(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1および
図2は、本実施形態に係る支援システム100の全体構成の説明に供する図である。
図3Aおよび
図3Bは、支援システム100の各部の説明に供する図である。
図4A〜
図4Eは、支援システム100が扱うデータの説明に供する図である。
【0017】
支援システム100は、
図1に示すように、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、その他のデータD4(地域データD41、天候データD42、医療機関データD43)等を用いて、診察を希望する受診予定者に対する診察の要否を提示し、さらに、医薬品の処方態様(例えば、薬剤の処方の要否、薬剤の種類、薬剤の量、薬剤の剤型等)を提示するシステムである。なお、「医療機関」は、特に限定されないが、例えば、医師や看護師が受診予定者に医療を提供する施設のことを言い、例えば、病院、診療所等を含む。また、「特定(一定)の地域」は、特に限定されないが、例えば、市町村単位、都道府県単位、国単位で区切られる地域等である。
【0018】
支援システム100は、
図2に示すように、各医療機関の医療機関端末200、および各受診予定者が保有等する受診者端末300にネットワークを介して接続しており、医療機関端末200および受診者端末300との間でデータの送受信を行うサーバとして構成している。高齢者等の受診予定者は、医療機関に来訪した際、または来訪する前に、受診者端末300を操作することにより支援システム100から受診方針の提示を受けることができる。また、医療従事者(医師や看護師等)は、上記受診方針を医療機関端末200で確認することができる。なお、ネットワークは、例えば、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信機能による無線通信方式、その他の非接触式の無線通信、有線通信を採用することができる。
【0019】
本実施形態では、支援システム100は、対話による人とのコミュニケーションが可能な対話型デバイスにより構成している。対話型デバイスとしては、例えば、AIが搭載された対話機能付きのロボットを用いることができる。対話型デバイスには、例えば、静止画や動画を表示可能なディスプレイ、音声や音楽等を出力可能なスピーカ、静止画や動画を撮像可能なカメラ機能等を搭載することが可能である。なお、対話型ロボットの外観デザイン等は特に限定されないが、例えば、人型、動物型等を挙げることができる。
【0020】
以下、支援システム100について詳述する。
【0021】
支援システム100のハードウェアの構成について説明する。
【0022】
支援システム100は、特に限定されないが、例えば、メインフレームやコンピュータ・クラスタ等によって構成できる。支援システム100は、
図3Aに示すように、CPU(Central Processing Unit)110、記憶部120、入出力I/F130、および通信部140を備えている。CPU110、記憶部120、入出力I/F130、および通信部140は、バス150に接続されており、バス150を介して相互にデータ等を送受信する。
【0023】
CPU110は、記憶部120に記憶されている各種プログラムに従って、各部の制御や各種の演算処理などを実行する。
【0024】
記憶部120は、各種プログラムや各種データを記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Randam Access Memory)、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを記憶するハードディスク等によって構成している。
【0025】
入出力I/F130は、キーボード、マウス、スキャナ、マイク等の入力装置およびディスプレイ、スピーカ、プリンタ等の出力装置を接続するためのインターフェースである。
【0026】
通信部140は、医療機関端末200および受診者端末300等と通信するためのインターフェースである。
【0027】
次に、支援システム100の主要な機能について説明する。
【0028】
記憶部120は、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、その他のデータD4等の各種データを記憶する。また、記憶部120は、本実施形態に係る支援方法を提供するための支援プログラムを記憶する。
【0029】
CPU110は、
図3Bに示すように、記憶部120に記憶されている支援プログラムを実行することによって、データ取得部111、学習部112、および提示部113として機能する。
【0030】
データ取得部111について説明する。
【0031】
データ取得部111は、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を取得する。
【0032】
受診予定者データD1には、
図4Aに示すように、例えば、受診予定者の識別ID(例えばマイナンバー等から取得可能なデータ)、受診予定者名、住所、年齢が含まれる。来訪データD2には、例えば、既往歴(医療機関への通院歴)が含まれる。受診データD3には、例えば、前回の医療機関への来訪時の診察結果や、それ以前の医療機関への来訪時の診察結果が含まれる。なお、受診データD3には、受診予定者が在宅医療や訪問看護の経験がある場合、これらの受診時(往診時)に取得されたデータを含ませることもできる。
【0033】
受診予定者データD1には、例えば、受診予定者の遺伝情報に関するデータを含むこともできる。遺伝情報は、受診予定者の遺伝情報だけではなく血縁者の遺伝情報を含んでもよい。遺伝情報は、例えば、DNA検査結果等によって構成できる。遺伝情報は、例えば、受診予定者の疾患を判断する際、疾患が遺伝的要素の影響を強く受けるものであるか等の判断を行うために用いることができる。
【0034】
受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3は、受診予定者ごとに紐付けられた状態で、記憶部120に記憶されている。また、これらの各データD1、D2、D3は、例えば、公知の電子カルテ等によって保管および管理することができる。
【0035】
受診データD3は、
図4Bに示すように、医療機関側処方データ(処方データ)D31および薬局側処方データ(処方データ)D32を含むことができる。医療機関側処方データD31は、例えば、過去に受診予定者が医療機関において医薬品(例えば、薬剤等)を処方されている場合、その処方に関する各種のデータを含む。医療機関側処方データD31は、例えば、処方された日時、医薬品の種類、処方量、剤型等に関するデータを含む。なお、薬局側処方データD32は、医療機関で提供された処方箋に基づいて、薬局で実際に受診予定者に処方された医薬品に関するデータを含む。薬局側処方データD32は、例えば、医療機関側処方データD31と同様に、処方された日時、医薬品の種類、処方量、剤型等に関するデータ(お薬手帳に記載される処方歴等)を含む。なお、本実施形態に係る医薬品には、デジタル機能(例えば、服薬後、生体器官の生体情報を検出して、当該情報を取得する機能)が搭載されたいわゆるデジタル医薬品が含まれる。例えば、デジタル医薬品により取得された受診予定者に関する情報等を医療機関、受診予定者、医療従事者で共有したり、受診予定者の服薬状態を監視したりすることに利用できる。
【0036】
データ取得部111は、例えば、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3を各医療機関の医療機関端末200および各受診予定者の受診者端末300から取得することができる。
【0037】
データ取得部111の取得対象であるその他のデータD4は、
図4Cに示す地域データD41と、
図4Dに示す天候データD42と、
図4Eに示す医療機関データD43を含むことができる。
【0038】
地域データD41は、
図4Cに示すように、特定の地域名と、特定の地域における人口、特定の地域における主たる家族構成(例えば、特定の地域における家族の人数の平均値)、特定の地域の年齢層(例えば、特定の地域における年齢層の平均値)、受診予定者が特定の地域において受診歴・処方歴があるかどうかの情報を含む。地域データD41には、例えば、特定の地域で流行中の疾患等のデータを含ませることができる。また、地域データD41には、例えば、特定の地域における交通情報に関するデータを含ませることができる。交通情報に関するデータには、例えば、受診予定者の自宅から医療機関までの距離、利用可能な交通手段の種類(例えば、バス、電車)が含まれる。
【0039】
天候データD42は、
図4Dに示すように、各医療機関の周辺環境に関する天候(気象)に関するデータを含む。天候データD42には、周辺環境の天気、温度、湿度、日照時間が含まれる。
【0040】
データ取得部111は、例えば、地域データD41および天候データD42をインターネットから取得することができる。
【0041】
医療機関データD43は、
図4Eに示すように、各医療機関の名称(医療機関名)、住所、診療科目、設備(ベッド・救急車・医療機器や事務機器等を含む機器等)の保有数、レイアウト、クリニカルパス、方針、医師等に関するデータが含まれる。これらのデータは、医療機関ごとに紐づけた状態で、記憶部120に記憶される。なお、レイアウトのデータは、例えば、各設備、診察室、検査室、手術室、ナースステーション、一般病棟、ICU(Intensive Care Unit)、HCU(High Care Unit)等の位置および距離を示す医療機関の見取り図によって構成できる。クリニカルパスのデータは、例えば、複数の受診予定者の入院から退院までのスケジュールをまとめたスケジュール表によって構成できる。方針のデータは、例えば、研修等の教育方針に関するデータ、重点医療等の医療方針に関するデータ等が挙げられる。また、医師等のデータは、図示省略するが、例えば、医師名、診療科目、診療経験、手術経験、勤務スケジュール等のデータが挙げられる。これらのデータは、医師ごとに紐づけられた状態で、記憶部120に記憶される。
【0042】
また、医療機関データD43には、例えば、医療機関の混雑状況に関するデータを含ませることができる。混雑状況に関するデータには、例えば、受診予定者の自宅から一定の範囲内にある医療機関の混雑状況(外来に関する混雑状況、入院に関する混雑状況等)が含まれる。例えば、支援システム100は、受診予定者が所定の医療機関へ来訪する際、交通情報に関するデータや混雑状況に関するデータに基づいて、受診予定者へ最適な交通手段の情報(時刻表や乗換案内等)を提供したり、特定の疾患に関して治療成績に優れる医師を推奨したり、またそのような医師が勤務する医療機関を提示したりすることができる。また、支援システム100は、交通手段による医療機関の提示とともに、医療機関への到着時間に合わせた診察予約等を自動的に実施するようにしてもよい。
【0043】
また、その他のデータD4には、例えば、医療機器や医薬品に関する再利用データを含ませることができる。再利用データは、例えば、洗浄や滅菌処理を施すことにより、医療機器が再利用可能であるかどうかに関する情報を含む。上記医療機器は、例えば、単回使用医療機器が対象となるが、単回使用医療機器以外の医療機器(医療機器の一部の構成部品)であってもよい。また、再利用データは、例えば、余った医薬品に関する情報を含むことができる。上記余った医薬品とは、例えば、瓶等の容器により所定量で保管された薬剤(例えば、液状の薬剤)を、複数の受診予定者に使用できるかどうかに関する情報を含む。例えば、特定の容器に保存した薬剤を受診予定者に投与し、同様の容器に保存した薬剤を別の受診予定者に投与することができる場合、薬剤は再利用可能なものとして扱われる。
【0044】
なお、再利用データは、例えば、再利用の対象となる医療機器や医薬品を所有する医療機関の病院情報システム(Hospital Information System)からリアルタイムで取得することができる。
【0045】
データ取得部111は、医療従事者の支援に役立つその他の情報として、例えば、医療データを取得することができる。医療データは、例えば、医療知識に関するデータであり、疾患に関する疾患データ(疾患名、症状、受療の必要性等)、治療に関する治療データ(治療方法、治療に要する期間、必要な設備および薬、およびそれらの卸売値等)、医療保険制度に関するデータ等を挙げることができる。データ取得部111は、例えば、医療データをインターネットから取得したり、スキャナ等によって取り込まれた医学の専門書の電子データ等から取得したりできる。
【0046】
次に、学習部112について説明する。
【0047】
学習部112は、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を用いて機械学習を行う。なお、本明細書において、「機械学習」とは、入力データをアルゴリズムを使用して解析し、その解析結果から有用な規則や判断基準等を抽出し、アルゴリズムを発展させることを言う。
【0048】
本実施形態に係る支援システム100は、医療従事者による診察の要否の提示、および医薬品の処方態様の提示の両方を行う。支援システム100は、これらの提示内容が妥当性を欠くものとならないように、前述した各データに基づいて機械学習を行う。支援システム100は、学習部112が機械学習を行うことにより、受診予定者の過去の動態(医療機関への訪問頻度、受診内容、受診結果、医薬品の処方、医薬品の使用状況等)から受診予定者の現在および将来の動態を予測し、その予測結果に基づいて、医療従事者に対して適切な対応方法を提示する。なお、学習部112は、例えば、複数人の医療機関側処方データD31および/または薬局側処方データD32に基づいて、好適な医薬品の処方態様を学習することができる。
【0049】
具体的には、提示部113は、医療機関を訪問した受診予定者または医療機関を訪問する前の受診予定者から受診の要求があった場合に、学習部112の機械学習結果に基づいて、医療従事者に受診の要否を提示する。また、提示部113は、医療従事者が受診予定者に対して行う医薬品の処方態様の提示も行う。ここでいう処方態様とは、例えば、医薬品の処方の要否を判断すること、および薬剤の種類、処方量、用法、剤型等を特定することを含む。また、提示部113による提示の一例として、例えば、複数人の医療機関側処方データD31および/または薬局側処方データD32に基づいて、一つの世帯(例えば、夫婦、親子等)内で余っている医薬品をシェアすることを提示したり、所定の母集団において何らかの都合で服用が不要になった人の医薬品を他人が利用することを提示したり、同一の医薬品が処方された他人同士の間で医薬品を一括購入することで購入コストの削減を提示したりすることも可能である。
【0050】
提示部113は、医療従事者による受診の要否および医薬品の処方態様を提示する際、その提示内容とともに、その提示に至った提示根拠を提示する。例えば、本実施形態では、後述するように、医療従事者による診察が不要と判断された場合、各データに基づいてその根拠を提示する。根拠が複数ある場合には、複数の根拠を提示することができる。医療従事者は、医療従事者による診察の要否および医薬品の処方態様とともにその根拠を提示されることにより、納得感を持って各提示内容を採用することが可能になる。なお、根拠の提示方法は、例えば、データ同士の関係をグラフや表を用いて示したり、根拠を導く要因となる事象を寄与率等の数字とともに具体的に示したりしてもよい。
【0051】
提示部113は、本実施形態では、医療従事者や受診予定者から提示要求があった場合に提示を実行する。ただし、提示部113が提示を実行するタイミングは特に限定されない。例えば、提示部113は、不定期または定期に自動でデータ取得を実施し、医療従事者や受診予定者から提示要求が無くても、医療機関への受診予定者の来訪が予測されるような場合に、自動的に医療機関や医療従事者へ受診予定者への適切な対応方針を提示してもよい。また、例えば、提示部113は、不定期または定期に受診予定者の動態に関するデータを取得し、医療機関への来訪が予測される受診予定者に対して受療方針等の将来予測を提示してもよい。
【0052】
図5および
図6は、本実施形態に係る支援方法の説明に供する図である。以下、
図5および
図6を参照して、本実施形態に係る支援方法について説明する。
【0053】
支援方法は、
図5を参照して概説すると、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を取得するデータ取得ステップ(S1)と、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を用いて機械学習する学習ステップ(S2)と、機械学習の結果に基づいて、医療従事者による受診の要否および医薬品の処方態様を提示する提示ステップ(S3)と、を有する。以下、各ステップについて説明する。
【0054】
なお、機械学習のアルゴリズムは、一般的に、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等に分類される。教師あり学習のアルゴリズムでは、入力と結果のデータセットを学習部112に与えて機械学習する。教師なし学習のアルゴリズムでは、入力データのみを大量に学習部112に与えて機械学習する。強化学習のアルゴリズムは、アルゴリズムが出力した解に基づいて環境を変化させ、出力した解がどの程度正しいのかの報酬に基づいて、修正を加えていく。学習部112の機械学習のアルゴリズムは、教師あり学習、教師なし学習、強化学習のいずれでもよいが、本実施形態では、学習部112が、教師あり学習のアルゴリズムによって機械学習する場合を例として説明する。
【0055】
まず、データ取得ステップ(S1)について説明する。
【0056】
データ取得ステップ(S1)では、データ取得部111が、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を取得し、記憶部120に記憶させる。データ取得部111が、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を取得するタイミングは特に限定されず、例えば、所定時間毎に取得してもよいし、これらのデータが変化したタイミングで取得してもよい。データ取得部111は、所定期間に渡って受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、およびその他のデータD4を取得し、記憶部120に記憶させる。そのため、教師あり学習を行うための入力データと解のデータセットが大量に記憶部120に記憶される。
【0057】
例えば、本実施形態では、受診予定者が医療機関に来訪した際、診察券、保険証、電子カルテによる地域医療の共有データ、マイナンバー等から、所定の地域内外における受診予定者の各データ(受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3)を取得および確認する。またこの際、受診予定者への対応を複数または単数の対話型デバイスにより実行させて、受診予定者から受診に関する証言をヒアリングする。ヒアリングした結果は、各データとともに、後述する学習ステップで利用する。
【0058】
受診予定者からの情報の取得方法は、上記のようなヒアリングによる言語情報の取得に限定されることはない。例えば、支援システム100は、生体情報を取得してもよい。生体情報の取得方法としては、例えば、赤外線を用いた体温や酸素飽和度の取得、末梢血管の脈波測定により動脈硬化の進展度合を取得するといった方法が挙げられる。また、支援システム100は、ヒアリング時の受診予定者の反応(顔の赤潮具合、運動機能等)に関する情報を対話型デバイスを介して取得するようにしてもよい。また、支援システム100は、ヒアリングおよび上記各方法により得られた情報に基づいて受診予定者の言動の信憑性を判断するとともに受診予定者から得られる各情報の妥当性を確認するアルゴリズムを備えることもできる。
【0059】
なお、受診予定者からの情報の取得は、支援システム100が備える対話型デバイスのみによって実行することも可能であるが、例えば、人間(医療従事者等)により実行してもよいし、対話型デバイスおよび人間の両方で行ってもよい。例えば、対話型デバイスのみでは情報の処理等が円滑に進まないような事項に関しては、人間が対話型デバイスを通じて受診予定者とコミュニケーションを図り、取得した情報を入力することで、受診予定者からの情報の取得をより正確および円滑に行うことが可能になる。
【0060】
次に、学習ステップ(S2)について説明する。
【0061】
学習ステップ(S2)では、学習部112は、記憶部120に記憶された大量のデータセットに、教師あり学習のアルゴリズムを適用する。教師あり学習のアルゴリズムとしては、特に限定されないが、例えば、最小二乗法、線形回帰、自己回帰、ニューラルネットワーク等の公知のアルゴリズムが挙げられる。
【0062】
学習部112は、取得した各データに基づき、受診予定者の医療機関への来訪に関する現在および将来の動態を予測する。また、前述したヒアリング結果と予測した結果とを参照して、医療従事者による診察の要否の提示と、医薬品の処方動態の提示とを実行する。
【0063】
また、学習部112は、手術や診療等に使用された医療機器に関して、医療機器が再利用可能なものであるか否か、医療機器が再利用可能なものである場合、どのような方法(洗浄や滅菌方法)を採用することにより再利用可能となるか、医療機器のどの構成部材が再利用可能か等の情報に基づいて、医療機器の再利用の判断に資する情報を機械学習することができる。また、学習部113は、手術や診療等に使用された医薬品に関して、医薬品が再利用可能なものであるか否か、医薬品が再利用可能なものである場合、どのような方法(医薬品の保存方法、受診予定者への提供方法)を採用することにより再利用可能となるか等の情報に基づいて、医薬品の再利用の判断に資する情報を機械学習することができる。提示部113は、上記の機械学習の学習結果を提示することにより、医療機関へ医療機器や医薬品の再利用に関する情報を提供することができる。医療機関は、特定の一つの医療機関または複数の医療機関の間で、上記再利用に関する学習結果を取得または共有することにより、医療費を効果的に削減することが可能になる。
【0064】
次に、提示ステップ(S3)について説明する。
【0065】
提示部113は、例えば、
図6に示すように、提示内容と提示根拠を医療機関端末200のディスプレイ210に表示することができる。なお、提示内容と提示根拠は、例えば、受診予定者が所有する受診者端末300のディスプレイ310(
図1を参照)や対話型デバイスに備えられるディスプレイ等に表示することも可能である。
【0066】
図6を参照して、提示内容と提示根拠の一例を説明する。
【0067】
例えば、提示内容として医師による診察が不要と判断された場合、提示根拠として判断結果に至る主な原因が表示される。また、診察の要否とともに、薬剤の処方態様についてもその判断結果が提示内容として表示される。
【0068】
図6に示すように、提示内容には、例えば、セカンドオピニオンが含まれる。セカンドオピニオンには、例えば、医療従事者による診察の要否についての判断と、医薬品の処方態様についての判断の両方が含まれる。また、仮に、セカンドオピニオンにより、医薬品の新たな処方(以前とは異なる薬剤が処方される場合等)が必要と判断される場合、新たな処方の推奨が提示され、以前と同様の処方がなされる場合、各処方データD31、D32(
図4Bを参照)に基づいて、医薬品の残量を予測し、不足分だけを補うような処方の推奨が提示される。
【0069】
図6に示すように、提示内容には、例えば、通知が含まれる。通知は、受診予定者のヒアリングの結果、以前の診察や医薬品の処方が適切に行われていないと判断された場合、その旨を受診予定者、医療機関、受診予定者の親族等に通知することを提案するものである。提示部113は、受診予定者が意図的に重診を希望していたり、医薬品の処方が意図的に重複してなされていたりするような判断結果が得られた場合、例えば、公的な機関等へその旨を通知することを提示する。
【0070】
また、
図6に示すように、提示内容には、例えば、対話型デバイスの利用が含まれる。仮に、受診予定者が受診を目的として医療機関に来訪していないと判断された場合、対話型デバイスによる会話(コミュニケーション)を実行させることにより、受診予定者は、医療従事者による診察を受診しなくても、満足感を得ることができる。そのため、受診予定者への帰宅を円滑に促すことができる。
【0071】
なお、提示部113は、例えば、医療従事者による診察が不要であることを提示する場合、医療従事者の診察を代替する他の診察行為として、対話型デバイスによる会話以外の方法を提示してもよい。提示部113は、例えば、ボランティア職員との会話、他の受診予定者との会話、動物等との触れ合い等を提示することができる。
【0072】
支援システム100は、特定の受診予定者への対応を提示した場合、データ取得部111により受診予定者データD1、来訪データD2、および受診データD3等のデータを再度取得してもよい。そして、学習部112は、新たに取得したデータを用いて機械学習を再度実行し、学習モデルを更新してもよい。支援システム100は、更新した学習モデルに基づいて、例えば、同一の受診予定者または異なる受診予定者の将来の動態を予測し、その結果を新規データとして蓄積し、次回の提案時に活用することができる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る支援システム100は、医療機関での受診を予定している受診予定者に関する受診予定者データD1、受診予定者の医療機関への来訪履歴に関する来訪データD2、および受診予定者が医療機関で過去に受診した診察内容に関する受診データD3を取得するデータ取得部111と、受診予定者データD1、来訪データD2、および受診データD3を用いて機械学習する学習部112と、機械学習の結果に基づいて、受診予定者に対する診察の要否を提示する提示部113と、を有している。
【0074】
上記のように支援システム100は、機械学習の結果に基づいて、医療従事者による受診予定者への診察の要否を提示する。医療従事者は、提示された内容を参照することにより、受診の必要性が乏しい受診予定者に対する診察を回避することができる。その結果、医療従事者の業務負担の増加および高齢者の医療機関への訪問による過剰な医薬品の処方が発生するのを未然に防止することができ、医療費を効果的に削減することが可能になる。
【0075】
また、提示部113は、診察が不要であることを提示する場合、医療従事者の診察を代替する他の診察行為を提示する。そのため、受診予定者は、医療従事者による診察を受診しなかった場合においても、医療機関への来訪による高い満足感を得ることができる。
【0076】
また、提示部113は、他の診察行為として、対話型デバイスによる受診予定者とのコミュニケーションを提示する。そのため、医療従事者の業務負担の増加を抑えつつ、受診予定者の満足感をより一層高めることができる。
【0077】
また、受診データD3は、受診予定者に対して処方された医薬品に関する処方データD31、D32を含む。学習部112は、受診予定者データD1、来訪データD2、受診データD3、および処方データD31、D32に基づいて、推奨される医薬品の処方態様を学習する。そして、提示部113は、機械学習の結果に基づいて、医薬品の処方態様を提示する。そのため、支援システム100は、より適切に医薬品の処方の要否を判断できるとともに、医薬品を処方する場合には適切な処方量および適切な種類の医薬品を提供することが可能になる。
【0078】
また、提示部113は、提示内容とともに提示根拠を提示する。そのため、医療従事者や受診予定者等は、納得感を持って提示内容を採用することが可能になる。
【0079】
また、本実施形態に係る支援方法は、医療機関での受診を予定している受診予定者に関する受診予定者データD1、受診予定者の医療機関への来訪履歴に関する来訪データD2、および受診予定者が医療機関で過去に受診した診察内容に関する受診データD3を取得するデータ取得ステップ(S1)と、受診予定者データD1、来訪データD2、および受診データD3を用いて機械学習する学習ステップ(S2)と、機械学習の結果に基づいて、受診予定者に対する診察の要否を提示する提示ステップ(S3)と、を有している。そのため、医療従事者は、提示された内容を参照することにより、受診の必要性が乏しい受診予定者に対する診察を回避することができる。その結果、医療従事者の業務負担の増加および高齢者の医療機関への訪問による過剰な医薬品の処方が発生するのを未然に防止することができ、医療費を効果的に削減することが可能になる。
【0080】
また、本実施形態に係る支援プログラムは、医療機関での受診を予定している受診予定者に関する受診予定者データD1、受診予定者の医療機関への来訪履歴に関する来訪データD2、および受診予定者が医療機関で過去に受診した診察内容に関する受診データD3を取得するデータ取得ステップ(S1)と、受診予定者データD1、来訪データD2、および受診データD3を用いて機械学習する学習ステップ(S2)と、機械学習の結果に基づいて、受診予定者に対する診察の要否を提示する提示ステップ(S3)と、を実行する。そのため、医療従事者は、提示された内容を参照することにより、受診の必要性が乏しい受診予定者に対する診察を回避することができる。その結果、医療従事者の業務負担の増加および高齢者の医療機関への訪問による過剰な医薬品の処方が発生するのを未然に防止することができ、医療費を効果的に削減することが可能になる。
【0081】
以上、実施形態を通じて本発明に係る支援システム、支援方法、および支援プログラムを説明したが、本発明は明細書内で説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態に係る支援システム、支援方法、および支援プログラムは、取得した各データおよび提示内容を複数の医療機関の間で共有してもよいし、単一の医療機関のみで利用してもよい。
【0083】
また、本発明に係る支援システムが機械学習に用いるデータは、少なくとも受診予定者データ、来訪データ、および受診データを用いるものであれば特に限定されない。また、提示する内容には、受診予定者に対する診察の要否が少なくとも含まれていればよい。
【0084】
また、受診データに処方データが含まれる場合、処方データには、医療機関側処方データおよび薬局側処方データの少なくとも一方のデータが含まれていればよい。
【0085】
また、上記実施形態に係る支援システムでは、学習部は、教師あり学習のアルゴリズムを用いて機械学習を行うが、学習部が機械学習に用いるアルゴリズムは、教師なし学習のアルゴリズムであってもよいし、強化学習のアルゴリズムであってもよい。また、学習部は、複数の種類のアルゴリズムを用いて機械学習を行ってもよい。
【0086】
また、上記実施形態に係る支援システムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。また支援プログラムは、たとえば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などのコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスクなどの記憶部に転送され記憶される。また、支援プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよい。
【0087】
本出願は、2017年11月30日に出願された日本国特許出願第2017−230847号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。