(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制動状態における前記ギヤ保持部材と前記ダンパー保持部材との接触部のうち、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材の一方が、他方よりも小さく形成された、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された一方向ダンパー機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の各技術によれば、いずれも各支持体の長孔において、ギヤやダンパー(以下、「ギヤなど」と記す。)を移動させることで状態を変化させるものであるところ、仮にギヤなどの軸と長孔との間が広すぎると、ギヤなどが偏心する場合や、ガタツキが大きくなる場合がある。一方、軸と長孔との間が狭すぎると、ギヤなどが移動せず、空転する場合がある。すなわち、従来の各技術は、ギヤなどの移動が不安定であるため、ギヤ同士の噛み合い、またはギヤとダンパーとの噛み合いが適切でなくなり、ダンパーが正常に作動しない場合がある。
【0008】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、ギヤと回転式ダンパーとを適切に噛み合わせることでダンパーを正常に作動させることができ、このことによって、バックラッシュを少なくすることができる一方向ダンパー機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る一方向ダンパー機構は、ラックと噛み合わされたギヤが備えられて前記ラックと相対的に移動するギヤ保持部材と、回転式ダンパーが備えらえて前記ラックと相対的に移動するダンパー保持部材とが備えられ、前記ギヤと前記回転式ダンパーとが噛み合った制動状態と、前記ギヤと前記回転式ダンパーとが離れた解除状態とに変化する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材の一方に、前記解除状態において他方を追随させる係止部が備えられた、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材の一方と前記ラックとの間に摺動抵抗部が備えられた、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、前記摺動抵抗部が、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材の一方と一体成形された弾性片である、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、前記ラックが、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材に対して、前記ギヤと噛み合わせられた側またはその反対側に傾く、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、前記制動状態における前記ギヤ保持部材と前記ダンパー保持部材との接触部のうち、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材の一方が、他方よりも小さく形成された、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、前記ラックが搖動体に支持され、前記ギヤ保持部材または前記ダンパー保持部材の一方が、前記搖動体を支持して収容する支持体に支持された、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る一方向ダンパー機構は上記した構成である。すなわち、回転式ダンパーは、ダンパー保持部材がラックに取り付けられているため、ラックに沿って安定して移動する。同様に、ギヤも、ギヤ保持部材がラックに取り付けられているため、ラックに沿って安定して移動する。各保持部材が安定して移動するため、解除状態から制動状態に変化する際、各保持部材に備えられたギヤと回転式ダンパーとが適切に噛み合い、回転式ダンパーを正常に作動させることができる。このことによって、バックラッシュを少なくすることができる。
【0017】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方に、解除状態において他方を追随させる係止部が備えられている。すなわち、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方に備えられた係止部に他方が係止されることで、解除状態において、係止部に応じた所定の間隔を空けてギヤ保持部材とダンパー保持部材とが離れた状態が維持される。換言すれば、ギヤと回転式ダンパーとが離れた状態で他方が一方に追随する。したがって、容易に所定の間隔を空けることができる。また、所定の間隔において、各保持部材が安定して移動するため、解除状態から制動状態に変化する際、ギヤと回転式ダンパーとが適切に噛み合い、ダンパーを正常に作動させることができ、このことによって、バックラッシュを少なくすることができる。
【0018】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方とラックとの間に摺動抵抗部が備えられている。すなわち、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材とラックとの間において、摺動抵抗部による摩擦力が作用することで、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方が、ラックに対して自重で移動することが抑止される。したがって、ギヤと回転式ダンパーとが適切に噛み合い、回転式ダンパーを正常に作動させることができる。
【0019】
なお、仮に摺動抵抗部がなく、従来のように長孔においてギヤなどが移動する構成とした場合、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材は、一方のみがラックに沿って自重で移動して他方と離れ、ギヤとダンパーとが噛み合わなくなる場合がある。
【0020】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、摺動抵抗部が、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方と一体成形された弾性片である。したがって、部品数の増加を抑えて摺動抵抗部を備えた構成を実現することができる。
【0021】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、ラックが、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材に対して、ギヤと噛み合わせられた側またはその反対側に傾く。この構成により、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方に対してラックが傾くことで、一方向ダンパー機構の寸法が変化する。したがって、一方向ダンパー機構が取り付けられる対象物の寸法に誤差がある場合であっても、様々な寸法に柔軟に対応することができる。
【0022】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、制動状態におけるギヤ保持部材とダンパー保持部材との接触部のうち、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方が、他方よりも小さく形成されている。すなわち、接触部における接触面積が小さい。この構成によれば、制動状態であって、ギヤ保持部材とダンパー保持部材とが接触している状態において、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方のみに対してラックが傾く際、他方もラックと共に一方に対して傾く。接触部では、接触面積が小さいため、他方が一方に対して傾き易い。したがって、各保持部材の一方に対してラックを傾き易くすることができる。このことによって、一方向ダンパー機構の寸法が変化し易くなり、一方向ダンパー機構が取り付けられる対象物の寸法に誤差がある場合であっても、様々な寸法に柔軟に対応することができる。
【0023】
なお、仮に接触部における接触面積が大きい場合、各保持部材の一方に対してラックが傾く際、広い範囲で他方が一方と接触しているため、他方が一方に対して傾き難く、ラックが円滑に傾くことが妨げられる場合がある。
【0024】
本発明に係る一方向ダンパー機構は、ラックが搖動体に支持され、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材の一方が、搖動体を支持して収容する支持体に支持されている。すなわち、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材が安定して移動するため、支持体に収容された搖動体が引き出される際、各保持部材に備えられたギヤと回転式ダンパーとが適切に噛み合い、回転式ダンパーを正常に作動させることができる。このことによって、制動状態において搖動体を確実に制動させて引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の外観が示され、Aは外側面図、Bは後面図、Cは上面図、Dは部分内側面図、EはCにおける外側面a−a断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の外観が示され、Aは組立てられた状態の外観斜視図、Bは回転式ダンパーが取り外された状態の外観斜視図、Cは分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の動作の状態が示され、Aは制動状態が示された部分下面図、Bは解除状態が示された部分下面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の使用状態の一例の概略が示され、Aは搖動体が支持体に対して開いた場合の使用状態概略上面図、Bは、搖動体が支持体に収容された場合の使用状態概略上面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構のラックの外観が示され、Aは斜視図、Bは外側面図、Cは下面図、Dは内側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構のギヤの外観が示され、Aは上面図、Bは外側面図、Cは下面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構のギヤ保持部材の外観が示され、A,Bは斜視図、Cは外側面図、Dは後面図、Eは上面図、Fは前面図、GはFにおける下面b−b断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の回転式ダンパーの外観が示され、Aは下面図、Bは前面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構のダンパー保持部材の外観が示され、Aは斜視図、Bは前面図、Cは外側面図、Dは下面図、Eは後面図、Fは上面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構のダンパー保持部材の外観が示され、Aは
図9Eにおける上面c−c断面図、Bは
図9Fにおける内側面d−d断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の動作の状態が示され、Aはラックが傾いていない状態が示された部分上面断面図、Bはラックが外側方に傾いた状態が示された部分上面断面図、Cはラックが内側方に傾いた状態が示された部分上面断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構の動作の状態が示され、Aはラックが傾いていない状態におけるギヤ保持部材とダンパー保持部材との接触部が示された部分下面図、Bはラックが外側方に傾いた状態におけるギヤ保持部材とダンパー保持部材との接触部が示された部分下面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態の変形例に係る一方向ダンパー機構の外観が示され、Aは斜視図、Bは部分分解斜視図、CはAにおける上面e−e断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態の変形例に係る一方向ダンパー機構の回転式ダンパーの外観が示され、Aは下面図、Bは前面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態の変形例に係る一方向ダンパー機構のダンパー保持部材の外観が示され、Aは前面図、Bは上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態に係る一方向ダンパー機構を図面に基づいて説明する。
図1A,B,C,D,Eおよび
図2A,B,Cは、一方向ダンパー機構1の外観が示されている。
図3A,Bは、一方向ダンパー機構1の動作状態が示されている。
図4A,Bは、一方向ダンパー機構1が自動車(図示省略)のグローブボックス2に取り付けられた状態の概略が示されている。
【0027】
図1A,B,C,D,Eおよび
図2A,B,Cに示されているとおり、本実施形態に係る一方向ダンパー機構1は、歯が形成された長手のラック10と、このラック10と噛み合わされたギヤ20と、このギヤ20が備えられてラック10と相対的に移動するギヤ保持部材30と、粘性流体(図示省略)などが充填された回転式ダンパー50と、この回転式ダンパー50が備えらえてラック10と相対的に移動するダンパー保持部材60とが備えられている。一方向ダンパー機構1は、ラック10と各保持部材30,60とが相対的に移動することで、
図3A,Bに示されているとおり、ギヤ20と回転式ダンパー50とが噛み合った制動状態(
図3A参照)と、ギヤ20と回転式ダンパー50とが離れた解除状態(
図3B参照)とに変化する。
【0028】
この一方向ダンパー機構1は、
図4A,Bに示されているとおり、例えば、インストルメンタルパネル(図示省略)において、搖動体としてのグローブボックス2にラック10が支持され、グローブボックス2が支持されて収容される支持体3にダンパー保持部材60が支持される。一方向ダンパー機構1は、グローブボックス2が開く際(
図4A参照)、制動状態となり、グローブボックス2が閉じる際(
図4B参照)、解除状態となる。したがって、グローブボックス2は、ゆっくり開き、また、円滑に閉じる。
【0029】
なお、以下の説明では、一方向ダンパー機構1がグローブボックス2に用いられた場合を基準として方位が定義されている。すなわち、グローブボックス2の開口部側を上方、グローブボックス2の底部側を下方、グローブボックス2が開く方向を前方、閉じる方向を後方、グローブボックス2の内側方向を内側方、外側方向を外側方とする(
図2Aおよび
図4A参照)。
【0030】
ここで、一方向ダンパー機構1の構成部材を図面に基づいて説明する。
図5A,B,C,Dはラック10が示され、
図6A,B,Cはギヤ20が示され、
図7A,B,C,D,E,F,Gはギヤ保持部材30が示され、
図8A,Bは回転式ダンパー50が示され、
図9A,B,C,D,E,Fおよび
図10A,Bはダンパー保持部材60が示されている。
【0031】
図5A,B,C,Dに示されているとおり、ラック10は前後方向に向けて長手の棒状であり、平板状に形成されている。ラック10は、後方側であるラック本体部11と、前方側であるラック支持本体部15とから構成されている。ラック本体部11は、後方端から外側方に向けて突出たストッパ17が形成されている。また、ラック本体部11は、上下に二段に区分されている。上段(
図5Bにおいて下側)は平坦に形成された摺動面部12であり、一方、下段(
図5Bにおいて上側)は歯が形成された歯面部13である。ラック本体部11の上下面および内側面は、前後方向に連続した溝であるラックレール部14a,b,cがそれぞれ形成されている。なお、ラック本体部11は、摺動面部12やラックレール部14a,b,cを形成することができれば、いわゆる角ラックでも丸ラックでもよい。
【0032】
ラック支持本体部15は、ほぼ円板状の搖動体支持部16が内側方に形成されている。
【0033】
図6A,B,Cに示されているとおり、ギヤ20は円板状であり、円周縁に歯が形成されている。ギヤ20は、中心からギヤ軸部21が突出している。
【0034】
図7A,B,C,D,E,F,Gに示されているとおり、ギヤ保持部材30は、ラック本体部11が通されるギヤ保持体レール部31と、このギヤ保持体レール部31から外側方に向けて突出して互いに対面した一対のギヤ支持部38と、ギヤ保持体レール部31とギヤ支持部38との境界部分から前方に向けて突出した摺動抵抗部としての弾性片47とから構成され、各部31,38,47が一体成形されたものである。
【0035】
ギヤ保持体レール部31は、ギヤ保持体内側面部32と、ギヤ保持体外側面部33と、ギヤ保持体上面部34と、ギヤ保持体下面部35とから構成され、ラック本体部11の外面を囲うことができるように互いが連接されている。詳説すれば、ギヤ保持体内側面部32の上端とギヤ保持体上面部34とが直角に連接され、ギヤ保持体上面部34とギヤ保持体外側面部33とが直角に連接され、ギヤ保持体内側面部32の下端とギヤ保持体下面部35とが直角に連接され、各面部32,33,34,35で囲われた空間であるギヤ保持体孔部36が前後方向で開口している。ギヤ保持体外側面部33は、ギヤ保持体内側面部32よりも短く形成されているため、ギヤ保持体外側面部33とギヤ保持体下面部35との間が開けられている。各面部32,34,35はギヤ保持体孔部36に向けてギヤ保持体突起部37a,b,cがそれぞれ形成されている。また、ギヤ保持体外側面部33は、弾性片47が前方の端から前方に向けて突出している。弾性片47はギヤ保持体孔部36側に向けて内側方に傾斜している。
【0036】
ギヤ支持部38は、ギヤ保持体上方対面部39とギヤ保持体下方対面部40とから構成され、ギヤ20を支持するギヤ支持孔45がそれぞれ形成されている。ギヤ保持体上方対面部39は、ギヤ保持体外側面部33の下端と直角に連接され、ギヤ支持孔45と同軸であって円筒状の軸支持突部46が突出している。ギヤ保持体下方対面部40は、ギヤ保持体下面部35と同一面上で連接されている。ギヤ保持体下方対面部40は、前方端に、ダンパー保持部材60との接触部としてのギヤ保持体接触部41が形成されている。ギヤ保持体接触部41は、前方に向けて弧状に湾曲すると共に、前方端の僅かな部分である最端部42が平坦に形成されている。なお、最端部42は湾曲していてもよい。また、ギヤ保持体接触部41は、鍔部43が形成されている。鍔部43は、ギヤ保持体下方対面部40のうち、前方から外側方に渡る周縁に形成され、下方に向けて突出している。また、ギヤ保持体下方対面部40は、外側方の後方寄りに切欠き部44が形成されている。
【0037】
図8A,Bに示されているとおり、回転式ダンパー50は、粘性流体が充填された略円筒形のケース51と、このケース51とほぼ同径に形成されてローター軸部52を有するローター(図示省略)と、このローター軸部52が貫通すると共にケース51を覆うケース蓋53と、ローター軸部52に取り付けられたダンパーギヤ54とから構成されている。ケース51は、ローターが収納され、ローター軸部52がケース51の外側に露出した状態で、ケース蓋53で閉塞されている。ローター軸部52には、ローターと同軸上にダンパーギヤ54が取り付けられている。
【0038】
図9A,B,C,D,E,Fおよび
図10A,Bに示されているとおり、ダンパー保持部材60は、ダンパー保持体内側面部61と、ダンパー保持体外側面部62と、ダンパー保持体上面部63と、ダンパー保持体下面部64とから構成され、各面部61,62,63,64が一体成形されてほぼ四角柱の筒状に形成されている。各面部61,62,63,64で囲われた空間であるダンパー保持体孔部65は、前後方向で開口している。ダンパー保持体外側面部62は、支持体支持部66が外側方に形成されている。ダンパー保持体上面部63は、回転式ダンパー50が収容されるダンパー収容孔67と、このダンパー収容孔67の周囲に形成されて回転式ダンパー50が係合されるダンパー係合片68が形成されている。また、ダンパー保持体上面部63は、後端から後方に向けて長孔枠部69が張り出している。係止部70とダンパー保持体下面部64の後端とで囲まれた空間、および、長孔枠部69の空間に、ギヤ保持部材30が収容される可動領域71a,bが形成されている。この可動領域71a,bにおいて、ダンパー保持体下面部64の後端および長孔枠部69の前端に、ギヤ保持体30との接触部としてのダンパー保持体接触部72a,bがそれぞれ形成されている。
【0039】
ダンパー保持体内側面部61は、ダンパー保持体孔部65に向けてダンパー保持体突起部73が形成されている。また、ダンパー保持体上面部63およびダンパー保持体下面部64は、ダンパー保持体孔部65に向けて傾斜突起部74a,bが形成されている。傾斜突起部74a,bは、後端の幅よりも前端の幅の方が狭く形成されている。すなわち、傾斜突起部74a,bの幅は、後端から前端に向けて徐々に狭く形成され、このことによって、傾斜突起部74a,bとダンパー保持体内側面部61との間の溝である傾斜溝部75の幅は、後端から前端に向けて徐々に広く形成されている(
図10A,B参照)。
【0040】
次に、上記した各部材10,20,30,50,60の組立て手順を説明する。
【0041】
図2Cに示されているとおり、回転式ダンパー50が、ダンパー保持部材60のダンパー保持体上面部63に取り付けられる。詳説すれば、回転式ダンパー50のダンパーギヤ54がダンパー保持体上面部63のダンパー収容孔67に収容され、回転式ダンパー50のケース51がダンパー保持体上面部63のダンパー係合片68に係合される。ダンパーギヤ54は、ダンパー保持体孔部65に配置される。なお、ダンパー保持部材60と回転式ダンパー50とが一体成形されていてもよい。
【0042】
次に、ギヤ保持部材30がダンパー保持部材60に取り付けられる。詳説すれば、ギヤ保持部材30の軸支持突部46が、ダンパー保持部材60の長孔枠部69に取り付けられ、ギヤ保持部材30のギヤ保持体接触部41が、ダンパー保持部材60の係止部70に取り付けられる。このようにして、ギヤ保持部材30は、ダンパー保持部材60の可動領域71a,bに配置される。
【0043】
次に、ギヤ保持部材30およびダンパー保持部材60にラック10が通される。詳説すれば、ラック本体部11が、ダンパー保持部材60のダンパー保持体孔部65、および、ギヤ保持部材30のギヤ保持体孔部37にそれぞれ通される。ラックレール部14a,b,cに、ダンパー保持体孔部65のダンパー保持体突起部73、傾斜突起部74a,b、および、ギヤ保持体孔部37のギヤ保持体突起部37a,b,cがそれぞれ配置される。ギヤ保持部材30の弾性片47がラック本体部11の摺動面部12に押し付けられる。なお、ダンパーギヤ54は、ギヤ20と比較して直径が小さいため、ラック10がダンパー保持部材60に通される際、ダンパーギヤ54はラック本体部11のストッパ17と干渉することがなく、また、ダンパーギヤ54はラック本体部11の歯面部13と噛み合うことがない。
【0044】
次に、ギヤ保持部材30のギヤ支持部38にギヤ20が取り付けられる。詳説すれば、ギヤ20は、後方側からギヤ支持部38の間に配置され、ギヤ20のギヤ軸部21が、ギヤ支持部38のギヤ支持孔45に取り付けられる。ギヤ20は、ラック本体部11の歯面部13と噛み合わされる。
【0045】
上記のとおり組立てられた一方向ダンパー機構1における各部材10,30,60の動作状態を
図3A,B、
図11A,B,Cおよび
図12A,Bに基づいて説明すれば、次のとおりである。
図11A,B,Cは、制動状態においてダンパー保持部材60に対してラック10が傾いた状態が示され、
図12A,Bは、制動状態におけるギヤ保持部材30とダンパー保持部材60との接触部が示されている。
【0046】
図3A,Bに示されているとおり、各保持部材30,60とラック10とは、前後方向に相対的に移動することができる。制動状態では、ギヤ20とダンパーギヤ54とが噛み合わされることで、回転式ダンパー50が作動する(
図3A参照)。一方、解除状態では、ギヤ保持部材30は、切欠き部44が係止部70に係止されることで、ダンパー保持部材60の可動領域71a,bにおいて、ダンパー保持部材60に追随して移動し、可動範囲が規制される(
図3B参照)。
【0047】
ここで、ラック10は、
図11A,B,Cに示されているとおり、ダンパー保持部材60に対して、歯面部13がギヤ20と噛み合わせられた側である外側方に傾き、また、ギヤ20と噛み合わせられた側の反対側である内側方に傾く構成である。詳説すれば、ダンパー保持部材60の傾斜溝部75の幅は、後端から前端に向けて徐々に広く形成されているため、ラック10は、傾斜溝部75のうち、幅が狭い後端側を支点として傾く。
図11Aに示されたラック10の位置を基準とすれば、ラック10は、
図11Bに示されているとおり、ラック支持本体部15がダンパー保持部材60に対して外側方に向けて傾き、また、
図11Cに示されているとおり、ラック支持本体部15がダンパー保持部材60に対して内側方に向けて傾く。ダンパー保持部材60に対するラック10の角度は、θ
2>θ
1>θ
3となり、また、搖動体支持部16と支持体支持部66とのピッチXは、X
2>X
1>X
3となる。したがって、一方向ダンパー機構1は、内外側方における寸法がX
2からX
3の範囲で、グローブボックス2と支持体3との間の寸法や、それぞれの取付孔の誤差に応じて変化する(
図4A,B参照)。
【0048】
このように、ラック10がダンパー保持部材60に対して傾くことで、ギヤ保持部材30もダンパー保持部材60に対してラック10と共に傾く。ギヤ保持部材30はラック10に対して安定して取り付けられているため、ラック10が傾く際、ギヤ保持部材30とダンパー保持部材60とが、それぞれのギヤ保持体接触部41およびダンパー保持体接触部72a,bにおいて干渉するが、接触面積が小さいことから、干渉の度合いが低い。
【0049】
詳説すれば、
図12A,Bに示されているとおり、制動状態におけるギヤ保持部材30とダンパー保持部材60との接触部のうち、ギヤ保持部材30の方が、ダンパー保持部材60よりも小さく形成されている。すなわち、ダンパー保持部材30のダンパー保持体接触部72aが平坦である一方で、ギヤ保持部材30のギヤ保持体接触部41が弧状に湾曲しているため、最端部42の面積がダンパー保持体接触部72aよりも小さく形成されている。可動領域71aにおいて、接触面積が小さいため、ギヤ保持部材30がダンパー保持部材60に対して円滑に傾く(
図12B参照)。さらに、ダンパーギヤ54およびギヤ20は、各接触部41,72aとほぼ同じ位置に配置されているため(
図3A,B参照)、ギヤ保持部材30がダンパー保持部材60に対して傾いた際、各ギヤ54,20同士が噛み合った状態が維持される。なお、ダンパー保持体接触部72bが平坦である一方で(
図9A,D参照)、ギヤ保持部材30の軸支持突部46が円筒状であるため(
図7A,C,D,F参照)、可動領域71bにおいても接触面積が小さい。
【0050】
次に、一方向ダンパー機構1の効果を説明する。
【0051】
上記したとおり、一方向ダンパー機構1は、ラック10と噛み合わされたギヤ20が、ラック10と相対的に移動するギヤ保持部材30に備えられ、また、回転式ダンパー50が備えられてラック10と相対的に移動するダンパー保持部材60が備えられている。すなわち、各保持部材30,60が、ラック10に沿って安定して移動するため、解除状態から制動状態に変化する際、各保持部材30,60に備えられたギヤ20と回転式ダンパー50のダンパーギヤ54とが適切に噛み合い、回転式ダンパー50を正常に作動させることができる。このことによって、バックラッシュを少なくすることができる。
【0052】
一方向ダンパー機構1によれば、ダンパー保持部材60は、ダンパー保持体下面部64の後端のうち、ダンパー保持体外側面部62に近い側から、係止部70が張り出している。係止部70は、後方に向けて伸びると共に、先端が内側方に向けて直角に屈曲してフック状に形成されている。すなわち、係止部70にギヤ保持部材30の切欠き部44が係止されることで、解除状態において、係止部70によって形成された可動領域71aにおいて所定の間隔を空けてギヤ保持部材30とダンパー保持部材60とが離れた状態が維持される。換言すれば、ギヤ20とダンパーギヤ54とが離れた状態でギヤ保持部材30がダンパー保持部材60に追随する。したがって、ギヤ20とダンパーギヤ54との間において、容易に所定の間隔を形成することができる。
【0053】
一方向ダンパー機構1によれば、ギヤ保持部材30は、ギヤ保持体レール部31とギヤ支持部38との境界部分から前方に向けて弾性片47が突出し、弾性片47はギヤ保持体孔部36側に向けて内側方に傾斜している。弾性片47は、ラック本体部11の摺動面部12に押し付けられている。すなわち、弾性片47がラック10に押し付けられることで、ギヤ保持部材30が、ラック10に対して自重で移動することが抑止される。したがって、ギヤ20とダンパーギヤ54とが適切に噛み合い、回転式ダンパー50を正常に作動させることができる。
【0054】
一方向ダンパー機構1によれば、ギヤ保持部材30は、ギヤ保持体レール部31、ギヤ支持部38および弾性片47が一体成形されたものである。したがって、部品数の増加を抑えて弾性片47を備えた構成を実現することができる。
【0055】
一方向ダンパー機構1によれば、ダンパー保持部材60の傾斜溝部75の幅が、後端から前端に向けて徐々に広く形成されているため、ラック10は、ダンパー保持部材60に対して、外側方または内側方に傾く構成である。この構成により、内外側方における一方向ダンパー機構1の寸法が変化する。したがって、グローブボックス2と支持体3との間の寸法や、それぞれの取付孔に誤差がある場合であっても、様々な寸法に柔軟に対応することができる。
【0056】
一方向ダンパー機構1は、制動状態におけるギヤ保持部材30とダンパー保持部材60との接触部のうち、ギヤ保持部材30の方が、ダンパー保持部材60よりも小さく形成されている。すなわち、ダンパー保持部材30のダンパー保持体接触部72aが平坦である一方で、ギヤ保持部材30のギヤ保持体接触部41が弧状に湾曲しているため、最端部42の面積がダンパー保持体接触部72aよりも小さく形成されている。可動領域71aにおいて、接触面積が小さいため、ギヤ保持部材30がダンパー保持部材60に対して円滑に傾く。したがって、内外側方における一方向ダンパー機構1の寸法が変化し易くなり、グローブボックス2と支持体3との間の寸法や、それぞれの取付孔に誤差がある場合であっても、様々な寸法に柔軟に対応することができる。また、ダンパーギヤ54およびギヤ20は、各接触部41,72aとほぼ同じ位置に配置されているため、ギヤ保持部材30がダンパー保持部材60に対して傾いた場合であっても、各ギヤ54,20同士が確実に噛み合った状態を維持することができる。
【0057】
一方向ダンパー機構1は、ラック10がグローブボックス2に支持され、ダンパー保持部材60が支持体3に支持されている。この構成により、支持体3に収容されたグローブボックス2が引き出される際、各保持部材30,60に備えられたギヤ20とダンパーギヤ54とが適切に噛み合い、回転式ダンパー50を正常に作動させることができる。このことによって、制動状態においてグローブボックス2を確実に制動させて引き出すことができる。
【0058】
一方向ダンパー機構1は、ラック本体部11の後方端にストッパ17が形成されている。したがって、ギヤ保持部材30およびダンパー保持部材60からラック10が抜けることを防ぐことができる。例えば、支持体3の後方に配置されたエアコンフィルタ(図示省略)のメンテナンスの際などにおいて、グローブボックス2の可動範囲を規制するストッパが外されてグローブボックス2が大きく開けられた場合、ラック10は、ストッパ17に規制されてギヤ保持部材30およびダンパー保持部材60から抜けることがない。
【0059】
なお、他の実施形態として、係止部がギヤ保持部材に形成された構成、弾性片がダンパー保持部材と一体成形された構成、弾性片に替えて、ギヤ保持部材またはダンパー保持部材とラックとの間に、ゴムなどの軟質部材が挟まれた構成、または粘着性グリスが塗布された構成、ストッパがラックに対して着脱可能である構成、ラックがギヤ保持部材に対して外側方または内側方に傾く構成、接触部においてギヤ保持体接触部の面積よりもダンパー保持体接触部の方が小さく形成された構成としてもよい。また、グローブボックス2にダンパー保持部材60が支持され、支持体3にラック10が支持された構成としてもよい。
【0060】
上記した一方向ダンパー機構1によれば、ダンパーギヤ54は、ローター軸部52によって回転軸の片側のみが支持されるため、制動状態においてダンパーギヤ54にギヤ20からの外力が作用すると、ダンパーギヤ54がローター軸部52に対して偏心して傾く場合が考えられる。この場合、ギヤ20とダンパーギヤ54との噛み合いが適切でなくなり、異音が発生する場合や、一方向ダンパー機構1が円滑に作動しない場合が考えられる。そこで、この課題を解決した本実施形態の変形例に係る一方向ダンパー機構を図面に基づいて説明する。
図13A,B,Cは、一方向ダンパー機構101の外観および要部の断面が示されている。
図14A,Bは、一方向ダンパー機構101の回転式ダンパー150が示され、
図15A,Bは、一方向ダンパー機構101のダンパー保持部材160が示されている。なお、以下では、一方向ダンパー機構1と同じ構成は同一の符号をもって説明が省略され、異なる構成のみが説明されている。
【0061】
図13A,B,Cに示されているとおり、一方向ダンパー機構101は、回転式ダンパー150のダンパーギヤ154の構成、および、ダンパー保持部材160のダンパー保持体下面部164の構成が、一方向ダンパー機構1と異なる。詳説すれば、
図14A,Bに示されているとおり、ダンパーギヤ154は、ギヤリブ155が形成されている。ギヤリブ155は、ほぼ“C”字状または環状であり、ダンパーギヤ154の中心軸の周囲に形成され、軸方向に突出している。一方、
図15A,Bに示されているとおり、ダンパー保持体下面部164は、保持体リブ176が形成されている。保持体リブ176は、前方に向けて湾曲した弧状であり、ダンパー収容孔67と、ほぼ同軸上において対面し、ダンパー保持体孔部65に向けて突出している。なお、保持体リブ176は、ギヤ20と干渉しないという条件が満たされれば、ほぼ“C”字状または環状であってもよい。
【0062】
図13A,Bに示されているとおり、一方向ダンパー機構101が組み立てられた状態において、ギヤリブ155は、保持体リブ176の内側に係合している。
【0063】
上記した一方向ダンパー機構101では、ダンパーギヤ154は、ローター軸部52に支持されると共に、保持体リブ176に係合されていることから、ダンパーギヤ154は、回転軸における両側で支持されている。この構成により、制動状態において、ギヤ20とダンパーギヤ154とが噛み合わされてダンパーギヤ154にギヤ20からの外力が作用する際、ダンパーギヤ154が安定して回転する。したがって、ギヤ20とダンパーギヤ154との噛み合いが適切となり、一方向ダンパー機構101は、異音もなく円滑に作動する。
【0064】
さらに、他の変形例として、ダンパーギヤ、ギヤ、ラックの歯面部が、はす歯(図示省略)であれば、ダンパーギヤ、ギヤ、ラックの歯面部同士の噛み合いがさらに適切となり、さらなる円滑な動作と静音を実現することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。