(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の油圧ポンプ制御装置によれば、油圧アクチュエータ毎に最適な最大傾転量が設定されているため、各油圧アクチュエータをそれぞれ単独で駆動する単独操作において、油圧アクチュエータ毎に最適な最大駆動速度を得ることができる。
【0006】
しかしながら、複数の油圧アクチュエータを同時に駆動する複合操作においては、これら複数の油圧アクチュエータに対応した各最大傾転量のうちの最大値に応じて油圧ポンプの吐出流量が制御されるため、複数の油圧アクチュエータの要求流量の合計に対して油圧ポンプの吐出流量が不足し、油圧アクチュエータ毎に最適の最大駆動速度を得ることができないという問題が生じ得る。ここで、油圧アクチュエータ毎に設定される最大傾転量を最適な最大傾転量よりも大きくすることにより、複合操作時における油圧ポンプの吐出流量の不足を解消することができると考えられるが、このような設定の下で各油圧アクチュエータをそれぞれ単独で駆動した場合、油圧ポンプの吐出流量が油圧アクチュエータの要求流量に対して過剰となり、エネルギ損失が大きくなるという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の油圧アクチュエータをそれぞれ単独で駆動する単独動作時、および複数の油圧アクチュエータを同時に駆動する複合動作時の両方で、油圧ポンプの吐出流量を抑制しつつ、各油圧アクチュエータをそれぞれ適切な速度で駆動することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプの押しのけ容積を調整するレギュレータと、前記油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する複数の流量制御弁と、前記複数の流量制御弁を操作するための複数の操作装置と、前記複数の操作装置の各操作量を検出する操作量検出装置と、前記操作量検出装置で検出された前記複数の操作装置の各操作量に応じて前記レギュレータを制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記コントローラは、前記複数の操作装置の各操作量に対して第1目標押しのけ容積を算出し、前記複数の操作装置の各操作量に対して、同一操作量に対する第1目標押しのけ容積よりも大きい第2目標押しのけ容積を算出し、前記複数の操作装置の各操作量に対して算出された複数の第1目標押しのけ容積の合計値、および前記複数の操作装置の各操作量に対して算出された複数の第2目標押しのけ容積のうちの最大値のいずれか小さい方を最終目標押しのけ容積として選択し、前記最終目標押しのけ容積に応じて前記レギュレータを制御するものとする。
【0009】
以上のように構成した本発明によれば、各油圧アクチュエータをそれぞれ単独で駆動する単独操作時に、油圧ポンプの押しのけ容積が油圧アクチュエータ毎に設定された押しのけ容積(第1押しのけ容積)と一致するように調整されるため、油圧ポンプの吐出流量を過剰にすることなく、各油圧アクチュエータをそれぞれ適切な速度で駆動することができる。
【0010】
また、複数の油圧アクチュエータを同時に駆動する複合操作時に、油圧ポンプの押しのけ容積が各操作量に対して算出された複数の第1押しのけ容積の合計値、および各操作量に対して算出された複数の第2押しのけ容積の最大値のいずれか小さい方(最終目標押しのけ容積)と一致するように制御されるため、油圧ポンプの吐出流量を過剰にすることなく、複数の油圧アクチュエータをそれぞれ適切な速度で駆動することができる。
【0011】
これにより、各油圧アクチュエータをそれぞれ単独で駆動する単独操作時、および複数の油圧アクチュエータを同時に駆動する複合操作時の両方で、油圧ポンプの吐出流量を抑制しつつ、各油圧アクチュエータをそれぞれ適切な速度で駆動することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各油圧アクチュエータをそれぞれ単独で駆動する単独操作、および複数の油圧アクチュエータを同時に駆動する複合操作の双方において、油圧ポンプの吐出流量を抑制しつつ、各油圧アクチュエータをそれぞれ適切な速度で駆動することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0016】
図1において、油圧ショベル200は、下部走行体201と、上部旋回体202と、フロント作業装置203とを備えている。下部走行体201は左右のクローラ式走行装置204a,204b(片側のみ図示)を有し、左右の走行モータ205a,205b(片側のみ図示)により駆動される。上部旋回体202は下部走行体201上に旋回可能に搭載され、旋回モータ4により旋回駆動される。フロント作業装置203は上部旋回体202の前部に上下方向に回動可能に取り付けられている。上部旋回体202にはキャビン(運転室)206が備えられ、キャビン206内には後述する操作レバー装置7,8(
図2参照)や図示しない走行用の操作ペダル装置等の操作装置が配置されている。
【0017】
フロント作業装置203は、上部旋回体202の前部に上下方向に回動可能に取り付けられたブーム207と、このブーム2の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアーム208と、このアーム208の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたバケット209と、ブーム207を駆動する油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ3と、アーム208を駆動する油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ210と、バケット209を駆動する油圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ211とを備えている。ブーム207はブームシリンダ3の伸縮により上部旋回体202に対して上下方向に回動し、アーム208はアームシリンダ210の伸縮によりブーム207に対して上下、前後方向に回動し、バケット209はバケットシリンダ211の伸縮によりアーム208に対して上下、前後方向に回動する。
【0018】
図2は、
図1に示す油圧ショベル200に搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。なお、説明の簡略化のため、
図2では、ブームシリンダ3および旋回モータ4の駆動に関わる部分のみを示し、その他の油圧アクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0019】
図2において、油圧駆動装置300は、原動機としてのエンジン1と、エンジン1によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ2と、ブームシリンダ3と、旋回モータ4と、ブームシリンダ3の圧油の給排を制御するブーム用流量制御弁5と、旋回モータ4の圧油の給排を制御する旋回用流量制御弁6と、ブームシリンダ3の操作を指示するパイロット式のブーム操作レバー装置7と、旋回モータ4の操作を指示するパイロット式の旋回操作レバー装置8と、油圧ポンプ2が有する押しのけ容積可変部材(斜板)2aの傾転を調整するレギュレータ20と、レギュレータ20を制御するコントローラ13とを備えている。
【0020】
レギュレータ20は、押しのけ容積可変部材(斜板)2aを駆動する傾転制御ピストン21と、コントローラ13から入力される指令電流に応じて傾転制御ピストン21の操作圧を生成する比例電磁弁22とを有する。
【0021】
ブーム用流量制御弁5は、ブーム操作レバー装置7の操作レバー(ブーム操作レバー)7aがブーム上げ側に操作されたときにブーム操作レバー装置7から出力されるパイロット圧(ブーム上げパイロット圧BMU)によって図示右方向に駆動される。これにより、油圧ポンプ2の吐出油がブームシリンダ3のボトム側に供給されると共に、ブームシリンダ3のロッド側から排出される油がタンクに戻され、ブームシリンダ3が伸長動作する。
【0022】
また、ブーム用流量制御弁5は、ブーム操作レバー7aがブーム下げ側に操作されたときにブーム操作レバー装置7から出力されるパイロット圧(ブーム下げパイロット圧BMD)によって図示左方向に駆動される。これにより、油圧ポンプ2の吐出油がブームシリンダ3のロッド側に供給されると共に、ブームシリンダ3のボトム側から排出される油がタンクに戻され、ブームシリンダ3が縮退動作する。
【0023】
旋回用流量制御弁6は、旋回操作レバー装置8の操作レバー(旋回操作レバー)8aが旋回左側に操作されたときに旋回操作レバー装置8から出力されるパイロット圧(旋回左パイロット圧SWL)によって図示右方向に駆動される。これにより、油圧ポンプ2から吐出される圧油が旋回モータ4の図示左側のポートに供給されると共に、旋回モータ4の図示右側のポートから排出される油がタンクに戻され、旋回モータ4が左旋回方向に回転動作する。
【0024】
また、旋回用流量制御弁6は、旋回操作レバー8aが旋回右側に操作されたときに旋回操作レバー装置8から出力されるパイロット圧(旋回右パイロット圧SWR)によって図示左方向に駆動される。これにより、油圧ポンプ2から吐出される圧油が旋回モータ4の図示右側のポートに供給されると共に、旋回モータ4の図示左側のポートから排出される油がタンクに戻され、旋回モータ4が右旋回方向に回転動作する。
【0025】
ブーム操作レバー装置7から出力されるブーム上げパイロット圧BMUをブーム用流量制御弁5の図示左側の操作部に導くパイロットラインには、ブーム上げパイロット圧BMUを検出する圧力センサ9が設けられ、ブーム操作レバー装置7から出力されるブーム下げパイロット圧BMDをブーム用流量制御弁5の図示右側の操作部に導くパイロットラインには、ブーム下げパイロット圧BMDを検出する圧力センサ10が設けられている。
【0026】
旋回操作レバー装置8から出力される旋回左パイロット圧SWLを旋回用流量制御弁6の図示左側の操作部に導くパイロットラインには、旋回左パイロット圧SWLを検出する圧力センサ11が設けられ、旋回操作レバー装置8から出力される旋回右パイロット圧SWRを旋回用流量制御弁6の図示右側の操作部に導くパイロットラインには、旋回右パイロット圧SWRを検出する圧力センサ12が設けられている。
【0027】
コントローラ13は、圧力センサ9,10,11,12の検出信号(パイロット圧)を入力して所定の演算処理を行い、レギュレータ20の比例電磁弁22に指令電流を出力する。
【0028】
図2に示す油圧回路は、オープンセンタ型と呼ばれる方式である。この方式では、流量制御弁5,6のスプールのストロークと各絞りの開口面積の関係を
図3のように設定することで、油圧ポンプ2から油圧アクチュエータ3,4に供給される圧油の流量(以下、メータイン流量という)と、油圧ポンプ2からセンタバイパス流路を介してタンクに戻される圧油の流量(以下、ブリードオフ流量という)をスプールのストローク、すなわち操作レバー7a,8aの操作量(レバー操作量)に応じて制御する。
【0029】
例えば、操作レバー7a,8aが中立位置の場合にはセンタバイパス絞りのみが開いているため、すべての圧油がタンクに戻される。中間位置の場合にはセンタバイパス絞りとメータイン絞りの両方が開いているため、一部の圧油がタンクに戻される一方、残りの圧油が油圧アクチュエータ3,4に供給される。最大位置の場合にはメータイン絞りのみが開いているため,すべての圧油が油圧アクチュエータ3,4に供給される。
【0030】
ブーム用流量制御弁5および旋回用流量制御弁6のセンタバイパス絞りの開口面積が比較的大きい場合(
図3の破線)、中間位置におけるブリードオフ流量も比較的多くなる。そのため従来技術では、ブームおよび旋回の操作量に対する目標傾転量特性は比較的大きく設定されている(
図4の破線)。
【0031】
ここで、ブーム用流量制御弁5と旋回用流量制御弁6をそれぞれ中間位置で同時に操作(以下、複合操作という)する場合を想定する。ブーム用流量制御弁5と旋回用流量制御弁6のセンタバイパス絞りを直列絞りと見なすと、等価開口面積はブーム用流量制御弁5あるいは旋回用流量制御弁6を単独で操作(以下、単独操作という)する場合と比較して小さくなるため、ブリードオフ流量も減少する。これにより、油圧アクチュエータ3,4に供給される圧油の流量が増加し、各油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ適切な速度で駆動することができる。
【0032】
一方で、ブーム用流量制御弁5および旋回用流量制御弁6のセンタバイパス絞りの開口面積が比較的小さい場合(
図3の実線)、中間位置におけるブリードオフ流量も比較的少なくなる。そこで従来技術では、ブームおよび旋回の操作量に対する目標傾転量特性は比較的小さく設定されている(
図4の実線)。このような設定は、例えばブリードオフ流量による損失を低減することを目的として行われることがある。
【0033】
この場合、ブーム用流量制御弁5と旋回用流量制御弁6をそれぞれ中間位置で複合操作すると、センタバイパス絞りの開口面積が比較的大きい場合と同様に、単独操作の場合よりもブリードオフ流量は減少するが、減少量は少なくなる。このため、油圧アクチュエータ3,4に供給される圧油の流量が十分に増加せず、各油圧アクチュエータ3,4を適切な速度で駆動することができない可能性がある。本実施の形態では、コントローラ13が以下に説明する機能を備えることにより、複数の油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ単独で駆動する単独操作時、および複数の油圧アクチュエータ3,4を同時に駆動する複合操作時の両方で、油圧ポンプ2の吐出流量を抑制しつつ、各油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ適切な速度で駆動することが可能となる。
【0034】
図5は、コントローラ13の機能ブロック図である。
【0035】
図5において、コントローラ13は、第1押しのけ容積変換部1311,1312,・・・,131nと、第2押しのけ容積変換部1321,1322,・・・,132nと、加算部133と、最大値選択部134と、最小値選択部135と、指令電流変換部136とを備えている。
【0036】
第1押しのけ容積変換部1311および第2押しのけ容積変換部1321は、パイロット圧Pi1(レバー操作量)に対する油圧ポンプ2の目標押しのけ容積特性を記憶しており、入力されたパイロット圧Pi1をそれぞれ第1押しのけ容積Qs1および第2押しのけ容積Qc1に変換して出力する。第1押しのけ容積変換部1312および第2押しのけ容積変換部1322は、パイロット圧Pi2(レバー操作量)に対する油圧ポンプ2の目標押しのけ容積特性を記憶しており、入力されたパイロット圧Pi2をそれぞれ第1押しのけ容積Qs2および第2押しのけ容積Qc2に変換して出力する。第1押しのけ容積変換部131nおよび第2押しのけ容積変換部132nは、その他のパイロット圧Pin(レバー操作量)に対する油圧ポンプ2の目標押しのけ容積特性を記憶しており、入力されたパイロット圧Pinをそれぞれ第1押しのけ容積Qsnおよび第2押しのけ容積Qcnに変換して出力する。以下、パイロット圧Pi1をブーム上げパイロット圧BMUとし、パイロット圧Pi2を旋回左パイロット圧SWLとして説明する。
【0037】
加算部133は、第1目標押しのけ容積変換部1311,1312,・・・,131nの各出力値Qs1,Qs2,・・・,Qsnの合計値Qssumを出力する。
【0038】
最大値選択部134は、第2目標押しのけ容積変換部1321,1322,・・・,132nの各出力値Qc1,Qc2,・・・,Qcnのうちの最大値Qcmaxを選択して出力する。
【0039】
最小値選択部135は、加算部133の出力値Qssumおよび最大値選択部134の出力値Qcmaxのいずれか小さい方を選択し、最終目標押しのけ容積Qfinとして出力する。
【0040】
指令電流変換部136は、最小値選択部135から出力された最終目標押しのけ容積Qfinに応じた指令電流Iをレギュレータ20の比例電磁弁22に出力する。
【0041】
図6に第1目標押しのけ容積変換部1311,1312,・・・,131nに記憶されている目標押しのけ容積特性(第1目標押しのけ容積特性)と第2目標押しのけ容積変換部1321,1322,・・・,132nに記憶されている目標押しのけ容積特性(第2の目標押しのけ容積特性)との関係を示す。
【0042】
図6に示すように、第1および第2目標押しのけ容積は、いずれもレバー操作量(パイロット圧)に応じて増加する。第2目標押しのけ容積の最大値Q2maxは油圧ポンプ2の最大押しのけ容積と同等の値に設定されている。第2目標押しのけ容積の最小値Q2minは油圧ポンプ2の最小押しのけ容積と同等の値に設定されている。第1目標押しのけ容積の最大値Q1maxは第2目標押しのけ容積の最大値Q2max以下に設定されている。ここで、第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnの各最大値Q1max,Q2max,・・・,Qnmaxは、複数の油圧アクチュエータ3,4の各要求最大速度に応じて設定することが望ましい。これにより、各油圧アクチュエータ3,4が単独でフルレバー操作されたときに各油圧アクチュエータ3,4を最大要求速度で駆動しつつ、油圧ポンプ2の吐出流量を抑制し、エネルギ損失を抑えることが可能となる。
【0043】
第1目標押しのけ容積の最小値Q1minは、第2目標押しのけ容積Qc1,Qc2,・・・,Qcnの最小値Q1minのn分の1程度に設定されている。これにより、全ての操作レバーが中立位置にあるときに、加算部133から出力される合計値が第2目標押しのけ容積変換部1321,1322,・・・,132nから出力される最小値Qminと等しくなり、最小値選択部135から出力される最終目標押しのけ容積Qfinを最小押しのけ容積Qminと一致させることが可能となる。
【0044】
次に、本実施の形態における油圧駆動装置300の動作を説明する。
【0045】
油圧ショベル200のオペレータがブーム操作レバー7aをブームシリンダ3を伸長させる方向に中間位置で操作すると、ブーム用流量制御弁5の左側の受圧部にパイロット圧が作用し、ブーム用流量制御弁5は図示右側へ移動する。このときブーム上げパイロット圧BMUは圧力センサ9で検出され、検出信号がPi1としてコントローラ13に入力される。
【0046】
コントローラ13では、パイロット圧Pi1に応じた第1目標押しのけ容積Qs1が第1目標押しのけ容積変換部1311から出力される一方、ブームシリンダ3以外の油圧アクチュエータが操作されていないため、加算部133からは第1目標押しのけ容積Qs1がそのまま出力される。また、第2目標押しのけ容積変換部1321からもパイロット圧Pi1に応じた第2目標押しのけ容積Qc1が出力され、これ以外の第2目標押しのけ容積変換部1322,・・・,132nからは第2目標押しのけ容積の最小値Qminが出力されることにより、最大値選択部134では第2目標押しのけ容積Qc1が選択される。操作量が中間位置では第1目標押しのけ容積Qs1の方が小さく設定されているため、最小値選択部135では第1目標押しのけ容積Qs1が選択され、これに応じた指令電流Iが指令電流変換部136からレギュレータ20の比例電磁弁22へ出力される。
【0047】
同様に、旋回操作レバー8aを左旋回方向に中間位置で操作すると、圧力センサ11の検出信号Pi2に応じて第1目標押しのけ容積Qs2が最小値選択部135で選択される。
【0048】
一方で、油圧ショベル200のオペレータが操作レバー7a,8aをそれぞれ中間位置で複合操作し、ブームシリンダ3を伸長させながら旋回モータ4を左旋回方向へ回転させると、圧力センサ9,11の検出信号Pi1,Pi2がコントローラ13に入力される。
【0049】
コントローラ13では、第1目標押しのけ容積変換部1311,1312からパイロット圧Pi1,Pi2に応じた第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2がそれぞれ出力されることで、加算部133からはこれらの加算値Qs1+Qs2が出力される。また、第2目標押しのけ容積変換部1321,1322からもパイロット圧Pi1,Pi2に応じた第2目標押しのけ容積Qc1,Qc2がそれぞれ出力されるので、最大値選択部134ではこれらのうち最大値が選択される。従って、最小値選択部135では目標押しのけ容積の加算値Qs1+Qs2と、目標押しのけ容積Qc1,Qc2のうちの最大値とを比較し、いずれか最小値が選択される。これにより、複合操作される油圧アクチュエータの組み合わせと操作量に応じて油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を設定することができる。
【0050】
図7は、本実施の形態に係る油圧駆動装置300において、ブーム上げ単独操作中に旋回左操作が行われた場合のレバー操作量、油圧ポンプ吐出流量、および油圧アクチュエータ速度の変化を従来技術と比較して示す図である。
【0051】
図7に示すように、ブーム上げ操作を単独で行っている間(時刻t1〜t2)は、従来技術および本実施の形態ともに、レバー操作量(パイロットPi1)に応じた速度でブームシリンダ3が伸長動作する。
【0052】
ブーム上げ操作中に旋回左操作が行われると(時刻t2〜t3)、従来技術では、油圧ポンプ2の吐出流量がブームシリンダ3と旋回モータ4とに分配されることにより、ブームシリンダ3の速度はレバー操作量に応じた速度よりも小さくなる。また、旋回モータ4に十分な流量が分配されないため、旋回モータ4の速度はレバー操作量に応じた速度よりも小さくなる。
【0053】
一方、本発明の実施の形態では、ブーム上げ操作中に旋回左操作が行われると(時刻t2〜t3)、旋回左操作のレバー操作量が小さい間は(時刻t2〜t2’)、油圧ポンプ2の吐出流量は、ブーム操作レバー7aの操作量に応じた第1押しのけ容積Qs1と旋回操作レバー8aの操作量に応じた第1押しのけ容積Qs2の合計値Qssumと一致する。また、旋回左操作のレバー操作量が大きくなると(時刻t2’〜t3)、油圧ポンプ2の吐出流量は、ブーム操作レバー7aの操作量に応じた第2押しのけ容積Qc1と旋回操作レバー8aの操作量に応じた第2押しのけ容積Qc2の最大値Qcmaxと一致する。これにより、従来技術と比べて油圧ポンプ2の吐出流量が増加するため、ブーム上げ旋回左複合操作時に、ブームシリンダ3をブーム操作レバー7aの操作量に応じた速度で駆動しつつ、旋回モータ4も旋回操作レバー8aの操作量に応じて駆動することができる。
【0054】
このように本実施の形態に係る油圧ショベル200は、可変容量型の油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2の押しのけ容積を調整するレギュレータ20と、油圧ポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ3,4と、複数の油圧アクチュエータ3,4に対する圧油の給排を制御する複数の流量制御弁5,6と、複数の流量制御弁5,6を操作するための複数の操作装置7,8と、複数の操作装置7,8の各操作量を検出する操作量検出装置9,10,11,12と、操作量検出装置9,10,11,12で検出された複数の操作装置7,8の各操作量に応じてレギュレータ20を制御するコントローラ13とを備え、コントローラ13は、複数の操作装置7,8の各操作量に対して第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnを算出し、複数の操作装置7,8の各操作量に対して、同一操作量に対する第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnよりも大きい第2目標押しのけ容積Qc1,Qc2,・・・,Qcnを算出し、複数の操作装置7,8の各操作量に対して算出された複数の第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnの合計値Qssum、および複数の操作装置7,8の各操作量に対して算出された複数の第2目標押しのけ容積Qc1,Qc2,・・・,Qcnのうちの最大値Qcmaxのいずれか小さい方を最終目標押しのけ容積Qfinとして選択し、最終目標押しのけ容積Qfinに応じてレギュレータ20を制御する。
【0055】
また、レギュレータ20は、押しのけ容積可変部材(斜板)2aを駆動する傾転制御ピストン21と、コントローラ13から入力される指令電流に応じて傾転制御ピストン21の操作圧を生成する比例電磁弁22とを有し、コントローラ13は、複数の操作装置7,8の各操作量を第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnに変換する複数の第1押しのけ容積変換部1311,1312,・・・,131nと、複数の操作装置7,8の各操作量を第2目標押しのけ容積Qc1,Qc2,・・・,Qcnに変換する複数の第2押しのけ容積変換部1321,1322,・・・,132nと、複数の第1押しのけ容積変換部1311,1312,・・・,131nで変換された複数の第1目標押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnの合計値Qssumを算出する加算部133と、複数の第2押しのけ容積変換部1321,1322,・・・,132nで算出された複数の第2目標押しのけ容積Qc1,Qc2,・・・,Qcnの最大値Qcmaxを選択して出力する最大値選択部134と、加算部133の出力値Qssumおよび最大値選択部134の出力値Qcmaxのいずれか小さい方を選択し、最終目標押しのけ容積Qfinとして出力する最小値選択部135と、最小値選択部135の出力値Qfinに応じた指令電流Iを比例電磁弁22に出力する指令電流変換部136とを有する。
【0056】
以上のように構成した本実施の形態に係る油圧ショベル200によれば、各油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ単独で駆動する単独操作時に、油圧ポンプ2の押しのけ容積が油圧アクチュエータ3,4毎に設定された押しのけ容積(第1押しのけ容積)Qs1,Qs2,・・・,Qsnと一致するように調整されるため、油圧ポンプ2の吐出流量を過剰にすることなく、各油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ適切な速度で駆動することができる。
【0057】
また、複数の油圧アクチュエータ3,4を同時に駆動する複合操作時に、油圧ポンプ2の押しのけ容積が各レバー操作量に対して算出された第1押しのけ容積Qs1,Qs2,・・・,Qsnの合計値Qssum、および各レバー操作量に対して算出された第2押しのけ容積Qc1,Qc2,・・・,Qcnの最大値Qcmaxのいずれか小さい方(最終目標押しのけ容積Qfin)と一致するように制御されるため、油圧ポンプ2の吐出流量を過剰にすることなく、複数の油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ適切な速度で駆動することができる。
【0058】
これにより、各油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ単独で駆動する単独操作時、および複数の油圧アクチュエータ3,4を同時に駆動する複合操作時の両方で、油圧ポンプ2の吐出流量を抑制しつつ、各油圧アクチュエータ3,4をそれぞれ適切な速度で駆動することが可能となる。
【0059】
特に、操作レバー7a,8aをそれぞれ微操作する複合操作時は、加算部133の出力値Qssumが最大値選択部134の出力値Qcmaxを下回り、加算部133の出力値Qssumが最終目標押しのけ容積Qfinとして選択されるため、油圧ポンプの吐出流量を必要最小限に抑えつつ、レバー操作量に応じた速度で各油圧アクチュエータ3,4を駆動することができる。
【0060】
また、複数の第1目標押しのけ容積変換部1311,1312,131nにおける第1要求ポンプ流量Q1max,Q2max,・・・Qnmaxの最大値は、複数の油圧アクチュエータ3,4の各要求最大速度に応じて設定することにより、各油圧アクチュエータ3,4が単独でフルレバー操作されたときに各油圧アクチュエータ3,4を最大要求速度で駆動しつつ、油圧ポンプ2の吐出流量を抑制し、エネルギ損失を抑えることが可能となる。
【0061】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。