特許第6782719号(P6782719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782719
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】粘着剤、及びこれを用いた物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20201102BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20201102BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20201102BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20201102BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J163/00
   C09J7/38
【請求項の数】16
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2017-567934(P2017-567934)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2016056222
(87)【国際公開番号】WO2017141449
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2019年1月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-29583(P2016-29583)
(32)【優先日】2016年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 尚子
(72)【発明者】
【氏名】猪股 仁美
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6395519(JP,B2)
【文献】 特開2011−037927(JP,A)
【文献】 特表2011−512422(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113537(WO,A1)
【文献】 特開2011−128439(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/203792(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/079653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び
(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部
を含む、透明樹脂シートと化粧シートとの貼合用粘着剤。
【請求項2】
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び
(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部
を含む、ガラス又は透明樹脂シートと化粧シートとの貼合用粘着剤であって、
上記粘着剤が、更にエポキシ樹脂硬化促進剤を、上記成分(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物100質量部に対して1〜200質量部の量で含む、粘着剤。
【請求項3】
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び
(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部
を含む粘着剤を含む層を有する透明樹脂シートとの貼合用化粧シート。
【請求項4】
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び
(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部
を含む粘着剤を含む層を有する化粧シートであって、
上記粘着剤が、更にエポキシ樹脂硬化促進剤を、上記成分(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物100質量部に対して1〜200質量部の量で含む、化粧シート。
【請求項5】
ガラスとの密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上である請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
ガラスとの密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上である請求項4又は5に記載の化粧シート。
【請求項7】
ガラスとの密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、70%以上である請求項4〜6の何れか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上である請求項3〜7のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項9】
アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上である請求項3〜8のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項10】
アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、70%以上である請求項3〜9の何れか1項に記載の化粧シート。
【請求項11】
物品本体の正面部を開閉する扉体の正面パネルであって、
物品の正面側から順に、
(α)ガラス又は透明樹脂シートの層;
(β)(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部を含む粘着剤を含む層;及び
(γ)樹脂フィルムの層
を有するパネル。
【請求項12】
物品本体の正面部を開閉する扉体の正面パネルであって、
物品の正面側から順に、
(γ)樹脂フィルムの層;
(β)(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部を含む粘着剤を含む層;及び
(α)ガラス又は透明樹脂シートの層
を有するパネル。
【請求項13】
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び
(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部
を含む、ガラス又は透明樹脂シートと化粧シートとの貼合用粘着剤
を含むガラス又は透明樹脂シートと化粧シートとの積層体。
【請求項14】
請求項2に記載の粘着剤を含むガラス又は透明樹脂シートと化粧シートとの積層体。
【請求項15】
請求項3〜10の何れか1項に記載の化粧シートを含む物品。
【請求項16】
請求項11又は12に記載のパネルを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤に関する。更に詳しくは、本発明は、ガラスと化粧シートとの貼合や、透明樹脂シートと化粧シートとの貼合に好適に用いることのできる粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスは、その透明感のある意匠感から、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品の、本体の正面部を開閉する扉体の正面パネルや、本体の平面部を開閉する蓋体の平面パネルを構成する部材として注目されている。ところがガラスには、耐衝撃性が低く割れ易い、加工性が低い、比重が高く重いなどの問題がある。
【0003】
そこでガラス製のパネル基材の背面側に、飛散防止機能の付与を兼ねて、意匠の付与された樹脂シート(化粧シート)を貼り付けることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これらの技術には、高温高湿環境下において、粘着力が低下し剥離してしまうという不都合;扉体等の製造プロセスにおいて、化粧シートが背面側から押打されると、扉体等の正面側からも、そこが打痕として観察されるようになり、意匠性を低下させてしまうという不都合;及び、冷蔵庫の扉体の製造プロセス中の、ガラス製の正面パネル、支持枠、及び背面パネルにより構成される空間に、発泡断熱材を充填する工程において、ガラスと化粧シートとが剥離してしまうという不都合などがあり、これらを解消することのできる粘着剤が求められている。
【0004】
また、冷蔵庫扉体の正面パネルとして、ガラスに替えて、透明樹脂シートの背面側に意匠の付与された樹脂シート(化粧シート)を貼合した積層シートを用いることも提案されている(例えば、特許文献3参照)。このとき透明樹脂シートと化粧シートとの貼合には、化粧シートに付与されている印刷模様の熱変色、しぼ模様の熱変形などを防止する観点から、粘着剤を用いることができると有利である。しかし、従来の粘着剤には、特に高温高湿環境下において、樹脂シートから発生するアウトガスにより、透明樹脂シートと化粧シートとが剥離してしまうという不都合;扉体等の製造プロセスにおいて、化粧シートが背面側から押打されると、扉体等の正面側からも、そこが打痕として観察されるようになり、意匠性を低下させてしまうという不都合;及び、冷蔵庫の扉体の製造プロセス中の発泡断熱材を充填する工程において、透明樹脂シートと化粧シートとが剥離してしまうという不都合があった。粘着剤を透明樹脂シートと化粧シートとの貼合に用いるためには、これらの不都合を解消することが求められる。
【0005】
高温高湿環境下における粘着剤の上記不都合を解消する技術としては、例えば、「(メタ)アクリル酸エステルと、該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なカルボキシル基含有モノマーおよびヒドロキシル基含有モノマーとを含むモノマー混合物(a)を共重合した重量平均分子量が50万〜200万のアクリル共重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有するアクリル系粘着剤組成物であって、前記アクリル共重合体(A)100質量部に対して、前記架橋剤(B)として金属キレート系架橋剤0.05〜1.6質量部と、エポキシ基を有する架橋剤0.05〜0.2質量部とが配合されたことを特徴とするアクリル系粘着剤組成物。」が提案されている(特許文献4参照)。しかし、本発明者がこの組成物を試験したところ、発泡断熱材充填工程における剥離に関する不都合や打痕に関する不都合を解消することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−062709号公報
【特許文献2】特開2010−060190号公報
【特許文献3】国際公開2015/033754号
【特許文献4】特開2011−032350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ガラスと化粧シートとの貼合や、透明樹脂シートと化粧シートとの貼合に好適に用いることのできる、上述の不都合が解消された粘着剤、及びこれを用いた化粧シート、並びにこれらを用いた物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定組成の粘着剤により、上記課題を達成できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の諸態様は、以下のとおりである。
[1].
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び
(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部
を含む粘着剤。
[2].
上記[1]項に記載の粘着剤を含む層を有する化粧シート。
[3].
ガラスとの密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上である上記[2]項に記載の化粧シート。
[4].
ガラスとの密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上である上記[2]又は[3]項に記載の化粧シート。
[5].
ガラスとの密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、70%以上である上記[2]〜[4]項の何れか1項に記載の化粧シート。
[6].
アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上である上記[2]項に記載の化粧シート。
[7].
アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上である上記[2]又は[6]項に記載の化粧シート。
[8].
アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、70%以上である上記[2]、[6]、[7]項の何れか1項に記載の化粧シート。
[9].
物品の本体正面の開口を開閉する扉体の正面を構成するパネルであって、
物品の正面側から順に、
(α)ガラス又は透明樹脂シートの層;
(β)上記[1]項に記載の粘着剤を含む層;及び
(γ)樹脂フィルムの層
を有するパネル。
[10].
物品本体の正面部を開閉する扉体の正面パネルであって、
物品の正面側から順に、
(γ)樹脂フィルムの層;
(β)上記[1]項に記載の粘着剤を含む層;及び
(α)ガラス又は透明樹脂シートの層
を有するパネル。
[11].
上記[1]項に記載の粘着剤を含む物品。
[12].
上記[2]〜[8]項の何れか1項に記載の化粧シートを含む物品。
[13].
上記[9]又は[10]項に記載のパネルを含む物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着剤は、ガラスと化粧シートとの貼合や、透明樹脂シートと化粧シートとの貼合に好適に用いることができる。また、本発明の粘着剤は、ガラス調の意匠を有する正面パネルや平面パネル(ガラス製のパネル、及び透明樹脂シート製のパネルを包含する。)、及びこれらのパネルを含む物品を得るために好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のパネルの一例を示す断面の概念図である。
図2】実施例において透明樹脂シートの製造に使用した装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「シート」の用語は、フィルムや板をも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。「正面パネル」の用語は、平面パネル、背面パネル、側面パネル、及び底面パネルの何れかと相互交換的に又は相互置換可能に使用する。「扉体」の用語は、「蓋体」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。「物品の正面」の用語は、この定義に拘束される意図は無いが、一般的に、ある物品が通常予定されている用途に適用される場合に、使用者が相対する物品の面を意味し、1つの面に制限されない。
【0013】
1.粘着剤
本発明の粘着剤は、(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体100質量部;(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤0.01〜3質量部;(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物0.01〜0.9質量部;及び(D)有機多価金属化合物0.01〜0.5質量部を含む。
【0014】
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体
上記成分(A)のアクリル系重合体は、粘着剤の主剤として、粘着性を発現するとともに、上記成分(B)〜(D)、及びその他の任意成分を包含する働きをする。
【0015】
上記成分(A)のアクリル系重合体のガラス転移温度は、打痕に関する上述の不都合を解消する観点から−50℃以上、好ましくは−40℃以上である。一方、上記成分(A)のアクリル系重合体のガラス転移温度は、タック性(初期密着性)を良好にする観点から−25℃以下、好ましくは−30℃以下である。上記成分(A)のアクリル系重合体のガラス転移温度は、通常、−50℃以上かつ−25℃以下、好ましくは−50℃以上かつ−30℃以下、−40℃以上かつ−25℃以下、または−40℃以上かつ−30℃以下であってよい。
【0016】
本明細書において、上記成分(A)のアクリル系重合体のガラス転移温度は、常法によって求められる計算値、すなわち下記式(Foxの式)から求めた値である。
1/(Tg+273)=W/(Tg+273)+W/(Tg+273)+W/(Tg+273)+・・・+W/(Tg+273)
(式中、Tgは、n種の単量体からなる重合体のガラス転移温度(℃)であり、W、W、W・・・Wは、単量体組成物中の各単量体の質量%であり、Tg、Tg、Tg・・・Tgは、各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)である。)
各ホモポリマーのTgは、例えば、ポリマーハンドブックなどに記載されている数値を使用することができる。
【0017】
上記成分(A)のアクリル系重合体としては、ガラス転移温度が−50〜−25℃であること以外は制限されず、任意のアクリル系重合体を用いることができる。上記成分(A)のアクリル系重合体の分子量も、ガラス転移温度が−50〜−25℃である限り、特に限定されない。上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどの1種又は2種以上の混合物をモノマーとする重合体又は共重合体を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、及び(メタ)アクリル酸ステアリルなどを挙げることができる。
【0019】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。イタコン酸のように、分子の一部に(メタ)アクリル酸骨格を含む化合物も、このモノマー種に包含される。
【0020】
上記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0021】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどを挙げることができる。
【0022】
市販例としては、藤倉化成株式会社の「アクリベースLKG−1010」(商品名):ガラス転移温度−34℃;「アクリベースLKG−1012」(商品名):ガラス転移温度−35℃;「アクリベースLKG−1001」(商品名):ガラス転移温度−40℃;及び「アクリベースLKG−1007」(商品名):ガラス転移温度−44℃などを挙げることができる。
【0023】
上記成分(A)のアクリル系重合体としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記成分(A)として混合物を用いる場合には、混合物としてのガラス転移温度が上述の範囲になるようにすればよい。上記成分(A)として混合物を用いる場合には、好ましくは、ガラス転移温度の最も高い成分のガラス転移温度が−25℃以下に、ガラス転移温度の最も低い成分のガラス転移温度が−50℃以上になるようにすればよい。
【0024】
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤
シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。上記成分(B)のシランカップリング剤としては、有機官能基として少なくともエポキシ基を有するシランカップリング剤を用いる。上記成分(B)のシランカップリング剤は、エポキシ基を有することにより、上記成分(A)や上記成分(C)と化学結合ないし強く相互作用することができる。上記成分(B)のシランカップリング剤は、このような化学結合や相互作用を阻害しない範囲でエポキシ基以外の有機官能基を有していてもよい。エポキシ基の作用により、粘着剤に適度な硬度が付与され、打痕に関連した不都合を解消することができる。また、上記成分(B)のシランカップリング剤は、加水分解性基を有することにより、打痕に関連した不都合を解消するのに十分な硬度であるにも係わらず、発泡断熱材充填工程における剥離に関する上述の不都合を解消することができる。更に、上記成分(B)のシランカップリング剤は、有機官能基がエポキシ基であることから、上記成分(C)や上記成分(D)との混和性に優れる。
【0025】
上記エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。上記成分(B)のシランカップリング剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0026】
上記成分(B)のシランカップリング剤の配合量は、発泡断熱材充填工程における剥離に関する上述の不都合、及び打痕に関する上述の不都合を解消する観点から、上記成分(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上である。一方、上記成分(B)のシランカップリング剤の配合量は、耐ヒートサイクル性や耐アルカリ性を良好にする観点から、通常3質量部以下、好ましくは1.5質量部以下である。上記成分(B)のシランカップリング剤の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上3質量部以下、好ましくは、0.01質量部以上1.5質量部以下、0.03質量部以上3質量部以下、または0.03質量部以上1.5質量部以下であってよい。
【0027】
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物
上記成分(C)のエポキシ基含有化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有し、上記成分(A)や(B)と化学結合ないし強く相互作用することができる。これにより、粘着剤に適度な硬度が付与され、打痕に関する上述の不都合を解消することができる。また、上記成分(C)のエポキシ基含有化合物は、上記成分(D)と特異的な高相性を示し、高温高湿の環境下においても、粘着強度や透明性を保持することができる。
【0028】
なお、上記成分(C)のエポキシ基含有化合物は、加水分解性基を有しないという点で、上記成分(B)とは明確に区別される。本発明において、1分子中に2以上のエポキシ基を有し、かつ加水分解性基を有するシラン化合物は、上記成分(B)である。上記成分(C)のエポキシ基含有化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有しかつ加水分解性基を有しない限り、特に限定されない。
【0029】
上記成分(C)のエポキシ基含有化合物としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリジジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。上記成分(C)のエポキシ基含有化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
上記成分(C)のエポキシ基含有化合物の配合量は、発泡断熱材充填工程における剥離に関する上述の不都合、及び打痕に関する上述の不都合を解消する観点から、上記成分(A)100質量部に対して、0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.04質量部以上である。一方、上記成分(C)のエポキシ基含有化合物の配合量は、耐熱密着性を良好にする観点から、0.9質量部以下、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。また、上記成分(C)のエポキシ基含有化合物の配合量は、被着体への投錨性の観点から、好ましくは0.3質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下であってよい。また、上記成分(C)のエポキシ基含有化合物の配合量は、ヒートサイクル時の粘着層の凝集破壊を防止する観点から、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上であってよい。いくつかの態様において、上記成分(C)のエポキシ基含有化合物の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上0.9質量部以下、代替的には、0.01質量部以上0.6質量部以下、0.01質量部以上0.5質量部以下、0.01質量部以上0.3質量部以下、0.01質量部以上0.2質量部以下、0.03質量部以上0.9質量部以下、0.03質量部以上0.6質量部以下、0.03質量部以上0.5質量部以下、0.03質量部以上0.3質量部以下、0.03質量部以上0.2質量部以下、0.04質量部以上0.9質量部以下、0.04質量部以上0.6質量部以下、0.04質量部以上0.5質量部以下、0.04質量部以上0.3質量部以下、0.04質量部以上0.2質量部以下、0.3質量部以上0.9質量部以下、0.3質量部以上0.6質量部以下、0.3質量部以上0.5質量部以下、0.4質量部以上0.9質量部以下、0.4質量部以上0.6質量部以下、または0.4質量部以上0.5質量部以下であってよい。
【0031】
(D)有機多価金属化合物
上記成分(D)の有機多価金属化合物は、上記成分(C)と上記成分(A)や上記成分(B)との化学反応や相互作用を補助する働きをする。これにより粘着剤に適度な硬度が付与され、打痕に関する上述の不都合を解消することができる。また、上記成分(D)の有機多価金属化合物は、上記成分(C)と特異的な高相性を示し、高温高湿の環境下においても、粘着強度や透明性を保持することができる。
【0032】
上記成分(D)の有機多価金属化合物としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンなどの多価金属が、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、及びケトン化合物などの有機化合物と、共有結合又は配位結合しているものを挙げることができる。
【0033】
上記成分(D)の有機多価金属化合物として用いることのできる有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、及びアルミニウムセカンダリーブチレートなどを挙げることができる。
【0034】
上記成分(D)の有機多価金属化合物として用いることのできる有機ジルコニウム化合物としては、例えば、n−プロピルジルコネート、n−ブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、及びジルコニウムエチルアセトアセテートなどを挙げることができる。
【0035】
上記成分(D)の有機多価金属化合物として用いることのできる有機チタン化合物としては、例えば、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセテート)、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、及びジ−n−ブトキシ−ビス(トリエタノールアミナト)チタンなどを挙げることができる。
【0036】
上記成分(D)の有機多価金属化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0037】
上記成分(D)の有機多価金属化合物の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記成分(D)の効果を得る観点から、0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上である。一方、上記成分(D)の有機多価金属化合物の配合量は、耐熱密着性を良好にする観点から、0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下である。上記成分(D)の有機多価金属化合物の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上0.5質量部以下であり、好ましくは0.01質量部以上0.3質量部以下、0.03質量部以上0.5質量部以下、または0.03質量部以上0.3質量部以下であってよい。
【0038】
本発明の粘着剤には、本発明の目的に反しない限度において、上記成分(A)〜(D)以外の任意成分を、所望に応じて、更に含ませることができる。上記任意成分としては、例えば、光重合開始剤、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物、エポキシ樹脂硬化促進剤、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、顔料、及びフィラーなどの添加剤を挙げることができる。上記任意成分の配合量は、上記成分(A)を100質量部として、通常0.01〜10質量部程度である。
【0039】
上記任意成分の好ましいものとしては、エポキシ樹脂硬化促進剤を挙げることができる。上記エポキシ樹脂硬化促進剤を、上記成分(C)100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部程度用いることにより、上記成分(C)の反応性を制御することができる。上記エポキシ樹脂硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、及びこれらの誘導体;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、及びこれらの誘導体(例えば、これらのカルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノール塩、及びフェノールノボラック樹脂塩など);トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、及びトリス(p−エトキシフェニル)ホスフィンなどのトリオルガノホスフィン化合物;その他、第四級ホスホニウム塩、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、及びトリエチレンアンモニウム・トリフェニルボレートなどを挙げることができる。上記エポキシ樹脂硬化促進剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0040】
2.化粧シート
本発明の化粧シートは、本発明の粘着剤を含む層を有することを特徴とする。本発明の化粧シートは、通常、この粘着剤を含む層がその上に形成される基材層を有している。基材層は、粘着剤を含む層をその上に形成可能である限りは、材質、積層構造及び厚みについて特に制限されない。本発明の化粧シートは、通常、パネル基材のガラス又は透明樹脂シートとの貼合面側に本発明の粘着剤を含む層を有すること以外は、制限されず、任意の層構成にすることができる。典型的には、基材層は、透明樹脂フィルムまたは着色樹脂フィルム等の樹脂フィルム層である。以下、本発明の化粧シートの好ましい実施態様について、ガラス製又は透明樹脂シート製のパネル基材に貼り付けて用いる場合の例により説明する。
【0041】
2−1.化粧シートの第1の態様
第1の態様は、ガラス製又は透明樹脂シート製のパネル基材の背面側に貼り付けることにより正面パネルを構成する化粧シートであって、基材層である透明樹脂フィルムの正面側(上記パネル基材との貼合面側)の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、本発明の粘着剤を含む層を有する。
【0042】
本態様の粘着剤を含む層の厚みは、特に制限されないが、粘着強度の観点から、通常15μm以上、好ましくは20μm以上であってよい。また、この粘着剤を含む層の厚みは、薄肉化の観点から、通常100μm以下、好ましくは60μm以下であってよい。本態様の粘着剤を含む層の厚みは、通常15μm以上100μm以下、好ましくは15μm以上60μm以下、20μm以上100μm以下、20μm以上60μm以下であってよい。
【0043】
上記透明樹脂フィルムの正面側の面の上に、上記本態様の粘着剤を含む層を形成する方法は、制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどを挙げることができる。また、粘着剤層を形成するに際し、粘着剤を塗工し易い濃度に希釈するため、所望により、公知の希釈溶剤を用いることができる。上記希釈溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどを挙げることができる。
【0044】
上記アンカーコートを形成するためのアンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタン等の公知のものを使用することができる。
【0045】
上記アンカーコート剤を用いて上記アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0046】
上記アンカーコートの厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μmである。
【0047】
上記透明樹脂フィルムとしては、制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。上記透明樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどを挙げることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。また、上記透明樹脂フィルムは、これらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0048】
上記透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合、積層方法は制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、各々の樹脂フィルムを任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるTダイ共押出により積層フィルムを得る方法;少なくとも1の樹脂フィルムを任意の方法により得た後、該樹脂フィルム上に他の樹脂フィルムを溶融押出する押出ラミネート方法;任意のフィルム基材上に溶融押出、又は構成材料と溶剤とを含む塗料を塗布乾燥し、形成された樹脂フィルムを、上記フィルム基材から剥離し、他の樹脂フィルムの上に転写する方法、及びこれらの2以上を組み合わせる方法などを挙げることができる。
【0049】
上記透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、エンボス加工を施してもよい。
【0050】
上記透明樹脂フィルムの正面側(上記パネル基材との貼合面側)の面の上に、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。このとき、深み感をより高める観点から、印刷は部分的に設けるか、又は透明なインクを用いて設けてもよい。また、印刷層は1に限定されず、2以上であってもよい。
【0051】
上記透明樹脂フィルムの背面側(上記パネル基材との貼合面の反対側)の面の上には、更に着色樹脂フィルムを積層してもよい。上記透明樹脂フィルムの背面側の面の上に、着色樹脂フィルムを積層することにより、上記着色樹脂フィルムの色による意匠を付与することができる。また、着色樹脂フィルムを積層することにより、化粧シートの背面側に存在するもの(例えば、発泡断熱材など)を隠蔽することができる。
【0052】
上記着色樹脂フィルムとしては、制限されず、任意の着色樹脂フィルムを用いることができる。上記着色樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどを挙げることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。また、上記着色樹脂フィルムは、これらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムシートを包含する。
【0053】
上記透明樹脂フィルムと上記着色樹脂フィルムとの層間には、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、本発明の化粧シートに高い意匠性を付与するために設けることができる。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。また、上記印刷層を、上記着色樹脂フィルムの替わりに、隠蔽層を兼ねて形成してもよい。
【0054】
印刷は、直接又はアンカーコートを介して、上記透明樹脂フィルムの背面側の面の上に又は上記着色樹脂フィルムの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、施すことができる。模様としては、ヘアライン等の金属調模様、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどを挙げることができる。印刷インキとしては、バインダーに顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などの樹脂、及びこれらの樹脂組成物を使用することができる。また、金属調の意匠を施すため、アルミニウム、錫、チタン、インジウム及びこれらの酸化物などを、直接又はアンカーコートを介して、上記透明樹脂シートの背面側の面の上に又は上記着色樹脂フィルムの正面側の面の上に、全面的に又は部分的に、公知の方法により蒸着してもよい。
【0055】
上記透明樹脂フィルムと上記着色樹脂フィルムとの積層は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、熱ラミネート、及びドライラミネートなどの方法を挙げることができる。
【0056】
本態様による化粧シートの厚みは、特に制限されないが、飛散防止機能を付与する観点から、通常25μm以上、好ましくは35μm以上、より好ましくは45μm以上であってよい。また、本態様による化粧シートの厚みは、打痕に関する上述の不都合をより確実に解消する観点から、通常25μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であってよい。また、本態様による化粧シートの厚みは、物品の薄肉化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは800μm以下、より好ましくは400μm以下であってよい。本態様による化粧シートの厚みは、通常25μm以上1500μm以下、代替的には、25μm以上800μm以下、25μm以上400μm以下、35μm以上1500μm以下、35μm以上800μm以下、35μm以上400μm以下、45μm以上1500μm以下、45μm以上800μm以下、45μm以上400μm以下、50μm以上1500μm以下、50μm以上800μm以下、50μm以上400μm以下、100μm以上1500μm以下、100μm以上800μm以下、または100μm以上400μm以下であってよい。
【0057】
2−2.化粧シートの第2の態様
第2の態様は、ガラス製又は透明樹脂シート製のパネル基材の背面側に貼り付けることにより正面パネルを構成する化粧シートであって、基材層である着色樹脂フィルムの正面側(上記パネル基材との貼合面側)の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、本発明の粘着剤を含む層を有する。上記着色樹脂フィルムの色により意匠を付与することができる。また、上記着色樹脂フィルムの色により、背面側に存在するもの(例えば、発泡断熱材など)を隠蔽することができる。
【0058】
上記着色樹脂フィルムとしては、制限されず、任意の着色樹脂フィルムを用いることができる。着色樹脂フィルムの具体例は、第1の態様について上述したとおりである。上記着色樹脂フィルムとしては、これらの1種を、又はこれらの1種以上の積層フィルムを用いることができる。
【0059】
本態様の粘着剤を含む層の厚みは、特に制限されないが、粘着強度の観点から、通常15μm以上、好ましくは20μm以上であってよい。また、この粘着剤を含む層の厚みは、薄肉化の観点から、通常100μm以下、好ましくは60μm以下であってよい。本態様の粘着剤を含む層の厚みは、通常15μm以上100μm以下、好ましくは15μm以上60μm以下、20μm以上100μm以下、20μm以上60μm以下であってよい。
【0060】
上記着色樹脂フィルムの正面側の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、本態様の粘着剤を含む層を形成する方法は、制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的な方法については、第1の態様において上記透明樹脂フィルムの正面側の面の上に粘着剤を含む層を形成する場合と同様である。
【0061】
上記着色樹脂フィルムの正面側の面の上には、任意の印刷層を、全面的に、又は部分的に設けてもよい。上記印刷層は、本発明の化粧シートに高い意匠性を付与するために設けることができる。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。印刷層を設ける方法については上述したとおりである。
【0062】
第2の態様の化粧シートの厚みは、特に制限されず、任意である。本態様の化粧シートの好ましい厚みの範囲については、第1の態様の説明において上述したものと同様である。
【0063】
2−3.化粧シートの第3の態様
第3の態様は、ガラス製又は透明樹脂シート製のパネル基材の正面側に貼り付けることにより正面パネルを構成する化粧シートであって、これらのパネル基材の透明感を意匠として活かすため、好ましくは基材層である透明樹脂フィルムの背面側(上記パネル基材との貼合面側)の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、本発明の粘着剤を含む層を有する。化粧シートを、ガラス製のパネル基材の正面側に貼り付けることにより、飛散防止機能を発現し易くなる。化粧シートを、透明樹脂シート製のパネル基材の正面側に貼り付けることにより、傷付き防止効果を付与することが可能となる。
【0064】
上記透明樹脂フィルムとしては、制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。その具体例については、第1の態様について上述したとおりである。上記透明樹脂フィルムとしては、これらの1種を、又はこれらの1種以上の積層フィルムを用いることができる。
【0065】
本態様の粘着剤を含む層の厚みは、特に制限されないが、粘着強度の観点から、通常15μm以上、好ましくは20μm以上であってよい。また、この粘着剤を含む層の厚みは、薄肉化の観点から、通常100μm以下、好ましくは60μm以下であってよい。本態様の粘着剤を含む層の厚みは、通常15μm以上100μm以下、好ましくは15μm以上60μm以下、20μm以上100μm以下、20μm以上60μm以下であってよい。
【0066】
上記透明樹脂フィルムの背面側(パネル基材との貼合面側)の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、本発明の粘着剤を含む層を形成する方法は、制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的な方法については、第1の態様において上記透明樹脂フィルムの正面側の面の上に粘着剤を含む層を形成する場合と同様である。
【0067】
上記透明樹脂フィルムの正面側の面の上には、又は/及び、背面側の面の上には、任意の印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、本発明の化粧シートに高い意匠性を付与するために設けることができる。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。印刷層は、正面パネルの透明感を意匠として活かすため、部分的に設けるか、又は透明なインクを用いて設けることが好ましい。印刷層を設ける方法については上述したとおりである。
【0068】
第3の態様の化粧シートの正面側の表面には、表面保護層を有することが好ましい。表面保護層により、化粧シートの耐外傷性や耐溶剤性を高めることができる。
【0069】
上記表面保護層としては、例えば、ハードコートや熱可塑性樹脂コートなどの樹脂塗膜を挙げることができる。上記樹脂塗膜の形成に用いる塗料としては、意匠性の観点から、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。
【0070】
上記ハードコートの形成に用いる塗料としては、意匠性の観点から、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。このようなハードコート形成用塗料としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を挙げることができる。
【0071】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む組成物を挙げることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することができる。
【0072】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂を挙げることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0073】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0074】
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などを挙げることができる。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0075】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などを挙げることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0076】
また、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【0077】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に所望に応じて用いる任意成分の中で、好ましいものとしては、平均粒子径1nm〜300nmの微粒子を挙げることができる。上記微粒子を活性エネルギー線硬化性樹脂成分100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは20〜100質量部使用することによりハードコートの硬度を高めることができる。
【0078】
上記微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のどちらも使用することができる。上記無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子などを挙げることができる。上記有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂ビーズを挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0079】
また、微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの硬度を高めたりする目的で、当該微粒子の表面をビニルシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを使用してもよい。
【0080】
これらの中で、より硬度の高いハードコートを得るためにシリカ、酸化アルミニウムの微粒子が好ましい。シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などを挙げることができる。
【0081】
上記微粒子の平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及びハードコートの硬度改良効果を確実に得る観点から、通常、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下であってよい。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
【0082】
本明細書において、微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II」(商品名)を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0083】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は、硬化性樹脂組成物の成分、及び、その他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどを挙げることができる。上記溶剤としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0084】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより、得ることができる。
【0085】
上記熱可塑性樹脂コートの形成に用いる塗料としては、意匠性の観点から、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。このような熱可塑性樹脂コート形成用塗料としては、例えば、熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解させて調製される塗料を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料を塗布乾燥することにより、熱可塑性樹脂コートを形成することが可能である。
【0086】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコン系樹脂、及び弗素系樹脂などを挙げることができる。これらの中で、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びアクリル系樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0087】
上記有機溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどを挙げることができる。上記有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0088】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0089】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより、得ることができる。
【0090】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物や上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料などの塗料を用いて、上記透明樹脂フィルムの正面側の面の上に、直接又は透明アンカーコートを介して、ハードコートや熱可塑性樹脂コートなどの樹脂塗膜を形成することができる。このような樹脂塗膜の形成方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0091】
上記樹脂塗膜の厚みは、特に制限されないが、耐外傷性や耐溶剤性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは5μm以上であってよい。一方、ウェブのハンドリング性の観点から、上記樹脂塗膜の厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。上記樹脂塗膜の厚みは、好ましくは、0.5μm以上100μm以下、0.5μm以上50μm以下、5μm以上100μm以下、または5μm以上50μm以下であってよい。
【0092】
上記透明アンカーコートを形成するために用いるアンカーコート剤としては、透明であること以外は制限されず、任意のアンカーコート剤を用いることができる。上記アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタンなどの公知のものを挙げることができる。上記アンカーコート剤としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0093】
上記アンカーコート剤を用いて上記透明アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0094】
上記透明アンカーコートの厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μmである。
【0095】
上記表面保護層として、例えば、弗化ビニリデン系樹脂フィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの高透明性、高光沢性を有し、かつ耐外傷性や耐溶剤性に優れた樹脂フィルムを、透明樹脂フィルムの正面側の面の上に積層してもよい。
【0096】
上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムは、弗化ビニリデン系樹脂を任意の方法で製膜することにより得られる。上記弗化ビニリデン系樹脂としては、例えば、弗化ビニリデン単独重合体、弗化ビニリデンに由来する構成単位を70モル%以上含有する共重合体を挙げることができる。上記弗化ビニリデン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。弗化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、四弗化エチレン、六弗化プロピレン、三弗化エチレン、三弗化塩化エチレン、及び弗化ビニルなどを挙げることができる。上記共重合体を得るために、弗化ビニリデンと共重合するモノマーとしては、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、本発明の目的に反しない範囲内において、上記弗化ビニリデン系樹脂には、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、核剤、色材、及び可塑剤等を含み得る。
【0097】
これらの弗化ビニリデン系樹脂の融点は、通常、145〜180℃の範囲にある。この融点は、加工性の観点から、150〜170℃であることが好ましい。
【0098】
なお、本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を230℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱するという温度プログラムでDSC測定を行って得られる融解曲線における最も温度の高い側のピークトップを融点と定義した。
【0099】
上記透明樹脂フィルムと上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムとを積層する方法は、制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、上記透明樹脂フィルムと上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムを各々任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるTダイ共押出により積層フィルムを得る方法;上記透明樹脂フィルム又は上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムの一方を任意の方法により得た後、その上に他方を溶融押出する押出ラミネート方法などを挙げることができる。
【0100】
上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、広く市販されており、任意のものを用いることができる。
【0101】
上記透明樹脂フィルムと上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを積層する方法は、制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、上記透明樹脂フィルムと上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを各々任意の方法により得た後、ドライラミネートする方法;上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に上記透明樹脂フィルムを溶融押出する押出ラミネート方法などを挙げることができる。
【0102】
更に、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムの上に、直接又はアンカーコートを介して、上記樹脂塗膜を形成してもよい。
【0103】
本発明の化粧シートは、ガラスとの初期の密着強度が、好ましくは15N/25mm以上、より好ましくは20N/25mm以上、更に好ましくは25N/25mm以上である。また、ガラスとの密着強度は、リワーク性を考慮し、好ましくは50N/25mm以下、より好ましくは45N/25mm以下であってよい。ここでガラスとの密着強度は、下記試験(i)に従い測定した値である。このガラスとの初期の密着強度は、好ましくは、15N/25mm以上50N/25mm以下、15N/25mm以上45N/25mm以下、20N/25mm以上50N/25mm以下、20N/25mm以上45N/25mm以下、25N/25mm以上50N/25mm以下、または25N/25mm以上45N/25mm以下であってよい。
【0104】
本発明の化粧シートは、ガラスとの密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、好ましくは、5N/25mm以上、より好ましくは10N/25mm以上、更に好ましくは15N/25mm以上である。ここで温度60℃、10分間の熱処理後におけるガラスとの密着強度は、下記試験(ii)に従い測定した値である。
【0105】
本発明の化粧シートは、ガラスとの密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。密着強度残率の上限は、特にない。ここで上記条件のヒートサイクル処理後のガラスとの密着強度残率は、下記測定方法(iii)に従い測定した値である。本発明の化粧シートは、ガラスとの密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上、10N/25mm以上、又は15N/25mm以上であり、かつ、ガラスとの密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上、80%以上、または90%以上であることが好ましい。
【0106】
本発明の化粧シートは、ガラスとの密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。密着強度残率の上限は、特にない。ここで上記条件の浸漬処理後のガラスとの密着強度残率は、下記試験(iv)に従い測定した値である。本発明の化粧シートは、ガラスとの密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上、10N/25mm以上、又は15N/25mm以上であり、かつ、ガラスとの密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上、80%以上、または90%以上であり、かつ、ガラスとの密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、70%以上、80%以上、または90%以上であることが好ましい。
【0107】
本発明の化粧シートは、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との初期の密着強度が、好ましくは15N/25mm以上、より好ましくは20N/25mm以上、更に好ましくは25N/25mm以上である。また、上記樹脂との初期の密着強度は、リワーク性を考慮し、好ましくは50N/25mm以下、より好ましくは45N/25mm以下であってよい。ここで上記樹脂との密着強度は、下記試験(i)に従い測定した値である。この樹脂との初期の密着強度は、好ましくは、15N/25mm以上50N/25mm以下、15N/25mm以上45N/25mm以下、20N/25mm以上50N/25mm以下、20N/25mm以上45N/25mm以下、25N/25mm以上50N/25mm以下、または25N/25mm以上45N/25mm以下であってよい。
なお、ここで言う「アクリル系樹脂」、「芳香族ポリカーボネート系樹脂」及び「アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂」に含まれる例は、パネルを構成する透明樹脂シートの項において後述されているとおりである。
【0108】
本発明の化粧シートは、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、好ましくは、5N/25mm以上、より好ましくは10N/25mm以上、更に好ましくは15N/25mm以上である。ここで温度60℃、10分間の熱処理後における上記樹脂との密着強度は、下記試験(ii)に従い測定した値である。
【0109】
本発明の化粧シートは、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。密着強度残率の上限は、特にない。ここで上記条件のヒートサイクル処理後の上記樹脂との密着強度残率は、下記測定方法(iii)に従い測定した値である。本発明の化粧シートは、上記樹脂との密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上、10N/25mm以上、又は15N/25mm以上であり、かつ、上記樹脂との密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上、80%以上、または90%以上であることが好ましい。
【0110】
本発明の化粧シートは、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、並びに、アクリル系樹脂及び芳香族ポリカーボネート系樹脂以外のポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか1種の樹脂との密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。密着強度残率の上限は、特にない。ここで上記条件の浸漬処理後の上記樹脂との密着強度残率は、下記試験(iv)に従い測定した値である。本発明の化粧シートは、上記樹脂との密着強度が、温度60℃、10分間の熱処理後において、5N/25mm以上、10N/25mm以上、又は15N/25mm以上であり、かつ、上記樹脂との密着強度残率が、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクル行うヒートサイクル処理後において、70%以上、80%以上、または90%以上であり、かつ、上記樹脂との密着強度残率が、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理後において、70%以上、80%以上、または90%以上であることが好ましい。
【0111】
3.パネル
本発明の正面パネルは、物品本体の正面部を開閉する扉体の正面を構成するパネルである。本発明の正面パネルは、ガラス製又は透明樹脂シート製のパネル基材に、本発明の化粧シートが貼合された構造を有する。本発明の正面パネルにおいて、化粧シートは、パネル基材との貼合面側から順に、本発明の粘着剤を含む層、及び少なくとも1層からなる基材層(典型的には透明樹脂フィルム又は着色樹脂フィルム等の樹脂フィルム)を有している。即ち、本発明の正面パネルは、ある態様においては、物品の正面側から順に、(α)ガラス又は透明樹脂シートの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(γ)樹脂フィルムの層を有するパネルである。また、本発明の正面パネルは、他の態様においては、物品の正面側から順に、(γ)樹脂フィルムの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(α)ガラス又は透明樹脂シートの層を有するパネルである。これらの態様において、(γ)樹脂フィルムの層は、ガラス等の限定されない他の素材の層によって置換されてもよい。
【0112】
以下、好ましい実施態様について、物品の正面側から順に、(α)透明樹脂シートの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(γ)樹脂フィルムの層を有する正面パネルである場合の例により説明する。
【0113】
上記透明樹脂シートは、正面パネルとして要求される機械物性を保持するとともに、正面パネルにガラス調の意匠を付与する働きをする。そのため上記透明樹脂シートは、高い透明性を有し、かつ着色のないものであることが好ましい。
【0114】
上記透明樹脂シートは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000」(商品名)を用いて測定。)が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0115】
上記透明樹脂シートは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000」(商品名)を用いて測定。)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0116】
更に上記透明樹脂シートは、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700」(商品名)を用いて測定。)が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0117】
上記透明樹脂シートの厚みは、機械物性を保持する観点、及び深みのある意匠を付与する観点から、通常0.5mm以上、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.2mm以上である。一方、上記透明樹脂シートの厚みは、物品の軽量化の要求に応える観点から、通常10mm以下、好ましくは6mm以下、より好ましくは3mm以下であってよい。上記透明樹脂シートの厚みは、通常0.5mm以上10mm以下、好ましくは、0.5mm以上6mm以下、0.5mm以上3mm以下、0.8mm以上10mm以下、0.8mm以上6mm以下、0.8mm以上3mm以下、1.2mm以上10mm以下、1.2mm以上6mm以下、または1.2mm以上3mm以下であってよい。
【0118】
上記透明樹脂シートの引張弾性率は、正面パネルとして必要な強度及び剛性を保持する観点から、好ましくは1500MPa以上、より好ましくは1800MPa以上である。引張弾性率の上限は特にないが、樹脂シートであるから、通常入手可能な範囲ではせいぜい10000MPa程度である。引張弾性率は、JIS K7127:1999に従い、試験片タイプ1B、引張速度50mm/分の条件で測定した。
【0119】
上記透明樹脂シートを構成する樹脂のガラス転移温度は、正面パネルとして必要な耐熱性(物品の製造時に必要とされる耐熱性、及び物品の使用時に必要とされる耐熱性の両方を含む。)を保持する観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。なお、上記透明樹脂シートが、構成樹脂として2種類以上の樹脂を含むときは、これらの中で最もガラス転移温度の低い樹脂が、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0120】
上記透明樹脂シートを構成する樹脂のガラス転移温度は、物品製造時の加工性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。なお、上記透明樹脂シートが、構成樹脂として2種類以上の樹脂を含むときは、これらの中で最もガラス転移温度の高い樹脂が、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0121】
本明細書において、透明樹脂シートのガラス転移温度は、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を50℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、20℃/分の降温速度で50℃まで冷却し、50℃で10分間保持した後、20℃/分の昇温速度で200℃まで加熱するという温度プログラムにおける最後の昇温過程において測定される曲線に現れるガラス転移について、ASTM D3418の図2に従い作図して算出した中間点ガラス転移温度である。
【0122】
上記透明樹脂シートとしては、制限されず、任意の透明樹脂シートを用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの透明樹脂シートを挙げることができる。これらのシートは、無延伸シート、一軸延伸シート、二軸延伸シートを包含する。また、上記透明樹脂シートは、これらの1種以上を2層以上積層した積層シートを包含する。
【0123】
上記透明樹脂シートが積層シートである場合、積層方法は制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、各々の樹脂シートを任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるTダイ共押出により積層シートを得る方法;少なくとも1の樹脂シートを任意の方法により得た後、該樹脂シート上に他の樹脂シートを溶融押出する押出ラミネート方法;任意のフィルム基材上に溶融押出、又は構成材料と溶剤とを含む塗料を塗布乾燥し、形成された樹脂シートを、上記フィルム基材から剥離し、他の樹脂シートの上に転写する方法、及びこれらの2以上を組み合わせる方法などを挙げることができる。
【0124】
上記透明樹脂シートが積層シートである場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、エンボス加工を施してもよい。
【0125】
上記透明樹脂シートが積層シートである場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。このとき、深み感をより高める観点から、印刷は部分的に設けるか、又は透明なインクを用いて設けてもよい。また、印刷層は1に限定されず、2以上であってもよい。
【0126】
これらの中で、上記透明樹脂シートとしては、機械物性、透明性、及び無着色性の観点から、
(a1)アクリル系樹脂シート;
(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シート;
(a3)ポリエステル系樹脂シート(アクリル系樹脂又は芳香族ポリカーボネート系樹脂から形成された樹脂シートを除く);
(a4)上記透明樹脂シート(a1)〜(a3)の何れか1種又は2種以上の積層シート
が好ましい。
【0127】
上記(a1)アクリル系樹脂シートは、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上。)含む樹脂から形成されたシートである。
【0128】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステルを含むコモノマー群の共重合体、及びこれらの変性体などを挙げることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
【0129】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などを挙げることができる。
【0130】
上記(メタ)アクリル酸エステルを含むコモノマー群の共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、及びN−置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合体などを挙げることができる。
【0131】
上記変性体としては、例えば、分子内環化反応によりラクトン環構造が導入された重合体;分子内環化反応によりグルタル酸無水物が導入された重合体;及び、イミド化剤(例えば、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、アンモニアなど)と反応させることによりイミド構造が導入された重合体などを挙げることができる。
【0132】
上記アクリル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0133】
上記アクリル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムを挙げることができる。上記アクリル系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、上記コアシェルゴムを通常0〜50質量部(上記アクリル系樹脂100〜50質量部)、好ましくは0〜40質量部(上記アクリル系樹脂100〜60質量部)、より好ましくは0〜30質量部(上記アクリル系樹脂100〜70質量部)の量で用いることにより、上記(a1)アクリル系樹脂シートの耐切削加工性や耐衝撃性を高めることができる。上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などを挙げることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0134】
また、上記アクリル系樹脂に含み得るその他の任意成分としては、上記アクリル系樹脂や上記コアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、核剤、及び、界面活性剤等の添加剤などを挙げることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、上記アクリル系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、25質量部以下であってよく、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
【0135】
上記(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートは、芳香族ポリカーボネート系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上。)含む樹脂から形成されたシートである。
【0136】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体等を挙げることができる。上記芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0137】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムを挙げることができる。上記芳香族ポリカーボネート系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、上記コアシェルゴムを0〜30質量部(上記芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(上記芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、上記(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートの耐切削加工性や耐衝撃性を高めることができる。
【0138】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などを挙げることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0139】
また、上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度であってよい。
【0140】
上記(a3)ポリエステル系樹脂シートは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上。)含む樹脂から形成されたシートである(但し、上記(a1)アクリル系樹脂シート又は上記(a2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シートを除く)。このポリエステル系樹脂シートは、無延伸シート、一軸延伸シート、及び二軸延伸シートを包含する。また、これらの1種又は2種以上の積層シートを包含する。
【0141】
上記(a3)ポリエステル系樹脂シートは、好ましくは、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上。)含む樹脂から形成されたシートである。
【0142】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール成分とのポリエステル系共重合体を挙げることができる。
【0143】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、モノマーの総和を100モル%として、テレフタル酸50モル%及びエチレングリコール30〜40モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜20モル%を含むグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG);テレフタル酸50モル%、エチレングリコール16〜21モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール29〜34モル%を含むグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG);テレフタル酸25〜49.5モル%、イソフタル酸0.5〜25モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール50モル%を含む酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA);テレフタル酸30〜45モル%、イソフタル酸5〜20モル%、エチレングリコール35〜48モル%、ネオペンチルグリコール2〜15モル%、ジエチレングリコール1モル%未満、ビスフェノールA1モル%未満を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;及び、テレフタル酸45〜50モル%、イソフタル酸5〜0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜45モル%、及び2,2,4,4,−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール25〜5モル%を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0144】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を320℃で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で320℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えて60J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義した。
【0145】
上記ポリエステル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の成分を含ませることができる。含む得る任意成分としては、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び、界面活性剤等の添加剤などを挙げることができる。これらの任意成分の配合量は、上記ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度であってよい。
【0146】
上記ポリエステル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムを挙げることができる。コアシェルゴムを用いることで、上記(a3)ポリエステル系樹脂シートの耐衝撃性を向上させることができる。
【0147】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0148】
上記コアシェルゴムの配合量は、ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、耐衝撃性を向上させるため、好ましくは0.5質量部以上である。一方、上記コアシェルゴムの配合量は、透明性を保持するため、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0149】
上記(a4)上記透明樹脂シート(a1)〜(a3)の何れか1種又は2種以上の積層シートは、例えば、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、及びスタックプレート方式などの任意の共押出装置を使用し、所望の層構成になるように共押出製膜することにより;任意の製膜装置を使用して上記透明樹脂シート(a1)〜(a3)の何れか1種又は2種以上を得た後、これらを所望の層構成になるように熱ラミネート又はドライラミネートすることにより;任意の製膜装置を使用して上記透明樹脂シート(a1)〜(a3)の何れか1種を得た後、該シートを基材として所望の層構成になるように押出ラミネートすることにより得ることができる。
【0150】
上記透明樹脂シートの背面側の面の上には、所望により、意匠感を高めるため、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、本発明の正面パネルに高い意匠性を付与するために設けることができる。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。印刷層形成の詳細な方法は、化粧シートの項目において上述したとおりである。
【0151】
本発明の正面パネルが、物品の正面側から順に、(α)透明樹脂シートの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(γ)樹脂フィルムの層を有するパネルである場合には、本発明の化粧シートとしては、例えば、上記化粧シートの第1の態様及び第2の態様のものを好ましく用いることができる。
【0152】
本発明の正面パネルが、物品の正面側から順に、(γ)樹脂フィルムの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(α)ガラス又は透明樹脂シートの層を有するパネルである場合には、本発明の化粧シートとしては、例えば、上記化粧シートの第3の態様のものを好ましく用いることができる。
【0153】
本発明の正面パネルが、物品の正面側から順に、(α)透明樹脂シートの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(γ)樹脂フィルムの層を有するパネルである場合には、本発明の正面パネルは、上記(α)層側の面の上に、更に表面保護層を有することが好ましい。表面保護層により、耐外傷性や耐溶剤性を高めることができる。この場合の上記表面保護層は、上記化粧シートの第3の態様の説明において上述したとおりのものを用いることができる。
【0154】
本発明の正面パネルは、例えば、(α)透明樹脂シートの層;(β)本発明の粘着剤を含む層;及び(γ)樹脂フィルムの層をこの順に有する積層シートを、任意の方法を使用して切削加工することにより得ることができる。
【0155】
上記切削加工方法としては、例えば、ルーター加工、ウォータージェット加工、レーザー加工、打抜加工、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0156】
上記ルーター加工とは、高速で回転するミルにより切削する加工方法である。この方法は、切削面の仕上がりが滑らかという特徴がある。また、この方法は、コンピュータ制御されて寸法安定性、再現性にも優れている。
【0157】
上記ウォータージェット加工とは、超高圧(最高4000気圧程度)に加圧された水を、極小径のノズル(通常、0.1mmΦ程度)から噴射し、高速、高密度な超高圧水のエネルギーを利用して、切削する加工方法である。この方法は、被切削物への熱影響が小さい点で優れている。また、この方法は、水に研磨剤を混ぜて行うこともある。
【0158】
上記レーザー加工とは、被加工材の切削箇所に、レーザーの焦点を合わせることより、被加工材の当該箇所の材料を溶融蒸発させて切断する加工方法である。
【0159】
上記打抜加工とは、鋼刃(トムソン刃)を支持台に設置したトムソン型の上に、被加工材を配置し、押圧することにより型抜きする加工方法である。この方法は、型が低価格であり、各種形状への対応自由度が大きく、生産性に優れている。
【0160】
これらの中で、各種形状への対応自由度が大きく、生産性に優れていることから、打抜加工が好ましい。
【0161】
図1は本発明の正面パネルの一例を示す断面の概念図である。正面側から順に、表面保護層1、透明樹脂シートの層(パネル基材)2、本発明の粘着剤を含む層3、透明樹脂フィルムの層4、印刷層5、及び着色樹脂フィルムの層6を有している。
【0162】
本発明の物品の例としては、特に限定されないが、冷蔵庫、洗濯機、食器棚、及び衣装棚などの物品;これらの物品の扉体や蓋体;及び扉体や蓋体に組み込むための部品の全てが包含される。
【実施例】
【0163】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0164】
物性の測定・評価方法
化粧シートに関する物性の測定・評価方法について説明する。
(i)密着強度
(i−1)ガラス板と化粧シートとの初期の密着強度
試験板として株式会社テストピースのJIS R3202:2011に規定するフロート板ガラス(厚さ3mm)を使用し、JIS A5759:2008に従い、300mm/分の速度で、温度23℃における、試験板に対する化粧シートの180度引き剥がし粘着力を測定した。
(i−2〜i−6)透明樹脂シート(E−1〜E−5)と化粧シートとの初期の密着強度
上記フロート板ガラスの替わりに、下記の5種の透明樹脂シート(E−1〜E−5)の各々から、そのマシン方向が試験片の長さ方向と一致するように打抜いた試験板(幅50mm、長さ125mm)を用い、試験板の第一鏡面ロール(後述)側の面を化粧シートとの貼合面としたこと以外は、上記(i−1)と同様に化粧シートの引き剥がし粘着力を測定した。
【0165】
(ii)耐熱密着性
試験片に対して、温度60℃、10分間の熱処理を行った後、粘着力を測定したこと以外は、上記試験(i)と同様の手法により、熱処理後の化粧シートの粘着力を測定した。
【0166】
(iii)耐ヒートサイクル性
試験片に対して、温度−30℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝した後、温度60℃、相対湿度90%の環境下に6時間曝す処理を1サイクルとして、合計3サイクルの処理を行った後、粘着力を測定したこと以外は、上記試験(i)と同様の手法により、ヒートサイクル後の化粧シートの粘着力を測定した。続いて、上記試験(i)の値に対するヒートサイクル後の粘着力の割合(密着強度残率)を算出した。
【0167】
(iv)耐アルカリ性
試験片に対して、濃度5質量%、温度25℃の水酸化ナトリウム水溶液に、24時間の浸漬処理を行った後、粘着力を測定したこと以外は、上記試験(i)と同様の手法により、浸漬処理後の化粧シートの粘着力を測定した。続いて、上記試験(i)の値に対する浸漬処理後の粘着力の割合(密着強度残率)を算出した。
【0168】
(v)耐打痕性
上記試験(i)と同様に作成した試験片の化粧シート側から、ステンレス製の直径1mmの球を、1Nの力で押し付けながら、上記フロート板ガラス側又は下記透明樹脂シート側から化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
○(良好):球の押し付け箇所が視認できない。
×(不良):明確に、球を押し付けている箇所が視認できる。
【0169】
(vi)耐湿熱剥離性
試験片を、温度60℃、相対湿度98%の環境下に400時間曝した後、粘着力を測定したこと以外は、上記試験(i)と同様の手法により、湿熱処理後の化粧シートの粘着力を測定した。続いて、上記試験(i)の値に対する浸漬処理後の粘着力の割合(密着強度残率)を算出した。
【0170】
(vii)耐湿熱白化性
上記試験(vi)において、湿熱処理後の粘着力を測定する前に、粘着剤層を目視観察し、以下の基準で評価した。
○(良好):粘着剤層の透明性に暴露前と変化は認められない。
△(やや不良):暴露前と比較すると、白化したことが認められるが、白化の程度は大きくない。
×(不良):かなりの程度まで白化したことが認められる。
【0171】
(viii)耐温水性
試験片に対して、温度50℃の水中において、240時間の浸漬処理を行った後、粘着力を測定したこと以外は、上記試験(i)と同様の手法により、温水処理後の化粧シートの粘着力を測定した。続いて、上記試験(i)の値に対する温水処理後の粘着力の割合(密着強度残率)を算出した。
【0172】
(ix)耐温水白化性
上記試験(viii)において、温水処理後の粘着力を測定する前に、粘着剤層を目視観察し、以下の基準で評価した。
○(良好):粘着剤層の透明性に暴露前と変化は認められない。
△(やや不良):暴露前と比較すると、白化したことが認められるが、白化の程度は大きくない。
×(不良):かなりの程度まで白化したことが認められる。
【0173】
使用した原材料
(A)ガラス転移温度−50〜−25℃のアクリル系重合体
(A−1)藤倉化成株式会社の「アクリベースLKG−1010」(商品名):ガラス転移温度−34℃、酸価1.9mgKOH/g、重量平均分子量85万
(A−2)藤倉化成株式会社の「アクリベースLKG−1007」(商品名):ガラス転移温度−44℃、酸価2.1mgKOH/g、重量平均分子量100万
(A−3)藤倉化成株式会社の「アクリベースLKG−1001」(商品名):ガラス転移温度−40℃、酸価7mgKOH/g、重量平均分子量100万
【0174】
(A’)参考アクリル系重合体
(A’−1)藤倉化成株式会社の「アクリベースLKG−1011」(商品名):ガラス転移温度−53℃、酸価1.9mgKOH/g、重量平均分子量100万
(A’−2)藤倉化成株式会社の「アクリベースLKG−1101」(商品名):ガラス転移温度−22℃、酸価0.3mgKOH/g、重量平均分子量43万
【0175】
(B)エポキシ基を有するシランカップリング剤
(B−1)信越化学工業株式会社の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(商品名)
(B−2)信越化学工業株式会社の3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン「KBE−403」(商品名)
【0176】
(B’)参考シランカップリング剤
(B’−1)東レ・ダウコーニング株式会社の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「Z−6030」(商品名)
(B’−2)信越化学工業株式会社の3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−903」(商品名)
(B’−3)信越化学工業株式会社のビニルトリメトキシシラン「KBM−1003」(商品名)
(B’−4)信越化学工業株式会社の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン「KBM−803」(商品名)
(B’−5)信越化学工業株式会社の3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン「KBM−9007」(商品名)
【0177】
(C)1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物
(C−1)1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン
【0178】
(D)有機多価金属化合物
(D−1)アルミニウムトリスアセチルアセトネート
【0179】
(E)透明樹脂シート
(E−1)アクリル系樹脂シート
住友化学工業株式会社のアクリル系樹脂組成物(アクリル系樹脂70質量部とアクリル系コアシェルゴム30質量部の樹脂組成物)「HT03Y」(商品名)を用い、押出機とTダイ8とを備える装置(図2参照)を使用して、Tダイ8から上記樹脂の溶融シート7を連続的に押出し、回転する第一鏡面ロール9(溶融シート7を抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール)と、回転する第二鏡面ロール10との間に、上記溶融シート7を供給投入し、押圧して、厚み1.2mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度100℃、第二鏡面ロールの設定温度80℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は86%、ヘーズは2.7%、黄色度指数は0.7であった。
なお、以下の(E−2)〜(E−5)の各樹脂シートの製造にも、図2に模式的に示された製膜装置を用いた。
【0180】
(E−2)芳香族ポリカーボネート系樹脂シート
帝人化成株式会社の芳香族ポリカーボネート系樹脂「K−1300Y」(商品名)99.5質量部と株式会社カネカのコアシェルゴム(メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体)「カネエースB−56」(商品名)0.5質量部との樹脂組成物を用いたこと以外は上記(E−1)と同様にして、厚み1.2mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度140℃、第二鏡面ロールの設定温度120℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は88%、ヘーズは2.3%、黄色度指数は0.8であった。
【0181】
(E−3)ポリエステル系樹脂シート1
イーストマンケミカルカンパニー社の非結晶性ポリエステル系樹脂(PETG樹脂)「Cadence GS1」(商品名)99質量部と株式会社カネカのコアシェルゴム(メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体)「カネエースB−56」(商品名)1質量部との樹脂組成物を用いたこと以外は上記(E−1)と同様にして、厚み1.2mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度80℃、第二鏡面ロールの設定温度40℃、Tダイ出口の樹脂温度200℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は85%、ヘーズは3.0%、黄色度指数は0.5であった。
【0182】
(E−4)ポリエステル系樹脂シート2
イーストマンケミカルカンパニー社の非結晶性ポリエステル系樹脂「トライタンFX200」(商品名)99質量部と株式会社カネカのコアシェルゴム(メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体)「カネエースB−56」(商品名)1質量部との樹脂組成物を用いたこと以外は上記(E−1)と同様にして、厚み1.2mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度80℃、第二鏡面ロールの設定温度40℃、Tダイ出口の樹脂温度200℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は85%、ヘーズは3.0%、黄色度指数は0.5であった。
【0183】
(E−5)積層シート
押出機とTダイとを備える2種3層マルチマニホールド方式の共押出製膜装置を使用し、三菱瓦斯化学株式会社のアクリル系樹脂「Optimas7500R」(商品名)を両外層とし、住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー302−4」(商品名)を中間層とする溶融積層シートをTダイから連続的に押出し、回転する第一鏡面ロール(溶融シートを抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール)と、回転する第二鏡面ロールとの間に、上記溶融積層シートを供給投入し、押圧して、全厚み1.2mm、両外層の厚み0.1mm、中間層の厚み1mmの透明樹脂シートを得た。このときの設定条件は、第一鏡面ロールの設定温度140℃、第二鏡面ロールの設定温度120℃、Tダイ出口の樹脂温度300℃であった。得られた透明樹脂シートの全光線透過率は91%、ヘーズは1.0%、黄色度指数は0.7であった。
【0184】
(F)樹脂フィルム
(F−1)両面に易接着処理の施された透明な二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム:厚み25μm
(F−2)黒色(JIS Z8721:1993に従い、測定した明度2.3)の着色ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム:厚み80μm
【0185】
(G)接着剤
(G−1)DICグラフィックス株式会社の塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル共重合体系接着剤「VTP−NT」(商品名)
【0186】
例1
固形分換算で上記成分(A−1)100質量部、上記成分(B−1)0.057質量部、上記成分(C−1)0.077質量部、及び上記成分(D−1)0.023質量部を混合撹拌し、粘着剤を得た。次に上記(F−1)の一方の面の上に印刷を施した。続いて、形成された印刷層の上に上記(G−1)を、乾燥膜厚15μmとなるようにナイフコーターを使用して塗布し、乾燥後、その塗布面に上記樹脂シート(F−2)を、ラミネートロールの表面温度150℃の条件でラミネートした。次に、上記(F−1)の他方の面の上に、上記で得た粘着剤を用い、コンマコーティング方式の塗工装置を使用して膜厚20μmの粘着剤層を形成し、化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、物性測定・評価のための上記試験(i)〜(ix)を行った。結果を表1又は2に示す。
【0187】
例2〜21
粘着剤の配合を表1、3、5に示すように変更したこと以外は全て例1と同様に、化粧シートの作製及び物性の測定・評価を行った。結果を表1〜6に示す。
【0188】
例1S
固形分換算で上記成分(A−1)100質量部、上記成分(B’−2)0.057質量部、上記成分(C−1)0.077質量部、及び上記成分(D−1)0.023質量部を混合撹拌したところ、得られた粘着剤は、強く黄変したものであった。意匠用途には好ましくないため、評価試験は実施しなかった。
【0189】
例2S
固形分換算で上記成分(A−1)100質量部、上記成分(B’−3)0.057質量部、上記成分(C−1)0.077質量部、及び上記成分(D−1)0.023質量部を混合撹拌したところ、得られた粘着剤は、強く白濁したものであった。意匠用途には好ましくないため、評価試験は実施しなかった。
【0190】
例3S
固形分換算で上記成分(A−1)を100質量部、上記成分(B’−4)0.057質量部、上記成分(C−1)0.077質量部、及び上記成分(D−1)0.023質量部を混合撹拌したところ、得られた粘着剤は、強く白濁したものであった。意匠用途には好ましくないため、評価試験は実施しなかった。
【0191】
例4S
固形分換算で上記成分(A−1)を100質量部、上記成分(B’−5)0.057質量部、上記成分(C−1)0.077質量部、及び上記成分(D−1)0.023質量部を混合撹拌したところ、得られた粘着剤は、ゲル化していた。そのため評価試験は実施しなかった。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
【表6】
【0198】
これらの実験結果から、本発明の好ましい粘着剤を含む層を有する化粧シートは、ガラスとの粘着強度、耐湿熱性、耐熱性、透明性、及び硬度に優れているため、発泡断熱材充填工程における剥離、高温高湿環境下における剥離、及び打痕に関する上述の不都合を解消可能であることが分かった。また、本発明の好ましい粘着剤を含む層を有する化粧シートは、透明樹脂シートとの粘着強度、耐湿熱性、耐熱性、透明性、及び硬度に優れているため、発泡断熱材充填工程における剥離、高温高湿環境下におけるアウトガスに起因する剥離、及び打痕に関する上述の不都合を解消可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0199】
1:表面保護層
2:透明樹脂シートの層
3:粘着剤層
4:透明樹脂フィルムの層
5:印刷層
6:着色樹脂フィルムの層
7:溶融シート
8:Tダイ
9:第一鏡面ロール
10:第二鏡面ロール

図1
図2