特許第6782261号(P6782261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782261
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】保護管
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/02 20060101AFI20201102BHJP
   H02G 1/10 20060101ALI20201102BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H02G9/02
   H02G1/10
   F16L57/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-2313(P2018-2313)
(22)【出願日】2018年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-122204(P2019-122204A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】505091167
【氏名又は名称】北勢工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】北山 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】北山 幸司
(72)【発明者】
【氏名】桐生 真司
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−245340(JP,A)
【文献】 実開平07−009034(JP,U)
【文献】 実開平02−072622(JP,U)
【文献】 特開平10−155226(JP,A)
【文献】 実開昭63−055719(JP,U)
【文献】 実開昭59−53626(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1311687(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/02
H02G 1/10
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対を成す半割管体の凹面側を互いに対向配置させて成る保護管であって、
前記半割管体は、対向する前記半割管体との接合面の外側に延設されたボルト連結部を備え、
前記ボルト連結部は、前記半割管体の凹面の一方の側縁部に設けられた第1固定部と、前記半割管体の凹面の他方の側縁部であって前記第1固定部と前記半割管体の軸対称位置に設けられた第2固定部と、を有し、
前記第1固定部は、ボルトの頭部を引っ掛けた状態で、ボルトが前記半割管体の対向方向と略平行な第1ボルト角と、ボルトが前記第1ボルト角と所定の角度を有する方向になる第2ボルト角と、の間でボルトを回動可能とすることを特徴とする保護管。
【請求項2】
前記対を成す半割管体は、互いに同形状であることを特徴とする請求項1に記載の保護管。
【請求項3】
前記第2固定部は、ボルトが前記第2ボルト角から前記第1ボルト角に回動するときにボルトの軸部を通過させる切欠部を有し、ボルトが前記第1ボルト角にあるときボルトの軸部に螺合されたナットが固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保護管。
【請求項4】
前記第1固定部は、凹状に形成されたボルト収容部を有し、
前記ボルト収容部は、その内壁面でボルトの頭部と当接してボルトの回転を規制することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の保護管。
【請求項5】
前記第1固定部は、前記第2ボルト角においてボルトの軸部に螺合されたナットを係止するナット係止部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の保護管。
【請求項6】
前記半割管体は、対向する前記半割管体との接合面の近傍に設けられた位置決め部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の保護管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底ケーブル等を保護する保護管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、島から島への通信信号の伝送や電力の送電等には、海底に敷設された海底ケーブル等が用いられている。このような海底ケーブル等は、海流や波の影響を受けて岩礁等と接触したときや、往来する船舶の船底や船舶から降ろされた錨等と接触したときに、損傷することがないように、それらの外周に被せられた防護管によって保護されている。
【0003】
海底ケーブル等を保護する防護管としては、例えば、対を成す半割管体を対向配置させて成る円筒管を、海底ケーブル等に沿って複数連結したものが知られている。この種の防護管を海底ケーブル等に取付けるときは、作業者が海中に潜り、海底ケーブル等の外周に2つの半割管体を配置して、円筒管内に海底ケーブル等を収容させた状態で、両半割管体の側部に設けられた連結孔にボルトを挿入し、これをナットで締め付けて固定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−112515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の防護管のように、2つの半割管体をボルト及びナットを用いて締め付ける作業を海流や波の影響を受ける海底で行うことは、作業者にとって大変な重労働である。特に、泥地やヘドロが多い海底等の海水の透明度が低い環境下では、視界不良により海中の作業者は殆ど手さぐりでの作業を余儀なくされることもあり、連結孔にボルトを挿入することや、ボルトの軸にナットを嵌めて螺合させることが困難となる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、海底ケーブル等への防護管の取付け作業を効率化することができる防護管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、対を成す半割管体の凹面側を互いに対向配置させて成る保護管であって、前記半割管体は、対向する前記半割管体との接合面の外側に延設されたボルト連結部を備え、前記ボルト連結部は、前記半割管体の凹面の一方の側縁部に設けられた第1固定部と、前記半割管体の凹面の他方の側縁部であって前記第1固定部と前記半割管体の軸対称位置に設けられた第2固定部と、を有し、前記第1固定部は、ボルトの頭部を引っ掛けた状態で、ボルトが前記半割管体の対向方向と略平行な第1ボルト角と、ボルトが前記第1ボルト角と所定の角度を有する方向になる第2ボルト角と、の間でボルトを回動可能とすることを特徴とする。
【0008】
上記保護管において、前記対を成す半割管体は、互いに同形状であることが好ましい。
【0009】
上記保護管において、前記第2固定部は、ボルトが前記第2ボルト角から前記第1ボルト角に回動するときにボルトの軸部を通過させる切欠部を有し、ボルトが前記第1ボルト角にあるときボルトの軸部に螺合されたナットが固定されることが好ましい。
【0010】
上記保護管において、前記第1固定部は、凹状に形成されたボルト収容部を有し、前記ボルト収容部は、その内壁面でボルトの頭部と当接して、ボルトの回転を規制することが好ましい。
【0011】
上記保護管において、前記第1固定部は、前記第2ボルト角においてボルトの軸部に螺合されたナットを係止するナット係止部を有することが好ましい。
【0012】
上記保護管において、前記半割管体は、対向する前記半割管体との接合面の近傍に設けられた位置決め部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半割管体に予めボルト等を係止させておき、作業者は海底に供給された半割管体を対向配置させた後に、ナットを緩めてボルトを第2ボルト角から第1ボルト角に回動させて、再びナット締結すれば、2つの半割管体を容易に連結させることができる。従って、ボルトを回動させる簡易な作業で海底ケーブル等への防護管の取付けが可能となり、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る保護管と、保護管を構成する半割管体を分離させた構成を示す斜視図。
図2】(a)は上記半割管体の平面を主とする斜視図、(b)は底面を主とする斜視図。
図3】(a)上記半割管体の左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は側断面図、(g)は底面図。
図4】(a)は半割管体のボルト連結部周囲の拡大平面図、(b)は一部透視断面を含む側面図。
図5】(a)は上記ボルト連結部のボルト固定部及びナット固定部であってボルトが第2ボルト角にある構成を示し斜視図、(b)は一部透視断面を含む側面図。
図6】(a)は上記ボルト連結部のボルト固定部及びナット固定部であってボルトが回動した構成を示す斜視図、(b)は一部透視断面を含む側面図。
図7】(a)は上記ボルト連結部のボルト固定部及びナット固定部であってボルトが第1ボルト角にある構成を示す斜視図、(b)は一部透視断面を含む側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る保護管について、図1乃至図7を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の保護管1は、海底ケーブルや海底送水管といった被保護管2の外周に沿って、複数、直列に連結される。保護管1は、対を成す半割管体3(3A、3B)の凹面側を互いに対向配置させて成る円管状部材である。図示した半割管体3A、3Bは、互いに同形状であり、それらがボルト4及びナット5により固定される。
【0016】
保護管1は、被保護管2を所定期間にわたって十分に保護できるだけの剛性と耐久性があれば、その材質は特に限定されず、例えば、樹脂製又は鋳鉄製とされる。なお、鋳鉄製の保護管は、重量が重いので、樹脂ベルト等での固定は難しく、連結ボルト及びナットで固定することが一般的である。
【0017】
図2(a)(b)及び図3(a)乃至(g)に示すように、半割管体3は、被保護管2を収容する収容空間を主として構成する直管部31と、直管部31の一方の端部に形成される大径接続部32と、直管部31の他方の端部に形成される小径接続部33と、を備える。直管部31、大径接続部32及び小径接続部33は、互いに一体形成されている。
【0018】
直管部31は、内側面を成す凹面31aと、外側面を成す凸面31bと、対向する半割管体3との接合面34(特に図2(b)参照)と、を有する。また、直管部31は、接合面34の近傍に設けられた位置決め部35(位置決め凸部35a〜35d)を有する。本実施形態では、位置決め凸部35a〜35dは、接合面34に近接する凸面31bから突設された爪状部材であり、爪状部材の先端は、接合面34よりも対向する半割管体3側に突出している(図3(a)(e)参照)。位置決め凸部35a〜35dは、凸面31bの一方の縁側に2つ(35a、35b)、凸面31bの他方の縁側に2つ(35c、35d)形成されている。
【0019】
一方の縁側の位置決め凸部35a、35bの配置間隔は、他方の縁側の位置決め凸部35c、35dの配置間隔よりも広くなっている(図3(c)参照)。そして、2つの半割管体3を対向配置させたとき、位置決め凸部35aの小径接続部33側部分と、位置決め凸部35cの大径接続部32側部分とが当接し、位置決め凸部35bの大径接続部32側部分と、位置決め凸部35dの小径接続部33側部分とが当接することで、両者が位置決めされる(図1右側保護管1も参照)。すなわち、一方の縁側の位置決め凸部35a、35bが、他方の縁側の位置決め凸部35c、35dを挟みこむことで、対向配置された2つの半割管体3が軸方向にズレることを防止すると共に、各位置決め凸部35a〜35dが当接し合うことで、2つの半割管体3が容易には分離しないように係り止めすることができる。なお、位置決め部35は、上述した位置決め凸部35a〜35dのような凸形状の構成に限られず、例えば、凸状に形成された一方の部材が凹状に形成された他方の部材に嵌合する構成であってもよい。また、その箇所数も、例示した4箇所に限らない。
【0020】
大径接続部32は、直管部31よりも大きな円弧から成る略半球状の部材であり、隣接する保護管1の小径接続部33を収容する収容部32aと、隣接する保護管1の直管部31が挿通される開口内鍔部32bと、を有する(図2(b)参照)。小径接続部33は、直管部31よりも大きく大径接続部32より小さな円弧から成る略半鍋蓋状の部材であり、半円盤状の開口外鍔部33aと、開口外鍔部33aと直管部31とを繋ぐドーム状部材33bと、を有する。大径接続部32の収容部32aの内面が凹面であり、小径接続部33のドーム状部材33bの外面が凸面となっているので、これらが関節機能を果たし、隣り合う保護管1を屈曲させて連結させることができる。
【0021】
半割管体3は、対向する半割管体3との接合面34の外側に延設されたボルト連結部6を備える(特に図2(a)(b)、図3(g)参照)。ボルト連結部6は、直管部31と大径接続部32との接続箇所に延設されている。ボルト連結部6は、半割管体3の凹面31aの一方の側縁部に設けられた第1固定部(以下、ボルト固定部7)と、半割管体3の凹面31aの他方の側縁部に設けられた第2固定部(以下、ナット固定部8)と、を有する。ボルト固定部7とナット固定部8とは、互いに半割管体3の軸対称位置に設けられており、2つの半割管体3を対向配置させたときに、互いの接合面34が当接する。
【0022】
図4(a)(b)に示すように、ボルト固定部7は、ボルト4の頭部41(後述する図5(b)も参照)が収容されるボルト収容部71と、ボルト4の胴部42をボルト収容部71の外側に取り出すボルト軸孔72と、を有する。なお、図4(a)の拡大図は、ボルト4を差し込んだ例を示す。ボルト4は、頭部41が六角形の六角ボルトが好適に用いられ、ナット5はボルト4の頭部41と略同形の六角ナットが好適に用いられる。ボルト固定部7は、外観が直方体の部材であり、接合面34とは反対側の面からボルト収容部71が凹状になるよう形成されている。ボルト収容部71の内壁面のうち半割管体3の軸方向と平行な2面の間隔Dは、ボルト4の頭部41の最大径(六角形の対角線の長さ)よりも小さく、ボルト4の頭部41の最小径(六角形の対向辺の間隔)よりも僅かに大きい。そのため、ボルト収容部71に差し込まれたボルト4は、頭部41がボルト収容部71の内壁面に当接してそれらの間で挟まれるので、回転が規制される。なお、ボルト4は、上述した六角ボルトに限られず、例えば、頭部41が多角形であるものの他、T字ボルト等であってもよい。ボルト収容部71の内壁面との当接による回転規制や回動面との引っ掛かり面積が大きくなるので、ボルト4は、4角ボルト(不図示)であってもよい。ただし、八角以上のボルトは、ボルト収容部71の内壁面との接触面積が小さくなるので好ましくない。
【0023】
ボルト軸孔72は、ボルト収容部71から接合面34方向及びこれと直交する方向の2軸方向にわたって連続的に開口している。ボルト軸孔72の幅は、ボルト4の頭部41の幅よりも狭い。ボルト軸孔72のボルト収容部71側の周縁(回動面73)は、側面視で1/4円弧状となっており(図4(b)参照)、ボルト4の頭部41の座面と当設する。この構成により、ボルト固定部7は、ボルト4の頭部41を回動面73に引っ掛けた状態で、回動面73の円弧状の中心を回動軸Pとし、ボルト4が半割管体3の対向方向と略平行な第1ボルト角B1と、ボルト4が第1ボルト角B1と所定の角度を有する方向になる第2ボルト角B2と、の間でボルト4を回動可能とする。なお、本実施形態における第2ボルト角B2は、第1ボルト角B1と略直交し、且つ半割管体3の軸方向と平行な方向とする。第2ボルト角B2は、2つの半割管体3を対向配置させたときに、一方の半割管体3のボルト固定部7に装着されたボルト4(胴部42に螺合されたナット5を含む)が、他方の半割管体3のナット固定部8と接触しない角度であればよい。従って、第2ボルト角B2は、図示したような、第1ボルト角B1に対して略90°である場合に限らず、90°以下又は90°以上の角度でもよい。ただし、第2ボルト角B2が90°以下の場合、ボルト4が部分的に接合面34よりも対向方向へ突出した状態となる虞がある。また、第2ボルト角B2が90°以上の場合、ボルト4を回動させる範囲が大きくなるので、作業効率が低下する虞がある。従って、第2ボルト角B2は、第1ボルト角B1に対して略90°±10°の範囲が好ましい。
【0024】
また、ボルト固定部7は、第2ボルト角B2においてボルト4の胴部42に螺合されたナット5を係止するナット係止部74を有する。ナット係止部74は、ボルト軸孔72が接合面34と直交する面方向に開口している部分の周縁において、ナット5(座金51)が嵌装されるよう凹状に形成されている。
【0025】
ナット固定部8は、ボルト4が第2ボルト角B2から第1ボルト角B1に回動するときにボルト4の胴部42を通過させる切欠部81と、切欠部81と連通しておりボルト4が第1ボルト角B1にあるときボルト4の胴部42が収容されるボルト軸溝82と、を有する。ナット固定部8の切欠部81、ボルト軸溝82及びボルト固定部7のボルト軸孔72は、2つの半割管体3を対向させたときに、その対向方向に連通する。また、ナット固定部8は、ボルト軸溝82の周縁において、ボルト4の胴部42に螺合されたナット5(座金51)が締結固定されるナット締結部83を有する。ナット締結部83は、ナット5(座金51)が嵌装される形状に掘り込み形成されている。
【0026】
上記のように構成された保護管1の取り付け手順について、上述した図1に加えて、図5(a)(b)乃至図7(a)(b)を参照して説明する。半割管体3は、ボルト固定部7に予めボルト4及びナット5が取り付けられた状態で、陸上又は海上を搬送され、海中作業を行う作業者に引き渡される。図5(a)(b)に示すように、このとき、ボルト4は、第2ボルト角B2に配置され、ナット5がナット係止部74で係止されるように、ナット5は、開放位置よりも締結方向に螺入されている。そのため、半割管体3を搬送するときに、ボルト4の揺れ動きによる騒音を発生させることもなく、ナット5がボルト4から外れてしまうことを抑制することができる。
【0027】
ボルト4・ナット5付きの半割管体3を受け取った作業者は、図1に示したように、2つの半割管体3を互いの凹面31a側が対向するように、且つ、大径接続部32が隣り合う保護管1の小径接続部33に被さるように、被保護管2の外周に配置する。保護管1を構成する対となる半割管体3は、互いに同形状なので、海中の作業者や海上から作業者に半割管体3を供給する者は、上側管か下側管かを区別する必要がなく、海底に供給された半割管体3を順序組み立てていけばよく、保護管1を取付ける作業効率を向上させることができる。また、2つの半割管体3を対向配置させる際には、位置決め凸部35a〜35dが機能するので、例えば、視界の悪く、海流や波のある海中であっても、作業者は2つの半割管体3を容易に位置決めすることができる。
【0028】
次に、作業者は、ナット5を緩めて、図6(a)(b)に示すように、回動軸Pを軸として、ボルト4を第2ボルト角B2から第1ボルト角B1になるように回動させる。なお、ナット5を緩めるために必要なナット5を回転させる回数は、ボルト軸孔72の第2ボルト角方向の長さや、ナット係止部74の深さ、座金51(図例では、ばね座金も含む)の厚み等も考慮して設計されるが、3回転よりも少ない回数で、より好ましくは2回転より少ない回数で、ナット5の係止状態を解除できるように設計されていることが好ましい。
【0029】
ボルト固定部7のボルト軸孔72に近接する角部は、面取りされているので、ナット5(座金51)の座面が当該箇所に接触することなく、ボルト4をスムーズに回動させることができる。また、ナット固定部8の切欠部81に近接する角部も、上記と同様に面取りされている。
【0030】
作業者は、図7(a)(b)に示すように、ボルト4を第1ボルト角B1に配置して、ナット5を、ラチェット等の所定の工具を用いてナット締結部83に締結固定する。このとき、ボルト4は、ボルト収容部71の内壁面で挟まれて回転しないよう規制されているので、ナット5を回転させるだけで、ナット5をボルト4に締結固定させることができる。通常、ボルトにナットを締結させる作業は、一方の手でボルトが回転しないように固定しておき、他方の手でボルトの軸部に螺合させたナットを回転させるので、両手が必要となる。これに対して、本実施形態では、ナット5を回転させるだけでナット5を締結させることができるので、片手で作業を行うことができる。
【0031】
ナット締結部83は、ナット固定部8の外側面よりも深く彫り込まれており、切欠部81はナット5(座金51)の幅よりも細いので、ナット5が多少緩んだ程度では、ナット締結部83の周縁によって、ナット5の移動が規制され、ボルト4が回動することはない。なお、ナット5を締結固定するために必要なナット5を回転させる回数は、ボルト固定部7のボルト軸孔72の第1ボルト角方向の長さや、ナット固定部8のボルト軸溝82の長さ、ナット締結部83の深さ、座金51(図例ではばね座金も含む)の厚み等も考慮して設計されるが、7回転よりも少ない回数で、より好ましくは5回転より少ない回数で、ナット5を締結固定できるように設計されていることが好ましい。
【0032】
以上の手順により、一方側のボルト固定部7及びナット固定部8が連結される。作業者は、上記と同様の手順で、他方側のボルト固定部7及びナット固定部8を連結すればよい。なお、ボルト固定部7及びナット固定部8(ボルト連結部6)は、小径接続部33の近傍にも設けられてもよいが、小径接続部33の外周は大径接続部32が被さるので、2つの半割管体3を大径接続部32近傍で連結させておけば、小径接続部33側で分離することはない。
【0033】
以上、説明したように、本実施形態の保護管1は、半割管体3に予めボルト4及びナット5を係止させておくことができ、作業者は海底に供給された半割管体3を対向配置させた後に、ナット5を緩めてボルト4を所定の角度(本実施形態では略直角)だけ回動させて、再びナット5を締結すれば、2つの半割管体3を容易に連結させることができる。すなわち、連結孔にボルトを挿入することも、ボルトの軸にナットを嵌めることも必要ないので、作業者は殆ど手さぐりでの作業も可能である。また、上述したように、ボルト4は回転しないので、ナット5の締結は片手作業で行うことができ、空いた片手では半割管体3を支持する等により、作業者は海中で安定した作業を行うことができる。従って、泥地やヘドロが多い海底等の海水の透明度が低い環境下であっても、ボルト4を回動させてナット5を締結する簡易な作業により海底ケーブル等への防護管の取付が可能になり、作業者の労働負担を低減し、作業効率を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。上記実施形態では、ボルト固定部7のボルト収容部71にボルト4の頭部41を収容し、ナット固定部8に対してナット5を締結させる構成を示したが、ボルト収容部71にナット5を収容させて、ナット固定部8に対してボルト4の頭部41を締結させる構成、すなわちボルト・ナットを逆配置にすることもできる。ただし、ボルト・ナットを逆配置にすると、例えば、ボルト4の胴部42が長すぎた場合、ナット5から突出したボルト同部先端が、ボルト収容部71の内壁に当たってしまう等の問題もある。一方、上記実施形態のようなボルト・ナットの配置によれば、ボルト4の胴部62の長さを問わないので、汎用性が高いというメリットがある。
【0035】
また、例えば、上記実施形態では、ボルト4が半割管体3の対向方向と略平行な第1ボルト角B1と、ボルト4が第1ボルト角B1と略直交方向になる第2ボルト角B2と、の間でボルト4を回動可能とするが、第1ボルト角B1及び第2ボルト角B2は、所定の範囲で傾斜している場合も含み得る。また、上記実施形態では、第2ボルト角B2は、半割管体3の軸方向と平行な方向としたが、半割管体3の軸方向と直交する方向、すなわち、ボルト4が半割管体3の外側に向けて回動するものであってもよい。ただし、ボルト固定部7及びナット固定部8(ボルト連結部6)は、大径接続部32の最大幅寸に収める必要があるので、ボルト4を回動させるための所定の長さを確保する上では、上記実施形態で示したように、第2ボルト角B2は、半割管体3の軸方向と平行な方向であることが好ましい。また、上記実施形態では、第2ボルト角B2に配置したボルト4の先端(ナット5側)は、小径接続部33方向に向く配置となるが、これと180°回転させた配置、すなわち、ボルト4の先端(ナット5側)が、大径接続部32方向に向く配置にしてもよい(不図示)。この場合、ボルト連結部6は、大径接続部32との間にボルト4の先端を収容するスペースを設ければよい。また、ボルト4及びナット5には、長や径等が適合した市販品を用いることができるのに対して、半割管体3は、それ自体が独立商取引の対象となるものである。
【符号の説明】
【0036】
1 保護管
3 半割管体
31a 凹面
34 接合面
35 位置決め部
35a 位置決め凸部
35b 位置決め凸部
35c 位置決め凸部
35d 位置決め凸部
4 ボルト
4 ナット係止部
5 ナット
6 ボルト連結部
7 ボルト固定部(第1固定部)
8 ナット固定部(第2固定部)
81 切欠部
B1 第1ボルト角
B2 第2ボルト角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7