(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、現代社会においてますます蔓延している疾患である。OSAは、睡眠中に生じる完全上気道閉塞(無呼吸)又は部分的上気道閉塞(呼吸低下)が繰り返し発症することを特徴とする。入手可能な証拠によれば、OSAの患者における睡眠中の再発性上気道(UA)閉塞の原因は、咽頭の虚脱である。10秒以上続く無呼吸の発症(気流停止)は、臨床的に有意とみなされる。無呼吸の発症は通常、約20〜40秒であって、数秒続くことはまれである。
【0003】
持続的気道陽圧法(CPAP)は、閉塞性睡眠時無呼吸に対する標準的な治療オプションである。睡眠時無呼吸の治療のための、患者の気道に持続的気道陽圧法(CPAP)が適用される一つのデバイス及び方法が特許文献1に記載されている。
【0004】
鼻マスク、鼻枕、鼻カニューレ、口マスク、口鼻ハイブリッドマスク、フルフェイス及び全面マスクによって、持続的陽圧が上気道に適用される。本明細書を通じて、マスクへの言及は、これらのマスクのいずれか一つ又は組み合わせへの言及を含むことが意図される。
【0005】
標準的なCPAPデバイスは、陽圧気流を生成する送風機ユニットからなる。この気流は通常、可撓管を介して鼻に適用された後、密封マスクを介して上気道へと向けられる。CPAPは、睡眠中に気道の開存性を維持する空気的な副木として作用する。必要な圧力は、典型的には4〜20cmH
2Oである。
【0006】
CPAPの変形例は、吸気及び呼気中に送達される圧力の独立調整を許容するBiPAPである。CPAPのもう一つの変形例は、睡眠中に気道を開いたままにするのに必要な最小圧力を達成するべく送風を自動的に調整する自動気道陽圧法(APAP)デバイスである。ほとんどのデバイスは、使用者の吸気流・時間曲線をモニタリングすることによって事象(無呼吸、呼吸低下又はいびき)が生じた後に圧力を調整する複雑なアルゴリズムを使用する。この曲線の変化が、無呼吸、呼吸低下又はいびきが発生している可能性が高いことを示す。本明細書を通じて、CPAPへの言及は、これらの形態の圧力送達のいずれか一つ又は組み合わせへの言及を含むことが意図される。
【0007】
従来型CPAPシステムにおいて空気は、患者のベッドに近接して配置されるのが典型的な空気流発生器によって、マスクへ供給される。空気流発生器は、患者のマスク内に、典型的には20リットル/分から170リットル/分の範囲であるが通常は60リットル/分から120リットル/分の範囲にある気流を送風することによって、必要な圧力を生成する。空気流発生器が発生した空気をマスクに送達するには、大径の空気送達管が必要とされる。CPAP治療において使用されるマスクは一般に、気体を大気へ排出する通気孔を含む。通気孔は通常、マスク内に、又はマスクに隣接する気体送達ダクト内に配置される。ほとんどの気流が、排気ポートを介して逃げ出し又は漏れ出す。患者は典型的に、6リットル/分から12リットル/分の呼吸空気しか必要としないからである。従来型CPAPシステムは典型的に、送風機が生成する気流を変えることによって圧力を制御する。
【0008】
従来型システムにおいて、患者に送達される高気流が多くの望ましくない副作用をもたらす。管が患者の動きを拘束するので、マスクシールと患者の顔との間の漏れ及び/又は不快感を引き起こす「配管の引きずり」がもたらされる。加えて、管の長さが、加圧された空気を空気流発生器からマスクまで送達する場合の応答遅延を与える。さらに、配管の直径及び長さに起因して増加した流れインピーダンス及び/又は圧力降下には、空気送達管に沿った圧力降下を補償する大きな送風機モータが必要となる。
【0009】
高気流関連の合併症には、窒息又は閉所恐怖症の感覚、息を吐くことの困難性、不眠症、筋骨格胸部不快感、呑気症、副鼻腔の不快感及び(空気漏れに起因する)結膜炎が含まれる。加えて、空気嚥下は共通の問題である。
【0010】
多くの患者において、気流は、鼻及び/又は口の乾燥、鼻漏、鼻閉、並びに頻繁な鼻血を引き起こす。加湿器の使用によってある程度は改善するが、加湿器自体が新たな問題をもたらす。例えば、フェイスマスクの中に流れ出て極めて不快な配管内側の液滴形成(レインアウト)である。CPAP加湿器において使用される蒸留水は、生物を成長させて悪臭を生じさせる。
【0011】
見積もられていることだが、患者の半数以上は、既存の方法の不都合及び副作用ゆえに、処方されたCPAP治療に従うことができない。
【0012】
したがって、高流量の送風機及び管の必要性をなくすとともに有効なOSA治療方法及び装置を発明することが望ましくかつ有利である。
【0013】
したがって、本発明の目的は、先行技術の不利益を克服し、かつ、気道閉塞を含むOSA及び他の疾患を治療する改善された方法及び装置を与えることにある。詳しくは、本発明の目的は、低流量の加圧空気によって上気道閉塞を防止し、かつ、気道の開存性を回復させる装置を与えることにある。
【0014】
もう一つの目的は、CPAPシステムを簡略化して当該システムのサイズを最小化することにある。
【0015】
上述の目的は、本発明に係る装置及び方法によって達成される。
【0016】
本明細書のこのセクション及び他のセクションで言及される各公表文献の開示は、その全体がそれぞれ参照としてここに組み入れられる。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、対象の上気道の閉塞を防止することによってOSA及びいびきを治療し、並びに、かかる閉塞が生じた場合に、閉塞した気道の開存性を回復させる方法及びシステムを与えることを企図する。かかる目標は、加圧された空気を、かかる圧力が気道の閉塞を防止するべく又はかかる閉塞が生じた後に気道の開存性を回復させるべく必要とされ得る時である呼吸周期の一部分の間にのみ、患者の呼吸開口部に与えることによって達成される。かかる加圧空気が必要とされない時には、システムは、加圧されていない大気の自発呼吸を許容する。
【0019】
システムは一般に、加圧空気を患者の呼吸開口部に送達するマスクと、患者の呼吸状態を連続的に評価するセンサ機構と、当該マスク内に加圧空気を発生させる圧力発生器とを含む。
【0020】
システムは、呼気周期の選択部分の間にのみ、加圧空気を呼吸開口部に適用する。かかる加圧空気は、上気道内径の増加をもたらし、ひいては、上気道の閉塞原因とされるのが典型的な咽頭の虚脱を防止する。
【0021】
システムは、かかる加圧空気をマスクの中に、当該マスクの排気弁を通る呼気の空気流を選択的に制限することによって発生させる。発生する空気圧力のレベル並びにその始まり及び終わりのタイミングは、個々の患者の必要性に合うように動的に選択することができる。
【0022】
加圧空気は、かかる加圧空気がマスクの中へ制御可能に解放できるようになるまでずっと圧力発生器によって発生かつ蓄積されるので、当該マスク内の圧力を上昇させる。
【0023】
患者は、気道が閉塞されていない限り、自発的に呼吸をすることができる。閉塞が生じると、加圧空気が患者の上気道に与えられて、当該閉塞を除去しかつ当該気道の開存性回復を刺激する。
【0024】
システムは、当該システムがさらに快適に利用されるように、患者が、無呼吸事象が生じ得る睡眠フェーズを開始した後になって初めて動作するソフト始動をするべく設定される。かかる開始の時刻は、当業界で一般に知られているデータを使用して見積もられる。システムはまた、無呼吸事象の発生をセンシングすることによって、かかる開始を検出する。
【0025】
本発明の追加的な側面は、現代のCPAPシステムに存在するのが典型的な、呼吸パターン、無呼吸事象、利用履歴及び遠隔レポートを記録するべく適合された装置、並びに追加的な機能を含む。
【0026】
本発明に係る方法及び装置は、気道の閉塞を含むOSA、いびき及び他の医学的疾患を治療するべく、並びに呼吸状態を連続的にモニタリングするべく、広く使用することができる。
【0027】
方法はさらに、加圧されていない大気の自発呼吸のための手段を与えることも含む。
【0028】
方法は、加圧空気を患者の呼吸開口部に、呼吸周期の所定部分の間にのみ選択的に与えることを含む。
【0029】
方法はさらに、加圧空気を患者の呼吸開口部に、呼吸周期の呼気フェーズの一部分の間に与えることにより、上気道内径を増加させて呼吸周期の後続吸気フェーズの間の上気道閉塞を防止することを含む。
【0030】
方法はさらに、加圧空気を上気道に、吸気の試みが所定時間内に吸入成功とならない場合にのみ適用することを含む。方法はさらに、閉塞された上気道の圧力を開存性が回復するまで増加させること、及び上気道の虚脱を防止し得る咽頭散大筋反射を誘発することを含む。
【0031】
方法はさらに、患者が自発呼吸をする時に加圧空気を発生かつ蓄積すること、及び蓄積された加圧空気を閉塞が生じた時に患者の上気道に与えて当該閉塞を除去しかつ当該上気道の開存性を回復させることを含む。
【0032】
方法はさらに、患者が、無呼吸事象が生じ得る睡眠フェーズを開始するまで自発呼吸を許容し、その後加圧空気を選択的に適用することを含む。
【0033】
方法はさらに、呼気の気流が排気を介してマスクから逃げ出すことを制御可能に(完全に又は部分的に)制限することによって加圧空気を与えることを含む。
【0034】
方法はさらに、圧力発生器又は加圧空気格納容器等のような外部源から加圧空気を与えることを含む。
【0035】
以下のことが本明細書を通じて理解される。
1.空気への言及は、呼吸可能な任意の気体を含むことを意味する。
2.呼吸開口部への言及は、鼻孔若しくは口又は鼻孔と口の組み合わせのいずれかを含むことを意味する。
3.自発呼吸への言及は、加圧されていない又は周囲の空気の呼吸を意味する。
4.ゼロ圧力は、周囲の大気圧を意味する。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、OSAを治療する既存システムに対して多数の利点を提供する。本発明は、必要な圧力を生成するべく極めて低い平均気流の使用を許容する。かかる低気流は、以下のような既存システムの高気流関連副作用を排除することができる。すなわち、窒息又は閉所恐怖症の感覚、息を吐くことの困難性、不眠症、筋骨格胸部不快感、呑気症、副鼻腔の不快感、結膜炎及び空気嚥下、鼻及び/又は口の乾燥、鼻漏、鼻閉及び頻繁な鼻血、並びに高気流によりもたらされる騒音の不都合である。
【0037】
低気流は加湿器の使用を必要としないので、コストが低減され、かつ、レインアウトのような加湿器に関連する副作用が回避される。
【0038】
従来型システムに典型的なかさばりかつ騒々しい送風機の代わりに、極めて小さくかつ軽量な圧力発生器を使用することができる。かかる圧力発生器は、マスク又はヘッドギアに好都合に一体化することができるので、配管に関連する欠点を回避することができる。従来型システムに典型的なかかる欠点は、患者の動きの拘束、「配管の引きずり」、加圧された空気を空気流発生器からマスクまで送達する場合の応答遅延等を含む。
【0039】
追加的な利点は、呼気フェーズの一部分の間、圧力が既存システムよりも低くされるので、呼気が快適になり、かつ、システム内のCO
2及び湿気の集積を低減することができることにある。
【0040】
もう一つの利点は、患者が無呼吸事象を特徴とする睡眠フェーズにある時のみ、システムを自発呼吸に介入するべく設定できることにある。
【0041】
さらにもう一つの利点は、本発明に係るシステムが代替的なソリューションよりも、簡潔、好都合、及び安価となることにある。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、患者の気道の閉塞を防止するシステムを与えることを企図する。本発明はさらに、気道の開存性を、かかる気道が閉塞された時に回復させるシステムを与えることを企図する。本発明の原理によれば、これらの目標は、患者の呼吸周期の呼気フェーズの特定部分の間にのみ患者の上気道に一時的上昇圧力(Temporary Elevated Pressure(TEP))をもたらすことによって、又は/及び閉塞が検出された時に加圧空気の短いサージを導入することによって達成される。残りの時間、患者は、大気圧にある周囲空気の自発呼吸をするべく設定される。
【0046】
TEPは、患者自身の呼気空気流を機械的に制限し、ひいては上気道に圧力上昇を引き起こすことによって発生される。TEPは、例えば、呼気気流のピーク後、又は呼吸周期の呼気終了セグメント(End of Expiration Segment(EES))中のような呼気フェーズの特定部分の間に発生される。
【0047】
TEPは、上気道が閉塞されるようになるがかかる閉塞が臨床的に有意となる前に、加圧空気の短いサージを患者の呼吸開口部に適用することによって発生される。
【0048】
一つの実施形態において、TEPは、睡眠中にのみ与えられる。例えば、患者が眠りに落ちるまで、又は患者が、無呼吸事象を特徴とする睡眠フェーズを開始するまで、患者が周囲空気の自発呼吸をすることができるように遅延が与えられる。
【0049】
ここで
図1を参照する。
図1は、通常の鼻呼吸空気経路12及び口呼吸空気経路13を例示する。無呼吸の発症中、鼻腔15及び口腔16は、閉塞18をもたらす舌14のような虚脱した組織によって気管17から隔離される。
【0050】
ここで
図2Aを参照する。
図2Aは、通常の自発鼻呼吸中における患者の鼻マスクの中の空気圧力P1の波形の一例を例示する。自発呼気中、圧力は、その最大値Pmaxまで急上昇して大気圧まで徐々に低下する。呼気終了セグメントが、一回換気量体積のほとんどが肺から追い出された時点から後続の吸気の試みが開始するまでの時間として定義される。吸気が始まると、圧力は、Pminまで急降下し、その後徐々に上昇して大気圧に戻る。
【0051】
信じられていることだが、閉塞が典型的にEESの間に生じる一方、吸気の開始は、気道の完全閉塞をまたも誘発し得る急峻な陰圧を生成する。
【0052】
図2Bは、自発呼吸をする対象の患者用鼻マスクの中における、上気道の全閉塞が生じた時の、空気圧力P1の上気道圧力波形の一例を例示する。EESの終わりにおいて、対象が吸気の試みを行う時、閉塞箇所上の圧力はゼロに近いままとなる。
【0053】
図2Cは、時刻T1及び時刻T2間にTEPを導入することによって修正された、患者の鼻腔の中における空気圧力の波形の一例を例示する。そのTEPは、呼吸周期のEESセグメントにほぼ対応する。TEPの最大圧力はPbである。発生したTEPが気道の開存性を保持する一方で患者に十分に耐えられるようにパラメータT1、T2及びPbが選択される。
【0054】
時点T1の値は、呼吸周期曲線の一以上の特徴基準点の後の時刻として設定される。例えば、
図2Dに示されるように、かかる基準点は、呼気の開始を明示するゼロ交差となる。もう一つの基準点は、ピーク呼気圧力である。加えて、T1は、低下する圧力が、Pmaxに対する一定値に到達する時点として設定される。例えば、T1がPmaxの直後に選択される一方、T2は、
図2Dに例示されるようにP1がゼロまで降下する時に選択される。
【0055】
基準点の検出は、患者の呼吸周期を表す圧力曲線、及び空気流量、温度又は任意の他のパラメータに基づく。例えば、かかるパラメータは圧力P1である。
【0056】
一般に圧力P1は、患者の呼気気流及び流量制限レベルに依存する。所望のTEPは、患者の呼気空気流を選択的に制限することによって、制御可能な態様で発生される。適用される制限の強度と同様に、かかる制限のP1=Pon時の開始タイミング(T1)及びP1=Poff時の終了タイミング(T2)が、最大圧力Pbに影響を及ぼす。これらのパラメータは、患者への不快感を最小限にしての無呼吸事象の最適な防止を目的として、動的に調整することができる。
【0057】
無呼吸を防止するためのPb、T1及びT2の最適な値は、患者ごとに別個となる。さらに、同じ患者に対しても、最適なパラメータは、夜ごとに及び同じ夜の間であっても変動し得る。典型的に、TEPは、患者への不快感を最小限にして値Pb、T1及びT2を各患者個人に自動的かつ動的に合わせることによって上気道閉塞が防止されるように制御される。典型的に、呼気気流は、呼気フェーズの開始時に最高となる。したがって、呼気フェーズにおいて流量制限の開始が早期になるほど、圧力Pbは高くなる。Pbはまた、制限の継続時間(T2−T1)によって及び適用される制限の強度によっても制御される。
【0058】
パラメータT1、T2、及び制限の強度は、所定のアルゴリズムを使用して動的に選択することができる。例えば、圧力Pbは、無呼吸の頻度が最小限となる最適値Pbまでずっと、引き続いての呼吸周期それぞれにおいて徐々に又は周期的に増加する。最大圧力Pbに加えて、TEPの間の平均圧力、並びにTEPの継続時間及び他のTEPの特徴も、無呼吸の頻度が最小限まで低下するまでずっと動的に調整することができる。TEP期間中の圧力関数は、増加、減少、振動又は他の形態であり得る。
【0059】
上気道が閉塞されるようになる時に適用されるTEP
【0060】
上気道の閉塞は、圧力、流量、温度、酸素飽和度、動き及び/又は他のパラメータのような呼吸パラメータをモニタリングすることによって検出される。例えば、かかる呼吸パラメータの一つが圧力P1である。閉塞が、好ましくはかかる閉塞が臨床的に有意となるのに十分長く持続する前に検出されると、加圧空気のサージが上気道に導入されて当該上気道の圧力を、当該閉塞を一時的に除去するのに十分なレベルまで上昇させる。咽頭センサに沿って得られる気流の開始は、咽頭散大筋反射を誘発する必要がある。その反射は、吸気(陰圧)及び気流が持続する限り、上気道を虚脱から防止する咽頭散大筋を活性化させる必要がある。換言すれば、閉塞が一時的に除去されることにより、気流によって刺激された散大筋は、上気道の開存性を維持することが意図される。その結果、吸気フェーズが完了する。
【0061】
図3は、本発明を実施するべく使用される一例のシステム20のブロック図である。システム20は、
図1の鼻腔15若しくは口腔16又は双方の腔の組み合わせを表す腔22に接続される。腔22は、気管25を介して肺24に接続される。
【0062】
システム20は、腔22に密封可能かつ取り外し可能に接続されて腔22及びマスク23間に気流34を許容するマスク23を含む。マスク23は、調整可能弁27によって制御される孔であって、大気への気流32を許容する孔を有する。システム20はさらに、マスク23に接続された圧力発生器ユニット21を含む。圧力発生器ユニット21はセンサ42を含む。センサ42は、マスク23内の圧力を測定する圧力センサであり、又は、呼吸周期の段階及び気道の開存性を示すデータを検出することができる音響センサ若しくは流量センサ若しくは他のタイプのセンサ若しくはこれらの任意の組み合わせである。マスク23は、弁26によって制御される大気への第2孔を有する。弁26は、必須ではないオプション追加物である。
【0063】
圧力発生器ユニット21はさらに、センサ42からのデータを受信かつ分析し及び弁27を制御する制御器73を含む。本明細書を通じて、制御器への言及は、本発明に係る必要な機能を達成するべく当業界で知られている電源、メモリコンポーネント、A/D変換器、増幅器、ドライバ、有線/無線通信コンポーネント、電磁弁、モータ、ポンプ等のような電気機械コンポーネントのような任意の周辺コンポーネントを含むコンピュータ又はロジックコンポーネントへの言及を組み入れることが意図される。
【0064】
圧力発生器ユニット21はさらに、能動コンポーネントに接続された電源72を含む。
【0065】
弁26は、マスク23内の圧力P1がマスク23外の大気圧未満の場合に開く一方向弁である。これによって、気流31は、外部からマスク内へと一方向に非制限的に流れることができる。システムが弁26を含まない場合、外部大気からの空気は、弁27を介してマスク内へ流れる。
【0066】
弁27を通る空気流32は、双方向性であり、かつ、制御器73によって制御可能である。弁27は、通常開であり、かつ、完全に開、完全に閉、又は部分的に開に制御可能である。これにより、空気流は制御可能に制限される。呼気の間、患者が吐き出す空気は弁27を介して外へ流れる。弁27を通る気流が、完全に又は部分的に閉の弁27によって制限されると、マスク23内の空気圧力P1が増加する。したがって、弁27を通る気流が制御可能に制限されるので、制御された圧力P1が許容される。
【0067】
センサ42が圧力センサとして存在する場合、これが圧力P1の閉ループフィードバックとして使用され、TEP期間中の圧力P1を正確に制御することができる。
【0068】
ここで
図2Cに戻る。
図2Cは、本発明の一つの実施形態に係るマスク23の中の空気圧力P1の波形を模式的に例示する。吸気フェーズの間、マスク内の圧力は陰圧となり、弁26が開となって非制限の気流が、弁26を通って及び好ましくは弁27を通ってマスク23の中へ流れることが許容される。弁26が存在しない場合、外部大気からの空気は、弁27を通ってマスクの中へ流れる。
【0069】
呼気フェーズの間、時点T1は、センサ42が測定した呼吸信号曲線における一つ又はいくつかの特徴基準点に対して設定される。例えば、時点T1は、呼気フェーズの開始に対する又はPmaxの時点に対する時間として設定することができる。時点T1はまた、圧力P1が、一定であり又はPmaxに対する値である所定値Ponに到達した時に設定することもできる。例えば、T1は、Pmaxの後であって、P1が減少してPon=Pmax*0.8となった時に定めることができる。
【0070】
時刻T1において、制御器73により弁27は、流量の制限を開始する。こうして圧力P1は、所望値Pbに到達する。弁27は、時点T2までずっと気流を制限し続ける。
【0071】
時点T2は、センシング手段42が測定した呼吸信号曲線における一つ又はいくつかの特徴基準点に対して設定される。例えば、時点T2は、T1に対する時間として設定することができる。時点T2はまた、圧力P1が、一定であり又はPbに対する値である所定値Poffに到達した時に設定することもできる。例えば、T2は、P1がPoff=Pb*0.2まで減少し又は圧力P1がゼロまで降下する時に定めることができる。
【0072】
値T1、T2、Pon、Pb及びPoffは、時点T1において呼気流量及び残りの一回換気量体積が、患者への呼気不快感を最小限にして後続の吸気フェーズ中の閉塞頻度を防止又は最小限にする程度まで気道内径を増加させるべく必要なTEPを発生するのに十分となるように選択される。
【0073】
T1、T2、流量制限強度、及び得られるPbの最適値は、患者ごとに別個となる。さらに、同じ患者に対しても、最適なパラメータは、夜ごとに及び同じ夜の間であっても変動し得る。
【0074】
典型的に、TEPは、値Pb、T1及びT2を各患者個人の必要性に自動的かつ動的に合わせて上気道閉塞が防止されるように制御可能である。こうして、上気道の閉塞を防止する一方、呼気の不快感を最小限にすることができる。典型的に、通常の呼吸において、呼気気流は、呼気フェーズの開始時に最高となる。したがって、呼気フェーズにおいて流量制限の開始が早期になるほど、圧力Pbは高くなる。Pbはまた、流量制限(どの程度まで弁27を閉とするか)のレベル及び強度並びに制限期間の継続時間(T2−T1)によっても制御される。
【0075】
パラメータT1、T2及びPbは、所定のアルゴリズムを使用して治療中に動的に調整することができる。例えば、T1、T2、及び弁27の強度制限の強度を操作することにより、圧力Pbは、無呼吸事象の頻度が最小限となるPbの最適値(最適Pb)に到達するまでずっと、引き続いての呼吸周期それぞれにおいて徐々に増加し得る。同様に、アルゴリズムは、患者個人に対する最適パラメータに到達するまでずっとTEPの開始(T1)及び継続時間(T2−T1)を徐々に修正することができる。さらに、制限強度を操作することにより、TEPの間に圧力P1曲線の形状を制御することができる。これにより、治療のさらなる最適化が許容される。
【0076】
例えば、TEPは、
図2Cに例示される呼気終了セグメント(EES)と重なるように設定される。T1は、低下するP1が、センサ42が検出する値P1=Ponに到達する時に設定される。その時点において、制御器73は、弁27を部分的に又は完全に閉にする。したがって、弁27を通る気流が実質的に低減されてマスク内の空気圧力P1は値Pbまで上昇する。圧力P1が値Pbに到達した後、制御器73は、弁27を部分的閉に維持する。こうして、圧力P1は、後続の吸気フェーズの開始までずっとゆっくり低下することが許容される。T2は、P1=Poff=0に設定される。その時点において、制御器73は、弁27を完全開にして気流をマスク23内へと許容する。
【0077】
ゼロ未満に降下する圧力P1は、吸気フェーズの開始を示す。本明細書を通じて、陰圧への言及は、大気圧未満の圧力への言及を組み入れることが意図される一方、ゼロ圧力は、大気圧への言及を組み入れることが意図される。
【0078】
ここで
図4を参照する。
図4は装置20の一例を例示する。装置20において、圧力発生器ユニット21は、マスク23の中に加圧空気のサージを生成することができる圧力サージ発生器28をさらに含む。本明細書を通じて、「圧力サージ発生器」への言及は、高加圧空気の短いサージを与えることができる微小デバイスへの言及を組み入れることが意図される。
【0079】
圧力サージ発生器28は、制御器73によって制御可能であり、かつ、マスク23に密封可能に接続される。圧力サージ発生器28は作動すると、加圧空気33のサージをマスク23の中に射出してTEPを生成する。その時点において上気道の閉塞が存在する場合、弁27は実質的に閉とされ、かかる加圧空気のサージは、患者の閉塞箇所上の上気道に一時的上昇圧力を引き起こす。
【0080】
図5に示される例の装置において、圧力サージ発生器28は、加圧空気を発生することができる空気ポンプ36からなる。ポンプ36は、空気圧力を発生することができる微小デバイスである。比較的大きく、重くかつ騒々しいが高流量の空気(数十リットル/m)をもたらすことができる送風機、タービン、ファン等とは対照的に、ポンプ36は小サイズかつ軽量(約10〜20グラム)である。典型的に、ポンプ36は、低い電力消費量を有し、かつ、数百ミリリットル/分の気流を生成しながら数百ミリバールの空気圧力を発生することができる。圧力サージ発生器28はさらに、加圧空気を蓄積及び/又は格納することができる加圧気体貯蔵要素35からなる(加圧気体貯蔵要素は以下に詳述される)。加圧気体貯蔵要素35内の空気の体積は比較的小さく、好ましくは数十から数百ミリリットルである。これにより、圧力サージ発生器28のサイズを極めて小さくかつ軽量にすることができる。加圧気体貯蔵要素内の空気は、ポンプ36によって数百ミリバールの圧力レベルまで加圧される。
【0081】
圧力サージ発生器28はさらに、制御可能な通常閉の弁37を含む。弁37が制御器73によって開に設定されると、加圧気体貯蔵要素35からの加圧空気が急速にマスク23の中に解放される。こうして、マスク23内の圧力P1が、上気道の閉塞を除去するのに十分なレベルの上まで上昇する。代替的に、ポンプ36からの気流は、加圧気体貯蔵要素35をバイパスし、弁37を通ってマスクの中に流れる。ポンプ36及び弁37双方が制御器73によって制御される。
【0082】
図2Eは、マスク23の中の典型的な圧力波形の一例を例示する。この例において、上気道が閉塞されるようになると、吸気フェーズは、センシング手段42が検出した呼気期間が終わった後、予め選択された時間Td内では通常どおりに開始しない。したがって、制御器73は(時点T1’において)弁27を完全閉とすることで、患者の上気道閉塞箇所上の一部分とマスク23とからなる密封チャンバを作り出す。制御器73はその後、圧力サージ発生器28を作動させて、加圧空気のサージを加圧気体貯蔵要素35からマスク23の中に与える。したがって、マスク23内の圧力P1は、患者の閉塞箇所上の上気道の圧力と同様に、閉塞が除去されるまでずっと上昇する。
【0083】
閉塞の除去により、咽頭センサに沿った気流が生成される。この気流は、咽頭散大筋反射を誘発する。その反射は、吸気がもたらす陰圧及び気流が持続する限り、上気道を虚脱から防止する咽頭散大筋を活性化させる必要がある。継続時間Tdは、典型的に数秒として選択されるが、好ましくは10秒未満で又は医学文献において無呼吸事象とみなされる任意の最小時間未満で、上気道の開存性を回復できるように選択される。
【0084】
閉塞が除去されると、圧力P1はゼロ未満に降下する(時点T2’)。その時点において、弁26(弁26が存在する実施形態である)が開となり、大気の気流をマスクの中へと許容する。加えて、制御器73は、弁27を開にしてマスク23の中への気流を許容し及び/又はさらに増加させる。システムが弁26を含まない場合、外部大気からの空気は弁27を介してマスクの中に流れる。
【0085】
加圧空気はまた、上気道の閉塞にかかわらず、EESの終わりに与えることもできる。閉塞が存在しない場合、加圧空気は、患者になんら不都合を引き起こすことなく肺の中へ流れる。
【0087】
マスク23は、鼻のみの又は鼻孔及び口双方を覆う「フルフェイス」マスクである。ここで、
図6Aに示される一つの実施形態を参照する。
図6Aは、鼻マスク123の詳細な断面図を例示する。マスク123は、上で言及したマスク23の一例である。マスク123は、シリコーンゴムのような硬質若しくは半硬質ポリマー又はエラストマー材料で作られたハウジング113を含む。マスク123はさらに、シリコーン又は同様の材料から作られたノズル組付体122を含む。ノズル組付体122は、永久に又は取り外し可能にハウジング113に接続かつ密封される。ノズル122とハウジング113との間には孔124が許容される。ハウジングはさらに、孔212及びオプションの孔214を含む。
【0088】
ハウジング113はさらに、密封的に孔214に取り付けられた一方向弁128を含む。弁128は、当業界で知られる任意の適切な設計を有する。かかる弁の一例は、Vernay Laboratories社(米国オハイオ)が作るダックビル型弁である。
【0090】
ハウジング113はさらに、密封的に及び好ましくは取り外し可能に孔212に取り付けられた呼吸弁127を含む。弁127は、硬質又は半硬質プラスチック材料から作られたハウジング125を含む。弁組付体127はさらに薄壁弾性管129を含む。薄壁弾性管129は、ハウジング125の内側に密封的に取り付けられ、かつ、マスク123内の体積130を外部大気に接続する通気孔を形成する。弁127はさらに、ハウジング125と、破線で例示される管129の外壁との間に密封チャンバ131を含む。チャンバ131は孔ポート132を有する。加圧空気は、孔ポート132を介してチャンバ131の中に与えられる。これにより、管129が内側につぶれ又は張り出し、弁127を通る気流が制限される。その制限は、弁127を部分的に又は完全に閉止する。制限の程度は、加圧空気を所定時間ポート137に与えることによって制御される。
【0091】
チャンバ131の内側の圧力が、圧力P1とマスク外部の大気圧との圧力差を克服するのに十分高くされるので、弁127が閉のままとなる。ポート132を介してチャンバ131内の圧力が解放されると、管129の壁はその従前の形状129’に戻る。こうして、非制限の空気流が弁127を通ることが許容される。チャンバ131内の圧力は、弁が完全開若しくは完全閉又は部分的に開とされるように設定される。こうして、マスク123内の圧力P1が制御される。
【0092】
図6Bは、弁127の代替設計を有する弁127’を例示する。弁127’は、つぶれ可能な管129の代わりに、ハウジング125の中に同心配置された小径内側管135からなる。管135の遠位端が密封される一方、管135の近位端は孔ポート132’に接続される。加圧空気は孔ポート132’を介して与えられる。内側管135の遠位端及び近位端は、弁127’を通る空気の実質的に非制限の通路を許容する複数のスポークによってハウジング125に固定される。内側管は空気通路孔119を有する。空気通路孔119は、内側管135の内腔をバルーン126の内壁に接続する。バルーン126は、内側管135の頂部に配置される。そのバルーンの遠位端及び近位端は内側管135に密封的に接続される。加圧空気がポート137’に与えられる。これにより、バルーン126は膨張し、かつ、弁135を通る気流を制限する。制限の程度は、加圧空気を所定時間ポート137’に与えることによって制御される。
【0093】
弁127が完全開になると、当該孔は、自発呼吸中に十分かつ非制限の流量を許容する程度に十分大きい。完全開状態にある弁127の通気孔の断面積は、好ましくは少なくとも約0.2cm
2であるが、好ましくは約0.5cm
2以上である。
【0094】
留意すべきことだが、加圧空気をポート132に与えることは異なる経路で達成し得る。加圧空気を与える一つの経路は、以下に述べるように加圧空気発生器からの経路である。代替的に、ポート132は、加圧空気又は他の気体を小さなキャニスター(図示せず)から受け取る。
【0095】
弁組付体126の代わりに、孔214が密封される。さらにもう一つの実施形態において、弁126は、弁127と同様のもう一つの弁(図示せず)であって弁127と同時かつ並列に利用できる弁によって置換される。
【0096】
ハウジング125はさらに、体積130をセンシング手段42に空気的に接続する孔ポート133を含む。
【0097】
ハウジング125はさらに、加圧空気を圧力発生器21からマスク123の中へ与える孔ポート134を含む。
【0099】
ここで
図7Aを参照する。
図7Aは、加圧気体貯蔵要素35の一つの実施形態の断面図を詳細に例示する。加圧気体貯蔵要素35は、硬質プラスチックから作られたバレル233からなる。バレル233は、一側に孔243を有し、他側に孔244を有する。加圧気体貯蔵要素35はさらにプランジャ先端部234を含む。プランジャ先端部234は、ゴムまたは同様の材料から作られ、かつ、バレル内を密封的に摺動するべく適合される(注射器のように)。加圧気体貯蔵要素35は、ばね245を含む。ばね245は、バレル233の孔243とプランジャ先端部234との間に配置される。加圧空気が孔244に与えられると、プランジャ先端部234がバレル内を閉止端に向かって摺動するので、ばね245に負荷が与えられる。
【0100】
ここで
図7Bを参照する。
図7Bは、もう一つの加圧気体貯蔵要素35の断面図を詳細に例示する。この実施形態において、
図7Aのプランジャ先端部234及びばね245の代わりに弾性膜238が使用される。加圧空気が孔244に与えられると、膜238は、圧力差によってバレル内で伸展し、かつ、もたらされた体積内に加圧空気を捕捉する。
【0101】
加圧気体貯蔵要素35のさらにもう一つの変形例は、天然ゴム又は合成ゴムのような弾性材料から作られたバルーンである。
【0102】
留意すべきことだが、加圧気体貯蔵要素は他の実施形態も含み得る。これらの実施形態において、加圧気体貯蔵要素は、廃棄されると、圧力差のみならず加圧気体貯蔵要素の構造物の弾性動力によっても空気を解放することができる。これにより、実質的にすべての空気が放出されるまでずっと、加圧気体貯蔵要素を高圧に維持することができる。ばね245又は弾性膜/バルーンは、加圧気体貯蔵要素を充填するのに必要な圧力が、20から1000cmH
2Oであるが、好ましくは200から500cmH
2Oとなるように選択される。
【0103】
加圧気体貯蔵要素35はまた、圧力平衡に到達するまでずっと加圧空気を放出することができる気体シリンダのような硬質格納容器から作られる。
【0105】
図8は、圧力発生器ユニット21の詳細な記載である。例示の実施形態において、圧力発生器ユニット221は、
図5の圧力発生器36として機能する微小空気ポンプ228を含む。かかる空気ポンプ228の一例は、Gadner Denver Thomas社(独国プッフハイム)が製造する隔膜ポンプ2002 VD DCである。 このポンプは、制御器273によって制御される。制御器273は、当該ポンプを可変ポンプ速度で駆動するのに十分な電流を与えること並びに当該電流のオン及びオフを切り替えることができる。ポンプ228は、
図7Bに描かれる加圧気体貯蔵要素35と同様に、加圧気体貯蔵要素235に空気的に接続される。ポンプ228及び加圧気体貯蔵要素235は、圧力センサ243に空気的に接続される。圧力センサ243は、加圧気体貯蔵要素235内の圧力を制御するべく制御器273に電気的に接続される。かかる圧力センサの一例は、Freescale Semiconductor社(米国アリゾナ)が製造するMPX5010である。
【0106】
加圧気体貯蔵要素235は、弁230の通常閉(NC)ポートに空気的に接続される。弁230は、3方、2位置の微小電磁弁である。例えば、LEE社(米国コネチカット)が製造するPDS−50である。弁230の共通ポート(COM)が、シリコーンのような可撓性材料から作られた管232を介して、マスク123のポート134に空気的に接続される。弁230の通常開ポートNOは密封される。弁230の各位置間の切り替えは制御器273によって制御可能である。
【0107】
加圧気体貯蔵要素235は、一方向逆止弁246を介して弁231の通常閉(NC)ポートに空気的に接続される。弁246は、加圧気体貯蔵要素235から弁231への空気流を許容するべく位置決めされる。かかる逆止弁の一例は、Vernay Labs(米国オハイオ)が製造するX−30465である。弁231は弁230と同様である。弁231の共通ポート(COM)が、シリコーンのような可撓性材料から作られた小管237を介して、マスク123のポート132に空気的に接続される。弁231の通常開ポートNOが、直接的に又は流量低減器248を介して大気に開かれる。弁231の各位置間の切り替えは制御器273によって制御可能である。
【0108】
圧力発生器ユニット221はさらに圧力センサ242を含む。かかる圧力センサの一例は、Measurement Specialties社(米国バージニア)が製造する5701低圧モジュールである。圧力センサ242は、シリコーンのような可撓性材料から作られた小管236を介して、マスク123のポート133に空気的に接続される。圧力センサ242は、マスク123内の圧力データを与えるべく制御器273に電気的に接続される。
【0109】
圧力発生器ユニット221はさらに、再充電可能電池のような電源272を含む。かかる電池の一例は、VARTA Microbattery(独国エルヴァンゲン)が製造する56493再充電可能リチウムポリマー電池である。圧力発生器ユニット221はさらに、電源272を再充電するための充電ポート(図示せず)を含む。圧力発生器ユニット221はさらに、硬質又は半硬質プラスチック材料から作られるのが典型的なハウジング240を含む。
【0110】
典型的に、圧力発生器ユニット221は以下の態様で動作することができる。好ましくは、ポンプ228は、加圧気体貯蔵要素235の中に空気を送り込むべく構成される。圧力センサ243は、加圧気体貯蔵要素235内の圧力を連続的にモニタリングして所望圧力範囲内に維持する。かかる圧力範囲は、20〜1000cmH
2Oであるが、好ましくは200〜500cmH
2Oである。制御器273は、周期的にポンプ228を作動させることによって圧力を制御する。制御器273は、マスク内の圧力データを圧力センサ242から連続的に受信する。弁127(
図6A)又は弁127’(
図6B)を部分的閉又は完全閉とする必要がある時点において、制御器273は弁231を作動させる。その結果、加圧空気が管237を通って流れ、管129(
図6A)の内側へのつぶれ又は張り出しが引き起こされる。したがって、弁127の通気孔の断面積が低減される。同様に、弁127’(
図6B)を部分的閉又は完全閉とする必要がある時、制御器273は弁231を作動させる。その結果、加圧空気が管237を通って流れ、管129’(
図6B)の外側への張り出しが引き起こされる。したがって、弁127’の通気孔の断面積が低減される。
【0111】
弁246は、加圧気体貯蔵要素235内の圧力が降下した場合、チャンバ131(
図6A)からの逆流を防止する。弁127を開とする必要がある場合、制御器273は弁231の作動を解除する。その結果、チャンバ131からの加圧空気が弁231のNOポートを介して逃げ出し、流量低減器248を通って大気へ出る。例えば、流量低減器248は、チャンバ131からの実質的にすべての加圧空気が1秒以内に逃げ出すことを許容する。
【0112】
所定のデューティーサイクルで連続的に弁231の作動及び作動解除を行うことにより、弁127の断面積を制御することができる。したがって、弁127/127’の制限レベルを必要なレベルに制御することができる。
【0113】
加圧空気をマスク123内に与える必要がある時点において、制御器273は、呼吸弁127/127’を閉とするべく弁231を作動させ、その後弁230を作動させる。こうして、加圧空気は、加圧気体貯蔵要素235からマスク123の中へ流れる。
【0114】
図9は、ヘッドギア161に接続されたマスク123からなる鼻システム160の一例を例示する。ヘッドギア161は、マスク123を患者の鼻孔に密封可能かつ取り外し可能に適用するべく適合された軟質可撓性材料から作られる。ヘッドギア161はさらに、あごひも(図示せず)を含む。あごひもは、あごを閉じたままに保持することによって口から空気が漏れ出すことを防止する。
【0115】
システム160はさらに圧力発生器ユニット162を含む。圧力発生器ユニット162は、ヘッドギア161に取り外し可能に取り付けられる圧力発生器ユニット221と同等である。加圧気体貯蔵要素35/235は、圧力発生器ユニット162の一部とする代わりに、圧力発生器ユニット162の寸法が最小限とするべくヘッドギア161と一体にすることもできる。
【0116】
システム160はさらに可撓配管組付体163を含む。可撓配管組付体163は、マスク123のポート132、133及び134を、圧力発生器ユニット221の管237、236及び232に空気的に接続する。ユニット221はさらに、配管組付体163の迅速連結のためのポーティングハブ(図示せず)を含む。
【0117】
圧力発生器ユニット162は、例えばスナップ嵌め、押しピン嵌め若しくは伸ばしかぶせ嵌めのようなスナップ、又は簡単な組み付け及び分解を可能とする同等のものによって、ヘッドギア161に対して取り外し可能に取り付けられる。圧力発生器ユニット162は、ヘッドギア組付体161の一部として構成され、又はヘッドギア組付体161の便宜な任意位置に配置される。圧力発生器ユニット162は、ヘッドギア組付体161の外部に配置される。
【0118】
図10に例示されるように、ヘッドギア組付体161はさらに、2つの取り付けリング163及び163’を含む。リング163及び163’は、ハウジング119に及びマスク123のハウジング125に対し、回転可能かつ取り外し可能に取り付けられる。リング163及び163’は、硬質又は半硬質エラストマーから作られる。ヘッドギア組付体160はさらに、リング163及び163を固定するための締結リング164及び165を含む。締結リング165は、配管組付体163をマスク123のポート132、133及び134に迅速連結するためのポーティングハブ166を含む。
【0119】
本発明は、単独で、又は、睡眠無呼吸の診断に必要なパラメータを測定するべく使用されるパルス酸素濃度計並びに/又は動き、温度、流量及び他のセンサのような他のモダリティとの組み合わせで実施することができる。かかる場合、本発明は、診断及び治療ツールの双方として機能する。