【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 干渉反応抑制効果に対する亜硫酸塩濃度の影響
亜硫酸ナトリウム添加による干渉反応の抑制に対する亜硫酸塩濃度の影響を評価した。また、亜硫酸塩の酸化を促進する条件(試薬容器に半分充填し4℃で3週間振とう)で保存して安定性を評価した。
【0046】
(1)試薬
第1試薬として、0mM、50mM、100mM、250mM、350mM、500mMまたは600mMの亜硫酸ナトリウムを含む50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を調製した。また、調製した第1試薬を試薬容器に半分充填し、4℃で3週間振とうして、亜硫酸塩の空気中の酸素による酸化を促進させた。
また、第2試薬として抗KL−6抗体担持ポリスチレンラテックス液を含む50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を調製した。
【0047】
上記の抗KL−6担持ラテックス液は、公知の方法により調製した。すなわち、抗KL−6抗体とポリスチレンラテックスを混合して、ポリスチレンラテックス表面に抗KL−6抗体を担持することにより調製した。
【0048】
(2)測定試料
プール血清に干渉チェックRFプラス(シスメックス株式会社)をリウマトイド因子(RF)濃度が、0、100、200、300、400、500または1000IU/mLとなるように添加してRF試料を調製した。
【0049】
(3)評価方法
前記RF試料2.0μLに第1試薬120μLを混合し37℃で5分間インキュベーションした後、この混合液に第2試薬を40μL混合し37℃で反応させ、第2試薬混合後約5分間の660nmの吸光度変化を測定した。なお、一連の測定は日立7180形自動分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて行った。
KL−6の濃度を定量するため、KL−6の標準物質を測定して得られた検量線から、血清検体中のKL−6濃度を算出した。調製直後の結果を表1に、亜硫酸塩の酸化を促進させた場合の結果を表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1より、亜硫酸塩濃度50mM以上でRFによる干渉反応の抑制効果がみられ、亜硫酸塩濃度50mMにおいても、RFによる干渉反応を亜硫酸塩無添加時(0mM)の約1/2に抑制できることがわかった。また、干渉反応の抑制効果は、亜硫酸塩濃度に依存して向上し、亜硫酸塩濃度250mMから500mMで抑制効果は最大となり、亜硫酸塩濃度600mMでは低下することがわかった。亜硫酸塩濃度は50mM以上が好ましく、100mMから600mMが更に好ましく、250〜500mMが最も好ましい。
【0053】
また、表1と表2より、亜硫酸塩濃度が50mMの場合には、亜硫酸塩の酸化により干渉反応の抑制効果が低下している。干渉反応の抑制効果に対する亜硫酸塩の酸化の影響は、亜硫酸塩濃度に依存して軽減され、亜硫酸塩濃度250mMから500mMで最も影響が小さくなり安定性が向上したが、亜硫酸濃度が600mMの場合には、亜硫酸塩の酸化により干渉反応の抑制効果が低下することがわかった。
【0054】
実施例2 亜硫酸塩の干渉反応の抑制に対するpHの影響
亜硫酸ナトリウムを250mMとして、干渉物質の干渉反応の抑制に対するpHの影響を評価した。
【0055】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウムを含む、50mM PIPES緩衝液(pH6.4または6.8)または50mM HEPES緩衝液(pH7.4、7.8または8.2)を調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
プール血清に干渉チェックRFプラス(シスメックス株式会社)をリウマトイド因子濃度が、0、100、200、300、400、または500IU/mLとなるように添加してRF試料を調製したRF試料に加え、正常検体(異好性抗体およびRF陰性のヒト血清試料)および異常検体(異好性抗体およびRF陽性のヒト血清試料)を測定試料とした。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。RF試料の結果を表3に、ヒト血清試料の結果を表4に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表3より明らかなように、亜硫酸塩によるRFの干渉反応の抑制効果は、pH7.8以上では高pHほど顕著に低下し、測定値の正誤差が拡大する。しかし、pH7.4以下での亜硫酸塩によるRFの干渉反応の抑制効果には大きな差異は見られない。
【0059】
また、表4より、正常検体では亜硫酸塩による干渉反応の抑制に対するpHの影響は、ほとんど見られない。これに対し、干渉物質が存在する異常検体では、高pHほど亜硫酸塩の干渉反応の抑制効果が顕著に低下し測定値が高値化したが、pH6.4および6.8での測定値の変動は小さく、効果的に干渉反応が抑制されていることがわかる。
【0060】
実施例3 ヘモグロビンの影響に対する亜硫酸塩含有試薬のpHの影響
亜硫酸ナトリウムを250mMとして、ヘモグロビン(Hb)の影響、およびリウマトイド因子の干渉反応の抑制に対するpHの影響を評価した。
【0061】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウムを含む50mM PIPES緩衝液(pH6.7)または50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
プール血清に干渉チェックRFプラス(シスメックス株式会社)をリウマトイド因子濃度が、0、100、200、300、400、500または1000IU/mLとなるように添加してRF試料を調製した。また、プール血清に干渉チェックAプラス 溶血ヘモグロビン(シスメックス株式会社)をヘモグロビン濃度が、0、100、200、300、400、500、600、800または1000mg/dLとなるように添加してHb試料を調製した。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5から明らかなように、亜硫酸塩を含有する試薬がpH7.4の場合はRFによる干渉反応が見られるのに対し、pH6.7ではRFによる干渉反応は抑制されている。これに対し、測定値に対するヘモグロビンの影響は、pH7.4では見られないのに対して、pH6.7ではヘモグロビン濃度に依存した正の影響が見られる。
【0064】
実施例4 ヘモグロビンの影響の原因の確認
亜硫酸ナトリウム濃度を250mMとして、ヘモグロビンの吸収スペクトルに対するpHの影響を評価した。
【0065】
(1)試薬
第1試薬は、実施例3と同様である。第2試薬として、実施例1の組成から抗KL−6抗体担持ラテックスを除いたものを調製した。
(2)測定試料
プール血清に干渉チェックAプラス 溶血ヘモグロビン(シスメックス株式会社)をヘモグロビン濃度が500mg/dLになるように添加してHb試料を調製した。
(3)評価方法
Hb試料10μLに第1試薬600μLを添加し、この混合物に第2試薬を添加後、SHIMADZU UV−2600(株式会社島津製作所)にて波長800nmから400nmで吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトル測定終了後、混合液を37℃で加温し、加温開始5分後に波長800nmから400nmで吸収スペクトルを測定し、その後5分おきに波長800nmから400nmで吸収スペクトルを測定した。結果を
図1および
図2に示す。
【0066】
図1から明らかなように、亜硫酸塩を含有する第1試薬のpHが7.4の場合、ヘモグロビンの吸収スペクトルの経時的変化は見られない。これに対して、
図2のように、亜硫酸塩を含有する第1試薬のpHが6.7の場合には、ヘモグロビンの吸収スペクトルが経時的に変化することがわかった。このヘモグロビンの吸収スペクトルの経時的変化が、免疫比濁法やラテックス凝集法等のB/F分離を行わない免疫学的測定方法の測定値に影響を与えるものであり、測定値に対する影響の原因がヘモグロビンであることを示すものである。
【0067】
実施例5 ヘモグロビンの影響に対する還元性物質の効果
亜硫酸ナトリウムを250mM、pHを6.7として、還元性物質のアスコルビン酸ナトリウム(AA)、2−メルカプトエチルアミン(2−MEA)、2−ジメチルアミノエタンチオール(2−DAET)、およびジチオスレイトール(DTT)の効果を評価した。
【0068】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、および10mM還元性物質(DTTは5mM)を含む50mM PIPES緩衝液(pH6.7)を調製した。また、比較例として、還元性物質を添加しないものも調製した。さらに、アスコルビン酸ナトリウムおよび2−メルカプトエチルアミンについては、亜硫酸ナトリウムを除いたものも調製した。
第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
実施例3と同様に調製した。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。結果を表6および表7に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
表6から明らかなように、亜硫酸ナトリウムを含有する第1試薬に、アスコルビン酸ナトリウム、2−メルカプトエチルアミン、2−ジメチルアミノエタンチオールまたはジチオスレイトールを添加しても、比較例と同様にRFによる干渉反応は見らない。これに対して、亜硫酸ナトリウムを含有せず、アスコルビン酸ナトリウムまたは2−メルカプトエチルアミンを単独で用いた場合は、RFによる干渉反応が見られる。
【0072】
表7から明らかなように、比較例がヘモグロビンの影響を顕著に受けるのに対し、アスコルビン酸ナトリウム、2−メルカプトエチルアミン、2−ジメチルアミノエタンチオールまたはジチオスレイトールを等の還元性物質を添加することでヘモグロビンの影響が抑制されることがわかった。アスコルビン酸ナトリウム単独ではヘモグロビンの影響が見られるが、同様に単独での添加ではヘモグロビンの影響が見られる亜硫酸塩(比較例)と組み合わせることで、ヘモグロビンの影響を抑制できることは驚くべきことである。
【0073】
実施例6 還元性物質の添加効果の確認
亜硫酸ナトリウム濃度を250mM、pHを6.7として、還元性物質のアスコルビン酸ナトリウム(AA)、2−メルカプトエチルアミン(2−MEA)、2−ジメチルアミノエタンチオール(2−DAET)、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール(2−ME)、システインまたは還元型グルタチオンのヘモグロビンの吸収スペクトルに対する効果を評価した。
【0074】
(試薬)
第1試薬として、実施例5に加え、2−メルカプトエタノール、システインまたは還元型グルタチオンをそれぞれ10mM添加したものも調製した。第2試薬は、実施例4と同様である。
(2)測定試料
実施例4と同様に調製した。
(3)評価方法
実施例4と同様にヘモグロビンの吸収スペクトルの経時変化を測定した。結果を
図3から
図10に示す。
【0075】
図3から
図9から明らかなように、第1試薬に亜硫酸ナトリウムに加えて、アスコルビン酸ナトリウム、2−メルカプトエチルアミン、2−ジメチルアミノエタンチオール、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、システインまたは還元型グルタチオン等の還元性物質を含む場合には、ヘモグロビンの吸収スペクトルは経時的に変化せず安定している。これに対し、アスコルビン酸ナトリウムは亜硫酸ナトリウムを除き単独で添加すると(
図10)、ヘモグロビンの吸収スペクトルの経時的な変化が見られる。
【0076】
実施例7 亜硫酸塩および2−メルカプトエチルアミン添加組成でのpH影響
亜硫酸ナトリウム250mM、2−メルカプトエチルアミン10mMとして、リウマトイド因子の干渉反応やヘモグロビンの影響に対するpHの影響を評価した。
【0077】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、10mM 2−メルカプトエチルアミンを含む50mM PIPES緩衝液(pH6.0、6.2、6.7または6.9)または50mM HEPES緩衝液(pH7.4または8.0)を調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
プール血清に干渉チェックRFプラス(シスメックス株式会社)をリウマトイド因子濃度が、0、250または500IU/mLとなるように添加してRF試料を調製した。また、プール血清に干渉チェックAプラス 溶血ヘモグロビン(シスメックス株式会社)をヘモグロビン濃度が、0、250または500mg/dLとなるように添加してHb試料を調製した。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。結果を表8および表9に示す。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
表8から明らかなように、pH6.0から7.4ではリウマトイド因子の干渉反応が抑制されるのに対し、pH8.0ではRF濃度に依存してリウマトイド因子の干渉反応が見られており、亜硫酸塩の干渉反応の抑制効果が低下している。
【0081】
また、表9から明らかなように、亜硫酸塩に2−メルカプトエチルアミンを添加することで、pH6.0から8.0の範囲でヘモグロビンの影響が抑制されている。亜硫酸塩に2−メルカプトエチルアミンを混合した免疫学的測定試薬のpHは7.4以下が好ましい。
【0082】
実施例8 亜硫酸塩およびアスコルビン酸塩添加組成でのpH影響
亜硫酸ナトリウム250mM、アスコルビン酸ナトリウム10mMとして、リウマトイド因子の干渉反応およびヘモグロビンの影響に対するpHの影響を評価した。また、亜硫酸塩やアスコルビン酸塩の酸化を抑制する条件(試薬容器一杯に充填し4℃で静置)と、酸化を促進する条件(試薬容器に半分充填し4℃で3週間振とう)で保存して、亜硫酸塩やアスコルビン酸塩の酸化の影響を評価した。
【0083】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、10mM アスコルビン酸ナトリウムを含む50mM PIPES緩衝液(pH5.6、6.0、6.2、6.4、6.7または6.9)または50mM HEPES緩衝液(pH7.2または7.4)を調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
プール血清に干渉チェックRFプラス(シスメックス株式会社)をリウマトイド因子濃度が、0、100、200、300、400または500IU/mLとなるように添加してRF試料を調製した。また、プール血清に干渉チェックAプラス 溶血ヘモグロビン(シスメックス株式会社)をヘモグロビン濃度が、0、100、200、300、400または500または500mg/dLとなるように添加してHb試料を調製した。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。結果を表10および表11に示す。
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
表10から明らかなように、pH5.6から7.4のpH範囲では、リウマトイド因子の干渉反応が抑制されるが、pH7.2以上では抑制効果が低下することがわかった。しかし、pH5.6から7.4のpH範囲では亜硫酸塩およびアスコルビン酸塩の酸化を促進する保存条件でも、リウマトイド因子の干渉反応の抑制効果の低下が見られない。
【0087】
また、表11から明らかなように、ヘモグロビンの影響に対するpHの影響はみられず、また、保存条件による差異も見られない。亜硫酸塩にアスコルビン酸塩を混合した免疫学的測定試薬のpHは7.4以下が好ましく、pH5.6から7.4がより好ましく、pH5.6から6.9がさらに好ましい。
【0088】
実施例9 チオール化合物の濃度の影響
亜硫酸ナトリウム250mM、pH6.7として、リウマトイド因子の干渉反応およびヘモグロビンの影響に対する2−メルカプトエチルアミン濃度の影響を評価した。
【0089】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、0(比較例)、10、50、または100mM 2−メルカプトエチルアミンを含む50mM PIPES緩衝液(pH6,7)を調製した。さらに、10mMおよび50mMの2−メルカプトエチルアミンを添加した試薬については、亜硫酸ナトリウムを除いたものも調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
実施例8と同様に調製した。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。結果を表12および表13に示す。
【0090】
【表12】
【0091】
【表13】
【0092】
表12から明らかなように、亜硫酸塩に2−メルカプトエチルアミンを混合した場合は、リウマトイド因子の干渉反応の抑制に対する、2−メルカプトエチルアミンの濃度の影響は見られない。これに対し、亜硫酸塩を添加せず2−メルカプトエチルアミン単独を添加した試薬では、濃度による差がみられ、10mMではリウマトイド因子による干渉反応が見られる。
【0093】
表13から明らかなように、2−メルカプトエチルアミンを混合しない比較例では、ヘモグロビンの影響が見られるのに対し、亜硫酸塩に2−メルカプトエチルアミンを混合した場合は、ヘモグロビンの影響は見られず、2−メルカプトエチルアミンの濃度の影響も見られない。
【0094】
実施例10 アスコルビン酸濃度
亜硫酸ナトリウム250mM、pH6.7として、ヘモグロビンの影響に対するアスコルビン酸濃度の影響を評価した。
【0095】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、1、2、5、10、30、50、100または300mM アスコルビン酸ナトリウムを含む50mM PIPES緩衝液(pH6.7)を調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
実施例8のHb試料と同様に調製した。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定して、ヘモグロビン(Hb)の影響に対するアスコルビン酸ナトリウム濃度の影響を評価した。結果を表14に示す。
【0096】
【表14】
【0097】
表14から明らかなように、アスコルビン酸無添加で見られるヘモグロビンの影響は、アスコルビン酸ナトリウムを1mM以上添加することで完全に抑制することができることがわかった。また、300mM添加した場合でも、正確に測定できることがわかった。
【0098】
実施例11 還元性物質添加濃度の下限の確認
亜硫酸ナトリウム濃度を250mM、pHを6.7として、還元性物質のアスコルビン酸ナトリウム、または2−メルカプトエチルアミン(2−MEA)の添加濃度の下限を、ヘモグロビンの吸収スペクトルの経時変化に対する効果により評価した。
【0099】
(試薬)
アスコルビン酸ナトリウム濃度を0.01mM、または0.1mM、2−メルカプトエチルアミン濃度を0.1mMまたは1.0mMとして、実施例5と同様に第1試薬を調製した。第2試薬は、実施例4と同様である。
(2)測定試料
実施例4と同様に調製した。
(3)評価方法
実施例4と同様にヘモグロビンの吸収スペクトルの経時変化を測定した。結果を
図11から
図14に示す。
【0100】
図13から
図14より、2−メルカプトエチルアミンは1mMの添加で、ヘモグロビンの吸収スペクトルの経時的な変化が抑制されることがわかった。また、
図12より、アスコルビン酸ナトリウム0.1mMの添加では、ヘモグロビンの吸収スペクトルの経時的な変化が若干みられるが、同濃度の2−メルカプトエチルアミンに比べ経時的な変化が小さいことから、2−メルカプトエチルアミンと同様1mMの添加で、ヘモグロビンの吸収スペクトルの経時的な変化が抑制されると考えられる。
【0101】
実施例12 亜硫酸塩およびアスコルビン酸塩を含有する試薬の安定性の評価
亜硫酸ナトリウムおよびアスコルビン酸を添加した第1試薬を4℃で、12ヶ月間保存後に、調製直後の第1試薬を対照に、干渉物質を含むヒト血清検体を測定して、干渉反応の抑制効果の安定性を評価した。
【0102】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、10mM アスコルビン酸ナトリウムを含む50mM PIPES緩衝液(6.7)を調製した。また、前記組成からアスコルビン酸ナトリウムを除いた第1試薬も調製した。第2試薬は、実施例1と同様である。
(2)測定試料
異好性抗体(HARA、HAGA、HAMAまたはHAHA)及び/またはリウマトイド因子を含むヒト血清検体を試料とした。
(3)評価方法
実施例1と同様に試料を測定した。結果を表15に示す。
【0103】
【表15】
【0104】
表15より、4℃で12ヶ月保存した第1試薬での異好性抗体及び/またはリウマトイド因子を含む血清検体の測定値は、調製直後の第1試薬での測定値と同様であり、4℃で12ヶ月保存しても干渉反応の抑制効果の低下は見られず、長期間安定であった。また、アスコルビン酸ナトリウムの有無による安定性の差異も見られないが、アスコルビン酸を含有しない場合は、実施例5等に示したようにヘモグロビンの影響を受ける。
【0105】
実施例13 MMP−3測定試薬での効果
さらに、測定対象物質をMMP−3に変えて本発明の効果を確認した。
【0106】
(1)試薬
第1試薬として、250mM 亜硫酸ナトリウム、10mM アスコルビン酸ナトリウムを含む50mM PIPES緩衝液(pH6.7)を調製した。また、前記組成からアスコルビン酸ナトリウムを除いた第1試薬、および前記アスコルビン酸ナトリウムを除いた第1試薬のPIPES緩衝液(pH6.7)をHEPES緩衝液(pH7.4)としたものも調製した。
第2試薬として、抗MMP−3抗体担持ポリスチレンラテックス液を含む50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を調製した。
【0107】
上記の抗MMP−3担持ラテックス液は、公知の方法により調製した。すなわち、抗MMP−3抗体とポリスチレンラテックスを混合して、ポリスチレンラテックス表面に抗MMP−3抗体を担持することにより調製した。
【0108】
(2)測定試料
異好性抗体またはリウマトイド因子陽性のヒト血清検体、および実施例8と同様にHb試料を調製した。
【0109】
(3)評価方法
試料2.4μLに第1試薬120μLを混合し37℃で5分間インキュベーションした後、この混合液に第2試薬を40μL混合し37℃で反応させ、第2試薬混合後約5分間の主波長570nmおよび副波長800nmの二波長における吸光度変化を測定した。なお、一連の測定は日立7180形自動分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて行った。
MMP−3の濃度を定量するため、MMP−3の標準物質を測定して得られた検量線から、試料中のMMP−3濃度を算出した。結果を表16および表17に示す。
【0110】
【表16】
【0111】
【表17】
【0112】
表16から明らかなように、アスコルビン酸ナトリウムの有無によらず、第1試薬をpH6.7とすることで、干渉物質による干渉反応を抑制できるのに対し、第1試薬をpH7.4すると干渉物質が高濃度で含まれる血清(血清1、血清2、血清12および血清14)では、干渉物質による干渉反応を十分に抑制できず、MMP−3測定値が高値化した。
【0113】
表17から明らかなように、MMP−3においても、第1試薬をpH6.7とし、アスコルビン酸塩を添加しない場合は、ヘモグロビンの影響が見られるのに対し、アスコルビン酸塩の添加によりヘモグロビンの影響を抑制することができる。