【実施例】
【0024】
1.デキストリンの分析
(1)定量法
試料、及び各濃度の標準溶液1.5mLに、1N−NaOH水溶液を250μLと0.5MのPMP(3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン)−メタノール溶液を500μL加え、70℃で30分加熱する。得られた溶液に対し、1N−HCl水溶液を250μLにて中和し、5mLのクロロホルムを加え分配し、水層を測定試料とする。上記操作により得られた測定試料について、高速液体クロマトグラフ質量分析を用い、下記条件にて測定する。
【0025】
分析条件
・HPLC装置:型式ACQUITY UPLC、Waters製
・MS装置 :型式SYNAPT G2−S HDMS型、Waters製
・イオン化 :ESI
・質量範囲 :m/z 100−2500
・カラム :型式Unison UK−C18 UP(2.0×100mm,3μm),インタクト社製
・移動相 :E液:ギ酸0.05%水溶液、F液:アセトニトリル(%F=15→90)
・流量 :0.6mL/min
・注入量 :1μL
【0026】
(2)デキストロース当量
(I)分析は、デキストリンに含まれているぶどう糖、麦芽糖などの還元糖分をぶどう糖として定量する場合に適用し、次の手順にしたがって行う。
・水分の定量
・レイン・エイノン法による還元糖分の定量
・ぶどう糖として計算した還元糖の含有率(DE値、%)の計算
【0027】
(II)試料の調製及び力価の標定
(II-A)試料の調製
(II-1)標準転化糖溶液
スクロース(試薬)4.75gを正確に量り取り、90mLの水を使用して500mL容メスフラスコに移し入れる。これに塩酸(比重1.18)5mLを加え、20〜30℃で3日間放置した後、水を加えて定容し、冷暗所に保存する。その50mLを200mL容メスフラスコにとり、フェノールフタレインを指示薬として1mol/L水酸化ナトリウム溶液で中和した後、水を加えて定容する。これを転化糖溶液としてフェーリング溶液の力価の標定に用いる。
(II-2)メチレンブルー溶液
1%メチレンブルー1gを水に溶かして100mLとする。
(II-3)フェーリング溶液
A液:硫酸銅(CuSO
4・5H
2O)34.639gを水に溶かして500mLとし、2日間放置後ろ過する。
B液:酒石酸カリウムナトリウム(KNaC
4H
4O
6・4H
2O)173gと水酸化ナトリウム50gを水に溶かして500mLとし、これを2日間放置後ろ過する。
【0028】
(II-B)フェーリング溶液の力価の標定
フェーリング溶液A液5.0mL及びB液5mLを200mL容三角フラスコにとり、50mL容ビュレットを用いて標準転化糖溶液19.5mLを加える。電熱器上で2分間沸騰させた後、メチレンブルー溶液4滴を加え、沸騰しながら標準転化糖溶液を滴下し、青色が消失したところを終点とする。滴定は沸騰し始めてから3分以内に終了する。この滴定を3回行い、平均値を求める。但し、3回の平均値を滴定値とするが、各滴定値の差は0.1mL以内とする。また、力価の小数点以下第4位を四捨五入し、1±0.02の範囲内に収める。
【0029】
【数1】
【0030】
〔式中、Aは、消費した標準転化糖溶液の量(mL)を示す。〕
【0031】
(III)試料の調製
分析試料は、試料の性状に応じて、次により調製する。
(III-1)液体試料
液体中に結晶又は塊状物が析出している場合には、密閉容器に入れ、60〜70℃の水浴に浸漬して溶解し、よく振り混合した後、室温に冷却する。
(III-2)固体試料
粉末又は結晶状とし、塊がある場合には砕き、よく混合する。
【0032】
(IV)水分の定量
水分の定量は、試料の性状により、次の方法で行う。
(IV-1)液体試料
乾燥助剤として、予め秤量瓶に海砂を約15g取り、ガラス棒とともに105℃の乾燥機中で乾燥して恒量を求める。次に、前記(III)で調製した均一試料を固形分として約2gに相当する量を正確に量り取り、必要があれば少量の水を全体が浸るまで加え、時々ガラス棒でかき混ぜながら水浴上で加熱して大部分の水を揮散させる。更に、105℃の乾燥機内で時々かき混ぜ、ほとんど乾燥するまで乾かした後、真空乾燥機に移し、70℃で4時間乾燥する。デシケータ中で室温まで放冷した後、重量を量る。1時間ずつ真空乾燥を繰り返して恒量を求める。減量が、2mg以下の変化になった時を恒量に達したとみなす。
(IV-2)固体試料
前記(III)で調製した均一試料約2gを予め恒量にした秤量瓶に正確に量り取り、真空乾燥機で70℃、4時間乾燥する。次に、デシケータ中で室温まで放冷した後、重量を量る。更に、1時間ずつ真空乾燥を繰り返して、減量が2mg以下の変化になった時を恒量に達したとみなす。
(IV-3)水分の計算
試料中の水分は、次式により算出する。数値は小数点以下第2位を四捨五入する。
【0033】
【数2】
【0034】
〔式中、W
0は試料の採取量(g)を示し、W
1は乾燥後の試料の重量(g)を示す。〕
【0035】
(V)DE値の定量
(V-1)検液の調製
前記(III)で調製した均一試料約10gを正確に量り取り、水に溶かして500mL容メスフラスコに移し入れ、水を加えて容定し検液とする。
(V-2)滴定操作
フェーリング溶液A液5.0mL及びB液5mLを200mL容三角フラスコに採り、50mL容ビュレットを用いて、(V-1)で調製した検液15mLを加え、(II-B)の要領にしたがって滴定し、これを予備滴定とする。更に同様にして、予備滴定で得た滴定数より約1mL少ない量の検液を加え、(II-B)の要領にしたがって滴定する。ここで得た検液の消費量にフェーリング溶液の力価を乗じ、この数値から表1に示すレイン・エイノン糖量表(ぶどう糖)を用いて還元糖濃度(DE値,mg/100mL)をぶどう糖として求める。
(V-3)DE値の計算
試料の乾燥状態におけるぶどう糖として計算したDE値は、次式により算出する。数値は、小数点以下第2位を四捨五入する。
【0036】
【数3】
【0037】
〔式中、
D
Sは、表1に示すレイン・エイノン糖量表(ぶどう糖)を用いて求めた検液100mL中のぶどう糖量(mg)を示し、
Mは、(IV)で秤量した試料の水分(%)を示し、
Sは、(V-1)で秤量した試料の採取量(g)を示す。〕
【0038】
【表1】
【0039】
2.カフェインの分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。グラジエント条件は以下の通りである。リテンションタイム条件は、カフェインの標準試薬を用いて設定した。
【0040】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0041】
3.アストラガリンの分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式LC−20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD−C18(3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度40℃にてグラジエント法により行った。移動相C液は酢酸を0.05質量%含有するアセトニトリル溶液、D液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は360nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。
【0042】
濃度勾配条件
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0 85% 15%
20 80% 20%
35 10% 90%
50 10% 90%
50.1 85% 15%
60 85% 15%
【0043】
アストラガリンの標準品を用いて濃度既知の標準溶液を調製し、上記分析条件にて高速液体クロマトグラフ分析に供することによりリテンションタイムを測定するとともに、検量線を作成した。
・アストラガリン :18.2分
上記リテンションタイムで一致したピークをアストラガリンとして試料溶液中の各成分の定量を行った。
【0044】
実施例1〜5、比較例1、2及び参考例1、2
表2に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末飲料を得た。得られたインスタント粉末飲料について分析及び官能評価を行った。その結果を表2に示す。なお、得られたインスタント粉末飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0045】
官能評価1
上記の各実施例、比較例及び参考例で得られたインスタント粉末飲料1gを、それぞれ80℃の熱水100mLで溶解して還元飲料を調製し、各還元飲料を飲用したときの「不快味」について、専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、各パネリストが「不快味」の評価基準を、下記の評価基準とすることに合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。
【0046】
不快味の評価基準
不快味は、飲用したときに不快味が感じられるか否かを観点に、比較例1の還元飲料の不快味の評点を「1」とし、実施例3の還元飲料の不快味の評点を「5」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
1:不快味を強く感じる
2:不快味を感じる
3:不快味を少し感じる
4:不快味をほとんど感じない
5:不快味を感じない
【0047】
【表2】
【0048】
実施例6〜8及び比較例3
表3に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末飲料を得た。得られたインスタント粉末飲料について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、実施例1と同様の方法で調製された還元飲料について、官能評価1と同一基準にて実施した。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。得られたインスタント粉末飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例9及び比較例4
表4に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末飲料を得た。得られたインスタント粉末飲料について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、実施例1と同様の方法で調製された還元飲料について、官能評価1と同一基準にて実施した。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。得られたインスタント粉末飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例10及び比較例5
表5に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末飲料を得た。得られたインスタント粉末飲料について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、実施例1と同様の方法で調製された還元飲料について、官能評価1と同一基準にて実施した。その結果を、参考例1の結果とともに表5に示す。得られたインスタント粉末飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0053】
【表5】
【0054】
実施例11〜13、比較例6〜8及び参考例3
表6に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末飲料を得た。得られたインスタント粉末飲料について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、実施例1と同様の方法で調製された還元飲料について、参考例3で得られた還元飲料の不快味の評点を「2」とすることに合意したうえで実施した。また、評価基準は、官能評価1と同一の5段階で評価した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を表6に示す。得られたインスタント粉末飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0055】
【表6】
【0056】
実施例14、15、比較例9、10及び参考例4、5
表7に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末飲料を得た。得られたインスタント粉末飲料について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、実施例1と同様の方法で各還元飲料を調製した後、実施例14、比較例9及び参考例4の還元飲料については比較例9で得られた還元飲料の不快味の評点を「1」とし、実施例15、比較例10及び参考例5の還元飲料については比較例10で得られた還元飲料の不快味の評点を「1」とすることに合意したうえで実施した。また、評価基準は、官能評価1と同一の5段階で評価した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を、実施例3、比較例1及び参考例1の結果とともに表7に示す。得られたインスタント粉末飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0057】
【表7】
【0058】
実施例16、比較例11及び参考例6
表8に示す各成分を均一に混合し、インスタント粉末緑茶飲料を得た。得られたインスタント粉末緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。
【0059】
官能評価2
上記の各実施例、比較例及び参考例で得られたインスタント粉末緑茶飲料1gを、それぞれ80℃の熱水100mLで溶解させて還元飲料を調製した。還元飲料は途中インスタント粉末緑茶飲料がダマにならないよう熱水を30秒かけてゆっくり注ぎ、茶筅でよく攪拌しながら均一に溶解するよう調製した。官能評価は、各還元飲料を飲用したときの「不快味」について、専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、各パネリストが比較例11で得られた還元飲料の不快味の評点を「1」とすることに合意したうえで実施した。また、評価基準は、官能評価1と同一の5段階で評価した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を表8に示す。得られたインスタント粉末緑茶飲料は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0060】
【表8】
【0061】
実施例17、比較例12及び参考例7
80℃に加温した温水9mLにキサンタンガムを0.2g添加し完全に溶解させポーション原液を調製した。次いで表9に示す成分のうちキサンタンガム以外の成分を均一に混合した粉末組成物をポーション原液に添加し完全に溶解させた。得られたポーション原液を容器(ポリスチレン、容量:15mL、口径43×高さ26mm)に流し入れ、ヘッドスペースの空気を窒素ガスに置換した上でフタで密封し、容器入りポーションを製造した。得られた容器入りポーションについて分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、各実施例、比較例及び参考例で得られたポーション10gを、80℃の熱水90mLでそれぞれ希釈して調製し、各還元飲料を飲用したときの「不快味」について、専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、各パネリストが比較例12で得られた還元飲料の不快味の評点を「1」とすることに合意したうえで実施した。また、評価基準は、官能評価1と同一の5段階で評価した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を表9に示す。
【0062】
【表9】
【0063】
実施例18、19、比較例13、14及び参考例8、9
表10に示す各成分を均一に混合し、次いで単発式打錠機(RIKEN社製)を用いて、穴径14mmのリング状杵で、質量1g/1錠にて打錠し、円形の錠剤を得た。得られた錠剤について分析及び官能評価を行った。なお、得られた錠剤は、いずれも固形分量が97.0質量%であった。
【0064】
官能評価3
上記の各実施例、比較例及び参考例で得られた錠剤1錠を水なしで口に含み、腔内に含んだ後直ちに噛み砕き、唾液により錠剤が口内で完全に消滅したときの「不快味」について、専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験では、各パネリストが「不快味」の評価基準を、下記の評価基準とすることに合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。
【0065】
不快味の評価基準
不快味は、服用したときに不快味が感じられるか否かを観点に、実施例18、比較例13及び参考例8の錠剤については比較例13の錠剤の不快味の評点を「1」とし、実施例19、比較例14及び参考例9の錠剤については比較例14で得られた錠剤の不快味の評点を「1」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
1:不快味を強く感じる
2:不快味を感じる
3:不快味を少し感じる
4:不快味をほとんど感じない
5:不快味を感じない
【0066】
【表10】
【0067】
実施例20、比較例15及び参考例10
80℃に加温した温水100mLに寒天を0.3g添加し、10分間温度を維持しながら攪拌子で攪拌して完全に溶解させた。次いで、表11に示す残りの成分を全て加え、更に5分間攪拌して完全に溶解させてゼリー原液を調製した。次いで、得られたゼリー原液40gを容器(スチロール樹脂製プラスチックカップ、容量:70mL、取り出し口内径:5cm)に流し入れ、冷蔵庫で10℃以下に冷却してゼリー食品を得た。得られたゼリー食品について分析及び官能評価を行った。
【0068】
官能評価4
上記の各実施例、比較例及び参考例で得られたゼリー食品を小さじのスプーンで3gすくい取った後、口腔内に含み、舌で唾液と混ぜて完全に消滅したときの「不快味」について、専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験では、各パネリストが「不快味」の評価基準を、下記の評価基準とすることに合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。
【0069】
不快味の評価基準
不快味は、摂取したときに不快味が感じられるか否かを観点に、比較例15のゼリー食品の不快味の評点を「1」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
1:不快味を強く感じる
2:不快味を感じる
3:不快味を少し感じる
4:不快味をほとんど感じない
5:不快味を感じない
【0070】
【表11】
【0071】
表2〜11から、特定量の(A)デキストリンと(B)カフェインとを特定の量比で含有させたうえで、更に特定量の(C)ケンフェロールモノグルコシドを含有させることで、不快味の抑制された経口組成物が得られることがわかる。