特許第6782711号(P6782711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6782711-カプセル化 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782711
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】カプセル化
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20201102BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20201102BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20201102BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20201102BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20201102BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20201102BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20201102BHJP
   A23F 3/40 20060101ALI20201102BHJP
   A23F 5/46 20060101ALI20201102BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   A23L27/00 A
   A23L27/00 C
   A23L29/212
   A23L29/269
   A23L29/206
   A61K8/11
   A61K8/73
   A61Q11/00
   A23L2/00 B
   A23F3/40
   A23F5/46
   A23G1/30
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-556743(P2017-556743)
(86)(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公表番号】特表2018-514216(P2018-514216A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016059414
(87)【国際公開番号】WO2016174095
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】1507559.1
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ビッテフェーン、フランス
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1864540(CN,A)
【文献】 国際公開第2009/142159(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/156591(WO,A1)
【文献】 特表2014−515613(JP,A)
【文献】 特表2016−536015(JP,A)
【文献】 Jian YANG et al.,,An investigation into the application of konjac glucomannan as a flavor encapsulant,European Food Research and Technology,2009年 7月,Vol.229, No.3,pp.467-474
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/60
A23L 5/00−5/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材料、コア材料上に適用されたフレーバー材料および被覆材料を含むカプセル化フレーバーであって、コア材料が微粉状の天然デンプン、キサンタンガムおよびコンニャクを含み、キサンタンガムおよびコンニャクが等しい重量比で存在する、前記カプセル化フレーバー。
【請求項2】
キサンタンガムおよびコンニャクの組み合わせた比率が、カプセル化フレーバーの4重量%〜16重量%である、請求項1に記載のカプセル化フレーバー。
【請求項3】
カプセル化フレーバーの調製方法であって、粒化物を得るための、天然デンプン、キサンタンガムおよびコンニャクのコア材料混合物およびフレーバーエマルションの混合を含み、キサンタンガムおよびコンニャクが等しい重量比で存在し、フレーバーがコア材料上に適用される、前記方法。
【請求項4】
キサンタンガムおよびコンニャクの組み合わせた比率が、カプセル化フレーバーの4重量%〜16重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フレーバーエマルションが乳化剤の存在下で調製される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
乳化剤がポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
摂取または吐き出すために口に取り込む製品のベースおよび請求項1に記載のカプセル化フレーバーを含む、摂取または吐き出すために口に取り込む製品。
【請求項8】
完全にゼラチンフリーである、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
製品が固形製品である、請求項7に記載の製品。
【請求項10】
製品が液体である、請求項7に記載の製品。
【請求項11】
製品が飲料である、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
製品が、茶、茶抽出液(温および冷)、コーヒーおよびココアから選択される、請求項11に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレーバーのカプセル化に関する。
【背景技術】
【0002】
フレーバーのカプセル化は、非常に重要な技術であり、まさにフレーバーの保存をその所望の放出時間まで可能にする。この技術は、多種多様な消費組成物、すなわち、消化のために口に入れられる組成物(食料品、菓子、焼成品および飲料など)または吐き出すために口に入れられる組成物(歯磨きペーストおよびマウスウォッシュなど)になる。
この用途に使用される最も一般的な材料の1つが、ゼラチンである。ゼラチンは、多くの利点を有する。それは、安価であり、すぐに入手することができ、それはまた、ゲル化および膨潤挙動、食感および消費の際の口内での特異的な融解挙動に関する特有の特性を有する。これらの組合せが、その使用の広まりとなっている。
これらの利点に反し、多くの利点が生じている。ゼラチンは、動物製品であることから、それは、ベジタリアン製品において使用することができない。さらに、その源に依存して、それには、宗教的禁止が伴い得る。ゼラチン製品を用いてコーシャーおよびハラールの禁止を乗り越えるのは、困難である。しかしながら、その欠点のいずれもなくその利点のすべてを与えることができるゼラチンのための代替品を見出すことは、難しいことが判明している。
【発明の概要】
【0003】
ゼラチン利益を不利益なく提供することが可能であることが、今や見出された。したがって、コア材料、フレーバー材料および被覆材料を含むカプセル化フレーバーであって、コア材料が微粉状の天然デンプン、キサンタンガムおよびコンニャクを含み、キサンタンガムおよびコンニャクが等しい重量比で存在する、前記カプセル化フレーバーを提供する。
また、カプセル化フレーバーの調製方法であって、粒化物を得るための、天然デンプン、キサンタンガムおよびコンニャクの混合物およびフレーバーエマルションの混合を含み、キサンタンガムおよびコンニャクが等しい重量比で存在する、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、顆粒の試験結果を示すグラフである。
【0005】
天然デンプン、すなわち、未化工デンプンは、周知であり、商業的にすぐに入手することができる品物である。典型的な例は、米およびタピオカデンプンを含む。
キサンタンガムは、細菌Xanthomonas campestrisにより分泌される周知の多糖であり、食料品および化粧品においてレオロジー改質剤、増粘剤および安定化剤として広く使用される。
コンニャクは、アジアの植物Amorphophallus konjacの根である。今日では、その栄養素含有量およびその高含有量のグルコマンナン繊維(その膨潤性で有名である)のため、健康およびダイエット食品において広く使用される。粉末(粉)およびゲル形状で入手可能である。粉末形状が、このプロセスにおける使用に好ましい。
すべての材料が、当該技術分野において周知であるが、組合せが、ゼラチンと置き換えるために使用され得、組成物にゼラチンの所望の質を付与することを見出したことは、驚きである。
【0006】
完成したカプセル化フレーバーにおいて、コンニャクおよびキサンタンガムが、等しい重量比で存在することが重要である。完成したカプセル化フレーバーにおける、当該2つの材料の組み合わせの重量比は、広い範囲にわたってかえることができるが、特定の範囲は、カプセル化フレーバーの4重量%〜16重量%であり、すなわち、コンニャクおよびキサンタンガムの個々の重量比率は、2〜8%の範囲である。
フレーバーは、あらゆる好適な所望のフレーバーであってもよい。それは、水性エマルションの形態で使用される。いくつかの場合、フレーバーは、いかなる乳化剤も必要とせず乳化し得るが、一般的に、少なくともいくつかの食品等級の乳化剤の存在が有益である。典型的な例は、アラビアゴム、食品用加工デンプンおよびOSAデンプンを含む。
特定の態様において、乳化剤は、ソルビタン由来である。特定の態様は、例えば、商品名Tween(商標)、Polysorbate(商標)およびAdmul(商標)の下で市販されているポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートである。これらの乳化剤の使用により、他の乳化剤だと3〜4ミクロンサイズがあり得るのとは対照的に、通常小さいサイズ(1ミクロンまで下がる)の乳化剤フレーバー液滴をもたらすことが、驚くべきことに見出された。液滴が大きいほど、流動床プロセスにおけるフレーバー損失が大きくなるので、サイズがより小さいのは、かなりの利点をもたらす。
【0007】
典型的なプロセスにおいて、コア材料を、加熱された流動床において成分を混ぜることにより調製する。そして、フレーバーのエマルションを、コア材料上に噴霧する。噴霧は、所望のフレーバー含有量に達するまで続けられる。典型的な流動床装置は、Wurster、回転造粒機およびトップスプレーシステムを含む。
流動床装置は、通常の慣行にしたがって、当該技術分野において承認されたパラメーター内で操作する。典型的な操作条件は、以下のとおりである:
注入口の温度 60〜110℃、特に約95℃
生成物の温度 35〜90℃、特に約65℃
気流速度 20〜140M/h、特に約60M/h
ノズル空気圧 0.5〜6bar、特に約4bar
【0008】
さらなる態様において、少なくとも1つの保護層を、粒化物に適用してもよい。保護層は、被覆フィルムを形成する能力のあるあらゆる食品等級の材料であってもよく、典型的な例は、メチルおよびエチルセルロースなどのセルロース系材料、およびデンプンベースの材料である。これを、水溶液として流動フレーバー顆粒上に噴霧する。
上記のフレーバー顆粒を、すべての種類の固形および液体食用製品、すなわち、摂取または吐き出すために口に取り込む製品において使用してもよい。したがって、食用製品ベースおよび上に定義したカプセル化フレーバーを含む食用組成物もまた提供する。
「食用製品は、固体」、すなわち流体ではない、すなわち、液体や塗ることができるペーストではない製品であり得る。代わりに、これら和液体または塗ることができるペーストであり得る。「食用製品ベース」は、カプセル化フレーバーと組み合わせて食用製品を作る当該技術分野において認識されている成分のすべてを意味する。これらは、特定の製品の性質に依存するであろうが、それらは、他のフレーバー剤、結合剤およびフィルム形成材料、増粘剤、レオロジー改質剤、増量剤および研磨剤、溶媒および希釈剤、色素、染料および着色物質、保存料、フレーバー増強剤および修正剤、甘味料、食感添加剤、防腐剤および医薬化合物および組成物などの材料を含む。
【0009】
食用製品の非限定の例は、食品製品、飲料、口腔ケア製品、およびかかる製品へ混和するための組成物、特にフレーバー組成物を含む。フレーバー組成物を、それらの加工中に加工食品に添加してもよく、あるいは、それらは実際にはそれら自体、例えばソースなどの調味料、を消費してもよい。
食用製品のさらなる非限定の例は、チョコレートおよびキャンディ製品などの菓子製品、穀物製品、パン屋の製品、パン製品、パスタ製品(生および保存用の両方)、ガム、チューインガム、酵母製品、塩およびスパイス製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、スープ、加工食品、調理済み果物および野菜製品、肉および肉製品、卵製品、可食性油製品および可食性油脂製品、薬剤、食品抽出物、植物抽出物、肉抽出物、調味料、甘味料、栄養補助食品、薬用および薬用ではないガム、錠剤、トローチ剤およびあめ玉を含む。飲料は、茶および茶抽出液(温および冷)、コーヒーおよびココアを含む。
【0010】
上記の顆粒の使用は、ゼラチンの存在がもたらすすべての所望の質を備えたゼラチンフリー製品がある可能性をもたらす(したがって、ゼラチンの存在が原因のすべての宗教的および食事療法的問題に対処する)。したがって、食用製品ベースおよび上に定義したカプセル化フレーバーを含むゼラチンフリー固形食用組成物もまた提供する。
本開示を、以下の非限定例を参照してさらに説明する。
【0011】
例1
粒子の調製
成分は以下に示すとおりである:
【0012】
【表1】
【0013】
プロセスを、回転造粒機内で、以下の条件下で(通常のわずかな実務的な変化を伴い)行った。
注入口の温度 100℃
生成物の温度 55℃
気流 70m/h
ノズル空気圧 1bar
【0014】
2バッチの材料を、1つ目はステージAおよびBのみを利用して(「非被覆顆粒」)、2つ目はさらに、メチルセルロースの溶液を流動床において顆粒上に噴霧するCを利用して(「被覆顆粒」)、調製した。同じプロセス条件を、ステージBおよびCの両方について維持した。
そして、2セットの顆粒を回収し、および篩にかけ、最大500μMの顆粒を得た。
【0015】
例2
顆粒の試験
両方のセットの顆粒2%を、以下のチューインガム配合物内に取り込んだ。
【0016】
【表2】
【0017】
顆粒を、Z-bladeミキサーを室温で使用し、上記成分のミックスを均質な粘性ミックス(ペースト)が形成されるまで練ることにより、取り込んだ。粘性ペーストを、各1.2グラムのチューイングペレットに分割した。
比較のため、例1において調製されたものと同じ比率の同じフレーバーを有する、噴霧乾燥デンプンフレーバー粒子を同じ比率で、同じチューインガムベースに添加した。最大サイズが150および75μmの2つの異なるサイズの噴霧乾燥顆粒を使用した。
【0018】
評価を、15人の専門家パネルが行い、データを、ANOVAにより統計的に分析した。結果を図1に示す。
図から、以下が明らかにみられる。
1.上記のように作られた非被覆顆粒は、迅速で非常に強力な「最初の」放出があり、噛み始めた後のフレーバーのインパクトの即時性に対応する;
2.被覆顆粒は、同じインパクトがあるが、それは、追加の被覆により遅延する。
3.両方は、既知の噴霧乾燥フレーバー顆粒よりも実質的に優れている。
図1