特許第6782632号(P6782632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6782632アセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法および脂肪族ジケトンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782632
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】アセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法および脂肪族ジケトンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/30 20060101AFI20201102BHJP
   C07C 69/72 20060101ALI20201102BHJP
   C07C 49/12 20060101ALI20201102BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C07C67/30
   C07C69/72
   C07C49/12
   C07C45/68
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-256149(P2016-256149)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-108942(P2018-108942A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591236437
【氏名又は名称】株式会社 東邦アーステック
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】島 奈緒
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−037298(JP,A)
【文献】 特開2015−221857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/00
C07C 45/00
C07C 49/00
C07C 69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(CHCOCHCOOR)の式で示され、式中のRはメチル基またはエチル基で、Mはナトリウムまたはカリウムであるアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法において、
水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒とアセト酢酸エステルとを予め混合し、
前記非プロトン性有機溶媒と前記アセト酢酸エステルと混合した状態で、水酸化アルカリ化合物を後から添加して反応させる
ことを特徴とするアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法。
【請求項2】
水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒は、アセトン、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルの少なくとも1種を用いる
ことを特徴とする請求項1記載のアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法。
【請求項3】
CHCO(CHn+2COCHの式で示され、式中のnは4以上12以下の整数である脂肪族ジケトンの製造方法において、
請求項1または2記載のアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法でアセト酢酸エステルアルカリ塩を製造し、
該アセト酢酸エステルアルカリ塩と、I(CHIの式で示され式中のnは4以上12以下の整数である脂肪族ジヨウ化物とを反応させる
ことを特徴とする脂肪族ジケトンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセト酢酸エステルアルカリ塩および脂肪族ジケトンを効率的に製造できるアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法および脂肪族ジケトンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセト酢酸エステルは、C2位の炭素上のC−H結合が、二つの隣接するカルボニル基の電子求引効果により活性化されるため、比較的高い酸性(例えばpKa=11)を示す。
【0003】
また、塩基を作用させて発生させたアセト酢酸エステルのエノラートアニオンは求核的であり、求電子的なハロゲン化アルキルとS2反応して、アセト酢酸エステルのアルキル化となる。
【0004】
そして、塩基により脱プロトン化してエノラートアニオンとなったアセト酢酸エステルは、アセト酢酸エステルのアルカリ塩となる。
【0005】
例えば、非特許文献1および特許文献1等に示すように、作用させる塩基としては、水素化ナトリウムやナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシド等が用いられ、溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)やエタノール等が用いられてきた。
【0006】
また、アセト酢酸エステルをアルキル化した後に、更にエステル加水分解および脱炭酸を経ることでケトン化合物を合成する方法が一般的に知られており、このような合成法は、医薬、農薬および香料等の種々の有用な化学品の合成中間体合成法として利用されている。
【0007】
具体的には、例えば、特許文献2および特許文献3等に示すように、アルカリ存在下にアセト酢酸エステルと脂肪族ジハライドとを反応させて脂肪族ジケトンを得る場合には、予め溶媒とアルカリ化合物とを混合した後に、アセト酢酸エステルを添加する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第98/14504号
【特許文献2】特開2010−37298号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第1059709号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Renfrow他、Journal of the American Chemical Society、1946年、第68巻、p.1801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1や非特許文献1等では、水素化ナトリウムやアルカリアルコキシド等の比較的に高価な塩基を用いており、工業的にアセト酢酸エステルアルカリ塩を製造する場合には、より安価で高収率に製造できる方法が求められる。
【0011】
また、上述の特許文献2では、アセト酢酸エステルアルカリ塩を用いて脂肪族ジケトンを合成するために、水素化ナトリウムをTHFに溶解後、アセト酢酸エチルを滴下し反応させた後に1,10−ジヨードデカンを除々に滴下して反応させているが、この方法では、得られた2,15−ヘキサデカンジオンの純度が低くなり、精製工程が必須であった。
【0012】
したがって、アセト酢酸エステルアルカリ塩を高収率に製造できる方法、および、そのアセト酢酸エステルアルカリ塩を用いて高純度の脂肪族ジケトンを製造できる方法が求められていた。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、アセト酢酸エステルアルカリ塩を高収率に製造できるアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法、および、高純度の脂肪族ジケトンを製造できる脂肪族ジケトンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載されたアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法は、(CHCOCHCOOR)の式で示され、式中のRはメチル基またはエチル基で、Mはナトリウムまたはカリウムであるアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法において、水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒とアセト酢酸エステルとを予め混合し、前記非プロトン性有機溶媒と前記アセト酢酸エステルと混合した状態で、水酸化アルカリ化合物を後から添加して反応させるものである。
【0015】
請求項2に記載されたアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法は、請求項1記載のアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法において、水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒は、アセトン、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルの少なくとも1種を用いるものである。
【0016】
請求項3に記載された脂肪族ジケトンの製造方法は、CHCO(CHn+2COCHの式で示され、式中のnは4以上12以下の整数である脂肪族ジケトンの製造方法において、請求項1または2記載のアセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法でアセト酢酸エステルアルカリ塩を製造し、該アセト酢酸エステルアルカリ塩と、I(CHIの式で示され式中のnは4以上12以下の整数である脂肪族ジヨウ化物とを反応させるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒とアセト酢酸エステルとを予め混合した状態で、水酸化アルカリ化合物を後から添加して反応させるため、アセト酢酸エステルアルカリ塩を高収率に製造できる。
【0018】
また、このように合成したアセト酢酸エステルアルカリ塩と脂肪族ジヨウ化物とを反応させるため、高純度の脂肪族ジケトンを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態の構成について詳細に説明する。
【0020】
アセト酢酸エステルアルカリ塩を製造する際には、水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒とアセト酢酸エステルとの混合下で、水酸化アルカリ化合物を添加して反応させる。
【0021】
アセト酢酸エステルアルカリ塩は、(CHCOCHCOOR)の式で示される。また、この式では、Rはメチル基またはエチル基で、Mはナトリウムまたはカリウムである。
【0022】
仕込方法は、水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒とアセト酢酸エステルとを予め混合する。
【0023】
また、その非プロトン性有機溶媒とアセト酢酸エステルとの混合した状態で、塩基である水酸化アルカリ化合物を撹拌しながら添加して所定時間反応させる。
【0024】
反応させる際には、常にアセト酢酸エステルが水酸化アルカリ化合物と比べ過剰に存在することが好ましい。
【0025】
そして、混合した状態の非プロトン性有機溶媒およびアセト酢酸エステルに対して、水酸化アルカリ化合物を後から添加することで、反応系内において、アセト酢酸エステルを過剰状態にしやすい。
【0026】
アセト酢酸エステルに対する水酸化アルカリ化合物の混合モル比が1.0より高いと、未反応塩基の影響で副反応が起こり、収率が低下する可能性がある。一方、アセト酢酸エステルに対する水酸化アルカリ化合物の混合モル比が0.5より低いと、未反応のアセト酢酸エステルの回収が多くなり、経済的に不利となる。
【0027】
したがって、アセト酢酸エステルに対する水酸化アルカリ化合物の混合モル比は0.5以上1.0以下が好ましい。
【0028】
また、水酸化アルカリ化合物を添加する際には、所定量の水酸化アルカリ化合物を一括に加えても良いし、分割して加えても良い。
【0029】
なお、水酸化アルカリ化合物を反応させる際の反応温度は、室温でも良いが、発熱反応であるため水浴等を用いた冷却下で行っても良い。
【0030】
使用する塩基は、安価な水酸化アルカリ化合物であり、例えば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等が好適に用いられる。
【0031】
使用する有機溶媒は、水への溶解度が高く、水と任意に混和する非プロトン性溶媒である。なお、水に任意に混和するとは、無限に(自由に)水に溶解することを意味する。
【0032】
この種の水に任意に混和する非プロトン性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、および、1,4−ジオキサン等が挙げられるが、比較的に沸点が低いアセトン、THFおよびアセトニトリルの少なくとも1種を用いることが好ましく、特にアセトンが安価であるためより好ましい。
【0033】
一方、プロトン性溶媒であるエタノールや非プロトン性極性溶媒で水への溶解度が小さい酢酸エチル等を用いると、アセト酢酸エステルアルカリ塩の収率が低下する。
【0034】
溶媒使用量は、アセト酢酸エステルに対して100ml/molより少なくいと、十分な親和性(溶媒和)が得られない可能性があり、アセト酢酸エステルに対して1000ml/molより多いと、溶媒回収負荷が多くなり経済的に不利になる可能性がある。
【0035】
したがって、溶媒の使用量は、アセト酢酸エステルに対して100ml/mol以上1000ml/mol以下の範囲が好ましい。
【0036】
次に反応後の工程について説明する。
【0037】
上述の反応で生成したアセト酢酸エステルアルカリ塩は、反応後に溶媒を30℃以下、好ましくは20℃以下まで冷却する。
【0038】
このように冷却することで、アセト酢酸エステルアルカリ塩を完全に析出させ、有機溶媒とアセト酢酸エステルアルカリ塩とを、ろ別、洗浄および乾燥を経て高純度のアセト酢酸エステルアルカリ塩を得ることができる。
【0039】
ろ別方法は、いずれのろ別方法等で適宜行うことができる。
【0040】
また、洗浄に用いられる液体は、例えばヘキサン等のように、アセト酢酸エステルアルカリ塩が溶解しない液体を適宜用いることができる。
【0041】
次に、このように製造されたアセト酢酸エステルアルカリ塩を原料として用いて、脂肪族ジケトンを製造する方法を説明する。
【0042】
脂肪族ジケトンは、CHCO(CHn+2COCHの式で示される。また、この式中では、nは4以上12以下の整数である。
【0043】
このような脂肪族ジケトンを製造する際には、上述のように製造されたアセト酢酸エステルアルカリ塩と、脂肪族ジヨウ化物とを反応させる。
【0044】
原料として用いる脂肪族ジヨウ化物は、I(CHIの式で示される。また、この式中のnは4以上12以下の整数である。
【0045】
そして、例えば脂肪族ジケトンとしての2,15−ヘキサデカンジオンを合成する場合には、水に任意に混和する非プロトン性有機溶媒であるアセトンとアセト酢酸エチルとを混合した後に、水酸化ナトリウムを添加して所定時間反応させアセト酢酸エチルナトリウム塩を合成する。
【0046】
その後、単離したアセト酢酸エチルナトリウム塩と脂肪族ジヨウ化物である1,10−ジヨードデカンとを反応させることで、2,15−ヘキサデカンジオンを高純度で得ることができる。
【0047】
なお、アセト酢酸エチルナトリウム塩の合成後にアセト酢酸エチルナトリウム塩を単離せずスラリー或いは溶液状態に、直接1,10−ジヨードデカンを添加して、2,15−ヘキサデカンジオンを合成しても良く、このような方法で得られた2,15−ヘキサデカンジオンの純度も90%以上と高純度である。
【0048】
次に、上記一実施の形態の効果を説明する。
【0049】
上記アセト酢酸エステルアルカリ塩の製造方法によれば、アセト酢酸エステルと、非プロトン性でかつ水への溶解度が高い有機溶媒との混合下に、比較的に安価な水酸化アルカリ化合物を添加することにより、高収率でアセト酢酸エステルアルカリ塩を合成できるため、例えばアルカリアルコキシド等の比較的に高価な塩基を用いずに、高収率にアセト酢酸エステルアルカリ塩を製造できる。
【0050】
有機溶媒としてアセトン、THFおよびアセトニトリルを用いることにより、これらの有機溶媒は比較的に沸点が低いため、より効率的にアセト酢酸エステルアルカリ塩を製造できる。
【0051】
このように合成したアセト酢酸エステルアルカリ塩と脂肪族ジヨウ化物とを反応させて脂肪族ジケトンを製造するため、例えば精製工程等を行わなくても、高純度の脂肪族ジケトンを製造できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0053】
[実施例1]
まず、実施例1としてアセト酢酸エチルナトリウム塩を合成した。
【0054】
還流冷却器を付した100mlフラスコにアセト酢酸エチル13.03g(0.1モル)とアセトン25mlとを供給し撹拌して混合させた後に、97%水酸化ナトリウム4.13g(0.1モル)を添加して反応させた。
【0055】
また反応後、アセトン溶媒を除去し、ろ過、ヘキサン洗浄および減圧乾燥して、白色結晶物15.14gを得た。
【0056】
得られた結晶の一部をガスクロマトグラフ測定用に少量取り分けて、その取り分けた結晶をアセトンと酢酸との混合溶媒で溶解した後、ガスクロマトグラフ法にて分析した結果、アセト酢酸エチルナトリウム塩の収率が99%であった。
【0057】
[実施例2]
次に、実施例2としてアセト酢酸エチルカリウム塩を合成した。
【0058】
還流冷却器を付した100mlフラスコにアセト酢酸エチル13.03g(0.1モル)とアセトン25mlとを供給し撹拌して混合させた後に、85%水酸化カリウム6.61g(0.1モル)を添加して反応させた。
【0059】
また反応後、アセトン溶媒を除去し、ろ過、ヘキサン洗浄および減圧乾燥して、白色結晶物16.98gを得た。
【0060】
得られた結晶の一部をガスクロマトグラフ測定用に少量取り分けて、その取り分けた結晶をアセトンと酢酸との混合溶媒で溶解した後、ガスクロマトグラフ法にて分析した結果、アセト酢酸エチルカリウム塩の収率が98%であった。
【0061】
[実施例3、実施例4、比較例1、比較例2および比較例3]
次に、実施例3、実施例4、比較例1、比較例2および比較例3として、アセトン以外の溶媒を用いてアセト酢酸エチルナトリウム塩を合成した。
【0062】
すなわち、これら実施例3、実施例4、比較例1、比較例2および比較例3では、溶媒を変えて実施例1と同様にアセト酢酸エチルナトリウム塩の合成を行った。
【0063】
上記各実施例および各比較例における使用溶媒、条件および収率を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例1ないし実施例4はいずれも収率が良好であるのに対し、プロトン性溶媒または水への溶解度が小さい溶媒を用いた比較例1ないし比較例3は収率が悪化した。
【0066】
[比較例4]
次に、比較例4として、仕込順序を変えてアセト酢酸エチルナトリウム塩を合成した。
【0067】
還流冷却器を付した100ml三口フラスコに、THF12.5mlと水酸化ナトリウム4.12g(0.1モル)とを加え、室温の撹拌下にてTHF12.5mlとアセト酢酸エチル13.03g(0.1モル)との混合物を1時間かけて滴下した。
【0068】
また反応後、THF溶媒を除去し、ろ過、ヘキサン洗浄および減圧乾燥して、白色結晶物14.89gを得た。
【0069】
得られた結晶の一部をガスクロマトグラフ測定用に少量取り分けて、その取り分けた結晶をアセトンと酢酸との混合溶媒で溶解した後、ガスクロマトグラフ法にて分析した結果、アセト酢酸エチルナトリウム塩の収率が93%となり、実施例4の収率より低い結果であった。
【0070】
[実施例5]
次に、実施例5として、脂肪族ジケトンである2,15−ヘキサデカンジオンを合成した。
【0071】
撹拌機、温度計および還流冷却器を付した2L四つ口フラスコに、アセト酢酸エチル260.3g(2.0モル)とアセトン500mlとを供給し撹拌して混合させた後に、97%水酸化ナトリウム61.9g(1.5モル)を添加して15分反応させた。
【0072】
次いで、1,10−ジヨードデカン197.0g(0.5モル)を添加した後、還流下にて6時間反応させた。
【0073】
反応終了後、減圧蒸留によりアセトンを留去し、2規定塩酸を加えて中和した後に分液を行った。
【0074】
また分液後、上層の有機層と10%水酸化ナトリウム水溶液800g(2.0モル)とを室温下にて8時間撹拌してけん化反応を行った後に、50%硫酸205.8g(1.1モル)を添加して3時間全還流して脱炭酸反応を行った。
【0075】
脱炭酸反応終了後、分液にて上層の有機層を分離し、室温まで冷却させて微黄色結晶物130.8gを得た。
【0076】
得られた結晶物の一部をガスクロマトグラフ測定用に少量取り分けて、その取り分けた結晶物の組成をガスクロマトグラフにて分析した結果、1,10−ジヨードデカンの転化率は100%で、2,15−ヘキサデカンジオンの純度が92%で、1,10−ジヨードデカンに対する2,15−ヘキサデカンジオンの収率は95%であった。
【0077】
[比較例5]
比較例5として、仕込順序を変えて脂肪族ジケトンである2,15−ヘキサデカンジオンを合成した。
【0078】
撹拌機、滴下ロート、温度計および還流冷却器を付した300ml四つ口フラスコに、97%水酸化ナトリウム12.4g(0.3モル)とTHF100mlとを秤量し、室温の撹拌下にてアセト酢酸エチル52.1g(0.4モル)を1時間かけて滴下した。
【0079】
次いで、温度を上げて1,10−ジヨードデカンを39.4g(0.1モル)を添加した後、還流下で6時間反応させた。
【0080】
反応終了後、減圧蒸留によりアセトンを留去し、2規定塩酸を加えて中和した後に分液を行った。
【0081】
また分液後、上層の有機層と10%水酸化ナトリウム水溶液160g(0.4モル)とを室温下にて8時間撹拌してけん化反応を行った後に、50%硫酸41.8g(0.2モル)を添加して3時間全還流して脱炭酸反応を行った。
【0082】
脱炭酸反応終了後、分液にて上層の有機層を分離し、室温まで冷却させて微黄色結晶物26.4gを得た。
【0083】
得られた結晶物の一部をガスクロマトグラフ測定用に少量取り分けて、その取り分けた結晶物の組成をガスクロマトグラフにて分析した結果、2,15−ヘキサデカンジオンの純度が84%で、1,10−ジヨードデカンに対する2,15−ヘキサデカンジオンの収率は87%であり、実施例5の純度および収率より低い結果であった。