特許第6782414号(P6782414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782414
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】車両用電源システムおよび自動車
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20201102BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20201102BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20201102BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   H02J7/00 Q
   H02J7/00 A
   H02J7/14 V
   H02J7/14 W
   B60R16/04 W
   B60R16/02 650J
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-177539(P2016-177539)
(22)【出願日】2016年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-46597(P2018-46597A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】保坂 大祐
(72)【発明者】
【氏名】前田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井上 健士
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−200553(JP,A)
【文献】 特開2003−177539(JP,A)
【文献】 特開2016−060362(JP,A)
【文献】 特開2004−032871(JP,A)
【文献】 特開2003−173220(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/011766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H01M 10/42−10/48
G01R 31/36−31/396
B60R 16/02
B60R 16/04
B60L 58/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電デバイスを有し、オルタネータから供給される回生電力を受入可能かつ放電負荷に放電可能な複合蓄電デバイスと、
前記複数の蓄電デバイスに対応して各蓄電デバイスの少なくとも電圧を検出する複数の検出回路を有する検出手段と、
前記検出手段の出力に基づいて前記複合蓄電デバイスに異常があるかを判断する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検出手段の出力が予め定められた設定範囲外のときに、該設定範囲外の出力をした前記検出回路をリセットした後、前記リセットされた検出回路の出力が前記設定範囲外かを再判断することを特徴とする車両用電源システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段の出力が前記設定範囲外のときに、前記複数の蓄電デバイスのうち前記設定範囲内の出力をした前記検出回路に対応する蓄電デバイスのみで充放電を行うことを特徴とする請求項に記載の車両用電源システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記再判断が肯定のときに、前記リセットされた検出回路に対応する蓄電デバイス系に異常があると判定して前記設定範囲内の出力をした前記検出回路に対応する蓄電デバイスのみでの充放電を行い、前記再判断が否定のときに、前記リセットされた検出回路に対応する蓄電デバイス系が正常に復帰したと判定して前記複数の蓄電デバイスで充放電を行うことを特徴とする請求項に記載の車両用電源システム。
【請求項4】
前記検出回路はその作動電力が対応する前記蓄電デバイスからそれぞれ作動スイッチを介して供給され、前記制御手段は、前記作動スイッチをオフ状態とした後オン状態とすることで前記設定範囲外の出力をした検出回路をリセットすることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記再判断が肯定のときに、前記リセットされた検出回路に対応する蓄電デバイス系に異常があることを車両側制御部に報知し、前記車両側制御部により正常に作動しているかの診断を受けることを特徴とする請求項に記載の車両用電源システム。
【請求項6】
前記車両側制御部による診断は、前記制御手段が前記作動スイッチをオフ状態とした後、オン状態とする前に行われることを特徴とする請求項に記載の車両用電源システム。
【請求項7】
前記複合蓄電デバイスは、少なくとも第1の蓄電デバイスと第2の蓄電デバイスとを有しており、前記第1の蓄電デバイスは、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池およびリチウムイオン電池で構成される群から選択される1種であり、前記第2の蓄電デバイスは、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタおよび電気二重層キャパシタで構成される群から選択される1種であることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の車両用電源システムを備えた自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用電源システムおよび自動車に係り、特に、蓄電デバイスの少なくとも電圧を検出する検出回路を備えた車両用電源システムおよび該車両用電源システムを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、普通ガソリン車等では、オルタネータから供給される電力を受入可能かつ放電負荷に放電可能な蓄電デバイスが広く実用に供されている。普通ガソリン車は、制動時を除く走行中にオルタネータから供給される電力を鉛蓄電池等の蓄電デバイスに充電する。
【0003】
近年、このようなガソリン車において、二酸化炭素排出抑制の観点から、アイドリングストップ・システム機能を有する車両(ISS車)が徐々に増加している。ISS車では、車両停止時にエンジンを停止し、その間のランプや電装機器等の補機への電力供給はすべて蓄電デバイスで賄い、さらに、アイドリングストップ後のスタート(ISS)時には蓄電デバイスに蓄電された電力でスタータ(セルモータ)を駆動させてエンジンを始動する。従って、ISS車では、車両停止時にエンジンを停止するため、普通ガソリン車と比べて燃費が向上する。
【0004】
近時、燃費改善のニーズはとりわけ高く、燃費効率の高い車両が大幅に販売台数を伸ばしている。このような実情に則して、自動車(製造)会社では、制動時にオルタネータから供給される回生電力で蓄電デバイスを充電するオルタネータ回生車両の開発が進められている。このようなオルタネータ回生車両の中には、上述したISS車も含まれ、そのような車両はμHEVまたはマイクロハイブリッドと呼ばれることもある。オルタネータ回生車両では、普通ガソリン車で熱消費されていた、オルタネータから制動時に供給される回生電力で蓄電デバイスを充電し、制動時を除く走行中は原則的にオルタネータの動作を停止してオルタネータを作動させるためのエンジンによるガソリン消費を低減させる。
【0005】
オルタネータ回生車両では、鉛蓄電池等の蓄電デバイスが、電源システムを構成するキーデバイスとして採用されている。昨今では、複数の蓄電デバイスを有する複合蓄電デバイスも市場に現れ始めている。例えば、特許文献1には、第1蓄電池(鉛蓄電池)と第2蓄電池(リチウムイオン電池)とを有する複合蓄電デバイスを採用し、接続線(ワイヤハーネス等)による接続の切断異常が発生しているかが判断可能な車両用電源システムが開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、メイン電池(鉛蓄電池)とサブ電池(リチウムイオン電池)とを有する複合蓄電デバイスを採用し、メイン電池およびサブ電池の一方が異常状態となったときに、メイン電池およびサブ電池のいずれか一方を使用せず、いずれか他方のみを使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5477409号(図1図3、請求項1参照)
【特許文献2】特開2015−211576号公報(段落「0064」参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、本発明者らは、複合蓄電デバイスを有する電源システムでの故障原因を種々調査した。その結果によると、特許文献1に開示されているようなワイヤハーネス等の断線や特許文献2に開示されているような蓄電デバイス自体の故障は比較的少なく、電源システムの制御系(例えば、蓄電デバイスの電圧等を検出するコントローラ(検出回路))の異常が多くを占めていることが判明した。この制御系の異常は、電圧検出線、(電圧データ等の)出力線、制御線の断線やCPUの機能不良を含む故障と、制御系の一時的作動不良とに大別される。従来の電源システムでは、上記の例に則して云えば、鉛蓄電池のコントローラやリチウムイオン電池のコントローラ等の制御系の異常の場合でも、一律に鉛蓄電池やリチウムイオン電池の異常とみなし、正常な方の蓄電デバイスのみを単独で用いる充放電制御を行っていた。
【0009】
しかしながら、燃費向上のために複合蓄電デバイスが採用されているところ、複合蓄電デバイスを構成する一部の蓄電デバイスのみを用いることは本来の趣旨を没却する。例えば、上述したコントローラの一時的作動不良の場合に、コントローラを正常に復帰させることができれば、それ以降は複合蓄電デバイスを構成する複数の蓄電デバイスを有効に活用できる。この点は単一の蓄電デバイスを有する電源システムでも同様である。
【0010】
本発明は上記事案に鑑み、コントローラの一時的作動不良に起因する燃費低下を防止可能な車両用電源システムおよび該車両用電源システムを備えた自動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、車両用電源システムであって、蓄電デバイスの少なくとも電圧を検出する検出回路と、前記検出回路の出力に基づいて前記蓄電デバイスの強電および弱電系統を表す蓄電デバイス系に異常があるかを判断する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記蓄電デバイス系に異常があると判断したときに、前記検出回路をリセットした後、前記リセットされた検出回路の出力に基づいて前記蓄電デバイス系に異常があるかを再判断することを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、車両用電源システムであって、複数の蓄電デバイスを有し、オルタネータから供給される回生電力を受入可能かつ放電負荷に放電可能な複合蓄電デバイスと、前記複数の蓄電デバイスに対応して各蓄電デバイスの少なくとも電圧を検出する複数の検出回路を有する検出手段と、前記検出手段の出力に基づいて前記複合蓄電デバイスに異常があるかを判断する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出手段の出力が予め定められた設定範囲外のときに、該設定範囲外の出力をした前記検出回路をリセットした後、前記リセットされた検出回路の出力が前記設定範囲外かを再判断することを特徴とする。
【0013】
第2の態様において、制御手段は、検出手段の出力が設定範囲外のときに、複数の蓄電デバイスのうち設定範囲内の出力をした検出回路に対応する蓄電デバイスのみで充放電を行うことが好ましい。
【0014】
また、制御手段は、再判断が肯定のときに、リセットされた検出回路に対応する蓄電デバイス系に異常があると判定して設定範囲内の出力をした検出回路に対応する蓄電デバイスのみでの充放電を行い、再判断が否定のときに、リセットされた検出回路に対応する蓄電デバイス系が正常に復帰したと判定して複数の蓄電デバイスで充放電を行うようにしてもよい。
【0015】
さらに、検出回路はその作動電力が対応する蓄電デバイスからそれぞれ作動スイッチを介して供給され、制御手段は、作動スイッチをオフ状態とした後オン状態とすることで設定範囲外の出力をした検出回路をリセットするようにしてもよい。
【0016】
また、制御手段は、再判断が肯定のときに、リセットされた検出回路に対応する蓄電デバイス系に異常があることを車両側制御部に報知し、車両側制御部により正常に作動しているかの診断を受けるようにしてもよい。この車両側制御部による診断は、制御手段が作動スイッチをオフ状態とした後、オン状態とする前に行われるようにしてもよい。
【0017】
また、複合蓄電デバイスは、少なくとも第1の蓄電デバイスと第2の蓄電デバイスとを有しており、第1の蓄電デバイスには、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池およびリチウムイオン電池で構成される群から選択される1種を用いることができ、第2の蓄電デバイスには、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタおよび電気二重層キャパシタで構成される群から選択される1種を用いることができる。
【0018】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様は、第1および第2の態様の車両用電源システムを備えた自動車である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御手段が、蓄電デバイスに異常があると判断したときに検出回路をリセットするので、検出回路が一時的作動不良に場合に検出回路を正常に復帰させ蓄電デバイスを継続して用いることができるとともに、リセットにより正常状態とみなされる検出回路で蓄電デバイスに異常があるかを再判断するので、検出回路が一時的作動不良以外の場合でも故障原因を特定することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用可能な実施形態の電源システムのブロック回路図である。
図2】実施形態の電源システムの制御部のマイクロコントローラ(MC)のCPUが実行する充放電制御ルーチンのフローチャートである。
図3】充放電制御ルーチンのステップ110の詳細を示す回生充放電処理サブルーチンのフローチャートである。
図4】回生充放電処理サブルーチンのステップ156の詳細を示す複合回生充放電処理サブルーチンのフローチャートである。
図5】回生充放電処理サブルーチンのステップ162の詳細を示すメイン単独回生充放電処理サブルーチンのフローチャートである。
図6】回生充放電処理サブルーチンのステップ168の詳細を示すLIC単独回生充放電処理サブルーチンのフローチャートである。
図7】メイン電池系またはLIC系のコントローラを復帰させるための復帰処理ルーチンのフローチャートである。
図8】蓄電デバイスのデバイス状態を模式的に示す説明図であり、(A)はLICの電圧、(B)メイン電池の充電状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を、オルタネータ回生車両に搭載可能な14V系車両用電源システムに適用した実施の形態について説明する。
【0022】
1.構成
1−1.車両側の構成
まず、本実施形態の電源システム10に言及する前に、図1を参照して電源システム10が搭載されるオルタネータ回生車両(μHEV)20の主要構成について簡単に説明する。なお、μHEVとは、ISS機能を有し、オルタネータから供給される回生電力を受け入れ可能かつ放電負荷(スタータおよび補機)に放電可能な蓄電デバイスを備えたガソリン車またはディーゼル車をいう。
【0023】
(1)イグニッションスイッチ(IGN)11
図1に示すように、オルタネータ回生車両20は、普通ガソリン車と同様に、イグニッションスイッチ11(以下、IGN11と略称する。)を備えている。IGN11は、ドライバにより、OFF位置、ON/ACC位置、START位置のいずれかに位置付けられる。すなわち、車両駐車時にはOFF位置、車両走行前および走行時にはON/ACC位置、エンジン始動時にはSTART位置に位置付けられる。なお、「ACC」はアクセサリ、すなわち、補機(に蓄電デバイス1から電力を供給するための位置)を意味する。IGN11はその位置が変更される度に車両制御部15に報知する。
【0024】
(2)車両制御部15
また、オルタネータ回生車両20は、オルタネータ回生車両20全体の動作を制御する車両制御部(ECU)15を備えている。車両制御部15は、IGN11の位置情報を把握するとともに、アクセル、ブレーキ、エンジン等の作動状態、速度、加速度その他の車両状態を把握し、把握した状態に応じた車両制御を行う。
【0025】
また、車両制御部15は、電源システム10の制御部7と通信線16を介して通信し、電源システム10を構成する蓄電デバイス1のデバイス状態の報知を受けるとともに、制御部7に車両の状態情報を報知する。なお、車両の状態情報には、下表1に示すように、IGN位置情報およびオルタネータ作動情報が含まれる(詳細後述)。
【0026】
【表1】
【0027】
(3)オルタネータ12
オルタネータ回生車両20は、制動時やアクセルオフ時に図示を省略したエンジンの回転力を回生電力に変換するオルタネータ12を備えている。オルタネータ12には電磁クラッチ(不図示)を介してエンジンの(回転)駆動力が伝達される。本実施形態では、オルタネータ12の出力電圧は14.0[V]に設定されている。なお、後述するように、蓄電デバイス1のデバイス状態に応じて、回生発電時以外にもオルタネータ12による発電がなされる場合がある。
【0028】
オルタネータ12は、ステータおよびロータで構成される発電部と、発電部で発電された交流電力を直流電力に変換する整流部と、整流部で変換された直流電力の電圧を一定とするためのボルテージレギュレータとを有して構成されている。なお、オルタネータ12の一端はグランド(車両のシャーシと同電位。以下、GNDと略称する。)に接続されており、他端は後述するスタータ13および補機14の一端および後述するスイッチ6の接続点に接続されている。
【0029】
(4)スタータ13
また、オルタネータ回生車両20は、エンジンを始動するスタータ13を備えている。スタータ13は、公知のように、フィールド(励磁)コイルとアーマチュア(回転)コイルとを有する直流直巻型モータ(セルモータ)と、モータに蓄電デバイス1の電力を供給するためのメイン接点と、プランジャの周りに配されプランジャを進退・保持するプルイン(引き込み)コイルおよびホールディング(保持)コイルと、プランジャに固着した導体部材とを有して構成されている。スタータ13の他端はGNDに接続されている。
【0030】
オルタネータ回生車両20のエンジン始動時には、プルインコイルおよびホールディングコイルに蓄電デバイス1から電力が供給され、プランジャが移動する(引き込まれ保持される)ことで直流直巻型モータに接続された一方のメイン接点と、蓄電デバイス1に接続された他方のメイン接点とが上述した導体部材で導通してモータが回転し始め、このモータの回転力でクランクシャフトが回転する。このため、IGN11がSTART位置に位置付けられると、蓄電デバイス1からスタータ13へ電力が供給されスタータ13が回転し、クランクシャフトを介してスタータ13の回転力がエンジンに伝達されてエンジンが始動する。
【0031】
(5)補機14
さらに、オルタネータ回生車両20には種々の補機(アクセサリ)14が搭載されている。補機14には、例えば、ランプ、ライト、パワーウインド、エンジンポンプ(スパークプラグ)、エアコン、ファン、ラジオ、テレビ、CDプレーヤ、カーナビゲーション等を挙げることができる。補機14の他端はGNDに接続されている。なお、補機14は、最低作動電圧(例えば、8[V])以上の作動電圧を蓄電デバイス1から供給されればよい。
【0032】
1−2.電源システム10の構成
次に、本実施形態の電源システム10の構成について説明する。電源システム10は、例えば、オルタネータ回生車両20のエンジンルームに搭載されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(1)複合蓄電デバイス1
図1に示すように、本実施形態の電源システム10は、オルタネータ12から供給される回生電力を受け入れ可能かつスタータ13および補機14(以下、両者を総称する場合は放電負荷という。)に放電可能な蓄電デバイス1を備えている。蓄電デバイス1は、メイン電池2(本例では鉛蓄電池)と、リチウムイオンキャパシタ3(以下、LIC3と略称する。)との複合蓄電デバイスとして構成されている。
【0034】
(1−1)メイン電池2
メイン電池2の電槽には、内部を仕切る隔壁によって6個のセル室を画定するモノブロック電槽が用いられている。モノブロック電槽の中央部の隔壁には上部側から略中央部までセンサ挿入孔が形成されている。センサ挿入孔にはメイン電池2の中央部の温度を検出するサーミスタ等の温度センサが挿入されており、温度センサは接着剤でセンサ挿入孔内に固定されている。
【0035】
メイン電池2の各セル室には、複数の正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群が1組ずつ収容されており、水系電解液である希硫酸が注液されている。メイン電池2の正極活物質には二酸化鉛、負極活物質には海綿状鉛を用いることができる。また、回生電力を受け入れやすい構造とするために、負極活物質合剤には負極活物質の他にリグニンおよびカーボン等を含む負極添加剤が混入されている。
【0036】
各セル室はモノブロック電槽の開口を一体に覆う蓋で密閉化されており、各セル室間は導電性の接続部材により直列に接続されている。メイン電池2の上部対角位置には、外部出力端子となる正極端子および負極端子が立設されている。本実施形態のメイン電池2の公称電圧は12[V]であり(各セルの公称電圧:2[V])、満充電電圧は14.8[V]である。また、メイン電池2の容量は、例えば、30〜70[Ah]とすることができるが(本例では32[Ah])、本発明はこれに制限されるものではない。なお、メイン電池2の負極端子はGNDに接続されている。
【0037】
(1−2)LIC3
一方、LIC3は、単体の(ユニット)リチウムイオンキャパシタ(以下、単体キャパシタと略称する。本例では、使用下限電圧2.2[V]、使用上限電圧3.5[V])を4個直列に接続したキャパシタ群(組キャパシタ)で、最上位電位側に正極端子、最下位電位側に負極端子を有して構成されている。単体キャパシタの容量は、例えば、1000F〜4000Fとすることができるが(本例では1800F)、本発明はこれに限定されるものではない。負極端子はGNDに接続されている。これら4個の単体キャパシタのうち1個の単体キャパシタの表面には、接着剤によりサーミスタ等の温度センサが固着している。なお、本実施形態のLIC3の使用上限電圧は14.0[V](3.5[V]×4個)、使用下限電圧は8.8[V](2.2[V]×4個)に設定されている。
【0038】
各単体キャパシタは、多数の貫通孔が形成されたアルミニウム箔に活性炭を含む正極活物質を塗着した正極と、多数の貫通孔が形成された銅箔にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質(例えば、非晶質炭素)を塗着した負極とを微多孔性のセパレータを介して捲回または積層した電極群を有している。電極群は、6フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のリチウム塩がエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の混合溶媒に溶解された非水電解液に浸潤されて円筒型、扁平円筒型または角型の容器内に収容されている。
【0039】
例えば、各単体キャパシタが円筒型の場合には、LIC3は上下位置で4本の単体キャパシタを一括して保持するための樹脂製ホルダを有しており、各ホルダにはこれらの単体キャパシタを直列接続するための導体並びに正極端子または負極端子がインサート成形で内蔵されており、各単体キャパシタはそれぞれ隣接する2本の単体キャパシタと上下方向で正負極が逆方向、対角位置に配された単体キャパシタと同方向でホルダにより保持されるようにしてもよい。
【0040】
(2)スイッチ6
図1に示すように、電源システム10は、メイン電池2およびLIC3の充放電電流を切り替えるスイッチ6を備えている。スイッチ6は、直列に接続された2つのスイッチ、スイッチSW1とスイッチSW2とで構成されている。スイッチSW1とスイッチSW2との接続点は放電負荷の一端およびオルタネータ12の他端に接続されている。スイッチSW1、SW2の他端はそれぞれメイン電池2およびLIC3の正極端子に接続されている。スイッチSW1、SW2は大電流が通電可能なスイッチング素子(例えば、パワーMOSFET)で構成されている。
【0041】
ここで、スイッチ6の主機能について説明すると、オルタネータ12から供給される回生電力を蓄電デバイス1で受け入れる際に、オルタネータ12からメイン電池2およびLIC3のいずれか一方に接続するスイッチの役割を果たすとともに、蓄電デバイス1から放電負荷に放電する際に、メイン電池2およびLIC3のいずれか一方から放電負荷に接続するスイッチの役割を果たす。
【0042】
スイッチ6は、下表2に示すように、オルタネータ12および放電負荷がメイン電池2およびLIC3のいずれにも接続されない状態0、オルタネータ12および放電負荷がLIC3に接続される状態1、オルタネータ12および放電負荷がメイン電池2に接続される状態2、メイン電池2とLIC3とが並列接続される状態3のいずれかの状態を採る。
【0043】
【表2】
【0044】
(3)補償キャパシタC
蓄電デバイス1から補機14に放電する際、例えば状態1から状態2に切り替えるときには、メイン電池2およびLIC3のいずれからも補機14に電力が供給されない一瞬が生じるおそれがある。このため、スイッチSW1、SW2の接続点とGNDとの間には、この一瞬の電力を補機14に補償・供給する補償キャパシタC(電解キャパシタ)が挿入されている。
【0045】
(4)コントローラ4、5
また、電源システム10は、メイン電池2、LIC3の状態をそれぞれ検出するメイン電池コントローラ4、LICコントローラ5(以下、両者を総称する場合はコントローラ4、5という。)を備えている。コントローラ4、5は、充放電中(車両走行中および車両走行前)にそれぞれメイン電池2、LIC3の温度、電圧、電流等の状態を検出する。
【0046】
すなわち、本実施形態では、上述したメイン電池2の温度センサはメイン電池コントローラ4に接続されており、メイン電池コントローラ4は所定時間毎に(例えば、10ms間隔で)温度センサの電圧をサンプリングし、サンプリング結果をそのRAMに格納する。また、メイン電池2の総電圧を検出するために、メイン電池2の正極端子および負極端子はメイン電池コントローラ4に接続されている。
【0047】
さらに、メイン電池2に流れる充放電電流を検出するために、スイッチSW2およびメイン電池2の正極端子間にはホール素子またはシャント抵抗等の電流センサ8が配されており、電流センサ8はメイン電池コントローラ4に接続されている。メイン電池コントローラ4は、メイン電池2の電圧およびメイン電池2に流れる電流を所定時間毎に(例えば、2ms間隔で)サンプリングし、サンプリング結果をそのRAMに格納する。また、メイン電池コントローラ4は、充放電休止時(車両駐車時)に、メイン電池2の開回路電圧(以下、OCVと略称する。)およびそのときの温度を検出する。
【0048】
一方、LICコントローラ5も上述したメイン電池コントローラ4と同様の構成を有しているが(LIC3に流れる充放電電流をスイッチSW1とLIC3の正極端子との間に配された電流センサ9で検出)、LIC3の総電圧の検出に加え、過放電・過充電を監視するために各単体キャパシタの電圧も検出する点で、メイン電池コントローラ4が検出する以外の電圧検出も行う。また、LICコントローラ5は、LIC3を構成する各単体キャパシタと並列に接続されるバイパス抵抗を有し、各単体キャパシタの電圧を検出するための電圧検出線(不図示)を介して各単体キャパシタの容量(電圧)を調整する(揃える)容量調整回路を有している。
【0049】
コントローラ4、5は、制御部7(状態把握部7A)に接続されており、充放電時に、それらのRAMに一時的に格納したメイン電池2およびLIC3の温度、電圧、電流およびLIC3を構成する各単体キャパシタの電圧を出力線(図1に示す破線)を介して制御部7に出力し、充放電休止時に、検出したOCVおよびそのときの温度を制御部7に出力する。
【0050】
メイン電池コントローラ4の作動電力は不図示のスイッチング素子(例えば、MOSFET、以下、このスイッチング素子を第1スイッチング素子という。)を介してメイン電池2から供給され、LICコントローラ5の作動電力も不図示のスイッチング素子(以下、このスイッチング素子を第2スイッチング素子という。)を介してLIC3から供給される。本実施形態では、これらのスイッチング素子はそれぞれコントローラ4、5に内蔵されている。
【0051】
(5)制御部7
さらに、電源システム10は、メイン電池2およびLIC3のデバイス状態を演算するとともに、スイッチ6による充放電電流の切り替え動作を制御する制御部7を備えている。制御部7は、マイクロコントローラ(以下、MCと略称する。)、通信IC、I/O、入力ポート、出力ポートを有するマイクロプロセッサとして構成されており、図1では、制御部7の役割を明確にするために機能別に細部を表している。
【0052】
MCは、メイン電池2およびLIC3のデバイス状態(充電状態(SOC)、電圧等)を把握(演算)するCPU、基本制御プログラムおよびプログラムデータを記憶したROM、CPUのワークエリアとして働くとともに種々のデータを一時的に記憶するRAMおよびこれらを接続する内部バスで構成されている。内部バスは外部バスに接続されており、外部バスは入力ポートを介して上述したコントローラ4、5に接続されている。また、外部バスには、スイッチ6、コントローラ4、5に信号を出力するための出力ポート、および、I/O、通信線16を介して車両制御部15と通信するための通信ICが接続されている。
【0053】
従って、制御部7のMCおよび入力ポートは図1の状態把握部7Aに、MCおよび出力ポートはスイッチ制御部7Bに、通信ICおよびI/Oは通信部7Cにそれぞれ対応する。制御部7はその他の機能(例えば、後述する省エネモードへ移行させるための機能)も有しているが、図1では捨象している。
【0054】
スイッチ6と出力ポートとはスイッチ制御線で接続されており、制御部7を構成するMCの破損を防止するためにスイッチ制御線には保護抵抗が挿入されている。スイッチ制御線には出力ポートを介してデジタル電圧が出力される。また、コントローラ4、5と出力ポートとはそれぞれ保護抵抗が挿入された第1、第2スイッチング素子制御線で接続されており、第1、第2スイッチング素子制御線にも出力ポートを介してデジタル電圧が出力される。
【0055】
図1に沿って制御部7の各部の機能を説明すると、状態把握部7Aは、コントローラ4、5から出力されたデータをMCのRAMに一旦格納し、メイン電池2およびLIC3の現在のデバイス状態を演算(算出)する。通信部7Cは、状態把握部7Aが演算したメイン電池2およびLIC3の現在のデバイス状態を所定時間(例えば、2ms)毎に車両制御部15に報知するとともに、上述したように、車両制御部15から車両の状態情報の報知を受ける。スイッチ制御部7Bは、車両制御部15から報知された車両の状態情報および状態把握部7Aで演算したメイン電池2およびLIC3のデバイス状態に従ってスイッチ6を構成するスイッチSW1、SW2のオン、オフを制御するとともに、コントローラ4、5に内蔵された第1、第2スイッチング素子のオン、オフを制御する。
【0056】
制御部7は、同等の機能を有する2つのMCを有しており、一方のMCがスイッチ6、コントローラ4、5を制御中には原則的に他方のMCは作動しておらず(電力が供給されず)、逆に、他方のMCがスイッチ6、コントローラ4、5を制御中には原則的に一方のMCは作動していない状態に制御される。このような制御は制御部切換制御線(図1参照)を介して車両制御部15により行われる。以下では、一方のMCが作動しているものとして説明する(図1に示す状態)。
【0057】
なお、本実施形態では、制御部7、車両制御部15、IGN11は、原則的にメイン電池2から作動電力が供給されるが、メイン電池2に異常がある場合には後述するように不図示の切換スイッチを切り換えるによりLIC3から作動電力が供給される。
【0058】
2.動作
次に、本実施形態の電源システム10の動作について、制御部7を構成する一方のMCのCPU(以下、CPUと略称する。)を主体として説明する。なお、必要に応じて、他方のMC並びに車両制御部15による制御についても言及する。
【0059】
2−1.情報の共有
車両制御部15と制御部7(CPU)は協調制御を行う。すなわち、車両制御部15は車両状態および蓄電デバイス1のデバイス状態に応じて車両を制御し、制御部7(CPU)は車両状態および蓄電デバイス1のデバイス状態に応じてスイッチ6のオン、オフを制御する。このため、CPUは車両の状態情報が必要となり、車両制御部15は蓄電デバイス1のデバイス状態の把握が必要となる。車両の状態情報および蓄電デバイス1のデバイス状態は上述した通信線16を介して両者間で共有される。以下では、CPUによる充放電制御に言及する前にその前提として、共有される情報について説明する。
【0060】
(1)車両の状態情報
(1−1)IGN位置情報
車両駐車後の車両走行前には、ドライバによりIGN11にイグニッションキーが挿入され、IGN11はOFF位置からON/ACC位置に位置付けられ、さらにON/ACC位置からSTART位置に位置付けられてエンジンが始動した後、再度ON/ACC位置に位置付けられる。これにより、オルタネータ回生車両20は走行状態(車両走行中)となる。車両制御部15はIGN11が最初にON/ACC位置に位置付けられると、制御部7にその旨を報知する。この報知を受けたCPUは、コントローラ4、5および制御部7をスリープ状態(省エネモード)から作動状態に移行(アウェーク)させる。
【0061】
また、車両走行後の車両駐車開始時には、ドライバによりIGN11がON/ACC位置からOFF位置に位置付けられ、イグニッションキーがIGN11から引き抜かれる。車両制御部15はIGN11がOFF位置に位置付けられると、制御部7にその旨を報知する。この報知を受けたCPUは、コントローラ4、5および制御部7をアウェーク状態(作動状態)からスリープ状態に移行させる。
【0062】
なお、車両走行後にIGN11がOFF位置に位置付けられたときは、車両制御部15も所定の処理(データ保存等)を行った後スリープ状態となり、制御部7からの基準SOC等の報知時のみ作動状態となる。一方、IGN11にイグニッションキーが挿入されたときにスリープ状態からアウェーク状態に移行する。
【0063】
車両制御部15はIGN11の出力を監視しており、IGN11がいずれの位置に位置付けられたかをIGN位置情報として制御部7に報知する。表1に示すように、IGN位置情報には、IGN11がOFF位置に位置付けられたことを表すOFF情報、IGN11がON/ACC位置に位置付けられたことを表すON/ACC情報およびIGN11がSTART位置に位置付けられたことを表すSTART情報が含まれる。
【0064】
(1−2)オルタネータ作動情報
オルタネータ回生車両20は回生発電機能を有しているため、車両制御部15は、ブレーキが踏まれたとき(制動時)、または、アクセルが開放されたとき(アクセルオフ時)に、上述した電磁クラッチをオン状態に移行させエンジンの駆動力を回生電力に変換して回生電力を蓄電デバイス1に供給するようにオルタネータ12を制御するとともに、CPUにその旨を報知する。また、ブレーキが開放されたとき、または、アクセルオフの結果車両の加速度が0となったときに、電磁クラッチをオフ状態に移行させオルタネータ12の作動を停止させるように制御するとともに、その旨をCPUに報知する。
【0065】
すなわち、表1に示すように、電磁クラッチをオン状態に移行させるときは、回生電力の供給が開始することを表す回生開始情報をCPUに報知し、電磁クラッチを(オン状態から)オフ状態に移行させるときは、回生電力の供給が終了することを表す回生終了情報をCPUに報知する。なお、オルタネータ作動情報にはオルタネータ始動情報も含まれるが、この点については後述する。
【0066】
(2)蓄電デバイス1のデバイス状態
CPUは、充放電中(車両走行前および車両走行中)は、コントローラ4、5で所定時間毎に検出されたメイン電池2およびLIC3のデータ(LIC3を構成する各単電池の電圧を含む。)を取得するとともに、メイン電池2、LIC3の基準SOC(後述)およびメイン電池2、LIC3の容量(既知)に基づいて、コントローラ4、5で所定時間毎に検出された電流値を積算してメイン電池2およびLIC3の現在のデバイス状態を演算する。なお、電圧値、電流値は基準温度(例えば、室温)での値に温度補正される。そして、所定時間毎に、メイン電池2およびLIC3の現在のデバイス状態を車両制御部15に報知する。
【0067】
一方、この報知を受けた車両制御部15は、メイン電池2、LIC3の現在のSOC、電圧を参照して、エンジンの駆動力をオルタネータ12に伝達させるか否かを判断する。例えば、蓄電デバイス1が使用上限SOC、使用上限電圧に近い場合には、過充電状態に陥るおそれがあるためオルタネータ12を作動させないように電磁クラッチを制御し、逆に、蓄電デバイス1の劣化が促進されるようなSOC、使用下限電圧の場合には、ドライバのブレーキ操作やアクセル操作による回生充電を待たずに、車両走行中または車両走行前にオルタネータ12を作動させて蓄電デバイス1を充電するように電磁クラッチを制御する。
【0068】
蓄電デバイス1の劣化が促進されるような状態の場合には、車両制御部15は、蓄電デバイス1の劣化を防止するために、エンジンを駆動させ(または、燃費節約のためエンジンを停止させるべきところ駆動を続行させ)上述した電磁クラッチを作動させてエンジンの駆動力をオルタネータ12に接続する。車両制御部15は、このようにオルタネータ12の発電電力を蓄電デバイス1に供給する際は、オルタネータ12を作動させるタイミングで、オルタネータ12が始動することを表すオルタネータ始動情報(表1参照)をCPUに報知する。なお、このような発電は、従来の普通ガソリン車等でも採用されている、ガソリン消費を伴う発電方式である。
【0069】
2−2.充放電制御
次に、フローチャートを参照して、CPUが実行する充放電制御について説明する。まず、図2を参照してCPUが実行する充放電制御の全体像について説明する。
【0070】
図2に示すように、充放電制御ルーチンでは、まず、ステップ(以下、Sと略称する。)102でIGN位置情報を受信するまで待機し、IGN位置情報を受信すると、次のS104において、受信したIGN位置情報がON/ACC情報か否かを判断する。
【0071】
S104で肯定判断のときは、次のS106において、車両が駐車後走行前(エンジン始動前)の状態か、走行中(エンジン始動後)の状態かを判断するために、START情報を受信済か否かを判断する。なお、START情報を受信済か否かは、例えば、後述するSTART情報受信フラグを参照して行うことができる。
【0072】
S106での判断が否定のときは、エンジン始動前(車両走行前)の蓄電デバイス1の充放電を制御するためのエンジン始動前充放電処理を実行し(S108)、肯定のときは、エンジン始動後(車両走行中)の蓄電デバイス1の充放電を制御するための回生充放電処理を実行する(S110)。
【0073】
一方、S104で否定判断のときは、S112において、受信したIGN位置情報がSTART情報か否かを判断する。S112の判断が肯定のときは、メイン電池2からスタータ13に放電することでエンジンを始動するためのエンジン始動処理を実行し(S114)、S112の判断が否定のとき、すなわち、受信したIGN位置情報がOFF情報のときは、蓄電デバイス1の充放電を休止するための充放電休止処理を実行する(S116)。
【0074】
2−3.個別制御
(1)エンジン始動前充放電処理
CPUは、図2のS108において、LIC3の電圧が設定電圧V2(図8(A)参照、本例では11.8[V])を越えるか否かを判断し、肯定判断のときは、スイッチ6を状態1(SW1:オン、SW2:オフ)とする。これにより、車両駐車後エンジン始動前の補機14への電力供給(放電)はLIC3からなされる。なお、設定電圧V2は、LIC3からスタータ13に放電することでエンジンを始動可能な最低電圧以上の電圧値として設定されている。一方、否定判断のときは(補機14への放電の結果、LIC3の電圧が設定電圧V2となったときも含む。)、メイン電池2のSOCがエンジンを始動可能な第1のSOC(図8(B)参照、本例では70[%])以上か否かを判断し、この判断が肯定のときは、スイッチ6を状態2(SW1:オフ、SW2:オン)として始動前充放電処理を終了し図2のS102に戻る。これにより、車両駐車後エンジン始動前の補機14への電力供給はメイン電池2からなされる。
【0075】
一方、この判断が否定のとき(メイン電池2が第1のSOC未満のとき)は、メイン電池2を充電するための充電処理を実行する。上述したように、蓄電デバイス1を充電するためにオルタネータ12を作動させるか否かの判断は車両側制御部15が行う。CPUは、この判断に供するため、所定時間毎にデバイス状態を車両側制御部15に報知しているが、例えば車両制御部15と制御タイミングを同期させるために、デバイス状態に加え蓄電デバイス1の充電が必要である旨を車両制御部15に報知するようにしてもよい。
【0076】
車両制御部15は、オルタネータ12を作動させるタイミングでオルタネータ始動情報をCPUに報知する。なお、以下では、このようにオルタネータ12で発電される電力を、上述した回生電力と区別するために、発電電力という。
【0077】
CPUは、上記充電処理において、車両制御部15からオルタネータ始動情報を受信するまで待機し、車両制御部15からオルタネータ始動情報を受信すると、スイッチ6を状態2とする。これにより、メイン電池2はオルタネータ12の発電電力で定電圧充電される。次に、メイン電池2が第2のSOC(図8(B)参照、本例では80[%])まで充電されたか否かを判断し、否定判断のときは、メイン電池2が第2のSOCまで充電されるまで待機し、肯定判断のときはエンジン始動前充放電処理を終了して図2のS102に戻る。なお、スイッチ6は状態2にあるため、オルタネータ12から補機14に発電電力が供給された後は、メイン電池2から補機14に電力が供給される。
【0078】
回生電力でメイン電池2を充電する際には、メイン電池2に回生電力をできるだけ多く蓄電するため、メイン電池2を使用上限SOC(図8(B)参照、本例では97[%])まで充電することが好ましい。一方、メイン電池2の劣化を防止するためにメイン電池2を充電するときは、オルタネータ12を作動させる必要がある。このオルタネータ12の作動には、上述したように、エンジンの駆動力をオルタネータ12に接続するためガソリン消費を伴う。このため、第1のSOC(70[%])から使用上限SOC(97[%])まで充電してもよいが、上述した第2のSOC(80[%])まで充電すれば、その後回生電力によりメイン電池2がさらに充電されることもあるため、ガソリン消費を節約できる(燃費向上を図ることができる。)。
【0079】
(2)エンジン始動処理
上述したように、IGN11がON/ACC位置に位置付けられた後は、START位置に位置付けられてエンジンが始動する。CPUは、図2のS114において、エンジン始動前に「0」とされていたSTART情報受信フラグを「1」に変更した後、LIC3の電圧が設定電圧V2を越えるときは、スイッチ6を状態1としてLIC3からスタータ13に電力を供給することでエンジンを始動させ、LIC3の電圧が設定電圧V2以下のときは、スイッチ6を状態2としてメイン電池2からスタータ13に電力を供給することでエンジンを始動させてエンジン始動処理を終了し、図2のS102に戻る。
【0080】
本実施形態では、主としてLIC3の供給電力でエンジンを始動する。その理由は、大電流放電で劣化が進行するメイン電池2(鉛蓄電池)をできるだけ保護するためと、大電流放電特性に優れたLIC3からスタータ13に放電することでエンジン始動(特に、ISSの際のエンジン再始動)の失敗(およびその後のやり直し)を少なくするためである。なお、ドライバは、IGN11をSTART位置に位置付けエンジンを始動した後は、IGN11をON/ACC位置に位置付ける(例外的に、OFF位置に位置付けることもある。)。
【0081】
(3)回生充放電処理
図3は、図2のS110の詳細を示す回生充放電処理サブルーチンのフローチャートである。この回生充放電処理サブルーチンでは、まず、S152においてLIC系に異常があるか否かを判断する。ここで、LIC系とは、LIC3の充放電に関連する強電および弱電系統をいい、LIC3、LICコントローラ5、並びに、LICコントローラ5および状態把握部7A間の出力線が含まれる。
【0082】
<LIC系異常判断>
CPUは、このS152において、(a)LIC3の異常の有無、(b)電圧検出線、出力線および第2スイッチング素子制御線の断線の有無、並びに、(c)LICコントローラ5の異常の有無を判定し、これらのいずれかに異常を認めたときにLIC系に異常があると判断する。
【0083】
(a−1)LIC3の異常の有無は、エンジンがLIC3の電力で始動した場合には、LIC3の内部抵抗(LIC3を構成する各単体キャパシタの内部抵抗の和と各単体キャパシタ間を接続する接続導体の抵抗との合計値)が予め定められた閾値を越えるか否かを判定することにより、閾値を越えるときはLIC3が異常、閾値を越えないときはLIC3が正常と判断する。ただし、エンジンがメイン電池2の電力で始動した場合には、この(a−1)による内部抵抗を算出できないことから後述する(a−2)のみでLIC3の異常の有無を判断する。
【0084】
エンジン始動の際には、LIC3からスタータ13へ数百[A]の大電流放電がなされ、LIC3の電圧は急激に降下して最低電圧に至り、その後徐々に電圧が上昇する。この最低電圧に至るまでの一瞬の状態ではオームの法則が成立する(メイン電池2でも同じ。)。CPUは、上述したエンジン始動処理においてLICコントローラ5から出力されるLIC3の放電電流および電圧を把握している。この一瞬の電流変化をΔI、電圧変化をΔVとすると、LIC3の内部抵抗Rは、R=ΔV/ΔIで表される。CPUは、上述したエンジン始動処理においてLIC3の内部抵抗Rを演算しておき、LIC3の異常の有無の判断の際に、上述した閾値と比較する。
【0085】
CPUは、LIC3の内部抵抗Rが閾値を越えないと判定したときは、(a−2)LICコントローラ5から出力されるLIC3の(総)電圧およびLIC3を構成する各単体キャパシタの電圧を参照して、各単体キャパシタの電圧が使用上限電圧(本例では3.5[V])より高いか否か、各単体キャパシタの電圧が使用下限電圧(本例では2.2[V])より低いか否か、LIC3の電圧が使用上限電圧(本例では14.0[V])より高いか否か、および、LIC3の電圧が使用下限電圧(本例では8.8[V])より低いか否かを判定する。これら全ての判定が否定のとき(LIC3および各単体キャパシタが使用範囲内(設定範囲内)にあるとき)は、LIC3に異常がないと判断する。一方、これらの判定のいずれかが肯定のとき、または、LIC3の内部抵抗Rが上述した閾値を越えると判定したときは、LIC3に異常があると判断する。
【0086】
(b−1)電圧検出線の断線の有無は、例えば、特開2009−103706号公報に開示されているように、単体キャパシタのOCVを測定しておき、単体キャパシタと並列に上述した(容量調整回路の)バイパス抵抗を接続し充放電電流を流したときの電圧を測定して、OCVとこの電圧との差が所定値以上のときに単体キャパシタから導出された電圧検出線に断線が生じていると判断する。一方、(b−2)出力線および第2スイッチング素子制御線の断線(スイッチ6の故障を含む。)の有無は、例えば、スイッチ6を構成するスイッチSW1の切換(例えば、オフ状態からオン状態への切換)前後でLICコントローラ5から出力されるLIC3の充放電電流の変化を参照することで判断できる(出力線および第2スイッチング素子制御線が断線(またはスイッチ6が故障)していれば、LICコントローラ5から出力されるLIC3の電流に変化が現れず設定範囲外となる。)。
【0087】
また、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、(c)LICコントローラ5自体に異常が生じる場合もある。典型的な例としては、LICコントローラ5のCPUの暴走や、LIC3の電圧、電流、温度等が所定時間毎に制御部7に出力されない場合を挙げることができる。このようなLICコントローラ5の異常は、例えば、ソフトウエアがLIC3の電圧、電流、温度等を確認可能な周期(ポーリング)との整合不良や、ハードウエアでの基準電圧との整合不良等の何らかの原因に起因するが、LICコントローラ5の状態変化の際に(例えば、省エネモードからアウェークさせる際に)生じることもある。CPUは、例えば、LICコントローラ5から出力されるLIC3の電圧、電流、温度等が予め定められたプロトコルに従って出力されているときはLICコントローラ5に異常がないと判断し、そうでない場合はLICコントローラ5に異常があると判断する。
【0088】
ここで重要な点は、上記(a)〜(c)の異常判断は暫定的なものである反面、LIC系には何らかの異常が生じていることである。例えば、上記(a)、(b)では、LICコントローラ5の出力に基づいて異常判断を行うため、LICコントローラ5が異常の場合には誤った判断結果となる。つまり、LICコントローラ5の動作が正常であることを条件として、上記(a)、(b)では異常判断とその原因が一致する。このため、S152では、上述したように、(a)〜(c)のいずれかに異常を認めたときにLIC系に異常があると判断する。
【0089】
もう一つの重要な点は、LIC系に異常が発生した場合、車両走行中に正常に戻すこと(復帰)が可能なもの(LIC系の一時的作動不良)か、不能なもの(LIC系の故障)か、を峻別(把握)することである。LIC系の故障であればドライバに逸早く報知する必要があり、LIC系の一時的作動不良であれば復帰動作を行えばよい。この詳細については後述する。
【0090】
図3のS152で否定判断のとき(LIC系が正常のとき)は、S154においてメイン電池系に異常があるか否かを判断する。ここで、メイン電池系とは、メイン電池2の充放電に関連する強電および弱電系統をいい、メイン電池2、メイン電池コントローラ4、並びに、メイン電池コントローラ4および状態把握部7A間の出力線が含まれる。
【0091】
<メイン電池系異常判断>
CPUは、このS154において、上述したLIC系の異常判断と同様に、(a)メイン電池2の異常の有無、(b)出力線および第1スイッチング素子制御線の断線の有無、並びに、(c)メイン電池コントローラ4の異常の有無を判定し、これらのいずれかに異常を認めたときにメイン電池系に異常があると判断する。
【0092】
このメイン電池系の異常判断と上述したLIC系の異常判断との相違は次の2点である。1点目は、LIC3の電力によるエンジン始動とメイン電池2の電力によるエンジン始動とは相互に排他的な関係であることに起因して、上記エンジン始動処理においてLIC3の電力でエンジン始動がなされたときには上述したメイン電池2のΔV、ΔIが測定されないため、(a−2)メイン電池2の異常の有無は、メイン電池2が使用上限SOC(97[%])を越えるか否か、メイン電池2が使用下限SOC(図8(B)参照、本例では60[%])未満か否か、メイン電池2の(総)電圧が満充電電圧(本例では14.8[V])より高いか否か、および、メイン電池の電圧が使用下限電圧より低いか否かを判定する。
【0093】
これら全ての判定が否定のとき(メイン電池2が使用範囲内(設定範囲内)にあるとき)は、メイン電池2に異常がないと判断し、これらの判定のいずれかが肯定のときは、メイン電池2に異常があると判断する。なお、(a−1)上記エンジン始動処理においてメイン電池2の電力でエンジン始動がなされたときには、LIC3の内部抵抗Rの算出と同様に、メイン電池2の内部抵抗(ΔV/ΔI)を演算して予め定められた閾値と比較することで、メイン電池2の異常の有無を判断する。
【0094】
2点目は、LIC3では過放電・過充電を防止するために各単体キャパシタの電圧を監視する必要があるのに対しメイン電池2ではその必要がないことに起因して、LIC3の場合のような電圧検出線そのものが存在ないため、電圧検出線の断線の有無の判断が行われない点である。従って、(b)出力線および第1スイッチング素子制御線の断線(スイッチ6の故障を含む。)の有無は、例えば、スイッチ6を構成するスイッチSW2の切換前後でメイン電池コントローラ4から出力されるメイン電池2の充放電電流の変化を参照することで判断できる。なお、(c)メイン電池コントローラ4の異常の有無は、LIC系異常判断の(c)と同様に行われる。
【0095】
図3のS154で否定判断のとき(メイン電池系が正常なとき)は、S156において、蓄電デバイス1を構成するメイン電池2およびLIC3の両者を用いて充放電処理を行うための複合回生充放電処理を実行する。図4に示すように、この複合回生充放電処理サブルーチンでは、車両制御部16から回生開始情報(S202)または回生終了情報(S218)を受信するまで待機する。
【0096】
S202で肯定判断のときは(回生開始情報を受信すると)、次のS204でスイッチ6を状態1とする。これにより、LIC3は回生電力で定電圧充電される。次にS206において、回生終了情報を受信したか否かを判断し、肯定判断のときはS220に進み(LIC3への充電は打ち切られ)、否定判断のときは、次のS208でLIC3が使用上限電圧(14.0[V])となったか否かを判断する。S208での判断が否定のときは、LIC3による回生電力の受け入れを続行するためにS206に戻り、肯定のときは、次のS210でスイッチ6を状態2とする。これにより、メイン電池2は回生電力で定電圧充電される。
【0097】
次にS212では、回生終了情報を受信したか否かを判断し、肯定判断のときは、S220に進み(メイン電池2への充電は打ち切られ)、否定判断のときは、次のS214において、メイン電池2が使用上限SOC(図8(B)参照)となったか否かを判断する。S214での判断が否定のときは、メイン電池2による回生電力の受け入れを続行するためにS212に戻り、肯定のときは、メイン電池2の過充電を防止するために次のS216でスイッチ6を状態0とし、S202に戻る。これにより、メイン電池2は回生電力による充電が打ち切られる。
【0098】
一方、S218で肯定判断のときは(回生終了情報を受信すると)、次のS220でスイッチ6を状態1とする。これにより、LIC3の電力が補機14に供給される。次にS222において、回生開始情報を受信したか否かを判断し、肯定判断のときはS204に戻り(LIC3から補機14への放電は打ち切られ)、否定判断のときは、次のS224においてLIC3が設定電圧V2(11.8[V])となったか否かを判断する。S224での判断が否定のときは、S222に戻り、肯定のときは、次のS226でスイッチ6を状態2とする。これにより、メイン電池2の電力が補機14に供給される。なお、LIC3が設定電圧V2までしか放電されないのは、ISSの際にLIC3の電力でエンジンを始動するためである。
【0099】
次にS228において、回生終了情報を受信したか否かを判断し、肯定判断のときは、S204に戻り(メイン電池2から補機14への放電は打ち切られ)、否定判断のときは、次のS230においてメイン電池2が第1のSOCとなったかを判断する。S230での判断が否定のときは、S228に戻り、肯定のときは、次のS232で上述した充電処理を実行しS202に戻る。なお、複合回生充放電処理サブルーチンは車両制御部15からIGN位置情報を受信した時点で強制終了し、図2のS102に戻る。
【0100】
一方、図3のS152で肯定判断のとき(LIC系が異常のとき)は、メイン電池2による単独充放電を行う旨を車両制御部15に報知する(S158)。この報知を受けた車両制御部15は、ドライバの注意を喚起するために、その旨をインストールメントパネルに表示するようにしてもよい。
【0101】
次に、CPUは、走行中の車両の安全性を確保するために、S160において、スイッチ6を状態2とするとともに、第2スイッチング素子制御線へのデジタル電圧の出力を止めることで(第2スイッチング素子をオフ状態とすることで)LIC3からLICコントローラ5への電力供給を停止させる。これにより、LIC3の充放電は停止され、LICコントローラ5は作動停止状態となる。
【0102】
次にS162において、蓄電デバイス1を構成するメイン電池2のみを用いて充放電処理を行うためのメイン単独回生充放電処理を実行する。図5に示すように、このメイン単独回生充放電処理サブルーチンでは、LIC3の充放電が停止されることから、図4に示したS204〜S208(LIC3の充電)およびS220〜S224(LIC3の放電)の処理が行われない。なお、メイン単独回生充放電処理サブルーチンは車両制御部15からIGN位置情報を受信した時点で強制終了し、図2のS102に戻る。
【0103】
また、図3のS154で肯定判断のとき(メイン電池系が異常のとき)は、LIC3による単独充放電を行う旨を車両制御部15に報知するとともに、上述した不図示の切換スイッチを切り換えることによりLIC3から制御部7、車両制御部15、IGN11に作動電力を供給する(S164)。この報知を受けた車両制御部15は、その旨をインストールメントパネルに表示するようにしてもよい。
【0104】
次に、CPUは、走行中の車両の安全性を確保するために、S166において、スイッチ6を状態1とするとともに、第1スイッチング素子制御線へのデジタル電圧の出力を止めることで(第1スイッチング素子をオフ状態とすることで)メイン電池2からメイン電池コントローラ4への電力供給を停止させる。これにより、メイン電池2の充放電は停止され、メイン電池コントローラ4は作動停止状態となる。
【0105】
続いてS168において、蓄電デバイス1を構成するLIC3のみを用いて充放電処理を行うためのLIC単独回生充放電処理を実行する。図6に示すように、このLIC単独回生充放電処理では、メイン電池2の充放電が停止されることから、図4に示したS210〜S214(メイン電池2の充電)およびS226〜S230(メイン電池2の放電)の処理が行われない。なお、LIC単独回生充放電処理サブルーチンは車両制御部15からIGN位置情報を受信した時点で強制終了し、図2のS102に戻る。
【0106】
<復帰処理>
上述したメイン単独回生充放電処理またはLIC単独回生充放電処理と並行して、CPUは、LIC系またはメイン電池系の異常状態から正常状態への復帰を試行するとともに、復帰不能な場合にはその故障原因を特定するための復帰処理を実行する。なお、以下では、メイン単独回生充放電処理中の(LIC系に異常がある場合の)復帰処理を中心に説明する。
【0107】
図7に示すように、復帰処理ルーチンでは、S302において所定時間が経過するまで待機する。ところで、上記では、LICコントローラ5(またはメイン電池コントローラ4)等の異常を中心に説明してきたが、車両制御部15側からみれば、LICコントローラ5が正常で、制御部7を構成する一方のMCが異常となったため、図3のS158(またはS164)で単独充放電を報知してきたものとも考えられる。このため、車両制御部15はこのS302の所定時間内に一方のMC等の診断をするが、その点については後述する。なお、以下では、(一方のMCの)CPUが正常であるものとして説明する。
【0108】
S302において所定時間が経過すると、次のS304において、スイッチ6を状態1とするとともに、第2スイッチング素子制御線にデジタル電圧を出力することでLIC3からLICコントローラ5へ電力を供給させる。これにより、LIC3の充放電は再開され、LICコントローラ5はリセットされ再起動する。
【0109】
次にS306では、LICコントローラ5の初期設定処理等が終了した後、再度、図3のS152で説明したLIC系の異常判断をすることで、LIC系が故障か否かを判断する。
【0110】
LICコントローラ5はリセットされた(正常な)状態で作動しているとみなされるため、上述した(a)LIC3の異常の有無、(b)電圧検出線、出力線および第2スイッチング素子制御線の断線の有無、並びに、(c)LICコントローラ5の異常の有無、すなわち、故障原因(故障箇所)を特定できる。ただし、上述した(a−1)LIC3の内部抵抗Rを算出する契機(エンジン始動)がないため、LIC3の内部抵抗Rの異常の有無については、ISS時または次のエンジン始動時に判断する。
【0111】
S306で肯定判断のとき(故障のとき)は、S308において車両制御部15に故障および故障原因を報知する。この報知を受けた車両制御部15は、インストールメントパネルに電源システム10に修理が必要な故障が生じている旨(および必要に応じて故障原因)を表示する。次いで、S310において暫定的に実行していた複合回生充放電処理ルーチンを図5のメイン単独回生充放電処理ルーチンに戻して復帰処理ルーチンを終了する。
【0112】
一方、S306で否定判断のとき(LICコントローラ5の一時的作動不良のとき)は、S312で車両制御部15にメイン単独回生充放電処理を解除する旨を報知する。この報知を受けた車両制御部15はその旨(およびLICコントローラ5の一時的作動不良が原因であった旨)をインストールメントパネルに表示するようにしてもよい。また、車両制御部15は、所定期間内に所定回以上の一時的作動不良がある場合には、ドライバに電源システム10の点検を促すようにインストールメントパネルに表示するようにしてもよい。次にS314において暫定的に実行していた複合回生充放電処理サブルーチンを図4の複合回生充放電処理サブルーチンに戻して復帰処理ルーチンを終了する。
【0113】
上記では、メイン単独回生充放電処理中の復帰処理について説明したが、LIC単独回生充放電処理中(メイン電池系に異常がある場合の)復帰処理でも同様である。付言すれば、図7のS304ではメイン電池コントローラ4を再起動させ、S310ではLIC単独回生充放電処理を実行し、S312ではLIC単独回生充放電処理を解除するとともに、上述した不図示の切換スイッチを切り換えることによりメイン電池2から制御部7、車両制御部15、IGN11に作動電力を供給する。
【0114】
<車両制御部15による診断>
車両制御部15は、電源システム10から何らかの異常の報知を受けた際には、車両の安全走行を確保するために、電源システム10の制御部7の(一方の)MCが正常に作動しているか否かを判断(診断)する。一方のMCが正常に動作しているかの診断は、例えば最も簡易的な方法としては、通信線16を介して制御部7に特定の信号を送りその補数を返させることで、正しい補数を返せるときは正常、そうでないときは異常と診断できる。このような診断は、例えば、一方のMCの演算負荷が比較的少ない、図7に示したS302で(待機中に)行われる。
【0115】
また、この制御部7の診断に併せて通信線16の断線診断をするようにしてもよい。通信線16は車両制御部15のCAN(Controller Area Network)管理下にある。CANはISO11898、ISO11519等で標準化されており、オルタネータ回生車両20ではこのような標準化に基づき利用性がより高められたCANが用いられている。CANは2本の線で構成されており、一方が断線した場合でも他方で制御部7とのデータの送受信等が可能であるが、通信速度を下げる必要がある。
【0116】
この特性を利用して、例えば、通信線16を介して制御部7に特定の信号を送り、その補数を、通常の通信速度と、例えば通信速度を1/8に落とした通信速度で返させることで、通常の通信速度で正しい補数を返せるときは、制御部7は正常であり通信線16に断線はないと診断でき、通常の通信速度では正しい補数を返せないが通信速度を落とした場合には正しい補数を返せるときは、制御部7は正常であり通信線16に断線があると診断できる。後者の場合には、車両制御部15は制御部7に、通信速度を落としそれに合わせて所定時間(2ms)毎に送信していた蓄電デバイス1のデバイス状態の情報を間引いて(例えば、16ms毎に)送信させるようにしてもよい。
【0117】
車両制御部15は、一方のMCが正常のときは、そのCPUに制御動作を続行させ、異常のときは、制御部切換制御線(図1参照)を介して他方のMCを立ち上げ、その初期設定処理終了後に通信線16を介して他方のMCにメイン電池2、LIC3のデバイス状態の情報を送信した後(他方のMCのCPUに現状を把握させた後)、一方のMCへの電力供給を止めて、上述した回生充放電制御を他方のMCのCPUに実行させる。
【0118】
車両制御部15は、(一方のMCの)CPUがリセットされ再起動した後、CPUに異常があるかを再診断する(例えば、上記と同様に補数を返させることで正常、異常を診断する。)。正常と再診断したときは、他方のMCのCPUに回生充放電制御を続行させて一方のMCへの電力供給を止め、異常と再診断したときは、一方のMCへの電力供給を止め、以降は、他方のMCでスイッチ6を制御するとともに、インストールメントパネルに一方のMCが故障している旨を表示する。なお、他方のMCのCPUは、この後、安全性を確保するために上述したLIC系およびメイン電池系の異常判断を行う。
【0119】
(4)充放電休止処理
図2のS116の充放電休止処理の状態でオルタネータ回生車両20は駐車しており、車両制御部15からOFF情報を受信したCPUは、スイッチ6を状態0(SW1:オフ、SW2:オフ)とし、コントローラ4、5および制御部7をスリープ状態(省エネモード)とする制御を行う。すなわち、コントローラ4、5にメイン電池2、LIC3の温度、電圧、電流等の検出・出力を停止させ、CPU自体もメイン電池2、LIC3のデバイス状態の演算および車両制御部15への報知を停止する。また、CPUは、上述したSTART情報受信フラグを「1」から「0」に変更する。なお、蓄電デバイス1は車両駐車直前のオルタネータ12による回生電力で充電されており、LIC3は使用上限電圧近傍の電圧となっている。
【0120】
次に、OFF情報を受信したときから所定時間が経過するまで待機する。この所定時間は、例えば、メイン電池2の負極の分極状態が解消したとみなされる6時間に設定することができる。この間、IGN位置情報を受信すると、充放電休止処理を終了して図2のS102に戻る。
【0121】
CPUは、所定時間が経過したと判断すると、コントローラ4、5および制御部7をアウェーク(作動状態に移行)させてメイン電池2およびLIC3のOCVおよびそのときの温度を検出・出力させる。次いで、メイン電池2およびLIC3のOCVからメイン電池2およびLIC3のSOC、電圧を演算し、プログラムデータとして予めROMに格納されRAMに展開されたテーブルまたは数式を参照して演算したSOC、電圧を基準温度(例えば、室温)におけるSOCに温度補正してメイン電池2およびLIC3の基準SOCを演算(算出)し、演算した基準SOCおよび電圧を車両制御部15に報知する。
【0122】
この場合に、メイン電池2およびLIC3の健康状態(SOH)も併せて演算し、SOHに応じてSOCを補正するようにしてもよい。なお、上述した所定時間が経過しない場合には、メイン電池2の分極状態が解消されず基準SOCが不正確となるため、このような状態でのコントローラ4、5によるOCVの検出やCPUによる基準SOCの演算は行わず、直近に把握していた基準SOCを現在のデバイス状態を把握する際の基準SOCとして取り扱う。
【0123】
次に、CPUは、LIC3の電圧が予め設定された設定電圧V1(図8(A)参照、本例では9.3[V])以上か否かを判断する。肯定判断のときは、コントローラ4、5および制御部7をスリープ状態として上述した所定時間経過判断、基準SOC等の演算・報知を繰り返す。一方、否定判断のときは、メイン電池2の電力でLIC3を充電可能な場合(例えば、メイン電池2の電圧が設定電圧V1以上であってメイン電池2が第1のSOC(図8(B)参照、本例では70[%])以上の場合)は、LIC3の過放電を防止するために、スイッチ6を状態3(SW1:オン、SW2:オン)とする。これにより、メイン電池2とLIC3とは並列接続され、LIC3はメイン電池2の電力で充電される。
【0124】
CPUは、メイン電池2との並列接続によりLIC3の電圧が設定電圧V1となると、コントローラ4、5および制御部7をスリープ状態として上述した所定時間経過判断、基準SOC等の演算・報知を繰り返す。この間、IGN位置情報を受信すると、充放電休止処理を終了して図2のS102に戻る。なお、LIC3が設定電圧V1未満であってメイン電池2の電力でLIC3を充電できない場合には、CPUはスイッチ6を状態0のまま維持する。
【0125】
以上では、CPUによる充放電制御を簡潔に説明するために、LIC3の電圧を中心に説明したが、本実施形態では、LIC3の使用上限/下限SOC、LIC3を構成する各単体キャパシタの使用上限/下限SOCも予め設定されており、LIC3が使用上限SOCに達した場合には、LIC3への充電を打ち切りメイン電池2を充電し、LIC3が使用下限SOC、各単体キャパシタの使用下限SOCに達した場合には、LIC3から補機14への放電を打ち切りメイン電池2から補機14に放電する制御も行っている。
【0126】
3.作用効果等
3−1.作用効果
次に、本実施形態の電源システム10の作用効果等について説明する。
【0127】
本実施形態の電源システム10では、制御部7の(一方のMCの)CPUが、コントローラ4、5の出力を参照してメイン電池2、LIC3の電圧が設定範囲外のときに(メイン電池2、LIC3に異常があるときに)、その設定範囲外の電圧を出力したコントローラ4、5をリセットする。このため、コントローラ4、5の一時的作動不良でメイン電池2、LIC3の電圧が設定範囲外となった場合に、コントローラ4、5を正常に復帰させることができ、その結果、異常のないメイン電池2、LIC3を継続して使用できるので、燃費低下を防止すことができる。また、本実施形態の電源システム10では、CPUが、リセットにより正常状態とみなされるコントローラ4、5でメイン電池2、LIC3に異常があるかを再判断する。このため、コントローラ4、5が一時的作動不良以外の場合に故障原因を特定することができる。
【0128】
また、本実施形態の電源システム10では、コントローラ4、5はメイン電池2、LIC3に流れる充放電電流も検出する。CPUは、コントローラ4、5で検出されたメイン電池2、LIC3の充放電電流が設定範囲外のときに、出力線および第1、第2スイッチング素子制御線に異常があると判断し、設定範囲外の電流値を出力したコントローラ4、5をリセットした後、リセットされたコントローラ4、5で検出されたメイン電池2、LIC3の充放電電流が設定範囲外かを再判断する。このため、コントローラ4、5が一時的作動不良によるものか、出力線等の断線(故障)かを特定することができる。
【0129】
さらに、本実施形態の電源システム10では、コントローラ4、5で検出されたメイン電池2、LIC3の電圧が設定範囲外のときに、設定範囲内の蓄電デバイスのみで充放電を行う。また、CPUは、コントローラ4、5で検出されたメイン電池2、LIC3の電圧が設定範囲外と再判断した場合には、車両制御部15の診断を受け、その診断結果に応じて他のCPUが充放電制御を行う。このため、走行中の車両の安全性を確保することができる。
【0130】
3−2.変形例
なお、本実施形態では、オルタネータ回生車両20に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、(普通)ガソリン車、ディーゼル車、ISS車に搭載される車両用電源システムにも適用可能である。また、本実施形態では14V系車両用電源システム10を例示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、例えば、42V系車両用電源システム等の14V系以外の車両用電源システムに適用してもよい。
【0131】
また、本実施形態では、メイン電池2(鉛蓄電池)とLIC3との複合蓄電デバイス1を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、メイン電池2の鉛蓄電池に代えて、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムイオン電池を用いるようにしてもよく、LIC3のリチウムイオンキャパシタに代えて、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタを用いるようにしてもよい。さらに、複合蓄電デバイスは3つ以上の蓄電デバイスを有していてもよく、例えば、鉛蓄電池、ニッケル亜鉛電池、キャパシタ(LIC、電気二重層キャパシタ、電解キャパシタ等)で複合蓄電デバイスを構成するようにしてもよい。
【0132】
さらに、本実施形態では、電源システム10を一体としエンジンルームに搭載した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エンジンルームに蓄電デバイス1を構成するメイン電池2を配置し、シート下に蓄電デバイス1を構成するLIC3を分割して配置するようにしてもよい。また、このような蓄電デバイス1の配置に応じて、制御部7やスイッチ6を構成するスイッチSW1、SW2も分割して配置するようにしてもよい。
【0133】
また、本実施形態では、エンジン始動処理においてLIC3またはメイン電池2の電力でエンジンを始動する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、エンジン始動処理ではメイン電池2の電力でエンジンを始動し、ISS時にLIC3の電力でエンジンを始動するようにしてもよい。この場合には、エンジン始動処理でメイン電池2の内部抵抗を算出でき、ISS時にLIC3の内部抵抗Rを算出できる。
【0134】
さらに、本実施形態では、説明の関係上、回生充放電処理の際に纏めて(a)メイン電池2、LIC3の異常の有無、(b)電圧検出線、出力線および第1、第2スイッチング素子制御線の断線の有無、(c)コントローラ4、5の異常の有無を判定する例を示したが、本発明はこれに限らず、必要に応じて適宜個別に判断するようにしても、所定時間毎や所定処理に至った時点で判断するようにしてもよい。
【0135】
また、本実施形態では、(a)メイン電池2、LIC3の異常の有無、(b)電圧検出線、出力線および第1、第2スイッチング素子制御線の断線の有無、(c)コントローラ4、5の異常の有無を判定する際に具体例を示しが、本発明はこれに限定されず、これに加えまたはこれに代えて公知の異常検出技術を用いるようにしてもよい。
【0136】
さらにまた、本実施形態では、充電処理において、オルタネータ12の発電電力でメイン電池2のみを充電する例を示したが、併せてLIC3も充電するようにしてもよい。このような態様では、例えば、充電されたLIC3の電力でエンジンを始動させる(スタータ13に放電する)ようにしてもよく、その場合には、メイン電池2の電力によるエンジン始動機会を少なくできるため、メイン電池2の劣化を防止することができる。
【0137】
また、本実施形態では、メイン電池2およびLIC3のいずれからも補機14に電力供給がなされないことを防止するために補償キャパシタCを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スイッチSW1、SW2を一瞬同時にオン状態(状態3)としてもよいし、補償キャパシタCに代えて一次電池または二次電池を用いるようにしてもよい。
【0138】
さらに、本実施形態では、OCVから基準SOCを算出しこの基準SOCに対し充放電電流を積算することでメイン電池2およびLIC3の現在のSOCを算出する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、公知のSOC算出手段を用いることができる。
【0139】
また、本実施形態では、電源システム10の構成を把握しやすいように、メイン電池コントローラ4、LICコントローラ5、制御部7に分けて説明したが、これらを一体に構成するようにしてもよい。さらに、本実施形態では、コントローラ4、5から出力されたメイン電池2、LIC3のデータに応じて制御部7でメイン電池2、LIC3のデバイス状態を演算する例を示したが、このような演算は車両制御部15で行うようにしてもよい。このような態様では、制御部7の主機能はスイッチ制御部7Bと通信部7Cとになる。
【0140】
さらに、本実施形態では、制御部7が2つのMCを有する例を示したが、1つのMCであってもよい。この場合には、例えば、MCが2つのCPUを有しており、車両制御部15の診断の結果、一方のCPUが故障の場合に他方のCPUがスイッチ6を制御するようにしてもよく、MCが故障の場合に、車両制御部15が一時的に(走行中に)MCに代わりスイッチ6を制御するようにしてもよい。
【0141】
さらにまた、本実施形態では、メイン電池2を構成する鉛蓄電池に合わせてOFF情報受信の6時間後にメイン電池2やLIC3のOCVの測定を行う例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。また、本実施形態では、制御部7のCPUが6時間を計時する例を示したが、車両制御部15が計時し、制御部7、コントローラ4、5をスリープ状態からアウェークさせるようにしてもよい。
【0142】
さらに、本実施形態では、制御部7は、車両制御部15を介してオルタネータ作動情報やIGN情報を取得する例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ブレーキを制御するブレーキ制御部、オルタネータを制御するオルタネータ制御部、IGN11から直接ブレーキの作動情報、オルタネータ作動情報、IGN位置情報等を取得するようにしてもよい。
【0143】
そして、本実施形態では、電源システム10を構成する各部材の作動電圧等や、図8にメイン電池2やLIC3の種々の電圧やSOCの具体例を示したが、これらは一例であって本発明はこれに制限されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明はコントローラの一時的作動不良に起因する燃費低下を防止可能な車両用電源システムおよび該車両用電源システムを備えた自動車を提供するものであるため、車両用電源システムや自動車の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0145】
1 蓄電デバイス
2 メイン電池(第1の蓄電デバイス)
3 LIC(第2の蓄電デバイス)
4 メイン電池コントローラ(検出回路)
5 LICコントローラ(検出回路)
6 スイッチ
7 制御部(制御手段)
10 電源システム(車両用電源システム)
12 オルタネータ
13 スタータ
14 補機
15 車両制御部(車両側制御部)
20 オルタネータ回生車両(自動車)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8