(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記弁は、基部から先端に向けて収束するように延出した一対の嘴部と、前記嘴部の先端の合せ面に設けられたスリットとを備え、前記先端から前記基部への水の移動を抑制するダックビル式逆止弁である、請求項1に記載の配管部材。
  請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配管部材における前記弁に、水質検査用の検査紙、検査キット及びプローブからなる群より選ばれる少なくとも一つを挿入して前記水の水質を検査する、水質検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
  以下、本実施形態に係る配管部材、当該配管部材を用いた水質検査方法、及び当該配管部材を備える水処理装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
 
【0014】
[配管部材]
  本実施形態の配管部材1は、
図1に示すように、内部に水が流れる配管部10を備え、配管部10の管壁11は孔部12を有している。そして、配管部材1は、配管部10の孔部12に挿入して固定される弁20を備えている。
 
【0015】
  配管部10は、水などの流体が内部13を流れることが可能ならば、その形状及び材質は特に限定されない。例えば、
図1(b)及び
図4に示すように、配管部10の断面は略円状であることが好ましいが、このような形状に限定されず、たとえは断面が楕円状であってもよく、略矩形状であってもよい。また、配管部10は、全長に亘って略均一な断面形状であり、さらに管壁11の肉厚も略均一であることが好ましい。しかし、配管部10の断面形状が一部変形していてもよく、さらに管壁11の肉厚が部分的に異なっていてもよい。
 
【0016】
  配管部10としては、ポリエチレン管、ポリ塩化ビニル管及び強化プラスチック複合管などの樹脂管や、ダクタイル鋳鉄管、塗覆装鋼管、亜鉛めっき鋼管、塩ビライニング鋼管、ステンレス鋼管、黄銅管及び銅管などの金属管を用いることができる。
 
【0017】
  図1に示すように、配管部10の管壁11には弁20が取り付けられている。弁20は、
図1(a)に示すように、配管部10の上方から孔部12に挿入される。そして、
図1(b)に示すように、弁20の上部が配管部10の外部に露出し、弁20の下部が配管部10の内部13に位置するように、管壁11に固定される。
 
【0018】
  弁20は、配管部10の内部13における水の流れ方向Aに対して略垂直方向に配設することが好ましい。つまり、
図1(b)に示すように、弁20の中心軸Cと水の流れ方向Aとのなす角θが90度であることが好ましい。ただ、弁20は水の流れ方向Aに対して傾斜していてもよく、例えば弁20の中心軸Cと水の流れ方向Aとのなす角θが80〜100度であってもよい。
 
【0019】
  配管部10の管壁11に設けられた孔部12の大きさは、弁20の基部21の大きさと略同じとなっている。そのため、配管部10の管壁11と弁20の基部21との界面から水が漏れることを抑制している。
 
【0020】
  弁20は、後述する板状物又は棒状物を挿入した際に、弁20から漏水し難い構造を有するものであれば特に限定されない。本実施形態では、弁20は逆止弁であることが好ましく、例えばポペット式、スイング式、ウエハー式、リフト式、ボール式、フート式又はダックビル式の逆止弁を用いることができる。
 
【0021】
  配管部材1において、弁20はダックビル式逆止弁20Aであることが好ましい。ダックビル式逆止弁20Aは、板状物又は棒状物を挿入した際に、配管部10の内部13から外部に向けて水が漏れ難い。さらにダックビル式逆止弁20Aは、構造がシンプルであるため安価であり、経済力が十分でない地域でも容易に適用することができる。
 
【0022】
  ダックビル式逆止弁20Aは、
図2に示すように構成された逆止弁である。ダックビル式逆止弁20Aは、基部21から先端に向けて収束するように延出した一対の嘴部22と、嘴部22の先端の合せ面に設けられたスリット23とを備えている。そして、スリット23は、配管部10の内外の圧力差によって常時は閉塞状態であるため、スリット23から基部21への水の移動を抑制することができるが、板状物又は棒状物が挿入されたときには開くことができる。また、ダックビル式逆止弁20Aは、フランジ部24を有する。ダックビル式逆止弁20Aが配管部10の孔部12に挿入された際、フランジ部24が管壁11に当接した状態で固定される。
 
【0023】
  なお、ダックビル式逆止弁20Aの素材は特に限定されないが、例えばゴムであることが望ましい。ダックビル式逆止弁20Aの素材がゴムからなる場合、板状物又は棒状物を容易に挿入し、さらに抜去することが可能となる。
 
【0024】
  配管部材1は、弁20を通じて配管部10の外部から内部13に、板状物及び棒状物の少なくとも一方を挿入することができる。具体的には、
図3に示すように、配管部材1の上方から弁20の内部に板状物30又は棒状物を挿入し、板状物30又は棒状物の先端を配管部10の内部13に位置させることができる。なお、板状物30又は棒状物を弁20の内部に挿入した際にスリット23が開くが、配管部10の内部13の水圧によりスリット23の周辺部は板状物30又は棒状物に密着する。そのため、スリット23と板状物30又は棒状物との間に隙間が生じ難くなり、これらの間からの漏水を抑制することができる。
 
【0025】
  板状物30は、例えば水質検査の際に用いる検査紙とすることができる。検査紙は特に限定されないが、水中に含まれる被測定対象に反応して呈色するものが好ましい。例えば、取り扱い易さ及び精度面から、樹脂製の短冊の先端に呈色部を有する検査紙が好適である。このような検査紙は、総残留塩素濃度、遊離残留塩素濃度、総硬度、総アルカリ度、pH、硝酸性窒素濃度、亜硝酸性窒素濃度、総鉄イオン濃度、銅イオン濃度、アンモニア性窒素濃度、リン酸イオン濃度からなる群より選ばれる少なくとも一種を測定することが可能である。なお、検査紙としては、テトラテスト(登録商標)(テトラ社製、スペクトラム  ブランズ  ジャパン株式会社製)、アクアチェック(登録商標)(ETS社製、日産化学株式会社製)、アクアテスター(ライフガード社製)を例示することができる。
 
【0026】
  棒状物は、例えば水質検査用の検査キットや水質検査器のプローブとすることができる。水質検査用の検査キットは、配管部10の内部13の水を少量吸い込み、水中に含まれる被測定対象に反応して呈色するものを用いることができる。このような検査キットは、残留塩素濃度、pH、鉄濃度、全硬度、化学的酸素要求量(COD)、亜硝酸濃度、アンモニア性窒素濃度、亜硝酸性窒素濃度、リン酸性リン濃度、硝酸性窒素濃度からなる群より選ばれる少なくとも一種を測定することが可能である。
 
【0027】
  水質検査器のプローブは、例えば先端に電極を設けた長尺状のものを使用することができる。水質検査器は、残留塩素濃度、pH、電気伝導率、溶存酸素量、濁度、温度、塩分濃度からなる群より選ばれる少なくとも一種を測定することが可能である。
 
【0028】
  本実施形態の配管部材1は、管壁11を有し、管壁11の内部に水が流れる配管部10と、一部が、水の流れ方向Aに対して略垂直方向に配管部内部に露出しており、配管部内部から外部への水の漏出が防止される弁20とを備える。そして、弁20を通じて配管部の外部から内部13に、板状物30及び棒状物の少なくとも一方を挿入可能である。このような配管部材1では、配管部10の内部13を流れる水と板状物30及び棒状物の少なくとも一方とが、直接接触することができる。そのため、配管部10の内部13において、実際の流量で流れている状態の被測定対象の濃度を測ることができる。つまり、流量が低下した状態の場合、実使用の状態と比べて被測定対象の濃度が異なる恐れがある。しかし、本実施形態の配管部材では、より実使用に近い状態の濃度を把握することができ、測定値の信頼性を大きく高めることが可能となる。
 
【0029】
  また、配管部材1は、配管部10、弁20、及び板状物30及び棒状物の少なくとも一方により構成されるため、構造がシンプルであり安価に製造することができる。そのため、経済力が十分でない地域でも容易に使用することができる。また、板状物30及び棒状物の少なくとも一方を弁20に挿入するだけで被測定対象の濃度を精度よく測ることができるため、簡単なオペレーションで水質検査を行うことが可能となる。
 
【0030】
  配管部材1において、弁20は、基部21から先端に向けて収束するように延出した一対の嘴部22と、嘴部22の先端の合せ面に設けられたスリット23とを備え、先端から基部21への水の移動を抑制するダックビル式逆止弁であることが好ましい。そして、配管部材1において、弁20がダックビル式逆止弁20Aの場合、ダックビル式逆止弁20Aのスリット23は、配管部10の水の流れ方向Aに対して略平行方向に配置されていることが好ましい。
図4(a)に示すように、ダックビル式逆止弁20Aのスリット23の長手方向と配管部10における水の流れ方向Aとが略平行となる場合には、水と板状物30との接触面積が小さくなる。そのため、板状物30が水流の妨げとなることを抑制することができる。また、後述するように、配管部10の一部が透光性の材料からなる場合、板状物30が水の流れ方向Aに沿って略平行になるように配置されていると、板状物30の呈色部を外部から容易に認識することができる。
 
【0031】
  これに対し、
図4(b)に示すように、ダックビル式逆止弁20Aのスリット23の長手方向と配管部10における水の流れ方向Aとが略垂直となる場合には、水と板状物30との接触面積が大きくなる。また、ダックビル式逆止弁20Aの嘴部22と水との接触面積も大きくなる。そのため、板状物30の平面部及び嘴部22が水流の妨げとなるため、配管抵抗(圧力損失)が高まる恐れがある。また、水と板状物30との接触面積が大きくなると、水流により板状物30が破損し、効率的に水質検査を行い難くなる可能性がある。
 
【0032】
  上述のように、ダックビル式逆止弁20Aのスリット23の長手方向と配管部10における水の流れ方向Aとが略平行となることが好ましい。つまり、スリット23の長手方向と水の流れ方向Aとの成す角が0度であることが好ましい。ただ、スリット23の長手方向と水の流れ方向Aとの成す角が0〜20度ならば、配管抵抗を低下させることが可能となる。
 
【0033】
  配管部材1において、配管部10は、内部13の板状物30又は棒状物を認識できるように、透光性の材料を有していることが好ましい。配管部10の少なくとも一部が透光性の材料からなる場合には、配管部10の内部13における板状物30又は棒状物の色や位置を、配管部10の外部から認識することができる。また、板状物30が上述の検査紙からなる場合には、検査紙の呈色部31の色を配管部10の外部から認識することができる。そのため、検査紙の呈色具合をリアルタイムに把握することが可能となる。例えば、後述する水処理装置のように、被測定対象が残留塩素の場合、塩素系薬剤の供給量を増やしながら、検査紙が所定の色になったときに塩素系薬剤の供給を停止するという操作が可能となる。このように、透光性材料を用いて配管部10の内部13の状態を認識できるようにすることで、水処理装置の利便性を格段に上げることが可能となる。
 
【0034】
  配管部10に用いられ得る透光性材料は特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート及びガラスからなる群よりなる少なくとも一つを用いることができる。
 
【0035】
  配管部材1において、配管部10に色見本が設置されていることが好ましい。上述のように、配管部10が透光性の材料からなる場合には、検査紙の呈色部31の色を配管部10の外部から認識することができる。そのため、配管部10に色見本が設置されていることにより、呈色部31の色と色見本とを直接比較し、被測定対象の濃度を容易に把握することが可能となる。なお、色見本の設置場所は特に限定されず、例えば配管部10の管壁11の外面又は内面に設置することができる。
 
【0036】
  なお、本実施形態に係る配管部材1の用途は特に限定されるものではなく、住居等における配管中に設置してもよく、さらに後述するように水処理装置の中に組み込んでもよい。
 
【0037】
[水質検査方法]
  次に、本実施形態に係る水質検査方法について説明する。本実施形態の水質検査方法は、配管部材1における弁20に、水質検査用の検査紙、検査キット及びプローブからなる群より選ばれる少なくとも一つを挿入して水の水質を検査する工程を有している。
 
【0038】
  上述のように、本実施形態の配管部材1は、弁20を通じて配管部10の外部から内部13に、板状物30及び棒状物の少なくとも一方を挿入することができる。そして、配管部10の内部13を流れる水と板状物30及び棒状物の少なくとも一方とが、直接接触することができる。そのため、実際の流量で流れている状態の被測定対象の濃度を精度よく容易に測ることができる。したがって、本実施形態の水質検査方法では、水質検査用の検査紙、検査キット及びプローブからなる群より選ばれる少なくとも一つを挿入することで、精度よく水質検査を行うことが可能となる。
 
【0039】
  水質検査用の検査紙、検査キット及びプローブは、上述のものを使用することができる。検査紙及び検査キットを用いることで、被測定対象の濃度を簡易に測定することができ、水質検査器と共にプローブを用いることで、被測定対象の濃度を連続的に測定することができる。
 
【0040】
[水処理装置]
  次に、本実施形態に係る水処理装置について説明する。本実施形態に係る水処理装置は、例えば、被処理水としての井水を浄化して浄水を得る装置である。
 
【0041】
  (第一実施形態)
  従来より、水処理装置を用いて井水を浄化し、生活用水として使用することが行われている。ただ、井水の水質は地域によって異なるものであり、井水の中に多くの鉄、マンガン及びシリカが溶存している地域が存在する。そのため、地域に適した水処理装置を用いて井水中の鉄などを除去し、生活用水に適した水に浄化している。
 
【0042】
  ここで、鉄やマンガンに加えてシリカが多く含む井水を浄化するためには、井水を汲み上げた直後に塩素処理などの酸化処理を行うことが好ましい。酸化処理を素早く行うことにより、コロイド状のケイ酸鉄の生成を防ぎ、鉄及びマンガンの除去を容易に行うことが可能となる。
 
【0043】
  そのため、第一実施形態に係る水処理装置100は、
図5に示すように、井水を酸化処理する薬剤供給部110と、薬剤供給部110によって酸化処理された一次処理水を濾過する濾過器120とを備えている。さらに水処理装置100は、濾過器120の下流側に設けられ、濾過された被処理水に含まれる過剰な塩素を除去する塩素除去器130を備えている。薬剤供給部110、濾過器120及び塩素除去器130は、被処理水流路140に接続されている。さらに、薬剤供給部110の上流側には、井水を汲み上げるための汲水ポンプ150が設置されている。
 
【0044】
  汲水ポンプ150は、井水を汲み上げ、薬剤供給部110及び濾過器120に送水することが可能ならば、特に限定されない。汲水ポンプ150としては、例えば、圧力スイッチを内蔵した自動ポンプを用いることができる。
 
【0045】
  薬剤供給部110は、固体の塩素系薬剤と、塩素系薬剤を内部に保持する固形薬剤保持具111と、固形薬剤保持具111を被処理水流路140に接続するバイパス配管112とを備えている。そして、固形薬剤保持具111の上流側におけるバイパス配管112には、汲水ポンプ150により汲み上げられた井水の流量を調整する流量調整機構としての開閉弁113が設けられている。さらに、被処理水流路140とバイパス配管112との接続部141,142の間における被処理水流路140にも、井水の流量を調整する開閉弁143が設けられている。
 
【0046】
  塩素系薬剤は、井水中の鉄イオンに対し酸化作用を生じさせる。具体的には、塩素系薬剤によって、二価の鉄イオンは三価の鉄イオンに酸化され、さらに不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)
3)となる。このような塩素系薬剤は特に限定されず、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム及び塩素化イソシアヌル酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、薬剤供給部110において、塩素系薬剤は、徐々に井水に溶解するように錠剤状に固めたもの用いることが好ましい。
 
【0047】
  濾過器120は、内部に水酸化鉄を除去するための濾材を備えている。濾材としては、安価な濾過砂を使用することができる。また、濾過器120の濾材として、水和二酸化マンガンをコートしたマンガン砂を用いることもできる。濾材としてマンガン砂を用いることにより、被処理水中に存在する水酸化鉄だけでなく、マンガンも除去することが可能となる。
 
【0048】
  塩素除去器130としては、容器の内部に活性炭の粒子を充填したものを使用することができる。
 
【0049】
  次に、第一実施形態の水処理装置100を用いて井水を浄化する方法について説明する。水処理装置100では、まずバイパス配管112に設けられた開閉弁113を開状態とし、被処理水流路140に設けられた開閉弁143を閉状態とする。そして、汲水ポンプ150により井水を汲み上げる。
 
【0050】
  汲み上げられた井水は、被処理水流路140、接続部141及びバイパス配管112を通過して、固形薬剤保持具111の内部に到達し、錠剤状の塩素系薬剤と接触する。それにより塩素系薬剤が井水に溶解し、井水中の二価の鉄が不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)
3)に酸化される。なお、地下水の場合には、鉄が炭酸水素鉄(Fe(HCO
3)
2)の状態で溶解している場合があるが、塩素系薬剤により酸化されて不溶性の水酸化鉄となる。
 
【0051】
  薬剤供給部110によって酸化処理された一次処理水は、接続部142及び被処理水流路140を通過して、濾過器120に到達する。この際、一次処理水に存在する不溶性の水酸化鉄は、濾材の間を通過することによって濾過されて除去される。また、濾過器120の濾材として、水和二酸化マンガン(MnO
2・H
2O)をコートしたマンガン砂を用いた場合には、一次処理水に溶存しているマンガンイオン(Mn
2+)も除去される。つまり、一次処理水中のマンガンイオンは、マンガン砂の表面に担持されている水和二酸化マンガンを触媒として塩素により速やかに酸化されて水和二酸化マンガンとなり、マンガン砂により除去される。
 
【0052】
  濾過器120によって濾過処理された二次処理水は、被処理水流路140を通じて塩素除去器130に到達する。塩素除去器130では、二次処理水に溶存する余剰の塩素を活性炭により除去する。
 
【0053】
  塩素除去器130により脱塩素処理された三次処理水は被処理水流路140を通過して、蛇口等に到達する。このように、薬剤供給部110、濾過器120、塩素除去器130により浄化された水は、ユーザーによって生活用水として使用される。
 
【0054】
  第一実施形態の水処理装置100において、上述の配管部材1は、薬剤供給部110の下流側の被処理水流路140に取り付けられることが好ましい。具体的には、
図5に示すように、符号1Aで示す薬剤供給部110と濾過器120との間、符号1Bで示す濾過器120と塩素除去器130との間、符号1Cで示す塩素除去器130の下流の少なくともいずれか一つに取り付けることが好ましい。薬剤供給部110と濾過器120との間、又は濾過器120と塩素除去器130との間に配管部材1を配置することで、薬剤供給部110から適切な量の塩素系薬剤が供給されているか判断することができる。また、塩素除去器130の下流に配管部材1を配置することで、塩素除去器130により脱塩素処理された三次処理水中の遊離塩素濃度が、生活用水として適するレベルまで低下しているか判断することができる。
 
【0055】
  (第二実施形態)
  次に、第二実施形態に係る水処理装置について説明する。なお、第一実施形態と同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
 
【0056】
  上述のように、被処理水としての井水は、鉄を多く含む場合がある。つまり、井水は、鉄イオンM
+、鉄粒子M、鉄酸化物粒子MO、及び鉄水酸化物粒子MOHからなる群より選ばれる少なくとも一つからなる鉄関連物質を含む場合がある。このような井水を生活用水に適した水に浄化するためには、井水に含まれる鉄関連物質を効率よく除去する必要がある。そこで、第二実施形態に係る水処理装置では、井水に含まれる鉄関連物質を凝集し、井水からの分離を容易にすることが可能な金属材料凝集促進層を備えている。
 
【0057】
  図6に示すように、第二実施形態に係る水処理装置100Aは、第一実施形態の水処理装置100と比較し、濾過器120の構成が異なっている。そして、水処理装置100Aで用いられる濾過器120Aは、上段に金属材料凝集促進層200を備え、下段に濾材121を備えている。
 
【0058】
  図7に示すように、金属材料凝集促進層200は、基材201と、基材201の内部に設けられた多孔質担体層202とを備える。そして、金属材料凝集促進層200には、薬剤供給部110を経由して塩素系薬剤Oが添加された被処理水Wが流れ込む。
 
【0059】
  基材201は、被処理水流路140aから流れ込んだ被処理水Wが多孔質担体層202を透過し、下段の濾材121へ流れ出るように、多孔質担体層202を保持する。基材201としては、例えば、内部に多孔質担体層202を保持できる空間を有する筒体や箱体を用いることができる。また、基材201としては、表面に多孔質担体層202を保持できる枠体を用いることができる。そして、基材201の内部に保持されて多孔質担体層202を構成する多孔質担体Sが、濾材121に流れ出ないように、網203を設けている。
 
【0060】
  多孔質担体層202は、表面に吸着粒子Pを担持する多孔質担体Sを含んでいる。多孔質担体Sは、活性炭、シリカ、セラミックス及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。多孔質担体Sは、塩素系薬剤Oを含む被処理水Wの流速を一定以上に維持する開口率を有している。また、多孔質担体Sは、鉄関連物質の凝集に必要な吸着粒子Pを担持するために、十分な表面積及び吸着性を有している。なお、多孔質担体層202は活性炭を含むことが好ましい。活性炭は比表面積が高いため、吸着粒子を高濃度で担持することができる。また、活性炭は二価の鉄イオンを吸着するため、被処理水W中の二価の鉄イオンを容易に除去することができる。
 
【0061】
  吸着粒子Pは、鉄酸化物粒子及び鉄水酸化物粒子の少なくともいずれか一方を含む。具体的には、吸着粒子Pは、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Fe(OH)
3及びFeOOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価の鉄イオン化合物を含む。
 
【0062】
  このような金属材料凝集促進層200は、被処理水流路140aから塩素系薬剤Oを含む被処理水Wを受け入れる。そして、金属材料凝集促進層200は、塩素系薬剤Oの作用によって酸化された鉄関連物質を吸着粒子Pへ吸着させる。これにより、金属材料凝集促進層200は、多孔質担体Sの表面で、鉄関連物質に由来する鉄酸化物粒子MO及び鉄水酸化物粒子MOHからなる混合粒子の凝集を促進させる。
 
【0063】
  具体的には、
図8に示すように、被処理水Wに含まれる鉄イオンは、塩素系薬剤Oの酸化作用によって三価の鉄イオン(Fe
3+)に酸化される。そして、三価の鉄イオン、鉄粒子、鉄酸化物及び鉄水酸化物は、吸着粒子Pに含まれる三価の鉄イオン化合物が核となり、吸着粒子Pの表面に吸着する。その結果、吸着粒子Pの表面で、鉄関連物質は、粒子径が20μm〜50μmの鉄酸化物及び鉄水酸化物等からなる凝集物MDAへ成長する。なお、三価の鉄イオンは吸着粒子Pに吸着されるが、被処理水Wに含まれる二価の鉄イオン(Fe
2+)は、多孔質担体Sを構成する活性炭の表面に吸着され、凝集物MDAへ成長する。
 
【0064】
  多孔質担体Sの表面で凝集した凝集物MDAは、ある程度の大きさ以上、例えば粒子径が20μm〜50μmになると、被処理水Wの水流によって多孔質担体Sの表面から脱離し、被処理水Wと共に下流へ流れる。つまり、凝集物MDAを含む被処理水Wは、金属材料凝集促進層200から濾材121へ流れ込む。
 
【0065】
  濾材121は、金属材料凝集促進層200の下流に設けられ、金属材料凝集促進層200から被処理水Wと共に流れてきた凝集物MDAを捕捉する。本実施形態においては、濾材121は砂濾過部である。この濾材121により、被処理水Wから凝集物MDAを除去することができる。その結果、濾材121の下流においては、鉄イオンM
+、鉄粒子M、鉄酸化物粒子MO、及び鉄水酸化物粒子MOHの凝集物MDAが除去された処理済の水が生成される。この処理済の水は、被処理水流路140bを経由して塩素除去器130に供給される。そして、塩素除去器130では、処理済の水に溶存する余剰の塩素を活性炭により除去する。
 
【0066】
  このように水処理装置100Aでは、吸着粒子Pが高密度に存在する多孔質担体層202に、塩素系薬剤と共に鉄関連物質を含む被処理水Wを通過させる。それにより、二価の鉄イオンは、多孔質担体Sの表面に吸着される。また、三価の鉄イオンは、多孔質担体Sの表面に付着した吸着粒子Pとしての鉄酸化物の粒子又は鉄水酸化物の粒子等に吸着される。その結果、多孔質担体Sの表面で、鉄関連物質の凝集が促進される。そのため、被処理水Wに含まれる鉄イオンの価数によらず鉄イオンを除去することができる。
 
【0067】
  そして、第二実施形態の水処理装置100Aにおいて、上述の配管部材1は、薬剤供給部110の下流側の被処理水流路140a,140b,140cに取り付けられることが好ましい。具体的には、
図6に示すように、符号1Aで示す薬剤供給部110と濾過器120Aとの間、符号1Bで示す濾過器120Aと塩素除去器130との間、符号1Cで示す塩素除去器130の下流の少なくともいずれか一つに取り付けることが好ましい。薬剤供給部110と濾過器120Aとの間、又は濾過器120Aと塩素除去器130との間に配管部材1を配置することで、薬剤供給部110から被処理水Wに、鉄関連物質を凝集させるために適切な量の塩素系薬剤が供給されているか判断することができる。また、塩素除去器130の下流に配管部材1を配置することで、塩素除去器130により脱塩素処理された水の遊離塩素濃度が、生活用水として適するレベルまで低下しているか判断することができる。
 
【0068】
  上述のように、本実施形態の水処理装置100,100Aは、配管部材1と、配管部材1の上流に配置され、水に薬剤を供給する薬剤供給部110と、薬剤供給部110の下流に設けられ、薬剤が供給された水に含まれる不純物を濾過する濾過器120とを備える。このため、薬剤供給部110から供給される薬剤の濃度を実際の流量で流れている状態で測定することができ、測定値の信頼性を大きく高めることが可能となる。また、板状物30及び棒状物の少なくとも一方を配管部材1の弁20に挿入するだけで被測定対象の濃度を精度よく測ることができるため、簡単なオペレーションで水質検査を行うことが可能となる。
 
【0069】
  なお、本実施形態において、被処理水Wは、井戸から汲み出した井水に限定されず、河川若しくは池等の水源から汲み出した水又は雨水も用いることができる。また、薬剤供給部110が供給する薬剤は、上述の塩素系薬剤に限定されず、例えば凝集剤、消毒剤であってもよい。さらに、配管部材1により測定する被測定対象は、塩素系薬剤の濃度に限定されない。被測定対象は、上述のように総硬度、総アルカリ度、pH、硝酸性窒素濃度、亜硝酸性窒素濃度、総鉄イオン濃度、銅イオン濃度、アンモニア性窒素濃度、リン酸イオン濃度からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。また、濾過器120は、上述の濾過砂やマンガン砂に限定されず。例えば精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)を用いてもよい。
 
【0070】
  以上、本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。