(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782482
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】呼気ガス分析用ガス採取装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20201102BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20201102BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N1/00 A
A61B5/08
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-146258(P2016-146258)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-17540(P2018-17540A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114190
【氏名又は名称】ミナト医科学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田功
【審査官】
野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−510107(JP,A)
【文献】
特開2009−085857(JP,A)
【文献】
特開2004−077467(JP,A)
【文献】
特表2015−503962(JP,A)
【文献】
特開平03−063035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
A61B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼吸気の流量を測定するセンサ部と、前記センサ部から流量に関する信号を受け取り、呼吸気に関する各種データを算出する制御部と、前記被験者の呼気サンプルの一部をサンプルガスとして採取し脱着可能とするガス採取部と、前記ガス採取部に吸引導入するサンプリング回路部と、前記サンプリング回路部と前記ガス採取部を通じて呼気サンプルを吸引する主ポンプ部と、を備えるガス採取装置において、前記サンプリング回路部と前記呼気ガス採取部との間に設けたサブポンプ部と、前記呼気ガス採取部と並列に設けたバイパス部と、前記呼気ガス採取部とバイパス部を切換え可能とする分岐部と、前記呼気ガス採取部にかかるガス圧を測定するガス圧測定部と、前記呼吸気に関する各種データに応じて、前記分岐部、前記主ポンプ部、前記サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せによってガス採取を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記サブポンプにより、前記サンプルガスを複数回、同一の前記ガス採取部へ圧入してなるガス採取装置。
【請求項2】
呼吸気に関する各種データのうち、呼気終末時点に同期させて、分岐部、主ポンプ部、サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せを制御する制御部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のガス採取装置。
【請求項3】
呼気ガス採取部と並列に設けた吸気ガス採取部と、
サンプリング回路部と吸気ガス採取部との間に設けたサブポンプ部と、
前記吸気ガス採取部、バイパス部及び前記呼気ガス採取部を切換え可能とする分岐部と、
前記吸気ガス採取部にかかるガス圧を測定するガス圧測定部と、
前記呼吸気に関する各種データに応じて、前記分岐部、主ポンプ部、前記サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せによってガス採取を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス採取装置。
【請求項4】
呼吸気に関する各種データのうち、吸気終末時点に同期させて、分岐部、主ポンプ部、サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せを制御する制御部、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載のガス採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼気ガス分析におけるサンプルガスの採取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
呼気ガス分析は、被験者が呼吸する際に排出し吸収される呼吸気中の測定対象ガスのガス濃度やガス量等を分析するものであり、呼吸気において採取されるサンプルガスは、生体機能の評価や各種疾患の診断、治療効果の評価等に用いられ、例えば、呼吸代謝に関する指標を求める測定や、肺の洗い出し検査等をおこなう肺機能検査、ピロリ菌の存在を検査するピロリ菌検査等、各種の測定・検査に用いられる。
手法は、ガス交換(酸素消費量、二酸化炭素生産量)と基礎代謝との関係から、炭水化物酸化及び脂質酸化のその都度の基質酸化速度が、呼吸時に接種した酸素の所定量と、それに続いて吐き出した二酸化炭素の比較量として求める方法がある。一般的に間接熱量測定法として知られている方法である。
【0003】
また、サンプルガスを用いた検査は、被験者のカロリー消費量及び基礎代謝量を求めるために肉体的な負荷が掛けられている間に身体に生じるエネルギー代謝を測定するために利用されている。客観的に被験者の動作中であってもカロリー消費量を求めることができることから、心臓病等の心疾患を持つ被験者の心肺系の仕事率を推量しながらリハビリをすることも可能となる。
一方、呼気終末時に得られる二酸化炭素濃度、つまり呼気終末炭酸ガス濃度は、血液中の二酸化炭素と相関するため、当該ガス濃度を測定することで、過換気障害、気道閉塞、肺閉塞、COPD、低換気などの診断にも用いることができる。
このように、健康の維持管理においては、ガス交換や酸素消費を含む呼吸機能からみた健康の維持管理についても、これら測定・検査は有用である。
近年、水素ガスが腸内細菌の活動を示す指標として着目され、健康・生活習慣との関係が明らかになっておきており、ガス種類の選択性に優れた熱電式水素センサ素子を用いて直接呼気中の水素ガス濃度を測定できる呼気水素検知器などが開発されている。
また、肺がんの早期発見のあらたな手段として、肺がん患者のがん切除手術前後の呼気ガス成分を統計学的に分析し、呼気中の揮発性有機化合物(VOC)から複数の肺がんマーカー物質の組み合わせが発見され、これら複数のマーカー物質の濃度から、肺がん患者と健常者とを高精度で識別できる検査装置の開発が進められている。
呼吸気を用いたガス分析方法では、被験者から自然に吸引排出される呼吸気を測定することができ、わざわざ血液を採血等して血中の二酸化炭素量等の濃度測定をする必要はなく、簡便で安全な被験者に負担をかけない非侵襲な測定であることに利点がある。
ただし、いずれも呼吸気中に含まれるガス濃度が非常に微量となるガス種の濃度測定をしなければならず、ガス濃度の高精度化が必須の技術となる。
【0004】
従来から、サンプルガスを採取する際は、呼吸気を測定する流量センサで計測した呼気カーブを用いて、採取に必要なタイミングを計って通過するガスの一部を採取し、その少ないガス量の中から必要とする微量ガス種のガス濃度を測定する装置、又は、代謝測定においては、継続して呼吸するタイミングに合わせて断続的にガス採取及びガス濃度測定をし、呼気カーブと対比させて各種評価を行うなどして必要なガスを抽出して評価する装置は存在している。
しかし、タイミングを計って採取されたガスであっても不必要な他のガス、例えば、被験者自身の測定する目的以外ガスも当然に含まれており、ガス濃度測定においては、依然精度の高いガス濃度計が必須であった。
また、直前に検査した他の被験者の残留ガスとのコンタミネーション等も生じることから、ガス濃度測定自体の精度にも限界があった。
そこで、被験者の呼吸気中の目的とするガスのみが抽出できる機能を有する装置の開発が要望されていた。
【0005】
特許文献1では、これを改善するため、流量センサで排出量を計量し、死腔量つまりサンプリング回路中の余分なガスが排出された段階で、サンプリング回路を移動し切換えて分析する技術が開示されている。
図3に特許文献1で開示されたサンプリング回路のブロック図の一例を示す。
図3のブロック図は、流量センサ9、呼気排出経路2、呼気吸引経路3、呼吸測定経路4、吸引路12、秤量弁路14、吸引ポンプ15、検出器18からなる。
流量センサ9から得られたデータにより死腔量相当が排出されたと判断した後、秤量弁路14に収まったサンプルガスは、秤量弁路14がスライドすることで、別経路の呼気測定経路に移動され検出器18によってガス分析される。
当該機能により、死腔量相当を取り除きサンプルガスが抽出することができ、精度の良いガス分析ができるとされている。
しかし、当該機能であっても、死腔部分のガスが除去されているだけであり、サンプルガスに含まれる測定対象ガス量は微量のままであって、ガス濃度測定で必要とされる精度は依然変わらず、また、直前に測定を行った被験者の呼吸気とのコンタミネーションの防止は不十分であり、検出・採取回路中の残留ガスや、呼気経路中に付着した微量な残留ガス等の除去はできておらず、以前としてコンタミネーションの影響は大きいままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−077467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、呼気ガス分析するにあたり、これまで微量であったサンプルガスのガス濃度を濃縮してガス濃度測定精度の向上を図ると共に、他の被験者の残留ガスとのコンタミネーションを防ぐガス採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に記載のガス採取装置では、被験者の呼吸気の流量を測定するセンサ部と、前記センサ部から流量に関する信号を受け取り、呼吸気に関する各種データを算出する制御部と、前記被験者の呼気サンプルの一部をサンプルガスとして採取し脱着可能とするガス採取部と、前記ガス採取部に吸引導入するサンプリング回路部と、前記サンプリング回路部と前記ガス採取部を通じて呼気サンプルを吸引する主ポンプ部と、を備えるガス採取装置において、前記サンプリング回路部と前記呼気ガス採取部との間に設けたサブポンプ部と、前記呼気ガス採取部と並列に設けたバイパス部と、前記呼気ガス採取部とバイパス部を切換え可能とする分岐部と、前記呼気ガス採取部にかかるガス圧を測定するガス圧測定部と、前記呼吸気に関する各種データに応じて、前記分岐部、前記主ポンプ部、前記サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せによってガス採取を制御する制御部
を備え、
前記制御部は、前記サブポンプにより、前記サンプルガスを複数回、同一の前記ガス採取部へ圧入することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のガス採取装置において、
呼吸気に関する各種データのうち、呼気終末時点に同期させて、分岐部、主ポンプ部、サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せを制御する制御部、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載のガス採取装置において、
呼気ガス採取部と並列に設けた吸気ガス採取部と、
サンプリング回路部と吸気ガス採取部との間に設けたサブポンプ部と、
前記吸気ガス採取部、バイパス部及び前記呼気ガス採取部を切換え可能とする分岐部と、
前記吸気ガス採取部にかかるガス圧を測定するガス圧測定部と、
前記呼吸気に関する各種データに応じて、前記分岐部、主ポンプ部、前記サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せによってガス採取を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のガス採取装置において、
呼吸気に関する各種データのうち、吸気終末時点に同期させて、分岐部、主ポンプ部、サブポンプ部のうちいずれか一つ又はこれらの組合せを制御する制御部、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、呼気ガス分析するにあたり、これまで微量であったサンプルガスの測定対象のガス種を濃縮してガス採取することが可能となるため、測定対象ガス種が容易に測定でき、ガス濃度測定精度の向上を図ることができる。また、他の被験者の残留ガスとのコンタミネーションを極力防ぐことができるようにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるガス採取装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明によるガス採取装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】特許文献1に記載のガス分析装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のガス採取装置では、被験者Mの呼吸気をサンプルガスとしてガス採取部1に採取する際、被験者Mの呼吸気の流量を、呼吸流量計センサ12で計測することで得られた呼吸気に関する各種データに応じて、分岐部A4、分岐部B5、サブポンプ部である排出ポンプ2、主ポンプ部である吸引ポンプ3を制御部6によって切換えられ、測定対象となるサンプルガスはサンプリング回路8を通じてガス採取部1に採取され、非測定対象のサンプルガスはサンプリング回路8を通じてバイパス部7を通じて排出されることで、測定対象となるサンプルガスのみが選別され抽出される。さらに、排出ポンプ2によって、サンプルガスがガス採取部1に圧入されることで、サンプルガスが濃縮され、ガス採取部1が脱着できることで、濃縮されたサンプルガスは持ち運び可能となり、また、ガス採取部1は被験者Mごとに常に新しいものに交換可能となる。
【0015】
これら機能により、これまで微量であったサンプルガスの測定対象のガス種を濃縮してガス採取することができ、容易に持ち運び可能となり、他のガス測定機においても評価可能となることから、様々な測定対象ガス種を容易に測定できるようになり、ガス濃度測定精度の向上も図ることができる。また、他の被験者の残留ガスとのコンタミネーションを防ぐことができるようにもなる。
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明のガス採取装置の一実施例である、呼気ガスのサンプルガスを採取するガス採取装置のブロック図を示すものである。
図2は、本発明のガス採取装置の一実施例である、吸気ガスのサンプルガスを採取するガス採取機構を呼気ガスのサンプルガスを採取するガス採取装置に加えたブロック図を示すものである。
【0018】
本発明に係るガス採取装置の一実施例についてその構造を
図1、
図2に基づき説明する。
(1)構成・動作について
本発明に係るガス採取装置は、
図1のブロック図において、呼気サンプルバッグ1、呼気排出ポンプ部2、吸引ポンプ部3、分岐部A4、分岐部B5、制御部6、バイパス部7、サンプリング回路部8、呼気バッグ脱着部9、10、センサ部11、呼吸流量センサ部12、流量センサ信号線13を有している。ここで、呼気バッグ脱着部9、10は、ガス圧測定部9、10が含まれている。
【0019】
被験者Mは、センサ部11を通じて呼吸気を排出吸入することで呼吸気流量センサ12において、流量に関するデータが電気信号として検出され流量センサ信号線13を通じて制御部6へ送られる。制御部6に送られたデータに応じて流量を始めとし、呼吸気に関する指標が算出され、呼吸気に関する呼気フローカーブも算出される。
【0020】
呼気サンプルバッグ1は、呼気バッグ脱着部9、10によってサンプリング経路中に設置される。サンプルバック1の材質や形状には特段に注意を払う必要はないが、用途に応じて材質や形状等を使い分けるのが良い。
例えば、精度を要する場合は、不要なガスが混入しないよう、柔軟な高分子エラストマー、ゴム材や高分子樹脂材のシート材を2枚合わせて袋状にするが、シート材を密着さて内部に気体が入らないようにした一枚のシート状態のものを製作し、呼気バッグ脱着部9、10に装着後、内部にサンプルガスが封入された際に初めて膨らむような構造にしておく。
また、長期保存する必要がある場合や、ガス分析ができる場所まで距離が離れている場合、固定形状のガラスや高分子樹脂の容器などを使用したサンプルバッグ1で構成させることもできる。
【0021】
サンプリング回路部8は、分岐部A4によって、サンプルバッグ1及びバイパス部7に接続され、吸引ポンプ部3によって回路内が負圧に制御されることで、センサ部11のガスの一部がサンプリング回路部8を通じてガス採取回路内に導入される。導入されたガスは、呼気フローカーブに応じて制御部6で制御された吸引ポンプ3と分岐部A4、B5によってバイパス部7、サンプルバッグ1に振り分けられる。
【0022】
前記例で挙げた密着状態で製作されたシート状のサンプルバッグ1の場合、サンプルバッグ1の呼気バック脱着部10の側は当初より密閉状態にしておき、脱着部10から取り外し、他のガス分析機等の測定機に取り付ける際に、初めて開封できるようにしておくと、より不要ガスの混入を防ぐことができる。かかる場合、サンプルバック1内のガス分析を行うガス分析機のガス導入部にもサンプルバッグ1が脱着できるように事前に専用アダプタなどを設けておく必要がある。
【0023】
測定対象ガスは、サンプルバッグ1に振り分けられ封入されるが、当該サンプルバッグ1が測定対象ガスで満たされてしまった場合でも、さらに、排出ポンプ2の排気側にサンプルバッグ1を接続しているためサンプルガスをサンプルバッグ1にさらに押し込み封入することができる。
この際、サンプルバッグ1に加圧されながら圧入されるため、サンプルバッグ1の収容能力に応じて、サンプルバッグ1内のガスは濃縮された状態で封入されることとなる。
なお、サンプルバッグ1の前のサンプリング経路に不要ガスが僅かながら存在していることが考えられるため、バイパス部7を通じてサンプリング回路部8や分岐部A4に存在する気体を事前に排出しておく必要がある。
さらに、不要ガスを混入したくない場合は、排気ポンプ2と、図に記載は無いが排気ポンプ2の排気側にもさらに分岐部を設けて回路内部ガスを強制排気させる方法も可能である。
また、各部の陽圧、負圧が適正に動作しているか確認できるよう、吸気バッグ脱着部9、10には市販の圧力センサや圧力計を設けて、動作を制御部6で確認できるようにしておくと良い。
また、分岐部A4、B5については、電磁弁及び分岐管等を用いて制御部6の信号に応じてバイパス部7と呼気ガス採取部1に振り分けることができるよう必要な分岐切換機構を構成させておく。
また、バッグ脱着部9、10については、エアカップリング等の汎用のカプラーを使用した配管構造を設けても良い。
なお、サンプルバッグ1を封入する際は、サンプルバッグ1内は陽圧に加圧された状態にあるので、採取後の外来の不要ガスの混入はほぼ無いと考えることができ、サンプルバッグ1の脱着部9側の口をφ1程度の高空気抵抗の細管径にしておくと、サンプルバッグ1を取り外し後に通常の汎用の蓋で封止することもできる。または、サンプルバッグ1の両端をチューブ状に伸ばしておき、チューブを座屈若しくは縛ることでより不要なガスの混入は避けられる。また、当初よりサンプルバッグ1の脱着部9の側に逆止弁を設けておいても良い。
【0024】
一方、柔軟なサンプルバック1に代えて、ボトルやチャンバー形状を利用した固定形状容器のサンプルバッグ1を利用する場合は、サンプルバッグ1の両端を分岐部A4と分岐部B5に接続し、吸引ポンプ部3を通じて内部に充満しているガスを外部に排出する必要がある。
かかる場合は、呼吸流量センサ部12を使い、ある程度死腔量及び測定対象となるガスがサンプルバッグ1内に充填された段階で、分岐部B5を閉じ、その後、排出ポンプ部2によってサンプルガスをサンプルバッグ1内に封入する。
【0025】
以上に一例を挙げたが、このようなガス採取機構を用いることによって、例えば、呼気フローカーブから求められた、呼気終末時にサンプルバッグ1に測定対象ガスを採取し排出ポンプ2でサンプルバッグ1に圧入することにより、複数回のガス濃度を一つのサンプルバッグ1に濃縮することができる。これにより、これまで微量であったサンプルガスの測定対象のガス種を濃縮してガス採取することが可能となり、呼気終末時の酸素、二酸化炭素、その他水素ガスなどの揮発性有機化合物などの測定対象ガス種が容易に測定でき、ガス濃度測定精度の向上を図ることができる。
また、サンプルバッグ1を被験者毎に交換することが可能になることから、他の被験者の残留ガスとのコンタミネーションを防ぐことができるようにもなる。
【0026】
図2は、本発明のガス採取装置の一実施例で呼気ガスのサンプルガスを採取するガス採取機構に併せて吸気ガスのサンプルガスを採取するガス採取機構を加えたものであり、
分岐部A4と分岐部B5にさらに吸気バッグ脱着部22、23を設け、吸気サンプルバッグ21を接続できるようにし、さらにサンプルバッグ21の前に吸気排出ポンプ部24を設けた。
動作は、
図1の呼気ガス採取機構とほぼ同じであるが、呼吸気センサ部12から得られた吸気信号に同期させて、分岐部A4の回路が吸気サンプルバッグ21側に開き、吸気排気ポンプ部24によって、吸気サンプルバック21に圧入される。
その他のガス採取機構、及び動作原理自体は、
図1の呼気ガス採取機構と同様である。
【0027】
当該機構を用いることによって、吸気ガスについてもサンプルバッグ21にサンプルガスが濃縮されたガスとして採取され、呼気サンプルバッグ1内の呼気ガスと吸気サンプルバッグ1内の吸気ガスとの差分を取ることで、周囲環境に含まれるガスの影響を排除することができ、より精度の良いガス濃度測定が可能になる。
【符号の説明】
【0028】
1: 呼気サンプルバッグ、呼気ガス採取部
2: 呼気排出ポンプ部、呼気サブポンプ部
3: 吸引ポンプ部、主ポンプ部
4: 分岐部A
5: 分岐部B
6: 制御部
7: バイパス部
8: サンプリング回路部
9、10:呼気バッグ脱着部、ガス圧測定部
11: センサ部
12: 呼吸流量センサ部
13: 流量センサ信号線
21: 吸気サンプルバッグ、吸気ガス採取部
22、23:吸気バッグ脱着部、ガス圧測定部
24: 吸気排出ポンプ部、吸気サブポンプ部
M: 被験者