【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー材料を含む絶縁層を備えた長尺導体を含む絶縁導体が提供され、前記ポリマー材料が、少なくとも25%の結晶化度を有し、前記ポリマー材料は、
【化1】
一般式の繰り返し単位を含み、
式中、t1及びw1が独立して、0または1を表し、v1が、0、1、または2を表す。
【0010】
特に明記しない限り、前記長尺導体上の前記絶縁層の前記ポリマー材料の結晶性の評価は、以下の実施例4に記載されているように行うことができる。
【0011】
前記結晶化度は、好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%である。
【0012】
前記ポリマー材料の結晶化度は、前記絶縁層上の第1の位置で前述のように評価することができる。したがって、結晶化度は、前記第1の位置で少なくとも25%(好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%)が適切である。前記ポリマー材料の結晶化度は、前記絶縁層上の第2の位置で前述のように評価することができる。前記第2の位置における結晶化度は、適切には少なくとも25%(好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%)である。前記第1の位置は、少なくとも1mの距離だけ前記第2の位置から離間していてもよい。
【0013】
前記ポリマー材料の結晶化度は、前記絶縁層上の第3の位置で前述のように評価することができる。前記第3の位置における結晶化度は、適切には少なくとも25%(好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%)である。前記第1の位置は、少なくとも10mの距離だけ前記第3の位置から離間していてもよい。前記第2の位置は、少なくとも9mの距離だけ前記第3の位置から離間していてもよい。前記ポリマー材料の結晶化度は、前記絶縁層上の第4の位置で前述のように評価することができる。前記第4の位置における結晶化度は、適切には少なくとも25%(好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%)である。
【0014】
前記第4の位置は、少なくとも20mの距離だけ第1の位置から離間していてもよい。場合によっては、前記距離は少なくとも50m、例えば50m〜200mの範囲であってもよい。
【0015】
前記第1の位置は、絶縁導体の第1の端部にあってもよい。前記第4の位置は、絶縁導体の第2の対向側の端部にあってもよい。前記第2の位置は、絶縁導体の前記端部の中間であってもよい。前記第3の位置は、前記第2の位置と第4の位置の中間であってもよい。
【0016】
適切には、前記絶縁層は、長尺導体の全体に沿って延びる。前記絶縁層は、適切には、前記絶縁導体の前記第1の端部から前記第2の端部まで延びている。前記絶縁層は、好ましくは、前記第1の端部と第2の端部との間に連続した途切れない層を画定する。疑義を避けるために、絶縁導体の第1及び第2の端部(すなわち、対応する端面)に、長尺導体が露出していること、すなわち絶縁層が長尺導体の端部を覆っていないことが分かる。したがって、好ましくは、前記第1及び第2の端部(例えば、対応する端面)を除いて、前記絶縁層は前記長尺導体を完全に包囲する。
【0017】
前記ポリマー材料の結晶化度は、前記絶縁層の実質的に全範囲にわたって少なくとも25%(好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%)が適切である。前記ポリマー材料の結晶性は、好ましくは、前記絶縁層の範囲にわたって実質的に一定である。適切には、前記絶縁層の範囲にわたる前記ポリマー材料の結晶化度は、10%未満だけ変化する。例えば、絶縁層のポリマー材料の最小結晶化度と最大結晶化度との間の差は、10%未満である。
【0018】
前記絶縁層は、好ましくは、結晶性が15%未満である領域(しばしばアモルファスパッチと呼ばれる)がない。
【0019】
本明細書におけるいずれかに記載された前記ポリマー材料の結晶化度は、40%未満であってもよい。
【0020】
前記絶縁層は、好ましくは均質で、適切にはその全範囲にわたって均一である。
【0021】
適切には、前記絶縁層の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が熱可塑性ポリマー材料を含む。適切には、前記絶縁層の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が前記ポリマー材料を含む。ある場合には、前記絶縁層は、前記ポリマー材料と充填材、例えば窒化ホウ素とを含むことができる。しかしながら、好ましくは、前記絶縁層は充填材を含まない。好ましくは、前記絶縁層は、前記ポリマー材料、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から本質的になる。前記絶縁層は、好ましくは、前記ポリマー材料である1種類の熱可塑性ポリマーのみを含む。
【0022】
前記ポリマー材料は、t1=1、v1=0及びw1=0、t1=0、v1=0、w1=0、t1=0、w1=1、v1=2、またはt1=0、v1=1及びw1=0である繰り返し単位Iから選択される繰り返し単位を有することができる。前記ポリマー材料は、より好ましくは、t1=1、v1=0及びw1−0、またはt1=0、v1=0及びw1=0である繰り返し単位を有する。前記ポリマー材料は、より好ましくは、t1=1、v1=0及びw1=0である繰り返し単位を有する。
【0023】
前記ポリマー材料は、適切には、少なくとも50モル%、(例えば50〜100モル%)、好ましくは少なくとも60モル%(例えば60〜100モル%)、より好ましくは少なくとも80モル%(例えば80〜100モル%)、特に少なくとも99重量%の、式Iの繰り返し単位を含み、特にそのような単位は、t1=1、v1=0及びw1=0である。
【0024】
前記ポリマー材料は、適切には少なくとも50重量%(例えば50〜100重量%)、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の式Iの繰り返し単位を含む。
【0025】
前記ポリマー材料は、好ましくは、基本的に式Iの繰り返し単位からなり、特にそのような繰り返し単位は、t1=1、v1=0、及びw1=0である。
【0026】
好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン及びポリエーテルケトンケトンから選択される。より好ましい実施形態では、前記ポリマー材料は、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンから選択される。特に好ましい実施形態では、前記ポリマー材料はポリエーテルエーテルケトンである。
【0027】
前記ポリマー材料は、好ましくは、実施例5に記載のようにして測定した溶融粘度(MV)が400℃で少なくとも0.06kNsm
−2、好ましくは少なくとも0.08kNsm
−2、より好ましくは少なくとも0.085kNsm
−2、特に少なくとも0.09kNsm
−2である。前記ポリマー材料は、1.00kNsm
−2未満、適切には0.8kNsm
−2未満のMVを有し得る。
【0028】
前記絶縁層は、好ましくは前記長尺導体と直接接触する。したがって、好ましくは、絶縁導体は、長尺導体と前記絶縁層との間に中間層、例えば接着層(例えば、前記絶縁層とは異なる組成の層)を含まない。前記絶縁導体は、好ましくは、本明細書に記載の試験ASTM D1676に合格する。
【0029】
前記絶縁層は、好ましくは300μm未満、例えば250μm未満の厚さを有する。厚さは、少なくとも2μmまたは少なくとも20μmであってもよい。絶縁層の厚さは、好ましくは、絶縁層の範囲にわたって実質的に一定である。したがって、最も薄い点における絶縁層の厚さを絶縁層の最も厚い点での厚さで割った比が少なくとも0.8、好ましくは少なくとも0.9、より好ましくは少なくとも0.95であることが好ましい。
【0030】
前記絶縁層は、別の材料、例えば別の層で覆われていないことが好ましい。好ましくは、前記絶縁層は、前記絶縁導体の最外層を画定する。前記絶縁層は、好ましくは、前記絶縁導体の露出層(例えば、大気に露出される)である。
【0031】
前記絶縁導体は、x重量%の前記長尺導体及びy重量%の前記ポリマー材料のを含むことができ、xとyの合計が前記絶縁導体の総重量の少なくとも90重量%である。好ましくは、xとyの合計は、前記絶縁導体の総重量の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に100重量%である。
【0032】
前記長尺導体は、好ましくは銅導体である。好ましくは、低レベルの不純物を除いて、前記長尺導体に含まれる唯一の金属は銅である。
【0033】
有利には、絶縁導体を製造するために使用される以下に記載されるプロセスは、長尺導体の外面、例えば記載される銅導体の最小限の酸化を引き起こす。前記絶縁導体は、好ましくは、1000nmよりも大きく、例えば500nmよりも大きいかもしくは300nmより厚い酸化層(例えば、酸化銅層)を含まない。絶縁導体は、1000nm以下、例えば500nm以下、特に300nm以下の酸化物層を含むことができる。酸化物層は、以下に記載するようにXPSによって評価することができる。
【0034】
前記長尺導体は、20mm以下の最大寸法を有する断面を有することができる。断面の最小寸法は、少なくとも0.5mmであってもよい。
【0035】
前記長尺導体は、非円形の断面を有してもよい。非円形の断面及び本明細書に記載の特性を有する絶縁導体を製造することは困難である。それにもかかわらず、記載されたプロセスは、非円形の断面を有する絶縁導体を製造するのに特に有利である。前記長尺導体は、第1の外向きの面と第2の外向きの面とを含む断面を有し、前記第1及び第2の面は実質的に平坦であり、好ましくは、前記第1及び第2の面は対向方向を向いているが、互いに実質的に平行に延びる。前記長尺導体は、好ましくは実質的に長方形である。前記絶縁導体は、好ましくは、断面が実質的に長方形である。
【0036】
前記長尺導体は、1.5mm〜4mm(好ましくは1.6〜3.5mm)の範囲の厚さと3〜20mmの範囲の幅を有することができる。
【0037】
前記絶縁層は、好ましくは、膨れ(例えば、絶縁層のポケット内に閉じ込められた空気によって画定される)を実質的に欠いている。前記絶縁層中の膨れの表面積は、絶縁層の全表面積の5%未満、好ましくは1%未満を表すのが適切である。
【0038】
前記絶縁導体は、実質的に導体のほぼ全範囲に沿った位置に、らせん状のマーク(しばしば「目印マーク」と呼ばれる)を含むことができる。そのようなマークは、絶縁層が押出プロセスで製造されていないことを適切に示す。押出プロセスは、このようなマークを生成しない。
【0039】
前記絶縁導体は、好ましくは少なくとも10m、例えば少なくとも50m、特に少なくとも100mの長さを有する。前記絶縁導体は、好ましくは、実施例3に記載のように測定した場合、4〜30kVの範囲の絶縁破壊電圧を有する。前記絶縁導体は好ましくはスプールの周りに被覆されている。前記絶縁導体は、好ましくは磁石線である。
【0040】
本発明は、前記絶縁導体を組み込んだ固定子コイルにも及ぶ。
【0041】
本発明は、前記絶縁導体を含む電気水中ポンプ(ESP)にも及ぶ。モータリード延長(MLE)ケーブルは、記載された絶縁導体を含むことができる。本発明は、記述された前記絶縁導体を組み込んだモータアセンブリに及ぶ。前記モータアセンブリは、適切には、前記絶縁導体を組み込んだ前記ステータコイルを含む。
【0042】
本発明の第2の態様によって、絶縁導体を製造する方法が提供され、方法が、
(i)長尺導体を選択することと、
(ii)ポリマー材料を含むテープ(例えばMDOテープ)で導体を被覆することと、ポリマー材料が、一般式
【化2】
の繰り返し単位を含み、
ここで、式中、t1及びw1が独立して、0または1を表し、v1が、0、1、または2を表し、
(iii)テープを加熱してポリマー材料を溶融することと、
(iv)加熱されたテープを冷却してポリマー材料を凝固させることと、を含み、ポリマー材料が、適切には、冷却後に少なくとも25%の結晶化度を有するようにテープの冷却を制御する。
【0043】
第2の態様の絶縁導体は、第1の態様の絶縁導体の任意の特徴を有することができる。
【0044】
前記長尺導体は、第1の態様の長尺導体の任意の特徴を有することができる。しかし、ステップ(i)において選択された長尺導体は、方法中に長尺導体の幾分限定された酸化のために、第1の態様の絶縁導体における長尺導体と比較して、酸化されにくい。ステップ(i)において選択された前記長尺導体は、好ましくは本質的に銅からなる。
【0045】
好ましくは、ステップ(ii)において言及される前記テープは、機械方向配向(Machine Direction Orientated)(MDO)テープである。前記テープは、好ましくは一軸配向されている。前記テープは、少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも300PMaの引張強さを有することができる。前記引張強さは450MPa未満であってもよい。前記テープは、少なくとも170MPa、好ましくは少なくとも220MPaの破断応力を有することができる。前記破断応力は、350MPa未満であり得る。前記テープは、少なくとも50MPa、好ましくは少なくとも70MPaの降伏応力を有することができる。前記降伏応力は、120MPa未満であり得る。引張強度、破断応力及び降伏応力は、ASTM D882に記載されているように評価することができる。
【0046】
前記テープは、250μm未満の厚さを有することができる。それは少なくとも1μmの厚さを有することができる。前記テープは好ましくは2〜100μm、より好ましくは4〜75μm、特に8〜50μmの範囲の厚さを有する。前記テープは、3〜50mmの範囲、例えば12〜25mmの範囲の幅を有することができる。
【0047】
前記テープは、方法において引き出されるキャリア上に提供されてもよい。キャリアは50mを超えるテープを保持することがある。
【0048】
ステップ(ii)において、テープは、好ましくは、複数のキャリアから引き出され、複数の別個の長さのテープが、導体を被覆するために使用される。ステップ(ii)において、前記テープは、好ましくは、前記長尺導体と直接接触する。ステップ(ii)において、適切には、テープの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ(好ましくは8つ未満)の重複するテープの層が長尺導体上に配置されるように、導体をテープで被覆する。好ましくは、ステップ(ii)の終わりに、前記長尺導体は、2〜300μmの範囲の厚さを有するテープの層を担持する。
【0049】
前記テープの前記ポリマー材料は、第1の態様に従って記載されたものであってもよい。
【0050】
前記テープは、前記ポリマー材料の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を含むことができる。前記テープは、好ましくは、前記ポリマー材料、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から本質的になる。
【0051】
前記導体を複数の別個の長さのテープで被覆する場合、好ましくは、前記導体を被覆するために使用されるテープのそれぞれの長さが前記ポリマー材料を含み、及び/または、好ましくは使用される全てのテープが同一であり、好ましくはPEEKをよりなる。
【0052】
この方法は、第1及び第2の加熱ステップを含むことができる。好ましくは、ステップ(iii)の前に、第1の加熱ステップ(以下、ステップ(iii)
*と呼ぶ)は、前記ポリマー材料の溶融温度(Tm)よりも低い温度にテープを加熱することを含む。
テープは、前記ポリマー材料のTm未満の10℃以下(例えば、5℃以下)の温度に加熱することができる。前記ポリマー材料がPEEKを含む場合、テープは343℃未満であるが333℃より高い温度に加熱される。ステップ(iii)
*において、テープは粘着性になり、前記長尺導体にある程度付着するように適切に加熱される。
【0053】
好ましくは、ステップ(iii)
*において、テープが収縮する。例えば、テープの長さは、このような収縮によって少なくとも5%減少することができる。ステップ(iii)
*は、好ましくは、第1の誘導加熱器を使用して、テープで被覆された前記導体の誘導加熱を含むことが好ましい。
【0054】
好ましい実施形態では、前記長尺導体は、第1の外向き面と第2の外向き面とを適切に含む非円形断面を有し、前記第1及び第2の面は実質的に平坦であり、対向方向を向いており、互いに実質的に平行に延びる。例えば、前記好ましい実施形態では、前記長尺導体は、好ましくは長方形の断面を有する。好ましい実施形態では、前記方法は、ステップ(iii)
**の後であってステップ(iii)の前に適切に行われるステップ(iii)
**を含み、ステップ(iii)
**は、テープで被覆された導体に圧力を加えテープは長尺導体に向かって移動することを含む。有利には、ステップ(iii)
**は、テープに付随する膨らみの数を減らすことができる。
【0055】
圧力は、前述のように、前記長尺導体の第1及び第2の外向きの面に接触するように配置された対向するローラによって印加されてもよい。ローラは好ましくは弾性を有する。それらは、ポリマー材料、例えばシリコーンを含むことができる。
【0056】
ステップ(iii)(適切には参照された第2の加熱ステップを含む)は、好ましくは、テープを、前記ポリマー材料のTmよりも高い温度、好ましくはポリマー材料が溶融する温度に加熱することを含む。ステップ(iii)は、前記ポリマー材料のTmよりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃高い温度にテープを加熱することを含むことができる。これは、前記Tmよりも50℃未満の温度に加熱することができる。好ましくは、ステップ(iii)において、テープが溶融され、それにより、前記テープの複数の層から形成された実質的に均質な絶縁層が画定される。ステップ(iii)は、適切には第2の誘導加熱器を使用してテープで被覆された前記長尺導体の誘導加熱を含むことが好ましい。
【0057】
前記長尺導体が、上述のような非円形の断面を有する場合、方法は、テープで被覆された導体に圧力を印加することを含む、ステップ(iii)の後のステップを含むことができる。これは、テープに関連する膨れの数を減らすことができる。
【0058】
圧力は、前述のように、前記長尺導体の第1及び第2の外向きの面に接触するように配置された対向するローラによって印加されてもよい。ローラは好ましくは弾性を有する。それらは、ポリマー材料、例えばシリコーンを含むことができる。
【0059】
好ましくは、共有結合は、テープの加熱中にポリマー材料といずれの他の材料との間にも形成されない。好ましくは、共有結合は、本方法においてポリマー材料内に(例えば、架橋によって)またはポリマー材料と共に形成されない。
【0060】
好ましくは、ステップ(iii)の後、テープで被覆された導体は冷却される。それは、能動的にまたは受動的に(例えば、周囲条件に供給することによって)冷却することができる。ステップ(iii)の後、好ましくは、テープで被覆された導体は、ポリマー材料が凝固する第1の冷却ステップで冷却される。第1の冷却ステップは、好ましくは、テープで被覆された導体に周囲条件に供することを含む。第1の冷却ステップにおいて、テープで被覆された導体中のポリマー材料は、好ましくは、前記ポリマー材料のTmより少なくとも3℃低い温度まで冷却される。好ましくは、第1の冷却ステップの終了時に、ポリマー材料は、その結晶化温度(Tc)よりも高い温度、例えば少なくとも10℃またはそのTcよりも少なくとも30℃高い温度にある。
【0061】
好ましくは、第1の冷却ステップの後、テープで被覆された導体は、第2の冷却ステップにおいて冷却され、例えば急冷される。第2の冷却ステップは、好ましくは、テープで被覆された前記導体の能動冷却を含む。
【0062】
前記第2の冷却ステップは、テープで被覆された導体に冷却流体、例えば液体(特に水を含むかまたは本質的に水からなる)を送ることを含むことができる。冷却流体は、テープで被覆された導体との接触の直前に、少なくとも10℃、好ましくは90℃未満(例えば、15〜35℃の範囲内)の温度であり得る。冷却流体は、テープで被覆された導体に噴霧することができ、流体がテープで被覆された導体の外面の実質的に全体に接触するようにすることが適切である。冷却流体は、長尺導体(例えば、銅)の酸化を制限するように適切に配置される。そのような冷却はまた、ポリマー材料の結晶性を低下させる(例えば、非晶質にする)ことができる。後続のステップは、好ましくは結晶化度を高めるように配置される。
【0063】
前記第2の冷却ステップの後、好ましくは冷却流体除去ステップがある。このステップでは、テープで被覆された導体との接触から冷却流体が適切に除去される。冷却流体除去ステップは、好ましくは、テープで被覆された導体から冷却流体を吹き飛ばすために、好ましくは前記冷却流体の実質的に全てがテープで被覆された前記導体との接触から除去されるように、テープで被覆された導体をガスに供することを含むことができる。冷却液除去ステップは、エアナイフの使用を含んでもよい。
【0064】
この方法は、テープで巻かれた導体の冷却後(例えば、前記冷却流体を用いた能動的な冷却)に(例えば、前記冷却流体除去ステップ後に)、長尺導体の中及び/またはテープに巻かれた導体に関連する残熱が、そのポリマー材料がアニール及び/または結晶化できるようなものであるように制御されることが好ましい。したがって、前記冷却後、ポリマー材料は、前記ポリマー材料のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度にあり、及び/または前記ポリマー材料のアニールが起こる。
【0065】
前記アニールの後、前記ポリマー材料は、適切には少なくとも25%、好ましくは少なくとも28%、より好ましくは少なくとも30%の結晶化度を有する。
【0066】
この方法は、好ましくは、スプールの周りに作られた絶縁導体を巻くことを含む。導体は、好適には、第1の態様に従って記載されたものである。
【0067】
この方法のステップ(ii)後にテープで被覆された導体は新規であると考えられる。したがって、本発明の第3の態様によれば、MDOテープで被覆された長尺導体を含む中間生成物が提供され、前記MDOテープはポリマー材料を含み、前記ポリマー材料は、一般式の繰り返し単位
【化3】
を含み、
式中、t1及びw1が独立して、0または1を表し、v1が、0、1、または2を表す。
【0068】
前記長尺導体は、本明細書中のいずれかの記述に記載されているものとすることができる。前記MDOテープは、本明細書中のいずれかの記述に記載されているものとすることができる。前記ポリマー材料は、本明細書のいずれかの記述に記載されているものとすることができる。
【0069】
前記中間生成物は、第2の態様に記載の第1の加熱ステップの後にMDOテープで被覆された長尺導体を含むことができる。したがって、MDOテープを長尺導体に接着させることができる。前記MDOテープは収縮している場合がある。
【0070】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様による長尺導体を製造すること、第2の態様による絶縁導体を製造することのため、及び/または第3の態様による中間生成物を製造することのための装置が提供され、装置が、
(i)長尺導体を第1の位置と第2の位置との間で搬送するための搬送装置と、
(ii)ポリマー材料を含むテープを長尺導体の周りに巻き付けるための巻き付けユニットと、
(iii)前記第1の位置と第2の位置との間を通過する間に長尺導体を第1の温度に加熱するための第1の誘導コイルと、
(iv)長尺導体を第1の温度より高い第2の温度に加熱するための第2の誘導コイルと、第2の誘導コイルが、第1の誘導コイルの下流にあり、任意に、
(v)前記第2の誘導コイルの下流にある冷却装置と、を備える。
【0071】
前記第1の誘導コイルは、第2の態様の方法の第1の加熱ステップ(すなわち、ステップ(iii)
*)を実装するように構成することができる。前記第2の誘導コイルは、第2の態様の方法の第2の加熱ステップを実装するように構成することができる。
【0072】
前記冷却装置は、好ましくは、第2の態様の方法の第2の冷却ステップを実装するように構成されている。前記冷却装置は、装置内で製造されたテープで被覆された導体に冷却流体を噴霧するように配置された一連の噴霧装置を含むことができる。前記冷却装置は、第2の態様の冷却流体除去ステップを実装するように構成することができる。前記冷却装置は、一連のエアナイフを含むことができる。
【0073】
前記装置は、本明細書に記載の前記ポリマー材料を含むMDOテープと組み合わせて提供することができる。
【0074】
本明細書に記載された任意の発明の任意の態様の任意の特徴は、必要に変更を加えて本明細書に記載された他の任意の発明と組み合わせることができる。本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して例として以下に説明する。