(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール材は、前記注入ステップで注入された前記接着剤を、前記補強材から前記外板にかけてテーパ形状に形成させることを特徴とする請求項1に記載の接着剤の注入方法。
前記シール材は、可撓性であり、前記注入ステップで前記接着剤が注入されるにつれて、前記隙間の外側に膨らむように変形することを特徴とする請求項2に記載の接着剤の注入方法。
前記注入ステップでは、隣接する前記貫通孔から吸引し、前記接着剤を注入している前記貫通孔と隣接する前記貫通孔から前記接着剤が認識できるようになる段階で、吸引する前記貫通孔を、吸引している前記貫通孔から、吸引している前記貫通孔と隣接する他の前記貫通孔に移行させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接着剤の注入方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、従来の複合材料の構造体100の概略図である。
図11は、従来の複合材料の構造体100の拡大概略図である。
図12は、従来の複合材料の構造体100の製造に関する接着剤の注入方法における一状態の一例を示す断面概略図である。
図13は、従来の複合材料の構造体100の断面概略図である。
図11は、
図10における領域Dを拡大した図である。
図12及び
図13は、
図11におけるE−E断面から見た断面図である。
【0005】
従来の複合材料の構造体100は、
図10及び
図11に示すように、外板102と、補強材104と、接着剤106と、を有する。外板102は、
図11に示すように、被接着面102sに接着剤106を介して補強材104の接着面104sが接着されている。補強材104は、接着面104sが接着剤106を介して外板102の被接着面102sに接着されている。接着剤106は、外板102の被接着面102sと補強材104の接着面104sとの間の領域に設けられ、外板102の被接着面102sと補強材104の接着面104sとを接着している。
【0006】
複合材料の構造体100において外板102と補強材104との位置決めに精度が要求される場合、予め外板102と補強材104との位置を決め、
図12に示すように、外板102の被接着面102sと補強材104の接着面104sとの間の領域に、外板102の被接着面102sと補強材104の接着面104sとの間の隙間から、接着剤注入部122により液状の接着剤106を注入することで、外板102と補強材104とを接着する必要がある。以下において、外板102の被接着面102sと補強材104の接着面104sとの間の領域を、接着剤注入領域と称する。また、以下において、外板102の被接着面102sと補強材104の接着面104sとの間の隙間を、単に隙間と称する。従来の複合材料の構造体100は、隙間から液状の接着剤106を注入する際に接着剤注入領域に気泡が残っているか否かの確認ができず、
図13に示すように、接着剤106の内部に気泡107を含んでしまうため、外板102と補強材104との接着強度が低下してしまう問題があった。
【0007】
図14は、従来の複合材料の構造体110の製造に関する接着剤の注入方法における一状態の別の一例を示す断面概略図である。従来の複合材料の構造体110は、
図14に示すように、従来の複合材料の構造体110において、接着剤106が、隙間部分において補強材104から外板102にかけて広がるテーパ状に形成されたテーパ形状部106tを追加で含むものである。複合材料の構造体において、接着剤106の隙間部分に、外部からの応力に対する耐性が要求される場合、複合材料の構造体110のように、テーパ形成用のヘラに例示されるテーパ形成部112により注入された接着剤106の隙間部分にテーパ形状部106tを形成する必要がある。従来の複合材料の構造体110は、隙間から液状の接着剤106を注入する際に接着剤注入領域に気泡が残っているか否かの確認ができず、従来の複合材料の構造体100の場合と同様に、接着剤106の内部に気泡を含んでしまうため、外板102と補強材104との接着強度が低下してしまう問題があった。
【0008】
以上により、
図13に示す従来の複合材料の構造体100を製造する場合と、
図14に示す従来の複合材料の構造体110を製造する場合とのいずれの場合においても、隙間から液状の接着剤106を注入する際に接着剤注入領域に気泡が残っているか否かの確認ができず、接着剤106の内部に気泡を含んでしまうため、外板102と補強材104との接着強度が低下してしまう問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接着剤を注入する際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、接着剤の内部に含まれる気泡を低減し、複合材料の接着強度の低下を低減する接着剤の注入方法及び構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、接着剤の注入方法は、外板と補強材とを接着する接着剤の注入方法であって、前記補強材は、前記外板に対向する接着面に交差する方向に貫通する貫通孔を複数有しており、前記外板と前記補強材とを位置決めする位置決めステップと、前記外板と前記補強材との間の隙間を塞ぐシール材を配置するシール材配置ステップと、前記接着面の一方の端部側から他方の端部側へ順に、前記貫通孔に前記接着剤を注入する注入ステップと、を含み、前記注入ステップでは、前記貫通孔へ前記接着剤を注入しているときに、前記接着剤を注入している前記貫通孔と隣接する他の前記貫通孔から前記接着剤が認識できるようになる段階で、前記接着剤を注入する前記貫通孔を、前記接着剤を注入している前記貫通孔から、前記接着剤が認識できるようになった前記貫通孔に移行させることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、補強材の貫通孔の内部に接着剤が注入されて充填されているので、接着面の他方の端部側、隙間及び接着剤が注入されていない貫通孔から気泡が除去され、接着剤を注入している貫通孔と隣接する他の貫通孔から接着剤を確認するため、接着剤が注入される際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、接着剤の内部に含まれる気泡が低減され、複合材料の接着強度の低下を低減することができる。
【0012】
この構成において、前記シール材は、前記注入ステップで注入された前記接着剤を、前記補強材から前記外板にかけてテーパ形状に形成させることが好ましい。この構成によれば、テーパ形状に形成されている部分の品質を安定化させることができるので、接着剤の隙間部分における、外部からの応力に対する耐性を向上させることができる。また、テーパ形状に形成する手間を削減することができる。
【0013】
接着剤をテーパ形状に形成させる構成において、前記シール材は、可撓性であり、前記注入ステップで前記接着剤が注入されるにつれて、前記隙間の外側に膨らむように変形することが好ましい。この構成によれば、接着剤の硬化に伴う収縮を生かして、接着剤の隙間部分を所望のテーパ形状に形成することができる。また、テーパ形状に形成されている部分の品質をさらに安定化させることができる。
【0014】
接着剤をテーパ形状に形成させる構成において、前記シール材は、剛体であり、前記補強材から前記外板にかけて内側がテーパ形状に形成されたダム部材であることが好ましい。この構成によれば、ダム部材の内側の形状に応じて、接着剤の隙間部分を所望のテーパ形状に形成することができる。また、テーパ形状に形成されている部分の品質をさらに安定化させることができる。
【0015】
これらの構成において、前記シール材は、複数に分割されたシール片を有し、前記シール材配置ステップでは、前記接着面の前記一方の端部側から前記他方の端部側へ順に前記シール片を配置し、前記注入ステップで注入される前記接着剤が、配置した前記シール片の範囲をはみ出す前に、前記シール片を継ぎ足して配置することが好ましい。この構成によれば、接着剤の注入状況に応じて、接着面の他方の端部側からの気泡の除去が可能な状態を維持することができる。
【0016】
これらの構成において、前記注入ステップでは、隣接する前記貫通孔から吸引し、前記接着剤を注入している前記貫通孔と隣接する前記貫通孔から前記接着剤が認識できるようになる段階で、吸引する前記貫通孔を、吸引している前記貫通孔から、吸引している前記貫通孔と隣接する他の前記貫通孔に移行させることが好ましい。この構成によれば、吸引により気泡が除去されるため、接着剤の内部に含まれる気泡をさらに低減し、複合材料の接着強度の低下をさらに低減することができる。
【0017】
これらの構成において、前記注入ステップでは、前記接着剤の注入が完了した前記貫通孔に蓋部材を装着することが好ましい。この構成によれば、接着剤の注入が完了した貫通孔から接着剤が漏れることを防止することができる。
【0018】
蓋部材を装着する構成において、前記蓋部材は、前記貫通孔を塞ぐ蓋部本体と、前記蓋部本体から前記外板の方向に突状に延びて形成された突状部と、前記突状部の先端から前記蓋部本体に向かって所定の長さの箇所に設けられ、前記貫通孔からの返し抜けを防止する抜け止め部と、を有し、前記接着剤の厚さを前記所定の長さに基づく長さに保持することが好ましい。この構成によれば、蓋部材が貫通孔から返し抜けすることを防止できるとともに、接着剤の厚さを所定の長さに基づく長さに保持することができる。
【0019】
これらの構成において、前記接着面は、一方向に延びて形成され、前記貫通孔は、前記一方向に延びる2列1組の千鳥状に配置され、前記シール材は、前記一方向に延びて両側に形成される前記隙間を塞ぐことが好ましい。この構成によれば、接着面の面積及び貫通孔の個数を少なくしつつ、補強材による補強効果を高めることができる。
【0020】
接着面が一方向に延びて形成された構成において、前記補強材は、前記接着面に沿う方向に延びるフランジ部と、前記接着面に交差する方向に延び、かつ前記一方向に延びるウェブ部と、を有し、前記貫通孔は、前記ウェブ部を挟んで2列1組の千鳥状に配置されていることが好ましい。この構成によれば、接着面の面積及び貫通孔の個数を少なくしつつ、補強材による補強効果をより高めることができる。
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、構造体は、外板と、補強材と、前記外板と前記補強材とを接着する接着剤と、を含み、前記補強材は、前記外板に対向する接着面に交差する方向に貫通する貫通孔を複数有しており、前記接着剤は、前記貫通孔の内部に注入されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、接着剤を補強材の貫通孔から注入するので、接着面の他方の端部側、隙間及び接着剤を注入していない貫通孔から気泡が除去され、接着剤を注入している貫通孔と隣接する他の貫通孔から接着剤を確認するため、接着剤を注入する際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、接着剤の内部に含まれる気泡を低減し、複合材料の接着強度の低下を低減することができる。
【0023】
この構成において、前記接着剤は、前記補強材から前記外板にかけてテーパ形状に形成されていることが好ましい。この構成によれば、テーパ形状に形成されている部分の品質が安定化するので、接着剤の隙間部分における、外部からの応力に対する耐性を向上させることができる。また、テーパ形状に形成する手間を削減することができる。
【0024】
これらの構成において、前記貫通孔に装着された蓋部材をさらに含み、前記蓋部材は、前記貫通孔を塞ぐ蓋部本体と、前記蓋部本体から前記外板の方向に突状に延びて形成された突状部と、前記突状部の先端から前記蓋部本体に向かって所定の長さの箇所に設けられ、前記貫通孔からの返し抜けを防止する抜け止め部と、を有することが好ましい。この構成によれば、貫通孔から接着剤が漏れることを防止することができる。また、この構成によれば、蓋部材が貫通孔から返し抜けすることを防止できるとともに、接着剤の厚さを所定の長さに保持することができる。
【0025】
これらの構成において、前記接着面は、一方向に延びて形成され、前記貫通孔は、前記一方向に延びる2列1組の千鳥状に配置されていることが好ましい。この構成によれば、接着面の面積及び貫通孔の個数を少なくしつつ、補強材による補強効果を高めることができる。
【0026】
接着面が一方向に延びて形成された構成において、前記補強材は、前記接着面に沿う方向に延びるフランジ部と、前記接着面に交差する方向に延び、かつ前記一方向に延びるウェブ部と、を有し、前記貫通孔は、前記ウェブ部を挟んで2列1組の千鳥状に配置されていることが好ましい。この構成によれば、接着面の面積及び貫通孔の個数を少なくしつつ、補強材による補強効果をより高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、接着剤を注入する際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、接着剤の内部に含まれる気泡を低減し、複合材料の接着強度の低下を低減する接着剤の注入方法及び構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る複合材料の構造体10の概略図である。複合材料の構造体10は、
図1に示すように、外板12と、補強材14と、接着剤16と、を含む。外板12は、被接着面12sに接着剤16を介して補強材14の接着面14sが接着されている。補強材14は、接着面14sが接着剤16を介して外板12の被接着面12sに接着されている。外板12及び被接着面12sと補強材14及び接着面14sとは、互いに面に直交する方向に沿って対向している。なお、本実施形態では、詳細な説明の便宜上、補強される側の部材を外板12と称し、補強する側の部材を補強材14と称しているが、接着剤16により接着される部材の組み合わせは、これに限定されることなく、形状上接着が可能ないかなる部材の組み合わせも含む。接着剤16は、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間の領域に設けられ、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとを接着している。以下において、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間の、接着剤16が設けられる領域を、接着剤注入領域と称する。
【0031】
外板12は、被接着面12sを含む平面に沿う方向に延びる複合材料の平板であり、被接着面12sを含む。補強材14は、接着面14sに沿う一方向、すなわち
図1におけるZ方向に沿って延びるT字状の部材である。補強材14は、
図1に示すように、接着面14sに沿う方向に延びるフランジ部15aと、接着面14sに交差する方向に延び、かつ、Z方向に延びるウェブ部15bと、を有する。補強材14は、部材14aと、部材14bと、部材14cと、部材14dと、を含む。部材14a及び部材14bは、いずれもZ方向に沿って延びるL字状の複合材料の部材である。部材14cは、接着面14sを含む平面に沿う方向に延びる複合材料の平板であり、接着面14sを含む。部材14dは、Z方向に沿って延びる三角柱状の複合材料の部材である。
【0032】
部材14aは、L字を形成する一方の外側の面が、部材14bにおいてL字を形成する他方の外側の面と接合されており、L字を形成する他方の外側の面が、部材14cにおける接着面14sの反対側の面のうち、Z方向に沿う中心線よりも一方側の部分と接合されている。部材14bは、L字を形成する一方の外側の面が、部材14cにおける接着面14sの反対側の面のうち、Z方向に沿う中心線よりも他方側の部分と接合されており、L字を形成する他方の外側の面が、部材14aにおいてL字を形成する一方の外側の面と接合されている。部材14cは、接着面14sの反対側の面のうち、Z方向に沿う中心線よりも一方側の部分が、部材14aにおけるL字を形成する他方の外側の面と接合されており、接着面14sの反対側の面のうち、Z方向に沿う中心線よりも他方側の部分が、部材14bにおけるL字を形成する一方の外側の面と接合されている。部材14dは、部材14aにおいてL字を形成する外側の面の湾曲部分と、部材14bにおいてL字を形成する外側の面の湾曲部分と、部材14cにおいて接着面14sの反対側の面のZ方向に沿う中心線付近と、の間に生じる空間を埋めるように配置されており、部材14a、部材14b及び部材14cとそれぞれ接合されている。部材14a、部材14b、部材14c及び部材14dの接合は、後述する複合材料に含まれる樹脂の硬化によるものであってもよいし、複合材料を接着する接着剤によるものであってもよい。
【0033】
フランジ部15aは、部材14aにおいてL字を形成する他方の面を含む部分と、部材14bにおいてL字を形成する一方の面を含む部分と、部材14cと、を有する。ウェブ部15bは、部材14aにおいてL字を形成する一方の面を含む部分と、部材14bにおいてL字を形成する他方の面を含む部分と、を有する。
【0034】
補強材14は、接着面14sに交差する方向に貫通する複数の貫通孔である貫通孔18a、貫通孔18b、貫通孔18c、貫通孔18d、貫通孔18e、貫通孔18f、貫通孔18g、貫通孔18h、貫通孔18i及び貫通孔18j(貫通孔18b、貫通孔18d、貫通孔18f、貫通孔18h及び貫通孔18jについては、
図3及び
図4を参照)を有している。貫通孔18a〜18jは、この順番に、接着面14sの一方の端部側、すなわち
図1における−Z方向の端部側から、接着面14sの他方の端部側、すなわち
図1における+Z方向の端部側へ向かって配置されている。
【0035】
詳細には、貫通孔18a〜18jは、補強材14が有するフランジ部15aを、接着面14sに直交する方向に沿って貫通して設けられている。より詳細には、貫通孔18a、貫通孔18c、貫通孔18e、貫通孔18g及び貫通孔18iは、補強材14に含まれる部材14aにおいてL字を形成する他方の面を含む部分及び部材14cを貫通して設けられており、Z方向に沿う方向に一列に配置されている。また、貫通孔18b、貫通孔18d、貫通孔18f、貫通孔18h及び貫通孔18jは、部材14bにおいてL字を形成する一方の面を含む部分及び部材14cを貫通して設けられており、Z方向に沿う方向に一列に配置されている。すなわち、貫通孔18a〜18jは、フランジ部15aに、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、ウェブ部15bを挟んで2列1組の千鳥状に配置されている。
【0036】
貫通孔18a〜18jは、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、順次、互いに隣接している。すなわち、貫通孔18aと貫通孔18bとは隣接し、貫通孔18bと貫通孔18cとは隣接し、貫通孔18cと貫通孔18dとは隣接し、貫通孔18dと貫通孔18eとは隣接し、貫通孔18eと貫通孔18fとは隣接し、貫通孔18fと貫通孔18gとは隣接し、貫通孔18gと貫通孔18hとは隣接し、貫通孔18hと貫通孔18iとは隣接し、貫通孔18iと貫通孔18jとは隣接している。
【0037】
貫通孔18a〜18jは、内部に接着剤16が注入され、充填されている。貫通孔18a〜18jの内部に注入され、充填されている接着剤16は、接着剤注入領域の接着剤16と、一体化している。
【0038】
構造体10、外板12及び補強材14に用いられている複合材料は、航空機、自動車及び船舶等に用いられる材料が例示される。この複合材料は、複合材料を強化する強化繊維と、強化繊維に含浸された樹脂と、を含む材料が例示される。強化繊維は、5μm以上7μm以下の範囲内の基本繊維を数100本から数1000本程度束ねたものが例示される。強化繊維を構成する基本繊維は、炭素繊維が例示される。強化繊維を構成する基本繊維は、これに限定されず、その他のプラスチック繊維、ガラス繊維又は金属繊維でもよい。強化繊維に含浸される樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂が例示される。熱可塑性樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。ただし、強化繊維に含浸される樹脂は、これに限定されず、その他の樹脂でもよい。
【0039】
接着剤16は、複合材料を接着できるものであれば、どのような接着剤であってもよい。接着剤16は、複合材料と一体化できるものが好ましく、複合材料に用いられている樹脂を含む接着剤が例示される。この場合、複合材料の接着強度を向上させることができる。
【0040】
構造体10は、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間に、接着剤16が外板12及び補強材14から露出する隙間を有する。なお、以下において、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間の隙間を、単に隙間と称する。構造体10は、外板12及び補強材14がZ方向に沿って延びているため、この隙間が接着面14sの両側にZ方向に沿って延びて形成されている。
【0041】
構造体10は、この両側に形成された隙間を塞ぐシール材20を含んでいてもよい。シール材20は、後述する接着剤16の注入方法において配置されるものであり、一方の辺側が補強材14に固着され、他方の辺側が外板12に固着されて配置されることで、隙間を塞ぐ。シール材20は、
図1に示すように、複数に分割されたシール片20a、シール片20b、シール片20c及びシール片20dを有する。シール材20及びシール片20a〜20dは、可撓性の材料で形成されたテープ状のものが用いられても良く、剛体の材料で形成されたダム部材が用いられても良い。
【0042】
シール片20a及びシール片20cは、いずれも、一方の辺側が補強材14の部材14aにおいてL字を形成する他方の面を含む部分に、貫通孔18a、貫通孔18c、貫通孔18e、貫通孔18g及び貫通孔18iを塞ぐことの無いように固着されて配置される。シール片20a及びシール片20cは、この順に、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって配置されており、一方の側に形成された隙間を塞ぎ、互いに接続及び分離することが可能である。シール片20b及びシール片20dは、いずれも、一方の辺側が補強材14の部材14bにおいてL字を形成する一方の面を含む部分に、貫通孔18b、貫通孔18d、貫通孔18f、貫通孔18h及び貫通孔18jを塞ぐことの無いように固着されて配置される。シール片20b及びシール片20dは、この順に、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって配置されており、他方の側に形成された隙間を塞ぎ、互いに接続及び分離することが可能である。
【0043】
構造体10は、以上のような構成を有するので、補強材14の貫通孔18a〜18jの内部に接着剤16が注入されて充填されているので、接着面14sの他方の端部側である+Z方向の端部側、隙間及び接着剤16が注入されていない貫通孔から気泡が除去され、接着剤16を注入している貫通孔と隣接する他の貫通孔から接着剤16を確認するため、接着剤16が注入される際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、接着剤16の内部に含まれる気泡が低減され、複合材料の接着強度の低下を低減することができる。
【0044】
また、構造体10は、接着面14sがZ方向に延びて形成され、貫通孔18a〜18jが、Z方向に延びる2列1組の千鳥状に配置されているので、接着面14sの面積及び貫通孔18a〜18jの個数を少なくしつつ、補強材14による補強効果を高めることができる。
【0045】
また、構造体10は、貫通孔18a〜18jが、フランジ部15aにおいて、ウェブ部15bを挟んでZ方向に延びる2列1組の千鳥状に配置されているので、接着面14sの面積及び貫通孔18a〜18jの個数を少なくしつつ、補強材14による補強効果をより高めることができる。
【0046】
また、構造体10は、隙間を塞ぐシール材20を含んでいるので、接着剤16の隙間部分を外部から保護することができる。また、構造体10は、隙間を塞ぐシール材20が複数に分割されたシール片20a,20b,20c,20dを含むので、適宜シール片20a,20b,20c,20dを取り替えることで、接着剤16の隙間部分を外部から好適に保護することができる。
【0047】
なお、シール材は、上記のシール材20の構成に限定されることなく、例えば、各貫通孔18a〜18jの側へ延びて形成されていても良い。この場合には、シール材は、接着剤16が注入された後に、各貫通孔18a〜18jの側へ延びて形成された部分により、各貫通孔18a〜18jを塞ぐことができるため、好ましい。
【0048】
また、シール材に貫通孔を設けてもよい。例えば、シール材の所望の位置に貫通孔を設けてもよいし、シール材を構成するシール片の切れ目に貫通孔を設けてもよい。この場合、補強材14に設けられた貫通孔と、シール材に設けられた貫通孔と、が順次、気泡の除去、気泡が残っていないことの確認、及び接着剤16の注入に用いられる。これにより、補強材14に設ける貫通孔の個数を減らすことができるため、補強材14による補強効果をより高めることができる。また、シール材に貫通孔を設けて、かつ、補強材14に貫通孔を設けない形態としてもよい。この場合にも、シール材に設けられた貫通孔が順次、気泡の除去、気泡が残っていないことの確認、及び接着剤16の注入に用いられる。これにより、補強材14に設ける貫通孔の個数をなくすことができるため、補強材14による補強効果をさらに高めることができる。
【0049】
図2は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法を示すフローチャートである。
図3は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法における一状態を示す概略構成図である。
図4は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法における別の一状態を示す概略構成図である。
図3及び
図4は、いずれも
図1におけるA−Aの方向から見た図である。
図1、
図2、
図3及び
図4を用いて、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法を説明する。接着剤16の注入方法は、
図2に示すように、位置決めステップ(ステップS12)と、シール材配置ステップ(ステップS14)と、注入ステップ(ステップS16)と、を含む。
【0050】
まず、接着剤16で接着する外板12と補強材14との位置を決める(ステップS12)。具体的には、補強材14の外板12に対する位置を決める。詳細には、補強材14の接着面14sと接着面14sに直交する方向に沿って対向する外板12の被接着面12sの位置と、接着面14sと被接着面12sとの面間角度と、接着面14sと被接着面12sとの間隔と、を決定する。これにより、接着面14sと被接着面12sとの間に、接着剤注入領域と、隙間と、がともに形成される。
【0051】
次に、隙間を塞ぐシール材20を配置する(ステップS14)。具体的には、シール材20の一方の辺側を補強材14の所定の場所に固着し、他方の辺側を外板12の所定の場所に固着する。シール材20のその他の部分については、固着しなくても良いし、隙間に対向する部分以外の部分を全て固着しても良い。これにより、接着剤注入領域が、隙間を塞がれた空間となる。例えば、
図3に示すように、一度にシール片20a,20b,20c,20dを配置して、Z方向に延びる隙間を塞ぐ。
【0052】
次に、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、順次、貫通孔18a〜18jに、
図4に示す接着剤注入部22により、硬化前の接着剤16を注入する(ステップS16)。具体的には、まず、−Z方向の端部側に設けられた貫通孔18aに接着剤16を注入し、次に、貫通孔18aの次に−Z方向の端部側に設けられた貫通孔18bに接着剤16を注入し、同様に、貫通孔18c、貫通孔18d、貫通孔18e、貫通孔18f、貫通孔18g、貫通孔18h、貫通孔18i、貫通孔18jの順に接着剤16を注入する。これにより、接着剤16は、接着剤注入領域の−Z方向の端部側から+Z方向の端部側まで順次注入される。
【0053】
ステップS16では、
図4に示すように、貫通孔18aに接着剤16を注入しているときに接着剤16を注入している貫通孔18aと隣接する他の貫通孔18bから接着剤16が認識できるようになる段階で、接着剤16を注入する貫通孔を、貫通孔18aから貫通孔18bに移行させる。ここで、貫通孔18bから接着剤16が認識できるようになる段階とは、
図4に示すように、貫通孔18bから接着剤16が視認できる段階、すなわち接着剤16が貫通孔18bの貫通方向に到達する段階のことを指す。あるいは、貫通孔18bから接着剤16が認識できるようになる段階を、貫通孔18bからはみ出し始める段階としてもよい。この段階で、貫通孔18aへの接着剤16の注入が完了したものと判断する。
【0054】
ステップS16では、同様に、接着剤16を注入する貫通孔を、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、すなわち、貫通孔18a及び貫通孔18bの後、貫通孔18c、貫通孔18d、貫通孔18e、貫通孔18f、貫通孔18g、貫通孔18h、貫通孔18i、貫通孔18jの順に、移行させる。これにより、接着剤16は、接着剤注入領域に、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって注入される。
【0055】
ステップS16では、貫通孔18aに接着剤16を注入しているとき、+Z方向の端部側における隙間及び接着剤16が注入されていない貫通孔18b〜18jから気泡が除去されている。貫通孔18bに接着剤16を注入しているとき、+Z方向の端部側における隙間及び接着剤16が注入されていない貫通孔18c〜18jから気泡が除去されている。以下同様に、いずれの貫通孔から接着剤16を注入しているときも、+Z方向の端部側における隙間及び接着剤16が注入されていない貫通孔から気泡が除去されている。そのため、接着剤注入領域は、気泡が除去され、接着剤16で充填される。
【0056】
ステップS16で注入された接着剤16が固化した後、シール材20を隙間から除去しても良い。この場合、シール材20を再利用することができる。
【0057】
第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、以上のような構成を有するので、接着剤16を補強材14の貫通孔18a〜18jから注入するので、+Z方向の端部側、隙間及び接着剤16を注入していない貫通孔から気泡が除去され、接着剤16を注入している貫通孔と隣接する他の貫通孔から接着剤16を確認するため、接着剤16が注入される際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、接着剤16の内部に含まれる気泡を低減し、複合材料の接着強度の低下を低減することができる。
【0058】
また、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、隙間を塞ぐシール材20を配置するシール材配置ステップを有するので、隙間から接着剤16が流出することを防ぐので、接着剤16を精度よく接着剤注入領域に注入することができる。
【0059】
また、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、接着面14sがZ方向に延びて形成され、貫通孔18a〜18jが、Z方向に延びる2列1組の千鳥状に配置されているので、接着面14sの面積及び貫通孔18a〜18jの個数を少なくしつつ、補強材14による補強効果を高めることができる。
【0060】
また、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、貫通孔18a〜18jが、フランジ部15aにおいて、ウェブ部15bを挟んでZ方向に延びる2列1組の千鳥状に配置されているので、接着面14sの面積及び貫通孔18a〜18jの個数を少なくしつつ、補強材14による補強効果をより高めることができる。
【0061】
また、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、ステップS16の状況に応じてステップS14を実行しても良い。具体的には、ステップS14において、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ順に、すなわち一方の側の隙間についてはシール片20a、シール片20cの順に、他方の側の隙間についてはシール片20b、シール片20dの順に配置する。ステップS14において、先に−Z方向の端部側のシール片20a及びシール片20bを配置し、ステップS16で注入される接着剤16が、先に配置したシール片20a及びシール片20bの範囲をはみ出す前に、シール片20a及びシール片20bに隣接して+Z方向の端部側へシール片20c及びシール片20dを継ぎ足して配置することが好ましい。あるいは、少しはみ出した後に、シール片20a及びシール片20bに隣接して+Z方向の端部側へシール片20c及びシール片20dを継ぎ足して配置してもよい。接着剤注入領域がよりZ方向に延びている場合、ステップS16で注入される接着剤16が+Z方向に到達する範囲に応じて、順次+Z方向の端部側へシール片を継ぎ足して配置する。
【0062】
第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、ステップS14において、ステップS16の状況に応じて−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ順にシール片を継ぎ足して配置する場合、接着剤16の注入されていない領域において過剰にシール材20で塞がずに隙間を開放しているので、接着剤16の注入状況に応じて、+Z方向の端部側からの気泡の除去が可能な状態を維持することができる。
【0063】
なお、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、シール材が各貫通孔18a〜18jの側へ延びて形成されている場合には、ステップS16において、接着剤16が注入された後に、各貫通孔18a〜18jの側へ延びて形成された部分により、各貫通孔18a〜18jを塞ぐことができるため、好ましい。
【0064】
また、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、シール材に貫通孔が設けられている場合には、ステップS16において、補強材14に設けられた貫通孔と、シール材に設けられた貫通孔と、が順次、気泡の除去、気泡が残っていないことの確認、及び接着剤16の注入に用いられる。これにより、補強材14に設ける貫通孔の個数を減らすことができるため、補強材14による補強効果をより高めることができるため、好ましい。また、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、シール材に貫通孔を設けて、かつ、補強材14に貫通孔を設けない場合には、ステップS16において、シール材に設けられた貫通孔が順次、気泡の除去、気泡が残っていないことの確認、及び接着剤16の注入に用いられる。これにより、補強材14に設ける貫通孔の個数をなくすことができるため、補強材14による補強効果をさらに高めることができる。
【0065】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法における一状態を示す概略構成図である。
図6は、第2の実施形態に係る複合材料の構造体30及び接着剤16の注入方法における別の一状態を示す概略構成図である。
図5及び
図6は、いずれも
図1におけるB−B断面の方向に相当する断面方向から見た図である。B−B断面は、部材14aと部材14bとの間で不連続に、Z方向に直交する面方向に沿う2つの断面が接続された面であり、部材14a側では貫通孔18gの中心を通過する断面であり、部材14b側では貫通孔18hの中心を通過する断面である。構造体30は、構造体10において、接着剤16の隙間の部分にテーパ形状部16tが形成されるように変更したものである。第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法において、シール材20により注入された接着剤16の隙間の部分にテーパ形状部16tを形成させるように変更したものである。第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0066】
構造体30は、
図6に示すように、外板12と、補強材14と、接着剤16と、を含む。接着剤16は、隙間の部分、すなわち外板12及び補強材14から露出する部分に、補強材14から外板12にかけてテーパ形状に形成されたテーパ形状部16tを有する。テーパ形状部16tは、補強材14のフランジ部15aの隙間側の側面を覆い、補強材14のフランジ部15aのウェブ部15b側の面から外板12の被接着面12sにかけて、テーパ形状を形成している。すなわち、接着剤16は、隙間からはみ出した部分が、その厚さが補強材14から外板12に向かって薄くなるテーパ形状となっているテーパ形状部16tを有する。
【0067】
構造体30は、
図6に示すように、接着面14sの両側に形成された隙間を塞ぐシール材20を含んでいてもよい。構造体30に含まれるシール材20は、テーパ形状部16tに沿っている。
【0068】
シール材20は、可撓性の材料で形成されたテープ状のものが用いられている場合、テーパ形状部16tと対向する部分が、テーパ形状部16tに応じて、隙間の外側に、補強材14から外板12にかけてテーパ状に膨らむように変形している。なお、シール材20は、テーパ形状部16tから離間して、隙間の外側に、補強材14から外板12にかけてテーパ形状に膨らむように変形していてもよい。
【0069】
シール材20は、剛体の材料で形成されたダム部材が用いられている場合、テーパ形状部16tと対向する内側の部分が、補強材14から外板12にかけて、テーパ形状部16tに応じたテーパ形状に形成されたダム部材である。
【0070】
構造体30は、以上のような構成を有するので、接着剤16が補強材14から外板12にかけてテーパ形状となっているテーパ形状部16tを有するので、接着剤16の隙間部分における、外部からの応力に対する耐性を向上させることができる。
【0071】
従来の複合材料の構造体100及び構造体110は、注入した液状の接着剤106が隙間からはみ出してしまい、接着剤106の形状が崩れてしまうため、外板102と補強材104との接着強度が低下してしまう問題があった。一方、構造体30は、シール材20により、注入した接着剤16が隙間からはみ出すことを低減し、接着剤16の形状が崩れることを低減するため、テーパ形状部16tの品質が安定化し、外板12と補強材14との接着強度の低下を低減することができる。また、テーパ形状部16tの形成の手間を削減することができる。
【0072】
第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法と同様に、位置決めステップ(ステップS12)と、シール材配置ステップ(ステップS14)と、注入ステップ(ステップS16)と、を含む。第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS12は、第1の実施形態と同様である。
【0073】
第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS14は、第1の実施形態において、シール材20の配置の方法の詳細を変更したものである。具体的には、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS14では、シール材20の一方の辺側を補強材14の所定の場所に固着し、他方の辺側を外板12の所定の場所に固着するとともに、シール材20のその他の部分については、シール材20が接着剤16の隙間の部分をテーパ形状部16tに形成するように配置する。
【0074】
詳細には、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS14では、シール材20として可撓性の材料で形成されたテープ状のものが用いられる場合、シール材20の隙間の部分と対向する部分については固着せず、シール材20が接着剤16の注入に応じて、隙間の外側に、補強材14から外板12にかけてテーパ状に膨らむように変形可能に配置する。
【0075】
また、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS14では、シール材20として剛体の材料で形成されたダム部材が用いられる場合、隙間の部分と対向する内側の部分が、補強材14から外板12にかけて、テーパ形状部16tに応じたテーパ形状に形成されたダム部材を配置する。
【0076】
第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16は、第1の実施形態において、接着剤16の隙間の部分にテーパ形状部16tを形成することを追加したものである。具体的には、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、シール材20の隙間と対向する部分で、接着剤16の隙間の部分にテーパ形状部16tを形成する。
【0077】
詳細には、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、シール材20として可撓性の材料で形成されたテープ状のものが用いられる場合、
図5に示す状態から、接着剤16が注入されるにつれて、
図6に示すように、シール材20が隙間の外側に膨らむように変形する。これにより、接着剤16は、シール材20によって、隙間の部分がテーパ形状部16tよりも突状に膨らむ。その後、接着剤16は、硬化に伴って収縮し、隙間の部分がテーパ形状部16tに形成される。
【0078】
また、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、シール材20として剛体の材料で形成されたダム部材が用いられる場合、注入された接着剤16が、
図6に示すように、シール材20における隙間の部分と対向する内側の部分に沿った形状に成形される。その後、接着剤16は、硬化し、隙間の部分がテーパ形状部16tに形成される。
【0079】
第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、以上のような構成を有するので、シール材20により注入した接着剤16が隙間からはみ出すことを低減し、接着剤16の形状が崩れることを低減するため、テーパ形状部16tの品質を安定化させ、外板12と補強材14との接着強度の低下を低減することができる。また、テーパ形状部16tの形成の手間を削減することができる。
【0080】
また、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、シール材20として可撓性の材料で形成されたテープ状のものが用いられる場合、接着剤16の硬化に伴う収縮を生かして、接着剤16の隙間部分を所望のテーパ形状に形成することができる。
【0081】
また、第2の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、シール材20として剛体の材料で形成されたダム部材が用いられる場合、ダム部材の内側の形状に応じて、接着剤16の隙間部分を所望のテーパ形状に形成することができる。
【0082】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法における一状態を示す概略構成図である。
図8は、第3の実施形態に係る複合材料の構造体40及び接着剤16の注入方法における別の一状態を示す概略構成図である。
図9は、第3の実施形態に係る複合材料の構造体40に含まれる蓋部材46を示す概略構成図である。
図7及び
図8は、いずれも
図1におけるC−C断面の方向に相当する断面方向から見た図である。C−C断面は、外板12に直交し、Z方向に沿う2つの断面が接続された面であり、一方の断面は貫通孔18aの中心を通過する断面であり、他方の断面は貫通孔18bの中心を通過する断面である。
図7及び
図8では、貫通孔18cより+Z方向の領域が省略されている。
【0083】
構造体40は、構造体10において、貫通孔に装着された蓋部材46がさらに追加
されたものである。第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法において、接着剤16を注入している貫通孔と隣接する貫通孔から吸引すること、及び接着剤16の注入が完了した貫通孔に蓋部材46を装着することをさらに追加したものである。第3の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0084】
構造体40は、
図8の−Z方向寄りに示すように、外板12と、補強材14と、接着剤16と、蓋部材46と、を含む。蓋部材46は、
図8では、貫通孔18aに装着されている。蓋部材46は、全ての貫通孔18a〜18jに装着されてもよいし、貫通孔18a〜18jのうち一部のみに装着されてもよい。
【0085】
蓋部材46は、
図9に示すように、蓋部本体47と、突状部48と、抜け止め部49と、を有する。蓋部材46は、蓋部本体47と、突状部48と、抜け止め部49とが一体となっており、接着剤16と同じ材料が用いられていてもよい。蓋部本体47は、貫通孔を塞ぐ円盤状の板であり、その直径は貫通孔の直径よりも大きい。なお、蓋部本体47は、円盤状の板に限定されず、貫通孔を十分に塞ぐことが可能な大きさの板であれば、どのような形状であってもよい。突状部48は、蓋部本体47から外板12の方向に突状に延びて形成されている。抜け止め部49は、貫通孔からの返し抜けを防止する。抜け止め部49は、突状部48の先端から蓋部本体47に向かって所定の長さlの箇所に設けられている。この所定の長さlは、
図8に示すように、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間隔、すなわち接着剤注入領域の幅及び接着剤16の厚さを、所定の長さlに基づく長さに保持する。
【0086】
蓋部材46が被接着面12sに対して垂直に装着される場合には、所定の長さlと、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間隔、接着剤注入領域の幅及び接着剤16の厚さとは、等しい。一方、蓋部材46が被接着面12sに対して斜めに装着される場合には、その装着される角度に応じて、所定の長さlと、外板12の被接着面12sと補強材14の接着面14sとの間隔、接着剤注入領域の幅及び接着剤16の厚さとの関係が定まる。
【0087】
なお、蓋部材46は、上記形状に限定されない。例えば、蓋部材は、蓋部本体47に設けられ、注入された接着剤16に対して突き刺して挿入することができる針部材を1つまたは複数有する形状であっても良い。この場合において、蓋部材は、針部材にさらに貫通孔からの返し抜けを防止する抜け止め部を有することが好ましい。また、この場合において、抜け止め部は、針部材の先端から蓋部本体47に向かって所定の長さlの箇所に設けられていることが好ましく、この場合には、接着剤16の厚さを所定の長さlに基づく長さに保持することができる。
【0088】
また、蓋部材は、蓋部本体47に設けられ、注入された接着剤16に挿入可能なバネ部材を1つまたは複数有する形状であっても良い。この場合において、蓋部材は、バネ部材にさらに貫通孔からの返し抜けを防止する抜け止め部を有することが好ましい。また、この場合において、抜け止め部は、バネ部材の先端から蓋部本体47に向かって所定の長さlの箇所に設けられていることが好ましく、この場合には、接着剤16の厚さを所定の長さlに基づく長さに保持することができる。
【0089】
構造体40は、以上のような構成を有するので、蓋部材46が装着された貫通孔から接着剤16が漏れることを防止することができる。また、構造体40は、蓋部材46が貫通孔から返し抜けすることを防止できるとともに、接着剤16の厚さを所定の長さlに基づく長さに保持することができる。
【0090】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、第1の実施形態に係る接着剤16の注入方法と同様に、位置決めステップ(ステップS12)と、シール材配置ステップ(ステップS14)と、注入ステップ(ステップS16)と、を含む。第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS12及びステップS14は、第1の実施形態と同様である。
【0091】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16は、第1の実施形態において、接着剤16を注入している貫通孔と隣接する貫通孔から吸引すること、及び接着剤16の注入が完了した貫通孔に蓋部材46を装着することをさらに追加したものである。
【0092】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、順次、貫通孔18a〜18jに、
図7及び
図8に示す接着剤注入部42により、硬化前の接着剤16を注入する。第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、それと同時に、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、順次、貫通孔18b〜18jに、
図7に示す吸引部44により、吸引する。
【0093】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、具体的には、まず、
図7に示すように、−Z方向の端部側に設けられた貫通孔18aに接着剤16を注入すると同時に、貫通孔18aと隣接する貫通孔18bから吸引する。このとき、貫通孔18bからは、気泡のみか、あるいは接着剤16と気泡とが混じったものが吸引される。貫通孔18bから、気泡の無い接着剤16が吸引されるようになる段階で、貫通孔18bよりも−Z方向の端部側が接着剤16で充填されたと判断できるため、貫通孔18aに接着剤16を注入しているときに接着剤16を注入している貫通孔18aと隣接する他の貫通孔18bから接着剤16が認識できるようになる段階になったものと判断する。すなわち、貫通孔18aへの接着剤16の注入が完了したものと判断する。この段階で、接着剤16を注入する貫通孔を、貫通孔18aから貫通孔18bに移行させ、これと同時に、吸引する貫通孔を、貫通孔18bから貫通孔18cに移行させる。
【0094】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、接着剤16を注入する貫通孔を、貫通孔18aから貫通孔18bに移行させてから、接着剤16が十分硬化するまでの間に、接着剤16の注入が完了した貫通孔18aに蓋部材46を装着する。
【0095】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、同様に、接着剤16を注入する貫通孔を、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、すなわち、貫通孔18a及び貫通孔18bの後、貫通孔18c、貫通孔18d、貫通孔18e、貫通孔18f、貫通孔18g、貫通孔18h、貫通孔18iの順に、移行させる。これと同時に、吸引する貫通孔を、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって、すなわち、貫通孔18b及び貫通孔18cの後、貫通孔18d、貫通孔18e、貫通孔18f、貫通孔18g、貫通孔18h、貫通孔18i、貫通孔18jの順に、移行させる。また、接着剤16を注入する貫通孔の移行に伴い、接着剤16の注入が完了した貫通孔18b〜18iに、順次、蓋部材46を装着する。
【0096】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、貫通孔18iへの接着剤16の注入が完了した段階で、接着剤16を注入する貫通孔を貫通孔18jに移行させるとともに、貫通孔からの吸引を終了する。第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16は、貫通孔18jへの接着剤16の注入が完了し、接着剤16の注入が完了した貫通孔18jに蓋部材46を装着した段階で、終了する。これにより、接着剤16は、接着剤注入領域に、−Z方向の端部側から+Z方向の端部側へ向かって注入される。
【0097】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、貫通孔18aに接着剤16を注入しているとき、+Z方向の端部側における隙間及び接着剤16が注入されていない貫通孔18c〜18jから気泡が除去されていることに加えて、貫通孔18bから積極的に気泡が吸引除去される。貫通孔18bに接着剤16を注入しているとき、+Z方向の端部側における隙間及び接着剤16が注入されていない貫通孔18d〜18jから気泡が除去されていることに加えて、貫通孔18cから積極的に気泡が吸引除去される。以下同様に、+Z方向の端部側に設けられた貫通孔18jから接着剤16を注入している場合を除き、注入している貫通孔と隣接する貫通孔から積極的に気泡が吸引除去される。そのため、接着剤注入領域は、気泡がより確実に除去され、接着剤16で充填される。
【0098】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、全ての貫通孔18a〜18jに蓋部材46を装着してもよいし、貫通孔18a〜18jのうち一部のみに蓋部材46を装着してもよい。第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法におけるステップS16では、少なくとも1つの貫通孔に蓋部材46が装着される。そのため、蓋部材46が装着された貫通孔から接着剤16が漏れることを防止することができる。また、蓋部材46が貫通孔から返し抜けすることを防止できるとともに、接着剤16の厚さを所定の長さlに保持することができる。
【0099】
第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、以上のような構成を有するので、接着剤16を注入している貫通孔と隣接する他の貫通孔からの吸引状態に基づいて接着剤16を確認するため、接着剤16が注入される際に接着剤注入領域に気泡が残っていないことを確認でき、吸引により気泡が除去されるため、接着剤16の内部に含まれる気泡をさらに低減し、複合材料の接着強度の低下をさらに低減することができる。
【0100】
また、第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、接着剤16の注入が完了した貫通孔に蓋部材46を装着するので、接着剤16の注入が完了した貫通孔から接着剤16が漏れることを防止することができる。
【0101】
また、第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、接着剤16の注入が完了した貫通孔に装着する蓋部材46に抜け止め部49が設けられているので、蓋部材46が貫通孔から返し抜けすることを防止できる。また、第3の実施形態に係る接着剤16の注入方法は、接着剤16の注入が完了した貫通孔に装着する蓋部材46において、抜け止め部49が突状部48の先端から蓋部本体47に向かって所定の長さlの箇所に設けられているので、接着剤16の厚さを所定の長さlに基づく長さに保持することができる。