(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向電極の間に、半導体ナノワイヤー集合物層、該半導体ナノワイヤー集合物層の片面に接する触媒金属薄膜層、及び絶縁薄膜層がこの順序で配置された積層構造が介在して成る、ガスセンサ。
対向電極の一方の電極の表面に導電層が形成され、該導電層に複数の半導体ナノワイヤーが保持されて、半導体ナノワイヤー集合物層が形成されている、請求項1記載のガスセンサ。
対向電極の第1電極の表面に導電層が形成され、該導電層に複数の半導体ナノワイヤーが保持されて、半導体ナノワイヤー集合物層が形成されている、請求項6〜8のいずれか1項記載のガスセンサ。
触媒金属が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)及び銅(Cu)から成る群から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜11のいずれか1項記載のガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体方式のガスセンサは、比較的低濃度のガスも検出できる高感度センサとして有用である。しかし、酸化物半導体を用いたガスセンサは、高感度のガス検出を行うためには、約400℃程度のヒーティングが必要であり、低消費電力下での使用は困難である。また、熱線型半導体式の水素ガスセンサも検出感度は比較的高いがセンサ温度を100〜200℃にして使用しなければならず、また、電界効果型トランジスタを用いた水素ガスセンサも動作温度は約140℃であり、いずれも室温動作はできず、低消費電力下での使用は困難である。一方、水素触媒金属をナノ物質にコートして水素ガスを検出する手法は、ヒーティングを必要としないが、水素触媒金属をナノ物質にコートしているため、水素ガス以外のガスを検出できても検出信号が水素ガスのそれと区別がつきにくく、水素ガスとそれ以外のガスを分離検出できない欠点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、その解決しようとする課題は、室温動作にて水素ガス等の無機ガスを低消費電力下で高感度に検出することができ、しかも、水素ガス等の無機ガスと有機ガスとの分離検出も可能なガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(a)対向電極間に複数の半導体ナノワイヤーが集合した半導体ナノワイヤー集合物層を配置して、対向電極間にガスを滞留させること、(b)半導体ナノワイヤー集合物層の片面に触媒金属薄膜層を接触させること、(c)触媒金属薄膜層に絶縁薄膜層を隣接させること、及び(d)半導体ナノワイヤー集合物層に触媒金属担持部と触媒金属非担持部とを形成することのそれぞれ又は組合せが、水素ガスの高感度検出及び水素ガスと有機ガスとの分離検出に有効であることが分かった。本発明はこれら(a)〜(d)の知見に基づいてさらに研究を進めることにより完成したものであり、その構成は以下の通りである。
【0009】
[1] 対向電極の間に、半導体ナノワイヤー集合物層、該半導体ナノワイヤー集合物層の片面に接する触媒金属薄膜層、及び絶縁薄膜層がこの順序で配置された積層構造が介在して成る、ガスセンサ。
[2] 対向電極が、第1電極と、該第1電極の一部と対向する複数の第2電極とを有する、複数の対向電極部が形成された対向電極であり、
該複数の対向電極部の各々の対向電極間に、上記積層構造が介在してなる上記[1]記載のガスセンサ。
[3] 触媒金属薄膜層が触媒金属ナノ粒子薄膜層である、上記[1]または[2]記載のガスセンサ。
[4] 対向電極の一方の電極の表面に導電層が形成され、該導電層に複数の半導体ナノワイヤーが保持されて、半導体ナノワイヤー集合物層が形成されている、上記[1]記載のガスセンサ。
[5]導電層が導電性粘着テープ又は導電性接着剤を含む、上記[4]記載のガスセンサ。
[6] 第1電極と、該第1電極の一部と対向する複数の第2電極とを有する、複数の対向電極部が形成された対向電極、及び、半導体ナノワイヤー集合物層を含み、
半導体ナノワイヤー集合物層には、半導体ナノワイヤーの表面が触媒金属ナノ粒子で覆われた触媒金属担持部と、半導体ナノワイヤーの表面が触媒金属ナノ粒子で覆われていない触媒金属非担持部とが形成され、
対向電極における複数の対向電極部が、対向する電極間に半導体ナノワイヤー集合物層の触媒金属担持部が介在する第1センサ部と、対向する電極間に半導体ナノワイヤー集合物層の触媒金属非担持部が介在する第2センサ部とに分けられて成ることを特徴とする、ガスセンサ。
[7] 半導体ナノワイヤー集合物層の触媒金属非担持部の片面に接触する触媒金属薄膜層、及び、該触媒金属薄膜層と第2電極との間に設けられた絶縁薄膜層をさらに含み、
対向電極における複数の対向電極部が、対向する電極間に半導体ナノワイヤー集合物層の触媒金属担持部が介在する第1センサ部と、対向する電極間に半導体ナノワイヤー集合物層の触媒金属非担持部、触媒金属薄膜層及び絶縁薄膜層がこの順序で配置された積層構造が介在する第2センサ部とに分けられて成ることを特徴とする、上記[6]記載のガスセンサ。
[8] 触媒金属薄膜層が触媒金属ナノ粒子薄膜層である、上記[6]または[7]記載のガスセンサ。
[9] 対向電極の第1電極の表面に導電層が形成され、該導電層に複数の半導体ナノワイヤーが保持されて、半導体ナノワイヤー集合物層が形成されている、上記[6]〜[8]のいずれか1つに記載のガスセンサ。
[10] 導電層が導電性粘着テープ又は導電性接着剤を含む、上記[9]記載のガスセンサ。
[11] 半導体ナノワイヤーがセレンナノワイヤーである、上記[1]〜[10]のいずれか1つに記載のガスセンサ。
[12] 触媒金属が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)及び銅(Cu)から成る群から選択される1種又は2種以上である、上記[1]〜[11]のいずれか1つに記載のガスセンサ。
[13] 無機ガス用のセンサである、上記[1]〜[12]のいずれか1つに記載のガスセンサ。
[14] 無機ガスが水素ガスである、上記[13]に記載のガスセンサ。
[15] 無機ガスが一酸化炭素である、上記[13]に記載のガスセンサ。
[16] 無機ガスと有機ガスの分離検出機能を有するセンサである、上記[13]〜[15]のいずれか1つに記載のガスセンサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガスセンサは、室温動作にて水素ガス等の無機ガスを高感度に検出することができ、しかも、水素ガス等の無機ガスと有機ガスとの分離検出も可能である。また、低消費電力で動作し、しかも、繰り返し使用も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。
なお、ガスセンサの構成(構造)を示す図における各構成要素の寸法及び寸法比、並びに、各構成要素間の寸法比等は、説明の便宜から、実際のガスセンサのそれとは必ずしも一致させていない。
【0013】
図1は本発明の第1態様のガスセンサの一実施形態の断面を模式的に示しており、本発明の第1態様のガスセンサは、該一例のガスセンサ10に示されるように、対向電極1A、1Bの間に、半導体ナノワイヤー集合物層2、半導体ナノワイヤー集合物層2の片面に接する触媒金属薄膜層3及び絶縁薄膜層4がこの順序で配置された積層構造が介在した構成を有することが特徴である。なお、図中の5は導電層、6は電源、7は電流計、8はショート時の回路保護のための保護用抵抗、21は半導体ナノワイヤーである。
【0014】
本願の出願人は、以前、セレンナノワイヤーを用いた、ヒーティングを必要としない、低消費電力のガスセンサを提案した(特許文献1)。しかし、かかるガスセンサは、有機ガスを高感度に検出できるが、セレンナノワイヤーが水素ガスと反応しないため、水素ガスを検出できない。そこで、本発明者は、ナノ物質を水素触媒金属(水素をプロトンと電子に解離する触媒作用を有する金属)で被覆して水素ガスを検出する手法(非特許文献2)を参考に、セレンナノワイヤーに水素触媒金属を被覆することで、水素ガスを検出できることを確認した。しかし、この手法では、水素が解離して生成する電子の増加分がセレンナノワイヤー内の正孔を減少させる効果として働き、結果として、電子供与性ガスである有機ガスの検出信号と同様の検出信号(電流減少として現れる電流変化)が観測されるため、水素ガスと有機ガスとの分離検出ができないことが分かった。
【0015】
本発明の第1態様のガスセンサは、触媒金属を被覆した半導体ナノワイヤーを使用するのではなく、触媒金属を被覆していない複数の半導体ナノワイヤー21を使用して、ガスが滞留し得る空隙を有する状態に複数の半導体ナノワイヤー21を3次元的に集合させた半導体ナノワイヤー集合物層2を用い、この半導体ナノワイヤー集合物層2の片面に触媒金属薄膜層3を接触させるとともに、触媒金属薄膜層3に絶縁薄膜層4を隣接して配置させている。なお、ここでいう「触媒金属」は、水素をプロトンと電子に解離する触媒作用のみを有する金属だけでなく、水素をプロトンと電子に解離する触媒作用を有し、かつ、水素以外の無機ガス(例えば、一酸化炭素等)をカチオンと電子に解離し得る触媒作用を有する金属を含む。
【0016】
かかる構成により、所定電圧が印加された対向電極1A、1Bの間に、例えば、水素ガスが到来すると、半導体ナノワイヤー集合物層2内に水素ガスの溜め込みが成され、半導体ナノワイヤー集合物層2の片面に接する触媒金属薄膜層3へのガスの接触効率が増大して、水素ガスのプロトンと電子への解離(H
2→2H
++2e
−)が効率的に生じる。その結果、触媒金属薄膜層3に隣接する絶縁薄膜層4が分極し、電子が半導体ナノワイヤー集合物層2及び導電層5を通って正極(対向電極の一方の電極1A)に流れ込み、水素ガスの検出が電流増加の信号として現れる。また、触媒金属薄膜層3に隣接する絶縁薄膜層4はセンサ内に流れる初期電流を抑制する役割も担っており、初期電流が小さいことで、半導体ナノワイヤーが有機ガスと反応して生じる電流減少方向の電流変化がさらに小さくなる。このため、例えば、被検ガスに水素ガスと有機ガスが混在していても、水素ガスを検出できる。
【0017】
図5((A)、(B))、
図7、
図9((A)、(B))は、それぞれ、後述の、実施例1のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:ポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」とも略称する。))、実施例2のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Ptナノ粒子、絶縁薄膜層:PMMA)及び実施例3のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:マイカ)の対向電極間に水素ガスを導入したときの信号スペクトルを示しており、検出信号が電流増加として現れていることが分かる。また、低濃度域から高濃度域にかけて水素ガスの検出信号が得られていることが分かる。
【0018】
[対向電極]
本第1態様のガスセンサ10において、対向電極1A、1Bは公知の電極材料で形成されていればよく、該電極材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウムスズ)、カーボン等が使用される。また、電極は単層構造でも、多層構造でもよいが、電極表面は、金、銀等の電気伝導率がより高い材料にて形成するのが好ましく、金で形成するのがより好ましい。電極表面が金、銀等で形成されていれば、信号対雑音比(SN比)のよいセンシングが可能になる。対向電極1A、1Bのそれぞれの好適な具体例として、表面に金メッキを施した銅箔が挙げられる。対向電極1A、1Bのそれぞれの厚さは特に限定されないが、一般的には、15〜60μm程度である。また、対向電極1A、1Bのそれぞれの平面面積も特に限定はされないが、一般的には、0.25〜1.00mm
2の範囲内で選択される。
【0019】
[半導体ナノワイヤー集合物層]
本発明における半導体ナノワイヤー集合物層2とは、複数の半導体ナノワイヤーがガスが滞留し得る空隙を有する状態に3次元的に集合し、全体が層の形態を成している半導体ナノワイヤーの集合物を意味する。半導体ナノワイヤー集合物層2に使用する半導体ナノワイヤー21(以下、単に「半導体ナノワイヤー」とも称する。)は、特に限定されないが、セレン、シリコン等の単元素半導体のナノワイヤー、InP、ZnSnO
3、GaN、ZnO、In
2O
3、Ga
2O
3、V
2O
5等の化合物半導体のナノワイヤー、ポリアニリン等の有機化合物半導体のナノワイヤー等が挙げられる。これらの中でも、ガスに対する物理吸着性を示すセレンナノワイヤー(以下、「SeNW」とも略称する)が好ましい。また、半導体ナノワイヤー21の形態は特に限定されない。一般に、「ナノワイヤー」は短繊維を指すが、本発明でいう「ナノワイヤー」は、短繊維、長繊維(ナノファイバー)、中空糸状(ナノチューブ)、短柱状繊維(ナノロッド)、平板状繊維(ナノベルト)或いは、これらのうちの2種以上が混在したものも含む概念である。中でも、取り扱い上、ガス吸着性能、ガス脱離性能等の観点から、半導体ナノワイヤーは短繊維のナノワイヤーが好ましい。また、半導体ナノワイヤーの太さ(直径)は特に限定はされないが、一般的には、平均直径が10〜600nmであるものが好ましく、50〜450nmであるものがより好ましい。ここで、「平均直径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)において、LabVIEW(Laboratory Virtual Instrumentation Engineering Workbench)付属の NI Vision Assistant (ナショナルインスツルメント製ソフトウエア)を用いて計測した複数のサンプル(サンプル数:50)の直径分布における最大ピーク値である。また、半導体ナノワイヤーは1種又は2種以上を使用できる。半導体ナノワイヤーの最も好ましい態様は、短繊維のセレンナノワイヤーである。
【0020】
半導体ナノワイヤー集合物層2の形成方法は、特に限定はされないが、対向電極の一方の電極1A上に粘着性を有する導電層5を形成し、該導電層5上に複数のナノワイヤー21を散布して導電層5に複数のナノワイヤー21を保持させる方法が簡便であり、好ましい。半導体ナノワイヤー集合物層2の導電層5上の単位面積当たりのナノワイヤーの存在量は、ナノワイヤー間の空隙にガスを滞留させやすくする観点から、10μg/mm
2以上が好ましく、50μg/mm
2以上がより好ましい。一方、ナノワイヤーの存在量が多くなり過ぎると、ナノワイヤー間の空隙が減少してガスが滞留しにくくなり、ガスの接触効率が低下する傾向となるため、単位面積当たりナノワイヤーの存在量は、500μg/mm
2以下が好ましく、200μg/mm
2以下がより好ましい。
【0021】
[導電層]
導電層5は、上述の通り、複数の半導体ナノワイヤー21を半導体ナノワイヤー集合物層2として保持するとともに、半導体ナノワイヤー21と電極金属間のショットキー障壁を無くし、電流をより流れやすくする機能を担う。導電層5には、導電性両面粘着テープや導電性接着剤が使用される。導電性両面粘着テープとしては、例えば、導電性フィラーとしてカーボン粉を含んだ両面粘着テープが挙げられる。また、導電性接着剤としては、導電性粉末と有機バインダーとを含む接着剤が挙げられ、その硬化物が導電性を有するものであれば制限なく使用できる。導電性粉末としては、例えば、カーボン粉末や、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、コバルト等の金属単体、または、前記金属元素から選ばれる少なくとも1種を含む合金からなる金属粉末等が挙げられる。また、有機バインダーとしては、金属との接着性の良いものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられ、なかでも、接続信頼性等の点からエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。なお、導電性両面粘着テープ、導電性接着剤は、電気抵抗が下記の好ましい範囲にある導電層を形成できるものであれば、市販品を制限なく使用できる。
【0022】
導電層5の電気抵抗は、通電作用が良好に行われる観点から、200Ω/inch
2(0.310Ω/mm
2)以下が好ましく、50Ω/inch
2(0.00775Ω/mm
2)以下がより好ましい。また、導電層5は半導体ナノワイヤー集合物層2を形成する複数の半導体ナノワイヤーを保持する役割も担うために樹脂等のナノワイヤーを保持する粘着性成分含むため、半導体ナノワイヤーの保持性の観点から、導電層5の電気抵抗は、0.1Ω/inch
2(0.000155Ω/mm
2)以上が好ましく、0.5Ω/inch
2(0.000775Ω/mm
2)以上がより好ましい。
【0023】
また、導電層5の厚さは特に限定されないが、半導体ナノワイヤーの保持性および電気伝導性の観点から30〜300μm程度が好ましく、60〜160μm程度がより好ましい。
【0024】
[触媒金属薄膜層]
触媒金属薄膜層3は、触媒金属を含む薄膜層であり、触媒金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)及び銅(Cu)から成る群から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。なお、ここでいう「2種以上」とは2種以上の異なる金属を併用すること、及び、2種以上の金属の合金であってもよいことを含む。中でも、触媒金属は触媒作用の点から、白金(Pt)、パラジウム(Pd)が好ましい。
【0025】
触媒金属薄膜層3は触媒金属ナノ粒子によって形成された薄膜層、すなわち、触媒金属ナノ粒子薄膜層であることが好ましい。触媒金属ナノ粒子薄膜層は、例えば、対向電極の他方の電極1B上に先に形成された絶縁薄膜層4に触媒金属ナノ粒子(粒径が1〜100nmの触媒金属粒子)のコロイド溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。触媒金属ナノ粒子のコロイド溶液としては、触媒金属ナノ粒子の含有量(濃度)が0.1〜5重量%程度、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」とも略称する)、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール等の保護剤(分散安定剤)の含有量が0.2〜15重量%程度、水、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、n−デカン、クロロホルム、ヘキサン、ターピネオール等の分散媒の含有量が80〜99重量%程度の組成からなるコロイド溶液が好ましく、また、触媒金属ナノ粒子の粒径が2〜20nm(好ましくは2〜10nm)のコロイド溶液が好ましい。触媒金属ナノ粒子のコロイド溶液は市販品を使用することができる。市販品としては、「PtPVPコロイドエタノール溶液」(田中貴金属工業株式会社)、「PdPVPコロイドイソプロピルアルコール溶液」(田中貴金属工業株式会社)、「PdPVP水溶液」(田中貴金属工業株式会社)等が挙げられる。
【0026】
コロイド溶液の塗布後の乾燥温度は特に限定されないが、室温〜60℃程度が好ましい。なお、「触媒金属ナノ粒子の粒径」は透過型電子顕微鏡(TEM)写真の観察による測定値である。
【0027】
触媒媒金属ナノ粒子薄膜層は、触媒金属ナノ粒子が絶縁薄膜層4の表面に分散して担持されたものであり、触媒媒金属ナノ粒子薄膜層を得るための、絶縁薄膜層4の表面へコロイド溶液の塗布量は、単位面積当たりのコロイド溶液塗布量が0.1〜1.0μL/mm
2となる量が好ましく、単位面積当たりのコロイド溶液塗布量が0.2〜0.5μL/mm
2となる量がより好ましい。0.1μL/mm
2未満では、触媒作用が発現しにくい傾向となり、1.0μL/mm
2を超えると効率のよい触媒作用が得られにくい傾向となる。
【0028】
[絶縁薄膜層]
絶縁薄膜層4は、有機材料、無機材料のいずれで形成されても良く、有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等の有機高分子材料が好ましく、無機材料としては、雲母(マイカ)、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等が好ましい。これらの中でも、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、雲母(マイカ)は取り扱いが簡単で安定した絶縁薄膜が形成されやすい点でより好ましい。また、絶縁薄膜層4の厚さは、リーク電流が流れる観点から、40nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。リーク電流が阻害されないようにする観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0029】
本第1態様のガスセンサ10において、センサ感度向上のための対向電極間の電界強度を最適化するためのセンサの各部の寸法および電気的条件の好適範囲は以下の通りである
(1)対向電極のオーバーラップ面積(対向面が実際に重なり合う領域):0.25〜1.00mm
2(好ましくは0.50〜0.75mm
2)
(2)対向電極の電極間距離:0.05〜0.20mm(好ましくは0.06〜0.15mm)
(3)対向電極への印加電圧:0.5〜30.0V程度(好ましくは1.0〜20.0V程度)
【0030】
本第1態様のガスセンサのセンサ信号強度(S)は、次式で表される。
【0031】
S=(I
max−I
0)/I
0=ΔI/I
0
【0032】
センサ信号強度(S)はガスに対する電流値増加量ΔI=(I
max−I
0)を初期電流値I
0で正規化したものである。I
maxはガスに対して反応した際の電流値の最大値である。
【0033】
図6は後述の実施例1のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:PMMA)のセンサ信号強度(S)の水素ガス濃度依存性を示し、
図8は後述の実施例2のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Ptナノ粒子、絶縁薄膜層:PMMA)のセンサ信号強度(S)の水素ガス濃度依存性を示し、
図10は後述の実施例3のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:マイカ)のセンサ信号強度(S)の水素ガス濃度依存性を示している。これらの図から、本第1態様のガスセンサでは、概ね1ppm〜500ppmの水素ガス濃度の測定が可能であることが分かる。
【0034】
図11、12は後述の実施例1のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:PMMA)における絶縁薄膜層の厚さとセンサの比抵抗との関係、絶縁薄膜層の厚さとセンサ信号強度(S)との関係を示す。これらの図から、絶縁薄膜層の厚さが薄くなるとセンサの比抵抗が大きくなることがわかる。また、絶縁薄膜層の厚さが薄くなるとセンサ信号強度(S)が大きくなることがわかる。このことから、厚さの薄い絶縁膜層を用いると、電流の増大が見込め、センサ信号強度(S)も大きくなることから、良好なSN比をもったセンサとなることがわかる。また、
図13、14はガスセンサのI−V特性を示す。第1態様のガスセンサのI−V特性は、非線形特性を示し、IがVの約2.5乗に比例していることから、空間電荷制限電流領域にあることがわかる。また、このような電流値の大きさをもつことから、本第1態様のガスセンサは低消費電力で動作することが分かる。
【0035】
図15は後述の実施例3のガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:マイカ)の対向電極間に一酸化炭素ガスを導入したときの信号スペクトルを示しており、一酸化炭素ガスに対しても検出信号が電流増加として現れていることが分かる。また、
図16はセンサ信号強度(S)の一酸化炭素ガスのガス濃度依存性を示し、一酸化炭素ガスも概ね50ppm〜350ppmのガス濃度の測定が可能であることが分かる。
【0036】
図2(A)は本発明の第2態様のガスセンサの一例の断面を模式的に示した図であり、図において、
図1と同一符号は同一又は相当する部分を示す。すなわち、本第2態様のガスセンサ20は、対向電極として、第1電極1Aと、第1電極1Aの一部と対向する複数の第2電極1Bとを有する、複数の対向電極部11が形成された対向電極を使用し、複数の対向電極部11の各々の対向電極間に、半導体ナノワイヤー集合物層2の片面に接する触媒金属薄膜層3及び絶縁薄膜層4がこの順序で配置された積層構造を介在させたものである。
【0037】
第1電極1Aは、電源(図示せず)に接続され、複数の第2電極1Bには各電極毎に電流計(図示せず)が接続され、各電極毎の電流計が回路保護のための共通の保護用抵抗(図示せず)を介して電源に接続されており、当該ガスセンサ20は、機能的には、上述の第1態様のガスセンサ10をガスの流れ方向(図中の矢印Gの方向)に沿って複数並べて共通の電源に接続した複数のガスセンサの配列を単体のデバイスとして取り扱えるようにしたものである。即ち、半導体ナノワイヤー集合物層2、触媒金属薄膜層3及び絶縁薄膜層4の積層構造が介在する複数の対向電極部11のそれぞれが第1態様のガスセンサ10として機能する。
【0038】
本第2態様のガスセンサ20の複数の対向電極部11における、(1)対向電極のオーバーラップ面積(対向面が実際に重なり合う領域)、(2)対向電極の電極間距離及び(3)対向電極への印加電圧は、上記第1態様のガスセンサ10のそれに踏襲される。
【0039】
なお、
図2(B)は本第2態様のガスセンサ20の好適形態を示し、半導体ナノワイヤー集合物層2へガスがより侵入しやすくなるように、半導体ナノワイヤー集合物層2の両サイドにガス流路51を区画形成したものである。
図2(B)中の52、53は、ガス流路51を区画するための、ガラスエポキシ樹脂等からなる基板と側壁部分である。
【0040】
図17(A)〜(C)は後述の実施例4のガスセンサ、即ち、アレイ型電極と共通電極との間の7個の対向電極部のそれぞれの対向電極間にセレンナノワイヤー集合物層/Pd薄膜層/PMMA薄膜の積層構造を介在させて7個のセンサ部を形成したガスセンサに、濃度700ppmの水素ガスを作用させたときの信号スペクトルを示す。
図17(B)は
図17(A)を拡大した図であり、
図17(C)は
図17(B)をさらに拡大した図である。また、
図18(A)〜(C)は後述の実施例4のガスセンサに濃度6000ppmの水素ガスを作用させたときの信号スペクトルを示す。
図18(B)は
図18(A)を拡大した図であり、
図18(C)は
図18(B)をさらに拡大した図である。なお、これらのそれぞれの図中の「det2」、「det4」、「det7」は並列する7個のガスセンサ部のガス流路の導入口側から数えて2番目、4番目、7番目のセンサ部であることを意味する。
【0041】
図17(A)〜(C)及び
図18(A)〜(C)から、本第2態様のガスセンサの場合、各センサ部において、水素ガスの導入(ガスON(gas on))とともに電流値が増大し、水素ガスを遮断(ガスOFF(gas off))すると元の電流値に戻り、各センサ部の信号の立ち上がりの開始時間がガス流路の導入口側から遠い位置にあるセンサ部ほど遅延することが分かる。なお、
図19は、det2とdet4のセンサ信号の立ち上がりの開始時間の時間差Δt
2,4およびdet2とdet7のセンサ信号の立ち上がりの開始時間の時間差Δt
2,7の水素ガス濃度依存性を示している。
【0042】
本第2態様のガスセンサ(アレイ型ガスセンサ)では、複数のガスセンサ(即ち、複数の対向電極部11)に一定電圧を印加した状態でガス流路にガスが流れたときの、それぞれのガスセンサに生じる電流値(電流値Iとガス接触前の電流値I
0との電流強度比(I/I
0))の時間変化スペクトルに基づく電気的出力値(例えば、遅延時間、ピーク時間、スペクトル形状等)がガスの種類毎に特有の値を示す。従って、予めこの値とガスの物性値とを関連付けたガス検出マップをデータベースとして作成することで、ガス種の特定、混合ガスの成分比率を自動で行うガス分析システムを構成できることが期待できる。
【0043】
図3は本発明の第3態様のガスセンサの一実施形態の断面を模式的に示した図である。図において、
図1、2と同一符号は同一又は相当する部分を示し、30はガスセンサ、2Aは半導体ナノワイヤー集合物層2に形成された、その部分を構成する半導体ナノワイヤーの表面が触媒金属ナノ粒子で覆われた触媒金属担持部を示す。また、2Bはその部分を構成する半導体ナノワイヤーの表面が触媒金属ナノ粒子で覆われていない触媒金属非担持部を示す。
【0044】
すなわち、本第3態様のガスセンサ30は、対向電極として、第1電極1Aと、第1電極1Aの一部と対向する複数の第2電極1Bとを有する、複数の対向電極部11が形成された対向電極を使用し、半導体ナノワイヤー集合物層2に触媒金属担持部2Aと触媒金属非担持部2Bを設け、複数の対向電極部11が、対向する電極1A、1B間に半導体ナノワイヤー集合物層2の触媒金属担持部2Aが介在する第1センサ部30Aと、対向する電極1A、1B間に半導体ナノワイヤー集合物層2の触媒金属非担持部2Bが介在する第2センサ部30Bとの2つのセンサ部に分けられている。
【0045】
なお、第1電極1Aは、電源(図示せず)に接続され、複数の第2電極1Bには各電極毎に電流計(図示せず)が接続され、各電極毎の電流計が回路保護のための共通の保護用抵抗(図示せず)を介して前記の電源に接続されている。
【0046】
半導体ナノワイヤー集合物層2における触媒金属担持部2Aは、半導体ナノワイヤー集合物層2の触媒金属担持部とすべき部分に前述の触媒金属ナノ粒子のコロイド溶液を浸透させ自然乾燥又は加熱乾燥することで形成される。例えば、導電層5上の半導体ナノワイヤー集合物層2における単位面積当たりのナノワイヤーの存在量が50〜500μg/mm
2程度であるときに、半導体ナノワイヤー集合物層2に対する単位面積当たりのコロイド溶液塗布量が好ましくは0.1〜1.0μL/mm
2程度、より好ましくは0.2〜0.5μL/mm
2程度となるように、半導体ナノワイヤー集合物層2にコロイド溶液を塗布して集合物層内に浸透させ、乾燥するのが好ましい。
【0047】
図20は後述の実施例5のガスセンサ、即ち、それぞれがセンサ部となる16個の対向電極部を形成し、セレンナノワイヤーの集合物層に、セレンナノワイヤーの表面がPdナノ粒子で被覆されている触媒金属担持部およびセレンナノワイヤーの表面に触媒金属ナノ粒子を有しない触媒金属非担持部をそれぞれ複数形成することで、対向電極間に触媒金属担持部が介在する複数の第1センサ部および対向電極間に触媒金属非担持部が介在する複数の第2センサ部を並列された構成のガスセンサに対して、被検ガスとしてアセトンガス及び水素ガスをこの順序で作用させたときの第1センサ部及び第2センサ部の信号スペクトルを示す。なお、図中の「det1(SeNW)」は並列する複数のガスセンサ部のガス流路の導入口側から数えて1番目のセンサ部で、触媒金属非担持部を含むセンサ部(=第2センサ部)であることを意味し、「det3(SeNW+PdNP)」は並列する複数のガスセンサ部のガス流路の導入口側から数えて3番目のセンサ部で、触媒金属(Pd)担持部を含むセンサ部(=第1センサ部)であることを意味し、「det6(SeNW)」は並列する複数のガスセンサ部のガス流路の導入口側から数えて6番目のセンサ部で、触媒金属非担持部を含むセンサ部(=第2センサ部)であることを意味する。
【0048】
この図から、本第3態様のガスセンサ30の場合、アセトンガス等の有機ガスに対しては、第1センサ部(det3)及び第2センサ部(det1, det6)のいずれにおいても、半導体ナノワイヤーが有機ガスと反応して、半導体ナノワイヤー内の正孔を減少させ、電流減少として現れる電流変化の信号を発生し、水素ガス等の無機ガスに対しては、第1センサ部(det3)では、半導体ナノワイヤーの表面を被覆する触媒金属ナノ粒子の触媒作用で解離して電子を生成し、その電子の増加分が半導体ナノワイヤー内の正孔を減少させるために、電流減少として現れる電流変化の信号を発生するが、第2センサ部(det1, det6)では、半導体ナノワイヤーの表面に触媒金属が存在しないために、無機ガスの解離が起こらず、電流変化が生じない(信号を生成しない)ことが分かる。
【0049】
従って、本第3態様のガスセンサ30では、有機ガスに対しては、第1センサ部30A及び第2センサ部30Bに検出信号を発生し、水素ガス等の無機ガスに対しては、第1センサ部30Aのみが検出信号を発生するので、有機ガスと無機ガスの両方を検出でき、しかも、有機ガスと無機ガスの判別も可能である。
【0050】
なお、本第3態様のガスセンサ30における第1センサ部30A及び第2センサ部30Bのセンサ感度向上のための、対向電極間の電界強度を最適化するための各部の寸法および電気的条件の好適範囲は以下の通りである。
【0051】
[第1センサ部30A]
(1)対向電極のオーバーラップ面積(対向面が実際に重なり合う領域):0.10〜1.0mm
2(好ましくは0.20〜0.75mm
2)
(2)対向電極の電極間距離:0.05〜0.20mm(好ましくは0.06〜0.15mm)
(3)対向電極への印加電圧:0.1〜30.0V程度(好ましくは1.0〜20.0V程度)
【0052】
[第2センサ部30B]
(1)対向電極のオーバーラップ面積(対向面が実際に重なり合う領域):0.10〜0.80mm
2(好ましくは0.20〜0.75mm
2)
(2)対向電極の電極間距離:第1センサ部30Aと共通
(3)対向電極への印加電圧:0.1〜30.0V程度(好ましくは1.0〜20.0V程度)
【0053】
図4は本発明の第4態様のガスセンサの一実施形態の断面を模式的に示した図である。図において、
図1〜3と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0054】
すなわち、本第4態様のガスセンサ40は、第3態様のガスセンサ30とは、第2センサ部30Bの第2電極1Bと半導体ナノワイヤー集合物層2の触媒金属非担持部2Bとの間に、触媒金属非担持部2Bに接する触媒金属薄膜層3と触媒金属薄膜層3に隣接する絶縁薄膜層4を設けた点で相違する。すなわち、第2センサ部30Bに第1態様のガスセンサ10の構成を採用したものである。
【0055】
本第4態様のガスセンサ40では、例えば、ガスが有機ガスの場合、第1センサ部30Aは電流減少として現れる電流変化の信号を発生し、第2センサ部30Bは初期電流が小さいことで、半導体ナノワイヤーが有機ガスと反応して生じる電流減少方向の電流変化がさらに小さいために信号が検出されず、ガスが水素ガス等の無機ガスの場合、第1センサ部30Aは電流減少として現れる電流変化の信号を発生し、第2センサ部30Bは電流増加として現れる電流変化の信号を発生する。従って、有機ガスと無機ガスの両方を検出でき、しかも、有機ガスと無機ガスの判別も可能である。また、被検ガスが有機ガスと無機ガスの両方を含む場合に、有機ガスと無機ガスの両方を含むガスであることも判定できる。
【0056】
なお、本第4態様のガスセンサ40における第1センサ部30A及び第2センサ部30Bのセンサ感度向上のための対向電極間の電界強度を最適化するための各部の寸法および電気的条件の好適範囲は、第1センサ部30Aは第3態様のガスセンサ30の第1センサ部30Aと同じであり、第2センサ部30Bは、第2態様のガスセンサと同じである。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および実験例を示して本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
ガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:PMMA)
SeNW(平均直径:160nm、長さ:3.0〜4.5μm)、厚さが35μmの銅箔を用いた銅電極基板(銅箔/ガラスエポキシ基板)(2枚)、カーボン粉を含む導電性両面粘着テープ(電気抵抗:50Ω/inch
2)を用意した。
【0058】
一方の銅電極基板の銅箔表面に金メッキ(被膜厚さ:250nm)を施して第1電極とし、該電極表面の縦0.75mm×横0.75mmの正方形の領域に、導電性両面粘着テープを貼り付け、該導電性両面粘着テープの上にSeNWを散布してSeNW集合物層を形成した(単位面積当たりのSeNWの存在量:25μg/mm
2)。
【0059】
他方の銅電極基板の銅箔表面に金メッキ(被膜厚さ:250nm)を施して電2電極とし、該電極表面の縦0.75mm×横0.75mmの正方形の領域に、スピンコートによりPMMA薄膜(厚さ:1.24μm)を形成し、該PMMA薄膜に「PdPVPコロイドイソプロピルアルコール溶液」(田中貴金属工業株式会社製)0.2μLをマイクロシリンジで滴下して乾燥し、Pd薄膜層を形成した。
【0060】
第1電極上のSeNW集合物層と第2電極上のPd薄膜層が対向して接するように2つの銅電極基板を重ねてガスセンサを作製した。
【0061】
対向電極(第1電極と第2電極)に1.0Vの直流電圧を印加して、水素ガスを0.5L/minで流した。水素ガス濃度が500ppm、100ppm、50ppm、12.5ppm、5ppm、1ppmのときのそれぞれの電流変化を
図5(A)、(B)に示す。
図6はかかる電流変化の解析から得られた水素ガス濃度とセンサ信号強度(S)(=ΔI/I
0,ΔIはガス反応前の電流値I
0と反応時の電流値の最高値との差)との関係を表す。
図6から水素ガスを広い濃度範囲で検出し得ることがわかった。
【0062】
また、PMMA薄膜の厚さを変更して水素ガスの検出動作を行った。水素ガス濃度は500ppmとし、Pd薄膜層におけるPd粒子量(Pdコロイド溶液塗布量)は0.1μLと0.2μLの二つの条件とした。
図11はその際のPMMA薄膜の厚さとセンサの比抵抗との関係を示し、
図12はPMMA薄膜の厚さとセンサ信号強度(S)との関係を示す。
図11、12から、絶縁薄膜層の厚さが薄くなるとセンサの比抵抗が大きくなり、絶縁薄膜層の厚さが薄くなるとセンサ信号強度(S)が大きくなることがわかった。また、
図13、14はかかるガスセンサのI−V特性を示す。I−V特性は、非線形特性を示し、IがVの約2.5乗に比例しており、空間電荷制限電流領域にあることがわかった。
【0063】
(実施例2)
ガスセンサ(触媒金属薄膜層:Ptナノ粒子、絶縁薄膜層:PMMA)
「PdPVPコロイドイソプロピルアルコール溶液」(田中貴金属工業株式会社製)に代えて、「PtPVPコロイドエタノール溶液」(田中貴金属工業株式会社)を使用した以外は実施例1と同様にして、ガスセンサを作製した。
【0064】
対向電極間に1.0Vの直流電圧を印加して、水素ガスを対向電極間に0.5L/minで流した。水素ガス濃度が100ppm、200ppm、300ppm、500ppmのときのそれぞれの電流変化を
図7に示す。
図8はかかる電流変化の解析から得られた水素ガス濃度とセンサ信号強度(S)(=ΔI/I
0,ΔIはガス反応前の電流値I
0と反応時の電流値の最高値との差)との関係を表す。
図8から触媒金属薄膜層としてPt薄膜層を使用しても水素ガスを広い濃度範囲で検出し得ることがわかった。500ppmでは飽和が生じていることがわかった。
【0065】
(実施例3)
ガスセンサ(触媒金属薄膜層:Pdナノ粒子、絶縁薄膜層:マイカ)
第2電極表面に形成したPMMA薄膜の代わりに第2電極表面に導電性両面粘着テープを介してマイカを貼り付けてマイカの薄層(厚さ:4.1μm)を形成した以外は実施例1と同様にして、ガスセンサを作製した。
【0066】
対向電極間に20Vの直流電圧を印加して、対向電極間に濃度200ppmの水素ガスを0.5L/minで流して電流変化を観察し、また、濃度12.5ppmの水素ガスを0.5L/minで流して電流変化を観察した。その結果が、
図9(A)、(B)である。
図10はかかる電流変化の解析から得られた水素ガス濃度とセンサ信号強度(S)(=ΔI/I
0,ΔIはガス反応前の電流値I
0と反応時の電流値の最高値との差)との関係を表す。
図10から絶縁薄膜層としてマイカ薄層を使用しても水素ガスを広い濃度範囲で検出し得ることがわかった。
【0067】
また、対向電極間に20Vの直流電圧を印加して、対向電極間に濃度200ppmの一酸化炭素ガスを0.5L/minで流して電流変化を観察した。その結果が
図15である。一酸化炭素ガスに対しても検出信号が電流増加として現れ、一酸化炭素ガスを検出できることが確認できた。さらに、一酸化炭素ガスのガス濃度を50ppm、100ppm、175ppm、200ppm、300ppm、350ppmに変更して、電流変化を観察した。
図16は各濃度毎の電流変化の解析から得られた、一酸化炭素ガス濃度とセンサ信号強度(S)(=ΔI/I
0)との関係を表す。
図16はセンサ信号強度(S)の一酸化炭素ガスのガス濃度依存性を示し、一酸化炭素ガスも概ね50ppm〜350ppmのガス濃度の測定が可能であることが分かる。
【0068】
(実施例4)
厚さが35μmの銅箔を有する銅電極基板(銅箔/ガラスエポキシ基板)を用いて、共通電極(幅1.0mm、長さ8.0mm)とその両脇にガス流路(幅:1.20mm×深さ:0.23mm)を有する下側電極基板を作製した。共通電極の銅箔表面は金メッキ(被膜厚さ:250nm)を施した。
【0069】
厚さが35μmの銅箔を有する銅電極基板(銅箔/ガラスエポキシ基板)を用いて、幅0.5mm×長さ1.0mmの電極が0.7mm間隔で7個並列したアレイ型電極を有する上側電極基板を作製した。
【0070】
下側電極板の共通電極の表面(金メッキ皮膜)にカーボン粉を含む導電性両面粘着テープ(電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その上にSeNW(平均直径:160nm、長さ:3.0〜4.5μm)を散布して、SeNW集合物層を形成した(単位面積当たりのSeNWの存在量:25μg/mm
2)。
【0071】
上側電極基板のアレイ型電極の個々の電極の表面にPMMA薄膜(厚さ0.8μm)を形成した後、個々のPMMA薄膜表面に「PdPVPコロイドイソプロピルアルコール溶液」(田中貴金属工業株式会社製)を各0.2μL滴下後、乾燥してPd薄膜層を形成した。
【0072】
共通電極上のSeNW集合物層とアレイ型電極の個々の電極上のPd薄膜層が対向して接するように下側電極基板と上側電極基板を重ねて、
図2(A)及び
図2(B)に示す構造のガスセンサ、すなわち、アレイ型電極と共通電極との間にそれぞれがセンサ部となる7個の対向電極部を有するガスセンサを作製した。
【0073】
ガス流路の導入口に最も近い位置にあるガスセンサ部からガス流路の導入口からの離間距離が大きくなるガスセンサ部の順にdet1、2、3、・・・7とセンサ番号を付した。
【0074】
ガス流路に濃度700ppmと6000ppmの水素ガスを流速0.2L/minで流して、各センサ部の電流変化の時間変化スペクトルを測定した。
図17(A)は濃度700ppmの水素ガスを流したときのセンサ部det2、det4、det7の電流変化の時間変化スペクトルを示し、
図18(A)は濃度6000ppmの水素ガスを流したときのセンサ部det2、det4、det7の電流変化の時間変化スペクトルを示す。ガス導入、即ち、ガスON(gas on)とともに電流増加として現れ、ガスOFF(gas off)とともに元の電流値に戻ることがわかる。
【0075】
また、ガスONした直後の部分を拡大した
図17(B)、
図18(B)、および、さらにこれらを拡大した
図17(C)、
図18(C)から、水素ガスを導入した際の各センサ信号の立ち上がりの開始時間がセンサ部det2の開始時間との時間差として現れることがわかる。すなわち、センサ部det4のセンサ信号の立ち上がりの開始時間はセンサ部det2のそれよりも遅延し、センサ部det7のセンサ信号の立ち上がりの開始時間がセンサ部det4のそれよりもさらに遅延する。
【0076】
det2とdet4のセンサ信号の立ち上がりの開始時間の時間差Δt
2,4およびdet2とdet7のセンサ信号の立ち上がりの開始時間の時間差Δt
2,7の水素ガス濃度依存性を
図19に示す。
図19から、ガス濃度が高くなるにつれて、時間差が小さくなることがわかる。
【0077】
(実施例5)
厚さが35μmの銅箔を有する銅電極基板(銅箔/ガラスエポキシ基板)を用いて、共通電極(幅1.0mm、長さ8.0mm)とその両脇にガス流路(幅:1.00mm×深さ:0.23mm)を有する下側電極基板を作製した。共通電極の銅箔表面は金メッキ(被膜厚さ:250nm)を施した。
【0078】
厚さが35μmの銅箔を有する銅電極基板(銅箔/ガラスエポキシ基板)を用いて、幅0.15mm×長さ1.00mmの電極が0.30mm間隔で16個並列したアレイ型電極を有する上側電極基板を作製した。
【0079】
下側電極板の共通電極の表面(金メッキ皮膜)にカーボン粉を含む導電性両面粘着テープ(電気抵抗:50Ω/inch
2)を貼り付け、その上にSeNW(平均直径:160nm、長さ:3.0〜4.5μm)を散布して、SeNW集合物層を形成した(単位面積当たりのSeNWの存在量:25μg/mm
2)。
【0080】
下側電極基板のSeNW集合物層上の、上側電極基板のアレイ型電極のガス流路の導入口側から2、3番目の電極および8、9番目の電極が配置される部分に「PdPVPコロイドイソプロピルアルコール溶液」(田中貴金属工業株式会社製)をそれぞれ0.2μL滴下してSeNW集合物層内にしみ込ませることにより、SeNWの表面が触媒金属ナノ粒子で覆われた触媒金属担持部を作製した。
【0081】
共通電極上のSeNW集合物層にアレイ型電極が接するように下側電極基板と上側電極基板を重ねて、
図3に示す構造のガスセンサ、すなわち、アレイ型電極と共通電極との間にそれぞれがセンサ部となる16個の対向電極部を有するガスセンサを作製した。
【0082】
ガス流路の導入口に最も近い位置にあるガスセンサ部からガス流路の導入口からの離間距離が大きくなるガスセンサ部の順にdet1、2、3、・・・16とセンサ番号を付した。
【0083】
ガス流路に濃度6570ppmのアセトンガスを流速0.2L/minで流した後、続いて6000ppmの水素ガスを流速0.2L/minで流して、各センサ部の電流変化の時間変化スペクトルを測定した。
図20はセンサ部det1、det3、det6の電流変化の時間変化スペクトルを示す。アセトンガス導入、即ち、ガスON(gas on)とともにdet1、det3、det6の電流変化は、全て電流減少として現れ、 ガスOFF(gas off)とともに元の電流値に戻ることがわかる。水素ガス導入、即ち、ガスON(gas on)とともにdet1、det3、det6の電流変化は、det3のみが電流減少として現れ、ガスOFF(gas off)とともに元の電流値に戻ることがわかる。このように、触媒金属担持部のあるdet3と触媒金属担持部のないdet1とdet3により、アセトンガスと水素ガスを判別できる。