特許第6782713号(P6782713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6782713窒化ホウ素ナノチューブ中性子検出器、中性子検出方法及び中性子検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782713
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】窒化ホウ素ナノチューブ中性子検出器、中性子検出方法及び中性子検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/06 20060101AFI20201102BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20201102BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20201102BHJP
【FI】
   G01T3/06
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】25
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-559354(P2017-559354)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公表番号】特表2018-524560(P2018-524560A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016032385
(87)【国際公開番号】WO2016183455
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】62/254,569
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/160,853
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/162,983
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/173,141
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516318891
【氏名又は名称】ビイエヌエヌティ・エルエルシイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,ケヴィン・シイ
(72)【発明者】
【氏名】ホイットニー,アール・ロイ
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−333158(JP,A)
【文献】 特表2015−510589(JP,A)
【文献】 特表2000−507698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0199747(US,A1)
【文献】 PERVAIZ,Ahmad et al.,Synthesis of highly crystalline multilayers structures of 10BNNTs as a potential neutron sensing element,CERAMICS INTERNATIONAL,2014年12月 6日,41(2015),p.4544-4548
【文献】 Marvin L. Cohen,Alex Zettl,The physics of boron nitride nanotubes,Physics Today,米国,American Institute of Physis,2010年11月,Vol.63,No.11,P.34-38
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/00
G01T 5/00
G01T 7/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素ナノチューブ(「BNNT」)系中性子検出器であって、
電離箱;
前記電離箱中に配置された少なくとも1つのフォトン検出器;
前記電離箱中に配置されたBNNT材料;および
前記電離箱中のシンチレーション物質を含み、
前記シンチレーション物質は、ガスと液体から構成される集合から選択され、前記BNNT材料中に分散され、
前記少なくとも1つのフォトン検出器は、前記電離箱中で、中性子吸収により生成された、前記シンチレーション物質を横切るイオンから放出された少なくとも一部のフォトンを検出するように配置される、中性子検出器。
【請求項2】
前記電離箱は、前記少なくとも1つのフォトン検出器に向けてフォトンを反射するように配置された少なくとも1つのミラー表面をさらに含む、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項3】
前記BNNT材料はBNNTエアロゲルである、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項4】
前記BNNT材料は、10Bを含むホウ素供給原料から形成される、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項5】
前記BNNT材料は、10Bを含む、請求項4に記載の中性子検出器。
【請求項6】
前記BNNT材料は、BNNT材料の連続シートを含む、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項7】
前記BNNT材料は、シンチレーション物質コーティングを含む、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項8】
前記BNNT材料は、シンチレーションガス内に配置される、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項9】
前記シンチレーションガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンの内の少なくとも1種を含む、請求項に記載の中性子検出器。
【請求項10】
前記BNNT材料は、前記電離箱内の非シンチレーション液体中に懸濁される、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項11】
前記BNNT材料は、前記電離箱内で足場材料により安定化される、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項12】
前記BNNT材料は、複数のBNNT材料ワイヤーを含む、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項13】
前記複数のBNNT材料ワイヤーは、第1の面内で配置された第1の複数のほぼ平行なワイヤーを含む、請求項12に記載の中性子検出器。
【請求項14】
前記複数のBNNT材料ワイヤーは、第2の面内に第2の複数のほぼ平行なワイヤーをさらに含み、前記第2の複数のほぼ平行なワイヤーは、前記第1の複数のほぼ平行なワイヤーに垂直である、請求項13に記載の中性子検出器。
【請求項15】
前記複数のBNNT材料ワイヤーは、前記電離箱中で複数のワイヤー層を含む、請求項12に記載の中性子検出器。
【請求項16】
前記BNNT材料は、少なくとも1つのBNNT材料シートを含む、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項17】
238U材料をさらに含み、前記BNNT材料は、前記238U材料のための足場材料を提供する、請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項18】
前記電離箱中にシンチレーションガスをさらに含む、請求項17に記載の中性子検出器。
【請求項19】
前記BNNT材料は、シンチレーション物質コーティングを含む、請求項17に記載の中性子検出器。
【請求項20】
前記BNNT材料は、11Bを有するホウ素供給原料から形成される、請求項17に記載の中性子検出器。
【請求項21】
中性子を検出する方法であって、
BNNT材料を含む電離箱中で、中性子吸収により生成された、シンチレーション物質を横切るイオンから放出された少なくとも一部のフォトンを、前記電離箱中に配置されたフォトン検出器により、検出することを含み前記シンチレーション物質は、ガスと液体から構成される集合から選択され、前記BNNT材料中に分散される、方法。
【請求項22】
前記BNNT材料は、BNNTエアロゲルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記BNNT材料は、シンチレーション物質コーティングを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記BNNT材料は、BNNT材料の連続シートを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
複数の中性子検出器を含むBNNT系中性子検出システムであって、それぞれの中性子検出器は、
電離箱;
前記電離箱中に配置された少なくとも1つのフォトン検出器;
前記電離箱中に配置されたBNNT材料;
前記電離箱中のシンチレーション物質を含み、
前記シンチレーション物質は、ガスと液体から構成される集合から選択され、前記BNNT材料中に分散され、
前記少なくとも1つのフォトン検出器は、前記電離箱中で、中性子吸収により生成された、前記シンチレーション物質を横切るイオンから放出された少なくとも一部のフォトンを検出するように配置される、BNNT系中性子検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月13日に出願された米国特許仮出願第62/160,853号;2015年5月18日に出願された米国特許仮出願第62/162,983号;2015年6月9日に出願された米国特許仮出願第62/173,141号;および2015年11月12日に出願された米国特許仮出願第62/254,569号の利益を主張する。これらの出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
政府支援に関する記載
なし。
【0003】
発明の分野
本発明は、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の含有による熱中性子および高速中性子の検出に関する。
【背景技術】
【0004】
熱中性子検出器は通常、10B(10個の核子、すなわち5個のプロトンと5個の中性子を有するホウ素)または3He(2個のプロトンと1個の中性子)を含む物質を用いる。157Gd、6Liおよび小数の他の同位体が使用されることもあるが、容量の大きい検出器中にそれらを組み込む方法は、いくつかの6Li系の取り組みを除いて、開発されていない。
【0005】
天然のホウ素は、約20%の10Bと80%の11Bである。10B系の検出器はより一般的である。理由は、ほとんど全ての3Heは、使用済み核燃料の再処理から生じ、3Heは需要が高く、結果として、3Heは極めて高価であるためである。ほとんどの10B系検出器は、BF3を利用し、通常数cmの直径で、BF3は通常、0.5〜3気圧である。BF3は有毒であり、注意深く導入する必要がある。10B、3Heおよび6Li系検出器では、大抵、イオンが周囲の媒体中で減速するのに伴い生ずる崩壊生成物により生成される電離に由来する電子パルスまたは光を検出するシステムを採用している。様々な電離箱、多線式比例計数箱(MWPC)、ガス電子増幅器(GEM)、ストローチューブ、ソーラーブラインド型光電子増倍管、固体光電子増倍管、リニアストリップセンサー、などが使用される。BF3系熱中性子検出器の典型的なサイズは、数cmの直径と長さであり、1,500〜2,000ボルトの範囲の高電圧が伴う。3He系熱中性子検出器のサイズは、数cmの最大寸法のものから、数cmの厚さでメートルレベルの面積に近い科学研究用のものまでの範囲に及ぶ。6Li系検出器は通常、6Liを種々のプラスチックシンチレーター物質中に分散させる。十分な感度を得るために、3He系検出器は、数気圧の圧力下での動作、プロパンやCF4などの他のガスの添加、および一連の高電圧が必要となることが多い。
【0006】
3Heは、熱中性子の吸収に対する5,330バーンの大きな断面積を有し、反応は下記のように進行する。
n+3He −> p(0.573MeV)+3H(0.191MeV)
【0007】
3Heは、いくつかの実施形態では、比較的高い空間分解能達成することから一定の利点を有するが、3He系検出は、大気圧ならび0.001気圧〜5気圧を超える圧力で適切に稼働させることができる、大きく軽量で、効率的な熱中性子検出器を作製するという点での制約のために限界がある。
【0008】
6Li系検出器に対する主要な制約は、通常、環境中に存在し得る他の電離粒子由来の望ましくないバックグラウンドシグナルを生じる固体または液体シンチレーション物質を必要とすることである。さらに、6Liの熱中性子吸収断面積は、10Bの熱中性子吸収断面積より小さい。
【0009】
10Bは、熱中性子の吸収に対し3,835バーンの大きな断面積を有し、これは、熱中性子の存在の検出用として活用できる。熱中性子吸収反応は下記のように進行する。
94%:n+10B −> 11B* −> 4He(1.47MeV)+7Li(0.84MeV)+γ(0.84MeV)
6%:n+10B −> 11B* −> 4He(1.78MeV)+7Li(1.02MeV)
【0010】
11B*状態は約1E−12秒続く。ガンマ線が存在する場合、ガンマ線は7Liの励起状態の崩壊から生ずる。
【0011】
中性子の吸収後、4Heおよび7Liは、周囲の物質中での電離損失によりそれらの動力学的エネルギーを失い、0.48MeVのガンマ線(存在する場合)は周囲の物質により吸収される。10Bによる中性子吸収の発生は、4Heおよび7Liイオンの電離損失もしくは94%の崩壊に対する電離損失を検出することにより、または0.48MeVのガンマ線が存在すればそれを検出することにより推定できる。いくつかのシステムでは両方行える。例えば、いくつかの媒体では、電離損失により光が生成され、その光を、光電子増倍管、ソーラーブラインド型光電子増倍管、シリコン光電子増倍管(SiPM)アレイ、大面積アバランシェフォトダイオード(LAAPD)、などのフォトン検出器により検出できる。周囲の媒体中で形成されたイオン対を収集する、MWPC、GEM、ストローチューブおよびリニアストリップ検出器も使用できる。
【0012】
位置および時間感受性高速中性子検出器は、散乱(反跳としても知られる)法を用いることが多く、この方法では、高速中性子がプロトンまたはヘリウム(4He)などの軽原子核から散乱し、それぞれの反跳プロトンまたはヘリウムイオンを生成し、これらはその後、周囲の物質を電離する。電離エネルギーはその後、シンチレーション計数管または比例計数管により検出される。この方法に伴う問題には、比較的低い効率および比較的低エネルギーの粒子、すなわち、遅い中性子および他の粒子のシグナルの含有から来るバックグラウンドノイズが含まれる。高速中性子検出器の熱中性子化は、高速中性子を最初に水素リッチ減速材中で減速した後に熱中性子を検出することにより高速中性子の存在を推測することである。全てのこれらの方法はまた、波形弁別を含む様々な技術によるガンマ線バックグラウンドの除去に伴う問題がある。さらに、熱中性子化法はまた、シグナルを広げ、マイクロ秒より遥かに短い時間から、数十から数百マイクロ秒の時間までになることがある。さらに、高速中性子検出を熱中性子の生成に依存する方法は、通常存在する他の熱中性子の存在から来るバックグラウンドが含まれる。比例計数管技術を主に使用する高速中性子核分裂電離箱を利用できる。これらは、高速中性子に本来敏感な238Uを用いて作られる場合、ガンマ線を良好に阻止する。中性子核分裂電離箱は、良好な時間軸分解能を有し得るが、通常、空間分解能および全断面積には限界がある。
【発明の概要】
【0013】
中性子検出に関する主な課題は、経済性に優れ、立方センチメートル未満から数立方センチメートルを含む非常に広範な範囲の体積にわたり空間的および時間的情報が得られる充分に高感度な検出器であることである。さらに、検出器は、ガンマ線などのバックグラウンド放射線の阻止に優れ、高速中性子から熱中性子を区別できる必要がある。いくつかの実施形態では、好ましい中性子検出器の空間および時間分解能は、熱および高速中性子のエネルギーに関する情報を得るのに十分である必要がある。
【0014】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)は、10Bをシンチレーションガス、液体または固体中に微細に分布させる機構を提供する。中性子は、以下の4つのプロセスステップで検出される:1)10Bへの中性子の吸収(イベント);2)得られた励起状態11B*の崩壊;3)4Heおよび7Liの崩壊生成物によるシンチレーションガス、液体、または固体の電離;および4)得られたシンチレーションフォトンおよび/またはイオン対の検出。
【0015】
高速中性子の場合には、238Uが0.5MeVを超えるエネルギーを有する高速中性子に敏感なエネルギーセレクターとして使用される。BNNTまたはポリマーでコーティングされたBNNTを、238U原子を微細に分布させるための足場材料として使用できる。さらに、238U、通常は238Uの合金の形態の細いワイヤーおよび/または薄いシートを使って、238Uを分布させることができる。高速中性子は、238Uに吸収され、核分裂反応を生じ、大きなエネルギーを放出する。適切な感度および構造を有するフォトンおよび/またはイオン対感受性検出器を使って、高速中性子イベントの時間と位置が検出される。
【0016】
いくつかの実施形態は、BNNT系中性子検出器の形態を取り得る。検出器は、電離箱を含み、フォトン検出器、BNNT材料、およびシンチレーション物質の内の少なくとも1種がその電離箱中に配置され得る。シンチレーション物質は当該技術分野で通常、既知である。フォトン検出器は、電離箱に入る中性子を検出するように配置し得る。例えば、フォトン検出器は、電離箱中で中性子吸収により生成された、シンチレーション物質を横切るイオンから放出された少なくとも一部のフォトンを検出し得る。電離箱は、少なくとも1つのフォトン検出器に向けてフォトンを反射するように配置されたアルミニウムなどの少なくとも1つのミラー表面を含み得る。
【0017】
BNNT材料は、BNNTエアロゲル、ワイヤー、ロッド、およびシートなどの1種または複数の形態であってよい。熱中性子検出に特に好適するいくつかの実施形態では、BNNT材料は、高い比率の10Bを含み得る。例えば、BNNT材料は、高い比率の10Bを含むホウ素供給原料から形成されてよい。BNNT材料の形態に応じて、いくつかの実施形態は、BNNT材料を電離箱内で安定化させるための足場材料を含み得る。
【0018】
シンチレーション物質は、種々の形状を取ってよく、いくつかの実施形態では、1つより多い形態で存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、シンチレーション物質はBNNT材料中に分散され得る。いくつかの実施形態では、BNNT材料はシンチレーション物質コーティングを含む。いくつかの実施形態は、電離箱内に配置されたシンチレーションガスを含み得る。いくつかの実施形態では、BNNT材料はシンチレーションガス中に配置し得る。シンチレーションガスは、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンの内の少なくとも1種であってよい。いくつかの実施形態では、BNNT材料は電離箱中の非シンチレーション液体中に懸濁させ得る。
【0019】
BNNT材料は、種々の方式で構成し得る。例えば、BNNT材料は、層状または格子状の構造を形成し得る。一例として、BNNT材料は種々の平面内で、連続シートまたはワイヤーグリッドなどの一連の平面構造体を形成するように配置し得る。別の例として、BNNT材料は、連続層中のワイヤーの配向が概ね直交するように、間隔を置いて配置された層中のワイヤーの形態であり得る。
【0020】
特に高速中性子検出に好適するいくつかの実施形態は、例えば、238U合金であってもよい238U材料を含み得る。BNNT材料は、238U材料のための足場材料を提供し得る。このような高速中性子の実施形態では、BNNT材料は、高い比率の11Bを含むホウ素供給原料から形成され得る。
【0021】
いくつかの実施形態は、中性子検出の方法の形態を取り得る。通常、方法は、BNNT材料を含む電離箱で、中性子吸収により生成された、シンチレーション物質を横切るイオンから放出された少なくとも一部のフォトンを検出することを含み得る。本明細書で記載の種々の特徴は、開示した中性子検出方法に組み込まれ得ることを理解されたい。
【0022】
いくつかの実施形態は、BNNT系中性子検出システムの形態を取り得る。検出システムは、上述のように、複数のBNNT系中性子検出器を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】製造したままのBNNT材料を示す図である。
図2】中性子がBNNT材料中で10Bによる中性子の吸収および周囲のシンチレーション物質中での発光を示す図である。
図3】BNNT系中性子検出器の側面図である。
図4】BNNT系中性子検出器の3−D図である。
図5】円柱形BNNT系中性子検出器の図である。
図6】BNNTグリッド型中性子検出器の図である。
図7】BNNT平面型中性子検出器の図である。
図8】BNNT平面型中性子検出器の複数構造の図である。
図9】大きな高度分割型BNNT系中性子検出器の図である。
図10】キセノンシンチレーションガスを含むBNNT系中性子検出器のデータを示す図である。
図11】窒素シンチレーションガスを含むBNNT系中性子検出器のデータを示す図である。
図12】いくつかの核分裂物質の中性子捕獲のための核分裂断面積を示す図である。
図13】252Cfに対する熱および高速中性子の吸収断面積を示す図である。
図14】ワイヤー中の238Uに対する高速中性子の吸収を示す図である。
図15】238Uを分布させるためのマルチワイヤ形状の図である。
図16】238Uを分布させるためのマルチワイヤ形状の図である。
図17】238Uの高速中性子誘発核分裂崩壊由来の光を検出するためのフォトン検出器の図である。
図18】238Uを分散させるための足場材料としての11B BNNT材料の含有により向上した238Uの分布を示す図である。
図19】238Uへの高速中性子吸収に起因する核分裂崩壊を検出するMWPC法を示す図である。
図20】238Uへの高速中性子吸収に起因する核分裂崩壊を検出するMWPC法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で開示されているのは、窒化ホウ素を組み込んだ熱中性子検出器、および中性子検出方法である。BNNTを使用し、大気圧ならびに0.001〜5気圧下、100ボルト未満の電圧のみならず、例えば、100ボルト〜5,000ボルトの高電圧でも動作可能なフォトン検出器を用いて、大量の10B系熱中性子を高効率で検出することができる。特に、高温法で製造されたものなどの高品質BNNTは、欠陥をほとんど不含、触媒不純物不含で、1〜10層のウオールを有し、ダブルウォールに分散のピークがあり、ウオール数が増えるに伴い分散が急速に低下する。BNNTの直径は通常、1.5〜6nmの範囲であるが、この範囲を超えて大きくしてもよく、長さは通常、数百nm〜数百ミクロンであるがこの範囲を超えて長くしてもよい。製造したままのBNNT材料では、高品質の高温法は通常、約50%の塊状物質から構成され、ホウ素、非晶質BNおよびh−BNの不純物を含む場合がある。製造したままのBNNT材料のこれらの不純物は通常、数十nm以下の大きさであるが、この範囲を超えて大きくてもよい。高温プロセスの製造パラメータは、非晶質BNおよびh−BN不純物と比較して、多いまたは少ないホウ素を有するように調節できる。より少ないホウ素を有することにより、通常は塊状BNNT材料の光透過性が増える。種々の精製プロセスを使って、ホウ素、BNおよびh−BN不純物と比べて、BNNTの量を増やすことができる。本開示の推定では、典型的な製造したままの材料を考えており、ホウ素のみの不純物の比率は無視できる、すなわち、BNNT材料の全ての物質は、なんらかの種類のBNであると考えている。BNNT系中性子検出プロセスは、ホウ素、BNおよびh−BN不純物が低減または除去された高レベルのBNNT純度の材料と同等に機能する。したがって、本明細書で別義が明示的に示されない限り、本明細書で開示の装置および方法は、特定の品質のBNNT材料に限定されないことが意図されていることを理解されたい。
【0025】
製造したままの高温法BNNT材料の密度は通常、1リットル当たり約0.5グラム(0.5g/L)で、±50%程度は容易に変動する。「タップ密度」であるこの値は、h−BNの密度2,100g/Lと比較し得るものである。図1は、高温法を使って製造されたBNNT材料11の写真を示す。製造したままの高温法BNNT材料11は、図1に示すように「タンポポの綿毛」または「綿球」の外観を有し、BNNT材料は通常、数センチメートル〜数十センチメートルの大きさ12である。BNNT材料11は、容易に圧縮できる。
【0026】
BNNTエアロゲル材料を製造でき、これは、タップ密度が0.5g/L未満の密度の、高温法で製造されたBNNT材料である。BNNTエアロゲル材料を生成する多くの可能な方法が存在する。一例は:1)BNNT材料をエチルアルコールなどの溶媒中に懸濁させる;2)その懸濁液を軽く超音波処理し;3)液体を懸濁液から蒸発させて、低密度エアロゲルBNNT材料だけを残すこと、である。BNNT、BNおよびh−BNは、900℃超まで空気中で安定であり、そのため、加熱を使用できる。しかし、使用される約900℃を超える温度では、存在する少量のホウ素が酸素および場合により窒素と反応することがある。生じた酸化ホウ素は、蒸留水ですすぐことにより除去できる。アルコール、水、および類似の物質の蒸発は、真空、空気、または窒素中で実施できる。
【0027】
BNNT材料は、天然ホウ素、10B、および/または11Bからなるホウ素供給原料から作製できる。様々な比率の天然ホウ素、10B、および11Bを含むホウ素供給原料を入手できることを理解されたい。一部のホウ素供給原料は、10Bまたは11B同位体のいずれかが高い比率で入手可能であり、多くの場合、所望の同位体を「濃縮している」と呼ばれる。本開示の目的に関しては、通常、合成プロセスによる差異はなく、または純粋な10Bから純粋な11Bへの移行における質量の約6%のわずかな増加を除いて、得られるBNNT材料に差異はない。天然のホウ素、10B、および11Bを使って製造したBNNT材料は、図1に示す材料に類似している。
【0028】
図2に示すように、中性子21が、BNNT材料23中のBNNTまたはホウ素、非晶質BNまたはh−BN不純物中の10B22と相互作用すると、4Heイオン24および7Liイオン25(および場合によりガンマ線)が生成し、周囲のBNNT材料23中に移動する。BNNT材料23中のBNNT、ホウ素、非晶質BNおよびh−BNは、相互作用する比率か大きくならない限り、わずかにしか変化または影響を受けない。4Heイオン24は電子を得て、シンチレーションガス、液体または固体中の移動性ガス種のままであり、一方、7Li25はBNNT、ホウ素、非晶質BNおよびh−BNに結合し得るか、またはいくつかの事例では、周囲のシンチレーション物質が希ガスまたは窒素ガス以外の場合、そのシンチレーション物質と結合し得る。7Li結合は、もしあっても、7Liと結合したホウ素種が塊状物質の内の小さい比率(<0.1%)である(通常は、この量より遥かに少ない)限りにおいて、ホウ素種に対しほとんど影響を与えない。7Li25は、別の選択肢として、周囲のガスまたは格納容器体積28中に存在する可能性のあるその他の物質と相互作用することがある。検出器を原子炉コアに近接して配置した場合のように、吸収される中性子の量、すなわち、イベントの数が極めて多い場合、7Liイオンの相互作用が問題になる可能性がある。一部のBF3系では、一部の崩壊シグナルの検出モードと干渉する場合があるフッ素原子放出に関連する問題があることに留意されたい。フッ素原子の放出は、BNNT系検出器に比べて、BF3では、比較的少ない数のイベントで問題になり得る。0.48MeVのガンマ線は、ほとんどの物質に対し非常に大きい透過性があり、明確に停止させるように設計されていないすべての検出器をほとんど通り抜ける。
【0029】
いくつかの実施形態では、10B22に対する中性子21の吸収イベントにおける、4Heイオン24および7Liイオン25の検出は、2段階プロセスで実現できる:1)BNNT材料23および全てのホウ素、非晶質BN、およびh−BN不純物を、シンチレーション物質26で取り囲み、それにより、4He24および7Li25イオンが電離によりエネルギーを失い、シンチレーション物質中で電離飛跡27に沿って光が放射される;および2)放射光を集め、それを適切な電子シグナルに変換する。シンチレーション物質26は、固体、液体、またはガスとすることができる。4He24および7Li25イオンは、ホウ素、非晶質BN、およびh−BN不純物を含むBNNT材料23中でそれらのエネルギーの一部を失う。いくつかの実施形態では、熱中性子検出器は、シンチレーション物質中で大部分の電離が発生し、比較的少量の電離がBNNT材料23それ自体中で発生するように設計される。シンチレーション物質中と比較したBNNT材料中の電離比率は、存在する物質の原子番号をある程度調整して、そのそれぞれの質量の比率により制御される。
【0030】
実施形態は、バックグラウンドノイズの影響を減らすように構成し得る。例えば、宇宙線は、秒・sr当たりおおよそ1/70m2の割合で高エネルギーミュー粒子のバックグラウンドを与えるが、高度、緯度などにより幾分変動がある。これらの宇宙線は通常、透過する1グラム/cm2毎に約2MeVの電離エネルギーを失う。これは、10Bがプラスチックまたは液体シンチレーターの1ccの立方体中にあるとした場合、10Bに対する中性子捕獲からのシグナルを模倣するバックグラウンドシグナルが毎分およそ1回存在することになるのを意味する。検出器のいくつかの実施形態は通常、1ccより大きく、これにより、バックグラウンド由来のシグナルを抽出することの複雑さが追加され得る。例えば、1m2の検出器は、おそらく毎秒100カウントを超えるバックグラウンドが認められるであろう。このような表面領域で生じたバックグラウンドの割合は、目的の多くの状況が耐えられる値よりも遥かに高い。この宇宙線のバックグラウンドを減らすまたは除去する試みは、中性子検出器技術で既知の、一連のVetoカウンターを使って部分的に達成できるが、このようなシステムは、さらなる複雑さ、重量および大きさを付加し得る。いくつかの実施形態では、BNNT材料23はシンチレーション物質でコートされてもよい。このコーティングは、分子レベルであってよく、シンチレーション物質は、BNNT材料上の1つまたは複数の層を形成してよい。シンチレーション物質コートBNNTは、シンチレーションガス中に置いても、または非シンチレーション液体中に懸濁させてもよい。BNNTは多くのポリマーを引き付ける傾向があり、BNNTに結合したままで留まるのを好み、非シンチレーション液体または各種シンチレーション液体中に溶解しない、この方法で利用可能なポリマーシンチレーション物質を選択できるため、液体中での懸濁による作製が可能となる。
【0031】
目的の多くの環境もまた、ガンマ線が存在する。大抵の液体および固体シンチレーターは、ガンマ線に対し、さらなるバックグラウンドノイズ源になり得る中から高レベルの感度を有する。BNNTを液体および固体シンチレーター中に混合する際に、選択したシンチレーション物質により、ガンマ線のエネルギーに応じて、ガンマ線に対する検出器の感度をある程度まで小さくすることができる。
【0032】
1モルの10B(10g)の断面積は、6.022E23x3.835バーン=0.23m2であり、1バーンは、1E−28m2である。いくつかの実施形態では、10B原子は、検出器の三次元体積全体に分布しているはずであるが、例えそうであっても、10Bが存在し得ないいくつかの開口部があるであろう。しかし、0.23m2の面積にわたり分布した約10gの10Bは、1m2当たり10Bの最大量に対する適度な上限値を与える。これにより、約40gの10B/m2、または約103gのBN材料/m2が得られる。簡単に考察すると、本明細書に記載の検出器システムの特定の実施形態として、いくつかの約100g/m2のBNNT材料(BNNTと少量のホウ素、非晶質BN、およびh−BNを含む)が上限値として使用される。その他の実施形態では、さらに大きな比率のBNNT材料の使用が可能であり、本開示範囲は、この特定の実施形態に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。
【0033】
一例として、0.5g/Lのタップ密度、20cm深さを有する1m2の検出器の、製造したままの高温法BNNT材料が上限値を与える。
【0034】
これらの例示条件下で、BNNT材料を使った熱中性子検出スキームの実施形態は、ガスのシンチレーション物質を使用する。これらの実施形態では、ほとんどの電離はガス中で発生し、BNNT材料中では発生しない。発光する利用可能なガスには、窒素および希ガス、すなわち、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンが挙げられる。いくつかの実施形態では、シンチレーションガスはまた、都合よく検出できる波長で光を生成する。ガスシンチレーターを使う最も高いエネルギーおよび核物理学検出器は、アルゴンおよびキセノンを共に用いるが、一部は、一定量のヘリウムおよび窒素を含有する。後に続く例では、BNNT材料を共に用いるために、アルゴンが使用されることになるが、その他のシンチレーションガスを使ってもよいことを理解されたい。
【0035】
大気圧下、アルゴン中でシンチレーションプロセスにより放出されたフォトンは、9.7eV(128mm)VUVフォトンと、おおよそ、1.3eV(940nmを中心とする領域)非UVフォトンの組み合わせである。VUVフォトンを生成するための電離エネルギーの量は、67.9eVであり、非UVフォトンに対するエネルギー量は、378eVである。したがって、10Bに吸収されたイベントのそれぞれの中性子は、最大34,000VUVフォトンおよび6,000非UVフォトンを生成するであろう。
【0036】
BNNT材料は、主にVUVフォトンを吸収するが、一方、非UVフォトンは、BNNT材料中で部分的に吸収されるであろう。通常、BNNT材料中のホウ素不純物の量を低減することにより、非UVフォトンの吸収が減らされる。
【0037】
BNNT材料内の中性子吸収イベントからの光を検出することは、図2に示すように、概念的には、雲の内部の稲妻を検出することに類似している。イベントからのシグナルは下記に依存する:1)VUVおよび非UVフォトンの生成された数;2)BNNT材料を通って伝送されたVUVおよび非UVフォトンの数(それらは全てアルゴンを貫通する);3)直接経路をとれないフォトンに対し、フォトンをフォトン検出器に反射できる内部ミラー表面;および4)VUVおよび非UVフォトンを検出するフォトン検出器の効率。イベントを生成するのに十分なBNNT材料を有することと、イベントとフォトン検出器との間に過度のBNNT材料を有することの間にはバランスが存在する。バランスは、特定の実施形態に応じて変化してよい。また、バランスは、BNNT材料中の非BNNT不純物(単一または複数)の量、特に上記で指摘のように、ホウ素の量に依存する。いくつかの実施形態では、イベントと光学的輸送とのバランスのための上限値としての近似値は、約100g/m2である。
【0038】
STPでのアルゴンは、1.784g/Lの密度を有する。1.47(1.78)MeVでの4Heに対する対応する停止距離は、おおよそ0.8(0.94)cm、あるいは、おおよそ1.4(1.7)mg/cm2として表され、また、0.84(1.02)MeVでの7Liに対する停止距離は、おおよそこれらの値の2/3である。BNNTを含むBN材料に対しては、停止範囲は、おおよそ0.9(1.1)mg/cm2である。4Heおよび7Liイオンは、ほぼ反対方向に移動するので(ガンマ線放射がない場合には、それらは明確に反対方向である)、主要なガンマ線放射崩壊の全電離範囲は、おおよそ1.5mg/cm2のBNNT材料である。
【0039】
10Bにより中性子を検出するためのいくつかの実施形態は、任意のイベントからの少なくとも2つの方向のBNNTを含む1mg/cm2未満のBNNT材料および少なくとも1.8mg/cm2のアルゴン、すなわち、図2のスケール29で示されるようにおおよそ1cmのアルゴンを有するであろう。
【0040】
BNNT材料およびアルゴンまたはその他のシンチレーション物質の組み合わせに対する、2つの異なる考慮すべき点が存在する。10Bは、熱中性子が10Bにぶつかり、イベントを生成する可能性を高めるために十分に分散されるのが好ましい。しかし、BNNT材料およびそれを支えるものは、4Heおよびアルゴン(または他のシンチレーション物質)中での7Li電離由来のフォトンの一部を吸収すると思われ、イベントの観察を制限し得る。以下で論じる実施形態は、これらの考慮すべき点をバランスするための例である。
【0041】
イベントを生成し、観察するためのいくつかの可能な検出器構造がある。下記の一実施形態に関し記載された特徴は、異なる構造を有するその他の実施形態に組み込み得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、イベントの生成とイベントの観察の間のバランスをとるための2つの一般的構造は下記を含む:1)BNNT材料は、エアロゲルとして、かなり均一に分散され、いくつかの実施形態では、エアロゲルで占められていない空間にアルゴンが充填される。いくつかの実施形態では、エアロゲルを形成するBNNT材料の最大密度は、約1mg/cm3である;このような構成では、イオンは、おおよそ1cmの利用可能なアルゴンまたは他のシンチレーションガスを有する。この構造は、イベント生成を最適化するが、しかし、いくつかの実施形態では、BNNT材料の厚さがフォトン検出器への経路に対し、大きくなりすぎると、全体の検出器性能が制限される可能性がある。2)BNNT材料を小さい球体、小さい直径ワイヤーまたは薄いシート中に濃縮する。いくつかの実施形態では、BNNT材料位置の平均厚みは約1mg/cm2である。いくつかの実施形態では、この構造はイベントの数を制限し得るが、4Heおよび7Li電離からのフォトンの観察を向上させる。
【0042】
図3は、一実施形態による製造したままのまたはエアロゲルBNNT材料形態を有する熱中性子検出器を示す。外側容器31は製造したままのまたはエアロゲルBNNT材料32およびアルゴンまたは他のシンチレーションガス33を保持する。外側容器31の内部32は、アルミニウム34などの材料でコートされ、フォトンを4Heおよび7Li電離から反射する。これらのフォトンを反射するその他の材料も使用し得ることを理解されたい。フォトン検出器35はイベントを検出する。フォトン検出器は、9.7eV(128nm)VUV(アルゴンの場合)フォトンを、フォトン検出器35の必要に応じて、より低いエネルギーフォトンへ波長をシフトする材料を含み得る。光電子増倍管、ソーラーブラインド型光電子増倍管、SiPM、LAAPM、などの広範囲のフォトン検出器35が利用可能である。選択は、例えば、構造、コスト、重量および高電圧源を必要としない優先傾向などに依存する。製造したままのまたはエアロゲルBNNT材料は、自己を引き寄せる傾向があるので、いくつかの実施形態では、細いワイヤーメッシュ足場材料36を使って、BNNT材料32を安定化させ得る。いくつかの実施形態では、細いワイヤーメッシュ36は、非常に小さい光学的断面積および4Heおよび7Liイオンに対する小さい断面積を有し得る。
【0043】
図2の考察で記載のように、中性子はBNNT材料32中の10Bにより吸収され、4H4および7Liイオンを生じ、これらは、周囲のシンチレーションガス33中で光を生成する。シンチレーション光は、フォトン検出器35に直接移動するか、またはフォトン検出器へ向かう途中で、1つまたは複数の反射面34に反射される。存在する物質は、一部のシンチレーション光を吸収し得るが、十分な光がフォトン検出器35に到着し、イベントを知らせる。いくつかの実施形態では、複数のフォトン検出器35が存在し、それらのいくつかは、バックグラウンドを減らす方法として、同時に稼働され得る。
【0044】
図4は、図3に示す熱中性子検出器31の実施形態の3D図を示す。高さ41、長さ42および厚さ43は、BNNT材料の厚さおよびフォトンの観察について前述した条件に対処するために変えることができることを理解されたい。図3に示す複数のフォトン検出器35は、種々の複数層または多検出系の実施形態で使用できる。
【0045】
図5は、一実施形態による円筒状エアロゲル構造検出器51を示し、ウィンストンコーン52が検出器51の両端に配置され、より小さいフォトン検出器35(図示せず)が使用され得るようにフォトンの集束を助ける。
【0046】
図6は、ワイヤーまたは糸の方向に沿った視点から見たワイヤーまたは糸状のBNNT材料61の配置を利用する例を示す。この実施形態では、ワイヤーまたは糸61は、約1.0〜1.2mmの直径であり、4Heおよび7Liイオンがワイヤーまたは糸61を通り抜けて、ワイヤー61を取り囲むアルゴンまたは他のシンチレーションガス62中に入ることができるように、相互から約1cmの間隔を置いて配置される。BNNT材料のワイヤーまたは糸61は、3方向全て、すなわち、長さ、幅および高さの方向に配置できる。この実施形態では、ワイヤーまたは糸61は、少なくとも約1mmの直径であり、そのために、中性子はワイヤーまたは糸61と交差する良好な確率を有し、ワイヤーまたは糸61の密度は、断面積量の大きさが約1mg/cm2未満となるような値である。一例として、1リットルの体積の1,000に、1cmグリッド上に間隔を置いて配置した1mg/cm2の1.2mmの直径のワイヤーまたは糸61は、1gm/LのBNNT材料を有し、これは、上記で考察したように、熱中性子を吸収する最大最適条件に適合するであろう。中性子を観察するフォトン検出器35に関しては、ワイヤーまたは糸の配置は、大部分のイベントの観察を可能とするのが好ましい。この例の条件では、ワイヤーまたは糸61の、フォトン検出器フォトン検出器35の所定のポイントまでのシャドウパス63が示されている。同様に、1cmの半径64の4Heおよび7Liイオンのフォトンを生成する電離飛跡が示されている。粗い推定では、体積全体にわたり、イベント由来のシンチレーション位置の半分のフォトンが、フォトン検出器35のほとんどの位置で観察される。いくつかの実施形態では、BNNT材料のワイヤーまたは糸61は、BNNT材料内に他の物質の細いワイヤー(図示せず)を含み、機械的な支持を支援する。BNNT材料ワイヤーまたは糸の1/10未満の直径の小さいワイヤーは、熱中性子検出と干渉しないであろう。
【0047】
いくつかの実施形態では、BNNT材料のワイヤーまたは糸61は、細いワイヤーに通したBNNT材料球により置換され得る。通常、球体は約3mmの直径として、同じ幾何学的条件を満し、その結果として、より低いBNNT材料の平均密度にして、1mg/cm2の上記閾値を達成する。別の実施形態では、他の直径も適切であり得ることを理解されたい。
【0048】
図7は、BNNT材料ワイヤーまたは糸61と類似の方式で使用されるBNNT材料シート71が使われる一実施形態を示す。この実施形態では、シート71は、約1mg/cm2の平均厚さを有し、シート間隔は約1cmとし得る。イベント73からのシートの方向に向かうフォトンがフォトン検出器35により検出される。反射コーン72を使って、フォトン検出器35の大きさを小さくすることができる。
【0049】
図8は、一緒に連結されて拡大検出器を形成する複数の検出器81、82、および83を示す。それぞれの検出器81、82、および83は、図7に示すような検出器を含み得る。それぞれの検出器の相対的構成は、実施形態に応じて変わってもよい。例えば、示した実施形態では、検出器83は、傾斜され、例えば、図の左側から以外の方向から生じる熱中性子に対する検出器の感度を高める。
【0050】
いくつかの実施形態は、拡張可能な一揃いの小さい検出器を含み得る。図9は、より小さい検出器91の組み合わせによる拡張可能なセット92の基本ユニットを形成する、総体積31および図3で示す光センサー、および図7で示すコーン72を示す。検出器91は、例えば、製造したままのまたは精製されたまたはエアロゲルBNNT材料32およびアルゴンまたは他のシンチレーションガス33を含む、図3および7に示す検出器を含み得る。検出器91は、図7に示す光集束要素72、および図3に示すフォトン検出器35を含み得る。より小さい検出器91のパラメータは、組み合わせセットの層、行、および列の数に応じて調節して実施形態を最適化できる。拡張可能組み合わせセット92は、より小さい検出器91の大きさおよび位置のレベルでの熱中性子源(単一または複数)の分布に関する空間的情報を提供する。
【0051】
当業者ならわかるように、特定の熱中性子検出装置に対するBNNT材料の寸法、形状、および構成には、フレキシビリティがある。いくつかの実施形態では、例えば、BNNT材料およびフォトン検出器の形状および構成は、携帯型スーツケース検出器システム内に収められる。他の実施形態では、BNNT材料およびフォトン検出器の形状および構成は、18ホイーラーまたは輸送コンテナから発する熱中性子の検出システムで使用するように構成し得る。シンチレーション物質でコートした、またはシンチレーション液体、ガス、または固体中に懸濁させたBNNT材料は、多くの形状および構成による使用を可能とする。さらに、BNNT材料の機械的および化学的(安定性)特性、10BをBNNT材料中に分布させる能力、および非10B材料を排除する能力は、BNNT系中性子検出システムに対し、多くの利点を作り出す。
【0052】
上述で考察した形状および構造は、イベントの生成および観察を最適化するために機能する。さらに、これらの形状および構造は、宇宙線、バックグラウンドガンマ線、および高エネルギーX線に対して最小限の感度を有するという目標を満たしている。例えば、1MeVをデポジットする典型的な宇宙線に対しては、いくつかの実施形態で使用されるように、大きな検出器システムの典型的な部分に対するイベント活性領域よりも遥かに長い、おおよそ280cmのアルゴンを用いるであろう。したがって、システムは、非熱中性子生成イベントに対して良好な信号対雑音レベルを有すると思われるが、4Heおよび7Liによりデポジットされた電離エネルギーを検出するためのエネルギー分解能は、中等度であろう。ある決まった環境中に存在する熱中性子の量を検出するにためには、これは問題ではない。
【0053】
1気圧アルゴンまたは他のシンチレーションガス中で4Heおよび7Li電離により生成されたフォトンパルスは通常、数百ナノ秒の持続時間である。イベントの比率を高め、不感時間を減らすためのいくつかの実施形態では、フォトンパルスは、窒素ガスの導入により短縮し得る。個々のイベントは、パルス持続時間にわたるフォトン検出器からの電子パルスの積分により検出し得る。中性子検出器、特に大きな面積の検出器に対しては、1つの目標は、中等度の空間分解能で低レベルの熱中性子を特定することである。イベント積分時間法は、低レベルを検出するのに効果的であり、好ましい信号対雑音レベルを可能とする。
【0054】
宇宙線と、地球表面近傍の大気および物質との相互作用は、熱中性子の環境バックグラウンドとして知られている地球の表面上の熱中性子の主要発生源である。この熱中性子束は、おおよそ50〜80中性子/m2であるが、周囲の物質に応じて大きく変動する。この環境バックグラウンドを利用して、熱中性子検出器の感度を実証できる。
【0055】
図10は、BNNT材料のキセノンガス環境への配置後、光電子増倍管でのシンチレーション光の検出による環境熱中性子の検出結果を示す。単純なアルミニウムボックスを使って、BNNT材料および光電子増倍管を保持した。ホウ砂で遮蔽されていない検出器によるスペクトル101は、1層のホウ砂により検出器を遮蔽したスペクトル102から分離可能であることが見て取れる。ホウ砂中の10Bは、それが存在する場合、環境熱中性子からの遮蔽を可能とした。図11は、BNNT材料の窒素ガス環境への配置後、光電子増倍管でのシンチレーション光の検出による環境熱中性子の検出結果を示す。キセノンガス測定と同じアルミニウムボックスおよび光電子増倍管を使用した。ホウ砂で遮蔽されていない検出器によるスペクトル111は、1層のホウ砂により検出器を環境から遮蔽したスペクトル112から分離可能であることが見て取れる。これらのテスト実施形態の両方は、シンチレーションガス中のBNNT材料をうまく使用して、熱中性子を検出し、それにより、技術のさらなる開発を正当化することができることを示す。
【0056】
ウラニウム同位体238(238U)を使って、高速中性子をより遅い中性子から分離する選択フィルターを得て、それにより、高速中性子検出器を作り出すことができる。図12は、238U121およびいくつかの核分裂可能な同位体の、ゼロ近傍のエネルギーから30MeV近傍のエネルギーまでの核分裂断面積を示す。238Uでは、断面積は、0.5から1.5MeVになるにつれ、3桁程度上昇する。おおよそ1MeV未満の熱中性子および遅い中性子は、238U核分裂断面積に対してはほとんど何も寄与しない。おおよそ1MeVを超える高速中性子は、ほぼ全ての238Uに核分裂イベントをもたらす。
【0057】
図12からわかるように、同位体232(232Th)はまた、この領域で断面積122が極めて急速に上昇するが、しかし、その核分裂断面積は、238Uに比べて、高速中性子領域で約4〜5倍小さい。したがって、本明細書で記載の実施形態は238Uを採用しているが、本手法では、232Thを高速中性子検出器の選択フィルターとして使用し得ることを理解されたい。図12に示す他の同位体は、本手法では機能しないであろう。理由は、それらは、熱中性子を含む遅い中性子に対して大きな核分裂断面積を有し、そのために、高速中性子に対する選択フィルターとしての機能をもたらさないためである。
【0058】
238U核分裂イベントは、高エネルギーで約160MeVのエネルギーを有し、イベントで2つの核分裂イオンが生成される。残りの核分裂エネルギーは、中性子、ニュートリノ、などになり、これらは通常、検出されない。2つの核分裂イオンは、それらの質量に基づいてそれらのエネルギー共有し、近傍の物質を電離することにより、それらのエネルギーをデポジットする。通常、これは、隣接する238U材料中へのデポジットであり、検出は困難である。核分裂イベントに隣接する238Uがごくわずかであるか、または238Uが全くない場合には、適切なシンチレーションまたは電離物質が存在し、光または電離エネルギーがシンチレーションカウンター、比例計数管、または類似のカウンターにより検出されれば、この電離エネルギーは検出できる。
【0059】
検出器の全体厚さは、所与のイベント源に対する検出の所望の効率に依存する。252Cfおよび235Uは、極めて類似した崩壊または核分裂中性子のスペクトルを生成する。これらのスペクトルがエネルギー依存性断面積の235Uで包み込まれる場合には、図13に示す検出断面積131が観察される。積分断面積は、約0.3バーンで、ピークは1.9MeV中性子エネルギーである。1.0MeV未満の中性子の断面積に対する寄与はほとんどない。より高いエネルギー中性子の数が増えたアメリシウム−ベリリウム(AmBe)源を考えた場合、積分断面積は、0.5バーンよりわずかに大きい。高速中性子が6MeVを超える比エネルギー範囲である場合、断面積は1.0バーンを超えることができる。
【0060】
全検出装置は、ほとんどどのような構造でも取り得る。いくつかの実施形態では、検出器は、後述のように複数の容器から組み立て得る。このような複数層または多検出器の実施形態では、特定の実施形態に対する必要に応じ、寸法および形状が同じまたは異なる容器を含み得る。個々の容器の寸法は、1センチメートル未満から数十センチメートルまで変えることができる。長方形の容器を本明細書での考察で使用するが、その他の実施形態は円筒状、六角形、などの形状であってよいことは理解されたい。
【0061】
図14は、高速中性子検出器の実施形態を示し、核分裂イオンの片方または両方は、十分な比率のそれらのエネルギーをシンチレーションまたは電離物質に放出することができる。容器142は、選択ガスおよび検出器要素(図示せず)を内部に含む気密シールした、シグナルおよび電力用の適切な電気フィードスルーを備えた体積を含む。ワイヤー、フィラメント、または表面141は、大部分が238Uまたは238Uの足場として機能するBNNT材料が、容器142の内側に配置される。高速中性子143は、238U144の核とぶつかり、核分裂を起こす。ワイヤー、フィラメント、または表面141が充分に小さい直径または厚さである場合、大部分のイベントの2つの核分裂イオン145および146は、238Uのワイヤー、フィラメント、または表面141を通り抜けるのに十分なエネルギーを有し、大部分のそれらのエネルギーを、容器142中の周囲のシンチレーションまたは電離物質中にデポジットする。例えば、ワイヤーまたはフィラメント141が金属で、5ミクロンの直径である場合、約80%のイベントに対し、160MeVのおおよそ50%またはそれを超える利用可能な電離エネルギーが、ワイヤーまたはフィラメント141以外にデポジットされるであろう。
【0062】
ウラニウムは、大きな引張強度を有さず、いくつかの環境では化学的に反応するであろう。しかし、ウラニウムがニオビウム、モリブデン、および/またはジルコニウムなどの他の物質と合金化されると、得られる合金は、強力で最小限の化学的反応性である。例えば、約6%のニオビウムが94%のウラニウムと合金化される場合、得られた合金、U−6.0Nbは、延性があり、本手法に好適すると思われる細いワイヤーを形成できる。正確な割合の合金化物質は重要ではなく、例えば、チタンおよびアルミニウムなどの他の元素を含んでよい。U−6.0Nbは、本明細書で記載の例として使用されるが、1つまたは複数の他のウラニウム合金を本手法で使用できることは理解されたい。
【0063】
U−6.0Nbワイヤーのグリッド151の形の例示的実施形態は、容器152の側面図由来の図15に示されている。この実施形態は、中性子検出器のセグメントまたは層を表し、中性子はあらゆる方向から来るであろう。0.5ミクロンの直径の金属ワイヤー151が1.0mmのワイヤー間の間隔を置いて使用される場合、例えば、断面積の1.0%はワイヤー層が占める部分である。ワイヤーは、容器152中の大量のシンチレーションまたは電離物質中にある。図16は、容器162の側面から見た、図15のワイヤーグリッドの複数層161を示す。体積内のワイヤーグリッド161の複数層は1mmの層間間隔で積層できるが、間隔は他の実施形態では、変わってもよい。本手法を逸脱することなくその他の構成も使用し得るので、実施形態に記載の直径および間隔構成は限定されるものではないことを理解されたい。この実施形態では、体積中のシンチレーションまたは電離物質の体積比率は、イオンがワイヤーから離れると、体積中でほとんどの電離が行われ得るように、体積の99%超である。
【0064】
図17は、図16に示す構成が、光検出器171を含めて、図14の核分裂イオン145および146が容器体積172中のシンチレーションガスを電離する際に、これらのイオンから来る電離光を検出するように拡張されている一実施形態の側面図である。容器172および付随する光コレクター173の光源に対する配向は、その方向がわかっているかぎり、任意の方向とすることができる。光検出器171は、例えば、シリコン光電子増倍管(SiPM)または光電子増倍管(PMT)とすることができる。当業者ならわかるように、ワイヤー174の直径および間隔、光をフォトン検出器171に届けるコレクター173の光収集構造、およびワイヤー174の全体層数から構成し得る多様な最適化法が存在する。
【0065】
体積172中のシンチレーションガスの選択も最適化に影響を与えるであろう。例えば、アルゴンおよびキセノンはそれぞれ125nmおよび175nmでシンチレーション光を発し、SiPMおよびPMTと共に使うためには、ほとんどの場合、波長シフターを必要とする。窒素は、300〜400nm領域で発光し、P−10(90%アルゴン10%CF4)は、625nm近傍の領域で発光し、波長シフターを必要としない。しかし、アルゴンおよびキセノンはより多くのフォトンを放射する。当業者ならわかるように、シンチレーションガス(単一または複数)に対し考慮すべき多くの最適化法が存在し、その選択は、そのために設計される特定の検出器の環境に依存し得る;例えば、環境がキセノンより極めて高いガンマ線束を有する場合、キセノンは好ましくない可能性がある。一部のシンチレーションガスは他のものより数倍長く発光するので、シンチレーションガスの選択は、システムの不感時間によっても影響を受け得る。シンチレーションガスは、1マイクロ秒未満の不感時間を有する。シンチレーションガスの立ち上がり時間は、10ナノ秒未満であり、したがって、充分に高速なSiPMまたはPMTおよび関連電子機器が使用される限り、核分裂イベントはこの精度で測定できる。イベントの空間分解能は、検出器要素の物理的構造により決定され、数mmの小ささか、または数十cmの大きさとすることができる。
【0066】
図18は、BNNT材料、シリカエアロゲルなどのエアロゲル、またはBNNTとエアロゲルの組み合わせで満たされた場合の、それぞれのワイヤーグリッド、図15の151、図16の161および図174、の間に空隙または体積181がある小さい構成部品の実施形態を示す。この場合、BNNT材料は、10Bを除いてしまうか、または最小化することにより、熱中性子に対し最小限の感度となるように11Bを含み得る。本実施形態は、11B BNNT材料と、238Uの密度を高めるために、238Uワイヤーおよびホイルの最適化法を組み合わせている。11B BNNT材料は、検出器中に存在する238Uの量を高めるための足場の役割を果たし得る。BNNT材料またはエアロゲルの体積181は、個々の238U原子184および187、または体積181中に埋め込まれた238U原子のクラスターを含む。これらの個々の原子184および187または原子のクラスターは、例えば、イオンビーム注入によって、または238Uを含むガスまたは液体を介した分散によって、層181中に埋め込むことができる。BNNT材料は、238Uの分散体を含むポリマーまたはシンチレーション物質であってもよい。ガスまたは液体が、238UをBNNT材料および/またはエアロゲル層181中に分散させるように選択される場合、ガスまたは液体の非238U部分は蒸発され得る必要があり、同時に、BNNT材料および/またはエアロゲル層181中の238U原子184および187を残す必要がある。BNNTは900℃超まで安定であるので、物質に応じて、高温を使用し得る。238U184および187の最終密度は、フォトン検出器での核分裂イベントからの光収集の効率により判断して、光検出器に到達する光を妨害するようになるまで、または1つの238Uの核184を核分裂させる中性子183からの電離核分裂フラグメント185および186が他の238U187などの非電離材料と多くぶつかり過ぎるようになるまで、高めることができる。当業者ならわかるように、一部の光は埋め込まれた238U187を含むBNNT材料またはエアロゲルにより吸収されることが想定されるので、所定の検出器は、ワイヤー中の238Uの量およびBNNTおよび/またはエアロゲル層181中の238Uの量ならびに配置の光収集効率の最適化がなされているであろう。
【0067】
図19は、238U−6Nb合金ワイヤー層191および193が、相互から電気的に絶縁され得るように分離されている一実施形態の側面図を示す。中性子は、あらゆる方向から来ることができ、中性子源の方向および位置が既知であれば、タイミングおよび空間的情報を利用できるようになる。この実施形態では、体積192は、マルチワイヤ比例計数管(MWPC)システムに適切なガスで満たされている。3サイクルでは、3つの面毎に、191および192は、接地面、カソード面、またはアノード面である。所定の面に対するワイヤーの配向は、それぞれの隣接する面が直交するかまたはMWPC品質の電界を与えるのに十分な角度である限り、問題にはならない。従来のMWPC読み取りシステムにより検出できる電気シグナルがワイヤー上に生成されるように、充分に高電圧がカソードおよびアノード平面の間に印加される。いくつかの用途に対しては、MWPCは、間隔の大きさまたはそれ未満の大きさを対象として、核分裂イベントの極めて正確な位置分解能を提供できるので、この実施形態は好ましいものになり得る。MWPCは、セルフトリガー可能であり、数十ナノ秒のオーダーの立ち上がり時間および不感時間を有し得る。当業者ならわかるように、所定の環境または用途に対し、所定の検出器を最適化するために調節可能な、ワイヤー間隔、ガス、ならびに高電圧および読み取りシステムなどの多様なパラメータが存在する。比例計数管分野の当業者ならわかるように、MWPCに加えて、GEMおよびストローチューブ検出器などの広範囲のイオン対検出技術が利用できる。
【0068】
MWPCカウンターの実施形態では、面間にBNNTおよび/または層の配置は、比例計数管プロセスと干渉する場合がある。しかし、図20に示すように、接地面201は、より小さいワイヤー間隔を有することができ、同時に、この場合でも核分裂イオンを接地面から得ることができる。あるいは、3〜10ミクロン厚の238U−6Nb材料の薄いホイルを緻密なワイヤー201の代わりに使用できる。機械的な堅牢さが必要な場合には、ワイヤーおよびホイル201をより肉厚にすることができる。その結果は、ワイヤーおよびホイルの外側の数ミクロンのみが核分裂イベントイオンをもたらすはずであるが、最終的間隔に応じて、ワイヤー201の表面積を増加させることができるということになるであろう。
【0069】
例えば、図3〜9および15〜19、ならびにMWPC(GEM、ストローチューブなど)を含む、本明細書で記載の光検出器構成は、容器をより小さくし、複数の容器を使用して追加の空間分解能、バックグラウンド検出および同時検出能を付与することにより、高度に分割することができる。さらに、複数の容器は、全体検出器効率を高めるように近接して積層または配置することができる。異なるセグメント間の同時計数を使って、単一核分裂イベントから来る複数の中性子を測定できる。
【0070】
252Cfおよび235U源の場合の例では、検出器が発生源からの0.1%の高速中性子を検出する場合、1.3g/cm2の238Uが必要となるということである。238Uの合計量は、発生源からの距離に依存する。例えば、検出器が10cmの距離にある場合、7モル(1.7kg)の238Uが必要となる。検出器の半径が20cmの場合、4倍の量の238Uが必要となる。これらの値の238Uの面密度は、光検出器およびMWPC両方の適度な厚さの検出器の選択により実現できる。検出器体積中に分布した238Uで、1g/ccに近い平均体積密度を達成できる。いくつかの実施形態では、容器は、能動型検出器が90%を超え、10%のみが容器および内部電子機器である。
【0071】
中性子源分野の当業者ならわかるように、所定の検出器は、高速中性子、熱中性子を含むより遅い中性子およびバックグラウンドガンマ線の与えられた環境に対し最適化されるように調整できる。ワイヤー寸法、ワイヤー間隔、電離ガス、比例計数管ガス、接地面、238U合金および全体の検出器構造に関し、多様な配置を利用可能である。238Uの断面積は、どちらかと言えば、遅い中性子および熱中性子よりも高速中性子の検出用として好ましいが、238Uの全断面積は、全検出器効率の観点からは、まだ低い。効率を高める方法は、高速中性子とぶつかる238Uの量を増やすことである。さらに多くの容器要素を含めることにより、検出器をさらに大きくすることができる。加えて、238Uの密度を高めることができる。
【0072】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、本手法を制限することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上で別義が明示されない限り、複数形も同様に包含することが意図されている。用語の「含む(comprise)」および/または「含む(comprising)」は、本明細書中で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または成分の存在を明示するが、1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、成分および/またはそれらの集合の存在または追加を排除しないこともさらに理解されよう。
【0073】
本発明は、本発明の趣旨または基本的な特徴を逸脱することなく、その他の特定の形態で実施し得る。したがって、本実施形態は、すべての点で例示的であって、限定的ではないと見なされるべきであり、本発明の範囲は、前述の説明によるのではなく、本出願の請求項により示されており、したがって、請求項に等価な意味および範囲内の全ての変更はその中に包含されることが意図されている。
図1
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