(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態による傾斜計測装置、及び傾斜計測システムについて、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
まず、
図1を参照して、第1の実施形態による傾斜計測装置1の構成について説明する。
図1は、本実施形態による傾斜計測装置1の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、傾斜計測装置1は、2つの気圧変動センサ(11、12)と、移動機構20と、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、スリップリング35と、記憶部36と、計測処理部40とを備えている。
なお、本実施形態において、気圧変動センサ11と、気圧変動センサ12とは、同一の構成であり、傾斜計測装置1が備える任意の気圧変動センサを示す場合、又は特に区別しない場合には、気圧変動センサ10として説明する。
【0020】
本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物に設置されて、計測対象物の傾斜情報を検出する。ここで、計測対象物の傾斜情報には、例えば、計測対象物の傾斜角θ、水平度、傾斜の有無を示す情報などが含まれる。本実施形態では、一例として、傾斜計測装置1が、計測対象物の傾斜角θを検出する例について説明する。
なお、
図1において、XYZ直交座標系を設定し、気圧変動センサ10が移動する平面をXY平面とし、XY平面の直交方向をZ軸方向とする。また、
図1において、X軸方向は、紙面の左右方向とし、Y軸方向は、紙面の上下方向をとする。また、本実施形態では、傾斜計測装置1が検出する傾斜角θの検出方向を、
図1に示すX軸方向とし、高度の方向をZ軸方向として説明する。
【0021】
気圧変動センサ10は、気圧の変動を検出する差圧センサ(相対センサ)である。本実施形態では、2つ(複数の一例)の気圧変動センサ10が備えられており、2つの気圧変動センサ10のうちの少なくとも1つの気圧変動センサ10は、計測対象物に対して相対的に移動可能に配置されている。
図1に示す例では、2つの気圧変動センサ10(11、12)は、例えば、後述する移動機構20の回転板21の回転運動により円状に移動可能に、回転板21に配置されている。また、2つの気圧変動センサ10(11、12)は、所定の距離(例えば、距離D)を離して配置されており、検出方向(X軸方向)に沿って所定の距離を離して配置可能に構成されている。気圧変動センサ10は、検出した気圧の変動を、例えば、検出信号(気圧変動情報)として、傾斜変動情報生成部42に出力する。なお、気圧変動センサ10の構成の詳細については後述する。
【0022】
移動機構20は、計測対象物に対して相対的に、気圧変動センサ10を所定の移動経路で移動させる。移動機構20は、例えば、気圧変動センサ10を所定の移動経路として、円状に移動させる。すなわち、移動機構20は、気圧変動センサ10を同一平面上に移動させる。また、移動機構20は、回転板21と、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。移動機構20は、回転板21を回転させることよって気圧変動センサ10を円状に移動させる。
【0023】
回転板21(回転体の一例)は、気圧変動センサ10及び後述する磁石31が配置され、モータ23によって、Z軸方向の回転軸C1(中心軸)を中心に所定の回転速度で回転される。
モータ制御部22は、例えば、モータドライバを含み、モータ23を制御する。モータ制御部22は、回転板21を所定の回転速度で回転させて、気圧変動センサ10を円状に移動させる。
モータ23は、回転軸C1を介して回転板21と接続され、回転板21を回転させる。また、モータ23は、計測対象物に固定されているものとする。
【0024】
磁石31は、回転板21の円周付近に配置されており気圧変動センサ10(又は回転板21)の回転位置の検出に利用される。
回転検出部32(移動情報検出部の一例)は、気圧変動センサ10の移動情報を検出する。なお、気圧変動センサ10の移動情報とは、例えば、気圧変動センサ10の移動位置(回転位置)、移動量、速度、方向、及び位相などの情報であり、ここでは、一例として、気圧変動センサ10の回転位置を示す情報(回転位置情報)として説明する。回転検出部32は、例えば、ホール素子などの磁気検出素子であり、回転板21に配置された磁石31が接近することにより、回転板21の基準位置を検出し、検出信号を出力する。
なお、本実施形態では、回転板21が基準位置になった場合に、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12とを結ぶ方向である検出方向が、X軸方向になるように、磁石31及び回転検出部32が配置されているものとする。
【0025】
同期クロック信号生成部33(参照信号生成部の一例)は、回転検出部32が検出した移動情報に基づいて、所定の方向の傾斜に対応する同期クロック信号(参照信号)を生成する。すなわち、同期クロック信号生成部33は、回転板21の基準位置に応じて回転検出部32から出力された検出信号に基づいて、例えば、X軸方向の傾斜を同期検波する同期クロック信号を生成する。具体的に、同期クロック信号生成部33は、回転検出部32から出力された検出信号をトリガとして、回転板21の回転周期と同一周期のクロック信号を生成する。そして、同期クロック信号生成部33は、X軸方向の傾斜を同期検波するように、生成したクロック信号を遅延させて、同期クロック信号として計測処理部40に出力する。
【0026】
電源部34は、傾斜計測装置1を動作させるための電源電圧を生成し、生成した電源電圧を各部に供給する。また、電源部34は、スリップリング35を介して、回転板21上の気圧変動センサ10に電源電圧(電源電力)を供給する。
スリップリング35は、回転している回転板21上の気圧変動センサ10に、電源部34が生成した電源電圧(電源電力)を供給するとともに、気圧変動センサ10から出力された出力信号を計測処理部40に伝送する信号伝送手段である。スリップリング35を用いることにより、傾斜計測装置1は、回転している回転板21上に配置されている気圧変動センサ10の出力信号を適切に計測処理部40に伝送することが可能になる。
【0027】
記憶部36は、傾斜計測装置1が使用する各種情報を記憶する。記憶部36は、例えば、後述する計測対象物の傾斜情報の初期値(傾斜角初期値θ
0)を記憶する。
計測処理部40は、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、傾斜計測装置1における各種処理を実行する。計測処理部40は、例えば、モータ制御部22にモータ23により回転板21を回転させる。そして、計測処理部40は、回転板21が回転した状態での気圧変動センサ10の出力を取得し、取得した当該気圧変動センサ10の出力と、気圧変動センサ10の移動情報とに基づいて、後述する計測対象物の基礎傾斜情報を検出する。
【0028】
また、計測処理部40は、例えば、モータ制御部22に回転板21の回転を停止させる。そして、計測処理部40は、回転板21が停止した状態での2つの気圧変動センサ10の出力を気圧変動情報として取得し、取得した当該気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報(例えば、高度変動情報)を生成する。計測処理部40は、基礎傾斜情報と、傾斜変動情報(例えば、高度変動情報)とに基づいて、以降の計測対象物の傾斜情報(例えば、傾斜角θ)を生成する。
また、計測処理部40は、基礎傾斜情報検出部41と、傾斜変動情報生成部42と、傾斜情報生成部43とを備えている。
【0029】
基礎傾斜情報検出部41は、複数の気圧変動センサ10のうちの少なくとも1つの気圧変動センサ10であって、計測対象物に対して相対的に移動可能に配置されている少なくとも1つの気圧変動センサ10の出力と、少なくとも1つの気圧変動センサ10の移動情報とに基づいて、計測対象物の基礎傾斜情報を検出する。基礎傾斜情報検出部41は、例えば、気圧変動センサ10の出力と、気圧変動センサ10の移動情報とに基づいて、計測対象物の傾斜情報を検出する信号処理部である。すなわち、基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20によって所定の移動経路を移動された気圧変動センサ10の移動情報と、気圧変動センサ10の出力とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を基礎傾斜情報として検出する。
【0030】
基礎傾斜情報検出部41は、例えば、気圧変動センサ10の移動距離と、移動距離に対する気圧変動センサ10の出力値の変化とに基づいて、傾斜角を基礎傾斜情報として検出する。具体的に、基礎傾斜情報検出部41は、所定の移動経路を移動されて気圧変動センサ10から出力される周期的な出力信号と、同期クロック信号生成部33によって生成された参照信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、計測対象物の傾斜角θ(基礎傾斜角θ
S)を検出する。なお、基礎傾斜情報検出部41による傾斜角の検出原理の詳細については後述する。
【0031】
また、基礎傾斜情報検出部41は、傾斜計測装置1の起動時、又は所定のリセット要求に応じて、モータ23により回転板21を回転させて、基礎傾斜情報を検出する。ここで、所定のリセット要求には、例えば、所定の時間間隔が含まれ、基礎傾斜情報検出部41は、所定の時間間隔で基礎傾斜情報を検出する。また、所定のリセット要求には、ユーザによって、例えば、リセットボタンなどの入力ボタン(不図示)により要求されたタイミングが含まれ、基礎傾斜情報検出部41は、ユーザにより要求されたタイミングで基礎傾斜情報を検出するようにしてもよい。
【0032】
また、上述した所定の時間間隔は、例えば、製造時に予め定められた時間間隔であってもよいし、入力ボタン(不図示)などによりユーザによって指定された時間間隔であってもよい。また、所定の時間間隔は、リセットまでの時間間隔と、リセット時に得られる基礎傾斜情報と、後述する傾斜情報生成部43が傾斜変動情報に基づいて生成した傾斜情報との統計情報に基づいて定められてもよい。この場合、例えば、基礎傾斜情報検出部41が、リセット時に得られる基礎傾斜情報と、傾斜情報生成部43が傾斜変動情報に基づいて生成した傾斜情報との誤差と、リセットまでの経過時間とに基づいて、要求される精度を満たすリセット要求の適切な時間間隔を算出するようにしてもよい。
また、基礎傾斜情報検出部41は、同期検波部411と、傾斜角生成部412とを備えている。
【0033】
同期検波部411は、後述する回転板21を回転させている場合の気圧変動センサ10の周期的な出力信号と、同期クロック信号生成部33が生成した同期クロック信号とに基づいて同期検波を実行する。同期検波部411は、例えば、ロックインアンプ回路とローパスフィルタ(LPF)とを含み、気圧変動センサ10の出力信号の振幅に比例した直流信号を生成する。
【0034】
傾斜角生成部412は、同期検波部411によって実行された同期検波の結果に基づいて、傾斜角θを基礎傾斜情報として生成する。傾斜角生成部412は、例えば、気圧変動センサ10の出力信号の振幅に比例した直流信号に基づいて、気圧変動センサ10の高さの変化量を生成し、生成した高さの変化量に基づいて、計測対象物の傾斜角θを生成する。また、傾斜角生成部412は、生成した傾斜角θを示す情報を、基礎傾斜情報として出力する。
【0035】
傾斜変動情報生成部42は、少なくとも2つの気圧変動センサ10によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報を生成する。例えば、傾斜変動情報生成部42は、2つの気圧変動情報に基づいて、2つの気圧変動センサ10の高度差の変動を示す高度変動情報を、上述した傾斜変動情報として生成する。
例えば、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ11が検出した検出信号(気圧変動情報)と、気圧変動センサ12が検出した検出信号(気圧変動情報)との差分(気圧変動情報の差分情報ΔP)を算出する。この気圧変動情報の差分情報ΔPは、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12との高度差に対応する。傾斜変動情報生成部42は、気圧変動情報の差分情報ΔPを、例えば、変換テーブルなどを利用して、高度変動情報ΔH
Dを生成する。
【0036】
傾斜情報生成部43は、傾斜計測装置1の起動時、又は所定のリセット要求に応じて基礎傾斜情報検出部41によって検出された基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を、傾斜角初期値θ
0(初期値)として、記憶部36に記憶させる。すなわち、傾斜情報生成部43は、基礎傾斜情報検出部41によって基礎傾斜情報が検出された場合に、当該基礎傾斜情報を初期値として記憶部36に記憶させる。
また、傾斜情報生成部43は、記憶部36が記憶する傾斜角初期値θ
0と、傾斜変動情報(高度変動情報ΔH
D)とに基づいて、計測対象物の傾斜角θを検出する。例えば、傾斜情報生成部43は、傾斜角初期値θ
0を、上述した2つの気圧変動センサ10の距離Dにおける高度差ΔH
0に変換する。傾斜情報生成部43は、変換した高度差ΔH
0に高度変動情報ΔH
Dを加算した現在の計測対象物の傾斜角θに対応する高度差を算出し、当該高度差と、距離Dとに基づいて、現在の計測対象物の傾斜角θを算出する。すなわち、傾斜情報生成部43は、例えば、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S=傾斜角初期値θ
0)と、上述した所定の距離を示す距離情報(距離D)と、高度変動情報ΔH
Dとに基づいて、計測対象物の傾斜角θを検出する。
【0037】
このように、傾斜情報生成部43は、例えば、基礎傾斜情報検出部41によって基礎傾斜情報が検出された場合に、基礎傾斜情報検出部41によって検出された基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)と、傾斜変動情報生成部42によって生成された傾斜変動情報(高度変動情報ΔH
D)とに基づいて、計測対象物の傾斜角θを検出する。なお、傾斜情報生成部43による計測対象物の傾斜角θの算出処理の詳細については、後述する。
また、傾斜情報生成部43は、計測対象物の傾斜角θを検出した後に、記憶部36が記憶する傾斜角初期値θ
0を更新する。すなわち、傾斜情報生成部43は、検出した当該計測対象物の傾斜角θを新たな初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部36に記憶させる。
【0038】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態における気圧変動センサ10の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態による気圧変動センサ10の一例を示す構成図である。
図2(a)は、本実施形態における気圧変動センサ10の一例を示す平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すA−A線に沿った気圧変動センサ10の断面図である。
【0039】
図2に示すように、気圧変動センサ10は、表裏の圧力差に応じて変形するカンチレバー4と、一端がカンチレバー4と対向するように配設された蓋部52と、カンチレバー4の変位を測定するための気圧変動検出部5と、カンチレバー4及び蓋部52の一面に配設されたキャビティ筐体3と、を有している。
【0040】
キャビティ筐体3(センサ本体の一例)は、内部にキャビティ50が形成された箱状の部材である。キャビティ筐体3は、例えば、キャビティ50を構成するセラミック材よりなる第1筐体部3aと、第1筐体部3a上に配置され、かつ後述のシリコン支持層2a及びシリコン酸化膜等の酸化層2bよりなる第2筐体部3bとを有している。
【0041】
カンチレバー4は、例えば、シリコン支持層2a、シリコン酸化膜等の酸化層2b、及びシリコン活性層2cを熱的に貼り合わせたSOI基板2を加工することで形成されている。具体的には、カンチレバー4は、SOI基板2を構成するシリコン活性層2cよりなり、平板状のシリコン活性層2cから平面視コ字状に形成されたギャップ53を切り出した形状からなる。これにより、カンチレバー4は、基端部4aを固定端とし、蓋部52と対向する側の端部である先端部4bを自由端とした片持ち梁構造となる。
【0042】
また、カンチレバー4は、キャビティ筐体3に形成されたキャビティ50の上面を囲うように配置されている。つまり、カンチレバー4は、キャビティ50の開口を略閉塞している。カンチレバー4は、基端部4aを介してキャビティ筐体3に第2筐体部3b上に対して一体的に固定されることで、片持ち支持される。これにより、カンチレバー4は、基端部4aを固定端としてキャビティ50内部と外部との圧力差(差圧)に応じた撓み変形が可能になる。
このように、カンチレバー4は、空気をキャビティ50の内外に流通させるギャップ53(連通孔)を除くキャビティ50の開口面を塞ぐように基端部4aから先端部4bに向けて一方向に延びる板状であり、キャビティ50の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0043】
なお、カンチレバー4の基端部4aには、カンチレバー4が撓み変形しやすいように、平面視コ字状の貫通孔55が形成される。ただし、この貫通孔55の形状は、カンチレバー4の撓み変形を容易にする形状ならば、上記コ字状に限定されるものではない。
【0044】
蓋部52は、キャビティ50上方に位置し、ギャップ53を介して、カンチレバー4の周囲に配置されている。当該蓋部52は、シリコン活性層2cで構成される。
気圧変動検出部5は、外部から加わる応力に応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗60と、この電気抵抗値変化を取り出す検出回路62から構成されている。
ピエゾ抵抗60は、
図2に示すように、Y方向において、貫通孔55を挟んだ両側に対となって配置される。これら一対のピエゾ抵抗60は、導電性材料からなる配線部61を介して相互に電気的に接続されている。
なお、この配線部61及びピエゾ抵抗60を含む全体的な形状は、例えば、
図2に示すように平面視U字状とすることができるが、別の配置形状としてもよい。
【0045】
検出回路62は、ピエゾ抵抗60と接続され、ピエゾ抵抗60の電気抵抗値変化に基づいた信号を出力する回路である。検出回路62は、例えば、
図3に示すように、ブリッジ回路621及び差動増幅回路622で構成される。すなわち、検出回路62は、ピエゾ抵抗60と、固定抵抗Ro、可変抵抗Ro’を用いて、ブリッジ回路621を構成することで、ピエゾ抵抗60の電気抵抗値の変化を電圧変化として取り出すことができる。そして、検出回路62は、この電圧変化を差動増幅回路622により所定のゲインで増幅して出力する。
なお、上記のピエゾ抵抗60は、例えば、イオン注入法や拡散法等の各種方法によりリン等のドープ剤(不純物)をシリコン活性層2cにドーピングすることで形成される。また、ドープ剤は、シリコン活性層2c表面近傍のみに添加される。このため、ピエゾ抵抗60の電気抵抗値の変化は、カンチレバー4に加わる応力の圧縮/伸長の方向に対して正負逆となる。
【0046】
また、一対のピエゾ抵抗60間は、配線部61のみで電気的に導通するように構成されている。このため、カンチレバー4のうち配線部61近傍におけるシリコン活性層2cは、配線部61以外でピエゾ抵抗60双方が導通しないよう、エッチング等によりシリコン活性層2cを除去して形成した溝部56を有している。なお、上記の配線部61近傍におけるシリコン活性層2cは、部分的に不純物ドープされることで、エッチングを省略した構成としてもよい。
【0047】
次に、図面を参照して、本実施形態による傾斜計測装置1の動作について説明する。
まず、
図4及び
図5を参照して、本実施形態における気圧変動センサ10の動作について説明する。ここでは、計測対象物の高度が変化することで、大気(空気)の圧力が変化した場合のカンチレバー4の動作と、その時の検出回路62の出力特性について説明する。なお、以下の説明において、空気の圧力は、以下、外圧Poutと表記することとする。外圧Poutは、カンチレバー4のキャビティ筐体3への配設面と対向する面(すなわち、
図2における上面)側の圧力である。また、キャビティ50内部の内圧を内圧Pinと定義し、外圧Poutとする。
【0048】
図4は、本実施形態における気圧変動センサ10の出力信号の一例を示す図である。
ここで、
図4(a)は、外圧Pout及び内圧Pinの経時変化を示しており、
図4(b)は、検出回路62の出力信号の経時変化を示している。
また、
図5は、実施形態における気圧変動センサ10の動作の一例を示す図であり、
図4及び
図5に示すカンチレバー4の動作の一例を模式的に示す断面図である。
ここで、
図5(a)は、初期状態のカンチレバー4の断面図を示し、(
図5(b)は、外圧Poutが内圧Pinより高い状態のカンチレバー4の断面図を示している。また、
図5(c)は、キャビティ50内外の圧力が同じに戻った状態のカンチレバー4の断面図を示している。なお、
図5において、検出回路62の図示を省略する。
【0049】
まず、
図4(a)における期間Aのように、外圧Poutと内圧Pinとが等しく、差圧ΔPがゼロである場合には、
図5(a)に示すように、カンチレバー4は、撓み変形しない。
【0050】
次に、
図4(a)における時刻t1以降の期間Bのように、例えば、外圧Poutがステップ状に上昇すると、内圧Pinは急激に変化できず、差圧ΔPが生じるため、
図5(b)に示すように、カンチレバー4は、キャビティ50内部に向けて撓み変形する。すると、当該カンチレバー4の撓み変形に応じてピエゾ抵抗60に応力が加わり、電気抵抗値が変化するので、
図4(b)に示すように、検出回路62の出力信号が増大する。
【0051】
また、外圧Poutの上昇以降(時刻t1以降)において、ギャップ53を介してキャビティ50の外部から内部へと圧力伝達媒体が徐々に流動する。このため、
図4(a)に示すように、内圧Pinは、時間の経過とともに、外圧Poutに遅れながら、かつ外圧Poutの変動よりも緩やかな応答で上昇する。
その結果、内圧Pinが外圧Poutに徐々に近づくので、カンチレバー4の撓みが徐々に小さくなり、
図4(b)に示すように、上述の出力信号が、徐々に低下する。
【0052】
そして、
図4(a)に示す時刻t3以降の期間Dのように、内圧Pinが外圧Poutと同じになると、
図5(c)に示すように、カンチレバー4の撓み変形が解消され、
図5(a)に示す初期状態に復帰する。さらに、
図4(b)に示すように、検出回路62の出力信号も期間Aの初期状態と同値に戻る。
なお、検出回路62の出力信号は、初期状態における基準電圧と、ピエゾ抵抗60の抵抗変化に基づいて増幅された信号との加算となる。初期状態における基準電圧は、カンチレバー4に加わる差圧ΔPがゼロの場合の、
図3に図示したブリッジ回路621の分圧点Vaと分圧点Vbとの電圧差を差動増幅回路622で増幅した電圧値となる。
【0053】
なお、上述した気圧変動センサ10では、SOI基板2のシリコン活性層2cを利用して半導体プロセス技術によりカンチレバー4を形成できるので、非常に薄型化(例えば数十から数百nm厚)しやすい。したがって、気圧変動センサ10では、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
さらに、気圧変動センサ10では、外圧Poutが非常に緩やかに変化する場合、ギャップ53による圧力伝達媒体の流動制限機能が作用せず、内圧Pinは外圧Poutに対して時間遅れせず、ほぼ同じ圧力値となり、差圧ΔPが発生しない。本実施形態では、これを逆に利用し、外圧Poutが非常に遅い変化速度の場合(例えば、気象変化のような気圧変化の場合)、外圧Poutの変化を無視することが可能となる。よって、気象変化のような気圧変化をノイズとして除去することが可能になる。
【0054】
次に、
図6を参照して、上述した気圧変動センサ10の動作について説明する。
図6は、本実施形態における気圧変動センサ10の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、計測対象物に装着された傾斜計測装置1が、上述したX軸方向に傾斜した場合に、2つの気圧変動センサ10に大気圧(上述した外圧Pout)が変化する(ステップS101)。
【0055】
すると、気圧変動センサ10のキャビティ50内部の内圧である内圧Pinは、ステップS101における外圧Poutの変化に追従するように変化する(ステップS102)。ここで、ギャップ53は、キャビティ50内外を連通する連通孔として機能するため、カンチレバー4の表裏に加わる差圧に応じて、高圧側から低圧側へと空気が移動する。ただし、空気の移動が微小なギャップ53によって規制されているため、内圧Pinは、外圧Poutの変化に応じて急激に変化することはなく、外圧Poutの変化に対して遅れ
て追従することとなる。
【0056】
次に、カンチレバー4の表裏面には、上述の外圧Poutの変化に対する内圧Pinの遅れによって、圧力差(以下、差圧ΔP=Pout−Pin)が発生する(ステップS103)。その結果、カンチレバー4は、差圧ΔPの大きさに応じて撓み変形する(ステップS104)。
【0057】
次に、カンチレバー4が、撓み変形をすると、カンチレバー4の基端部4aに設けられたピエゾ抵抗60に応力が加わり(ステップS105)、ピエゾ抵抗60の電気抵抗値が変化する(ステップS106)。ここで、検出回路62は、ピエゾ抵抗60へ電流を流すことで、ピエゾ抵抗60の電気抵抗値の変化を検出し、当該電気抵抗の変化に応じた検出信号を出力する(ステップS107)。
【0058】
次に、
図7及び
図8を参照して、基礎傾斜情報検出部41による傾斜角の検出原理について説明する。
図7は、本実施形態における回転板21を回転させた気圧変動センサ10の水平時における出力信号の一例を説明する図である。
図7(a)において、傾斜計測装置1(モータ23)は、計測対象物OBに取り付けされており、回転板21を回転させた状態、且つ、計測対象物OBが水平である場合(計測対象物OBの水平時)の状態を示している。また、
図7(b)は、回転板21を回転させた状態、且つ、計測対象物OBの水平時における気圧変動センサ10の出力信号を示している。
【0059】
なお、
図7(b)において、グラフの縦軸は、気圧変動センサ10の出力信号の電圧を示し、グラフの横軸は、時間を示している。また、波形W1は、気圧変動センサ10の出力信号の波形を示している。
図7(a)に示すように、計測対象物OBが水平状態である場合、回転板21とともに、円状に移動する気圧変動センサ10は、水平に移動するため、
図7(b)の波形W1に示すように、一定の電圧を出力する。
【0060】
また、
図8は、本実施形態における回転板21を回転させた気圧変動センサ10の傾斜時における出力信号の一例を説明する図である。
図8(a)において、傾斜計測装置1(モータ23)は、計測対象物OBに取り付けされており、回転板21を回転させた状態、且つ、計測対象物OBがX軸方向に傾斜角θだけ傾斜している場合(計測対象物OBの傾斜時)の状態を示している。また、
図8(b)は、回転板21を回転させた状態、且つ、計測対象物OBの傾斜時における気圧変動センサ10の出力信号を示している。
なお、
図8(b)において、縦軸は、気圧変動センサ10の出力信号の電圧を示し、横軸は、時間を示している。また、波形W2は、気圧変動センサ10の出力信号の波形を示している。
【0061】
図8(a)に示すように、計測対象物OBがX軸方向に傾斜角θだけ傾斜している場合、回転板21とともに、円状に移動する気圧変動センサ10は、Z軸方向に変位するため、
図8(b)の波形W2に示すように、周期的な出力信号を出力する。この場合、気圧変動センサ10は、Z軸方向の変位(高さの変化)による気圧の変化を検出し、波形W2のような正弦波状の出力信号を出力する。なお、出力信号(波形W2)のピーク間の変化量を変化量ΔVoとすると、例えば、傾斜角θが大きい程、変化量ΔVoが大きくなり、傾斜角θが小さい程、変化量ΔVoが小さくなる。また、傾斜角θは、下記の式(1)により算出することができる。
【0063】
ここで、変数Rsは、
図8(a)に示すように、気圧変動センサ10の回転半径を示している。また、(変化量ΔVoに対応する高さの変化)は、気圧変動センサ10の出力信号の変化量ΔVoをZ軸方向の高さの変化に変換したものである。基礎傾斜情報検出部41は、例えば、演算により変化量ΔVoから(変化量ΔVoに対応する高さの変化)を変換してもよいし、変化量ΔVoと高さの変化とを対応付けた変換テーブルに基づいて、(変化量ΔVoに対応する高さの変化)を生成してもよい。
また、基礎傾斜情報検出部41は、上述した式(1)を利用して、傾斜角θを基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)として生成する。
【0064】
次に、
図9を参照して、傾斜情報生成部43による高度変動情報ΔH
Dの生成処理について説明する。
傾斜情報生成部43が傾斜変動情報として、高度変動情報ΔH
Dを生成する場合には、傾斜情報生成部43は、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12とが、掲出方向(X軸方向)に沿って配置されるように、回転板21を停止した状態にする。この状態において、計測対象物OBが水平である場合(計測対象物OBの水平時)には、気圧変動センサ10は、上述した
図7(b)と同様の出力信号を出力する。なお、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12とは、水平時のX軸方向において、距離Dだけ離れて配置されている。
【0065】
次に、
図9は、本実施形態による回転板21を停止させた気圧変動センサ10の傾斜時における出力信号の一例を説明する図である。
ここでは、
図7に示す状態から
図9に示す状態に計測対象物OBが傾斜した場合の一例である。
図9(a)において、傾斜計測装置1は、計測対象物OBがX軸方向に、傾斜角θだけ傾斜している場合の状態を示している。また、
図9(b)は、計測対象物OBの傾斜時における2つの気圧変動センサ10の出力信号(検出信号)を示している。
【0066】
図9(b)に示すグラフの縦軸は出力電圧を示し、横軸は時間を示している。
また、
図9(b)において、波形V12が、気圧変動センサ11の出力信号を示し、波形V22が、気圧変動センサ12の出力信号を示し、波形Diff2は、波形V12と波形V22の差を示している(Diff2=V12−V22)。
【0067】
計測対象物OBが傾斜すると、気圧変動センサ11及び気圧変動センサ12は、それぞれ高度が変化するため、各気圧変動センサ10が感じる気圧が変化し、出力が変化する。すなわち、
図9(b)に示すように、気圧変動センサ11の出力信号(波形V12)と、気圧変動センサ12の出力信号(波形V22)とは、符号が反転した波形になり、その差分である波形Diff2は、波形V12の2倍の検出値となる。
【0068】
ここで、波形Diff2は、計測対象物OBが傾斜したことによる気圧変動センサ11及び気圧変動センサ12の高さの変化分(高度変動情報ΔH
D)に対応する信号である。したがって、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ11の検出値と、気圧変動センサ12の検出値との差分(波形Diff2)を算出し、算出した当該差分(波形Diff2)に基づいて、高度変動情報ΔH
Dを生成する。
なお、例えば、気圧変動センサ12を中心にして回転した場合は、気圧変動センサ12の高度は不変なので気圧変動センサ12の出力信号は“0”のままで、気圧変動センサ11の出力信号のみ変化する。この場合も、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ11の検出値と、気圧変動センサ12の検出値との差分を算出することで、同一の高度変動情報ΔH
Dを得ることができる。
【0069】
ここで、
図9を参照して、本実施形態による傾斜角θの検出原理について説明する。
図9(a)に示すように、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12との高度差ΔH、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12との間の距離D、X軸方向の傾斜角θである場合に、下記の式(2)の関係が成り立つ。
【0071】
また、この式(2)を変形すると、傾斜角θは、以下の式(3)により算出することができる。
【0073】
なお、
図9に示す例は、水平状態からの傾斜であるため、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12との高度差ΔH(=高度変動情報ΔH
D)であるが、傾斜した状態で停止していた場合には、上記の式(3)では対応できない場合がある。
そのため、本実施形態による傾斜情報生成部43は、以下のように、傾斜角θを算出する。
【0074】
まず、傾斜情報生成部43は、傾斜した静止状態における2つの気圧変動センサ10の高度差ΔH
0を、傾斜角初期値θ
0(基礎傾斜角θ
S)に基づいて算出する。傾斜情報生成部43は、例えば、上述した式(2)を変形した下記の式(4)と、傾斜角初期値θ
0と、距離Dとに基づいて、静止時(前回算出時)の高度差ΔH
0を算出する。
【0076】
次に、傾斜情報生成部43は、傾斜変動情報生成部42が生成した高度変動情報ΔH
Dを取得し、静止時の高度差ΔH
0に高度変動情報ΔH
Dを加算した値を、高度差ΔHとして、下記の式(5)に用いて傾斜角θを算出する。
【0078】
次に、
図10を参照して、傾斜計測装置1の動作について説明する。
図10は、本実施形態による傾斜計測装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0079】
まず、傾斜計測装置1の基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20を駆動させて、基礎傾斜情報を検出する(ステップS201)。すなわち、基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20のモータ制御部22にモータ23を回転させることにより、回転板21を回転させる。基礎傾斜情報検出部41の同期検波部411は、気圧変動センサ10の周期的な出力信号と、同期クロック信号生成部33が生成した同期クロック信号とに基づいて同期検波を実行する。そして、基礎傾斜情報検出部41の傾斜角生成部412が、同期検波の実行結果に基づいて、気圧変動センサ10の高さの変化量を生成し、生成した高さの変化量と、上述した式(1)に基づいて、計測対象物の傾斜角θを生成する。また、傾斜角生成部412は、生成した傾斜角θを示す情報を、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)として傾斜情報生成部43に出力する。また、基礎傾斜情報検出部41は、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を検出後に、モータ制御部22にモータ23の回転を停止させる。
【0080】
次に、傾斜情報生成部43は、基礎傾斜情報を設定する(ステップS202)。傾斜情報生成部43は、基礎傾斜情報検出部41によって検出された基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を、傾斜角初期値θ
0(初期値)として、記憶部36に記憶させる。
【0081】
次に、傾斜情報生成部43は、リセット要求があるか否かを判定する(ステップS203)。傾斜情報生成部43は、例えば、所定の時間間隔で生成されるリセット要求があるか否かを判定する。傾斜情報生成部43は、リセット要求がある場合(ステップS203:YES)に、処理をステップS201に戻す。また、傾斜情報生成部43は、リセット要求がない場合(ステップS203:NO)に、処理をステップS204に戻す。
【0082】
ステップS204において、傾斜変動情報生成部42は、移動機構20を停止させた状態で、傾斜変動情報を計測する。例えば、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ11の検出値と、気圧変動センサ12の検出値との差分を算出し、算出した当該差分に基づいて、高度変動情報ΔH
Dを生成する。傾斜変動情報生成部42は、生成した高度変動情報ΔH
Dを、傾斜変動情報として、傾斜情報生成部43に出力する。
【0083】
次に、傾斜情報生成部43は、傾斜度(傾斜角θ)を算出する(ステップS205)。傾斜情報生成部43は、まず、記憶部36が記憶する初期傾斜度(傾斜角初期値θ
0)を取得し、上述した式(4)を用いて、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)の検出時、又は前回算出した傾斜角θに対応する高度差ΔH
0を算出する。次に、傾斜情報生成部43は、取得した高度変動情報ΔH
Dと、算出した当該高度差ΔH
0とに基づいて、傾斜角算出用の高度差ΔH(=ΔH
0+ΔH
D、累積高度差)を算出する。そして、傾斜情報生成部43は、上述した式(5)を用いて、現在の傾斜度(傾斜角θ)を算出する。
なお、傾斜情報生成部43は、算出した現在の傾斜角θを、新たな初期傾斜度(傾斜角初期値θ
0)として、記憶部36に記憶させる。
【0084】
次に、傾斜情報生成部43は、計測を継続するか否かを判定する(ステップS206)。傾斜情報生成部43は、計測を継続する場合(ステップS206:YES)に、処理をステップS203に戻す。また、傾斜情報生成部43は、計測を継続しない場合(ステップS206:NO)に、処理を終了する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態による傾斜計測装置1は、複数の気圧変動センサ10(例えば、2つの気圧変動センサ10)と、基礎傾斜情報検出部41と、傾斜変動情報生成部42と、傾斜情報生成部43とを備える。複数の気圧変動センサ10は、気圧の変動を検出する。基礎傾斜情報検出部41は、複数の気圧変動センサ10のうちの少なくとも1つの気圧変動センサ10であって、計測対象物に対して相対的に移動可能に配置されている少なくとも1つの気圧変動センサ10の出力と、当該気圧変動センサ10の移動情報(例えば、回転位置情報)とに基づいて、計測対象物の基礎傾斜情報(例えば、基礎傾斜角θ
S)を検出する。傾斜変動情報生成部42は、複数の気圧変動センサ10のうちの少なくとも2つの気圧変動センサ10であって、検出方向に沿って所定の距離(例えば、距離D)を離して配置されている少なくとも2つの気圧変動センサ10によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報を生成する。そして、傾斜情報生成部43は、基礎傾斜情報検出部41によって検出された基礎傾斜情報と、傾斜変動情報生成部42によって生成された傾斜変動情報とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を生成する。
【0086】
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、気圧変動センサ10を移動させて基礎傾斜情報検出部41が検出した基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)と、高精度に検出可能な気圧変動センサ10を静止させて生成(検出)された傾斜変動情報とに基づいて計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を計測するため、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。また、本実施形態による傾斜計測装置1では、例えば、基礎傾斜情報検出部41が基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を検出する際に気圧変動センサ10を移動させて、傾斜変動情報生成部42が傾斜変動情報を生成(検出)する際には、気圧変動センサ10を移動させる必要がない。すなわち、本実施形態による傾斜計測装置1では、気圧変動センサ10の移動は、間欠動作になる。そのため、本実施形態による傾斜計測装置1は、基礎傾斜情報検出部41のみで傾斜情報を計測する場合に比べて、傾斜情報を計測するための消費電力を低減することができる。よって、本実施形態による傾斜計測装置1は、消費電力を低減しつつ、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態による傾斜計測装置1では、例えば、加速度の影響を受けない気圧変動センサ10を利用して計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を検出するため、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物が加速運動している場合であっても、高精度に傾斜情報を計測することができる。
【0088】
また、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物の傾斜情報の初期値を記憶する記憶部36を備える。傾斜情報生成部43は、基礎傾斜情報検出部41によって基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)が検出された場合に、当該基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部36に記憶させる。傾斜情報生成部43は、記憶部36が記憶する初期値(傾斜角初期値θ
0)と、傾斜変動情報とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を検出するとともに、検出した当該計測対象物の傾斜情報を初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部36に記憶させる。
【0089】
これにより、初期値(傾斜角初期値θ
0)を記憶部36に記憶させて毎回更新して行くことで、本実施形態による傾斜計測装置1は、基礎傾斜情報検出部41による基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)の検出を、計測の度に毎回実行する必要がない。よって、本実施形態による傾斜計測装置1は、消費電力を低減しつつ、高精度に傾斜情報を計測することができる。
【0090】
また、本実施形態では、傾斜情報生成部43は、初期値(傾斜角初期値θ
0)を初期化する初期化要求(例えば、リセット要求)に応じて、基礎傾斜情報検出部41によって基礎傾斜情報が検出された場合に、基礎傾斜情報を初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部36に記憶させる。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、初期化要求(例えば、リセット要求)に応じて、基礎傾斜情報を初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部36に記憶させることにより、傾斜変動情報による誤差の蓄積を初期化(リセット)することができるため、検出精度を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、傾斜変動情報生成部42は、少なくとも2つの気圧変動情報に基づいて、少なくとも2つの気圧変動センサ10の高度差の変動を示す高度変動情報(ΔH
D)を、傾斜変動情報として生成する。傾斜情報生成部43は、基礎傾斜情報と、所定の距離(距離D)を示す距離情報と、高度変動情報(ΔH
D)とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を生成する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、例えば、式(4)及び式(5)に基づいて、簡易な演算により、高精度に傾斜情報を算出することができる。また、本実施形態による傾斜計測装置1は、積分による演算処理を必要としないため、誤差の蓄積がなく、傾斜情報(傾斜角θ)の検出精度を向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態では、基礎傾斜情報検出部41は、所定の時間間隔で基礎傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、所定の時間間隔で傾斜変動情報による誤差の蓄積を初期化(リセット)することができるため、検出精度を向上させることができる。
【0093】
また、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物に対して、少なくとも1つの気圧変動センサ10を所定の移動経路(例えば、円状の移動経路)で移動させる移動機構20を備える。基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20によって所定の移動経路を移動された少なくとも1つの気圧変動センサ10の移動情報と、少なくとも1つの気圧変動センサ10の出力とに基づいて、基礎傾斜情報を検出する。
これにより、気圧変動センサ10が、所定の移動経路(例えば、円状の移動経路)を移動するため、本実施形態による傾斜計測装置1は、位置情報(例えば、回転位置情報)を検出することで、容易に気圧変動センサ10の移動距離を算出することが可能になる。よって、本実施形態による傾斜計測装置1は、基礎傾斜情報を検出する際の移動情報の算出を簡略化することができる。
【0094】
また、本実施形態では、移動機構20は、気圧変動センサ10が配置される回転板21(回転体)を備え、回転板21を回転させることよって気圧変動センサ10を円状に移動させる。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、正弦波状の周期的な出力信号を気圧変動センサ10から容易に得ることができるため、例えば、同期検波などの簡易な検出手法を利用して、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を検出することができる。また、本実施形態による傾斜計測装置1は、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を検出する際に、気圧変動センサ10の回転半径Rsから気圧変動センサ10の移動距離を容易に算出することできる。よって、本実施形態による傾斜計測装置1は、基礎傾斜情報の検出処理を簡略化することができる。
【0095】
また、本実施形態による傾斜計測装置1は、移動情報に基づいて、検出方向の傾斜に対応する参照信号を生成する同期クロック信号生成部33(参照信号生成部)を備える。基礎傾斜情報検出部41は、所定の移動経路を移動されて気圧変動センサ10から出力される周期的な出力信号と、同期クロック信号生成部33によって生成された参照信号とに基づいて同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、基礎傾斜情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、同期検波を利用するため、基礎傾斜情報の検出処理をさらに簡略化することができる。
【0096】
また、本実施形態では、気圧変動センサ10は、空気が流入するキャビティ50を有するキャビティ筐体3(センサ本体)と、カンチレバー4と、気圧変動検出部5とを備えている。カンチレバー4は、空気をキャビティ50の内外に流通させるギャップ53(連通孔)を除くキャビティ50の開口面を塞ぐように基端部4aから先端部4bに向けて一方向に延びる板状であり、キャビティ50の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形する。気圧変動検出部5は、カンチレバー4の撓み変形に応じた気圧変動情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、カンチレバー4の撓み変形に応じた抵抗変化に基づいて、圧力変化(高度変化)をより正確に検出することができるため、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。なお、半導体プロセス技術によりカンチレバー4を形成できるので、本実施形態による傾斜計測装置1では、カンチレバー4を非常に薄型化(例えば数十から数百nm厚)することができる。よって、本実施形態による傾斜計測装置1では、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
【0097】
なお、上述した本実施形態による傾斜計測装置1は、基礎傾斜情報検出部41が基礎傾斜情報を検出する際に、気圧変動センサ10の出力信号をそのまま利用する例を説明したが、これに限定されるものではない。基礎傾斜情報検出部41は、例えば、傾斜変動情報生成部42と同様に、気圧変動センサ11の出力信号と、気圧変動センサ12の出力信号とを差分した出力信号(以下、差分出力信号という)を利用するようにしてもよい。
【0098】
図11は、回転板21を回転させた気圧変動センサ10の出力信号における差分生成の動作の一例を示す図である。
図11において、各グラフの縦軸は、各出力信号の電圧を示し、各グラフの横軸は、時間を示している。また、波形W11〜波形W13は、順に、気圧変動センサ11の出力信号、気圧変動センサ12の出力信号、及び差分出力信号の各波形を示している。
【0099】
基礎傾斜情報検出部41は、互いに逆位相の出力信号である、気圧変動センサ11の出力信号(波形W11)と気圧変動センサ12の出力信号(波形W12)とを差分し、波形W13に示すような差分出力信号を生成する。
図11に示す例では、時刻T11、時刻T12、時刻T13、及び時刻T14において、ノイズが発生し、気圧変動センサ11の出力信号及び気圧変動センサ12の出力信号にノイズが重畳されている。このような場合であっても、気圧変動センサ11の出力信号(波形W11)と気圧変動センサ12の出力信号(波形W12)とを差分することで、ノイズがキャンセルされる。そのため、基礎傾斜情報検出部41は、波形W13に示すように、ノイズの除去された差分出力信号を利用して、基礎傾斜情報を検出する。
【0100】
なお、差分出力信号のピーク間の電圧差V2は、気圧変動センサ10の出力信号におけるピーク間の電圧差(上述した変化量ΔVo)の2倍になる。そのため、この場合の基礎傾斜情報検出部41は、基礎傾斜情報を検出する際に、S/N比(エス/エヌ比:Signal−Noise ratio)を向上させることができる。
また、この場合の同期検波部411及び傾斜角生成部412の動作は、上述した本実施形態の動作と同様である。
【0101】
[第2の実施形態]
次に、
図12を参照して、第2の実施形態による傾斜計測装置1aについて説明する。
図12は、第2の実施形態による傾斜計測装置1aの一例を示す機能ブロック図である。
図12に示すように、傾斜計測装置1aは、2つの気圧変動センサ10(11、12)と、移動機構20aと、磁石31と、位置検出部32aと、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、フレキシブル基板35aと、記憶部36と、計測処理部40とを備えている。
なお、
図12において、
図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
本実施形態では、2つの気圧変動センサ10の移動を、円状の移動の代わりに、直線状に往復移動させる直線移動にした場合の一例について説明する。
移動機構20aは、2つの気圧変動センサ10が配置され、直線状に移動可能な移動板25(直線移動体)を備え、移動板25を直線状に移動させることによって気圧変動センサ10を直線移動させる。すなわち、移動機構20aは、気圧変動センサ10を直線状に往復移動させる直線移動を可能にする。また、移動機構20aは、例えば、リニアトラッキング機構30と、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。
【0103】
リニアトラッキング機構30は、回転板21と、クランクシャフト24と、移動板25と、レール26とを備え、回転板21の回転運動を、移動板25の直線移動(例えば、X軸方向の直線移動)に変換する。
クランクシャフト24は、回転板21の回転運動を、移動板25に伝達し、直線移動(例えば、X軸方向(水平時)の直線移動)に変換する。
移動板25(直線移動体の一例)は、気圧変動センサ10及び磁石31が配置され、モータ23によって、回転板21が回転されることによって、クランクシャフト24を介して、水平時にレール26上をX軸方向に直線状に移動する。
【0104】
モータ制御部22は、回転板21を所定の回転速度で回転させて、気圧変動センサ10を上述した直線移動させるように制御する。
位置検出部32a(移動情報検出部の一例)は、気圧変動センサ10の移動情報を検出する。位置検出部32aは、例えば、ホール素子などの磁気検出素子であり、移動板25に配置された磁石31が接近することにより、移動板25の基準位置を検出し、検出信号を同期クロック信号生成部33に出力する。
【0105】
次に、本実施形態による傾斜計測装置1aの動作について説明する。
本実施形態による傾斜計測装置1aでは、基礎傾斜情報検出部41が基礎傾斜情報を検出する際に、気圧変動センサ10が、移動機構20aによって、直線移動されることにより、気圧変動センサ10は、計測対象物の傾斜に応じて、周期的な出力信号を出力する。また、同期クロック信号生成部33は、位置検出部32aによって検出された移動板25の位置を示す情報に基づいて、所定の方向(例えば、X軸方向)の傾斜を検出するための同期クロック信号を生成する。計測処理部40の基礎傾斜情報検出部41は、気圧変動センサ10がフレキシブル基板35aを介して出力した周期的な出力信号と、同期クロック信号とに基づいて、同期検波を実行し、当該同期検波の結果に基づいて、基礎傾斜情報(基礎傾斜角θ
S)を検出する。
なお、計測処理部40の動作の詳細は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0106】
以上説明したように、本実施形態では、移動機構20aは、2つの気圧変動センサ10が配置され、直線状に移動可能な移動板25(直線移動体)を備え、移動板25を直線状に移動させることによって気圧変動センサ10を直線移動させる。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1aは、第1の実施形態と同様に、消費電力を低減しつつ、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。また、本実施形態による傾斜計測装置1aは、直線移動により、気圧変動センサ10が周期的な出力信号を出力するため、同期検波を利用して、基礎傾斜情報の検出処理を簡略化することができる。
【0107】
[第3の実施形態]
次に、
図13を参照して、第3の実施形態による傾斜計測装置1bについて説明する。
図13は、第3の実施形態による傾斜計測装置1bの一例を示す機能ブロック図である。
図13に示すように、傾斜計測装置1bは、2つの気圧変動センサ10(11、12)と、移動機構20bと、磁石31と、位置検出部32aと、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、フレキシブル基板35aと、記憶部36と、計測処理部40とを備えている。
なお、
図13において、
図12に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
本実施形態では、2つの気圧変動センサ10のうちの1つ(気圧変動センサ11)を移動させて、基礎傾斜情報を検出し、固定に配置された気圧変動センサ12と、直線状に移動可能な気圧変動センサ11とにより、傾斜変動情報を生成する場合の一例について説明する。
移動機構20bは、1つの気圧変動センサ10(11)が配置され、直線状に移動可能な移動板25(直線移動体)を備え、移動板25を直線状に移動させることによって気圧変動センサ11を直線移動させる。すなわち、移動機構20bは、気圧変動センサ11を直線状に往復移動させる直線移動を可能にする。また、移動機構20bは、例えば、リニアトラッキング機構30と、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。
【0109】
気圧変動センサ12は、移動板25が基準位置になった場合に、気圧変動センサ11と気圧変動センサ12とのX軸方向の距離が、所定の距離(距離D)になるように配置されている。ここでの基準位置とは、例えば、位置検出部32aが磁石31を検出する移動板25の位置である。
【0110】
また、本実施形態における基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20bによって移動させた1つの気圧変動センサ11の出力と、当該気圧変動センサ11の移動情報とに基づいて、基礎傾斜情報を検出する。
また、本実施形態における傾斜変動情報生成部42は、移動機構20bを停止させた気圧変動センサ11と、固定に配置された気圧変動センサ12とによって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、傾斜変動情報を生成する。
なお、計測処理部40の動作の詳細は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0111】
以上説明したように、本実施形態では、移動機構20bは、2つの気圧変動センサ10のうちの1つの気圧変動センサ11が配置され、直線状に移動可能な移動板25(直線移動体)を備え、移動板25を直線状に移動させることによって気圧変動センサ11を直線移動させる。また、2つの気圧変動センサ10のうちの1つの気圧変動センサ12が、移動機構20bの外に固定に配置されている。基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20bによって移動させた1つの気圧変動センサ11の出力と、当該気圧変動センサ11の移動情報とに基づいて、基礎傾斜情報を検出する。傾斜変動情報生成部42は、移動機構20bを停止させた気圧変動センサ11と、固定に配置された気圧変動センサ12とによって検出された気圧変動情報に基づいて、傾斜変動情報を生成する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1bは、第1の実施形態と同様に、消費電力を低減しつつ、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0112】
[第4の実施形態]
次に、
図14を参照して、第4の実施形態による傾斜計測装置1cについて説明する。
図14は、第4の実施形態による傾斜計測装置1cの一例を示す機能ブロック図である。
図14に示すように、傾斜計測装置1cは、3つの気圧変動センサ(11、13、14)と、移動機構20cと、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33と、電源部34と、スリップリング35と、記憶部36と、計測処理部40とを備えている。
なお、
図14において、
図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
本実施形態では、1つの気圧変動センサ11を移動させて基礎傾斜情報を検出するとともに、固定に配置された2つ気圧変動センサ(13、14)により、傾斜変動情報を生成する場合の一例について説明する。
【0114】
移動機構20cは、1つの気圧変動センサ11が配置された回転板21と、モータ制御部22と、モータ23とを備えている。移動機構20cは、回転板21上に配置された1つの気圧変動センサ11を所定の移動経路として、円状に移動させる。すなわち、移動機構20cは、回転板21を回転させることよって気圧変動センサ10を円状に移動させる。
【0115】
2つ気圧変動センサ(13、14)は、検出方向(X軸方向)に沿って所定の距離(距離D)を離して配置されている。
なお、本実施形態において、気圧変動センサ11と、気圧変動センサ13と、気圧変動センサ14とは、同一の構成であり、傾斜計測装置1cが備える任意の気圧変動センサを示す場合、又は特に区別しない場合には、気圧変動センサ10として説明する。
【0116】
また、本実施形態における基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20cによって移動させた1つの気圧変動センサ11の出力と、当該気圧変動センサ11の移動情報とに基づいて、基礎傾斜情報を検出する。
また、本実施形態における傾斜変動情報生成部42は、2つの気圧変動センサ(13、14)によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、傾斜変動情報を生成する。
なお、計測処理部40の動作の詳細は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0117】
以上説明したように、本実施形態における傾斜計測装置1cは、3つの気圧変動センサ10と、移動機構20cとを備えている。移動機構20cは、3つの気圧変動センサ10のうちの1つの気圧変動センサ11が配置され、円状に移動可能な回転板21を備え、回転板21を回転させることによって気圧変動センサ11を円状に移動させる。また、3つの気圧変動センサ10のうちの2つの気圧変動センサ(13、14)が、検出方向(X軸方向)に沿って所定の距離(距離D)を離して、移動機構20cの外に固定に配置されている。基礎傾斜情報検出部41は、移動機構20cによって移動させた1つの気圧変動センサ11の出力と、当該気圧変動センサ11の移動情報とに基づいて、基礎傾斜情報を検出する。傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ13と、気圧変動センサ14とによって検出された気圧変動情報に基づいて、傾斜変動情報を生成する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1cは、第1の実施形態と同様に、消費電力を低減しつつ、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0118】
[第5の実施形態]
次に、
図15を参照して、第5の実施形態による傾斜計測システム100について説明する。
なお、本実施形態では、第1の実施形態の傾斜計測装置1を複数の装置に分割して、傾斜計測システム100とした場合の一例について説明する。
図15に示すように、傾斜計測システム100は、傾斜計測装置100Aと、センサユニット100Bとを備えている。
なお、
図15において、
図1に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0119】
傾斜計測装置100Aは、電源部34と、記憶部36と、計測処理部40とを備えている。また、センサユニット100Bは、2つの気圧変動センサ10と、移動機構20と、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33と、スリップリング35とを備えている。
本実施形態による傾斜計測システム100は、2つの気圧変動センサ10と、移動機構20と、磁石31と、回転検出部32と、同期クロック信号生成部33と、スリップリング35とを、傾斜計測装置100Aとは別体のセンサユニット100Bに備えるように構成し、傾斜計測装置100Aと、センサユニット100Bとを異なる場所に配置することを可能にする。
なお、傾斜計測装置100Aと、センサユニット100Bとの間の接続は、有線接続であってもよいし、無線通信などで接続するようにしてもよい。
【0120】
以上説明したように、本実施形態による傾斜計測システム100は、第1の実施形態の傾斜計測装置1と同様に、複数の気圧変動センサ10と、基礎傾斜情報検出部41と、傾斜情報生成部43とを備えている。
これにより、本実施形態による傾斜計測システム100は、第1の実施形態の傾斜計測装置1と同様に、消費電力を低減しつつ、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0121】
また、本実施形態による傾斜計測方法は、気圧の変動を検出する複数の気圧変動センサ10を備える傾斜計測システム100(傾斜計測装置1)の傾斜計測方法であって、基礎傾斜情報検出ステップと、傾斜変動情報生成ステップと、傾斜情報生成ステップとを含んでいる。基礎傾斜情報検出ステップにおいて、基礎傾斜情報検出部41が、複数の気圧変動センサ10のうちの少なくとも1つの気圧変動センサ10であって、計測対象物に対して相対的に移動可能に配置されている少なくとも1つの気圧変動センサ10の出力と、少なくとも1つの気圧変動センサ10の移動情報とに基づいて、計測対象物の基礎傾斜情報を検出する。傾斜変動情報生成ステップにおいて、傾斜変動情報生成部42が、複数の気圧変動センサ10のうちの少なくとも2つの気圧変動センサ10であって、検出方向に沿って所定の距離を離して配置されている少なくとも2つの気圧変動センサ10によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報(例えば、高度変動情報ΔH
D)を生成する。傾斜情報生成ステップにおいて、傾斜情報生成部43が、基礎傾斜情報検出ステップによって検出された基礎傾斜情報と、傾斜変動情報生成ステップによって生成された傾斜変動情報とに基づいて、計測対象物の傾斜情報を生成する。
これにより、本実施形態による傾斜計測方法は、上述した第1の実施形態の傾斜計測装置1、及び傾斜計測システム100と同様に、消費電力を低減しつつ、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0122】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、傾斜計測装置1(1a〜1c)が、気圧変動センサ10を2個又は3個備える例を説明したが、3個以上の気圧変動センサ10を備えるようにしてもよい。
【0123】
また、上記の各実施形態において、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報の一例として、高度変動情報ΔH
Dを適用する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、計測対象物が水平に近い範囲でのみ使用する場合に、傾斜変動情報は、傾斜変動情報生成部42によって、上述した式(3)に基づいて、生成された傾斜角の変動分(Δθ)であってもよい。この場合、傾斜情報生成部43は、記憶部36が記憶する傾斜角初期値θ
0に、当該傾斜角の変動分(Δθ)を加算して、現在の傾斜角θを算出してもよい。
【0124】
また、上記の各実施形態において、記憶部36には、傾斜角初期値θ
0を記憶させる例を説明したが、傾斜角初期値θ
0の代わりに、傾斜角初期値θ
0から変換した高度差ΔH
0を記憶させるようにしてもよい。
【0125】
また、上記の第4の実施形態において、気圧変動センサ10を円状に移動させる移動機構20cの代わりに、気圧変動センサ10を直線移動させる第3の実施形態の移動機構20bを用いるようにしてもよい。
また、上記の各実施形態において、移動機構20(20a〜20c)は、モータ23を備え、能動的に気圧変動センサ10を移動させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、傾斜計測装置1(1a〜1c)は、移動機構20(20a〜20c)を備えずに、風車、水車、又は人力などによって、受動的に気圧変動センサ10を移動されるようにしてもよい。
【0126】
なお、上述した傾斜計測装置1(1a〜1c)が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した傾斜計測装置1(1a〜1c)が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した傾斜計測装置1(1a〜1c)が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0127】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に傾斜計測装置1(1a〜1c)が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0128】
また、上述した傾斜計測装置1(1a〜1c)が備える機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。