸受の呼び接触角の基準となる点は、前記第一円錐ころ軸受に対して前記外側と前記内側とのうち一方の側に位置する。さらに、前記回転軸線上で前記第二円錐ころ軸受の呼び接触角の基準となる点は、前記第二円錐ころ軸受に対して前記外側と前記内側とのうち前記一方の側とは反対側に位置する。
【0017】
本態様の転がり軸受は、複数の円錐ころを有する第一円錐ころ軸受と、複数の円錐ころを有する第二円錐ころ軸受と、を備える。転動体として複数の円錐ころを有する円錐転がり軸受は、転動体として複数の球を有する玉軸受けよりも、例えば、各軸受けの外輪の外径が互いに同じでも、大きな荷重を受けることができる。よって、同じ荷重を受ける場合、玉軸受を用いる場合よりも、本態様の方が軸受けのサイズを小さくすることができる。しかも、本態様では、第一円錐ころ軸受の設置向きと第二円錐ころ軸受の設置向きとが逆向きであるため、内側向きのスラスト荷重及び外側向きのスラスト荷重を受けることができる。
【0018】
また、以上のいずれかの前記態様のハブ装置において、前記駆動ハブの外周側で且つ前記外輪ハブの内周側であって前記差動機構よりも前記外側に配置され、前記駆動ハブに対して前記外輪ハブを相対回転可能に支持して、ラジアル荷重を受けることが可能なブッシュを備えてもよい。
【0019】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の車両は、
以上のいずれかの前記態様のハブ装置と、前記車軸と、前記車軸を回転させる原動機と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、差動機構よりも軸方向における内側の領域に、回転軸線に対する径方向に広い空間を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るハブ装置、及びこのハブ装置を備える車両の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の車両1は、
図1に示すように、前側の複数のタイヤ2と、後側の複数のタイヤ2と、原動機3と、原動機3に接続されている駆動軸4と、左側車軸6lと、右側車軸6rと、駆動軸4の回転に伴って左側車軸6l及び右側車軸6rを回転させる差動装置5と、左側車軸6lの左端に設けられている左側ハブ装置10lと、右側車軸6rの右端に設けられている右側ハブ装置10rと、車体9と、を備える。
【0024】
本実施形態の車両1は、前側の複数のタイヤ2と後側の複数のタイヤ2とのうち、一方側の複数のタイヤ2は、左右それぞれ二つであり、他方側の複数のタイヤ2は、左右それぞれ一つである。なお、ここでは、一例として、一方側を前側とし、他方側を後側とする。すなわち、ここでは、前側では、左右それぞれに二つのタイヤ2が設けれ、後側では、左右それぞれに一つのタイヤ2が設けられている。
【0025】
原動機3は、回転出力軸を有するものであれば、如何なる原動機であってもよい。例えば、原動機3は、エンジンであってもモータであってもよい。
【0026】
駆動軸4は、原動機3から前方に延びている。駆動軸4の前端には、差動装置5が設けられている。この差動装置5には、この差動装置5から左側に延びる左側車軸6lと、この差動装置5から右側に延びる右側車軸6rとが設けられている。差動装置5は、駆動軸4の回転を左側車軸6l及び右側車軸6rに伝えつつ、左側車軸6lと右側車軸6rとの回転差を許容する。なお、必要に応じて、変速装置を設けてもよい。この場合、例えば、原動機3の前方に変速装置が配置され、この変速装置から駆動軸4が前方に延びることになる。
【0027】
左側車軸6lに設けられている左側ハブ装置10lには、前側で且つ左側の二つのタイヤ2が設けられている。また、右側車軸6rに設けられている右側ハブ装置10rには、前側で且つ右側の二つのタイヤ2が設けられている。よって、左側ハブ装置10l及び右側ハブ装置10rは、いずれも、ダブルタイヤ用のハブ装置である。
【0028】
車体9は、車両1の外面を形成するカバーの他、車両の強度を確保するためのフレームや、車軸6の周りを覆うアクスルハウジング等を含む。
【0029】
本実施形態の車両1は、車軸6の他に、駆動軸4を備えている。しかしながら、本発明が適用される車両は、この駆動軸4が省略され、車軸6が駆動軸4を兼ねる車両であってもよい。また、本実施形態の車両1は、前側のタイヤ2が駆動タイヤである。しかしながら、本発明が適用させる車両は、後側のタイヤ2が駆動タイヤであっても、前側及び後側のタイヤ2が駆動タイヤであってもよい。
【0030】
本実施形態において、左側車軸6lと右側車軸6rとは、基本的に同一構造である。よって、以下では、左側車軸6lと右側車軸6rとを区別することなく、単に、車軸6と表現する。また、本実施形態において、左側ハブ装置10lと右側ハブ装置10rとは、基本的に同一構造である。よって、以下では、左側ハブ装置10lと右側ハブ装置10rとを区別することなく、単に、ハブ装置10と表現する。
【0031】
ハブ装置10は、
図2に示すように、固定軸11と、駆動ハブ13と、遊星歯車機構20と、外輪ハブ26と、内輪ハブ28と、差動機構30と、転がり軸受40と、ブッシュ45と、ブレーキ装置50と、を備える。
【0032】
固定軸11は、回転軸線Aaを中心として回転する車軸6の外周側Dcoに配置され、車体9に固定されている。この固定軸11には、回転軸線Aaを中心として円筒状の車軸孔11hが形成されている。車軸6は、この車軸孔11hに挿通されている。
【0033】
ここで、回転軸線Aaが延びている方向を軸方向Daとする。また、この軸方向Daにおける二つの側のうち、一方の側を外側Dao、他方の側を内側Daiとする。例えば、左側ハブ装置10lの場合、この軸方向Daで左側ハブ装置10lを基準にして差動装置5側である右側を内側Dai、この軸方向Daにおける左側を外側Daoとする。また、右側ハブ装置10rの場合、この軸方向Daで右側ハブ装置10rを基準にして差動装置5側である左側を内側Dai、この軸方向Daにおける右側を外側Daoとする。
【0034】
駆動ハブ13は、筒状を成す。この駆動ハブ13は、車軸6及び固定軸11の外周側Dcoに配置されている。駆動ハブ13は、軸方向Daにおける外側Daoに配置されている駆動ハブ本体14と、駆動ハブ本体14よりも軸方向Daにおける内側Daiに配置されているブレーキ内周側カバー16と、駆動ハブ本体14とブレーキ内周側カバー16とを接続するボルト17と、を有する。駆動ハブ本体14は、回転軸線Aaを中心として回転可能に、二つの円錐ころ軸受18を介して、固定軸11に支えられている。
【0035】
遊星歯車機構20は、車軸6の回転速度を減速させて、この車軸6の回転力を駆動ハブ13に伝える。この遊星歯車機構20は、太陽歯車21と、複数の遊星歯車22と、固定歯車23と、キャリア24と、を有する。太陽歯車21は、車軸6の外側Dao端に固定されている。複数の遊星歯車22は、いずれも、太陽歯車21の外周側Dcoに配置され、この太陽歯車21と噛み合っている。キャリア24は、複数の遊星歯車22のそれぞれが自転可能に、且つ、複数の遊星歯車22のそれぞれが回転軸線Aaを中心として公転可能に、複数の遊星歯車22を支える。このキャリア24は、ハブ装置10における外側カバーを兼ねている。このキャリア24には、駆動ハブ13がボルト25により固定されている。よって、駆動ハブ13は、キャリア24が回転軸線Aaを中心として回転すると、このキャリア24と一体的に回転軸線Aaを中心として回転する。固定歯車23は、複数の遊星歯車22の外周側Dcoに配置され、複数の遊星歯車22と噛み合っている。
【0036】
差動機構30は、駆動ハブ13の回転を外輪ハブ26及び内輪ハブ28に伝達しつつ、外輪ハブ26と内輪ハブ28との回転差を許容する。この差動機構30は、差動歯車軸31と、この差動歯車軸31の設けられている差動歯車32と、この差動歯車32に対して軸方向Daにおける外側Daoに間隔をあけて配置されている外側歯車33と、この差動歯車32に対して軸方向Daにおける内側Daiに間隔をあけて配置されている内側歯車34と、差動歯車32と外側歯車33との間及び差動歯車32と内側歯車34との間に配置されている中間歯車35と、を有する。差動歯車軸31は、軸方向Daにおける駆動ハブ本体14のほぼ中央の位置から外周側Dcoに突出するよう、駆動ハブ本体14にピン36で固定されている。よって、差動歯車軸31及びこの差動歯車軸31に設けられている差動歯車32は、キャリア24及び駆動ハブ13が回転軸線Aaを中心として回転すると、キャリア24及び駆動ハブ13と一体的に回転軸線Aaを中心として回転する。差動歯車軸31の中心軸線Agは、回転軸線Aaに対して直交している。差動歯車32は、この差動歯車軸31で、駆動ハブ本体14から外周側Dcoに突出している部分に設けられている。この差動歯車32は、差動歯車軸31の中心軸線Agを中心とする円錐面上に歯を刻んだ傘歯車である。中間歯車35は、差動歯車32と噛み合っている。また、中間歯車35は、外側歯車33及び内側歯車34とも噛み合っている。よって、外側歯車33及び内側歯車34は、差動歯車軸31及び差動歯車32が回転軸線Aaを中心に回転すると、この回転に伴って、回転軸線Aaを中心として回転する。但し、外側歯車33は、中間歯車35を介して差動歯車32と噛み合い、内側歯車34は、中間歯車35を介して差動歯車32と噛み合っているため、回転軸線Aaを中心とした外側歯車33の回転と回転軸線Aaを中心とした内側歯車34の回転とには、回転差が生じることが可能である。
【0037】
外輪ハブ26は、ほぼ円筒状を成す。この外輪ハブ26は、駆動ハブ13中の外側Dao部分の外周側Dcoに配置されている。外輪ハブ26は、差動機構30の外側歯車33にボルト29で固定されている。内輪ハブ28は、ほぼ円筒状を成す。この内輪ハブ28は、駆動ハブ13中の内側Dai部分の
外周側Dcoに配置されている。すなわち、内輪ハブ28は、外輪ハブ26に対して軸方向Daにおける内側Daiに配置されている。この内輪ハブ28は、差動機構30の内側歯車34にボルト29で固定されている。よって、外輪ハブ26及び内輪ハブ28は、差動歯車軸31及び差動歯車32が回転軸線Aaを中心に回転すると、この回転に伴って、回転軸線Aaを中心として回転する。但し、回転軸線Aaを中心とした外輪ハブ26の回転と回転軸線Aaを中心とした内輪ハブ28の回転とには、前述したように、回転差が生じることが可能である。
【0038】
外輪ハブ26で、外側歯車33にボルト29で固定されている部分よりも外側Daoには、軸方向Daのいずれの位置でも内径が同一の内周面27が形成されている。また、駆動ハブ13で、外輪ハブ26の内周面27と径方向Drで対向する領域には、軸方向Daのいずれの位置でも外径が同一の外周面15が形成されている。外輪ハブ26の内周面27と駆動ハブ13の外周面15との間には、前述したブッシュ45が配置されている。このブッシュ45は、円筒状を成している。ブッシュ45の外周面は、外輪ハブ26の内周面27に接している。また、ブッシュ45の内周面は、駆動ハブ13の外周面15に接している。このブッシュ45は、駆動ハブ13に対して外輪ハブ26を相対回転可能に支持して、外輪ハブ26からのラジアル荷重を受けることが可能である。
【0039】
外輪ハブ26には、ボルト63により、外側タイヤリム61が固定される。この外側タイヤリム61には、外側タイヤ2oが装着される。
【0040】
駆動ハブ13の外周側Dcoで且つ内輪ハブ28の内周側Dciであって、差動機構30よりも軸方向Daにおける内側Daiには、転がり軸受40が配置されている。この転がり軸受40は、駆動ハブ13に対して内輪ハブ28を相対回転可能に支持して、内輪ハブ28からのラジアル荷重及びスラスト荷重を受けることが可能である。
【0041】
内輪ハブ28には、ボルト63により、内側タイヤリム62が固定される。この内側タイヤリム62には、内側タイヤ2iが装着される。
【0042】
ブレーキ装置50は、駆動ハブ13を回転不能に拘束することが可能である。このブレーキ装置50は、車軸6及び固定軸11の外周側Dcoであって、転がり軸受40よりも軸方向Daにおける内側Daiに配置されている。このブレーキ装置50は、回転軸線Aaを中心として円板状の複数の固定側ディスク51と、回転軸線Aaを中心として円板状の複数の回転側ディスク52と、複数の固定側ディスク51を軸方向Daに移動させるピストン53と、ブレーキ外周側カバー5
4と、内側カバー55と、を有する。
【0043】
複数の回転側ディスク52は、軸方向Daに並んでいる。また、複数の固定側ディスク51も、軸方向Daに並んでいる。複数の回転側ディスク52のそれぞれは、複数の固定側ディスク51のうちのいずれか一の固定側ディスク51と軸方向Daで対向している。
【0044】
ブレーキ外周側カバー54は、複数の固定側ディスク51の外周側Dco、複数の回転側ディスク52の外周側Dco、及びピストン53の外周側Dcoを覆う。このブレーキ外周側カバー54の内周側Dciに、複数の固定側ディスク51が設けられている。
駆動ハブ13の一部であるブレーキ内周側カバー16は、複数の固定側ディスク51の内周側Dci、及び複数の回転側ディスク52の内周側Dciを覆う。このブレーキ内周側カバー16の外周側Dcoに、複数の回転側ディスク52が設けられて
いる。複数の回転側ディスク52は、駆動ハブ13の一部であるブレーキ内周側カバー16に設けられているため、回転軸線Aaを中心としてキャリア24が回転すると、キャリア24と一体的に回転軸線Aaを中心として回転する。ピストン53は、複数の固定側ディスク51及び複数の回転側ディスク52よりも軸方向Daにおける内側Daiに配置されている。内側カバー55は、ピストン53の内側Daiを覆う。この内側カバー55は、ボルト57により、固定軸11に固定されている。また、この内側カバー55には、ブレーキ外周側カバー54が固定されている。
【0045】
内側カバー55は、ピストン53の移動方向を軸方向Daに規制する。この内側カバー55には、油が流れる流路56が形成されている。ピストン53は、この流路56を流れる油からの圧力を受けて、軸方向Daに移動する。ピストン53が油圧を受けて、軸方向Daにおける外側Daoに移動すると、複数の固定側ディスク51が軸方向Daにおける外側Daoに移動する。この結果、複数の固定側ディスク51のそれぞれは、複数の回転側ディスク52のうちのいずれか一の回転側ディスク52に接して、複数の回転側ディスク52が設けられている駆動ハブ13に対して制動力を加える。
【0046】
以上で説明したブレーキ装置50の軸方向Daにおける外側Daoの端50eoは、内輪ハブ28の軸方向Daにおける内側Daiの端28eiより内側Daiである。言い換えると、内輪ハブ28の内側Daiの端28eiは、ブレーキ装置50の外側Daoの端50eoよりも外側Daoである。よって、ブレーキ装置50の外周側Dcoには、内輪ハブ28が存在しない。
【0047】
転がり軸受40は、
図3に示すように、第一円錐ころ軸受40aと、第二円錐ころ軸受40bと、を有する。第二円錐ころ軸受40bは、第一円錐ころ軸受40aに対して軸方向Daにおける外側Daoに配置されている。第一円錐ころ軸受40a及び第二円錐ころ軸受40bは、互いに同一構造で且つ同じ大きさである。第一円錐ころ軸受40a及び第二円錐ころ軸受40bは、いずれも、複数の円錐ころ41と、内輪42と、外輪43と、を有する。内輪42は、回転軸線Aaを中心として環状を成している。外輪43は、回転軸線Aaを中心として環状を成し、その内径は内輪42の外径よりも大きい。複数の円錐ころ41は、内輪42と外輪43とで挟まれている。第一円錐ころ軸受40aの内輪42は、駆動ハブ13の一部であるブレーキ内周側カバー16に固定されている。また、第二円錐ころ軸受40bの内輪42は、駆動ハブ13の一部である駆動ハブ13に固定されている。第一円錐ころ軸受40aの外輪43及び第二円錐ころ軸受40bの外輪43は、いずれも、内輪ハブ28に固定されている。
【0048】
複数の円錐ころ41のそれぞれの中心軸線Arは、回転軸線Aaに対して傾斜し、回転軸線Aa上の一点で交わっている。よって、外輪43の軌道面上の母線も、回転軸線Aaに対して傾斜している。第一円錐ころ軸受40aにおける外輪43の軌道面上の母線延長線Lと回転軸線Aa(=軸受中心軸)との成す角である呼び接触角、及び、第二円錐ころ軸受40bにおける外輪43の軌道面上の母線延長線Lと回転軸線Aa(=軸受中心軸)との成す角である呼び接触角は、いずれも、αである。回転軸線Aa上で第一円錐ころ軸受40aの呼び接触角αの基準となる点Oaは、第一円錐ころ軸受40aに対して外側Daoに位置する。一方、回転軸線Aa上で第二円錐ころ軸受40bの呼び接触角αの基準となる点Obは、第二円錐ころ軸受40bに対して内側Daiに位置している。すなわち、第一円錐ころ軸受40a及び第二円錐ころ軸受40bは、前述したように、互いに同一構造で且つ同じ大きさであるものの、その設置の向きが軸方向Daで逆向きである。このように、二つの円錐ころ軸受40a,40bの設置の向きを互いに逆向きにすることで、二つの円錐ころ軸受40a,40bにより、内輪ハブ28からの内側Dai向きのスラスト荷重及び外側Dao向きのスラスト荷重を受けることができる。なお、回転軸線Aa上で第一円錐ころ軸受40aの呼び接触角αの基準となる点Oaが第一円錐ころ軸受40aに対して内側Daiに位置し、回転軸線Aa上で第二円錐ころ軸受40bの呼び接触角αの基準となる点Obが第二円錐ころ軸受40bに対して外側Daoに位置してもよい。
【0049】
次に、以上で説明したハブ装置10の動作及び作用について説明する。
【0050】
車軸6が回転軸線Aaを中心として回転すると、この車軸6の外側Daoの端に設けられている遊星歯車機構20の太陽歯車21が、車軸6と一体的に回転軸線Aaを中心として回転する。太陽歯車21が回転すると、この太陽歯車21と噛み合っている複数の遊星歯車22が、自転しつつ回転軸線Aaを中心として公転する。よって、複数の遊星歯車22を支持しているキャリア24は、回転軸線Aaを中心として回転する。キャリア24が回転すると、このキャリア24に接続されている駆動ハブ13が、キャリア24と一体的に回転軸線Aaを中心として回転する。すなわち、車軸6の回転は、遊星歯車機構20により、その回転速度が減速されて、駆動ハブ13に伝えられる。
【0051】
駆動ハブ13が回転軸線Aaを中心として回転すると、差動機構30を介して、駆動ハブ13に間接的に接続されている外輪ハブ26及び内輪ハブ28も、回転軸線Aaを中心として回転する。この結果、外側タイヤリム61を介して外輪ハブ26に装着されている外側タイヤ2o、及び内側タイヤリム62を介して内輪ハブ28に装着されている内側タイヤ2iリムも、回転軸線Aaを中心として回転する。
【0052】
ところで、車両1が曲がっている最中、外側タイヤ2oと内側タイヤ2iとに回転差が生じる。そこで、本実施形態のハブ装置10は、この回転差を吸収しつつ、外側タイヤ2oと内側タイヤ2iとに回転力を伝えるために、差動機構30を備える。
【0053】
外輪ハブ26には、外側タイヤ2oからラジアル荷重がかかる。外輪ハブ26にかかるラジアル荷重は、ブッシュ45が受ける。
【0054】
内輪ハブ28には、内側タイヤ2iからスラスト荷重及びラジアル荷重がかかる。内輪ハブ28にかかるスラスト荷重及びラジアル荷重は、転がり軸受40が受ける。
【0055】
回転軸線Aaを中心として円筒状を成すブッシュで、ラジアル荷重を受ける場合、ブッシュにかかる面圧を抑えつつ、大きな荷重を受けるためには、このブッシュにおける軸方向Daの長さを長くする必要がある。一方、転がり軸受40で、ラジアル荷重を受ける場合、同じ荷重を受けるブッシュと比べて、軸方向Daの長さをブッシュよりも短くすることができる。また、本実施形態の転がり軸受40は、第一円錐ころ軸受40aと第二円錐ころ軸受40bを有し、大きなスラスト荷重を受けることができるので、別途、スラスト荷重を受ける部品を設ける必要もない。
【0056】
このため、本実施形態では、車軸6及び固定軸11の外周側Dcoであって差動機構30よりも内側Daiの領域に、内輪ハブ28からスラスト荷重及びラジアル荷重を受ける部品の存在しない空間を確保することができる。よって、本実施形態では、車軸6及び固定軸11の外周側Dcoであって差動機構30よりも内側Daiの領域に、回転軸線Aaに対する径方向Drに広い空間を確保することができる。
【0057】
本実施形態では、以上のように、車軸6及び固定軸11の外周側Dcoであって差動機構30よりも内側Daiの領域に、回転軸線Aaに対する径方向Drで大きな空間を確保することができる。このため、本実施形態では、この空間に、複数の回転側ディスク52及び複数の固定側ディスク51を配置することで、各ディスク51,52の外径寸法を大きくすることができる。特に、本実施形態では、内輪ハブ28からスラスト荷重及びラジアル荷重を受ける部品として、軸方向Daの長さがブッシュよりも短くなる転がり軸受40を設けた関係で、前述したように、ブレーキ装置50の外周側Dcoには内輪ハブ28が存在しない。よって、本実施形態では、この観点からも、各ディスク51,52の外径寸法を大きくすることができる。各ディスク51,52の外径寸法を大きくすることができれば、複数の回転側ディスク52の枚数及び複数の固定側ディスク51の枚数を減らすことができる。従って、本実施形態では、ハブ装置10のコストを抑えることができる。
【0058】
本実施形態の転がり軸受40は、第一円錐ころ軸受40aと第二円錐ころ軸受40bとを有し、これら円錐ころ軸受40a,40bが互いに独立した部品である。しかしながら、第一円錐ころ軸受40aの外輪43と第二円錐ころ軸受40bの外輪43とが共通部品、及び/叉は、第一円錐ころ軸受40aの内輪42と第二円錐ころ軸受40bの内輪42とが共通部品であってもよい。すなわち、転がり軸受40は、複列円錐ころ軸受でもよい。
【0059】
本実施形態では、転がり軸受40の転動体として、円錐ころ41を用いている。しかしながら、転がり軸受40の転動体は、円錐ころ41に限定されない。転がり軸受40の転動体は、例えば、球でもよい。すなわち、転がり軸受40は、玉転がり軸受でもよい。この場合も、複列が好ましい。但し、玉転がり軸受よりも、円錐ころ軸受の方が、例えば、外輪43の外径が同じでも、大きな荷重を受けることができるので、所定の荷重を受けることができ且つ一定のサイズ以下に収めるために、転がり軸受40として円錐ころ軸受の方が好ましい。
【0060】
本実施形態のブレーキ装置50は、軸方向Daで内側タイヤリム62が存在する領域に設けられている。しかしながら、ブレーキ装置50は、軸方向Daで内側タイヤリム62よりも内側Daiに設けられていてもよい。この場合、ブレーキ装置50は、車軸6に対して直接制動力を加えるものであってもよい。