(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
商業施設やオフィスビルなどのような複数の空調対象空間を有する施設では、潜熱処理装置と顕熱処理装置とを備えた空調システムにより空調対象空間の空調を行う場合がある(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【0003】
上記特許文献1記載の空調システムには、室外空気を室内に供給すると共に室内空気を室外に排気する換気ユニットが上記潜熱処理装置として設けられており、この換気ユニットは、デシカントロータによる空気中の水分の吸脱着作用により室内へ供給される給気の除湿を行って潜熱負荷を処理するように構成されている。また、同文献記載の空調システムには、室内ユニットが上記顕熱処理装置として設けられており、この室内ユニットは、冷媒との熱交換により室内空気を冷却して顕熱負荷を処理することに加えて、その室内空気を冷却除湿して潜熱負荷を処理可能に構成されている。
【0004】
そして、このように構成された特許文献1記載の空調システムでは、冷房運転時の顕熱負荷と潜熱負荷とが共に大きい場合において、デシカントロータの脱着熱が室内に供給されることによる顕熱負荷の更なる増加を回避するために、換気装置におけるデシカントロータの水分の吸脱着作用による除湿運転を行わずに、顕熱処理装置としての室内ユニットにおける室内空気の冷却による除湿運転を行うように構成されている(特許文献1の段落0032,0033、及び
図3等を参照。)。
【0005】
上記特許文献2記載の空調システムには、室内空間の潜熱処理を主に行う調湿装置が上記潜熱処理装置として設けられており、この調湿装置は、吸着熱交換器で蒸発する冷媒によって吸着剤を冷却し、その吸着材に空気中の水分を吸着させることで、室内空間へ供給される給気の除湿を行って潜熱負荷を処理するように構成されている。また、同文献記載の空調システムには、室内空間の顕熱処理を主に行う空調機が上記顕熱処理装置として設けられており、この空調機は、上記圧縮冷凍サイクル運転を行うことで室内空間の冷暖房を行って顕熱負荷を処理することに加えて、冷媒との熱交換により室内空気を冷却除湿して潜熱負荷を処理可能に構成されている。
【0006】
そして、このように構成された特許文献2記載の空調システムでは、潜熱処理装置としての調湿装置により処理される潜熱処理量と、顕熱処理装置としての空調機により処理される潜熱処理量とを、全体の消費電力の最小化を図るように適切に制御するように構成されている(特許文献2の段落0109〜0123等を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
潜熱処理装置と顕熱処理装置とを備える空調システムでは、空調対象空間の在室人数が増加するなどの理由で、潜熱負荷が一時的に増加する場合には、その潜熱負荷を十分に処理して空調対象空間の快適性を維持するために、その増加に伴って潜熱処理装置の潜熱処理量を比較的大きなものに設定する必要性が生じる。
【0009】
例えば、上述した特許文献1記載の空調システムのように、冷房運転時の顕熱負荷と潜熱負荷とが共に大きい場合に顕熱処理装置のみで除湿運転を行って潜熱負荷を処理するものであっても、同文献の段落0030,0034、
図3に記載されているように、顕熱負荷が比較的小さい場合には、通常どおり潜熱処理装置のみで、潜熱負荷を処理することになり、その際に、その潜熱負荷が一時的に増加すると、それに伴って潜熱処理装置の潜熱処理量を比較的大きなものに設定することになる。
一方、上述した特許文献2記載の空調システムのように、全体の消費電力の最小化を目的として、潜熱処理装置の潜熱処理量と顕熱処理装置の潜熱処理量とを制御するものについても、潜熱負荷の大小に関係なく、当該潜熱負荷に対する潜熱処理装置側の負担割合が決定されることから、潜熱処理装置の潜熱処理量を比較的大きなものに設定する必要性が生じる。
【0010】
このように潜熱処理装置の潜熱処理量を比較的大きなものに設定して空調対象空間の快適性を維持するためには、潜熱処理装置の潜熱処理能力を、このような一時的な潜熱負荷の増加にも対応可能なように大きめに余裕をもって決定する必要があり、これにより潜熱処理装置の大型化及び省エネルギー性の悪化が懸念される。また、潜熱処理装置が冷却除湿を行って潜熱負荷を処理するものあっても、潜熱処理能力を大きくするために冷却温度を極端に下げる必要性が生じるので、省エネルギー性の悪化が懸念される。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、空調対象空間の潜熱処理を行う潜熱処理装置と、空調対象空間の顕熱処理を行う顕熱処理装置とを備えた空調システムにおいて、潜熱処理装置の小型化且つ省エネルギー化を実現しながら、当該空調対象空間の快適性を維持することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は、空調対象空間の潜熱処理を行う潜熱処理装置と、空調対象空間の顕熱処理を行う顕熱処理装置とを備えた空調システムであって、
前記顕熱処理装置が、空調対象空間の潜熱処理を実行可能に構成され、
空調対象空間の潜熱負荷に対して前記潜熱処理装置の潜熱処理能力に不足分が生じる潜熱処理能力不足状態の発生を検出する潜熱処理能力不足検出手段と、
前記潜熱処理能力不足検出手段で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に、前記顕熱処理装置に潜熱処理を実行させて、前記不足分を前記顕熱処理装置の潜熱処理能力で補完する潜熱補完処理手段を備え
、
前記潜熱処理が、空気を除湿して空調対象空間に供給する除湿処理であると共に、
前記顕熱処理が、冷媒との熱交換により空気を冷却して空調対象空間に供給する冷房処理であり、
前記顕熱処理装置が、前記除湿処理として、冷房処理時の空気流量を低下させて空気の冷却温度を低下させる空気流量減少処理、及び、冷房処理時の冷媒流量を増加させて空気の冷却温度を低下させる冷媒流量増加処理を実行可能に構成されており、
前記潜熱補完処理手段が、前記潜熱処理能力不足検出手段で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に、前記空気流量減少処理を前記冷媒流量増加処理よりも優先して実行させる点にある。
【0013】
本構成によれば、潜熱処理能力不足検出手段で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に、潜熱補完処理手段が作動して、空調対象空間の潜熱負荷に対する潜熱処理装置の潜熱処理能力の不足分を顕熱処理装置による潜熱処理により補完することができる。このことで、潜熱処理装置の潜熱処理能力をできるだけ低く抑えて、当該潜熱処理装置の小型化且つ省エネルギー化を実現しながら、空調対象空間の潜熱負荷を潜熱処理装置と顕熱処理装置とが協調して十分に処理して潜熱処理能力不足状態を解消し、当該空調対象空間の快適性を得ることができる。
更に、本構成によれば、潜熱処理装置により潜熱処理として除湿処理を実行し、顕熱処理装置により顕熱処理として冷房処理を実行する場合において、同顕熱処理装置に対して、空気流量を減少する空気流量減少処理又は冷媒流量を増加する冷媒流量増加処理を実行するという簡単且つ合理的な構成で、冷媒の冷却温度を露点以下に低下させて空気を除湿する除湿処理を潜熱処理として実行させることができる。
更に、本構成によれば、潜熱処理能力不足状態の検出時において顕熱処理装置に対して除湿処理を実行させるにあたり、冷媒流量の増加を伴わない空気流量減少処理を、冷媒流量の増加を伴う冷媒流量増加処理よりも優先して実行させるので、熱源機から顕熱処理装置への冷媒の搬送動力の増加をできるだけ抑制して、省エネルギー性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、前記潜熱処理装置が、処理後の空調空気を複数の空調対象空間に分配供給するものとして構成されていると共に、
前記顕熱処理装置が、当該複数の空調対象空間の夫々に配置されて、当該配置された空調対象空間に処理後の空調空気を供給するものとして構成され、
前記潜熱処理能力不足検出手段が、前記複数の空調対象空間のうち前記潜熱処理能力不足状態となる空調対象空間を潜熱処理能力不足空間として特定し、
前記潜熱補完処理手段が、前記特定された潜熱処理能力不足空間に設置された前記顕熱処理装置に潜熱処理を実行させる点にある。
【0015】
本構成によれば、潜熱処理装置が空調空気を分配供給する複数の空調対象空間の夫々に顕熱処理装置を配置した構成において、複数の空調対象空間のうちの一部の潜熱処理能力不足空間で潜熱処理能力不足状態が生じる場合であっても、当該潜熱処理能力不足空間を特定し、その潜熱処理能力不足空間に設置された顕熱処理装置に潜熱処理を実行させることができる。このことで、潜熱処理装置の潜熱処理能力をできるだけ低く抑えて、当該潜熱処理装置の大型化及び省エネルギー性悪化を抑制することができる。更に、一部の潜熱処理能力不足空間において、潜熱処理能力の不足分を当該潜熱処理能力不足空間に設置された顕熱処理装置による潜熱処理により補完して、潜熱処理能力不足状態を解消し、快適性を得ることができると共に、潜熱処理能力不足空間以外の空調対象空間においても、潜熱処理装置による過剰な潜熱処理を抑制して、快適性の悪化を防止することができる。
【0020】
本発明の第
3特徴構成は、前記潜熱補完処理手段が、前記潜熱処理能力不足検出手段で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に前記空気流量減少処理を実行し、当該空気流量減少処理の実行中に前記空調対象空間の温度が所定の閾値温度以上となる場合に前記空気流量減少処理を停止して前記冷媒流量増加処理を実行する点にある。
【0021】
本構成によれば、空気流量減少処理の実行により顕熱処理装置から空調対象空間への冷風の供給量が減少することで、当該冷風が供給される空調対象空間の温度が閾値温度以上になった場合には、当該空気流量減少処理を停止して、冷風の供給量の減少を伴わない冷媒流量増加処理を実行することができる。このことで、空調対象空間の閾値温度以上の温度上昇を抑制しながら、潜熱処理装置の潜熱処理能力の不足分を顕熱処理装置の潜熱処理能力で補完することができる。
【0022】
本発明の第
4特徴構成は、前記潜熱補完処理手段が、前記潜熱処理能力不足検出手段で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に前記空気流量減少処理を実行し、当該空気流量減少処理の実行中に前記空調対象空間の湿度が所定の閾値湿度以上となる場合に前記空気流量減少処理の実行を継続しながら前記冷媒流量増加処理を実行する点にある。
【0023】
本構成によれば、潜熱処理能力不足状態の検出時において、空気流量減少処理の実行中に、空調対象空間の湿度が閾値湿度以上となって十分に低下しない場合に、その空気流量減少処理に加えて冷媒流量増加処理が並行して実行されて、流量が減少された空気が、流量が増加された冷媒との熱交換により、十分に露点以下に冷却されて除湿されるので、顕熱処理装置から十分に湿度が低い空気を空調対象空間に供給して、空調対象空間の湿度低下を促進させて、当該空調対象空間における潜熱処理能力不足状態を確実且つ早期に解消することができる。
本発明の第5特徴構成は、前記顕熱処理が、冷媒としての冷却水との熱交換により空気を冷却して空調対象空間に供給する冷房処理であり、
前記顕熱処理装置が、前記除湿処理として、冷房処理時の冷却水流量を増加させて空気の冷却温度を低下させる冷却水量増加処理を前記冷媒流量増加処理として実行可能、且つ、冷房処理時の冷却水温度を低下させて空気の冷却温度を低下させる冷却水温度低下処理を実行可能に構成され、
前記潜熱補完処理手段が、前記潜熱処理能力不足検出手段で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に、前記冷却水量増加処理を前記冷却水温度低下処理よりも優先して実行させる点にある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
本発明に係る空調システムの第1実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す空調システム100は、商業施設やオフィスビルなどのような複数の空調対象空間Rを有する施設に設けられ、主に空調対象空間Rの潜熱処理を行う潜熱処理装置10と、主に空調対象空間R(
図1では2つの空調対象空間Rを例示している。)の顕熱処理を行う顕熱処理装置20と、これら処理装置10,20の運転を制御する制御装置40とが備えられている。
【0026】
潜熱処理装置10は、給気ファン11の送風動力により屋外Oから取り込んだ外気OAを給気SAとして給気ダクト1を通じて複数の空調対象空間Rに分配供給すると共に、排気ファン13の送風動力により複数の空調対象空間Rから排気ダクト2を通じて取り込んだ室内空気RAを排気EAとして屋外Oに排出するように構成されている。
【0027】
更に、潜熱処理装置10は、外気OAを除湿処理して処理後の空調空気を複数の空調対象空間Rに供給可能なデシカントロータ14を備えたデシカント式の除湿装置として構成されている。
【0028】
具体的には、潜熱処理装置10では、屋外Oから取込んだ外気OAを、デシカントロータ14に通流させて水分をデシカントロータ14に吸着させることで設定湿度に除湿する所謂除湿処理(潜熱処理の一例)が実行される。また、この除湿後の外気OAはデシカントロータ14の吸着熱により昇温していることから、同外気OAは、冷却コイル12に通流されて、チラー30から供給された低温の冷却水CW(冷媒の一例)との熱交換により冷却される。そして、この冷却後の外気OAは、給気SAとして給気ダクト1を通じて複数の空調対象空間Rに分配供給される。
【0029】
一方、潜熱処理装置10では、複数の空調対象空間Rから排気ダクト2を通じて取込んだ室内空気RAは、適宜再生器15で加熱された上でデシカントロータ14に通流される。このことで、デシカントロータ14に含まれる水分が放出されて、当該デシカントロータ14が再生される。そして、その水分を含んだ室内空気RAは、排気EAとして屋外Oに排出される。
尚、本実施形態では、潜熱処理装置10をデシカント式の除湿装置として構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、外気OAを露点以下に冷却して除湿する冷却式の除湿装置として構成しても構わない。
【0030】
一方、顕熱処理装置20は、複数の空調対象空間Rの夫々に個別に配置され、室内空気RAを冷却処理し当該処理後の空調空気を空調対象空間Rに供給するファンコイルユニットとして構成されている。
【0031】
具体的には、顕熱処理装置20では、ファン21の送風動力により空調対象空間Rから取り込んだ室内空気RAを、冷却コイル22に通過させて、チラー35から供給された低温の冷却水CW(冷媒の一例)との熱交換により設定温度に冷却する所謂冷房処理(顕熱処理の一例)が実行される。そして、この冷却後の室内空気RAは、給気SAとして空調対象空間Rに供給される。
【0032】
更に、この顕熱処理装置20では、制御装置40からの指令により、冷却コイル22において室内空気RAを設定温度よりも低い露点以下に冷却することで除湿する所謂除湿処理(潜熱処理の一例)が実行される。詳細については後述するが、この顕熱処理装置20が実行する除湿処理としては空気流量減少処理及び冷却水量増加処理(冷媒流量増加処理の一例)があり、これら夫々の処理が単独で又は並行して実行可能に構成されている。
【0033】
顕熱処理装置20において実行される上記空気流量減少処理は、例えばファン21の送風量を通常時の設定送風量よりも小さい潜熱処理用送風量に設定する形態で、冷房処理時の空気流量を低下させて、冷却コイル22による空気の冷却温度を低下させる処理である。
このような空気流量減少処理を実行することで、顕熱処理装置20では、冷却コイル22において冷却水CWにより冷却される室内空気RAの流量が減少するので、当該室内空気RAの冷却後の温度(冷却温度)が低下することになる。そして、その室内空気RAの冷却温度が同空気の露点以下となることで、当該室内空気RAを冷却除湿して空調対象空間Rに給気SAとして供給することができる。
【0034】
顕熱処理装置20において実行される上記冷却水量増加処理は、例えば冷却コイル22への冷却水供給量を調整可能な調整弁23の開度を拡大する形態で、冷房処理時の冷却水流量(冷媒流量)を増加させて、冷却コイル22による空気の冷却温度を低下させる処理である。
【0035】
このような冷却水量増加処理を実行することで、顕熱処理装置20では、冷却コイル22において室内空気RAを冷却するための冷却水CWの流量が増加するので、当該室内空気RAの冷却後の温度(冷却温度)が低下することになる。そして、その室内空気RAの冷却温度が同空気の露点以下となることで、当該室内空気RAを冷却除湿して空調対象空間Rに給気SAとして供給することができる。
【0036】
各空調対象空間Rには、実際の室内温度(乾球温度)を計測する温度センサ24と、実際の室内湿度(相対湿度)を計測する湿度センサ25とが設けられている。尚、一の空調対象空間Rにおける温度センサ24や湿度センサ25の設置個数については、
図1では夫々1個のみを設置した状態を記載しているが、夫々複数個を設置しても構わない。また、複数個を設置する場合には、各検出値の平均値や代表値を計測値として扱うことができる。
【0037】
そして、制御装置40は、これら温度センサ24及び湿度センサ25の計測結果を利用して潜熱処理装置10及び顕熱処理装置20の運転制御を実行する手段として機能し、更には、潜熱処理能力不足検出手段41及び潜熱補完処理手段42としても機能する。
即ち、潜熱処理能力不足検出手段41は、空調対象空間Rの潜熱負荷に対して潜熱処理装置10の潜熱処理能力に不足分が生じる潜熱処理能力不足状態の発生を検出する手段として構成されている。また、潜熱補完処理手段42は、潜熱処理能力不足検出手段41で潜熱処理能力不足状態を検出した場合に、顕熱処理装置20に潜熱処理を実行させて、潜熱処理装置10の潜熱処理能力に不足分を顕熱処理装置20の潜熱処理能力で補完する手段として構成されている。
【0038】
そして、本実施形態の空調システム100は、このような潜熱処理能力不足検出手段41及び潜熱補完処理手段42を備えることで、潜熱処理装置10の小型化且つ省エネルギー化を実現しながら、空調対象空間Rの快適性を維持することができる。
以下、潜熱処理能力不足検出手段41及び潜熱補完処理手段42の詳細構成に加えて、これら手段41、42として機能する制御装置40が実行する運転制御フローの詳細について、
図2を参照して説明を加える。
【0039】
先ず、制御装置40は、初期設定(ステップ#01)を行って、後述する各種処理において利用される設定温度(閾値温度の一例)や設定湿度(閾値湿度の一例)等を設定する。そして、潜熱処理装置10による潜熱処理(除湿)並びに顕熱処理装置20による顕熱処理(冷房)を開始する(ステップ#02)。このことで、潜熱処理装置10で除湿された給気SAが各空調対象空間Rに分配供給されると共に、各空調対象空間Rでは、顕熱処理装置20により室内空気RAが設定温度に冷却されることになる。
【0040】
このように潜熱処理装置10及び顕熱処理装置20の運転を開始すると、潜熱処理能力不足検出手段41は、各空調対象空間Rの室内湿度を湿度センサ25により計測する(ステップ#03)。そして、湿度センサ25により計測される室内湿度が所望の目標湿度を上回る状態を潜熱処理能力不足状態として、当該複数の空調対象空間Rのうち潜熱処理能力不足状態となる空調対象空間Rを潜熱処理能力不足空間R1(
図1では右側の空調対象空間Rを潜熱処理能力不足空間R1としている。)として特定する形態で、当該潜熱処理能力不足空間R1の有無を判定する(ステップ#04)。
【0041】
上記潜熱処理能力不足空間R1が存在しない判定された場合(ステップ#04のNo)には、後述するような潜熱補完処理手段42が作動することはなく本フローは終了される。しかし、上記潜熱処理能力不足空間R1が存在すると判定された場合(ステップ#04のYes)には、潜熱補完処理手段42が作動し、潜熱処理能力不足空間R1に設置された顕熱処理装置20に対して、上述した空気流量減少処理及び冷却水量増加処理の少なくとも一方の潜熱処理を実行させる。
【0042】
ここで、潜熱補完処理手段42は、詳細については後述するが、潜熱処理能力不足空間R1に設置された顕熱処理装置20に対して潜熱処理を実行させるにあたり、上記空気流量減少処理を上記冷却水量増加処理よりも優先して実行させるように構成されている。この構成により、チラー35から顕熱処理装置20への冷却水CWの搬送動力の増加を伴う冷却水量増加処理の実行頻度が抑制され、省エネルギー性が向上することになる。
【0043】
具体的には、上記潜熱処理能力不足空間R1があると判定した場合(ステップ#04のYes)には、潜熱処理能力不足空間R1に設置された顕熱処理装置20に空気流量減少処理を実行させる(ステップ#12)。すると、当該顕熱処理装置20の冷却コイル22において冷却水CWにより冷却される空気流量が減少することで当該空気の冷却温度が低下し、給気SAの冷却除湿が図られることになる。
【0044】
そして、潜熱処理能力不足空間R1において、顕熱処理装置20による空気流量減少処理の実行中に、湿度センサ25により計測される室内湿度が第1設定湿度以下となった場合(ステップ#13のYes)には、潜熱処理能力不足空間R1における潜熱処理能力不足状態が解消されたとして、実行中の空気流量減少処理を終了する(ステップ#11)。そして、上述したステップ#03の前に戻り、ステップ#03の室内湿度の計測とステップ#04の潜熱処理能力不足空間R1の有無の判定が再度行われる。
【0045】
逆に、空気流量減少処理の実行中に、湿度センサ25により計測された室内湿度が第1設定湿度以下とならなかった場合(ステップ#13のNo)には、設定温度及び第2設定湿度に対する室内温度及び室内湿度の状態に関する判定(ステップ#14及びステップ#15)を行う。
そして、温度センサ24により計測される室内温度が設定温度以上ではない場合(ステップ#14のNo)で、且つ、湿度センサ25により計測される室内湿度が、ステップ#13の判定で利用される第1設定湿度よりも若干大きめに設定された第2設定湿度以上でない場合(ステップ#15のNo)には、ステップ#12の前に戻って実行中の空気流量減少処理を継続し、更なる湿度低下を図ることになる。
【0046】
ここで、設定温度や設定湿度は、空調対象空間Rの快適性を維持できる温度や湿度として設定されている。更に、ステップ#13の判定で利用する第1設定湿度は、ステップ#04で潜熱処理能力不足状態の判定に利用した目標湿度よりも若干小さめの値として設定されている。このことにより、ステップ#11により空気流量減少処理の終了直後に、ステップ#04により同じ潜熱処理能力不足空間R1において潜熱処理能力不足状態が検出されて空気流量減少処理が再開されるという所謂ハンチング状態が回避されている。
【0047】
一方、空気流量減少処理の実行中に、湿度センサ25により計測された室内湿度が第1設定湿度以下とならなかった場合(ステップ#13のNo)において、温度センサ24により計測される室内温度が設定温度以上である場合(ステップ#14のYes)には、空気流量減少処理の実行により顕熱処理装置20の顕熱処理能力が低下したことで、潜熱処理能力不足空間R1の室内温度が快適性を維持する設定温度以上に上昇したことが考えられる。よって、この場合には、実行中の空気流量減少処理を終了(ステップ#22)した上で、潜熱処理能力不足空間R1に設置された顕熱処理装置20に冷却水量増加処理を実行させる(ステップ#23)。すると、当該顕熱処理装置20の冷却コイル22では、冷却水CWにより冷却される空気流量が増加されて元の流量に戻るが、冷却水CWの流量が増加することで当該空気の冷却温度が低下し、給気SAの冷却除湿が図られることになる。
【0048】
温度センサ24により計測される室内温度が設定温度以上でない場合(ステップ#14のNo)において、湿度センサ25により計測される室内湿度が第2設定湿度以上である場合(ステップ#15のYes)には、顕熱処理装置20における更なる除湿能力の拡大を図るべく、空気流量減少処理を実行したまま、潜熱処理能力不足空間R1に設置された顕熱処理装置20に冷却水量増加処理を実行させる(ステップ#23)。すると、当該顕熱処理装置20の冷却コイル22では、冷却水CWにより冷却される空気流量が減少された状態を維持したまま、冷却水CWの流量が増加することになる。このことで、当該冷却コイル22において、空気の冷却温度が一層低下し、給気SAの冷却除湿が一層図られることになる。
【0049】
この冷却水量増加処理の実行中に、湿度センサ25により計測された室内湿度が第3設定湿度以下とならなかった場合(ステップ#25のNo)には、ステップ#23の前に戻って実行中の冷却水量増加処理等を継続し、更なる湿度低下を図ることになる。
また、冷却水量増加処理の実行中に、湿度センサ25により計測された室内湿度が第3設定湿度以下となった場合(ステップ#25のYes)には、実行中の冷却水量増加処理を終了し(ステップ#21)、上述したステップ#13の前に戻り、ステップ#13〜ステップ#15を実行して空気流量減少処理の実行の要否を判断することになる。
【0050】
ここで、ステップ#25の判定で利用する第3設定湿度は、ステップ#13の判定で利用する第1設定湿度よりも大きく、且つ、ステップ#15の判定で利用する第2設定湿度よりも小さい範囲内に設定されている(即ち、第1設定湿度<第3設定湿度<第2設定湿度の関係を有する。)。これにより、ステップ#15において室内湿度が第2設定湿度以上と判定されて(ステップ#15のYes)、冷却水量増加処理を開始(ステップ#23)した直後に、ステップ#25において室内湿度が第3設定湿度以下と判定されて(ステップ#25のYes)、当該冷却水量増加処理が終了(ステップ#21)されてしまうことを回避することができる。更に、ステップ#25において室内湿度が第3設定湿度以下と判定されて(ステップ#25のYes)、冷却水量増加処理を終了(ステップ#21)した直後に、ステップ#13において室内湿度が第1設定湿度以下と判定されて(ステップ#13のYES)、空気流量減少処理が継続されることなく終了(ステップ#11)されてしまうことも回避することができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、顕熱処理装置20が実行可能な潜熱処理として、空気流量減少処理及び冷却水量増加処理の少なくとも一方を実行するように構成したが、これらの処理とは別の潜熱処理を顕熱処理装置にて実行可能に構成しても構わない。例えば、このような顕熱処理装置20により実行可能な潜熱処理としては、チラー35から顕熱処理装置20の冷却コイル22に供給される冷却水CWの温度を低下させて、冷却コイル22による空気の冷却温度を低下させる冷却水温度低下処理を挙げることができる。
以下、本発明に係る空調システムの第2実施形態として、空気流量減少処理、冷却水量増加処理、及び冷却水温度低下処理を顕熱処理装置20が実行する場合の構成について、説明する。
【0052】
本実施形態の空調システムは、基本構成については上記第1実施形態の空調システム100(
図1参照)と同じであるため説明は割愛するが、顕熱処理装置20が、空気流量減少処理、冷却水量増加処理、及び冷却水温度低下処理の夫々を単独で又は並行して実行可能に構成されている。この構成により、空気流量減少処理や冷却水量量増加処理を実行しても潜熱処理能力不足空間R1における潜熱処理能力不足状態が解消されなかった場合であっても、冷却水温度低下処理を実行して、当該潜熱処理能力不足状態を確実に解消することができる。
【0053】
更に、潜熱処理能力不足検出手段41で潜熱処理能力不足状態を検出した場合には、上記空気流量減少処理を上記冷却水量増加処理よりも優先して実行させ、更には、上記冷却水量増加処理を上記冷却水温度低下処理よりも優先して実行させる。この構成により、チラー35から顕熱処理装置20への冷却水CWの搬送動力の増加を伴う冷却水量増加処理の実行頻度が抑制されると共に、チラー35の冷却負荷の増加や冷却水CWの搬送配管での放熱量の増加を伴う冷却水温度低下処理の実行頻度が更に抑制されるので、省エネルギー性が向上することになる。
【0054】
以下、このように構成した場合の制御装置40が実行する運転制御フローの詳細について、
図3を参照して説明を加える。尚、上記第1実施形態で説明したものと同様のステップについては、同じ符号を付し、説明は割愛する場合がある。
【0055】
冷却水量増加処理の実行中に、湿度センサ25により計測される室内湿度が、ステップ#25の判定で利用される第3設定湿度よりも若干大きめに設定された第4設定湿度以上でない場合(ステップ#24のNo)において、同室内湿度が第3設定湿度以下とならなかった場合(ステップ#25のNo)には、ステップ#23の前に戻って実行中の冷却水量増加処理等を継続し、更なる湿度低下を図ることになる。
また、冷却水量増加処理の実行中に、同じく湿度センサ25により計測される室内湿度が第4設定湿度以上でない場合(ステップ#24のNo)において、同室内湿度が第3設定湿度以下となった場合(ステップ#25のYes)には、実行中の冷却水量増加処理を終了し(ステップ#21)、上述したステップ#13の前に戻り、ステップ#13〜ステップ#15を実行して空気流量減少処理の実行の要否を判断することになる。
【0056】
一方、冷却水量増加処理の実行中に、湿度センサ25により計測される室内湿度が第4設定湿度以上である場合(ステップ#24のYes)には、顕熱処理装置20における更なる除湿能力の拡大を図るべく、当該冷却水量増加処理を実行したまま、潜熱処理能力不足空間R1に設置された顕熱処理装置20に冷却水温度低下処理を実行させる(ステップ#32)。すると、当該顕熱処理装置20の冷却コイル22では、冷却水CWの流量が増加された状態を維持したまま、冷却水CWの温度が低下することになるので、当該空気の冷却温度が一層低下し、給気SAの冷却除湿が一層図られることになる。
【0057】
そして、このように冷却水温度低下処理の実行中に、湿度センサ25により計測された室内湿度が第5設定湿度以下とならなかった場合(ステップ#33のNo)には、ステップ#32の前に戻って実行中の冷却水温度低下処理等を継続し、更なる湿度低下を図ることになる。
一方、冷却水温度低下処理の実行中に、湿度センサ25により計測された室内湿度が第5設定湿度以下となった場合(ステップ#33のYes)には、実行中の冷却水温度低下処理を終了し(ステップ#31)、上述したステップ#23の前に戻り、ステップ#24〜ステップ#25を実行して冷却水量増加処理の実行の要否を判断することになる。
【0058】
ここで、ステップ33の判定で利用する第5設定湿度は、ステップ#25の判定で利用する第3設定湿度よりも大きく、且つ、ステップ#24の判定で利用する第4設定湿度よりも小さい範囲内に設定されている(即ち、第3設定湿度<第5設定湿度<第4設定湿度の関係を有する。)。これにより、ステップ#24において室内湿度が第4設定湿度以上と判定されて(ステップ#24のYes)、冷却水温度低下処理を開始(ステップ#32)した直後に、ステップ#33において室内湿度が第5設定湿度以下と判定されて(ステップ#33のYes)、当該冷却水温度低下処理が終了(ステップ#31)されてしまうことを回避することができる。更に、ステップ#33において室内湿度が第5設定湿度以下と判定されて(ステップ#33のYes)、冷却水温度低下処理を終了(ステップ#31)した直後に、ステップ#25において室内湿度が第3設定湿度以下と判定されて(ステップ#25のYES)、冷却水量増加処理が継続されることなく終了(ステップ#21)されてしまうことも回避することができる。
【0059】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、潜熱処理装置10や顕熱処理装置20に供給する冷媒として冷却水CWを利用する例を説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、別の冷媒を利用しても構わない。
【0060】
(2)上記実施形態では、潜熱処理装置10に冷却水CWを供給するチラー30と、顕熱処理装置20に冷却水CWを供給するチラー35とを別のものとして構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、同じチラーから冷却水を潜熱処理装置10及び顕熱処理装置20に供給するように構成しても構わない。また、このように同じチラーから冷却水を供給する場合には、潜熱処理装置10からの戻り冷却水を顕熱処理装置20の往き冷却水として利用したり、顕熱処理装置20からの戻り冷却水を潜熱処理装置10の往き冷却水として利用するなどのような所謂カスケード方式を採用しても構わない。
【0061】
(3)上記実施形態では、潜熱処理能力不足空間R1において、空気流量減少処理の実行中において、当該空間R1の室内湿度や室内温度を用いて、その空気流量減少処理よりも優先順位が低い冷却水量増加処理や冷却水温度低下処理を実行させるか否かを決定したが、他の形態で決定しても構わず、例えば、一定時間以上継続して空気流量減少処理が実行された場合には、優先順位が低い冷却水量増加処理や冷却水温度低下処理を実行するように構成しても構わない。
【0062】
(4)上記実施形態では、空気を除湿して空調対象空間Rに供給する除湿処理を潜熱処理とし、冷媒との熱交換により空気を冷却して空調対象空間Rに供給する冷房処理を顕熱処理としたが、空気を加湿して空調対象空間Rに供給する加湿処理を潜熱処理とし、温媒との熱交換により空気を加熱して空調対象空間Rに供給する暖房処理を顕熱処理とした場合でも、本発明の空調システムを採用することができる。
【0063】
(5)上記実施形態では、複数の空調対象空間Rを有する場合に、潜熱処理装置10がこれら複数の空調対象空間Rに給気SAを分配供給すると共に、夫々の空調対象空間Rに顕熱処理装置20を配置する例を説明したが、単一の空調対象空間Rに対して潜熱処理装置及び顕熱処理装置を配置する場合であっても、本発明の空調システムを採用することができる。
【0064】
(6)上記実施形態では、潜熱処理装置10を、デシカント式の除湿装置として構成したが、空気を露点以下に冷却して除湿する冷却除湿式を採用しても構わない。