特許第6782709号(P6782709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6782709自動的に作動されるセントライザを装備する航空機用ターボシャフトエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782709
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】自動的に作動されるセントライザを装備する航空機用ターボシャフトエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01D 15/12 20060101AFI20201102BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20201102BHJP
   F02C 7/36 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   F01D15/12
   F01D25/16 B
   F02C7/36
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-555507(P2017-555507)
(86)(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公表番号】特表2018-521254(P2018-521254A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】FR2016050976
(87)【国際公開番号】WO2016174340
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】1553752
(32)【優先日】2015年4月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラファルグ,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ブロティエ,セバスチャン
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−529756(JP,A)
【文献】 特表2013−534585(JP,A)
【文献】 特表2007−531855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 15/12
F01D 25/16
F02C 7/36
B64C 27/58
B64D 35/00−35/08
F16C 41/04
F16C 43/00−43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速ギヤボックス(10)に機械的に結合され、または減速ギヤボックス(10)から分離され得るように構成された動力シャフト(8)に取り付けられた、ガス発生器(6)およびフリータービン(7)が中に配置されたケーシング(5)を備えるターボシャフトエンジンであって、
少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフト(8)のための軸受を形成し、前記動力シャフト(8)と前記減速ギヤボックス(10)との間の機械的分離に相当する作動位置として知られている位置と、少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフト(8)から離され、前記動力シャフト(8)と前記減速ギヤボックス(10)との間の機械的結合に相当する、受動位置として知られている位置との間を移動できる少なくとも1つのセントライザ(12)を備えることを特徴とする、ターボシャフトエンジン。
【請求項2】
少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフト(8)を前記減速ギヤボックス(10)に結合する間に、前記作動位置から前記受動位置まで自動的に通過できるように、および少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフト(8)を前記減速ギヤボックス(10)から分離する間に、前記受動位置から前記作動位置まで自動的に通過できるように、構成されることを特徴とする、請求項1に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項3】
少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフトの軸線(X’X)に平行な軸線を含み、前記ケーシング(5)の円錐形部分(14)と同じ形状の円錐形ガイドランプ(13)を備え、その結果、前記ケーシング(5)の前記円錐形部分(14)上を前記円錐形ガイドランプ(13)が摺動することにより、前記動力シャフト(8)に対して前記セントライザ(12)を移動させることを特徴とする、請求項2に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項4】
前記ケーシング(5)とセントライザ(12)との間に、前記動力シャフト(8)に垂直に取り付けられた少なくとも1つの径方向ばね(16)と、前記ケーシング(5)とこのセントライザ(12)との間に延在する少なくとも1つの軸方向ばね(17)とを備え、前記少なくとも1つの径方向ばね(16)および前記少なくとも1つの軸方向ばね(17)が、ケーシングに対して固定され、セントライザに対して摺動可能であるように取り付けられており、前記径方向ばね(16)および前記軸方向ばね(17)によって、前記ケーシング(5)の前記円錐形部分(14)上を前記円錐形ガイドランプ(13)が自発的に摺動することに対抗する合力を前記ケーシング(5)に向かって及ぼすことができることを特徴とする、請求項3に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項5】
少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフト(8)の軸線(X’X)に対して垂直な平面内で、減速ギヤボックス(10)の軸受面に対向して延在する停止部(15)を備えて、その結果、前記動力シャフト(8)と前記減速ギヤボックス(10)との間の機械的結合が、前記軸受面と前記停止部(15)との間の機械的接触を生成し、機械的接触は、前記少なくとも1つの径方向ばね(16)および前記少なくとも1つの軸方向ばね(17)の圧縮を介して、前記セントライザ(12)に通じ、動力シャフト(8)のための軸受を形成する前記作動位置から、前記セントライザ(12)が動力シャフト(8)から離れている前記受動位置まで前記セントライザ(12)が前記ケーシング(5)の前記円錐形部分(14)上を摺動することを特徴とする、請求項4に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項6】
少なくとも1つのセントライザ(12)が、前記動力シャフト(8)との凹状の接触面(18)を含み、その結果、作動位置で前記動力シャフト(8)を少なくとも部分的に取り囲むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項7】
前記動力シャフト(8)の周りに配置された少なくとも2つのセントライザ(42、43;44、45、46)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのターボシャフトエンジンを備えるヘリコプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用のターボシャフトエンジン、特に、軸受の1つが減速ギヤボックスの中に移動されるフリータービンを含むターボシャフトエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボシャフトエンジンは、既知の方法で、ガス発生器と、動力シャフトとして知られているシャフトに取り付けられたフリータービンとを含む。この動力シャフトは、減速ギヤボックスに機械的に結合され得るように構成されている。この減速ギヤボックスは、例えば、ヘリコプターの場合、ヘリコプターのロータに結合された動力伝達ギヤボックスである。フリータービンの動力シャフトと減速ギヤボックスとが機械的に結合される場合、動力シャフトの動力が動力伝達ギヤボックスに伝達され、これによってヘリコプターのロータを回転させることができる。
【0003】
フリータービンの動力シャフトは、ガス発生器によって生成されたガスを受け取り、それらの圧力を減少させ、受け取られたガスの運動エネルギーを、動力シャフトによって回収される機械エネルギーに変換することを可能にするフリータービンによって回転駆動される。
【0004】
したがって、動力シャフトは、減速ギヤボックスに結合されるように構成された動力端として既知の一方の端部と、フリータービンのブレードを一般的に支持する自由端と呼ばれる反対側の端部との2つの端部を備える。
【0005】
加えて、現在の傾向は、減速ギヤボックスに直接嵌着され得るターボシャフトエンジンを設計することである。一体化され得るこの種のターボシャフトエンジンは、減速ギヤボックス上に直接取り付けられ、この減速ギヤボックスによって保持され得るように構成されている。したがって、動力シャフトと減速ギヤボックスとの間の機械的結合は、はめ込み結合である。このはめ込みは、垂直、水平または斜めとすることができる。この機能により、航空機のドライブトレイン全体にわたる質量を大幅に節約することが可能である。一体化され得るターボシャフトエンジンは、例えばターボシャフトエンジンのメンテナンス作業のために、減速ギヤボックスから容易く取り外され得るという利点をさらに有する。
【0006】
この状況で、動力シャフトの動力端の軸受を直接減速ギヤボックスの中に移動させることが意図されている。この特定の配置により、ターボシャフトエンジンおよび減速ギヤボックスによって形成されるドライブトレインの軸方向の長さを最小にすることが可能になる。さらに、エンジンと減速ギヤボックスとの間のこの結合は、伝達システム、すなわちジンバルおよび「フレクターズ(flectors)」または「ベンディックス(Bendix)」タイプのシステムをなくすことによって単純化される。
【0007】
減速ギヤボックス内の動力シャフトの動力端のための軸受のこの配置から生じる技術的問題の1つは、動力シャフトが減速ギヤボックスに嵌着されていない場合、動力シャフトは動力軸受によって、もはや保持されないことである。その結果として、タービンエンジンが減速ギヤボックスに嵌着されていないすべての状況において、例えば、ターボシャフトエンジンを製造または維持管理場所から、ターボシャフトエンジンを航空機に取り付けるための場所まで運搬中、ターボシャフトエンジンの保管中など、シャフトの径方向の振動によって、ターボシャフトエンジンのシールシステムおよび転がり軸受が損傷する危険性がある。例えば、シャフトの径方向の振動は、カーボンリングまたはリップシールを有する動的シールタイプのシールシステムに損傷を生じさせる可能性がある。保持のない状態は、空気システムによって供給されるラビリンスシールの場合、例えば保持されていない動力シャフトと径方向に接触するラビリンス歯との間の接触によって、ロータとステータとの接触をさらに引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、本発明の少なくとも1つの実施形態において、従来技術のターボシャフトエンジンが直面する技術的問題の少なくともいくつかを克服するターボシャフトエンジンを提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの実施形態において、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスから機械的に分離される場合を含めて、減速ギヤボックスに嵌着されることができ、そのシールシステムおよび、または転がり軸受に損傷を与える可能性が低いターボシャフトエンジンを提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスから機械的に分離される場合を含めて、動力シャフトの動力端の軸受を保持することを可能にするはめ込み可能なターボシャフトエンジンを提供することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、本発明による少なくとも1つのターボシャフトエンジンを装備する航空機、特にヘリコプターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これを実施するために、本発明は、減速ギヤボックスに機械的に結合、または分離されることができるように構成された動力シャフトに取り付けられたガス発生器とフリータービンとが配置されたケーシングを含むターボシャフトエンジンに関する。
【0013】
本発明によるターボシャフトエンジンが、前記動力シャフトのための軸受を形成し、前記動力シャフトと前記減速ギヤボックスとの間の機械的分離に相当する作動位置として知られる位置と、前記動力シャフトから離され、前記動力シャフトと前記減速ギヤボックスとの間の機械的結合に相当する受動位置として知られている位置との間で移動できる少なくとも1つのセントライザを備えることを特徴とする。
【0014】
したがって、本発明によるターボシャフトエンジンは、動力シャフトのための軸受を形成し、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスから分離された場合、ターボシャフトエンジンが動力シャフトを自己保持することができる作動位置に配置されるように適合された可動セントライザを装備する。加えて、動力シャフトが減速ギヤボックスに機械的に結合されている場合、可動セントライザは受動位置にあり、その場合、動力シャフトから径方向に離れており、このシャフトを任意の機械的制約から解放する。
【0015】
したがって、本発明によるターボシャフトエンジンは、具体的には、減速ギヤボックスに嵌着可能なターボシャフトエンジンを形成することを意図される。
【0016】
したがって、この種のはめ込み可能なターボシャフトエンジンは、前記ターボシャフトエンジンが前記減速ギヤボックスから分離される場合、前記動力シャフトのための軸受を形成し、前記動力シャフトと前記減速ギヤボックスとの間の機械的分離に相当する作動位置と、前記ターボシャフトエンジンが前記減速ギヤボックスに嵌着される場合、セントライザが前記動力シャフトから離され、前記動力シャフトと前記減速ギヤボックスとの間の機械的結合に相当する受動位置との間で移動できる少なくとも1つのセントライザを備える。
【0017】
したがって、ターボシャフトエンジンの格納、ターボシャフトエンジンの嵌着、または取り外し、ターボシャフトエンジンの運搬などの、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスに嵌着されていないすべての状況において、フリータービンの動力シャフトが可動セントライザによって定位置に保持され、そのとき、可動セントライザは作動位置にあり、動力シャフトのための軸受を形成する。
【0018】
実際には、動力シャフトは、それぞれの端部の近傍に少なくとも1つの軸受を備える。減速ギヤボックスの近傍の端部は、動力端として知られており、他方の端部は、自由端として知られている。自由端のための軸受は、ターボシャフトエンジンのケーシング上に位置する軸受ハウジングによって形成される。動力端のための軸受は、可動セントライザが作動位置にあることによって形成される。一旦減速ギヤボックスに嵌着されると、軸受が減速ギヤボックスによって直接形成され、次いで減速ギヤボックスは、作動位置にある可動セントライザによって形成される軸受に取って代わる。
【0019】
有利には、本発明によれば、少なくとも1つの可動セントライザ、好ましくは各可動セントライザが、前記動力シャフトを前記減速ギヤボックスに結合する間に前記作動位置から前記受動位置まで自動的に通過できるように、および少なくとも1つの可動セントライザが、前記減速ギヤボックスから前記動力シャフトが分離する間に前記受動位置から前記作動位置まで自動的に通過できるように、構成される。
【0020】
この有利な変形形態によれば、受動位置から作動位置までの移行は自動的であり、減速ギヤボックスと動力シャフトとの機械的分離に付随しており、作動位置から受動位置までの移行は自動的であり、ターボシャフトエンジンを減速機に嵌着することに付随している。
【0021】
この作動位置から受動位置までの移行およびその逆の移動が自動的であるので、ターボシャフトエンジンを減速ギヤボックスに嵌着すること、またはそれを減速ギヤボックスからの取り外すことは、可動セントライザに嵌着されていないターボシャフトエンジンと比較して、用心する必要性がより少なくなる。これは、ターボシャフトエンジンの取り外し中、動力シャフトのための軸受を形成する可動セントライザが、自動的に自ら位置決めし、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスに嵌着される場合には、セントライザがシャフトを自動的に解放するからである。したがって、本発明のこの変形形態によるターボシャフトエンジンの作業は、作業者にとって、操作中にターボシャフトエンジンを嵌着し、または取り外すことが特に容易である。
【0022】
有利には、本発明によれば、少なくとも1つの可動セントライザ、好適には各可動セントライザが、前記動力シャフトの軸線に平行な軸線を含み、前記ケーシングの円錐形部分と同じ形状の円錐形ガイドランプを備え、その結果、前記円錐形ガイドランプが前記ケーシングの前記円錐形部分上を摺動することによって、前記動力シャフトに対して前記可動セントライザを移動させる。
【0023】
この変形形態によれば、可動セントライザは、ターボシャフトエンジンのケーシングの円錐形部分と同じ形状の円錐形ガイドランプを含む。このガイドランプの軸線が動力シャフトの軸線に平行であるので、ランプの傾斜は動力シャフトの軸線に対して傾斜している。したがって、セントライザがケーシングの円錐形部分上を摺動することによって、ケーシングの円錐形部分に対するセントライザの移動方向に依存して、作動位置から受動位置まで、またはその逆に、動力シャフトに対してセントライザの移動が起こる。
【0024】
有利には、本発明によるターボシャフトエンジンは、前記ケーシングと可動セントライザとの間に、前記動力シャフトに垂直に取り付けられた少なくとも1つのばねと、前記ケーシングとこの可動セントライザとの間に延在する少なくとも1つの軸方向ばねとを備え、前記ばねが、ケーシングに対して固定され、可動セントライザに対して摺動可能であるように取り付けられており、前記ばねによって、前記ケーシングの前記円錐形部分上の前記ガイドランプの自発的な摺動に対抗する合力を前記ケーシングに向かって及ぼすことができる。
【0025】
他の変形形態によれば、これらのばねは、他の同等の弾性手段によって取り替えられる。
【0026】
追加の変形形態によれば、ばねまたは弾性手段は動力シャフトの軸線に対して傾斜している。
【0027】
これらの異なる変形形態によれば、ばね(または同等の弾性手段)は、ケーシングに向かって円錐形部分上のガイドランプの自発的な摺動に対抗する。言い換えれば、外部の制約がない場合、セントライザの円錐形ランプは、ケーシングの円錐形部分と接触していない。外部の拘束がない場合、ばねは、動力シャフトのための軸受を形成することができるように、可動セントライザを動力シャフトに向かって押し戻す。ばねは、可動セントライザに沿って摺動可能に取り付けられ、ケーシングに対して固定されるので、各ばねは、セントライザの移動を垂直方向に制約することなく、可動セントライザを好ましい方向に移動させる。移動の組み合わせは、ガイドランプに沿った移動を形成する。
【0028】
反対に、ケーシングに向かってセントライザに外力が加えられるならば、ガイドランプはケーシングの円錐形部分上を摺動し、動力シャフトから離れて径方向に移動する。
【0029】
この目的のために、有利にかつ本発明によれば、可動セントライザが、前記動力シャフトの軸線に対して垂直な平面内で、減速ギヤボックスの軸受面の反対側に延在する停止部を備えて、その結果、前記動力シャフトと前記減速ギヤボックスとの間の機械的結合が、前記軸受面と前記停止部との間の機械的接触を生成し、機械的接触は、前記ばねの圧縮を介して、前記セントライザに通じ、動力シャフトのための軸受を形成する前記作動位置から、前記セントライザがシャフトから離れている前記受動位置へ前記セントライザが前記ケーシングの前記円錐形部分上を摺動する。
【0030】
この変形形態によれば、ターボシャフトエンジンを減速ギヤボックスに嵌着することにより生じる、減速ギヤボックスの軸受面と可動セントライザの停止部との間の接触は、自動的にセントライザがケーシングの円錐形部分上を摺動し、したがって可動セントライザが動力シャフトから離れることになる。したがって、可動セントライザは、自動的に受動位置に移動する。反対に、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスから分離されるとすぐに、セントライザの停止部は、もはや減速ギヤボックスによって制約されず、したがってばねは、セントライザを動力シャフトに向かって押し戻し、それによってシャフトのための支持軸受を形成する。
【0031】
有利には、本発明によれば、少なくとも1つの可動セントライザ、好適には各可動セントライザは、作動位置で前記シャフトを少なくとも部分的に取り囲むように、前記動力シャフトと接触する凹面を有する。
【0032】
別の変形形態によれば、少なくとも1つの可動セントライザは、前記動力シャフトとの接触凸面を有する。
【0033】
有利には、本発明によるターボシャフトエンジンは、前記動力シャフトの周りに配置された少なくとも2つの可動セントライザを含む。
【0034】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのターボシャフトエンジンを備える航空機、特にヘリコプターに関する。
【0035】
本発明は、ターボシャフトエンジンおよびターボシャフトエンジンを備えた航空機にも関し、これらは上述のまたは下述の特徴のすべてまたはいくつかを組み合わせることを特徴とする。
【0036】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照して単に限定しない説明として与えられる、以下の説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】減速ギヤボックスに嵌着されたターボシャフトエンジンの横断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるターボシャフトエンジンの詳細の横断面図であり、セントライザが受動位置にあることを示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるターボシャフトエンジンの詳細の断面図であり、セントライザが作動位置にあることを示す図である。
図4】2つの可動セントライザを備えた本発明の一実施形態によるターボシャフトエンジンの詳細の横断面図である。
図5】3つの可動セントライザを備えた本発明の一実施形態によるターボシャフトエンジンの詳細の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
例示および明瞭化のために、図面は、厳密に縮尺通りに、または比例して描かれているのではない。図面を参照して以下の詳細な説明の全体において、別途の指摘が無い限り、ターボシャフトエンジンの各要素は、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスに水平に嵌着される位置にある場合に配置されるものとして説明される。この構成は、特に図1に示されている。さらに、「軸方向」という用語は、ターボシャフトエンジンの中心軸線X’Xに沿った位置に関する。「径方向」という用語は、この中心軸線に垂直な位置に関する。最後に、異なる図面の要素が同じ参照符号を有する場合、これらの要素は同一である。
【0039】
図1に示すように、本発明によるターボシャフトエンジンは、ガス発生器6およびフリータービン7が取り付けられたケーシング5を備える。フリータービン7は、動力シャフト8と一体である。図面の実施形態によれば、フリータービン7を支持し、かつターボシャフトエンジンを減速ギヤボックス10に結合することを可能にする動力シャフト8が、ガス発生器のシャフトの内部を通過して、その結果、動力端9はガス発生器側にある。ガス発生器6およびその作動は詳細には説明されないが、当業者には公知である。本発明は、動力シャフトがガス発生器を横断せず、したがって動力端がガス発生器の反対側にあるターボシャフトエンジンにも応用されることを理解されるであろう。
【0040】
動力シャフト8は、ターボシャフトエンジンのX’X方向に延在する。加えて、動力シャフト8は、ヘリコプターの動力伝達ギヤボックスなどの減速ギヤボックス10に結合され得るように構成されている。動力シャフト8と減速ギヤボックス10との間の機械的結合は、図面に詳細には示されていない。減速ギヤボックス10は、例えば、その動力端9の近傍で動力シャフト8と一体のピニオンに係合するように適合されている駆動ピニオン20を装備された第1段を備える。
【0041】
本発明によるターボシャフトエンジンは、さらに、可動セントライザ12を備える。セントライザ12は、ケーシング5によって支持され、動力シャフト8のための軸受を形成する作動位置として知られている位置から、動力シャフト8から離れている受動位置として知られている位置まで移動することができる。
【0042】
図2は、受動位置にあるセントライザ12を示し、図3は、作動位置にあるセントライザ12を示す。
【0043】
セントライザ12は、作動位置が動力シャフト8と減速ギヤボックス10との間の分離に相当し、受動位置が動力シャフト8と減速ギヤボックスとの間の機械的結合に相当するように構成され、ケーシング5に取り付けられる。
【0044】
これを実施するために、可動セントライザ12は、動力シャフト8の軸線X’Xに平行な軸線を有する円錐形ガイドランプ13を備える。このランプ13は、ケーシング5の円錐形部分14と同じ形状であり、その結果、軸線X’Xに平行な軸線を有する力Fが、ケーシング5に向かって移動可能なセントライザ上に働き、動力シャフト8から径方向に離れる可動セントライザ12の移動を起こすことができる。この径方向の移動は、ケーシング5の円錐形部分14上をガイドランプ13が摺動することによって得られる。
【0045】
軸線X’Xに平行な軸線を有するこの力Fは、例えば減速ギヤボックス10の駆動ピニオン20のステータ21のような減速ギヤボックス10の要素と、軸線X’Xに対して垂直な平面内に延在する可動セントライザの停止部15との間の接触によって生成される。減速ギヤボックス10の駆動ピニオンのステータ21と、可動セントライザ12の停止部15との間のこの接触は、ターボシャフトエンジンを減速ギヤボックス内にはめ込むことから生じる。言い換えれば、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックスに嵌着される場合、ステータ21と停止部15との間の接触が自動的に起こり、これにより、軸線X’Xを有する力Fが発生することが可能になり、したがって、可動セントライザ12は、動力シャフト8から径方向に離れた受動位置に向かって移動されることが可能になる。
【0046】
ターボシャフトエンジンはまた、図2および図3に示す有利な実施形態によれば、ケーシング5の軸方向部分51と可動セントライザ12との間に取り付けられた径方向ばね16、およびケーシング5の径方向部分52と可動セントライザ12との間に取り付けられた軸方向ばね17をさらに備える。図示の実施形態によれば、ケーシング5の径方向部分52は、ケーシング5の円錐形部分14の延長部である。各ばねは、ケーシングに対して固定された一方の先端部と、可動セントライザに対して摺動可能な他方の先端部とを有する。
【0047】
したがって、これらのばねは、ケーシング5の円錐形部分13に向かって、ケーシング5の円錐形部分13上の可動セントライザ12の自発的摺動に対抗する合力を形成することができる。
【0048】
図2において、ばね16および17は、力Fの作用によって圧縮される。したがって、可動セントライザ12は、動力シャフト8から径方向に離され、動力シャフト8と機械的に相互作用しない受動位置に移動される。この位置では、動力シャフト8の動力端9のための軸受は、減速ギヤボックス10によって直接形成される。特に、動力シャフト8の心合わせは、減速ギヤボックス10の駆動ピニオン20と動力シャフトの先端部9との間の接触によって直接的に生成される。ピニオン20と動力シャフト8との間の接触は、参照符号22によって図2に図示されている。
【0049】
図3では、ターボシャフトエンジンが減速ギヤボックス10から分離されている。この状況では、力Fは消滅し、ばね16および17が可動セントライザ12をケーシング5から押し戻すように弛緩することができる。したがって、可動セントライザ12は、動力シャフト8と接触している作動位置にある。この接触は、可動セントライザ12の接触面18および動力シャフト8のセンタリング座部11で生成される。可動セントライザ12の接触面18が動力シャフト8のセンタリング座部11に接触する場合、可動セントライザ12は動力シャフト8のための支持軸受を形成する。図3において、可動セントライザ12はセンタリング座部11に対して強制的に凭れ、これにより動力シャフト8のための軸受が形成され得る。したがって、動力シャフト8は自己保持される。これは、可動セントライザ12の作動位置を含む。
【0050】
有利な実施形態によれば、可動セントライザ12の接触面18は凹状であり、その結果、セントライザが作動位置で前記動力シャフト8を少なくとも部分的に取り囲む。これにより、作動位置にある可動セントライザ12による動力シャフト8の保持が改善され得る。
【0051】
図4に示す有利な実施形態によれば、ターボシャフトエンジンは、動力シャフト8の周りに配置され、互いに直径方向に対向する、2つの可動セントライザ42および43を備える。各可動セントライザ42、43は、例えば、図2および図3を参照して説明したようなセントライザである。
【0052】
図5に示す別の実施形態によれば、ターボシャフトエンジンは、ターボシャフトエンジンのフリータービンの動力シャフト8の周りに均一に分布された3つの可動セントライザ44、45、46を備える。図5に示す実施形態によれば、各セントライザは、各セントライザの接触面18を除いて、図2および図3を参照して説明したものと同一であるが、この実施形態では凹状ではなく、凸状である。
【0053】
図面に示されていない他の実施形態によれば、ターボシャフトエンジンは、凹状および凸状セントライザの両方を含むことができる。
【0054】
図面に示されていない他の実施形態によれば、ターボシャフトエンジンは、動力シャフトの周りに分配された4つ以上の可動セントライザを備えることができる。
【0055】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのターボシャフトエンジンを含むヘリコプターに関する。
【0056】
本発明によるターボシャフトエンジンの可動セントライザは、有利には、内燃機関の動力シャフト(ピストンまたはロータ付き)に取り付けられてもよいことに留意されたい。
【0057】
また、航空機(固定翼)のターボプロップエンジンのプロペラ減速ギヤにガスタービンを連結するために使用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5