【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、本実施例における臨床試験プロトコールは、九州大学病院の臨床試験倫理審査委員会によって承認されて実施されたものであり、全ての患者から書面によるインフォームドコンセントを得て実施された。
【0056】
[実施例1]
1.細胞の調製
【0057】
樹状細胞(DC)、樹状細胞誘導キラーリンパ球(DAK)の前駆細胞は、末梢血単核球から採取した。具体的には有核細胞を赤血球から分離するいかなる方法も採用することができる。フィコール分画、つまりフィコール−パック(Ficoll−Paque、GE Healthcare、England)密度勾配または溶出を利用する方法が、一般的に使用される。
図1にヒト末梢血単核球からDC、DAKへの分化誘導培養方法の概略図を示す。なお、以下の「x日目」との記載は、各被験体より採血した日を「1日目」とした場合の日数を示す。
【0058】
成熟樹状細胞の誘導
[1日目]
(1)各被験体より採取された末梢血単核球を、X−VIVO(商標)15(Lonza、MD、USA)に懸濁し、T−175フラスコまたはT175フラスコ型UpCell(登録商標)(セルシード、日本)に入れた。
【0059】
(2)37℃ 5%CO
2インキュベータで120分静置した。
(3)インキュベータよりT−175フラスコを取り出し、タッピング及びピペッティングにて、非接着細胞(リンパ球)を回収し、1〜5×10
7個/mlになるようにケーエムバンカーII(コスモバイオ、日本)に加え懸濁し、クライオンチューブに分注し−80℃以下に冷凍保存した。
【0060】
(4)非接着細胞を除いた前記T−175フラスコ数個に、以下:
・1000IU/ml GM−CSF(Bayer HealthCare、Germany);及び
・1000IU/ml IL−4(CellGenix、Germany)
を含むDC培養用培地(CellGro(登録商標)DC;CellGenix、Germany)を加えた。
【0061】
(5)37℃ 5%CO
2インキュベータにて5日間培養した。
【0062】
[6日目:サイトカイン、KLH追加]
(6)以下:
・1000IU/ml GM−CSF(Bayer HealthCare、Germany)
・50ng/μl TNF−α(CellGenix、Germany);及び
・25μg/ml Keyhole Limpet Hemocyanin(KLH)(Merck Milliopore Darmstadt、Germany)、
を含むDC培養用培地(CellGro(登録商標)DC;CellGenix、Germany)を、前記T−175フラスコに加えた。
【0063】
(7)37℃ 5%CO
2インキュベータにて1日間培養した。
【0064】
[7日目:OK432添加]
(8)各T−175培養フラスコにピシバニール(OK432、中外製薬、日本)を0.1KE/mlずつ加えた。
(9)37℃ 5%CO
2インキュベータにて、6時間〜翌朝まで培養した。
【0065】
[7〜8日目:成熟化DCの回収]
(10)前記T−175培養フラスコから接着細胞を回収した。
【0066】
(11)回収した細胞懸濁液を含むコニカルチューブ数本を遠心し、ピペットにて上清を吸引した。PBSあるいはCellGro(登録商標)DCにて各々コニカルチューブのペレットを懸濁し、50mlコニカルチューブに移し、PBSあるいはCellGro(登録商標)DCにて40mlまでメスアップした。
(12)細胞浮遊液を100μmセルストレーナーでろ過し、遠心した(300g、4℃、5分)。
(13)225mlコニカルチューブにCellGro(登録商標)DCを加えて懸濁した。
【0067】
(14)回収された細胞のHLAに応じて、以下のいずれかの腫瘍抗原ペプチド(20μg/ml)(PolyPeptide Laboratories(San Diego,CA,USA)によって合成)を添加し37℃インキュベータに入れて、120分間インキュベートした。
・HLA−A*24:02陽性被験体用:
HLA−A*24:02拘束性RNF43ペプチド(RNF43−A24−9−721、アミノ酸配列:NSQPVWLCL)
・HLA−A*02:01陽性被験体用:
HLA−A*02:01拘束性RNF43ペプチド(RNF43−A02−10−11、アミノ酸配列:ALWPWLLMAT)
【0068】
(15)インキュベータから前記225mlコニカルチューブを取り出し、遠心して、上清を捨てた。
【0069】
(16−1)(15)により得られた細胞の一部(5×10
6個〜1.5×10
7個)をケーエムバンカーIIに懸濁し、クライオンチューブに入れ、超低温フリーザに保存した(なお、被験体に投与する際は、2%自己血清/生理食塩水または乳酸リンゲル液0.5〜1mlに懸濁して投与した。)。
【0070】
樹状細胞誘導キラーリンパ球(DAK)の誘導(DCによる刺激1回目)
[7〜8日目]
(16−2)以下を混合した培地を調製した:
・X−VIVO(商標)10(Lonza、MD、USA) 19ml;
・自己血清 1ml;
・IL−2(100IU/μl)(Novartis、Switzerland)20μl;及び
・IL−12(500pg/μl)(R&D Systems、Minneapolis、USA) 16μl
上記の1日目に保存したリンパ球(非接着細胞)を融解して洗浄し、1×10
8個のリンパ球と、5×10
6個の腫瘍抗原パルス樹状細胞(上記の(15)により得られた細胞)を、上記で調製した培地20mLとともにT75フラスコに加え、37℃、5%CO
2インキュベータにて培養した。
【0071】
[9〜10日目]
(17)以下:
・X−VIVO(商標)10 19ml;
・自己血清 1ml;
・IL−2(100IU/μl) 40μl;
・IL−12(500pg/μl) 16μl;
・IL−7(50ng/μl)(R&D Systems、Minneapolis、USA) 20μl;及び
・IL−15(50ng/μl)(Thermo Fisher Scientific、MA、USA) 20μl
を(19)のT75培養フラスコにさらに加え、37℃、5%CO
2インキュベータにて培養した。
【0072】
[13〜14日目]
(18)前記T75培養フラスコから、細胞懸濁液40mlを50mlコニカルチューブに回収し、遠心(300×g、4℃、5分)行った。上清を除去し、以下の組成を含む培地:
・X−VIVO(商標)10 19ml
・自己血清 1ml
・IL−2(100IU/μl) 40μl
・IL−12(500pg/μl) 16μl
・IL−7(50ng/μl) 10μl
・IL−15(50ng/μl) 10μl
を加えて懸濁し、元のT75フラスコに戻しインキュベータにて培養した。
【0073】
[14〜15日目]
(19)前記T−75培養フラスコをよくタッピング及びピペッティングした後、細胞懸濁液を50mlコニカルチューブに回収した。X−VIVO(商標)10 10mlで先のT75培養フラスコをリンスして先のコニカルチューブに回収した。遠心し(300×g、4℃、5分)上清を捨てた。
【0074】
投与用DAKの調製
(20−1)生理食塩水30mlに懸濁し遠心した(300×g、4℃、5分)。これを2回繰り返した。2mLの自己血清を添加した100mLの生理食塩水ボトル(2%自己血清/生理食塩水)を作製した。作製した2%自己血清/生理食塩水 20mLで上記ペレットを懸濁し、100μmセルストレーナーでろ過した。ろ過した細胞浮遊液を先の生理食塩水100mlボトルに入れて投与用DAKを調製した。
【0075】
樹状細胞誘導キラーリンパ球(DAK)の誘導(DCによる刺激2回目の場合)
(20−2)(19)のペレットを、X−VIVO10 10mlで懸濁し、新しいT75フラスコに加えた。凍結保存したDC(上記(18−1))5×10
6個を37℃のCellGro(登録商標)DC 9mlまたはX−VIVO(商標)10 9ml+自己血清1mlに融解し、遠心した(120×g、20℃、10分)。上清を捨て、X−VIVO(商標)10 20mlで懸濁し、再度遠心した(120×g、20℃、10分)。上清を捨て、X−VIVO(商標)10で2〜5×10
6個/2〜5mlに調整し、先のT75フラスコに加えX−VIVO(商標)10を全体量20mlになるように加えた(可能であれば、リンパ球数は0.8〜1.2×10
8個が望ましい。)。
【0076】
(21)さらにT−75フラスコにX−VIVO(商標)10 8.5ml+自己血清1.5ml+IL−2(100IU/μl)30μl+IL−12(500pg/μl)24μl+IL−7(50ng/μl)7.5μl+IL−15(50ng/μl)7.5μlを加え、37℃、5%CO
2インキュベータにて培養した。
【0077】
[16〜17日目]
(22)X−VIVO(商標)10 47.5ml+自己血清2.5ml+IL−2(100IU/μl)80μl+IL−12(500pg/μl)32μl+IL−7(50ng/μl)20μl+IL−15(50ng/μl)20μlを作製した。前記T−75培養フラスコをよくタッピング及びピペッティングした後、細胞を新しいT−175フラスコに移した。先のT−75培養フラスコを先の培地10mlで洗浄後、前記新しいT−175フラスコに加えた。この作業をもう一回繰り返した。残り30mlの培地を加え、37℃、5%CO
2インキュベータにて培養した。
【0078】
[19〜20日目]
(23)前記のT−175培養フラスコから細胞混濁液50ml(できるだけ上清)を50mlコニカルチューブに回収し、遠心した(300×g、4℃、5分)。上清を捨てX−VIVO(商標)10 28.5ml+自己血清1.5ml+IL−2(100IU/μl)60μl+IL−12(500pg/μl)24μl+IL−7(50ng/μl)15μl+IL−15(50ng/μl)15μlを加えて懸濁し、元のT−175培養フラスコに戻し、37℃、5%CO
2インキュベータにて培養した。
【0079】
[21〜22日目]
(24)前記T−175培養フラスコをよくタッピング及びピペッティングした後、細胞懸濁液を50mlコニカルチューブに回収した。X−VIVO(商標)10 20mlで先のT175培養フラスコをリンスして、先のコニカルチューブに回収し、遠心して(300×g、4℃、5分)、上清を捨てた。
【0080】
投与用DAK(DC刺激2回)の調製
(25−1)生理食塩水30mlに懸濁し遠心した(300×g、4℃、5分)。これを2回繰り返した。作製した2%自己血清/生理食塩水 20mLで上記ペレットを懸濁し、100μmセルストレーナーでろ過した。ろ過した細胞浮遊液を先の生理食塩水100mlボトルに入れて投与用DAKを調製した。
【0081】
樹状細胞誘導キラーリンパ球(DAK)の誘導(DCによる刺激3回目の場合)
(25−2)(24)のペレットを、X−VIVO(商標)10 10mlで懸濁し、新しいT75フラスコ2個に分注した(可能であれば、リンパ球数は0.8〜1.2×10
8個/フラスコが望ましい。)。凍結保存したDC(上記(18−1))5×10
6個2本それぞれを、37℃のCellGro(登録商標)DC 9mlまたはX−VIVO(商標)10 9ml+自己血清1mlに融解し、遠心した(120×g、20℃、10分)。上清を捨て、X−VIVO(商標)10 20mlでそれぞれ懸濁し、再度遠心した(120×g、20℃、10分)。上清を捨て、X−VIVO(商標)10で2〜5×10
6個/2〜5mlに調整し、先のT75フラスコに加えX−VIVO(商標)10を全体量20mlになるように加えた。
【0082】
(26)(25−2)のT−75フラスコの細胞懸濁液にX−VIVO(商標)10 8.5ml+自己血清1.5ml+IL−2(100IU/μl)30μl+IL−12(500pg/μl)24μl+IL−7(50ng/μl)7.5μl+IL−15(50ng/μl)7.5μlを加え、37℃、5%CO
2インキュベータにて培養した。
【0083】
[23〜24日目]
DAKの継代
(27)T−75フラスコの細胞懸濁液を各々T−175フラスコに移しX−VIVO10 47.5ml+自己血清2.5ml+IL−2(100IU/μl)80μl+IL−12(500pg/μl)32μl+IL−7(50ng/μl)20μl+IL−15(50ng/μl)20μlを加えた。
【0084】
[25〜26日目]
(28)前記の2つのT−175培養フラスコから細胞懸濁液40mlを50mlコニカルチューブに回収し、遠心した(300×g、4℃、5分)。培地X−VIVO(商標)10 38ml+自己血清2ml+IL−2(100IU/μl)80μl+IL−12(500pg/μl)32μl+IL−7(50ng/μl)20μl+IL−15(50ng/μl)20μlで懸濁し、元のT−175培養フラスコに戻した。
【0085】
[28〜29日目]
(29)前記2つのT−175培養フラスコをよくタッピング及びピペッティングした後、細胞懸濁液を6つの50mlコニカルチューブに回収した。X−VIVO(商標)10 20mlで先のT175培養フラスコをリンスして先のコニカルチューブに回収した。遠心し(300×g、4℃、5分)、上清を捨て、生理食塩水30mlでペレットを懸濁し、6本分の細胞を2本にまとめて遠心し(300×g、4℃、5分)、上清を捨てた。再度生理食塩水30mlで懸濁し、遠心し(300×g、4℃、5分)、上清を捨てた。
(30)2mLの自己血清を添加した100mLの生理食塩水ボトル(2%自己血清/生理食塩水)を作製した。作製した2%自己血清/生理食塩水 20mLで上記ペレットを懸濁し、100μmセルストレーナーでろ過した。ろ過した細胞浮遊液を先の生理食塩水100mlボトルに入れて投与用DAKを調製した。
【0086】
2.細胞表面分子の解析
上記1の(16−1)で得られた成熟樹状細胞の細胞表面分子の発現について、Hijikata Y.ら(PLoS One.2018 Jan 2;13(1):e0187878)に記載のフローサイトメーターを用いた方法によって解析した。
【0087】
図2は最終細胞加工物である成熟樹状細胞の細胞表面分子CD40、CD80、CD83、CD86、HLA−ABCおよびHLA−DRのそれぞれの発現を解析した図である。各パネルは解析の対象とする分子に特異的な抗体による染色を施した蛍光強度を示す。縦軸は樹状細胞マーカーCD11cの蛍光強度、横軸は各細胞表面分子の蛍光強度を示す。
【0088】
図3は10例のがん患者の末梢血単核球から作成した成熟DCの細胞表面分子の陽性率を棒グラフで示す。成熟マーカーの発現が高いことが示されている。
【0089】
図4は10例のがん患者のDAKの細胞表面分子CD3、CD8、CD45RAおよびCD62Lの発現率を示す。90%以上がT細胞であり、そのうち疲弊型のエフェクターT細胞は少なくメモリー型T細胞が多く存在する。
【0090】
3.患者への投与及び評価
上記1の方法によって、10例の癌患者(直腸結腸癌、肺小細胞癌、食道癌、子宮頸癌)のそれぞれから得た末梢血単核球より作製した成熟DC及びDAKを、
図5のスケジュールに沿って投与した。具体的には、以下のスケジュールで実施した。
(1)Day1:低用量のシクロフォスファミド(300mg/m
2)を投与
(2)Day6:DAKを静脈内投与
(3)Day6、13、20:成熟DC 1×10
7個を皮下投与
【0091】
その結果、SD(有効)症例では治療前と比べ、治療後に患者末梢血中のRNF43ペプチド特異的CD107a/b陽性CD3+CD8+細胞の増加が、PD症例と比べて高い傾向を示した(p=0.057)(
図6(A))。また、治療前と比べ、SD症例ではPD症例より治療後の患者末梢血中のRNF43ペプチド特異的IFN−γ陽性CD3+CD8+細胞の割合が有意に増加していた(p=0.046)(
図6(B))。
【0092】
[実施例2]
1.細胞の調製
以下に記載の手順以外は、基本的には実施例1と同様の手順を実施した。
【0093】
[7日目:OK432+プロスタグランジンE2添加]
(8)各T−175培養フラスコにピシバニール(OK432、中外製薬、日本)を2ml(0.1KE/ml)加え、さらにプロスタグランジンE2(PGE2、ナカライテスク、日本)を終濃度1μg/mLとなるように添加した。
(9)37℃ 5%CO
2インキュベータにて、3時間〜24時間培養した。
【0094】
2.結果
実施例1の方法で作製された成熟DCは、遊走能を示す表面マーカーCCR7の発現が低い(
図7及び8)。一般的な成熟DCの投与ルートである皮下接種では所属リンパ節に移動できるDCが、わずか数%程度しかなく非効率的である。そのためアフェレーシスで大量の成分採血を行ってDC細胞数を極端に増やして(平均1×10
7個)投与し、所属リンパ節にたどり着けるDC数を補う方法がとられる。
【0095】
そこで、我々は実施例1の方法を改良することによって、成熟化を阻害せずに遊走能のマーカーであるCCR7の発現を増強することに成功した。つまりday7にOK−432とプロスタグランジンE2(PGE2)1μg/mlを添加後、12〜24時間(実施例1の方法はOK−432のみ添加後24時間)後にDCを回収する(
図9及び
図10)。
【0096】
特注したUpCell(登録商標)(温度応答性細胞培養ディッシュ)を使って、末梢血単核球を培養するとDCの誘導効率が良い(
図11)。さらにPGE2を添加すると成熟化マーカーCD80は低下せず、CCR7の発現も上昇する(
図12及び13)。
【0097】
2例とも既存の細胞培養ディッシュよりUpCellのほうが樹状細胞マーカーCD11cの誘導効率が高い。またPGE2添加しても効率は悪くならない。
【0098】
顕微鏡写真でも樹状を認める細胞(DC)は細胞培養ディッシュよりもUpCell(登録商標)で培養した場合に多く認められる(
図14)。
【0099】
DCにOK−432を添加するとIL−12分泌能は24時間が最も高くなった(
図15)。しかしながら24時間ではDC遊走能の指標であるCCR7の発現が低下する(
図10)。OK−432にPEG2を追加するとIL−12分泌能はOK432単独に比べて低下するものの、分泌能はある程度維持されたままCCR7発現が増加する(
図10及び
図15)。以上を踏まえると、以下の2つの治療戦略を患者の状態に応じて適用し得る。
【0100】
1).表在リンパ節が大きく腫れていてエコー下穿刺が可能な患者には、実施例1に記載のDC製造法による成熟DC(抗原提示能が高く遊走能が低い)をリンパ節内投与する。
2).表在リンパ節が小さく穿刺注入できない患者にはPGE2を添加して遊走能を高め、DCを皮下接種し所属リンパ節に移動できるようにする。
【0101】
従来、癌ワクチンとしてはいわゆる正常の細胞にも発現しているが、腫瘍細胞に過剰発現している腫瘍関連抗原(tumor associatedantigens:TAA)を標的としてきた(HER2、MART−1、MUC1、チロシナーゼ、MAGE、NY−ESO−1等)。しかしほとんどの臨床試験結果では、標準療法と比較した場合に永続性のある結果は示されていない。一方で、体細胞DNA変異(非同義点突然変異、挿入−欠失(いわゆる「indel」)、遺伝子融合及び/又はフレームシフト変異)の結果発生する腫瘍特異的抗原であるネオ抗原は、典型的にはMHCへの高予測結合親和性を有しており、正常細胞にない蛋白配列を標的とし、胸腺での中枢性免疫寛容によるクローン消失を回避でき、高い有効性と安全性が期待できる。実際に、免疫チェックポイント阻害剤の有効性が腫瘍細胞における体細胞変異負荷との関連が示されている。
【0102】
実施例1及び2で得られる成熟DCは、以下の手順で同定されるネオ抗原ペプチドでパルスして、癌治療に用いることもできる。
【0103】
3.ネオ抗原(neoantigen)ペプチドの同定方法
患者腫瘍組織からDNA、RNAを抽出し次世代シーケンサによる解析(Whole exome sequencingとRNA sequencing)で変異タンパク質の同定とHLAタイピングを行う。
【0104】
ネオ抗原―MHC結合親和性を予測する。NetMHCpanなどを使った方法にて親和性の高い候補ペプチドを上位10個まで選ぶ。
【0105】
各ペプチドはDCのHLA親和性の違いからミックスしてパルスすると競合して抗原提示の際に競合してしまう。そのため、Day8に、選んだ各々ペプチドを、分配した成熟DCに各々パルスする(
図16)。
【0106】
2時間ペプチドパルスした各々のDCは一つのフラスコに再度集め、リンパ球と共培養する(DAKの製造)。