(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水溶性樹脂と前記アニオン性基含有重合体との総量100質量%に対するアニオン性基含有重合体の割合が1質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性フィルム。
前記水溶性樹脂と前記アニオン性基含有重合体との総量100質量%に対するアニオン性基含有重合体の割合が99質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性フィルム。
前記単量体成分は、アニオン性基含有単量体に加え、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体を含むことを特徴とする請求項7に記載の水溶性フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0011】
〔水溶性フィルム〕
本発明の水溶性フィルムは、アニオン性基含有重合体を含み、更に、該アニオン性基含有重合体とは異なる水溶性樹脂を含む。なお、本発明の水溶性フィルムは、アニオン性基含有重合体のみを必須とするものであってもよく、例えばアニオン性基含有重合体のみで構成してもよく、このようなアニオン性基含有重合体を含む水溶性フィルムもまた本発明の一態様である。また、必要に応じて他の成分を更に含んでもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0012】
上記水溶性フィルムは、主として水溶性樹脂とアニオン性基含有重合体とから構成されるものであることが好ましい。上記水溶性フィルムが主として水溶性樹脂とアニオン性基含有重合体とから構成されるものであるとは、上記水溶性フィルムにおける水溶性樹脂の質量割合とアニオン性基含有重合体の質量割合が、それぞれ、水溶性樹脂及びアニオン性基含有重合体以外のいずれの成分の質量割合よりも大きいことを言う。なお、上記水溶性フィルムは、水溶性樹脂及びアニオン性基含有重合体のみからなるものであってもよい。水溶性樹脂とアニオン性基含有重合体との配合比(水溶性樹脂/アニオン性基含有重合体)は、質量比で、例えば、1〜99/99〜1であることが好ましい。フィルム強度と冷水への溶解性とのバランスの観点から、水溶性樹脂とアニオン性基含有重合体との総量100質量%に対する水溶性樹脂の割合が1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、37質量%以上、40質量%以上であることが、この順に好ましく(数値が大きいほどより好ましい)、当該水溶性樹脂の割合が99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下であることが、この順に好ましい(数値が小さいほどより好ましい)。すなわち言い替えれば、水溶性樹脂とアニオン性基含有重合体との総量100質量%に対するアニオン性基含有重合体の割合が1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、10質量%以上であることが、この順に好ましく(数値が大きいほどより好ましい)、当該アニオン性基含有重合体の割合が99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、63質量%以下、60質量%以下であることが、この順に好ましい(数値が小さいほどより好ましい)。
【0013】
上記水溶性フィルムの厚さは、用途等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、フィルム強度と冷水への溶解性とのバランスの観点から、例えば、5〜300μmとすることが好ましい。より好ましくは6〜200μm、更に好ましくは7〜150μm、一層好ましくは8〜100μm、特に好ましくは9〜90μm、最も好ましくは10〜80μmである。
【0014】
上記水溶性フィルムは、膜厚を40μmとしたときの6℃の冷水への溶解時間が5〜240秒であることが好ましい。より好ましくは6〜200秒、更に好ましくは7〜180秒、一層好ましくは8〜160秒、より一層好ましくは9〜140秒、特に好ましくは10〜120秒、最も好ましくは15〜100秒である。溶解時間が速すぎる(短すぎる)と、吸湿性が強くなり、一般的な保管状態に於いて空気中の湿気によりフィルムの形状を充分に保つことができないことがあり、また、溶解時間が遅すぎる(長すぎる)と、薬剤をより効率的に分散することができないことがある。溶解時間(40μm換算)は、後述する実施例に記載の溶解性の評価方法に基づいて求めることができる。
【0015】
上記水溶性フィルムはまた、膜厚を40μmとしたときのフィルム強度が0.05J以上であることが好ましい。強度が0.05J以上であると、安定的に薬剤の梱包を維持することができるが、0.05J未満であると、衝撃を加えた時にフィルムが破れて中の薬剤が漏れる可能性がある。より好ましくは0.08J以上、更に好ましくは0.1J以上である。フィルム強度(40μm換算)は、後述する実施例に記載の強度の評価方法に基づいて求めることができる。
【0016】
上記水溶性フィルムは更に、耐硬性が94%以上であることが好ましい。耐硬性が94%以上であると、硬度の高い水へ投入しても沈殿が生じたり、水が濁ったりすることがないが、耐硬性が94%未満であると、硬度の高い水へ投入した時に、塩を形成して沈殿が生じたり、水が濁ったりすることをより充分に抑制することが困難になる。より好ましくは95%以上、更に好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上である。耐硬性は、後述する実施例に記載の耐硬性の評価方法に基づいて求めることができる。
【0017】
以下に、水溶性フィルムに含まれる水溶性樹脂及びアニオン性基含有重合体や、その他の好適な含有成分等について更に説明する。
【0018】
<水溶性樹脂>
本発明で用いる水溶性樹脂は、水中で容易に溶解又は分散する性質を有する。具体的には、20℃の水100gに0.05g以上溶解する樹脂であることが好ましく、より好ましくは0.1g以上溶解する樹脂である。このような性質を有する樹脂であれば、その材質は特に限定されないが、例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩のようなセルロースの誘導体;ポリビニルアルコール系;プルラン;デンプン系;ポリアルキレンオキサイド系;等が使用できる。
【0019】
上記水溶性樹脂は、例えば、プルランよりなるものとしてプルランフィルム(株式会社林原製);セルロース及びカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩よりなるものとしてディゾルボ(三島製紙株式会社製);ポリビニルアルコール系重合体よりなるものとしてソルブロン(アイセロ化学株式会社製)、ハイセロン(日合フィルム株式会社製)、トスロン(東京セロハン紙株式会社製)、クラレビニロンフィルム(クラレ株式会社製);ポリアルキレンオキサイド系のものとして、アルコックス(ポリエチレンオキサイド樹脂)のフィルム(明成化学工業株式会社製)、フレキシーヌ(ポリオキシアルキレングリコールと多価カルボン酸及びその低級アルキルエステルよりなる水溶性樹脂パオゲンをフィルム状としたもの、第一工業製薬株式会社製);等の商品名で入手することができる。
【0020】
上記水溶性樹脂の中でも、フィルム強度や水溶性等の観点から、ポリビニルアルコール系重合体が特に好ましい。すなわち本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール系重合体と、アニオン性基含有重合体とを含むものであることが特に好適である。
以下に、ポリビニルアルコール系重合体について更に説明する。
【0021】
ポリビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル、及び、必要に応じてビニルエステル以外の単量体(他の単量体とも称す)を重合して得られたポリビニルエステル(ポリビニルエステル系重合体)をけん化して得られる重合体であり、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。式中、nは、平均重合度を表し、1以上の数である。
【0023】
上記ポリビニルエステル系重合体を与えるビニルエステル(単量体)としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の1種又は2種以上が挙げられる。中でも、生産性や入手容易性の観点から、酢酸ビニルが好適である。
【0024】
ポリビニルエステル系重合体を与える単量体は、更に上述した他の単量体を必要に応じて含んでいても良い。他の単量体としては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルホルムアミド系単量体;N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアセトアミド系単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−プロピル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン等のN−ビニルピロリドン系単量体;N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−プロピル−2−カプロラクタム等のN−ビニルカプロラクタム系単量体;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のオキシアルキレン基を有する不飽和単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;エチレン、プロピレン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル等のアリルエーテル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール等のヒドロキシ基を含有するα−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0025】
他の単量体の含有量は、ポリビニルエステル系重合体を与える全単量体100モル%中、50モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
【0026】
上記ポリビニルアルコール系重合体の平均けん化度は、例えば、フィルム強度及び冷水への溶解性をより高める観点から、50〜100モル%であることが好ましい。平均けん化度は、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、また平均けん化度は、より好ましくは100モル%未満、更に好ましくは99モル%以下、特に好ましくは95モル%以下である。けん化については、後により詳しく説明する。
【0027】
上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度(一般式(1)中のn)は、例えば、フィルム強度及び冷水への溶解性をより高める観点から、200〜10000であることが好ましい。平均重合度は、より好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上であり、また平均重合度は、より好ましくは6000以下、更に好ましくは4000以下である。
【0028】
上記ポリビニルアルコール系重合体の製法としては、ビニルエステル、及び、必要に応じて他の単量体を重合して得られたビニルエステル系重合体を溶媒中でけん化する方法等が挙げられる。
【0029】
上記ビニルエステル系重合体を得るためのビニルエステル、及び、必要に応じて他の単量体の重合としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合、沈殿重合等が挙げられる。溶媒を使用する場合、溶媒としては、アルコール等の公知の溶媒を使用できる。重合に使用される開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ重合開始剤や過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。重合温度は、例えば0〜150℃の範囲とすることができる。
【0030】
上記ポリビニルアルコール系重合体は、上記ビニルエステル系重合体をけん化することにより得ることができる。けん化の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル、ジメチルスルホキシド、これらの混合溶媒等を使用できる。けん化の触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、塩酸、過酸化水素等を使用できる。その他のけん化反応の条件は、目的とするけん化度等によって適宜調整することができるが、例えば反応温度を0〜200℃とし、0.1〜24時間の反応時間とすることができる。
【0031】
<アニオン性基含有重合体>
アニオン性基含有重合体は、1種又は2種以上のアニオン性基を、1又は2以上有する重合体である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、炭酸基、ケイ酸基、ホスホン酸基、硝酸基、硫酸基等が挙げられる。アニオン性基は塩の形態になっていてもよく、アニオン塩の基もアニオン性基に含むものとする。本発明では、より優れた冷水への溶解性を発揮できる観点から、カルボキシル基及び/又はその塩(カルボン酸塩)が好ましい。このように上記アニオン性基がカルボキシル基及び/又はその塩である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0032】
本明細書中、「アニオン性基含有重合体」には、アクリル酸単独重合体を含まないものとする。アクリル酸単独重合体とは、置換基を有さないアクリル酸のみを重合させて得た重合体である。水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とともに、アクリル酸単独重合体ではなく、本発明のアニオン性基含有重合体を用いることによって初めて、フィルム強度及び冷水への溶解性に優れ、耐硬性にも優れる水溶性フィルムを得ることができる。
【0033】
上記アニオン性基含有重合体はまた、アニオン性基に加え、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を更に有することが好ましい。アニオン性基のみを有する形態に比べ、アニオン性基とともにこれら所定の基を有する形態であると、特に耐硬性が飛躍的に改善されて、硬度の高い水に投入した際にも塩を形成して沈殿することがより抑制される。また、例えば、(ポリ)アルキレングリコール基を有すると冷水への溶解性が更に向上され、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基又はラクタム基を有すると、可塑剤としての効果も発揮されるために、フィルム強度の低下をより抑制することができる。カチオン性基を有すると、重金属をキレートする効果も発揮できるため、重金属に対する耐硬性が更に向上する。また、疎水性基又はラクタム基を有すると、耐硬性がより一層向上される。このように上記アニオン性基含有重合体が、アニオン性基に加え、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を更に有する形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0034】
上記アニオン性基含有重合体は、アニオン性基を含有する限り、更にポリアミン骨格を含有していてもよいが、ポリアミン骨格を含有しないことが好ましい。ポリアミン骨格とは、2個以上のアミノ基を有する骨格を言い、該アミノ基の少なくとも1個が(ポリ)アルキレングリコール基、カルボン酸(塩)基、疎水性基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基で修飾された構造を有していてもよい。ポリアミン骨格は、例えば、ポリアルキレンアミン、ポリアルキレンイミンを用いて形成されるものである。
【0035】
上記アニオン性基含有重合体は、1種又は2種以上のアニオン性基含有単量体に由来する構成単位のみを有する形態(ホモポリマー、単独重合体)であってもよいし、1種又は2種以上のアニオン性基含有単量体に由来する構成単位と、1種又は2種以上の、アニオン性基含有単量体以外の単量体(他の単量体とも称す)に由来する構成単位とを有する形態(コポリマー、共重合体)であってもよい。
アニオン性基含有単量体由来の構成単位とは、アニオン性基含有単量体が有する不飽和二重結合部分(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造を意味する。他の単量体についても同様である。
【0036】
前者の形態(アニオン性基含有重合体が単独重合体である形態)では、アニオン性基含有単量体は、アニオン性基に加え、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を更に有することが特に好ましい。後者の形態(アニオン性基含有重合体が共重合体である形態)では、他の単量体は、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体であることが特に好ましい。なお、共重合体にはグラフト重合体を含むものとする。なお、アニオン性基含有重合体がグラフト重合体以外の重合体であることも本発明における好ましい形態の1つである。例えば、アニオン性基含有重合体が単独重合体、交互共重合体、ランダム共重合体、及び、ブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることも本発明における好ましい形態の1つである。
【0037】
上記アニオン性基含有重合体が共重合体である場合、アニオン性基含有単量体由来の構成単位(a)と他の単量体由来の構成単位(b)との質量比(a/b)は、1〜99/99〜1であることが好ましい。フィルム強度と冷水への溶解性と耐硬性のバランスの点から、より好ましくは5〜95/95〜5、更に好ましくは10〜90/90〜10である。
なお、他の単量体由来の構成単位(b)に占める、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体に由来する構成単位の割合は、構成単位(b)の総量100質量%に対し、50〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0038】
上記共重合体の中でも、グラフト重合体としては、他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体に、アニオン性基含有単量体を含む単量体成分をグラフト重合させて得られる重合体が挙げられる。好ましくは、他の単量体を重合して得られる重合体(特に好ましくは、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール)に、アニオン性基含有単量体をグラフト重合させて得られる重合体であり、この場合、他の単量体を重合して得られる重合体100重量部に対する、グラフト成分であるアニオン性基含有単量体の割合は、1〜60重量部であることが好ましい。フィルム強度と冷水への溶解性とのバランスの点から、より好ましくは3〜50重量部、更に好ましくは5〜40重量部である。
また上記アニオン性基含有重合体は、その幹鎖にアニオン性基を有するものであってもよい。例えば、アニオン性基含有重合体の幹鎖が後述する不飽和モノカルボン酸系単量体由来の単量体単位を含んで構成されるものが好ましい。
【0039】
上記アニオン性基含有重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、フィルム強度及び溶解性をより高める観点から、例えば、2000〜20万であることが好ましい。重量平均分子量の下限は、より好ましくは3000以上、更に好ましくは5000以上であり、また上限は、より好ましくは15万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは8万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する測定条件にて測定することができる。
【0040】
以下に、アニオン性基含有重合体を構成する単量体について更に説明する。
【0041】
−アニオン性基含有単量体−
上記アニオン性基含有単量体としては、カルボン酸系単量体、リン酸系単量体等の1種又は2種以上が好ましい。より好ましくはカルボン酸系単量体である。なお、アニオン性基含有単量体として、1分子中に2種以上のアニオン性基を有する単量体を用いてもよいことは言うまでもない。
以下に、アニオン性基含有単量体として特に好適なカルボン酸系単量体について更に説明する。
【0042】
カルボン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基(カルボン酸(塩)基とも称す)とを含む化合物である。
カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基を含むとは、カルボン酸(塩)基、すなわち−COOZ(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す)で表される基を、1分子中に1個又は2個以上有することを意味する。金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2価金属;アルミニウム等の3価金属;鉄等のその他の金属;等が挙げられる。有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基;等が挙げられる。カルボン酸塩として好ましくは、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0043】
上記カルボン酸系単量体としては、1分子中に1又は2以上の不飽和二重結合と複数のカルボン酸(塩)基とを含んでいてもよいが、1分子中に不飽和二重結合と1つのカルボン酸(塩)基とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体;1分子中に不飽和二重結合と2つのカルボン酸(塩)基とを含む不飽和ジカルボン酸系単量体;が好適である。
【0044】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和モノカルボン酸や、これらの塩等が挙げられる。なお、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」という。
【0045】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸や、これらの塩や無水物等が挙げられる。また、これら不飽和ジカルボン酸系単量体とアルコール類(例えば、炭素数1〜22個のアルコール)とのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸系単量体とアミン類(例えば、炭素数1〜22のアミン)とのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体とグリコール類(例えば、炭素数2〜4のグリコール)とのハーフエステル、マレアミド酸とグリコール類(例えば、炭素数2〜4のグリコール)とのハーフアミド等であってもよい。
【0046】
上述したカルボン酸系単量体の中でも、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及び/又はこれらの塩が好適である。より好ましくは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩である。これにより、冷水への溶解性及び強度により一層優れる水溶性フィルムを得ることができる。更に好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩である。
【0047】
−他の単量体−
他の単量体とは、アニオン性基含有単量体に該当しない単量体であって、アニオン性基含有単量体と共重合可能な単量体であればよい。中でも、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体が好ましい。具体的には、スルホン酸(塩)基含有単量体(スルホン酸系単量体とも称す)、カチオン性基含有単量体(カチオン系単量体とも称す)、(ポリ)アルキレングリコール基含有単量体(PAG系単量体とも称す)、疎水性基含有単量体及びラクタム基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、「スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体」に、1分子中に、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基のうち2種以上の基を有する単量体が包含されることは、言うまでもない。
以下に、他の単量体として好適な、スルホン酸(塩)基含有単量体、カチオン性基含有単量体、(ポリ)アルキレングリコール基含有単量体、疎水性基含有単量体及びラクタム基含有単量体について、更に説明する。
【0048】
(i)スルホン酸系単量体
スルホン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基(スルホン酸(塩)基とも称す)とを含む化合物である。
【0049】
スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を含むとは、スルホン酸(塩)基、すなわち−SO
3Z(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す)で表される基を、1分子中に1又は2以上有することを意味する。金属原子及び有機アミン基については上述したとおりである。スルホン酸塩として好ましくは、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0050】
上記スルホン酸系単量体として具体的には、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート等の不飽和スルホン酸類や、これらの塩等が挙げられる。
【0051】
上記スルホン酸系単量体として特に好ましくは、経済性及び構造上の安定性の観点から、下記一般式(2)で表される化合物である。この化合物は、例えば、特許第5558357号明細書に記載の手法により得ることができる。
【0053】
式中、R
1は、水素原子又はCH
3基を表す。R
aは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。X及びYは、同一又は異なって、水酸基又はスルホン酸(塩)基を表し、X及びYのうち少なくとも一方は、スルホン酸(塩)基を表す。
【0054】
上記一般式(2)において、R
1は、水素原子又はCH
3基を表すが、好ましくは水素原子である。R
aは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表すが、好ましくはCH
2基である。X及びYは、同一又は異なって水酸基又はスルホン酸(塩)基を表すが、X及びYのうちいずれかがスルホン酸(塩)基を表し、もう一方が水酸基を表すことが好ましい。
【0055】
(ii)カチオン系単量体
カチオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カチオン性基とを含む化合物である。
【0056】
カチオン性基を含むとは、カチオン性基を、1分子中に1又は2以上有することを意味する。カチオン性基としては、例えば、アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基、ヒドラジド基、ピリジニウム基等が好適である。カチオン性基は塩の形態になっていてもよく、カチオン塩の基もカチオン性基に含むものとする。本発明では、アミノ基、アンモニウム基又はこれらの塩の基が好ましい。より好ましくは、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基又はこれらの塩の基である。
【0057】
上記カチオン系単量体として具体的には、例えば、アミン(第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン)やその塩、第4級アンモニウム塩が挙げられ、アミンとしては、第2級アミン又は第3級アミンが好適である。中でも、上記カチオン系単量体としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0059】
式中、R
2は、水素原子又はCH
3基を表す。R
bは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。R
cは、−O−CH
2−CH(OH)−CH
2−、−O−CH
2−CH(CH
2OH)−、−O−(A
1O)
m−CH
2−CH(OH)−CH
2−、−O−(A
1O)
m−CH
2−CH(CH
2OH)−を表す。A
1Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。mは、A
1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜300の数である。R
3、R
4及びR
5は、このうちの一つが存在しなくてもよく、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の有機基を表す。
【0060】
上記一般式(3)において、R
2は、水素原子又はCH
3基を表すが、好ましくは水素原子である。R
bは、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表すが、好ましくはCH
2基である。
【0061】
R
cは、−O−CH
2−CH(OH)−CH
2−、−O−CH
2−CH(CH
2OH)−、−O−(A
1O)
m−CH
2−CH(OH)−CH
2−、−O−(A
1O)
m−CH
2−CH(CH
2OH)−を表す。このうちA
1Oで表されるオキシアルキレン基の炭素数は、2〜8が好ましく、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2である。なお、−(A
1O)
m−で表される鎖が2種以上のオキシアルキレン基から形成される場合、その付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0062】
A
1Oの平均繰り返し数(平均付加モル数)mは、1〜300の数である。フィルム強度維持及び溶解性向上の観点から、より好ましくは2〜300の数、更に好ましくは5〜150の数、特に好ましくは10〜100、最も好ましくは10〜50の数である。
【0063】
R
3、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の有機基を表す。炭素数1〜30の有機基としては特に限定されず、無置換の基であってもよいし、置換基を有する基であってもよい。有機基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4である。また、置換基としては特に限定されず、例えば、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、アミド基、エステル基、ケトン基等が挙げられる。
【0064】
上記炭素数1〜30の有機基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、ヘキサデシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;エチレン基、イソプロピレン基、n−プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;ベンジル基、フェネチル基、メトキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の置換基を有するアルキル基;メチルフェニル基、メトキシフェニル基、2,4−キシリル基、メシチル基等の置換基を有するアリール基;等が挙げられる。R
3、R
4及びR
5として好ましくは、水素原子、アルキル基、又は、置換基(好ましくは水酸基)を有するアルキル基である。
【0065】
また、R
3、R
4及びR
5は、このうちいずれか一つがない場合でもよく、その場合、上記一般式(3)で表される化合物は第3級アミンとなる。
R
3、R
4及びR
5の全てが存在する場合、すなわちこれらが同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の有機基を表す場合、上記一般式(3)で表される化合物は、四級化した窒素原子を有することになる。上記一般式(3)中の四級化した窒素原子近傍には、カウンターアニオンZ
−が存在することになる。カウンターアニオンZ
−の種類は特に限定されないが、ハロゲン原子のイオン、アルキル硫酸イオン、有機酸のイオンが好ましい。ハロゲン原子のイオンとしては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等のイオンが挙げられる。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のイオンが好ましく、塩素原子のイオンがより好ましい。
アルキル硫酸イオンとしては、具体的には、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が挙げられる。中でも、メチル硫酸イオンが好ましい。
上記有機酸のイオンとしては、酢酸イオン(CH
3COO
−)、プロピオン酸イオン(CH
3CH
2COO
−)が好ましい。
【0066】
(iii)PAG系単量体
PAG系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、(ポリ)アルキレングリコール基(アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を意味する)とを含む化合物である。
【0067】
(ポリ)アルキレングリコール基を含むとは、(ポリ)アルキレングリコール基を、1分子中に1又は2以上有することを意味する。(ポリ)アルキレングリコール基としては、例えば、1種又は2種以上の炭素数2〜18のオキシアルキレン基により形成されたものが好適である。2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合、その付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。オキシアルキレン基の炭素数は、より好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜4、特に好ましくは2である。また、オキシアルキレン基(アルキレングリコール)の平均繰り返し数(平均付加モル数)は、例えば1〜300の数が好適である。溶解性向上の観点から、より好ましくは2〜300の数、更に好ましくは5〜150の数、特に好ましくは10〜100、最も好ましくは10〜50の数である。
【0068】
上記PAG系単量体として特に好ましくは、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0070】
式中、R
6及びR
7は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。pは、0〜2の整数を表す。qは、0又は1を表す。A
2Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。rは、A
2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜300の数である。R
8は、水素原子又は炭素数1〜30の有機基を表す。
【0071】
上記一般式(4)において、A
2Oで表されるオキシアルキレン基の炭素数としては、2〜8が好ましく、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2である。なお、−(A
2O)
r−で表される鎖が2種以上のオキシアルキレン基から形成される場合、その付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0072】
A
2Oの平均繰り返し数(平均付加モル数)rは、1〜300の数である。フィルム強度維持及び溶解性向上の観点から、より好ましくは2〜300の数、更に好ましくは5〜150の数、特に好ましくは10〜100、最も好ましくは10〜50の数である。
【0073】
R
6及びR
7は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表し、pは、0、1又は2である。したがって、q=0の場合、「C(R
6)H=C(R
7)−(CH
2)
p−」で表されるアルケニル基は、炭素数2〜6のアルケニル基に相当するが、このアルケニル基の炭素数として好ましくは、3〜5である。
上記「C(R
6)H=C(R
7)−(CH
2)
p−」で表されるアルケニル基として具体的には、例えば、ビニル基、2−プロペニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基等が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が好ましい。
なお、R
6及びR
7としては、R
6が水素原子であり、かつR
7がメチル基であることが特に好適である。
【0074】
R
8は、水素原子又は炭素数1〜30の有機基を表す。炭素数1〜30の有機基としては特に限定されず、無置換の基であってもよいし、置換基を有する基であってもよい。有機基の炭素数は、例えば、アニオン性基含有重合体の溶解性をより向上させる観点からは、その炭素数は1〜12であることが好ましく、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3である。また、置換基としては特に限定されないが、水酸基又はヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0075】
上記炭素数1〜30の有機基としては、炭化水素基、又は、水酸基若しくはヒドロキシアルキル基を有する炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が好適である。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)がより好ましい。したがって、炭素数1〜30の有機基として特に好ましくは、アルキル基、水酸基を有するアルキル基、又は、ヒドロキシアルキル基(特に好ましくは、−CH
2OHで表されるヒドロキシメチル基)を有するアルキル基である。
R
8として特に好ましくは、水素原子、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3の脂環式アルキル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0076】
qは0又は1を表すが、q=0である場合、上記一般式(4)で表される化合物は、エーテル構造を有する単量体(不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体とも称す)となる。また、q=1である場合、上記一般式(4)で表される化合物は、エステル構造を有する単量体(不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体とも称す)となる。中でも、q=0であること、すなわち不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体が好適である。
【0077】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体としては、不飽和アルコール(ポリ)アルキレングリコール付加物が好適である。具体的には、例えば、ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレノール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物等が好ましい。
【0078】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和カルボン酸(ポリ)アルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートや、(ヒドロキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。更に好ましくは、アルコキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。
【0079】
(iv)疎水性基含有単量体
疎水性基含有単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、疎水性基とを含む化合物である。
【0080】
疎水性基を含むとは、疎水性基を、1分子中に1又は2以上有することを意味する。疎水性基としては特に限定されないが、例えば、炭化水素基が好ましい。具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。中でも、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基であり、特に好ましくは直鎖状アルキル基である。また、炭化水素基の炭素数は、疎水性及び重合性の観点から、1〜30が好ましく、より好ましくは2〜20、更に好ましくは3〜12、特に好ましくは4〜10、最も好ましくは4〜6である。
【0081】
上記疎水性基はまた、疎水性である限り、ヘテロ原子を含んでいてもよく、例えば、上記炭化水素基において水素原子がハロゲン等によって置換されたものであってもよい。
【0082】
上記疎水性基含有単量体として具体的には、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;の他、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。中でも、一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0084】
式中、R
9は、水素原子又はCH
3基を表す。R
d、R
e及びR
fは、同一又は異なって、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表す。x
1は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。x
2は、(O−CH
2−CH
2)で表される単位の数を表し、0〜100の数である。x
3は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。ただし、R
d、R
e及びR
fが直接結合を表し、かつx
1が0である場合、x
2は1〜100の数であり、かつx
3は1である。R
10は、疎水性基を表す。
【0085】
上記一般式(5)において、R
9は、水素原子又はCH
3基を表すが、好ましくは水素原子である。R
d、R
e及びR
fは、同一又は異なって、CH
2基、CH
2CH
2基又は直接結合を表すが、R
d及びR
eは、好ましくはCH
2基である。R
f好ましくは直接結合である。R
10で表される疎水性基については上述したとおりであり、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基である。
【0086】
x
1は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である。x
1は1であることが好ましい。これにより、疎水性基含有単量体の親水性がより向上されるため、単量体成分における当該単量体の割合を増加させた場合であってもより充分に重合反応が行われる。(O−CH
2−CH(OH))で表される構造は、例えば、グリシジル基とアルコール又はアルキレンオキシドの付加物等の水酸基とを反応させること等により形成される。
【0087】
x
2は、(O−CH
2−CH
2)で表される単位の数を表し、0〜100の数である(ただし、R
d、R
e及びR
fが直接結合を表し、かつx
1が0である場合、x
2は1〜100の数である。)。x
2が1〜100の場合、当該単量体の親水性をより向上させることができるため、水等の親水性溶媒を用いても共重合しやすいという特性を有する。中でも1〜50が好ましい。また、x
2が0である場合には、R
10で表される疎水性基の効果をより充分に発揮することができる。得られる共重合体の疎水性の観点からは、x
2は0であることがより好ましい。このように親水性と疎水性とのバランスを考慮して、x
2の値を調節することが好ましい。
【0088】
x
3は、(O−CH
2−CH(OH))で表される単位の数を表し、0又は1の数である(ただし、R
d、R
e及びR
fが直接結合を表し、かつx
1が0である場合、x
3は1である。)。x
3は、好ましくは0である。
【0089】
上記一般式(5)で表される疎水性基含有単量体としては、例えば、不飽和二重結合を有するアルコール(例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール及びイソプレノール等)に、炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のアルキルグリシジルエーテルを反応させた化合物;不飽和二重結合を有するアルコールのエチレンオキシド付加物に、炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のハロゲン化アルキルを反応させた化合物;炭素数1〜30のアルキルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテルに、炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のアルコール又は炭素数1〜30(最も好ましくは4〜6)のアルコールのエチレンオキシド付加物を反応させた化合物;等が挙げられる。
【0090】
上記疎水性基含有単量体として特に好ましくは、下記一般式(6)で表される化合物である。式中の記号は上述したとおりであり、R
9は水素原子であることが好ましく、R
dはCH
2基であることが好ましい。
【0092】
ここで、上述した(ポリ)アルキレングリコール基含有単量体が更に疎水性基を有するものであったり、疎水性基含有単量体が更に(ポリ)アルキレングリコール基を更に有するものであってもよいことは言うまでもないが、このような化合物、すなわち疎水基及び(ポリ)アルキレングリコール鎖含有単量体として特に好ましくは、下記一般式(7)で表される化合物である。このような化合物を用いると、得られる重合体は、−R
14又は−W−Y
a−R
14で表される疎水基と、−O−(X
a)m−Zで表される(ポリ)アルキレングリコール鎖の親水基とが分岐した構造を有するため、例えば親水汚れと疎水汚れ等の各種の汚れに対して、当該疎水基と親水基とを同時に作用することが可能になり、再汚染防止能もより向上する。
【0094】
式中、R
11、R
12及びR
13は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
14は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の鎖状炭化水素基を表す。rは、0〜2の整数である。sは、0〜1の整数である。tは、0〜2の整数である。Wは、同一又は異なって、炭素数6〜30の3価の芳香族基又は炭素数1〜30の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基を表す。Zは、水素原子、又は、SO
3Dで表される基を表す。Dは、水素原子、金属原子、NH
4又は有機アミン塩を表す。Y
aは、同一又は異なって、直接結合又は酸素原子を表す。X
aは、同一又は異なって、炭素数2〜20のオキシアルキレン基を表す。mは、1〜200の整数である。ただし、R
14が水素原子の場合には、Y
aは直接結合である。Wが炭素数1〜30の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基である場合には、R
14は、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基である。
【0095】
上記一般式(7)において、R
11、R
12及びR
13は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表すが、式中のWが炭素数6〜30の3価の芳香族基である場合には、R
11及びR
13が水素原子であって、R
12がメチル基であることが好ましく、また、Wが炭素数1〜30の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基である場合には、R
11、R
12及びR
13の全てが水素原子であることが好ましい。これらの場合には、カルボン酸系単量体等のアニオン性基含有単量体との重合性がより向上する。
【0096】
r、s及びtに関し、上記一般式(7)中のWが炭素数6〜30の3価の芳香族基である場合には、rは0〜1の整数であることが好ましく、sは0〜1の整数であることが好ましく、tは0〜1の整数であることが好ましい。より好ましくは、r=s=t=0である。また、Wが炭素数1〜30の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基である場合には、rは0〜1の整数であることが好ましく、sは0〜1の整数であることが好ましく、tは0〜1の整数であることが好ましい。より好ましくは、r=s=t=1である。
【0097】
Wは、同一又は異なって、炭素数6〜30の3価の芳香族基又は炭素数1〜30の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基を表すが、前者の炭素数6〜30の3価の芳香族基としては、芳香環を有する限り特に制限されない。3価の芳香族基の炭素数としては6〜14が好ましく、より好ましくは6〜10である。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、これらの中でもベンゼン環が好ましい。後者の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基の鎖状炭化水素としては特に制限されず、鎖状飽和炭化水素であっても、鎖状不飽和炭化水素であってもよく、鎖状炭化水素は分岐を有していてもよい。鎖状炭化水素の炭素数としては1〜30が好ましく、より好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜3であり、鎖状炭化水素として具体的には、例えば、アルカン、アルケン、アルキン等が挙げられ、好ましくはアルカンである。なお、鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基が分岐を有する場合、当該鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基の炭素数は、主鎖及び分岐鎖の合計の炭素数を意味する。
【0098】
Y
aは、同一又は異なって、直接結合又は酸素原子を表す(但し、R
14が水素原子である場合には、Y
aは直接結合である。)。Wが鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基である場合には、Y
aは酸素原子であることが好ましい。Y
aが酸素原子であれば、重合体の水溶性がより充分なものとなり、クレー分散性等が向上する。
【0099】
R
14は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の鎖状炭化水素基を表す(但し、Wが炭素数1〜30の鎖状炭化水素から水素原子を3つ除いてできる3価の基である場合には、R
14は炭素数1〜30の鎖状炭化水素基である。)。R
14としては、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基であることが好ましく、具体的には、例えば、分岐を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。中でもアルケニル基又はアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。鎖状炭化水素基の炭素数としては、カーボンブラック分散能、再汚染防止能及びクレー分散能の向上の観点から、3〜25が好ましく、より好ましくは5〜20であり、更に好ましくは7〜15である。なお、鎖状炭化水素基が分岐を有する場合、鎖状炭化水素基の炭素数は、主鎖及び分岐鎖の合計の炭素数を意味する。
【0100】
X
aは、同一又は異なって、炭素数2〜20のオキシアルキレン基を表す。親水性向上及び再汚染防止能向上の観点から、オキシアルキレン基の炭素数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜3、最も好ましくは2である。また、X
aで表されるオキシアルキレン基の平均繰り返し単位数を表すmは、1〜200の整数であるが、クレー分散能及びカーボンブラック分散能向上の観点から、好ましくは2〜100、より好ましくは3〜70、更に好ましくは5〜50、最も好ましくは5〜30である。
【0101】
Zは、水素原子又はSO
3Dで表される基を表し、Dは、水素原子、金属原子、NH
4又は有機アミン塩を表すが、これにより水溶性が充分なものとなり、クレー分散能及び再汚染防止能がより充分に発揮される。Dが表し得る金属原子は、Li、Na、K等のアルカリ金属が挙げられる。Dは、好ましくはNH
4である。
【0102】
上記一般式(7)で表される単量体の中でも特に好ましくは、下記一般式(8)又は(9)で表される化合物である。
【0104】
式中、R
11、R
12、R
13、Z、X
a、Y
a、mは、それぞれ一般式(7)における各記号と同様である。R
15は、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基である。R
16は、水素原子又は炭素数1〜30の鎖状炭化水素基を表す。
なお、一般式(9)中、−O−(X
a)m−Z基は、ベンゼン環における−R
16に対してオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかの位置に結合する。
【0105】
上記一般式(8)及び(9)におけるZ、X
a、Y
a及びmの具体例及び好ましい例は、上記一般式(7)における各記号とそれぞれ同様である。R
11、R
12及びR
13については、カルボン酸系単量体等のアニオン性基含有単量体との重合性向上の観点から、上記一般式(8)では、R
11、R
12及びR
13の全てが水素原子であることが好ましく、上記一般式(9)では、R
11及びR
13が水素原子であって、R
12がメチル基であることが好ましい。
【0106】
上記一般式(8)中、R
15は、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基を表す。鎖状炭化水素基としては、一般式(7)中のR
14について上述したものと同様のものが挙げられる。具体的にはアルケニル基又はアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。鎖状炭化水素基の炭素数としては、カーボンブラック分散能、再汚染防止能及びクレー分散能の向上の観点から、好ましくは5〜25、より好ましくは7〜20、更に好ましくは9〜15である。
【0107】
上記一般式(9)中、R
16は、水素原子又は炭素数1〜30の鎖状炭化水素基を表す。鎖状炭化水素基としては、一般式(7)中のR
14について上述したものと同様のものが挙げられる。具体的にはアルケニル基又はアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。鎖状炭化水素基の炭素数としては、カーボンブラック分散能、再汚染防止能及びクレー分散能の向上の観点から、好ましくは3〜25、より好ましくは5〜20、更に好ましくは7〜15である。
【0108】
ここで、上記一般式(8)中のR
15及び一般式(9)中のR
16の炭素数が、例えば1〜3と少ない場合は、上述したオキシアルキレン基の繰り返し単位mの数を少なくすることで、疎水化度と親水化度を調整することができるため、必ずしも当該炭素数が少ない場合がカーボンブラック分散能及び再汚染防止能が低下するとは限らない。逆に、当該炭素数が28〜30と多い場合は、オキシアルキレン基の繰り返し単位mの数を多くすることで、疎水化度と親水化度を調整することが可能であるため、必ずしも当該炭素数が多い場合が、カーボンブラック分散能及び再汚染防止能が低下するとも限らない。
【0109】
上記一般式(9)においては、カルボン酸系単量体等のアニオン性基含有単量体との重合性向上の観点から、R
12とフェニル基とが、trans位に位置するE体(trans位)であることが好ましい。また、−O−(X
a)m−Z基は、ベンゼン環における−R
16に対してオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかの位置に結合していればよいが、パラ位に結合していることが好ましい。また、−O−(X
a)m−Z基は、式中のベンゼン環における、重合性不飽和基が結合する炭素に対して、オルト位に結合していることが好ましい。
【0110】
上記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、機能付与型界面活性剤・水性樹脂系用界面活性剤・アデカリアソープSRシリーズ(ADEKA社製:エーテルサルフェート型アンモニウム塩;ADEKA社製品カタログ・界面活性剤・Y01−1012A No.6−2)、アデカリアソープERシリーズ(ADEKA社製:ノニオン型;ADEKA社製品カタログ・界面活性剤・Y01−1012A No.6−2)、アクアロンKHシリーズ(第一工業製薬社製:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム)等が挙げられる。具体的には、アデカリアソープSRシリーズでは、SR−10(EO10モル)、SR−20(EO20モル)、SR−3025(EO30モル、25%水溶液)が挙げられ、アデカリアソープERシリーズでは、ER−10(EO10モル)、ER−20(EO20モル)、ER−30(EO30モル)、ER−40(EO40モル)が挙げられ、アクアロンKHシリーズではアクアロンKH−05(EO5モル)、アクアロンKH−10(EO10モル)が挙げられる。より好ましくは、アデカリアソープSR−10、SR−20、ER−20、KH−10である。
【0111】
上記一般式(9)で表される化合物としては、例えば、アクアロンHS・BCシリーズ(第一工業製薬社製:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム)、アクアロンRNシリーズ(第一工業製薬社製:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル)等が挙げられる。具体的には、アクアロンHS・BCシリーズでは、HS−10(EO10モル)、BC−0515(EO5モル)、BC−10(EO10モル)、BC−20(EO20モル)が挙げられ、アクアロンRNシリーズでは、RN−20(EO20モル)、RN−30(EO30モル)、RN−50(EO50モル)が挙げられる。より好ましくは、アクアロンBC−10、BC−20、RN−20、RN−30である。
【0112】
(v)ラクタム基含有単量体
ラクタム基含有単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、ラクタム基とを含む化合物である。
ラクタム基を含むとは、ラクタム基を、1分子中に1又は2以上有することを意味する。ラクタム基としては特に限定されないが、例えば、α−ラクタム基、β−ラクタム基、γ−ラクタム基、σ−ラクタム基が好ましい。中でも、γ−ラクタム基(ピロリドン基)が好ましい。
【0113】
上記ラクタム基含有単量体として具体的には、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−4−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−プロピルピロリドン、N−ビニル−4−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−プロピルピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−5−プロピルビロリドン、N−ビニル−5−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−プロピルカプロラクタム、N−ビニル−7−ブチルカプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、N−ビニルピロリドンが特に好適である。
【0114】
<他の成分>
上記水溶性フィルムには、必要に応じて、水溶性樹脂及びアニオン性基含有重合体以外の成分(他の成分とも称す)を1種又は2種以上含んでもよい。他の成分としては特に限定されず、各種添加剤が挙げられる。なお、本発明の作用効果の発揮を損なわない限りにおいて、アクリル酸単独重合体を含んでもよい。
他の成分の含有量は、本発明の水溶性フィルム100質量%中、0〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0115】
〔水溶性フィルムの製造方法〕
本発明の水溶性フィルムは、アニオン性基含有単量体を含む単量体成分を重合させる工程(重合工程とも称す)を含む製造方法によって製造することが好適であり、このような製造方法もまた、本発明の1つである。中でも、更に、上記重合工程で得られるアニオン性基含有重合体と水溶性樹脂とを混合する工程(混合工程とも称す)を含むことがより好ましい。また、製膜工程を更に含むことが好ましく、通常のフィルム作製で適用される1又は2以上のその他の工程を含んでもよい。
以下、各工程について更に説明する。
【0116】
<重合工程>
重合工程は、アニオン性基含有単量体を含む単量体成分を重合させる工程である。この工程は、例えば、1種又は2種以上のアニオン性基含有単量体を重合させる工程;1種又は2種以上のアニオン性基含有単量体と、1種又は2種以上の他の単量体とを含む単量体成分を共重合させる工程;他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体に、アニオン性基含有単量体を含む単量体成分をグラフト重合させる工程;等が挙げられる。
【0117】
上記他の単量体としては、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体を、少なくとも用いることが好ましい。これにより、得られる水溶性フィルムにおいて、耐硬性及び冷水への溶解性がより向上される他、フィルム強度の低下をより抑制することができるため、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。このように上記単量体成分が、アニオン性基含有単量体に加え、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0118】
上記スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体としては、スルホン酸(塩)基含有単量体、カチオン性基含有単量体、(ポリ)アルキレングリコール基含有単量体、疎水性基含有単量体及びラクタム基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
アニオン性基含有単量体及びこれら他の単量体の詳細は、上述したとおりである。
【0119】
上記重合工程が、アニオン性基含有単量体(A)と他の単量体(B)とを含む単量体成分を共重合させる工程である場合、これら単量体の質量比(A/B)は、例えば、1〜99/99〜1であることが好ましい。フィルム強度と水溶性とのバランスの点から、より好ましくは5〜95/95〜5、更に好ましくは10〜90/90〜10である。
なお、他の単量体(B)に占める、スルホン酸(塩)基、カチオン性基、(ポリ)アルキレングリコール基、疎水性基及びラクタム基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体の割合は、他の単量体(B)の総量100質量%に対し50〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0120】
上記共重合工程の中でも、グラフト重合工程としては、他の単量体を重合して得られる重合体に、アニオン性基含有単量体をグラフト重合させる工程であることが好ましい。他の単量体を重合して得られる重合体としては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールの末端に疎水性基やラクタム基を有する重合体;ポリビニルピロリドン等のラクタム構造を有するモノマーの重合体;等が好ましいが、この場合、上記グラフト重合工程は、ポリアルキレングリコールに過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤を用いて水素原子を引き抜きながら、アニオン性基含有単量体を重合させる工程であることが好ましい。
なお、他の単量体を重合して得られる重合体100重量部に対する、グラフト成分であるアニオン性基含有単量体の割合は、5〜100重量部であることが好ましい。より好ましくは9〜70重量部である。
【0121】
上記重合工程は、溶液重合や塊状重合等の通常の方法で行うことができる。中でも、溶液重合を行うことが好適である。
溶液重合は、回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、原料成分及び得られる重合体の溶解性の観点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0122】
水溶液重合法にて行う場合には、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤を1種又は2種以上用いることが好ましい。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物;2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物;2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物;等の水溶性アゾ系開始剤が好ましい。また、この際、必要に応じて、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を1種又は2種以上用いることもできる。
【0123】
塊状重合を行う場合、及び、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合には、ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソカーボネート等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;等を用いることが好適である。また、この際、金属やアミン化合物等の促進剤を併用することもできる。
【0124】
水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上述した種々のラジカル重合開始剤、又は、ラジカル重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0125】
上記重合工程において、反応温度は特に限定されないが、例えば、30℃以上で、かつ単量体の沸点以下の温度範囲に設定することが好ましく、より好ましくは45〜200℃、更に好ましくは60〜200℃、特に好ましくは80〜150℃である。また、反応時間(重合時間)も特に限定されないが、重合率や生産性を考慮すると、例えば、5分〜10時間の範囲が好ましく、より好ましくは30分〜6時間である。
【0126】
上記重合工程において、重合開始剤及び単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、それぞれ、全量を反応器に初期仕込みしてもよいし、全量を反応器に滴下してもよいし、一部を初期仕込みして残りを滴下してもよい。
【0127】
上記重合工程では、単量体成分の総量を、他の原料及び重合溶媒を含む全原料の総量100質量%に対し、10〜99質量%の範囲とすることが好適である。この範囲内で重合反応を行えば、重合率や生産性をより高めることができる。より好ましくは20〜98質量%、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0128】
<混合工程>
混合工程は、上述した重合工程で得られるアニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(特に好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程である。混合工程では、必要に応じて他の成分を更に混合してもよい。各成分の混合は、一度に行ってもよいし、混合成分の一部を混合した後に残りを混合させてもよい。
【0129】
上記混合工程において、アニオン性基含有重合体と、水溶性樹脂と、必要に応じて更に他の成分との混合手段は特に限定されず、例えば、溶媒下で溶解又は分散してもよいし、溶融混練してもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては特に限定されず、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、n−ブタノール、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。中でも、水を用いることが好ましい。
【0130】
上記混合工程は、20〜90℃の温度下で行うことが好ましい。これにより、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とがより充分に混合され、より均一性の高い水溶性フィルムを得ることができる。より好ましくは50〜90℃である。
【0131】
<製膜工程>
製膜工程は、上記混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程である。製膜手段は特に限定されず、例えば、上記混合物を基材に塗布し、乾燥又は硬化した後、必要に応じて該基材から剥離することにより形成する方法(塗布法又はコーティング法と称す)や、支持体に、上記混合物から形成されたフィルムを熱圧着することにより形成する方法の他、練込法、Tダイ法、インフレーション法等も挙げられる。
【0132】
〔用途〕
本発明の水溶性フィルムは、冷水への溶解性に優れ、かつ高強度で耐硬性にも優れる他、耐薬品性も有する。したがって、農薬等の薬品類や洗剤等の包装材料として特に有用である。すなわち、本発明の水溶性フィルムは、薬品及び/又は洗剤を包装するために用いられるものであることが好ましい。また、本発明の水溶性フィルムは、薬品及び/又は洗剤の包装に用いるために適したものであることが好ましい。包装対象(薬品類等)の形態(粉末状、顆粒状、液状等)や大きさ、粒度分布等は特に限定されず、例えば洗剤としては、粉末洗剤、液体洗剤、ジェル状洗剤等のいずれも好適である。また、包装対象には、必要に応じて分散剤、結合剤、界面活性剤等の各種添加剤を含んでもよい。また、本発明の水溶性フィルムは更に、再汚染防止能や洗浄力に優れるというビルダー性能を有するため、洗剤の包装材料として特に有用である。
【0133】
<組成物>
本発明はまた、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂とを含む組成物(混合物)でもある。この組成物を成膜することにより本発明の水溶性フィルムを好適に得ることができる。この組成物は、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合することにより得ることができる。
【0134】
<包装物>
本発明はまた、本発明の水溶性フィルムに薬品及び/又は洗剤が包装されてなる包装物でもある。本発明の包装物は、例えば、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを含む水溶性フィルムに薬品及び/又は洗剤が包装されてなる包装物である。包装物や包装物中の薬品及び/又は洗剤の形態や大きさは特に限定されず、適宜設計することができる。包装の形態は、密封包装であってもよく、非密封包装であってもよいが、包装物をより容易かつ安全に使用する観点から、例えば密封包装であることが好ましい。
【0135】
<包装物の製造方法>
本発明は更に、本発明の水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む包装物の製造方法でもある。本発明の包装物の製造方法は、例えば、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程、該混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程、及び、該製膜工程で得た水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む水溶性フィルムの製造方法である。
【0136】
<包装方法等>
本発明はそして、本発明の水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む包装方法でもある。本発明の包装方法は、例えば、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程、該混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程、及び、該製膜工程で得た水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む包装方法である。本発明はまた、本発明の水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む本発明の水溶性フィルムの使用方法でもある。本発明の使用方法は、例えば、アニオン性基含有重合体と水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール系重合体)とを混合する工程、該混合工程で得た混合物を用いて製膜する工程、及び、該製膜工程で得た水溶性フィルムを用いて薬品及び/又は洗剤を包装する工程を含む水溶性フィルムの使用方法である。
【実施例】
【0137】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」とは「質量%」を意味する。なお、以下の実施例及び比較例では、ポリビニルアルコール系重合体(PVA)を単にポリビニルアルコールとも言う。また、重量平均分子量は、以下のいずれかの測定条件の下、GPC分析により求めた。
【0138】
<GPC条件1(重量平均分子量の測定条件)>
装置:東ソー社製、高速GPC装置(HLC−8320GPC)
検出器:RI
カラム:昭和電工社製、SHODEX Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学社製、POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
【0139】
<GPC条件2(重量平均分子量及び数平均分子量の測定条件)>
共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、以下の条件で測定した。
装置:東ソー社製、HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:昭和電工社製、Shodex Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ、GF−1G
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学社製、POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム水溶液
【0140】
<GPC条件3(重量平均分子量の測定条件)>
装置:東ソー製、HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー株式会社製 TSK−guard column、及び、TSK−GEL G3000PWXL2本の計3本を直列
カラム温度:35℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学社製、POLY SODIUM ACRYLATE STANDARD
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液
検量線:American Polymer Standard Corp.製、POLYACRYLIC ACID STANDARD
【0141】
<アニオン性基含有重合体の合成>
合成例1(重合体組成物1)
1)重合
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたSUS316製の2.5L釜に、純水180.0gと、モール塩0.019g(総仕込み量に対する鉄(II)の質量(ここで、総仕込み量とは、重合完結後の中和工程を含む、全ての投入物重量をいう。)に換算すると3ppm)を仕込み、攪拌下、85℃に昇温した(初期仕込み)。
次いで攪拌下、85℃一定状態の重合反応系中に80質量%アクリル酸水溶液(以下「80%AA」とも称す。)252.0g、60質量%イソプレノールへのEO付加物(平均付加モル数は50である。以下「60%IPN50」とも称す。)336.0g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下「15%NaPS」と称す。)44.3g、35質量%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下「35%SBS」と称す。)16.5g、純水10.0gをそれぞれ別個の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間及び滴下シーケンスについては、80%AAは反応開始から180分間で一定速度、60%IPN50は反応開始から120分間で一定速度、15%NaPSは反応開始から210分間で一定速度、35%SBSは反応開始から200分間で一定速度、純水は反応開始から200分間で一定速度とした。また、滴下開始時間に関して、80%AA、60%IPN50、15%NaPS、35%SBS、純水は同時とした。また、80%AA、60%IPN50、15%NaPS、35%SBS、純水の滴下開始のタイミングを反応開始とした。すべての滴下終了後、更に30分間に渡って反応溶液を85℃に保持して熟成し重合を完結せしめた。
このようにして、重量平均分子量(Mw)75000(GPC条件1)、固形分45.3%の重合体組成物1(以下「ポリマー1」とも称す。)を得た。
【0142】
合成例2(重合体組成物2)
1)N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ジエタノールアミンの合成
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製4つ口フラスコに、ジエタノールアミン235.9gと、水121.8gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、アリルグリシジルエーテル(以下「AGE」とも称す。)251.1gを60分かけて添加し、その後、5時間反応させることにより、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ジエタノールアミン含有組成物(以下「80%AGE−DEA」とも称す。)を得た。
2)重合
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたSUS316製の2.5L釜に、純水257.6gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した(初期仕込み)。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に80%AA:450.0g、80%AGE−DEA:112.5g、15%NaPS:144.3g、及び、35%SBS:108.2gをそれぞれ別個の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間及び滴下シーケンスについては、80%AAは反応開始から180分間で一定速度、80%AGE−DEAは反応開始から160分間で一定速度、15%NaPSは反応開始から190分間で一定速度、35%SBSは反応開始から190分間で一定速度とした。また、滴下開始時間に関して、80%AA、80%AGE−DEA、15%NaPS、35%SBSは同時とした。また、80%AA、80%AGE−DEA、15%NaPS、35%SBS、純水の滴下開始のタイミングを反応開始とした。すべての滴下終了後、更に30分間に渡って反応溶液を85℃に保持して熟成し重合を完結せしめた。
このようにして、重量平均分子量(Mw)7200(GPC条件1)、固形分54.7%の重合体組成物2(以下「ポリマー2」とも称す。)を得た。
【0143】
合成例3(重合体組成物3)
1)1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オールの合成
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、n−ブチルアルコール370.0gと、ペレット状の水酸化ナトリウム4.27gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、AGE:57.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。この溶液を1000mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒することにより、1−アリロキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール含有組成物(以下「PAB」とも称す。)を得た。
2)重合
還流冷却器、攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水100.0g及びモール塩0.0126gを仕込み、攪拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AAを159.4g、PABを85.0g、15%NaPSを88.9g、35%SBSを38.1g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、PABについては120分間、15%NaPSについては210分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下開始は同時とし、滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。
このようにして、重量平均分子量(Mw)18000(GPC条件1)、固形分50.7%の重合体組成物3(以下「ポリマー3」とも称す。)を得た。
【0144】
合成例4(重合体組成物4)
1)3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの合成
温度計、攪拌機、窒素流入管と窒素流出口に冷却トラップを備えたSUS製反応容器に、窒素を導入しながら、脱イオン水161.9g、48%水酸化ナトリウム水溶液76.3gを仕込み、これに35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液549.0gを添加した。液温を63℃に昇温し、AGE:212.9gを225分かけて滴下した。アリルグリシジルエーテルの滴下終了後、反応液の温度を63℃で30分間維持した。このようにして得た3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム含有組成物を、以下では「40%HAPS」とも称する。
2)重合
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製のセパラブルフラスコに、純水267.5gと、40%HAPS100.0gと、モール塩0.033g(総仕込み量に対する鉄(II)の質量に換算すると3ppm)とを仕込み、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した(初期仕込み)。
次いで攪拌下、沸点還流状態に保たれた共重合反応系中に80%AA:464.9g、40%HAPS:518.3g、15%NaPS:165.5g、及び、35%SBS:56.2gをそれぞれ別個の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAを180分間、40%HAPSを130分間、35%SBSを170分間、15%NaPSを200分間とした。また、滴下開始時間に関しては、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。15%NaPSは78.3gを0−130分に一定の滴下速度で連続的に滴下し、残り87.2gを130−200分に一定の滴下速度で連続的に滴下した。80%AAと40%HAPSと35%SBSとはそれぞれの滴下時間の間、滴下速度は一定とし、連続的に滴下した。滴下終了後、更に30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持して熟成し共重合を完結せしめた。
このようにして、重量平均分子量(Mw)20000(GPC条件2)、固形分濃度が46%の重合体組成物4(以下「ポリマー4」とも称す。)を得た。
【0145】
<フィルムの作製>
実施例1(水溶性フィルム1)
50mLのスクリュー管に、ポリマー1を2.6g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)4.8g、水32.6gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を、離型フィルム(シリコン処理されたPETフィルム)上に、アプリケーターを用いて塗工した。塗工時の厚みは乾燥後のフィルムの厚みが10〜30μmとなるように設定した。このように塗工処理した離型フィルムを、100℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥させた。次いで、オーブンから取り出し室温にまで冷却後、離型フィルムを剥がすことにより、水溶性フィルム1を得た。
【0146】
実施例2(水溶性フィルム2)
50mLのスクリュー管に、ポリマー1を5.3g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)3.6g、水31.1gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム2を得た。
【0147】
実施例3(水溶性フィルム3)
50mLのスクリュー管に、ポリマー1を7.9g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)2.4g、水29.7gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム3を得た。
【0148】
実施例4(水溶性フィルム4)
50mLのスクリュー管に、ポリマー1を10.6g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)1.2g、水29.7gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム4を得た。
【0149】
実施例5(水溶性フィルム5)
50mLのスクリュー管に、ポリマー2を4.4g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)3.6g、水32.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム5を得た。
【0150】
実施例6(水溶性フィルム6)
50mLのスクリュー管に、ポリマー3を5.1g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)3.6g、水31.4gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム6を得た。
【0151】
実施例7(水溶性フィルム7)
50mLのスクリュー管に、ポリマー4を5.2g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)3.6g、水31.2gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、水溶性フィルム7を得た。
【0152】
比較例1(比較フィルム1)
50mLのスクリュー管に、日本触媒社製アクアリックHL415(ポリアクリル酸、重量平均分子量(Mw)12000(GPC条件3)、固形分45.7%。以下「HL415」とも称す。)を5.2g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)3.6g、水31.2gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、比較用の水溶性フィルム(比較フィルム1)を得た。
【0153】
比較例2(比較フィルム2)
50mLのスクリュー管に、水を44.0g、ALDRICH社製試薬ポリビニルアルコール(重量平均分子量(Mw)85000〜124000、けん化度87〜89%)6.0gを、この順で投入し、70℃のウォーターバス中での加熱と撹拌を繰り返しながら、溶解させ、固形分15%の水溶液を調整した。この水溶液を用いて、実施例1に記載の内容と同様の工程を経ることにより、比較用の水溶性フィルム(比較フィルム2)を得た。
【0154】
各実施例で用いたアニオン性基含有重合体(ポリマー1〜4)及び比較例1で用いたHL415のモノマー組成等を、表1に示す。また、実施例及び比較例で得た各フィルムについて、以下の評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0155】
<評価試験>
1)溶解性評価
100mLビーカーに6〜7℃の純水100gを投入し、マグネティックスターラーと撹拌子を用いて撹拌した。撹拌中の水中に4×4cmの大きさに切り取ったフィルムを投入し、完全に溶解するまでの時間(投入してから、目視でフィルムが見えなくなるまでの時間)を計測した。計測した時間(溶解時間)を表2に示す。
更に、この溶解時間を、下記式(1):
溶解時間(40μm換算)(秒)=(40/フィルムの厚さ(μm))
2×溶解時間(秒)(1)
を用いて換算し、厚さ40μmフィルムの溶解時間とした。この溶解時間(40μm換算)が短いほど溶解性が良好であることを意味する。
【0156】
2)耐硬性評価
グリシン67.6gと塩化ナトリウム52.6gを秤りとった1Lのビーカーに純水と48%水酸化ナトリウムを加えて、pH10のグリシン緩衝原液600gを調整した。このグリシン緩衝原液を別の1Lビーカーに54.0g秤りとり、純水を加えて1000gになるまで希釈し、グリシン緩衝希釈液とした。別途、フィルムを水に溶解させ、2.5%フィルム水溶液を調整しておき、このフィルム水溶液2.5gにグリシン緩衝希釈液80gを加えて、試験液とした。更に別途、1mol/Lの塩化カルシウム水溶液を調整し、硬水とした。平沼産業社製自動滴定装置COM−1700を用いて、試験液に、硬水を3秒毎に0.1mLずつ滴下し、6mL滴下した時点での650nm光の透過率を測定した。数値が100に近いほど耐硬性が良好であることを意味する。
【0157】
3)強度評価
3×3cmの大きさに切り取ったフィルム上に、重さ11.84gの金属球を、自由落下させた。落下位置を調節し、フィルムが破れた時の高さにおける金属球の位置エネルギーを下記式(2):
強度(J)=0.01184(kg)×9.8(m/s
2)×金属球落下位置の高さ(m)(2)
より算出し、強度とした。これを表2に示す。
更に、このようにして算出した値を、下記式(3):
強度(40μm換算)(J)=(40/フィルムの厚さ(μm))
2×強度(J)(3)
を用いて換算し、厚さ40μmフィルムの強度とした。値が大きいほど強度が高いことを意味する。
なお、フィルムの膜厚は、Coolant Proof Micrometer IP65を用いて測定した。フィルムの6箇所をランダムに測定し、その平均値をフィルムの膜厚とした。
【0158】
4)伸長性
1.5×9.0cmの大きさに切り取ったフィルムを、室温下、引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−100D)にて、初期標線距離60mm、引っ張り速度5mm/minの条件で引っ張り破断した時のひずみ(最大ひずみ)(%)を伸長性として評価した。最大ひずみが大きいほど伸長性が高いことを意味する。
【0159】
5)消臭性
ガラス製シャーレを用意し、フィルムを2.5g秤量して入れた。またブランクとして空のシャーレを用意した。これらのシャーレをそれぞれ、コック付きサンプリングバッグ(GLサイエンス社製、スマートバッグPA、容量3L)に入れ、ヒートシールして完全に密閉した。各サンプリングバッグ内を真空にした後、窒素ガス2Lを量り入れた。各バッグ内のシャーレを開けた後、酢酸飽和窒素ガスを、シリンジを用いて5mL量り取り入れた。2時間静置した後、酢酸用の検知管(ガステック社製、No.81又は81L)を用い、バッグ内の気体100mLを吸引して、酢酸濃度の低減率(%)を比較した。なお、測定値は、検知管の説明書に記載の換算スケールを用いて酢酸濃度に換算した。
酢酸の低減率は下式のように算出した。
低減率(%)=(ブランクのガス濃度−試料入りのガス濃度)÷(ブランクのガス濃度)×100
【0160】
6)再汚染防止能
1)Test fabric社より入手した綿布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE6000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。塩化カルシウム2水和物5.88gに純水を加えて20kgとし、硬水を調製した。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.0g、炭酸水素ナトリウム9.5g、硫酸ナトリウム8.0gに純水を加えて80.0gとした後、48%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8.5し、さらに純水を加えて100gの界面活性剤水溶液を調製した。ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水2Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で4.0%のフィルム水溶液5g、ゼオライト0.30g、JIS11種クレー1.0gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌した。その後、白布7枚を入れ100rpmで10分間攪拌した。その後、白布を取り出し、手で白布の水を切り、25℃にした硬水2Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布の白色度を反射率にて測定した。以上の測定結果から下式により再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率(%)=(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)×100
なお、再汚染防止率が高いほど、再汚染防止能に優れることを意味する。
【0161】
7)カーボンブラック分散能
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.60g、48%水酸化ナトリウム5.00gに純水を加えて600.0gとした後、48%水酸化ナトリウムでpH10とし、グリシンバッファーを調製した。次に、このグリシンバッファー6.00gとエタノール11.10gに純水を加えて1000.0gとし、分散液を調製した。また、各実施例又は比較例で得たフィルム(固形分換算)の0.5%水溶液を約10g調製した。100mlのねじ口瓶にカーボンブラック0.03gを取り、ここに上記5.0%フィルム水溶液9.0g、分散液81.0gを加え、試験液とした。試験液の入ったねじ口瓶を超音波洗浄器に5分間かけ、更に、長さ10mmのスターラーチップを入れて500rpmで5分間攪拌した。攪拌を止めて3時間静置した後、試験液の外観を観察した。判定基準は以下の通りとした。
(1)カーボンブラック水和能:
〇:目視にて、カーボンブラックがほとんど液面に見られなかった。
△:目視にて、少量のカーボンブラックが液面に浮いていた。
×:目視にて、多量のカーボンブラックが液面に浮いていた。
(2)カーボンブラック分散:
〇:目視にて、液中にカーボンブラックが濃厚に分散していた。
△:目視にて、液中にカーボンブラックが均一に分散していた。
×:目視にて、液中のカーボンブラックが分散していなかった。
【0162】
8)洗浄力
人工汚染布として、洗濯科学協会より入手した湿式人工汚染布を用いた。人工汚染布は、予め測色色差計SE6000(日本電色工業社製)を用いて、白色度を反射率で測定した。塩化カルシウム2水和物1.47gに純水を加えて10kgとし、硬水を調製した。ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(AES)4.8g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(AE)0.6g、ホウ酸ナトリウム0.6g、クエン酸0.9g、プロピレングリコール2.4gに純水を加えて全体で80gとした。水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.2に調整した後に純水を加えて全体で100gとし、界面活性剤水溶液を調製した。ターゴットメーターを27℃ にセットし、硬水1000mL、各実施例又は比較例で得たフィルム(固形分換算)の濃度2.75%溶液5mL、界面活性剤水溶液4.8mL、人工汚染布5枚、JIS L0803準拠綿白布5枚をポットに入れ、100rpmで10分間攪拌した。人工汚染布をポットから取り出し、人工汚染布の水分を手で絞った。ポットに硬水1000mLを入れ、水分を絞った人工汚染布をポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。人工汚染布をポットから取り出し、手で水分を絞った後、人工汚染布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた。乾燥した人工汚染布の白色度を測色色差計で反射率により測定した。以上の方法により測定された値と下式により洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄後の人工汚染布の白色度−洗浄前の人工汚染布の白色度)÷(人工汚染布の元白布(EMPA221)の白色度−洗浄前の人工汚染布の白色度)×100
【0163】
9)クレー分散能
グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.60g、48%水酸化ナトリウム5.00gに純水を加えて600.0gとし、pH8.5のグリシンバッファーを調製した。次に、このグリシンバッファー60.0gに塩化カルシウム0.147gと純水を加えて1000.0gとし、分散液を調製した。また、各実施例又は比較例で得たフィルム(固形分換算)の0.1%水溶液を約10g調製した。
次いで、内径16mmの30mL試験管を評価サンプル数準備し、それぞれにクレー(JIS11種)0.30gを秤りとり、これに分散液を27.0g投入した。この試験管に、0.5%のフィルム水溶液を3.0g投入し、セプタムでキャップした。このようにして、各試験管中にクレー1%、サンプル固形分100ppmを含む懸濁水溶液を調製した。各試験管内で塊になっているクレーを軽く振ってほぐした後、試験管をゆっくり60往復反転させた。その後、キャップを外し、水平で安定した場所で静置し、5時間後の上澄みを、ホールピペットを用いて5mL取った。この上澄みの380nmの吸光度を、島津製作所社製の紫外可視分光光度計「UV−1800」を用いて測定した。この吸光度を分散能とした。この値が大きいほど分散能が高いことを意味する。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
表2より、以下のことを確認した。
実施例1〜7と比較例2とは、アニオン性基含有重合体を用いるか否かの点で主に相違するが、実施例1〜7で得た水溶性フィルムの強度(40μm換算)は、比較例2で得た水溶性フィルムとほぼ同等であるか又はより高くなっており、かつ溶解時間に顕著な差が生じたことが分かる。したがって、ポリビニルアルコールとアニオン性基含有重合体とを含む構成とすることで、フィルム強度の低下を充分に抑制しながらも、冷水への溶解性に優れる水溶性フィルムとなることが分かった。
【0167】
また実施例2、5〜7と比較例1とは、本発明のアニオン性基含有重合体を用いるか、又は、アクリル酸単独重合体を用いるかの点で主に相違するが、特に耐硬性に差が生じたことが分かる。したがって、アクリル酸単独重合体以外のアニオン性基含有重合体を用いることで、耐硬性を飛躍的に改善することができることが分かった。
【0168】
表には示していないが、実施例1〜7で得たフィルムは、伸長性、消臭性、再汚染防止能、洗浄力、分散能(カーボンブラックやクレー分散能)にも優れた性能を有することも確認した。