(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  検査対象物を照明する線状の出光部を有する照明を検査対象物と検査対象物撮影用の撮像装置との間に配置するとともに、上記照明を上記撮像装置の撮像視野内に配置し、上記撮像装置と上記照明とに対して上記照明の長手方向と直交する方向に相対的に移動する上記検査対象物の上記照明で照らされた部分を上記撮像装置で撮像して、上記検査対象物における同一部分が照明直下を通過する前の画像と照明直下を通過した後の画像とを含む照明方向が異なる複数画像を取得することで、上記撮像装置の撮像視野内を移動する上記検査対象物を上記画像上で追跡し、上記検査対象物上の同一部分における照明方向が異なる複数画像上の輝度情報を元に検査対象物の表面を検査することを特徴とする表面検査方法。
  照明方向が異なる複数の画像において、検査対象物表面の同一部分における輝度変化を上に凸な曲線となる関数に近似して、当該関数のピーク位置をもとに検査対象物の表面の面方向分布を表す画像を取得することを特徴とする請求項1記載の表面検査方法。
  照明方向が異なる複数の画像において、検査対象物表面の同一部分における輝度変化を上に凸な曲線となる関数に近似して、当該関数のピーク位置をもとに検査対象物の表面の反射率分布を表す画像を取得することを特徴とする請求項1記載の表面検査方法。
  照明方向が異なる複数の画像において、照明との距離の変化に伴う輝度変化分を推定して検査対象物表面の同一部分における輝度変化を正規化し、照明方向の変化に伴う輝度の変化量をもとに検査対象物表面の面方向分布を表す画像を取得することを特徴とする請求項1記載の表面検査方法。
  検査対象物の表面を照明する線状の出光部を有する照明と、上記照明によって照明された検査対象物の表面を撮像する撮像装置と、撮像装置で得た画像の処理を行う画像処理装置と、上記検査対象物を上記撮像装置及び上記照明に対して上記照明の長手方向と直交する方向に相対的に移動させる搬送装置とからなり、
  上記照明は撮像装置の撮像視野内に配置されており、
  上記撮像装置は、上記検査対象物における同一部分が照明直下を通過する前の画像と照明直下を通過した後の画像とを含む照明方向が異なる複数画像を撮像するものであり、
  上記画像処理装置は、上記撮像装置の撮像視野内を移動する上記検査対象物を上記画像上で追跡して、上記検査対象物上の同一部分における照明方向が異なる複数画像上の輝度情報を元に検査対象物の表面の検査を行うものであることを特徴とする表面検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
  本発明は、検査対象物の表面を検査するための表面検査方法及びその装置に関し、さらに詳しくは、検査対象物の表面に線状の出光部から光を照射する表面検査方法及びその装置に関するものである。
 
【0017】
  以下
図1〜
図9に示す第1実施形態に基づいて詳述すると、
図1は第1実施形態に係る表面形状検査装置の概略を示しており、図中11は検査対象物、12は撮像装置であるカメラ、13は照明である。カメラ12および照明13は架台15に固定されており、検査対象物11は搬送装置16による搬送で照明13の下を図中矢印の方向に等速直線運動する。
 
【0018】
  照明13は、
図2に示すように、線状の出光部となる棒状の光源21と、カメラ12側に光源21からの光が行かないように上半分が不透明となっているハウジング22とからなり、下半分の周方向に均一な光量を放射する。ここで、「線状」とは、一方向の長さが一方向と直交する方向の長さ(幅とする)と比べて長い(比率でいうと例えば10倍以上)ことをいうものであり、幅は0でなくてもよい。光源21としては、細い冷陰極蛍光管を好適に用いることができるが、これに限定するものではない。
 
【0019】
  線状の出光部を有する光源21を備える照明13は、カメラ12と検査対象物11との間でカメラ12の直下(カメラ12の光軸上)に、かつ検査対象物11の搬送方向に対して直交するように配置されて、検査対象物11の表面を照明する。カメラ12の撮像視野18の中央を照明13が横切ることになる。
 
【0020】
  カメラ12はたとえば工業用のエリアカメラであり、撮像視野18内で検査対象物11が画像の上下方向に移動して見えるよう設置されている。カメラ12で撮影された画像のデータは、CameraLink、USB、Gigabit Ethernetなどの通信インターフェースを介して例えばパーソナルコンピュータである画像処理装置14に送られる。
 
【0021】
  画像処理装置14は、上記通信インターフェースを介して送られてきた画像データを画像処理装置14自体が内蔵するメモリまたはストレージ上に蓄積するとともに、同じく内蔵する演算装置により、蓄積された画像に対して任意の処理を実行できる機能を有する。
 
【0022】
  説明を簡単にするために、平板状の検査対象物11をカメラ12の光軸に対して垂直に配置し、搬送装置16が検査対象物11をカメラ12の光軸に対して直角で且つ照明13の長手方向と直交する方向に等速直線運動させるものとする。
 
【0023】
  検査対象物11を等速で搬送しながら所定の搬送距離毎に、もしくは所定の時間毎に撮影された画像の例を
図3に示す。図中31はカメラ12の直下にある照明13の像であり、32は検査対象物11の表面にある凹凸欠陥の像である。検査対象物11の搬送に伴い、撮影された画像は
図3に示すように順次上方へ遷移する。つまり、
図3に示す点p1にある像32は、対象物が一定距離だけ動いた時点で撮影された画像ではd画素だけ上方にある点p2の位置に移動している。以下同様にn枚目の画像では1枚目の画像より(n−1)d画素だけ上方に移動した点pnの位置に移動し、最後にはカメラ12の撮像視野18を外れる。
 
【0024】
  また、照明13との位置と距離の関係により、検査対象物11の表面にある凹凸欠陥の陰影が変化する。なお、
図3では像32におけるハッチング部分が「陰」となっているところを示しているが、照明13との間の距離が短いほど、輝度低下が少なくなる点等は示していない。
 
【0025】
  上記の画像は画像処理装置14において、たとえば次に説明する手順により処理される。上述のように検査対象物11が所定の搬送距離毎に撮影された画像上で検査対象物11上の同一部分は常にd画素ずつ移動して見える。従って、
図4A〜
図4Iに示すように、上下方向にd画素分の帯状の領域a1〜a9を単位として、順次カメラ12から送信されてくる時間的にずれた各画像の領域anを追跡画像bnに上詰めで追加しながら複写する処理を任意回数繰り返し行うことにより、追跡画像b1〜b9を生成する。追跡画像b1〜b9における上詰め追加タイミングの違いから、
図4Eに示す追跡画像b5では照明13の像31が複数写ったものとなり、追跡画像b5を除く各追跡画像b1〜b4,b6〜b9中においては、前記像32がそれぞれ同じところに位置することになる。なお、
図4においても、
図3と同様に、照明13からの距離差による輝度の違いは表示していない。
 
【0026】
  また追跡画像b1〜b9は、検査対象物11の同じ範囲を写したものであるが、検査対象物11が
図3の領域a1〜a9の位置にある瞬間に撮像された画像をそれぞれ集積したものであるために、追跡画像b1〜b9は、検査対象物11を
図5に示す照明方向L1〜L9の平行光でそれぞれ照明して撮影された画像に相当する。つまり、追跡画像b1は、照明方向L1の光でのみ上記範囲を照明したもので構成され、追跡画像b2は照明方向L2の光のみで上記範囲を照明したもので構成される。追跡画像b9は照明方向L9の光のみで上記範囲を照明したもので構成される。これは照明13の直下を通過する前と通過した後の画像で追跡画像b1〜b9が構成されることを意味する。
 
【0027】
  長大な対象物を撮影するためには
図1に示すようにカメラ12は高い位置から対象物を撮像する必要があるが、照明13は検査対象物11近くに設置することで、照明方向L1〜L9の範囲を大きくとることが好ましい。検査対象物11近くに設置した照明13が撮像視野18内のa5の位置に写ってしまうために、生成された追跡画像b1〜b9のうち照明方向L5の光で照明された追跡画像b5は照明13の死角を集めた無効な画像となる。そこで無効な追跡画像b5を除外して、照明方向の変化と陰影の関係から面方向を推定する方法を以下に説明する。
 
【0028】
  図1に示す装置構成を横(照明13の軸方向)から見た
図6において、検査対象物11が照明13の下を通過する際、角度とともに距離が変化するので、検査対象物11を照明する照明強度Lは、照明13から検査対象物11上の点pまでの距離rの2乗に応じたものとなるために、定数をαとすると、次の式で求めることができる。
 
【0030】
  また、照明の正反射方向とカメラの視線がなす角δは、光線入射角をγ、視線角をβとすると、次の式で求めることができる。
 
【0032】
  カメラ12方向への反射光量Vは、正反射方向と視線のなす角δが大きくなるにつれて余弦のn乗に比例して減衰する反射成分と全方向に均一に分散する拡散成分の和であるので、次の式で表される。
 
【0034】
  上記の式中のρは反射成分の反射率、εは拡散成分の反射率である。この式中の乗数nが大きくなるほど正反射方向に強い反射が生じていて、光沢が高いことを表す。
 
【0035】
  面方向がθだけ傾いた点p’における反射光量V’は、正反射方向が2θだけ変化するので正反射方向と視線のなす角δ’を用いて、次の式で表される。
 
【0037】
  上記式で求められる反射光量V’の面方向の傾きθによる変化のグラフを
図7に示す。図中イは−20°、ロは−10°、ハは0°、ニは10°、ホは20°の傾いた面の場合である。反射光量V’は
図7から明らかなように、水平面であれば照明13直下が最も明るく、照明13から左右に離れるにつれて均等に輝度が低下するが、傾いた面では面方向が照明と逆向きの間は陰影により平坦面より暗く、照明直下を通過して面方向が照明のほうを向くと平坦面より明るくなる特徴を示す。
 
【0038】
  したがって、各追跡画像b1〜b4,b6〜b9から周囲よりも輝度が高くなっているところの輝度値を夫々求め、各輝度値を
図7に示すような上に凸な関数に近似すれば、照明13に遮蔽されて実際の最大輝度を計測できなくても反射光量V’が最大となるピーク位置dpやピーク輝度を求めることができる。
 
【0039】
  V’の変化は「数4」の式に示す通り三角関数を含む非線形な関数であるので、正確に近似するためには表面の光沢度を表す定数n、反射成分と拡散成分の反射率を示すρ、εが既知でなくてはならず、また非線形の回帰近似は反復法を用いる必要があるため処理時間がかかり、実際の検査用途では実用的でない。
 
【0040】
  よって、曲線の形状が似ている線形な式、たとえば次の式を用いることができる。
 
【0042】
  この式を用いれば、最小自乗法による近似が可能となり、高速に一意な解を得ることができる。なお、I(d)はカメラ直下位置からの距離dにおける追跡画像の輝度である。最小自乗法により式中のパラメータa,b,cが求められれば、反射光量V’が最大となるピーク位置dpは上記の式の右辺の導関数が0となる位置を求めれば良いので、次の式で表される。
 
【0044】
  また、別の方法としては次式に示すガウス関数に近似してもよい。
 
【0046】
  ガウス関数を用いる場合、輝度I(d)を距離dに対する確率密度関数と見なして、次の式により確率密度関数の期待値をピーク位置dpとして求めれば良いので、最小自乗法よりも計算量が少なくなり、精度は劣るが処理を高速に行うことができる。
 
【0048】
  上記ピーク位置dpから面方向を求める理論上の式は次式で示される。
 
【0050】
  この場合も表面の光沢度を表す定数n、反射成分と拡散成分の反射率を示すρ、εが既知である必要がある。よって面方向を導出したい場合は、予め検査対象物11と同じ素材で面方向が既知である複数の面を有する
図8に示すような形状の多面体テストピースである校正治具4を用いてdpと面方向の関係を求めておけば、高速に面方向情報を取得することができる。
 
【0051】
  なお、平板状の膨れや凹みなどの局所的な面方向の乱れを不良として検出したい場合などは、良品部の面方向分布から大きく乖離した部分を検出すれば良いので、必ずしも面方向を正確に求める必要はない。このような場合には、dpの値そのものを面方向を表す特徴として利用すればよい。
図9Aは光沢のないMDF板表面の凹み部分を撮像して得られたdpの分布を示す画像である。
 
【0052】
  図9Aでは、面方向が画面に垂直方向であれば中間色、画面下方向に傾いていれば暗く、画面上方向に傾いていれば明るく表示している。凹み部分の形状が明らかに峻別可能であり、表面欠陥の検査に十分実用になることがわかる。
 
【0053】
  さらに、上記近似関数のピーク値は、検査対象物11を正面から照明した場合の輝度値に相当するので、平坦部では照明13に遮蔽されて見えない照明13直下位置での輝度を復元することができる。これは同軸落射照明を用いて撮像された陰影を含まない画像に相当するので、この輝度情報を用いて汚れや傷など検査対象物11表面の濃淡に伴う不良を検出することもできる。ちなみに、
図9Bは
図9Aと同時に取得された輝度情報の分布を示す画像である。凹み部分があるにも関わらず、凹み部分と平坦な部分が同じように見えており、陰影を含まない画像が生成できていることがわかる。このために、凹みの影響を受けることなく、検査対象物11表面の濃淡に伴う不良の検出が可能である。
 
【0054】
  次に、
図10に基いて第2実施形態について説明する。
 
【0055】
  面方向の変化が大きいほど陰影も大きく変動することを利用して、面方向の変化が大きい部分を抽出するようにしてもよい。第2実施形態の装置構成においては、照明13と検査対象物11との距離が漸次変化するために、「数1」の式で示される光源光強度に反比例する乗数を撮像輝度に乗じることにより、
図10に示すような輝度変化が得られる。図中イは面方向の傾きθが−20°、ロは面方向の傾きθが−10°、ハは面方向の傾きθが0°、ニは面方向の傾きθが10°、ホは面方向の傾きθが20°の場合である。
 
【0056】
  図10において、輝度の最大値と最小値の差を面方向を表す特徴量として用いることで、検査対象物11表面の凹凸欠陥を検出することができる。第2実施形態の方法によれば、輝度のピークを求めるために関数への近似処理を行う必要がないので、高速な処理が可能となる。
 
【0057】
  なお、第2実施形態では、検査対象物11が長大なものであるために検査対象物11を搬送装置16で移動させているが、検査対象物11がさほど長いものではない場合、撮像装置12と照明13とを検査対象物11に対して移動させるようにしてもよいのはもちろんである。また、照明13は、撮像装置12の光軸から数°程度であればずれた位置にあってもよく、厳密に撮像装置12の直下におく必要はない。要は、撮像装置12の撮像視野18内に照明13があり、検査対象物11が照明13直下を通過する前と通過した後の両方の画像を撮像装置12で撮影することができればよい。
 
【0058】
  次に、第1変形例として、第1実施形態および第2実施形態において用いられる照明13の変形例について
図11、
図12に基いて説明する。
 
【0059】
  第1実施形態において説明したように、照明13は、
図3中の像31に示されるように、撮像装置12の撮像視野18内に位置し、撮像された画像において照明13の像31は検査に寄与せず無効である。このため、像31の面積ができるだけ小さくなるように、照明13の幅を短くすることが好ましい。また、上述した理論式に用いられる距離や角度は、
図6に示すように、照明13のうちの一点(
図6では中心)を起点とした直線上の長さやこの直線となす角度として定めている。しかし、現実には照明13の出光部に幅があるため、現実の値は理論式より求められる理論値と誤差が生じてしまう。この観点からも、照明13の幅が短い方が好ましい。
 
【0060】
  また、照明13は、長手方向にわたって光量(照度)のむらがない、すなわち長手方向にわたって光量が均一であることが好ましい。
 
【0061】
  以上のようなことから、第1変形例では、
図11、
図12に示すように、一側面が線状の出光部62となる導光部材6と、導光部材6に入射させる光を発する発光部5と、を有する照明13が用いられている。
 
【0062】
  導光部材6は、断面矩形状をした透光性を有する板状をしたものである。導光部材6の材質としては、透光性を有するのはもちろんのこと、導光部材6内を進行する光500が導光部材6と周囲の空気との界面にて全反射しやすいアクリル等の樹脂が好ましいが、透光性を有していれば特に樹脂に限定されない。
 
【0063】
  導光部材6の長手方向の端部に位置する一側面(端面)が、出光部62となる。また、導光部材6の長手方向の出光部62と反対側の端部に位置する側面(端面)が、発光部5からの光が入射する入光部61となる。
 
【0064】
  発光部5は、発光ダイオードからなるもので、基板50に実装される。基板50は、入光部61の長手方向に沿う方向を長手方向とする長尺状をしたもので、その長手方向に間隔をあけて複数の発光部5が配置されている。
 
【0065】
  発光部5と導光部材6は、ケース7に収納されてユニット化されている。ケース7は、板状をした導光部材6の一方の板面の端縁部を押さえる第1の押さえ片71と、導光部材6の他方の板面の大部分を押さえる第2の押さえ片72と、第1の押さえ片71と第2の押さえ片72とを連結する連結片73と、を有する。
 
【0066】
  発光部5を実装する基板50は、第1の押さえ片71と第2の押さえ片72の間の部分に、接着剤、ビス止めまたは嵌合等により第1の押さえ片71と第2の押さえ片72と連結片73の少なくともいずれかに固定される。
 
【0067】
  導光部材6は、第1の押さえ片71と第2の押さえ片72の間に挿入されて、第1の押さえ片71と第2の押さえ片72とで挟持される。導光部材6の第1の押さえ片71か第2の押さえ片72と接する部分には接着剤が塗布されて、導光部材6のケース7からの抜け止めがなされる。
 
【0068】
  このとき、導光部材6の他方の板面の大部分は接着剤により第2の押さえ片72と接着されるが、接着剤の屈折率は空気の屈折率よりもアクリル等からなる導光部材6の屈折率に近いため、この接着面においては導光部材6内を進行する光500が全反射せずに出光されやすくなる。そこで、導光部材6の第2の押さえ片72と接する側の板面に、アルミニウム等の金属を蒸着等により積層した反射膜63が形成されている。なお、このような反射膜63は、第1の押さえ片71と接する側の板面に形成されてもよい。
 
【0069】
  第1変形例においては、照明13に線状の出光部62を有する導光部材6が用いられるため、冷陰極蛍光管が用いられる照明13と比べて照明13の幅を短く(細く)することが可能となる。これにより、撮像された画像において無駄となる照明13の像31の面積をできるだけ小さくすることができる。
 
【0070】
  また、発光ダイオードからなる発光部5が入光部61の長手方向に沿って複数が配置されているが、発光部5から発して導光部材6の入光部61に入射した光500は、板面等で反射しながら出光部62へ進行する。このとき、導光部材6内を進行する光500は長手方向に均一化されるため、出光部62からの光量が長手方向において均一となる。また、発光部5に発光ダイオードが用いられるため、立ち上げ時間が短く、かつ、長期間安定した大きな光量を維持することができる。
 
【0071】
  次に、第1変形例から派生する第2変形例について
図13に基いて説明する。
 
【0072】
  第2変形例は、第1変形例におけるのと同様の導光部材6の出光部62に、照明13から出光する光を検査対象物11の搬送方向(
図6における左右方向)に拡散させる拡散部として、凹みからなる傷64が多数形成されている。傷64は、深さは1mm以下のものが半分以上を占めるが、具体的な数値は特に限定されない。また、傷64は、その長手方向が出光部62の長手方向に沿うように形成されているが、傷64の長手方向の向きや傷64の形状および大きさは限定されない。
 
【0073】
  導光部材6がアクリルからなる場合、周囲の空気との界面における臨界角は42.2度で、出光部62から出光される光は最大で光軸を中心として±47.8度の配光角しか有しない。また、発光部5である発光ダイオード自体も配光は光軸方向に偏りがあるので、出光部62が滑面であると、導光部材6内を進行中に光500が撹拌されても光軸付近が明るく、周方向に離れるにつれて減光するような配光となる。出光部62からの出射光を検査対象物11の搬送方向にさらに均一化し、広い配光角を与える凹みからなる傷64からなる拡散部が設けられる。
 
【0074】
  凹みからなる傷64は、導光部材6の出光部62にやすりがけを手作業等により行うことで形成される。
 
【0075】
  このような傷64からなる拡散部が設けられることにより、出光部62からの出射光を検査対象物11の搬送方向にさらに均一化し、広い配光角を与えることができる。
 
【0076】
  また、凹みからなる傷64は、やすりがけ等により簡単に形成可能である。
 
【0077】
  次に、第1変形例から派生する第3変形例について
図14に基いて説明する。
 
【0078】
  第3変形例は、第1変形例におけるのと同様の導光部材6の出光部62に、拡散部として、溝65が複数形成されている。溝65は、深さは1mm、2mm等、第2変形例の傷64より深いことが好ましく、また、2mmを超えたり1mm未満であってもよく、具体的な数値は特に限定されない。
 
【0079】
  溝65は、断面がV字状をしており、複数本が出光部62の長手方向に平行に並設されている。この溝65は、出光部62からの出射光を検査対象物11の搬送方向に屈折させて拡げるレンズとして機能する。
 
【0080】
  このような溝65からなる拡散部が設けられることにより、出光部62からの出射光を検査対象物11の搬送方向にさらに均一化し、広い配光角を与えることができる。
 
【0081】
  また、第2変形例と比較すると、第2変形例では傷64に油などが入り込んで拡散部としての機能が低下しやすいが、溝65は油が入り込んでも拡散部としての機能は低下しにくい。
 
【0082】
  次に、第1変形例から派生する第4変形例について
図15に基いて説明する。
 
【0083】
  第4変形例は、第1変形例におけるのと同様の導光部材6の出光部62に、拡散部として、凹シリンドリカルレンズ加工部66が形成されている。凹シリンドリカルレンズ加工部66は、出光部62の長手方向に垂直な断面における形状が出射方向に凹となる凹面であり、出光部62からの出射光を検査対象物11の搬送方向に屈折させて拡げるレンズとして機能する。
 
【0084】
  このような凹シリンドリカルレンズ加工部66からなる拡散部が設けられることにより、出光部62からの出射光を検査対象物11の搬送方向にさらに均一化し、広い配光角を与えることができる。
 
【0085】
  また、凹シリンドリカルレンズ加工部66の曲率を変えることにより、任意の配向角を得ることができる。
 
【0086】
  以上、述べた第1実施形態、第2実施形態およびこれらの第1変形例〜第4変形例から明らかなように、第1の態様の表面検査方法は、検査対象物11を照明する線状の出光部を有する照明13を検査対象物11と検査対象物11撮影用の撮像装置12との間に配置するとともに、照明13を撮像装置12の撮像視野18内に配置する。撮像装置12と照明13とに対して照明13の長手方向と直交する方向に相対的に移動する検査対象物11の照明13で照らされた部分を撮像装置12で撮像する。検査対象物11における同一部分が照明13直下を通過する前の画像と照明13直下を通過した後の画像とを含む照明方向が異なる複数画像を取得することで、撮像装置12の撮像視野内を移動する検査対象物11を上記画像上で追跡する。検査対象物11上の同一部分における照明方向が異なる複数画像上の輝度情報を元に検査対象物11の表面を検査する。
 
【0087】
  第1の態様によれば、検査対象物11が照明13直下を通過する前の画像と通過した後の画像とを含む複数画像から表面検査を行うために、照明方向が大きく異なる画像を容易に得ることができるとともに複数画像からの画像処理も容易となり、少ないコストで信頼性の高い表面検査を行うことができる。
 
【0088】
  第2の態様では、第1の態様との組み合わせにより実現される。第2の態様では、照明方向が異なる複数の画像において、検査対象物11表面の同一部分における輝度変化を上に凸な曲線となる関数に近似して、当該関数のピーク位置をもとに検査対象物11の表面の面方向分布を表す画像を取得する。
 
【0089】
  第2の態様によれば、当該関数のピーク位置をもとに、検査対象物11の表面の面方向分布を表す画像を取得して、検査対象物11の表面を検査することができる。
 
【0090】
  第3の態様では、第1の態様との組み合わせにより実現される。第3の態様では、照明方向が異なる複数の画像において、検査対象物11表面の同一部分における輝度変化を上に凸な曲線となる関数に近似して、当該関数のピーク位置をもとに検査対象物11の表面の反射率分布を表す画像を取得する。
 
【0091】
  第3の態様によれば、当該関数のピーク位置をもとに、検査対象物11の表面の反射率分布を表す画像を取得して、検査対象物11の表面を検査することができる。
 
【0092】
  第4の態様では、第1の態様との組み合わせにより実現される。第4の態様では、照明方向が異なる複数の画像において、照明13との距離の変化に伴う輝度変化分を推定して検査対象物11表面の同一部分における輝度変化を正規化し、照明方向の変化に伴う輝度の変化量をもとに検査対象物11表面の面方向分布を表す画像を取得する。
 
【0093】
  第4の態様によれば、輝度変化分を推定することで、輝度の変化量をもとに検査対象物11表面の面方向分布を表す画像を取得して、検査対象物11の表面を検査することができる。
 
【0094】
  第5の態様の表面検査装置は、照明13と、撮像装置12と、画像処理装置14と、搬送装置16と、を備える。照明13は、検査対象物11の表面を照明する線状の出光部を有する。撮像装置12は、照明13によって照明された検査対象物11の表面を撮像する。画像処理装置14は、撮像装置12で得た画像の処理を行う。搬送装置16は、検査対象物11を撮像装置12及び照明13に対して照明13の長手方向と直交する方向に相対的に移動させる。照明13は撮像装置12の撮像視野18内に配置されており、撮像装置12は、検査対象物11における同一部分が照明13直下を通過する前の画像と照明13直下を通過した後の画像とを含む照明方向が異なる複数画像を撮像するものである。画像処理装置14は、撮像装置12の撮像視野内を移動する検査対象物11を上記画像上で追跡して、検査対象物11上の同一部分における照明方向が異なる複数画像上の輝度情報を元に検査対象物11の表面の検査を行うものである。
 
【0095】
  第5の態様によれば、検査対象物11が照明13直下を通過する前の画像と通過した後の画像とを含む複数画像から表面検査を行うために、照明方向が大きく異なる画像を容易に得ることができるとともに複数画像からの画像処理も容易となり、少ないコストで信頼性の高い表面検査を行うことができる。
 
【0096】
  第6の態様では、第5の態様との組み合わせにより実現される。第6の態様では、照明13は、一側面が線状の出光部62となる導光部材6と、導光部材6に入射させる光を発する発光部5と、を有する。
 
【0097】
  第6の態様によれば、導光部材6が用いられるため、導光部材6が用いられない例えば冷陰極蛍光管が用いられるものと比較して、撮像された画像において無駄となる照明13の像31の面積を小さくすることができる。
 
【0098】
  第7の態様では、第6の態様との組み合わせにより実現される。第7の態様では、導光部材6は、出光部62の長手方向に沿う長手方向を有する別の側面が前記発光部からの光が入射する入光部61となり、発光ダイオードからなる発光部5が、入光部61の長手方向に沿って複数が配置される。
 
【0099】
  第7の態様によれば、出光部62からの光量が長手方向において均一となり、また、発光部5の立ち上げ時間が短く、かつ、長期間安定した大きな光量を維持することができる。