特許第6782767号(P6782767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782767
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】歯ブラシの向き判定システム
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20201102BHJP
   A46B 5/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   A46B15/00 K
   A46B5/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-509815(P2018-509815)
(86)(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公表番号】特表2018-523548(P2018-523548A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】GB2016050864
(87)【国際公開番号】WO2017029469
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年3月7日
(31)【優先権主張番号】1514668.1
(32)【優先日】2015年8月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518054892
【氏名又は名称】プレイブラッシュ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルガ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】イットナー, マテーウス
(72)【発明者】
【氏名】オグンシナ, トールロープ
(72)【発明者】
【氏名】グラジェコウスキ, ウィクスター
(72)【発明者】
【氏名】ディエム, パトリック
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02519579(GB,A)
【文献】 特開2009−240760(JP,A)
【文献】 特表2013−515538(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/077282(WO,A1)
【文献】 特表2008−543418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B15/00−17/08
A46B 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯ブラシの向きを判定し、ユーザに対してブラッシングに関するフィードバックを提供するシステムであって、
加速度計を含むとともに前記歯ブラシに取り付けるように構成した向きセンサーと、
前記向きセンサーから向き情報を受信し、該向きセンサーが口腔の各領域に対応する複数の異なる向きのうちの1つにあるかどうかを判定するように構成した1つまたは2つ以上のプロセッサーと、を備え、
前記複数の異なる向きは、
前記歯ブラシがユーザの口腔の左側にある歯の前面で使用されている場合に対応する向き
前記歯ブラシが前記ユーザの口腔の右側にある歯の前面で使用されている場合に対応する向き
前記歯ブラシが前記ユーザの口腔の上側にある歯の内面で使用されている場合に対応する向き、および、
前記歯ブラシが前記ユーザの口腔の下側にある歯の内面で使用されている場合に対応する向き、を含み、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記ユーザが歯にブラシをかける際に、前記加速度計からのデータを処理して重力成分と直線加速度成分とを取得するように構成され、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記複数の異なる向きのそれぞれについて前記重力成分と前記直線加速度成分とのそれぞれに関する最大値および最小値を格納して最大閾値および最小閾値として用いるように構成され、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記重力成分と前記直線加速度成分とを前記複数の異なる向きのそれぞれについて格納された前記最大閾値および前記最小閾値と比較して前記向きセンサーが前記複数の異なる向きのうちの1つにあるかどうかを判定するように構成され、さらに、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、ブラッシングに関するリアルタイムのフィードバックを提供するためにブラシがかけられている前記口腔の前記領域を出力するように構成される、
ことを特徴とする歯ブラシの向きを判定するシステム。
【請求項2】
前記ユーザの口腔に対して画定された対称面が存在し、該ユーザの口腔の左側と右側に対応して、該ユーザの口腔の前記左側にある歯の前面に対応する前記向きでは、取り付けられた歯ブラシが前記対称面の左側で角度の範囲を定める長手軸を有し、該ユーザの口腔の前記右側にある歯の前面に対応する前記向きでは、取り付けられた歯ブラシが前記対称面の右側で角度の範囲を定める長手軸を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ユーザの口腔の前記左側にある歯の前面に対応する前記向きに対応して前記対称面の左側で範囲を定められた前記角度は、前記ユーザの口腔の前記右側にある歯の前面に対応する前記向きに対応して前記対称面の右側で範囲を定められた前記角度から、略180°の角度で離れている、ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の異なる向きが、前記歯ブラシがユーザの口腔の下側にある歯の上面で使用されている場合に対応する向きおよび、該歯ブラシがユーザの口腔の上側にある歯の下面で使用されている場合に対応する向き、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
ユーザの口腔の前記下側にある歯の上面に対応する前記向きは、ユーザの口腔の前記上側にある歯の下面に対応する前記向きと、取り付けられた歯ブラシの長手軸を中心にして略180°の回転動作によって区別される、ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ユーザの口腔に対して画定された水平面が存在し、ユーザの口腔の上側と下側にそれぞれ対応して、前記ユーザの口腔の前記上側にある歯の内面に対応する前記向きでは、取り付けられた歯ブラシが前記水平面の上側で第1の角度の範囲を定める長手軸を有し、前記ユーザの口腔の前記下側にある歯の内面に対応する前記向きでは、取り付けられた歯ブラシが該水平面の下側で第2の角度の範囲を定める長手軸を有する、ことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記加速度計から受信する情報を利用して指向性引力を判定するように構成される、ことを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
重力の方向を初期化の値として用いることにより、空間における前記歯ブラシの向きを判定する、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記向きセンサーは、前記歯ブラシに取り外し可能に結合される、ことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーによる前記複数の異なる向きのうちの1つにあるかどうかの判定が、電子コンピュータ計算装置におけるゲームを制御するための入力として用いられる、ことを特徴とする請求項1から9のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、特定のユーザに対して、前記歯ブラシの前記複数の異なる向きのそれぞれに対する特有の最大および最小閾値を判定するように構成される、ことを特徴とする請求項1から10のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、特定のユーザと結び付けられた特有の最大および最小閾値を格納し、後で呼び出すように構成される、ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記加速度計のデータの低域フィルタリングを行うことによって前記重力成分を取得するとともに、前記加速度計のデータから前記重力成分を減算することによって前記直線加速度成分を取得するように構成される、ことを特徴とする請求項1から12のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーが、
前記加速度計からのデータを処理して3つの直交方向のそれぞれにおける重力成分と前記3つの直交方向のそれぞれにおける直線加速度成分とを取得する、
前記複数の異なる向きのそれぞれについて前記3つの直交方向のそれぞれにおける前記重力成分と前記直線加速度成分とのそれぞれに関する最大値および最小値を格納して前記最大閾値および前記最小閾値として用いる、ならびに、
前記3つの直交方向のそれぞれにおける前記重力成分と前記直線加速度成分とを前記複数の異なる向きのそれぞれについて格納された前記最大閾値および前記最小閾値と比較して前記向きセンサーが前記複数の異なる向きのうちの1つにあるかどうかを判定する、ように構成される、
ことを特徴とする請求項1から13のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
歯ブラシの向きを判定し、ユーザに対してブラッシングに関するフィードバックを提供する方法であって、
加速度計を含むとともに前記歯ブラシに取り付けるように構成された向きセンサーを使用して向きデータを生成すること
1つまたは2つ以上のプロセッサーにおいて前記向きセンサーから向き情報を受信し、前記プロセッサーを使用して該向きセンサーが口腔の各領域に対応する複数の異なる向きのうちの1つにあるかどうかを判定することを含み、
前記複数の異なる向きは、
前記歯ブラシがユーザの口腔の左側にある歯の前面で使用されている場合に対応する向き
前記歯ブラシが前記ユーザの口腔の右側にある歯の前面で使用されている場合に対応する向き
前記歯ブラシが前記ユーザの口腔の上側にある歯の内面で使用されている場合に対応する向き、および、
前記歯ブラシが前記ユーザの口腔の下側にある歯の内面で使用されている場合に対応する向き、を含み、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記ユーザが歯にブラシをかける際に、前記加速度計からのデータを処理して重力成分と直線加速度成分とを取得し、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記複数の異なる向きのそれぞれについて前記重力成分と前記直線加速度成分とのそれぞれに関する最大値および最小値を格納して閾値として用い、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記重力成分と前記直線加速度成分とを前記口腔の各領域に対応する前記複数の異なる向きのそれぞれについて格納された前記閾値と比較して前記向きセンサーが前記複数の異なる向きのうちの1つにあるかどうかを判定し、さらに、
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、ブラッシングに関するリアルタイムのフィードバックを提供するためにブラシがかけられている前記口腔の前記領域を出力する、
ことを特徴とする歯ブラシの向きを判定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、歯ブラシの向きを判定するシステムに関する。本発明はさらに、歯ブラシを受け容れるためのスリーブの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔の衛生は全般的に見て重要であり、多様な口腔の病気を防止するのに役立つ。従って、口腔のすべての領域に対して、均等にかつ妥当な長さの時間でブラシをかけることは重要である。個人にとって、歯をどのように、かつどの部位にブラシをかけているかを確かめることは困難である以上、個人が口腔のいくつかの領域に対して、ブラシをかけ損なうことはありがちなことである。この問題と取り組むために、ブラッシング技術を監視し、ユーザに対してブラッシングに関するフィードバックを提供するシステムを利用することができる。
【0003】
ブラッシング技術を監視する以前の試みは、歯ブラシに動作センサーを取り付け、ユーザに対して、口腔内のどこにブラシをかけているかに関するフィードバックを提供することを含んでいる。頻繁にあることだが、上記動作センサーが歯ブラシに恒久的に取り付けられ、動作センサーと歯ブラシが1つの完成ユニットを構成する。当該歯ブラシか動作センサーかどちらかが機能停止になれば、その全ユニットを取り換えなければならず、高価になり得る。動作センサーを歯ブラシとは別個に設けた場合には、組立と分解が容易にできる技術を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行の動作センサーは、空間における歯ブラシの位置の変化を判定することができる。しかし、これらのセンサーからのフィードバックが意味し得ることは、口腔の特定の領域を正確に識別できない、もしくは、その領域と他の領域との区別ができない場合に、当該領域を常に検知し損ねてしまうということが判明している。
【0005】
その結果、動作センサーからフィードバックを提供する迅速かつ信頼性の高い方法が必要になる。それにより、口腔内の異なる領域に対してブラシを均等にかけることが確実になり、ブラッシングの効果を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、歯ブラシの向きを判定するシステムであって、歯ブラシに取り付けるように構成した向きセンサーと、前記向きセンサーから向き情報を受信し、該向きセンサーが第1の向きまたは第2の向きにあるかどうかを判定するように構成した1つまたは2つ以上のプロセッサーとを備え、前記第1の向きは、前記歯ブラシがユーザの口腔の左側にある歯の表面で使用されている場合に対応し、前記第2の向きは、該歯ブラシがユーザの口腔の右側にある歯の表面で使用されている場合に対応する、歯ブラシの向きを判定するシステムを提供する。
【0007】
このように、前記向きセンサーからのデータを用いて、歯ブラシがユーザの口腔の左側または右側で使用されているかどうかを判定することができる。口腔のすべての領域に対して均等なブラッシングを確実に行うことは、全般的に見た口腔の衛生にとって重要である。上記データを用いることにより、口腔の左側と右側の部位間の明確な区別が可能になり、ブラッシングに関するフィードバックをユーザに提供できる。特定の実施の形態では、ユーザが上記フィードバックを用いることにより、口腔の両側に対して均等なブラッシングを確実に行うことできる。
【0008】
ユーザの口腔に対して画定された対称面を設けてもよい。前記第1の向きでは、取り付けられた歯ブラシが前記対称面の左側で角度の範囲を定める長手軸を有し、前記第2の向きでは、取り付けられた歯ブラシが前記対称面の右側で角度の範囲を定める長手軸を有する。前記対称面の左側と右側は、該ユーザの口腔の左側と右側に対応する。
【0009】
上記角度を用いることにより、広範囲にわたる多様なブラッシング様式に対して、ユーザの口腔の左側と右側のブラッシングを正確に区別できることが判明している。口腔の左側のブラッシングでは、右利きのユーザは、ブラシの先端が左側の歯の前面上に配置されるように、右手の向きを定める傾向がある。口腔の右側のブラッシングでは、当該ユーザは、右手を180°近くの角度に亘って回転させることにより、ブラシの頭部の向きをひっくり返す傾向がある。この動作によって、上記向きセンサーは、ユーザの口腔に対する垂直軸を通過するように回転することになる。
【0010】
前記第1の向きに対応して前記対称面の左側で範囲を定められた前記角度は、前記第2の向きに対応して前記対称面の右側で範囲を定められた前記角度から、略180°の角度で離れてもよい。
【0011】
左側の前歯と右側の前歯は、対称面の反対側にある。ユーザが口腔の左側の歯にブラシをかけるとき、典型的には、歯ブラシの先端を上記対称面の左側に配置し、歯ブラシを略水平位置に保持する。ユーザが口腔の右側の歯にブラシをかけるとき、典型的には、歯ブラシの先端を上記対称面の右側に配置し、歯ブラシを略水平位置に保持する。従って、前記第1の向きと前記第2の向きとの間の角度の差は、約180°になる。
【0012】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記向きセンサーが第3の向きまたは第4の向きにあるかどうかを判定するように構成されてもよく、前記第3の向きは、前記歯ブラシがユーザの口腔の下側にある歯の上面で使用されている場合に対応し、前記第4の向きは、該歯ブラシがユーザの口腔の上側にある歯の下面で使用されている場合に対応する。前記歯ブラシは、前記歯ブラシの長手軸を中心にして略180°の回転によって、前記第3の向きから前記第4の向きに移動されてもよい。
【0013】
ユーザは、口腔の下側にある歯の上面にブラシをかけるために、歯ブラシを略水平向きに保持しながら、歯ブラシの毛部が下方に向くように手の向きを定める傾向がある。ユーザは、口腔の上側にある歯の下面にブラシをかけるために、歯ブラシを略水平向きに保持しながら、歯ブラシの毛部が上方に向くように手の向きを定める傾向がある。上側と下側にある歯のブラッシングを切り替える際には、ユーザは、手を180°近くの角度に亘って回転させることにより、歯ブラシの向きを回転させる傾向がある。この動作によって、上記向きセンサーは、歯ブラシの長手軸を中心にして回転することになる。
【0014】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記向きセンサーが第5の向きまたは第6の向きにあるかどうかを判定するように構成されてもよく、前記第5の向きは、前記歯ブラシがユーザの口腔の上側にある歯の内面で使用されている場合に対応し、前記第6の向きは、該歯ブラシがユーザの口腔の下側にある歯の内面で使用されている場合に対応する。
【0015】
前記ユーザの口腔に対して、水平面が画定されてもよい。ユーザの口腔の上側と下側にそれぞれ対応して、前記第5の向きでは、取り付けられた歯ブラシが前記水平面の上側で第1の角度の範囲を定める長手軸を有し、前記第6の向きでは、取り付けられた歯ブラシが該水平面の下側で第2の角度の範囲を定める長手軸を有する。
【0016】
上記角度により、広範囲にわたる多様なブラッシング様式に対して、ユーザの口腔の上側と下側の歯の内側のブラッシングを正確に区別することが可能になる。口腔の上側の奥歯のブラッシングでは、ユーザは、ブラシの先端が口腔の上部にある状態で、ブラシの毛部が上側の歯の内面上に配置されるように、手の向きを定める傾向がある。口腔の下側の奥歯のブラッシングでは、ユーザは、ブラシの先端が口腔の下部にある状態で、ブラシの毛部が下側の歯の内面上に配置されるように、手の向きを定める傾向がある。上側と下側にある歯の内面のブラッシングを切り替える際には、ユーザは、手を回転させることにより、歯ブラシの向きをひっくり返す傾向がある。この動作によって、上記向きセンサーは、ユーザの口腔に対して画定される水平軸を通過するように回転することになる。
【0017】
前記向きセンサーは、加速度計を備えてもよい。前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記加速度計から受信する情報を利用して指向性引力(指向性を有する引力)を判定するように構成されてもよい。これを利用すれば、前記プロセッサーが、取りつけられた歯ブラシの空間における向きを判定することができる。
【0018】
重力の方向を初期化の値として用いることにより、空間における前記歯ブラシの向きを判定してもよい。これにより、ユーザが歯にブラシをかけ始める前に、歯ブラシを空間における特定の向きに配置する必要がなくなる。ユーザが歯ブラシを開始の向きから第1の向きに移動させたとき、指向性引力の変化を判定できる。前記プロセッサーがその後、この重力の方向の変化に基づく歯ブラシの第1の向き、および歯ブラシの最初の向きを判定できるようにしてもよい。
【0019】
前記向きセンサーは、前記歯ブラシに取り外し可能に結合されてもよい。このようにすれば、同じ向きセンサーを多様な歯ブラシに使用できる。いくつかの実施の形態では、前記向きセンサーを収納し、この向きセンサーを歯ブラシに取り外し可能に結合させるための収納ユニットを設けてもよい。
【0020】
前記向きセンサーは、前記歯ブラシに対する特有の構成で該歯ブラシに結合されてもよい。このようにすれば、前記向きセンサーに対する歯ブラシの向きが既知である場合に、前記1つまたは2つ以上のプロセッサーが、取りつけられた歯ブラシの向きを判定できるようになる。いくつかの実施の形態では、前記向きセンサーを収納するための収納ユニットを設け、この収納ユニット上に当該収納ユニットの前面を指し示すためのマークを付けてもよい。ユーザはその後、前記向きセンサーを歯ブラシに結合させるとき、上記収納ユニット上の当該マークを歯ブラシの前面に合わせる必要がある。いくつかの実施の形態では、上記収納ユニット上のマークと歯ブラシの毛部は、それらを結合させるときに同じ方向に面していなければならない。
【0021】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーによる前記第1の向きと前記第2の向きの判定が、電子コンピュータ計算装置におけるゲームを制御するための入力として用いられてもよい。
【0022】
歯ブラシが特定の向きに配置しているという判定をゲーム用入力として用いて、歯ブラシの向きの映像表示を提供することができる。いくつかの実施の形態では、上記映像表示を用いて、ブラッシングに関するリアルタイムのフィードバックを提供できる。ユーザは、そのフィードバックを用いることにより、口腔の第1と第2の部位に対して均等にブラシをかけることができる。いくつかの実施の形態では、上記ゲーム制御入力の範囲を広げて、第3、第4、第5および第6の向きのいくつか、またはそれらのすべてを含めることができる。いくつかの実施の形態では、向き情報を分析して、口腔の異なる領域に対して均等にブラシがかけられた場合に、当該ゲームがユーザに報酬を付与するようにしてもよい。いくつかの実施の形態では、ユーザが手本にできるように、歯ブラシの向きを表示してもよい。
【0023】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、前記歯ブラシの前記第1の向きと前記第2の向きのそれぞれに対する特有の最大および最小閾値を判定するように構成されてもよい。上記閾値は、特定のユーザにとって特有であるかもしれない。異なるユーザがブラシをまったく同じように移動させることはない以上、歯ブラシを第1の向きから第2の向きに移動させる第1のユーザは、歯ブラシを第1の向きから第2の向きに移動させる第2のユーザに対して、異なる動作を用いるかもしれない。上記歯ブラシシステムは、異なるユーザに対する最大および最小限度を判定して、第1と第2のユーザの動作を区別することできる。
【0024】
前記1つまたは2つ以上のプロセッサーは、特定のユーザと結び付けられた最大および最小閾値を格納し、後で呼び出すように構成されてもよい。このようにすれば、特定のユーザの特有の様式に応じて、上記ゲームを改作して、映像の効果を調整することができる。
【0025】
本発明の一態様によれば、歯ブラシの向きを判定する方法であって、歯ブラシに向きセンサーを取り付け、1つまたは2つ以上のプロセッサーを構成することにより、前記向きセンサーから向き情報を受信し、該向きセンサーが第1の向きまたは第2の向きにあるかどうかを判定することを含み、前記第1の向きは、前記歯ブラシがユーザの口腔の左側にある歯の表面で使用されている場合に対応し、前記第2の向きは、該歯ブラシがユーザの口腔の右側にある歯の表面で使用されている場合に対応する、歯ブラシの向きを判定する方法を提供する。
【0026】
本発明のさらなる一態様によれば、歯ブラシ保持器であって、相対的に幅狭の上端部と相対的に幅広の下端部を有する歯ブラシを収納し、前記上端部と前記下端部の間に外方にフレアをつけた形状を有するスリーブと、前記スリーブを垂直の向きに支持するための基部とを備え、前記スリーブの下端部は、離間した弾性内壁と外壁を具備し、前記弾性内壁が前記外壁に向けて撓むようになっている、歯ブラシ保持器を提供する。
【0027】
上記弾性内壁を上記外壁から離間させることにより、当該2つの構成要素間に空隙が形成される。この空隙が上記可撓性スリーブの一部を取り囲むことにより、上記スリーブの厚みのある端部で可撓性が大きくなる。当該端部は、このような構成がなければ、大きな剛性を有することになる。これにより、ユーザは、歯ブラシを上記歯ブラシ保持器に容易に挿入および取り外しができると共に、上記歯ブラシ保持器の基部が幅広になり、上記歯ブラシ保持器と取り付けられた歯ブラシを垂直の向きに効果的に支持できることになる。
【0028】
上記内壁と外壁が、1つの連続した構造物の一部を構成してもよい。いくつかの実施の形態では、上記内壁は、首状部を取り囲む外壁構造物の連続部分であり、上記内壁を取り囲む上記外壁は、第2の構造物の一部である。
【0029】
前記歯ブラシ保持器はさらに、基部と流体密閉型内部筺体を備えてもよい。前記流体密閉型内部筺体は、向きセンサーを収納するために用いられる。前記流体密閉型内部筺体は、前記スリーブの一端と前記基部の間に設置される。
【0030】
この構成によれば、確実に、上記歯ブラシ保持器の重量をその一端に集中させることができる。その重量は、上記歯ブラシ保持器の底端部に集中される。水による損壊に対して保護する必要がある構成部品を収納するために、上記内部筺体を用いてもよい。多様な電子構成部品を収納するために、上記内部筺体を用いることができる。いくつかの実施の形態では、上記内部筺体が充電ポートを収納してもよい。
【0031】
前記流体密閉型内部筺体には、少なくとも1つのLED光源が収納されてもよい。前記LED光源は、ユーザからの入力に応答して第1の状態から第2の状態に移行するように構成される。このようにすれば、光源を用いて、上記歯ブラシの向き判定システムの状況をユーザに指し示すことができる。上記LED光源は、カラー光でも白色光でもよい。あらかじめ設定された光効果を利用して、上記歯ブラシのシステムの状況を指し示してもよい。それらの光効果は、限定されることはないが、律動、明滅、閃光、減退光、または、いずれかの効果の組合せを含むことができる。上記内部筺体の一部は、光が透過できる材料から形成されてもよい。上記歯ブラシ保持器の一部は、光が透過できる材料から形成されてもよい。
【0032】
前記歯ブラシ保持器の前記基部は、前記スリーブの長手軸に略垂直であってもよい。
【0033】
上記可撓性スリーブ内に歯ブラシを挿入したとき、その歯ブラシの長手軸は、上記可撓性スリーブの長手軸に平行になる。従って、上記歯ブラシ保持器の基部は、当該歯ブラシと可撓性スリーブの長手軸に垂直になる。すなわち、上記歯ブラシ保持器は、歯ブラシが使用されていないとき、その歯ブラシ用の保持器として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の実施の形態をここでは、添付図面を参照して例としてのみ説明する。
図1】歯ブラシ保持器とそれに設置された歯ブラシの正面図である。
図1a】他の実施の形態による歯ブラシ保持器の正面図である。
図2】歯ブラシを収納するための歯ブラシ保持器の横断面図である。
図2a】他の実施の形態による歯ブラシ保持器の横断面図である。
図3a】歯ブラシの第1の向きの概略図である。
図3b】歯ブラシの第2の向きの概略図である。
図4a】歯ブラシの第3の向きの概略図である。
図4b】歯ブラシの第4の向きの概略図である。
図5a】歯ブラシの第5の向きの概略図である。
図5b】歯ブラシの第6の向きの概略図である。
図6】歯ブラシの向きの較正手順を示すフローチャートである。
図7】移動式デバイスの概略図である。
図8a】向き情報の映像表示用のソフトウェア・ルーチンを示すフローチャートである。
図8b】向き情報の映像表示用のソフトウェア・ルーチンを示すフローチャート(図8aの続き)である。
図9】歯ブラシの状況を指し示すためのLED光源システムの指令を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、歯ブラシ保持器10に接続された歯ブラシ4を示す。歯ブラシ保持器10は、熱可塑性エラストマーの外壁18を備え、概して切頭円錐形状を有する。
【0036】
歯ブラシ保持器10の一端には、首状部14が設けられ、その反対側の端部には、基部12が設けられている。首状部14の直径に関しては、歯ブラシ4が首状部14に挿入できるように、かつ、一度挿入すると首状部14と歯ブラシ4とがぴったりと嵌合するように選択する。これにより、歯ブラシ4が首状部14に対して横方向に移動することを防止し、歯ブラシ保持器10を歯ブラシ4に確実にしっかり結合させることができる。歯ブラシ保持器10の基部12は、歯ブラシ保持器10の首状部14よりもさらに、半径方向に広がっている。これにより、幅広の基部12が形成され、歯ブラシ保持器10の立設が可能になる。
【0037】
図2は、歯ブラシ保持器10の横断面図である。ここでは、外壁18のフレアがついた特徴がより明確に見られる。可撓性スリーブ20が、首状部14から基部12に向けて延設されている。可撓性スリーブ20は、概して円筒形状であり、歯ブラシ保持器10の首状部14の端部に形成された開口部21と反対側に閉端部19が設けられている。可撓性スリーブ20は、外壁18に囲まれている。歯ブラシ4が首状部14内に挿入された後に、さらに可撓性スリーブ20内に挿入される。可撓性スリーブ20の直径に関しては、歯ブラシ4が可撓性スリーブ20に対して、概して横方向に移動しないように選択することにより、可撓性スリーブ20と歯ブラシ4を確実にしっかりと結合できる。
【0038】
可撓性スリーブ20はさらに、その閉端部19が内壁22に囲まれている。内壁22と外壁18は互いに離間されて、それら2つの壁の間に空隙24が形成されている。内壁22は、例えば熱可塑性エラストマーなどの可撓性材料から形成されるので、内壁22が外壁18に対して、横方向に移動可能となっている。上記2つの壁の間には、空間24が形成されて、可撓性スリーブ20の閉端部19を取り囲んでいる。これにより、内壁22が任意の半径方向に移動可能となる。内壁22と外壁18は、首状部14に向かって肩状部23で出合い、連続したユニットを形成する。内壁22が肩状部23で外壁18から分岐することにより、歯ブラシ保持器10が1つのユニットから形成されることになる。
【0039】
可撓性スリーブ20の真下には、内部筺体26が閉端部19と基部12の間に設けられている。内部筺体26は、非可撓性の材料から形成され、プリント回路基板(PCB)28を収納する。PCB28は、Bluetooth(登録商標) Low Energy (Bluetooth(登録商標) 4.0/ Bluetooth(登録商標) Smart)のモジュール25と、加速度計27を備える。加速度計27は、歯ブラシ保持器10内部の内部筺体26を介して歯ブラシ4に結合できる。内部筺体26内部はさらに、充電回路(図示略)と、充電誘導リング(図示略)と、Micro-USB用充電ステーション30を含んでいる。
【0040】
図2aは、他の実施の形態による歯ブラシ保持器10の横断面図である。この実施の形態では、内部筺体26は、歯ブラシ保持器10の外壁18内部に配設された第1の上部片26aと、歯ブラシ保持器10の外壁18の外側に配設された第2の底部片13とから形成される。上記2つの片26aおよび13は、スナップ留め方式の接続により接合され、内部筺体26を密封する。内部筺体26の第2の底部片13はさらに、歯ブラシ保持器10の基部12を形成する。さらに内部筺体26には、環状の突出部が設けられており、それに対応する外壁18の環状の窪みの中にスナップ留めできるように配置されている。
【0041】
ユーザが歯にブラシをかけるとき、生の加速度計データを加速度計27から無線周波数(例えば、Bluetooth(登録商標))により、図7に示した移動式デバイス1(例えば、スマートフォンやタブレット)に送信する。移動式デバイス1上で作動しているアプリケーションによって、アルゴリズムの中に供給される生のセンサーによるデータが受信される。次に、プロセッサー29が、歯ブラシ4の向きとブラシをかけている口腔の部位とをコンピュータで算出する。歯ブラシ4の向きの判定方法に関しては、さらに詳細に以下に説明する。
【0042】
歯ブラシ保持器10の基部12は、概して特徴のない外面を有する。その外面は、概して滑らかな平坦であり、その安定した基部上に歯ブラシ保持器10を立設することができる。基部12は可撓性スリーブ20の長手軸に垂直であるため、歯ブラシ4を挿入しても、歯ブラシ保持器10は安定状態で保たれる。歯ブラシ保持器10を用いることにより、歯ブラシ4が使用されていないとき、歯ブラシ4を直立した姿勢で保管できる。
【0043】
ユーザは、歯ブラシ4を歯ブラシ保持器10に結合させて、システム2を組み立てる。マーカー16が歯ブラシ保持器10の外面上に設けられているので、ユーザは歯ブラシ4を正確に挿入できる。歯ブラシ4のマーカー16と毛部8は、同一の垂直軸に沿って並設されなければならず、その垂直軸はマーカー16の中心と歯ブラシ毛部8の中心を通るものである。毛部8とマーカー16はさらに、同一の半径方向に向けられなければならない。図1aは、他の実施の形態による歯ブラシ保持器10を示す。追加のマーカー15が歯ブラシ保持器10の外面上に設けられ、マーカー17が内部筺体26の外面上に設けられている。ユーザは、これらのマーカーを用いて、歯ブラシ保持器10を内部筺体26に容易に接続できる。歯ブラシ保持器10上の第2のマーカー15と内部筺体26上のマーカー17は、同一の垂直軸に沿って並設されなければならない。3つのマーカー15、16および17と歯ブラシ毛部8は、同一の垂直軸に沿って並設されなければならない。あるいは、第1のマーカー16と歯ブラシ毛部8は、第2のマーカー15と内部筺体のマーカー17とは異なる垂直軸に沿って並設されてもよい。
【0044】
加速度計27からの情報は、指向性引力を判定するように構成されたプロセッサー29に送られる。この情報を用いて、空間における歯ブラシ4の向きを判定できる。次に、プロセッサー29は、加速度計27の初期の向きと、従ってさらに歯ブラシ4の初期の向きとを、歯ブラシ4と加速度計27の間の向きの関係に基づいて判定できる。重力の初期方向を初期化の値として用い、そこから、加速度計データの変化に基づいて他のすべての向きを判定することができる。
【0045】
ユーザが歯にブラシをかけるためにシステム2を使用する前に、システム2はその特定のユーザ用に較正されるべきである。訓練段階の間に較正を行い、図6を参照して、その手順を説明する。訓練段階の間に、ユーザは、口腔の異なる部位にブラシをかけることを通じて指導が行われるが、歯にブラシをかけている間に取るかもしれないすべての姿勢(例えば、直立や洗面台上の前屈み)、および、異なるブラッシングの速さ(強さ)を含むことを目的とする。
【0046】
この手順を促進させるために、口腔を6つの識別可能領域に区分できる。それらの領域は、左側の歯の前面、右側の歯の前面、下側の歯の上面、上側の歯の下面、上側の歯の内面および下側の歯の内面である。
【0047】
訓練段階の間に、図6のステップS50では、プロセッサー29が加速度計27から生のバイトデータを受信し、そのデータは、x方向、y方向およびz方向の浮動小数点数に変換される。データは、地球の重力gの倍数で記録される。上記生の加速度計データから、各軸方向の加速度情報の2つの成分である重力と直線加速度を算出する。重力を用いて、歯ブラシ4の向きを判定し、直線加速度を用いて、ブラッシングの傾向を判定できる。
【0048】
上記重力成分を加速度計27から分離するが、S52において、以下の式を用いて、上記加速度計データの低域フィルタリングを行うことによって得られるデータである。
gx,new = coeff.gx,old + (1-coeff)accelx, (1)
ここで、gx,newは新たに算出する重力のx成分、gx,oldは重力のx成分の以前の値、accelxはx方向の加速度の現在値、およびcoeffはフィルター係数である。
【0049】
上記フィルター係数は、以下の式により得られる。
coeff = T/(T+Δt’) (2)
ここで、Tはフィルター時定数、およびΔtはサンプル更新時間である。フィルター時定数0.4秒とサンプル更新0.1秒を用いて、フィルター係数0.8が得られる。
y方向およびz方向の重力成分も同様に算出できる。
【0050】
上記直線加速度成分は、S54において、上記加速度データから上記重力成分を減算することにより、以下のように算出される。
linearx = accelx − gx,new, (3)
ここで、linearxは直線加速度のx成分である。y方向およびz方向の直線加速度も同様に算出できる。
【0051】
上記重力と直線加速度のコンピュータ算出に加えて、S56において、x方向、y方向およびz方向のそれぞれにおける直線加速度の連続したサンプル間の差の二乗を算出する。さらに、S58において、x方向、y方向およびz方向の直線加速度の連続したサンプル間の差の二乗の合計を算出することにより、ユーザがブラシをかけているか否かを判定する。
【0052】
ステップS60とS62をそれぞれ通じて、直線加速度の変化の平均と重力の変化の平均を各方向において算出する。
【0053】
データ収集が一度完了したら、ステップS64において、口腔の各領域および加速度の各成分に対する最大および最小値を判定する。口腔の特定の部位(例えば、左側の歯の前面)に対して、上記アルゴリズムが12個の制約のすべてを通じて繰り返され、当該重力成分と直線加速度成分はそれぞれ、3つのx、yおよびzの各方向で、それと結びつけられた最大および最小値を有する。上記訓練の手順を通じて、ステップS66において、各方向における直線加速度の変化の平均および重力の変化の平均の最大限と最小限を格納し、閾値として用いることで、さらに後に歯ブラシ4の向きを予測できるようになる。
【0054】
較正が一度完了したら、ユーザは自由に歯にブラシをかけることができ、プロセッサー29が、口腔のどの領域にブラシがかけられているかを歯ブラシ4の向きに基づいて判定する。ユーザが歯にブラシをかけると、加速度計27からのデータが処理され、その結果得られたデータと口腔の各領域に対して訓練段階の間に得られた閾値とが比較される。その重力成分と直線加速度成分の両方が口腔の特定領域の最大および最小値の範囲内である場合には、プロセッサー29は、歯ブラシ4がその位置に対応する向きになっていると判定する。プロセッサー29はその後、ブラシがかけられている口腔の領域を出力する。
【0055】
ユーザが上記訓練アルゴリズムを一度も使用したことがない場合には、上記結果得られたデータと閾値のサンプル・データセットを比較する。そのユーザは、上記訓練段階を完了することにより、あらかじめ格納されたサンプル・データセットの閾値をいつでも上書きすることができる。
【0056】
図3aおよび図3bはそれぞれ、左側42および右側40にある歯の前面に対応する歯ブラシ4の第1の向き41および第2の向き33を示す。ユーザの口腔34に対して、対称面36を画定することができる。この面36は口腔34を半分に区分し、それらの半分はそれぞれ、口腔34の左側と右側を表す。
【0057】
右利きのユーザが(図3bに示すように)口腔34の左側の歯にブラシをかけるとき、歯ブラシ4の先端6が対称面36の左側に配置されるように歯ブラシ4を向ける傾向があり、歯ブラシ4の毛部8が口腔34の左側の歯42の前面に接触している。この姿勢で、歯ブラシ4の長手軸38は、対称面36に対して第1の角度θ1をなすことになる。
【0058】
上記ユーザが(図3aに示すように)口腔34の右側の歯にブラシをかけるために、右手を180°近くの角度に亘って回転させて歯ブラシ4の向きをひっくり返す傾向がある。それにより、歯ブラシ4の先端6が対称面36の右側に配置されている状態になり、毛部8が右側の歯40の前面に接触している。この動作によって、加速度計27は概して、対称面36を通過するように回転することになる。ここで、歯ブラシ4の長手軸38は、対称面36に対して第2の角度θ2をなすことになる。
【0059】
異なるユーザは、歯ブラシ4を互いに少し相違して保持する傾向がある。それ故、それぞれの向きごとに、広範囲にわたる多様なブラッシング様式があることになる。θ1とθ2の間の差は、異なるユーザごとに相違する。いくつかのユーザは、第1の向き41および第2の向き33の各向きで、当該ユーザの口腔34に対して歯ブラシ4を略垂直に保持する。この例では、θ1とθ2が約180°の角度で離れていることになる。
【0060】
図4aおよび図4bはそれぞれ、下側の歯46の上面および上側の歯44の下面に対応する歯ブラシ4の第3の向き43および第4の向き45を示す。
【0061】
ユーザが(図4aに示すように)下側の歯46の上面にブラシをかけるとき、歯ブラシ4の毛部8が下側の歯46の上面に接触しているように歯ブラシ4を向けて、毛部8が対称面36に沿った方向「A」に対し、概して平行になる。この向きは、下側の歯46の上面に関して、口腔34の左側と右側で略同じである。
【0062】
ユーザが(図4bに示すように)上側の歯44の下面にブラシをかけるために、その手を180°近くの角度に亘って回転させて歯ブラシ4の向きをひっくり返す傾向がある。それにより、毛部8が上側の歯44の下面に接触して、対称面36に沿った方向「B」に対し、概して平行になる。この動作によって、加速度計27は概して、歯ブラシ4の長手軸38を中心にして回転することになる。この向きは、上側の歯44の下面に関して、口腔34の左側と右側で略同じである。
【0063】
第3の向き43と第4の向き45の各向きでは、ユーザは、毛部8がユーザの口腔34に対する垂直軸に沿って並ぶように歯ブラシ4を保持することになる。従って、方向「A」と「B」が約180°の角度で離れていることになる。
【0064】
図5aおよび図5bはそれぞれ、上側の歯50の内面および下側の歯52の内面に対応する歯ブラシ4の第5の向き47および第6の向き49を示す。ユーザの口腔34に対して、水平面48を画定できる。この面48は口腔34を半分に区分し、それらの半分はそれぞれ、口腔34の上側と上側を表す。
【0065】
ユーザが(図5aに示すように)口腔34の上側の歯50の内側にブラシをかけるとき、歯ブラシ4の先端6が水平面48の上側に配置されるように歯ブラシ4を向ける傾向があり、歯ブラシ4の毛部8が口腔34の上側の歯50の内面に接触している。この姿勢で、歯ブラシ4の長手軸38は、水平面48に対して角度θ3をなすことになる。
【0066】
ユーザが(図5bに示すように)口腔34の下側の歯52の内面にブラシをかけるために、その手を回転させて歯ブラシ4の向きをひっくり返す傾向がある。それにより、歯ブラシ4の先端6が水平面48の下側に配置されている状態になり、毛部8が下側の歯52の内面に接触している。この動作によって、加速度計27は概して、水平面48を通過するように回転することになる。ここで、歯ブラシ4の長手軸38は、水平面48に対して角度θ4をなすことになる。
【0067】
前述したように、異なるユーザは、歯ブラシ4を互いに少し相違して保持する傾向があるため、広範囲にわたる多様なブラッシング様式が起こり得る。θ3とθ4の間の差は、異なるユーザごとに相違する。いくつかのユーザは、第5の向き47および第6の向き49の各向きで、当該ユーザの口腔34に対して歯ブラシ4を略垂直に保持する。この例では、θ3とθ4が約180°の角度で離れていることになる。
【0068】
プロセッサー29による歯ブラシの向きの判定は、移動式デバイス1におけるゲームを制御するための入力として利用可能であり、歯ブラシ4がゲーム制御器になる。これにより、ユーザには、歯ブラシ4の向きについて、移動式デバイス1の表示画面3を介して映像のフィードバックが提供される。
【0069】
移動式デバイス1上で作動しているソフトウェア・アプリケーションは、特定のブラッシング動作をゲーム内の対象9の動作に変換するように構成される。そのゲームの対象9の位置と、空間における歯ブラシ4の向きとが、1対1の対応関係になっている。歯ブラシ4の向きの変化が、当該ゲームにおける対象9の位置の変化に直接に対応する。
【0070】
上記ゲームにおける対象9を用いて、レベルのナビゲーションおよび報酬の収集を行う。上記ソフトウェア・アプリケーションにより、ゲームにおける成績の測定および記録を行い、その結果をブラッシング技術に関連させる。上記ゲームによって、ユーザは、以前の得点を上回るように奨励されることにより、整然と歯にブラシをかけ、かつ、口腔34のすべての領域に均等に注意を払ってブラシをかけるようになる。
【0071】
図8a、図8bは、上記ソフトウェア・アプリケーションの作動方式の概要を表すフローチャートである。
【0072】
ユーザは、移動式・携帯式デバイス1上で上記ソフトウェア・アプリケーションを開始する(S10)。次に、そのソフトウェア・アプリケーションにより、ユーザが自身のキャラクターを選択できる(S11)。この同じソフトウェア・アプリケーションを用いて、異なるユーザのプロフィールを格納してもよい。
【0073】
プロフィールを一度選択したら、ユーザには、多様なオプションが提供される。ユーザは、「設定」メニュー(S12)で、上記ゲームの多様な態様を制御するオプションを有する。それらの態様は、ゲームの難易度(S14)、音楽(S15)、およびゲームの継続時間(S13)を含む。ユーザはさらに、当該ユーザのプロフィールから、そのブラッシング履歴およびブラッシングに関する以前の統計の閲覧を行うこともできる(S16)。これらの統計は、限定されることはないが、口腔34のどの領域にブラシをかけているか、各領域にどれほど長くブラシをかけているか、ユーザが各領域にどれほど速くブラシをかけているか、および歯にブラシをかけるのに費やした合計時間を含む。ユーザはさらに、これまでに取得した点数、および、上記同じソフトウェア・アプリケーションを用いた他のユーザによるスコアボード上で、当該ユーザがどこにフィーチャーしているかを確認することもできる(S17)。当該ユーザは、蓄積した点数をアプリケーション格納庫で使用して(S18)、例えば新規のレベルなど、新規のゲームフィーチャーのロックを解除することができる。
【0074】
準備ができたなら、ユーザは、上記ソフトウェア・アプリケーション上でプレーする所望のゲームを選択することができる(S19)。次に、そのユーザは、上記ゲームに向きデータを提供するための上記センサーを含む歯ブラシ保持器10に、歯ブラシ4を接続しなければならない(S20)。歯ブラシ4と歯ブラシ保持器10を一度接続すれば、上記ソフトウェア・アプリケーションは、歯ブラシ保持器10にBluetooth(登録商標) Low Energyのモジュール25を介して接続されることになる(S21)。
【0075】
ユーザが一度「プレー」を押し、かつブラッシングを開始すれば(移動式デバイス1のプロセッサー29がそのように判定すれば)(S22)、上記ゲームのプレーが始まり、タイマーが開始され、このセッションに対する新規の得点のカウントが始まることになる。このゲームにより、ユーザがどのような様式で歯にブラシをかけているかについての情報の記録が開始される(S23)。
【0076】
ユーザが、そのゲーム中にいつでも歯にブラシをかけるのを停止した場合には(S24)、当該ゲームが停止される(S25)。その後、当該ユーザが特定の時間制限内に歯にブラシをかけるのを再開した場合には、そのゲームが再開される(S27)。ユーザがその時間制限内に歯にブラシをかけるのを再開しなかった場合には、当該ゲームが中止される。あるいは、ユーザが自身で、ゲームの終了を選択できる(S26)。一度ゲームを終了したなら、当該セッションに対するブラッシングのデータが記録され、ユーザが後にそれにアクセス可能である。
【0077】
ユーザが歯にブラシをかけている間に、プロセッサー29により、口腔34内の歯ブラシ4の現在位置が出力される。各向きが、口腔34内の異なる位置に対応する。口腔34内の歯ブラシ4の位置が、当該ゲーム内における対象9の位置に変換される。このように、ゲームの制御可能な対象9の位置が、歯ブラシ4の向きに直接に関係する。この映像表示により、ユーザは明確に、ブラシをかけている位置を確認できる。ユーザが第1の向き41から第2の向き33に変えると、ゲームの対象9が第1の位置11から第2の位置13に移動する。従って、ゲームのプレー中にユーザに表示されている画像は、ユーザがブラシをかけている口腔34内の位置に応じて変化する(S30)。ゲームにおける障害物または収集物を、ゲームの特定の位置に方策として設置してもよい。これらの位置が、ユーザの口腔34内の特定の領域、および歯ブラシ4の向きに対応し、そのユーザが特定の位置にブラシをかけるのを抑制または奨励する。このように、このゲームを用いて、ユーザが口腔34の異なる領域にブラシをかけるように指図することができる。
【0078】
ユーザは、口腔34にブラシをより長い時間かけた場合(S31)、口腔34のすべての領域にブラシを十分にかけた場合(S32)および特定のブラッシングの速さを達成した場合(S33)には、ゲームにおける報酬を得る。その報酬により、ユーザは、推奨される時間の間に最適な速さでブラシをかけるように奨励されることにより、良好な口腔の衛生が促進されるように設計されている。
【0079】
ユーザが過度にゆっくりと歯にブラシをかけた場合、もしくはブラシをかけるのを止めた場合には、表示されているゲーム画像が変わり、当該セッションに対する蓄積した得点から点数が減じられることになる。それ故、ユーザは速さを高めるように奨励される(S34)。同様に、ユーザが口腔34の1つの領域にブラシをかけることのみに集中している場合には、表示画像が変わって、ブラシをかけている口腔34内の位置を当該ユーザが変えるように奨励することになる(S35)。
【0080】
上記タイマーがそのカウントダウンを一度完了したら、このゲームは終了し、ユーザはその得点、および歯にブラシをどのようにかけていたかに関する情報を閲覧できる(S40)。次に、当該セッションに対するブラッシングのデータが記録され、そのユーザは後に、それにアクセスして利用できる(S41)。
【0081】
ユーザは歯にブラシをかけていないときには、その歯ブラシの向き判定システム2の状況に関する情報を得ることを所望できる。関心を持ち得る情報は、歯ブラシの向き判定システム2のスイッチがオンまたはオフになっているか、そのバッテリーの寿命、および歯ブラシの向き判定システム2が上記ソフトウェア・アプリケーションに接続されているかを含む。
【0082】
LED光源システム31は、歯ブラシ保持器10の内部筺体26内に配置されている。LED光源システム31は、少なくとも1つのカラー光(図示略)と少なくとも1つの白色光(図示略)を含む。内部筺体26の第2の下部13は、光が透過できる材料から構成されており、ユーザは、そのLEDが発する如何なる光でも見ることができる。LEDが発する光によって、歯ブラシ保持器10の外部が光った状態になる。歯ブラシの向き判定システム2の状況に関するフィードバックを受信するために、ユーザは、LED光源システム31の中にプログラムされた音声による指令または一連の物理的方法による指令のいずれかを使用することができる。プロセッサー29により、ユーザからの入力が処理され、当該LEDが、歯ブラシの向き判定システム2の状況に関する情報を明滅、律動、閃光などの手段を介して、および異なる色を用いて通信する。物理的方法による指令は、歯ブラシ保持器10の基部12の表面上の軽打を含み、その軽打はプログラムされた指示セットに対応する。
【0083】
図9は、プログラム可能ないくつかの指令と、それに対応するLEDが発する信号を示す。歯ブラシの向き判定システム2では、基部12を所定の時間制限内に2回軽打すれば、そのスイッチがオンまたはオフされる。判定システム2のスイッチがオンになれば、当該LEDの輝度がオフからオンに徐々に高くなる(S73)。また、判定システム2のスイッチがオフになれば、当該LEDがオンからオフに徐々に消えていく(S74)。ユーザが基部12の表面上を1回軽打すれば、そのユーザに対して、歯ブラシの向き判定システム2の状況に関する情報が通信される。システム2のスイッチが既にオンになっているなら、当該LEDは3回の明滅を発する(S70)。また、システム2のスイッチがオフであるなら、光は発せられない(S71)。システム2が上記ソフトウェア・アプリケーションに接続され、ブラッシングに使用する準備ができたなら、所定長さの時間、光の律動が発せられる(S72)。また、システム2が当該ソフトウェア・アプリケーションをロードしている最中、もしくは、それに接続している過程にあるなら、所定長さの時間、間断のない光が表示される(S75)。ユーザが向き判定システム2の名前を呼びかけたなら、当該LEDは、使用する準備ができていることを指し示すために、3回の閃光を発する(S76)。
【0084】
LEDが発する光の色は、バッテリーの充電量に依存する。そのバッテリーが満充電であるなら、当該LEDは白色光を発する。当該バッテリーの充電状態が一度、十分に低レベルに達したなら、当該LEDはカラー光を発し、そのバッテリーの充電が必要であることをユーザに報せる。
図1
図1a
図2
図2a
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図9