(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782776
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】3D形状モデリングにおける人間の頭の方向を明確に決定する方法と装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20201102BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
A61B5/107 110
A61C19/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-523391(P2018-523391)
(86)(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公表番号】特表2018-530408(P2018-530408A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】US2016043807
(87)【国際公開番号】WO2017019582
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】14/808,880
(32)【優先日】2015年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512159720
【氏名又は名称】ダビドフ,アルバート
【氏名又は名称原語表記】DAVYDOV,Albert
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ダビドフ,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ウソフ,ピーター
【審査官】
福田 千尋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−357(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0331721(US,A1)
【文献】
特表2003−505985(JP,A)
【文献】
Leonardo Koerich de Paula et al.,Digital live-tracking 3-dimensional minisensors for recordeing head orientation during image acquision,American journal of Orthodonitics and Dentofacial Orthopedics,2012年 1月31日,141(1),pp.116-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭に位置するヘッドバンド、
前記ヘッドバンドに固定される1対のテンプル、及び、
前記テンプルに回転可能に連結され、少なくとも2台のカメラを備えた前方ハウジングを含み、
患者の顔面に置かれて患者の頭の両側の眼窩点と耳点を連結する2個の人類学的基準線の各々を、各カメラの視野内でピックアップするように前記カメラが前方ハウジングの内部に位置し、
前記2個の人類学的基準線が並んで整列された時、前記2個の人類学的基準線からなる平面に一致する測定面に置かれる3Dコンパスを前記前方ハウジングがさらに含み、前記3Dコンパスはコンパスそのものが前記測定面に位置した時の患者の頭の3D方向を定量的に測定することを特徴とする人間の頭の3D方向決定装置。
【請求項2】
前記3Dコンパスは、少なくとも一つの3軸磁気センサ、少なくとも一つの3軸加速度計、前記3軸磁気センサと加速度計に連結されて信号を受けるマイクロコントローラ、3Dコンパスと信号をやりとりするトランシーバーモジュール、及び、電源を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人間の頭の3D方向決定装置。
【請求項3】
前記カメラの各々が、ギアに連結された鋸歯が取り付けられたディスクに固定され、前記ギアを回してディスクと該カメラの角度を調節することを特徴でする、請求項1に記載の人間の頭の3D方向決定装置。
【請求項4】
前記カメラの各々が可動ベースに連結され、可動ベースが動けば、該カメラの水平位置が変わることを特徴とする、請求項1に記載の人間の頭の3D方向決定装置。
【請求項5】
前記可動ベースにウォーム結合で連結されて可動ベースを漸進的な動きで動かすスクリューヘッドをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の人間の頭の3D方向決定装置。
【請求項6】
患者の顔面の側面の眼窩点と耳点を連結する人類学的基準線を患者の顔面の左右に設定するステップ、
1対のテンプルと該テンプルに回転可能に連結された1個の前方ハウジングを含み、前記前方ハウジングが少なくとも2個のカメラと1個の3Dコンパスを備え、これらのカメラとコンパスがいずれも前方ハウジングの内部で動くようになっているヘッドギアを提供するステップ、
前記ヘッドギアを患者の頭に位置させるステップ、
前記カメラの各々の視野内に前記人類学的基準線のうち一つがピックアップされるようにカメラを位置させるステップ、
前記人類学的基準線が並んで整列された時、前記2個のカメラの視野を用いて人類学的基準線からなる平面として頭蓋骨基平面を形成するステップ、
前記頭蓋骨基平面に一致する測定面に3Dコンパスを位置させるステップ、及び、
前記3Dコンパスが頭蓋骨基平面に一致する測定面に位置した時、3Dコンパスを用いて患者の頭の3D方向を定量的に測定するステップを含むことを特徴とする人間の頭の3D方向決定方法。
【請求項7】
前記3Dコンパスが頭蓋骨基平面に一致する測定面に位置した時、患者の頭の測定された3D方向を患者の頭の中立位置に記録するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の人間の頭の3D方向決定方法。
【請求項8】
患者が頭を動かした後、3Dコンパスを用いて患者の頭の新しい3D方向を定量的に測定するステップ、及び
患者の頭の前記新しい3D方向を中立位置と定量的に比較するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の人間の頭の3D方向決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D形状モデリングにおける人間の頭の方向を明確に決定する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3D形状モデリングにおける頭の方向の測定は、種々のジャイロスコープ、加速度計及び電子コンパスによって決定された測定値の組み合わせに基づく。例えば、あるシステムは、ヘッドギアに設けられた3軸加速度計と共振ジャイロスコープの測定値に基づく。
【0003】
現在使用中の他の方法と測定装置は、デュアル傾斜計、バブルゴニオメーター(bubble goniometer)、放射線写真、コンパス技術、ビジュアル測定、超音波、形状法、デジタル光電子機器、パッシブマーカーと赤外線カメラを用いた運動学的分析、患者の頭に付着されたセンサやMRIを用いて頭の方向を決定する。しかし、これらのうちのどの方法も人間の頭の中立位置を3次元に定義するのに十分な正確さを持つことができない。
【0004】
このように人間の頭の3D方向の中立位置の正確な定義の不足は現在の3D形状モデリングにおいて深刻な問題となり、特に動く間に人間の頭の方向を測定する時に問題となる。例えば、歯科分野では、既存の方法によっては3Dモデルで患者を測定する時に深刻なエラーと歪みが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正確で、信頼性が高く、ユーザーフレンドリーで、安価であり、携帯が可能なヘッドモーションと方向の測定ができる装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、3D形状モデリングにおける人間の頭の不明確な方向を避け、且つ、現在紹介された方法を利用してセンサの初期設置を正しくするようにするヘッドギア装置を提供することにある。
【0007】
本発明のまた他の目的は、患者の頚椎の様々な移動範囲を測定できるヘッドギア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、人間の頭の3次元定位を決定する装置に関する。この装置は、患者の頭に位置するヘッドバンド、ヘッドバンドに固定される1対のテンプル、及びテンプルに回転可能に連結された前方ハウジングを含む。前方ハウジングは少なくとも2台のカメラを有し、各々のカメラは患者の頭の両側の眼窩点と耳点を連結する2個の人類学的基準線の各々を各々のカメラの視野内でピックアップするようにカメラが前方ハウジングの内部に位置する。また、前方ハウジングは、頭蓋骨基平面に一致する測定面に位置して患者の頭の3D方向を定量的に測定する3Dコンパスを含む。
【0009】
本発明は、人間の頭の3D方向を決定する方法にも関連する。この方法は、患者の顔面の側面の眼窩点と耳点を連結する人類学的基準線を患者の顔面の左右に設定するステップを含む。1対のテンプルと該テンプルに回転可能に連結された1個の前方ハウジングとを備えたヘッドギアにおいて、前方ハウジングが少なくとも2個のカメラと1個の3Dコンパスを備え、これらのカメラとコンパスはいずれも前方ハウジングの内部で動くようになっている。カメラの各々の視野内に人類学的基準線のうち一つがピックアップされるようにカメラの各々が調整される。人類学的基準線が並んで整列された時、このような2個のカメラの視野を用いて人類学的基準線からなる平面として頭蓋骨基平面を形成する。次に、頭蓋骨基平面に一致する測定面に3Dコンパスを位置させ、3Dコンパスが頭蓋骨基平面に一致する測定面に位置した時、3Dコンパスを用いて患者の頭の3D方向を定量的に測定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】人類学的基準線を示す頭蓋骨の概略図である。
【
図2】本発明に適用される形状原理の概略図である。
【
図3】本発明により3D形状モデリングにおける人間の頭の方向を明確に決定する装置の概略図である。
【
図4】3Dコンパスの電子要素のブロック図である。
【
図8】ヘッドギアのカメラ設置部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図示されたように、本発明の方法と装置は、人間の頭の3D方向の正しい中立位置を決定するのに用いられる。このように決定された中立位置は、人間の頭の3D方向の明白な定義、および、動作をする間の頭の方向に用いられることができる。
【0012】
人間の頭の3D方向の正しい中立位置を決定する装置の要素が
図2〜3に示されている。ヘッドギア100のプラスチックフレーム16は、2個のテンプル10、11及び1個の前方ハウジング18を有する。電子ハードウェア9を備えた少なくとも一つの3Dコンパス1が前方ハウジング18の内部に固定される。3Dコンパス1は、磁気歪みの較正と計算のために集積されたコンパスモジュールであり、3軸磁気抵抗センサと3軸マイクロ電気機械システム加速度計、アナログデジタルサポート回路を含む。このようなコンパスセットは磁場を測定するためのものである。コンパスについては
図4をもってさらに詳しく説明する。
【0013】
ヘッドギア100は、患者の頭に位置する調節ヘッドバンド14をさらに含む。フレーム16は、ヘッドバンド両側に位置したクリップ15とピボット8を介してヘッドバンド14に固定され、ヘッドバンドに対して摩擦しつつピボット8において旋回するようになっている。両側クリップ15とピボット8は様々な頭の大きさに合わせて様々な大きさとして提供されることができる。
【0014】
前方ハウジング18に少なくとも1対の左右カメラ2、3が取り付けられている。ヘッドギア100全体を上下に動かしながら左右カメラを人類学的基準線に合わせることができる。前方ハウジング18にカメラを固定する回転取っ手12、13を用いて各カメラの水平位置を調整し固定することができる。回転取っ手12、13は、スロット19に沿って動かすことができる(
図5参照)。したがって、各カメラの水平位置を調整しようとすれば、ユーザーが回転取っ手をカメラから分離せずに緩めてカメラと共に所望の位置に動かした後、取っ手を締め付けてその位置にカメラを固定すれば良い。また、前方ハウジング全体が前方取っ手7でテンプル10、11に付着されているため、前方ハウジング18をカメラ2、3及び3Dコンパス1と共にテンプルに対して動かすことができ、この時、テンプルの位置は変わらない。
【0015】
二つの他例が
図5〜6に示されている。
図5のヘッドギアは、テンプル10、11の端部を連結する第1アーチ部32と、ピボット8部位の両側テンプルに連結されてヘッドバンド14の一部分をなす第2アーチ部34とを含む。
図5〜6の実施形態のヘッドバンド14は1対の支持部38を含み、これらの支持部は第2アーチ部34を過ぎて伸び、ヘッドバンドを第2アーチ部に連結し支持する。
【0016】
図6の実施形態においては、第1アーチ部32が患者の頭上に位置し、テンプル10、11が短くなる。ヘッドバンド14はクリップ33により患者の頭に固定される。フレーム16全体がピボット8を中心にピボットされ、ヘッドバンドと患者の頭に対してフレームの角度を調節することができる。本実施形態は、患者の便宜性と技術者の接近性を改善する。また、カメラが前方ハウジング18の内部に他の方式で固定される。カメラを固定するメカニズムは
図7〜8をもって説明する。ギア25に噛合する鋸歯23が取り付けられたディスク21にカメラが固定され、ユーザーはギア25を回してディスクの角度を調節してカメラを調整することができる。ディスクは可動ベース27に設けられる。軸31が取り付けられたスクリュー29が可動ベース27とウォーム結合をして、スクリューヘッドを回せば、可動ベースが軸31に沿って水平に動く。
図6に示すように、各々のスクリュー29のスクリューヘッドの一部分は、前方ハウジング18の上面上に突出する。したがって、カメラの水平位置を調整しようとすれば、スクリューヘッドを回して該当ベース27を所望の方向に動かせば良い。本実施形態においては、ユーザーがカメラの水平位置を非常に正確に調整することができるため、測定正確性が改善される。
【0017】
図4によれば、ハードウェア9は、複数のセンサである3軸磁気センサ20と3軸加速度計22、これらのセンサ20、22に連結されて信号を受けるマイクロコントローラ24、ハードウェアの全ての素子を作動させるためのバッテリーのような電源26、及びRFトランシーバーモジュール28を含む。
【0018】
マイクロコントローラ24は、センサ20、22からの信号の較正と方向計算をするためのものであり、地球磁場の方向と大きさを測定するように設計された非常に低い交差軸干渉の固体状態の構造を提供する。電源26は全ての素子に動力を供給する。センサは、検知軸方向の全ての入射磁場を差動電圧出力に変換する。
図4のRFトランシーバーモジュール28としては、Bluetooth(登録商標) Core Specification v4.1に合うシングルモードBluetooth(登録商標) Smartモジュールとしての低電力2.4GHz Bluetooth(登録商標) 4.0(BLE) SoC(System−on− Chip)が好ましい。このモジュールは、RF、ベースバンドコントローラ、Bluetooth(登録商標) Generic Attribute Profileを実現するコマンドAPIプロセッサを備える。
【0019】
電子ハードウェアを備えた3Dコンパスにより生成されたデータは処理されたデータであって、後処理及び/又はモニタースクリーンにおけるディスプレイのために、好ましくは、無線で任意の計算機器に転送されることができる。3Dコンパスは、エネルギー効率的なデータ転送プロトコルを用いてPCソフトウェアに無線で連結され、誤作動を制限することが好ましい。また、PCソフトウェアは、ユーザーに対する命令をディスプレイして適切な措置を取り、ユーザーのエラーを防止することができる。
【0020】
3Dコンパスは、矢状面(sagittal plane)に直角な水平面に設けられ、センサの水平面が頭蓋骨基平面に平行する時まで回転する。頭蓋骨基平面は、頭蓋骨の左右側の人類学的基準線を通過する平面である。
図1に示すように、人類学的基準線は、眼球の下縁(眼窩点)から耳点(外耳道の中央部)を通して後頭骨の中心まで後に伸びる。左右側の人類学的基準線は、実際には、カメラに撮られる患者の顔面で描かれるが、当業者であれば、顔面に光を透過する等の他の方法によって眼窩点と耳点を連結する線を描くことができる。
【0021】
以下、本発明の原理について説明する。所定のアルゴリズムによって3Dコンパス1が人間の頭の矢状面に直角な水平面に置かれ、水平面が頭蓋骨基平面6に一致する時までコンパスが回転する。コンパス1の正しい位置は、左右側カメラ2、3によって調節される。
図2に示すように、各々のカメラは頭蓋骨基平面6に直角に置かれ、カメラの視野5,4内で患者の顔面に置かれた左右側の人類学的基準線をピックアップする。次に、カメラが信号をデジタル化してビデオモニター(図示せず)に転送する。2個の人類学的基準線のピックアップされた画像が平行に整列された時に2個の基準線を通過する平面が頭蓋骨基平面6である。
【0022】
頭蓋骨の人類学的基準線のモニター画像がX軸に並んで同一線上にあれば、カメラ2、3はいずれも正しくセッティングされたものである。コンパス1は、カメラの(垂直)Y軸に直角な平面である頭蓋骨基平面6と同じ平面にある。このような平面を測定面とし、測定面におけるコンパス1の位置を患者の3Dの頭の方向の正しい中立位置に記録する。
【0023】
前述したように、本発明は、3Dの人間の頭の方向の正しい中立位置を決定するモデルを提供する。3Dコンパス1が頭蓋骨基平面6に沿って位置する時、コンパスセンサからの信号がコンピュータ・システムに転送されて中立位置を記録する。その後、患者の頭のあらゆる動きがこのように記録された中立位置に対して記録し測定される。したがって、患者の頭の他の全ての3D動作と方向が客観的で中立的で且つ独立的な因子に対して測定され、3Dモデリングを進めることができる。また、中立位置が決定されれば、センサを他の身体部位に置き、このような身体部位の位置と因子を中立位置(すなわち、人類学的基準線)に対して正確に測定することができる。例えば、患者の頚椎に追加センサを配置し、このようなセンサの位置を中立位置に対して記録すれば、患者の頚椎の様々な運動範囲を測定することができる。実験によれば、本発明の方法とシステムを用いてユーザーが0.5°程度の正確度で測定ができる。
【0024】
以上で説明した方法に基づいた正確な3Dモデリングは下記の分野に特に有利である。
【0025】
歯科矯正、歯科補綴、顎顔面手術、老人性疾患者のロボットケア、ロボット手術/治療の補助、ロボット手術、一般放射線学、放射線腫瘍学、物理療法、リハビリ医学、整形外科、おもちゃ、ビデオゲーム、宇宙空間訓練システム、災難(車事故等)に備えた模擬訓練、人体シミュレーション、人体LPS(Local Position System)、高精密軍用ロボットシステム、高精密ヘッド基盤照準システム、歯科におけるTMJ計量分析と矯正、睡眠無呼吸症の治療。