(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層炭素フォームの厚さ方向の断面に、前記積層炭素フォームを貫通する貫通孔であって、隣り合う2層の単層炭素フォームの接触面において、前記接触面における一方の単層炭素フォームの貫通孔の外端と、前記接触面における他方の単層炭素フォームの貫通孔の外端とがずれている貫通孔が存在する、請求項1に記載の積層炭素フォーム。
前記積層炭素フォームの厚さ方向の断面に、前記積層炭素フォームを貫通しない孔であって、隣り合う2層の単層炭素フォームにおいて、一方の単層炭素フォーム表面から前記一方の単層炭素フォームと他方の単層炭素フォームとの接触面までつながり、前記接触面で途切れる孔が存在する、請求項1又は2に記載の積層炭素フォーム。
線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第1の単層炭素フォームと線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第2の単層炭素フォームとを積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体をプレスして積層炭素フォームを製造する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜18の何れか一項に記載の積層炭素フォームの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
本実施形態の炭素フォームは、線状部(炭素繊維)と該線状部を結合する結合部とを有する炭素フォームである。具体的には、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する単層炭素フォームが少なくとも2層積層された積層体である、積層炭素フォーム、又は線状部と該線状部を結合する結合部とを有する炭素フォームであって、炭素フォームの表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数の割合が0.0003個/mm
2以下である炭素フォームが挙げられる。
【0012】
[炭素フォーム]
本実施形態による炭素フォームは、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する炭素フォームである。上記炭素フォームは、シート状であることが好ましい。上記炭素フォームは、1層の炭素フォームからなる単層炭素フォームであってもよいし、2層以上の単層炭素フォームからなる積層炭素フォームであってもよい。また、表層や各層間には、他の層が設けられていてもよい。
上記積層炭素フォームは、同じ炭素フォームの積層体であってもよいし、異なる炭素フォームの積層体であってもよい。上記積層炭素フォームは、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する単層炭素フォームの積層体であってもよいし、線状部と該線状部を結合する結合部とを有するシート状の単層炭素フォームの積層体であってもよいし、線状部と該線状部を結合する結合部とを有するシート状の単層又は積層炭素フォームと他の炭素フォームとの積層体であってもよい。
【0013】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームとしては、(i)炭素フォームの表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数の割合が0.0003個/mm
2以下であるシート状の炭素フォーム(好ましくは、厚さが0.01mm以上1.0mm以下であり、炭素フォームの表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数の割合が0.0003個/mm
2以下であるシート状の炭素フォーム)(本明細書において、「炭素フォームI」と称する場合がある)、(ii)線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第1の炭素フォームと線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第2の炭素フォームとの積層体である積層炭素フォームであって、前記積層炭素フォームの厚さ方向の断面に、前記積層炭素フォームを貫通する貫通孔であって、前記第1の炭素フォームと前記第2の炭素フォームとの接触面において、接触面における前記第1の炭素フォームの貫通孔の外端と、接触面における前記第2の炭素フォームの貫通孔の外端とがずれている貫通孔が存在する、積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)(本明細書において、「炭素フォームII」と称する場合がある)、(iii)線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第1の炭素フォームと線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第2の炭素フォームとの積層体である積層炭素フォームであって、前記積層炭素フォームの厚さ方向の断面に、前記積層炭素フォームの一方の表面から前記第1の炭素フォームと前記第2の炭素フォームとの接触面までつながり、前記接触面で途切れる、前記積層炭素フォームを貫通しない孔が存在する積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)(本明細書において、「炭素フォームIII」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、本明細書において、「貫通孔」とは、炭素フォームの厚さ方向に、一方の表面から他方の表面までつながる穴をいい、直径1mm以上の貫通孔を「大貫通孔」と称する。なお、大貫通孔は、原料フォームに由来するものや炭素化の製造工程で生じる貫通孔をいい、炭素フォームを後から刃型等で加工して生じる貫通孔は含まない。また、「孔」とは、炭素フォームを貫通しない穴をいい、例えば、表面の窪み、炭素フォーム内の気泡、後述の途切れる孔等が挙げられる。
【0014】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの厚さは、電極として用いた時の電極と集電板の界面での接触を確保できる観点から、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上がさらに好ましい。また、電極として用いた時の抵抗を低減できる観点から、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下が好ましく、1.0mm以下が好ましく、0.7mm以下がより好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。
【0015】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの、炭素フォームの表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数の割合は、0.0003個/mm
2以下であることが好ましく、より好ましくは0.0002個/mm
2以下、更に好ましくは0.0001個/mm
2以下である。
上記大貫通孔の数の割合は、炭素フォームの一方の表面の全表面積に対する、炭素フォームの該表面に存在する大貫通孔の数の割合をいう。例えば、炭素フォームの表面が大きい場合、表面100mm×100mmの範囲内にある直径1mm以上の大貫通孔の数は、3個以下であることが好ましく、より好ましくは2個以下、さらに好ましくは1個以下である。表面100mm×100mmの範囲内にある直径1mm以上の大貫通孔の数の下限は特に限定は無いが、0個であってもよく、1個以上であってもよい。
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームは、炭素フォームの表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数の割合が0.0003個/mm
2以下となる60mm×60mm以上の領域(好ましくは、60mm×60mmの領域)を有することが好ましく、80mm×80mm以上の領域(好ましくは80mm×80mmの領域)を有することがより好ましく、100mm×100mm以上の領域(好ましくは100mm×100mmの領域)を有することがより好ましく、200mm×200mm以上の領域(好ましくは200mm×200mmの領域)を有することがより好ましい。上限は特に限定は無いが、炭素フォームの表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数の割合が0.0003個/mm
2以下となる1000mm×1000mm以下の領域(好ましくは1000mm×1000mmの領域)を有することが好ましく、800mm×800mm以下の領域(好ましくは800mm×800mmの領域)を有することが好ましく、500mm×500mm以下の領域(好ましくは500mm×500mmの領域)を有することが好ましい。
直径1mm以上の大貫通孔の数が上記範囲であると、炭素フォームの取り扱い時に炭素フォームが破れにくくなり、ハンドリング性が向上する。
貫通孔の直径は、目視又は光源及び光検出器を備える検査装置(例えば、ピンホール検査機)を用いた検査により評価することができる。具体的には、炭素フォームの一方の表面S側に光源を、該表面と反対側の他方の表面に光検出器をそれぞれ配置する。そして、光源から光を炭素フォームの一方の表面Sに向けて照射する。炭素フォームに貫通孔が存在する場合には、照射された光が貫通孔を通過して光検出器に到達する。こうして、貫通孔を検出できる。なお、光源及び光検出器の配置は、逆にしてもよい。
貫通孔の直径の測定は、マイクロスコープ又は電子顕微鏡を用いて測定することができる。ここで、本明細書において、「直径」とは、光検出器に到達した光により形成される形状の外周上の2点を結ぶ線分(形状の外側を通ってもよい)であって、長さが最大となる線分の長さをいう。例えば、長方形の場合は対角線が直径であり、楕円の場合は長径が直径である。
【0016】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームにおいて、上記大貫通孔の面積としては、10mm
2以上であることが好ましく、より好ましくは4mm
2以上である。大貫通孔の面積は、上記直径と同様にして、検査装置、マイクロスコープ等を用いて測定することができる。
【0017】
上記貫通孔の形状(例えば、炭素フォーム表面における貫通孔の形状、光検出器に到達した光により形成される形状等)は限定されず、亀裂状や線状のものも貫通孔に含まれる。
【0018】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の積層炭素フォームは、積層炭素フォームの厚さ方向の断面に、積層炭素フォームを貫通する貫通孔であって、隣り合う2層の炭素フォームの接触面において、上記接触面における一方の炭素フォームの貫通孔の外端と、上記接触面における他方の炭素フォームの貫通孔の外端とがずれている貫通孔(単に「ずれている貫通孔」と称する場合がある)が存在することが好ましい。ずれている貫通孔が存在すると、貫通孔がきっかけとなる炭素フォームの破断が一層起こりにくくなる。
図1を用いて貫通孔を具体的に説明する。
図1は、2層の炭素フォームからなる積層炭素フォーム1の厚さ方向の断面であり、該断面には、一方の炭素フォーム2と他方の炭素フォーム3との接触面4、積層炭素フォームを貫通する貫通孔71、及びずれている貫通孔51、52がある。貫通孔71は、接触面4における一方の炭素フォーム2の貫通孔71の外端2aと、他方の炭素フォーム3の貫通孔71の外端3aとが向かい合って接している、ずれていない貫通孔である。ずれている貫通孔51は、接触面4において、一方の炭素フォーム2の貫通孔の外端2aと他方の炭素フォーム3の貫通孔の外端3aとが、両端共にずれている。ずれている貫通孔52は、一方の外端で外端2aと外端3aとが向かい合って接しており、一方の外端で外端2aと外端3aとがずれている。
上記ずれている貫通孔とは、積層炭素フォームの断面において、貫通孔の外縁の少なくとも一部に接触面4を含む貫通孔をいい、少なくとも一方の外端で外端2aと外端3aとがずれている貫通孔(例えば、ずれている貫通孔51、52等)等が挙げられる。中でも、上記ずれている貫通孔は、両方の外端で外端2aと外端3aとがずれている貫通孔であることが好ましい。
上記ずれている貫通孔は、本実施形態の積層炭素フォームの任意の断面で存在すればよい。また、積層炭素フォームが3層以上の積層体である場合、上記ずれている貫通孔は、積層炭素フォームに含まれる少なくとも一つの接触面でずれている貫通孔をいい、全ての接触面でずれている貫通孔であることが好ましい。
【0019】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の積層炭素フォームにおいて、全貫通孔の数に対する上記ずれている貫通孔の数の割合は、5%以上であることが好ましく、30%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。上限は特に限定は無いが100%以下であってもよく、95%以下であってもよい。ずれている貫通孔の上記割合が上記範囲であると、一層炭素フォームの破断が起こりにくくなる。中でも、全大貫通孔の数に対する上記ずれている貫通孔の数の割合が上記範囲であることがより好ましい。
なお、ずれている貫通孔の数の上記割合は、任意の100個の貫通孔を解析して測定される割合をいい、貫通孔が100個未満の場合は、全貫通孔を解析して測定される割合をいう。
【0020】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の積層炭素フォームは、積層炭素フォームの厚さ方向の断面に、積層炭素フォームを貫通しない孔であって、隣り合う2層の炭素フォームにおいて、一方の炭素フォーム表面から上記一方の炭素フォームと他方の炭素フォームとの接触面までつながり、上記接触面で途切れる孔(単に「途切れる孔」と称する場合がある)が存在することが好ましい。途切れる孔が存在すると、ずれている貫通孔の割合が多くなり、貫通孔がきっかけとなる炭素フォームの破断が一層起こりにくくなる。
図2を用いて途切れる孔を具体的に説明する。
図2は、2層の炭素フォームからなる積層炭素フォーム1の厚さ方向の断面であり、該断面には、一方の炭素フォーム2と他方の炭素フォーム3との接触面4、及び途切れる孔61〜64がある。途切れる孔61は、一方の炭素フォーム2の表面から接触面4までつながり、接触面4で途切れる孔である。途切れる孔62は、一方の炭素フォーム2の表面から接触面4までつながり、接触面4で一部が途切れ、一部が他方の炭素フォーム3内に窪んでおり、接触面4における一方の炭素フォーム2の孔の外端2bと他方の炭素フォーム3の孔の外端3bとが、両端共にずれている孔である。途切れる孔63は、接触面4において、一方の孔の外端2bと他方の孔の外端3bとが、一方の外端で向かい合って接しており、他方の外端でずれている孔である。途切れる孔64は、接触面4において、一方の炭素フォーム2の表面から接触面4までつながる孔より大きい、他方の炭素フォーム3の窪みとつながっている孔である。
上記途切れる孔とは、積層炭素フォームの断面において、孔の外縁の少なくとも一部が接触面4を含む、貫通しない孔をいう。また、上記途切れる孔は、積層炭素フォームに含まれる少なくとも1つの接触面で途切れている孔をいう。
【0021】
<結合部の数N
nに対する線状部の数N
lの割合R>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームにおいて、結合部の数N
nに対する線状部の数N
lの割合Rは、1.2以上1.7以下であることが好ましい。割合R(N
l/N
n)は、換言すれば、結合部にて分岐する枝分かれの平均数である。線状部が結合部で結合した三次元網目状構造を有さず、不織布のように結合していない線状部が接触している構造の場合は、このRが小さい値となる。また、線状部が帯状の様になった、例えば蜂の巣の様な壁面で覆われた多孔性構造の場合はこのRが大きい値となる。割合Rは、より好ましくは1.4以上1.65以下、さらに好ましくは1.4以上1.6以下、さらに好ましくは1.42以上1.60以下、さらに好ましくは1.44以上1.58以下、特に好ましくは1.45以上1.55以下である。
【0022】
<線状部(炭素繊維)の径>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームにおいて、炭素フォームを構成する炭素繊維の径dは0.1μm以上10.0μm以下であることが好ましい。本実施形態において、「炭素繊維の径」は、結合部を繋ぐ線状部の太さのことを指す。炭素繊維の径が0.1μm以上であると、物理的な強度と導電性を確保することができ、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上である。また炭素繊維の径が10.0μm以下であると、圧縮挙動時の変形性や復元性を確保することができ、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは4μm以下、特に好ましくは3.5μm以下である。
【0023】
(線状部(炭素繊維)径の測定方法)
炭素フォームを構成する線状部(炭素繊維)の径dは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)像を画像解析することによって求める。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍の倍率で炭素フォームを観察する。得られた観察像から、線状部(炭素繊維)の太さを無作為に20か所測定する。断面形状が円形であると仮定して、この平均太さを上記径dとする。
【0024】
<線状部の配向角度>
炭素フォームは、熱処理炉において、例えばメラミン樹脂フォームを熱処理して炭素化すると、炭素フォームの骨格を構成する炭素繊維が全ての方向に均等に広がった等方的な構造を有するものとなる。このような炭素フォームの場合、300μm×300μm×300μmの領域内に含まれる線状部のx方向に対する配向角度の平均値をθave x、y方向に対する配向角度の平均値をθave y、z方向に対する配向角度の平均値をθave z、と定義したときに、θave x、θave y、θave zの中の最大値と最小値との差θ
cは通常は1°以下となることが多い。
なお、上記三方向は、炭素フォームの厚み方向をx方向、前記x方向に垂直な方向をy方向、前記x方向及び前記y方向に垂直な方向をz方向とする。
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームにおいて、線状部の互いに直交する三方向の各々に対する配向角度の平均値について、一方向に対する配向角度の平均値と、他の方向に対する配向角度の平均値の少なくとも一方との差θ
cが3°以上である(異方性がある)ことが好ましい。これにより、炭素フォームに圧縮荷重が印加された際にも、炭素繊維(線状部)の破断を抑制して粉落ちを低減することができる。上記差θ
cは、好ましくは5°以上であり、より好ましくは8°以上であり、特に好ましくは10°以上である。また、上記差θ
cは炭素フォームの柔軟性の観点から、好ましくは35°以下であり、より好ましくは25°以下であり、さらに好ましくは20°以下である。逆に、上記差θ
cが3°を下回ると、等方的な配向性が高まり、圧縮荷重が印加された際に炭素繊維が破断して落下する、いわゆる粉落ちが相当量発生する。
【0025】
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォーム中の300μm×300μm×300μmの領域内に含まれる線状部のx方向に対する配向角度の平均値をθave x、y方向に対する配向角度の平均値をθave y、z方向に対する配向角度の平均値をθave z、と定義したときに、炭素フォームは、θave x、θave y、θave zの中の最大値と2番目に大きな値との差θ
dが3°以上となる領域を含むことが好ましい。θave x、θave y、θave zの中の最大値と2番目に大きな値との差θ
dは、より好ましくは5°以上であり、更に好ましくは8°以上であり、特に好ましくは10°以上である。θave x、θave y、θave zの中の最大値と2番目に大きな値との差の上限は特に限定は無いが、炭素フォームの柔軟性の観点から、好ましくは35°以下であり、より好ましくは25°以下であり、さらに好ましくは20°以下である。
また、θave x、θave y、θave zの中の最大値と残りの2つの差が、共に3°以上となることが好ましく、より好ましくは5°以上であり、更に好ましくは8°以上であり、特に好ましくは10°以上である。θave x、θave y、θave zの中の最大値と残りの2つの差の上限に特に限定は無いが、炭素フォームの柔軟性の観点から、好ましくは35°以下であり、より好ましくは25°以下であり、さらに好ましくは20°以下である。
炭素フォーム中に上記θave x、θave y、θave zを満たす縦300μm×横300μm×高さ300μmの領域が含まれていればよい。
【0026】
また、本明細書において、上記結合部の数N
n、線状部の数N
l、結合部の密度および配向角度θは、X線CT(Computerized Tomography)装置を用いて炭素フォームを撮影し、得られた断層像データから、前処理としてMedian filterを使用した後に、大津の二値化アルゴリズム(大津 展之著、「判別および最小2乗規準に基づく自動しきい値選定法」、電子情報通信学会論文誌D、Vol.J63−D、No.4、pp.346−356(1980)参照)を用いて構造と空間に領域分割し、炭素フォームの内部を含めた構造の三次元画像を作製し、得られた三次元画像から構造解析ソフトウェアを用いて求めた値である。
【0027】
具体的には、結合部の数N
n及び線状部の数N
lは、上述のように得られた三次元画像に含まれる結合部及び線状部を検出し、その数をカウントすることにより求める。こうして得られたN
n及びN
lから、N
nに対するN
lの割合Rを求めることができる。
【0028】
さらに、線状部の配向角度θは、線状部の両端の結合部を結ぶ直線と各方向との間の角度であり、上記三次元画像において互いに直交する三方向の各々に対して求め、各方向について、線状部の配向角度の平均値を求める。
【0029】
炭素フォームの構造解析に用いるCT装置としては、低エネルギー高輝度X線によるCT装置、例えば株式会社リガク製の高分解能3DX線顕微鏡nano3DXを用いることができる。また、画像処理並びに構造解析には、例えば株式会社JSOL社製のソフトウェアsimplewareのCenterline editorを用いることができる。
【0030】
<結合部の密度>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの結合部の密度は、圧縮荷重を印加された際の復元性の観点から、15,000個/mm
3以上であることが好ましく、より好ましくは20,000個/mm
3以上であり、さらに好ましくは30,000個/mm
3以上である。また、炭素フォームの柔軟性の観点から、5,000,000個/mm
3以下であることが好ましく、より好ましくは3,000,000個/mm
3以下であり、さらに好ましくは2,000,000個/mm
3以下である。
本実施形態の炭素フォーム中の少なくとも一部に上記結合部の密度を満たす箇所があれば好ましく、50体積%で上記密度範囲を満たしていればより好ましく、75体積%で上記密度範囲を満たしていればさらに好ましく、炭素フォームの任意の箇所で上記密度範囲を満たしていることが特に好ましい。
【0031】
<炭素含有率>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの炭素含有率は、導電性の観点から、好適には51質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。上限は特に限定は無いが、100質量%以下であってもよく、99質量%以下であってもよく、98質量%以下であってもよい。
なお、炭素フォームの炭素含有率は、炭素フォームを構成する全原子の質量に対する炭素原子の質量割合であり、蛍光X線測定から求めることができる。
【0032】
<酸素原子の割合>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの、蛍光X線分析による表面分析で測定される酸素原子の割合(酸素含有率)は、電解液への濡れ性の観点から、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.07質量%以上がさらに好ましい。また、電極の抵抗の観点から10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。炭素フォーム中の酸素含有率は、炭素フォームを構成する全原子の質量に対する酸素原子の質量割合であり、蛍光X線測定から求めることができる。また、酸素原子の割合は、炭化後の処理で行う酸化工程の温度を高くすること等により、高くすることができる。
なお、炭素原子と酸素原子との合計質量は、60質量%以上であってよく、99.9質量%以下であってよい。
【0033】
<結晶子サイズ>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの結晶子サイズLcは、1.1nm以上であることが好ましく、導電性の観点からは1.5nm以上であることがより好ましい。また、物理的な脆弱性の点から4.0nm以下であることが好ましく、3.0nm以下であることがより好ましい。
尚、Lcは広角X線回折から得られる炭素フォームの(002)面の回折から求めることができる。具体的には、サンプルを乳鉢で粉砕した後、卓上X線回折装置 D2 PHASER(Bluker社製)を用いて粉砕したサンプルの広角X線測定を行う方法が挙げられ、具体的な測定条件としては以下の条件が挙げられる。
[測定条件]
線源:Cu Kα
管電流:30mA
管電圧:40kV
スリット:1mm
試料回転速度:10回転/min
1ステップの測定時間:0.3sec
開始角度(2θ):5.00°
測定ステップ(2θ):0.01°
終了角度(2θ):90.00°
上記測定後、得られたデータを解析し、結晶子サイズLcを算出することができる。結晶子サイズLcの算出には2θ=25度の付近に現れる(002)面の回折ピークの半値幅β、ピーク最大値の角度θを下記のScherrerの式(14)に代入して求めることができる。一般的に高い温度で炭素化するほど高い結晶性を有し、Lcの値が大きくなる。
Lc=(Kλ)/βcosθ・・・(14)
ここでKは形状因子、λは線源の波長を表す。形状因子は(002)面回折であるため、0.90を代入する。線源は今回CuKαを用いているため、1.541を代入して計算を行う。
【0034】
<空隙率>
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)の炭素フォームの空隙率は、柔軟性の観点から50%以上とすることが好ましく、60%以上とすることがより好ましく、70%以上とすることがさらに好ましく、80%以上とすることが特に好ましく、90%以上とすることが特に好ましく、95%以上とすることが特に好ましい。なお、本明細書において、空隙率は、かさ密度及び真密度から求めた値である。かさ密度は、炭素フォームに含まれる空隙も含めた体積に基づいた密度である。これに対して、真密度は、炭素フォームの材料が占める体積に基づいた密度である。
【0035】
(かさ密度の測定)
まず、ノギス等を用いて炭素フォームの寸法を測定し、得られた寸法から、炭素フォームのかさ体積V
bulkを求める。次に、精密天秤を用いて、炭素フォームの質量Mを測定する。得られた質量M及びかさ体積V
bulkから、下記の式(1)を用いて炭素フォームのかさ密度ρ
bulkを求めることができる。
ρ
bulk=M/V
bulk ・・・(1)
かさ密度は、電極として用いた際の抵抗を下げる観点から、3.0kgm
-3以上であることが好ましく、より好ましくは3.5kgm
-3以上であり、さらに好ましくは4.0kgm
-3以上である。また、炭素フォームの柔軟性の観点から、400kgm
-3以下であることが好ましく、より好ましくは300kgm
-3以下であり、さらに好ましくは200kgm
-3以下である。
【0036】
(真密度の測定)
炭素フォームの真密度ρ
realは、n−ヘプタン、四塩化炭素及び二臭化エチレンからなる混合液を用いて浮沈法によって求めることができる。具体的には、まず、共栓試験管に適当なサイズの炭素フォームを入れる。次に、3種の溶媒を適宜混合して試験管に加え、30℃の恒温槽に漬ける。試料片が浮く場合は、低密度であるn−ヘプタンを加える。一方、試験片が沈む場合は、高密度である二臭化エチレンを加える。この操作を繰り返して、試験片が液中に漂うようにする。最後に、液の密度をゲーリュサック比重瓶を用いて測定する。
【0037】
(空隙率の算出)
上述のように求めたかさ密度ρ
bulk及び真密度ρ
realから、下記の式(2)を用いて空隙率V
f,poreを求めることができる。
V
f,pore=((1/ρ
bulk)−(1/ρ
real))/(1/ρ
bulk)×100 (%)
・・・(2)
【0038】
本実施形態の炭素フォームは、例えば、電極、フィルタ、緩衝材等として好適に使用することができる。電極としては、燃料電池、レドックスフロー電池、電気分解としての用途に好ましく、特にレドックスフロー電池に適している。本実施形態のレドックスフロー電池用電極としては、上記積層炭素フォーム又は炭素フォームを含むことが好ましい。
炭素フォームII、炭素フォームIIIは、貫通孔が少ないため、例えば、電池の電極として使用する場合には、小面積の表面を有する炭素フォームを並べて構成した電極に比べて、高い導電性を有する。また、フィルタとして使用する場合には、捕集すべき物質を逃すことなく捕集することができる。
また、炭素フォームIは、大貫通孔が少なく、薄いため、電極として用いる場合には、高い導電性に加えて、一層抵抗を低減させることができる。また、フィルタとして使用する場合には、薄膜化が可能となり、捕集性に優れる上に、軽量化が可能となる。
【0039】
[炭素フォームの製造方法]
上記炭素フォームの製造方法としては、炭素フォームの原料となる樹脂フォームを炭素化する工程(炭素化工程)を含む方法が挙げられる。
【0040】
例えば、単層炭素フォームの製造方法としては、厚膜の樹脂フォーム原料を高倍率でプレスする工程(プレス工程)と、炭素フォームを製造する工程(炭素化工程)を含む工程や、大きい圧縮荷重を加える炭素化工程等が挙げられる。
また、積層炭素フォームの製造方法としては、炭素化工程と、樹脂フォーム又は炭素フォームを積層してプレスする工程(プレス工程)とを含む方法と、樹脂フォーム又は炭素フォームを大きい荷重を加えて炭素化する工程を含む方法が挙げられ、具体的には、(1)少なくとも2層の樹脂フォームを積層し、プレスして樹脂フォーム積層体を形成する工程(樹脂フォームプレス工程)と、樹脂フォーム積層体を炭素化して積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)を製造する工程(炭素化工程)と、を含む方法;(2)少なくとも2層の炭素フォームを積層して積層体を形成する工程(炭素フォーム積層工程)と、積層体をプレスして積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)を製造する工程(炭素フォームプレス工程)と、を含む方法;(3)少なくとも1層の樹脂フォームと少なくとも1層の炭素フォームを積層し、プレスして積層体を形成する工程と、積層体を炭素化して積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)を製造する工程(炭素化工程)と、を含む方法;(4)少なくとも2層の樹脂フォームを積層し、大きい荷重を加えて炭素化する工程を含む方法;(5)少なくとも1層の樹脂フォームと少なくとも1層の炭素フォームを積層し、大きい荷重を加えて炭素化する工程を含む方法;等が挙げられる。
炭素フォームI、炭素フォームII、及び炭素フォームIIIの製造方法としては、例えば、上述の方法等が挙げられ、好ましくは上記(1)又は(2)の方法、より好ましくは上記(1)の方法である。
炭素フォームとしては、厚み方向に炭素がつながっており抵抗を低減できる観点から、積層体が一体化されているものが好ましい。製造方法としては、炭化する際に、融着する樹脂が存在していること(プレス前又は荷重を加える前に、樹脂を混合すること)が好ましく、例えば上記(1)、(3)、(4)又は(5)の方法や、炭素フォームを積層する際に、少なくとも一部の炭素フォームに樹脂を被覆して炭化する方法などが挙げられる。
【0041】
上記(1)の製造方法としては、第1の樹脂フォームと第2の樹脂フォームとを積層しプレスして樹脂フォーム積層体を形成する工程と、上記樹脂フォーム積層体を炭素化して、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第1の炭素フォームと線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第2の炭素フォームとの積層体積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)を製造する工程と、を含む方法が好ましい。
また、上記(2)の製造方法としては、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第1の炭素フォームと、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する第2の炭素フォームとを積層して積層体を形成する工程と、上記積層体をプレスして積層炭素フォーム(好ましくは、シート状の積層炭素フォーム)を製造する工程と、を含む方法が好ましい。
【0042】
上記(1)、(2)の製造方法で得られる積層炭素フォームとしては、上述の炭素フォームが好ましく、より好ましくは炭素フォームI、炭素フォームII、又は炭素フォームIIIである。
【0043】
<樹脂フォーム>
上記樹脂フォームとしては、例えば、メラミン樹脂フォーム;ウレタン樹脂フォーム;フェノール樹脂フォーム;アクリロニトリル樹脂フォーム;等の炭素フォームの原料として公知の任意の樹脂フォームが挙げられる。中でも、線状部の径のサイズと均一性の観点から、メラミン樹脂フォームが好ましい。
【0044】
上記メラミン樹脂フォームとしては、例えば、メラミン類とホルムアルデヒドとの前縮合物、乳化剤、発泡剤、硬化剤、及び必要に応じて周知の充填剤等とを含有する水溶液または分散液を発泡処理した後、硬化処理を施すことにより製造することができる。発泡処理及び硬化処理は、使用する発泡剤の種類等に応じて設定される温度(例えば、発泡剤の沸点以上の温度等)に、上記成分からなる溶液を加熱すればよい。
【0045】
上記メラミン類としては、メラミン、グアナミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)等が挙げられる。上記メラミン類は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記前縮合物は、メラミン類、ホルムアルデヒド以外の単量体を用いてもよい。
上記前縮合物としては、例えばメラミン類:ホルムアルデヒド=1:1.5〜1:4、平均分子量が200〜1000のものを使用することができる。
縮合の条件としては、例えば、pH7〜10、温度70〜100℃等が挙げられる。
【0046】
上記乳化剤としては、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸のナトリウム塩等が挙げられる。上記乳化剤は、上記前縮合物100質量%に対して、0.5〜5質量%の割合で用いることができる。
【0047】
上記発泡剤としては、ペンタン、ヘキサン、トリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、ヒドロキシフルオロエーテル等が挙げられる。上記発泡剤は、上記前縮合物100質量%に対して、1〜50質量%の割合で用いることができる。
【0048】
上記硬化剤としては、塩酸、硫酸、蟻酸等が挙げられる。上記硬化剤は、上記前縮合物100質量%に対して、0.01〜20質量%の割合で用いることができる。
【0049】
上記メラミン樹脂フォームとしては、例えば特開平4−349178号公報に開示されている方法により製造されるメラミン/ホルムアルデヒド縮合発泡体を用いることができる。
また、上記ウレタン樹脂フォーム、上記フェノール樹脂フォーム、上記アクリロニトリル樹脂フォームは、適宜、公知の方法により製造することができる。
【0050】
上記樹脂フォームのかさ密度としては、0.001〜0.1g/mm
3であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.02g/mm
3である。
また、上記樹脂フォームの空隙率としては、60〜99.9%であることが好ましく、より好ましくは80〜99%である。
【0051】
<炭素化工程>
上記炭素化工程としては、樹脂フォームに対して圧縮荷重を印加しつつ、窒素等の不活性気流中や真空等の不活性雰囲気下で熱処理して炭素化する方法;樹脂フォームを熱処理炉内に導入する原料フォーム導入工程と、熱処理炉内の温度を第1の昇温速度で熱処理温度まで昇温する昇温工程と、上記熱処理温度で所定の時間保持して樹脂フォームを炭素化して炭素フォームとする炭化工程と、熱処理炉内の温度を室温まで降温する降温工程と、熱処理炉から炭素フォームを搬出する炭素フォーム搬出工程とを含む方法;等が挙げられる。ここで、上記昇温工程は、少なくとも樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い第1の温度領域において、熱処理炉内を減圧排気しながら行う工程が挙げられる。
【0052】
上記原料フォーム導入工程において、原料の樹脂フォームを炭素化するための熱処理炉としては、樹脂フォームを炭素化して炭素フォームが得られる炉であれば限定されず、例えば原料の樹脂フォームを収容する反応炉と、反応炉内を加熱するヒーターと、反応炉内に不活性ガスを導入するガス導入口と、反応炉内からガスを排出するガス排出口と、反応炉内を減圧して真空にする真空ポンプとを備える熱処理炉を用いることができる。
【0053】
上記昇温工程において、樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い第1の温度領域において、熱処理炉内を減圧排気しながら行うことが好ましい。
炭素フォームの原料である樹脂フォームを加熱すると、樹脂フォームから発生した活性な分解性脱離ガスが、炭素フォームを構成する炭素繊維と反応して分解し、炭素フォームに欠陥(例えば、大貫通孔)が発生する。上記分解性脱離ガスの発生量は、炉内の温度に依存する。昇温工程における、樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)において、熱処理炉内を減圧排気することにより、樹脂フォームの内部で発生した分解性脱離ガスが樹脂フォーム外へ拡散するのを促進して、炭素フォームに欠陥が形成されるのを防止することができる。
【0054】
なお、「樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)」は、昇温工程における原料の樹脂フォームの重量を0℃から100℃間隔で予めモニタリングし、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の5%以上減少する温度領域とする。例えば、300℃以上400℃未満、400℃以上500℃未満及び500℃以上600℃未満の全ての温度領域において、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の5%以上減少した場合には、第1の温度領域は300℃以上600℃未満とする。
樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)は、200℃以上800℃未満の温度領域である。
【0055】
上記減圧排気は、真空ポンプ等の排気手段を用いて行うことができる。排気は、少なくとも炉内の圧力を10分以内に1Pa以下にできる排気能力を有するポンプを用いて行うことが好ましい。
【0056】
熱処理温度までの昇温速度(第1の昇温速度)は、例えば、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、分解性脱離ガスの発生量を抑制する観点から、10℃/分以下にすることが好ましい。また、全体の生産性の観点から、上記第1の昇温速度は1℃/分以上とすることが好ましい。
【0057】
また、昇温工程は、上記樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量が多い温度領域(第1の温度領域)においては、熱処理温度までの昇温速度(第1の昇温速度)よりも低い昇温速度(第2の昇温速度)で行うことが好ましい。これにより、樹脂フォーム内で発生する単位時間当たりの分解性脱離ガスの発生量を低減して、フォーム構造外への分解性脱離ガスの拡散をより促進することができる。第1の温度領域において昇温速度を低減した場合(すなわち、第2の昇温速度に変更した場合)、炉内の温度が第1の温度領域の上限を超えた場合には、昇温速度を第1の昇温速度に戻して昇温すればよい。
【0058】
さらに、昇温工程は、上記脱離ガスの発生量が多い第1の温度領域内の、分解性脱離ガスの発生量の増加率が高い領域(第2の温度領域)において、上記第2の昇温速度よりも低い昇温速度(第3の昇温速度)で行うことが好ましい。これにより、樹脂フォーム内で発生する単位時間当たりの分解性脱離ガスの発生量をさらに低減して、フォーム構造外への分解性脱離ガスの拡散をさらに促進することができる。
【0059】
なお、「樹脂フォームからの分解性脱離ガスの発生量の増加率が高い温度領域(第2の温度領域)」は、昇温工程における原料の樹脂フォームの重量を0℃から100℃間隔で予めモニタリングし、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の20%以上減少する温度領域とする。例えば、300℃以上400℃未満及び400℃以上500℃未満の温度領域において、樹脂フォームの重量が100℃当たり初期重量の20%以上減少した場合には、第2の温度領域は300℃以上500℃未満とする。
【0060】
原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、樹脂フォームからの脱離ガスの発生量の増加率が高い温度領域(第2の温度領域)は、300℃以上400℃未満の温度領域である。樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、昇温速度は、第1の温度領域において5℃/分以下にすることがより好ましく、さらに第2の温度領域において3℃/分以下にすることが特に好ましい。
【0061】
また、昇温工程及び後述する炭化工程において、酸素と炭素フォームを構成する炭素繊維との分解反応を防止するために、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気又は真空とすることが好ましい。ここで、炉内が「真空」であるとは、炉内の真空度が1Pa未満であることを指す。また、不活性ガス雰囲気は、炭素フォームの原料となる樹脂フォームを熱処理炉内に導入した後(原料フォーム導入工程)、炉内を減圧排気して酸素が含まれる空気を抜くことが好ましい。そして、炉内が1Pa未満の真空度に達して十分に空気が脱気された後、窒素ガスを導入することが好ましい。こうして炉内を窒素ガス雰囲気にすることができる。このように、炉内を不活性ガス雰囲気又は真空とした後、昇温を開始し、第1の温度領域においては炉内を減圧排気する。
【0062】
さらに、メラミン樹脂フォームの脱離ガス量が多い200℃以上800℃未満の領域(第1の温度領域)においては、炉内に不活性ガスを導入しながら減圧排気し続けることが好ましい。これにより、炉内に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスの流れを発生させて、樹脂フォーム内で発生した分解性脱離ガスの排出を促進することができる。
【0063】
上記不活性ガスの導入の際、不活性ガスの流量は1L/分以上とすることが好ましく、
3L/分以上とすることがより好ましく、5L/分以上とすることが特に好ましい。また、不活性ガスの流量は40L/分以下とすることが好ましく、30L/分以下とすることがより好ましく、20L/分以下とすることが特に好ましい。
【0064】
上記炭化工程において、昇温して到達した熱処理温度で所定の時間保持し、樹脂フォームを炭素化して炭素フォームとする。上記熱処理温度は、原料の樹脂フォームの軟化点以上の温度であることが好ましい。例えば、樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、メラミン樹脂フォームの軟化点は300℃〜400℃であるため、熱処理温度は軟化点以上の温度とする。好ましくは800℃以上、より好ましくは1000℃以上である。また、高い結晶性による物理的な脆弱性の観点から、好ましくは3000℃以下、より好ましくは2500℃以下である。
【0065】
また上記熱処理温度で保持する時間(熱処理時間)は、原料の樹脂フォームが完全に炭素化する時間とすることが好ましい。例えば、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、保持時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上である。また、生産性の点から、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間以下である。
【0066】
上記降温工程において、メラミン樹脂フォームの炭素化の際の温度の降温速度については、急冷による炉内のヒーターや断熱材へのダメージを緩和する観点から、20℃/分以下にすることが好ましい。より好ましくは、15℃/分以下である。また、全体の生産性の点から5℃/分以上が好ましい。より好ましくは、10℃/分以上である。
上述の制御を行うことで、大きな表面積を有する炭素フォームを製造することができる。
【0067】
なお、上記昇温工程及び上記炭化工程を、原料の樹脂フォームに圧縮荷重を印加しながら行うことにより、炭素繊維の拡がりに異方性を有する骨格構造の炭素フォームを得ることができる。異方性を有する炭素フォームは、圧縮荷重が印加された際にも、炭素繊維の破断を抑制して粉落ちを低減したり、高い復元性を実現したりすることができる。
【0068】
上記圧縮荷重の印加は、原料の樹脂フォーム上に、例えば黒鉛板等のおもりを載せることによって行うことができる。印加する圧縮荷重は、好ましくは50Pa以上であり、より好ましくは200Pa以上である。また、好ましくは2000Pa以下であり、より好ましくは1500Pa以下である。
【0069】
原料の樹脂フォームに圧縮荷重を印加する場合、分解性脱離ガスの拡散が、黒鉛板等のおもりによって抑制される。そのため、昇温工程では、圧縮荷重を印加しない場合に比べて、昇温速度を低減し、かつ不活性ガスを炉内に供給しながら減圧排気し続けて、分解性ガスの排出促進を行うことが特に好ましい。
【0070】
例えば、原料の樹脂フォームがメラミン樹脂フォームの場合、200℃以上800℃未満の温度領域(第1の温度領域)においては、昇温速度は5℃/分以下にすることが好ましく、脱離ガスの発生量の増加率が高い300℃以上400℃未満の温度領域(第2の温度領域)においては、2℃/分以下にすることがより好ましい。また、200℃以上800℃未満の温度領域(第1の温度領域)において、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを熱処理炉内に供給することが好ましい。
【0071】
なお、原料の樹脂フォームへの圧縮応力は、一方向のみならず、二方向から印加してもよい。
【0072】
<プレス工程>
積層炭素フォームの製造は、積層した樹脂フォーム、炭素フォーム、又は樹脂フォームと炭素フォームを圧縮するプレス工程と、炭素化工程とを分離して別々に行うことができる。また単層炭素フォームも下記プレス工程を行ってから炭素化してもよい。
【0073】
プレス工程としては、活性ガスの排出が可能で、樹脂フォームを加熱して圧縮できる装置、又は炭素フォームの積層体を圧縮できる装置であれば特に限定されず、例えば、樹脂フォームをプレスする天板と、該天板を加熱するヒーターと、装置内からガスを排出するガス排出口と、装置内を減圧して真空にする真空ポンプを備える熱処理炉を用いることができる。プレス工程では、樹脂フォームの積層に用いる装置と同じ装置を用いてもよい。
【0074】
上記プレス工程において用いる炭素フォームとしては、メラミン樹脂を炭素化したフォーム等が挙げられ、粉落ちの観点からより好ましくは面方向に異方性を有するフォームである。
【0075】
上記樹脂フォームプレス工程において、樹脂フォームを積層する際には、例えば、一つの樹脂フォームをスライスして、複数枚に切り出した樹脂フォームを重ねてもよいし、異なる樹脂フォームを重ねてもよい。
複数枚に切り出した樹脂フォームを重ねる方法としては、重ねる樹脂フォームの貫通孔の位置がずれて、貫通孔の数を減らすことができる観点から、切り出した樹脂フォームを積層する際に、0°超360°未満回転させて積層する方法、切り出した樹脂フォームを反転させて積層する方法、積層する際に切り出した樹脂フォームの順番を入れ替える方法、同一規格のロットが異なる樹脂フォームから切り出した樹脂フォームを積層する方法、位置をずらして積層する方法等が好ましい。なお、重ねる樹脂フォームの貫通孔の位置が重なり、貫通孔の数を減らすことができないため、切り出した樹脂フォームをそのまま重ねて使用しないことが好ましい。
上記異なる樹脂フォームとしては、連続した空隙構造を持つ多孔体を用いればよく、例えば、異なる素材の樹脂フォームや、同一素材で空隙構造が異なる樹脂フォームや、同一規格のロットが異なる樹脂フォームから切り出した樹脂フォーム等が挙げられる。
【0076】
上記プレス工程において、積層する樹脂フォーム又は炭素フォームの数としては、貫通孔の低減の観点から2枚以上であれば良く、プレス前の積層時の取り扱い安さの観点から、40枚以下が好ましく、より好ましくは20枚以下、更に好ましくは10枚以下である。
【0077】
上記プレス工程において、用いるスペーサーの厚さとしては、プレス時に天板中央から圧力が加わり、中央付近はスペーサー付近の外周部より薄くなる点から、0.05〜5mmが好ましく、より好ましくは0.1〜1mm、更に好ましくは0.2〜0.5mmである。
炭素フォームを積層圧縮する際には、用いるスペーサーの厚さとしては、0.05mm〜1mmが好ましく、0.1mm〜0.3mmがより好ましい。
積層した樹脂フォーム又は炭素フォームの厚さに対する、上記スペーサー厚さの割合としては、適度な空隙率を有するフォームが得られる観点から、1〜50%が好ましく、より好ましくは2〜10%である。
【0078】
上記プレス工程は、発生する分解性脱離ガス排出の観点から、減圧排気をしながら行うことが好ましい。減圧排気の条件としては、圧力30Pa以下とすることが好ましく、より好ましくは10Pa以下である。プレス工程において、減圧排気は、昇温開始から降温終了までの間続けてもよいし、樹脂フォームと空気中の酸素が反応しにくい150℃以上の温度領域の間でのみ行ってもよい。
【0079】
上記プレス工程における昇温条件は、分解性脱離ガスの単位時間当たりの生成量抑制の観点から、1〜20℃/分であることが好ましく、生産性の観点からより好ましくは3〜10℃/分である。
【0080】
上記プレス工程におけるプレス温度は、樹脂フォームの軟化温度と基材からの剥離性の観点から、250〜400℃であることが好ましく、より好ましくは320〜380℃である。
炭素フォームを積層圧縮する際には、表面の酸化防止の観点から、100℃以上250℃以下が好ましく、120℃以上180℃以下がより好ましい。
また、上記プレス工程におけるプレス時間は、フォーム構造の維持と基材からの剥離性の観点から、5〜120分であることが好ましく、より好ましくは20〜60分である。
また、上記プレス工程におけるプレス圧力は、天板中央部にかかる圧力によるたわみの観点から、0.1〜10MPaであることが好ましく、より好ましくは0.5〜3MPaである。
【0081】
上記プレス工程における降温条件は、プレス装置保護の観点から、1〜30℃/分であることが好ましく、より好ましくは生産性の観点から5〜20℃/分である。
【0082】
上記プレス工程を経た積層樹脂フォームを炭素化する際にも、たわみを抑制する観点から黒鉛板等を載せて圧縮荷重を加えることが望ましい。この場合印加する圧縮荷重は、好ましくは10Pa以上であり、より好ましくは70Pa以上である。また、好ましくは700Pa以下であり、より好ましくは400Pa以下である。
また上記プレス工程を行った場合、炭素化工程で第1の温度領域で発生する分解性脱離ガス量が減少するため、第1の温度領ではより早い昇温を加えてもよい。生産性の観点から好ましくは2〜50℃/分であり、より好ましくは5〜20℃/分である。
本実施形態の炭素フォームは、別途酸化処理を加えてもよく、例えば、炭化工程の途中で酸化する方法、炭素化工程を終えた後に酸化する方法が挙げられる。酸化処理は、酸素存在下で加熱する方法や、化学的に酸化する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<X線CTによる構造解析>
実施例1〜6及び比較例1及び2による炭素フォームに対して、X線CTによる構造解析を行った。具体的には、X線画像を撮像しやすくするため、実施例及び比較例の各々に無電解銅めっきを行った後、試験片を採取し、高分解能3DX線顕微鏡nano3DX(株式会社リガク製)を用いて、採取した試験片に対して構造解析を行った。
図6、
図7に実施例1の炭素フォームより得られるX線CT解析画像を、
図8に
図6の画像のライン、ノード検出を行った画像処理後の図を結果の一例として示す。
具体的な無電解めっき条件、X線CT解析条件は以下のとおりである。
[無電解めっき条件]
サンプルをOPCコンディクリーンMA(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)に70℃で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPCプリディップ49L(奥野製薬工業社製、10mL/Lに蒸留水で希釈、98%硫酸を1.5mL/L添加)に70℃で2分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPCインデューサー50AM(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)及び、OPCインデューサー50CM(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)を1:1で混合した溶液中に45℃で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPC−150クリスタMU(奥野製薬工業社製、150mL/Lに蒸留水で希釈)に室温で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPC−BSM(奥野製薬工業社製、125mL/Lに蒸留水で希釈)に室温で5分間浸漬した。続いて化学銅500A(奥野製薬工業社製、250mL/Lに蒸留水で希釈)及び、化学銅500B(奥野製薬工業社製、250mL/Lに蒸留水で希釈)を1:1で混合した溶液中に室温で10分間浸漬した後、蒸留水で5分間洗浄した。その後90℃で12時間真空乾燥を行い、水分を乾燥させた。
【0084】
[X線条件]
X線ターゲット:Cu
X線管電圧:40kV
X線管電流:30mA
[撮影条件]
投影数:1500枚
回転角度:180°
露光時間:20秒/枚
空間解像度:0.54μm/ピクセル
[X線CT解析条件]
得られた3次元画像を、Median filterで隣接する1pixelにて処理し、大津のアルゴリズムを用いて二値化した。
続いて、JSOL社製のソフトウェアsimplewareのCenterline editor(Ver.7)をデフォルトの設定値で使用して、2.16μm以下の線をノイズとして除去した後、測定視野300μm×300μm×300μm内の結合部の数N
n、線状部の数N
lを検出した。
上記構造解析により、試験片に含まれる結合部の数N
n、線状部の数N
l、結合部の密度、互いに直交する3方向(x、y、z)に対する配向角度の平均値を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、表1における配向角度は、圧縮荷重の印加方向をx方向とし、圧縮荷重の印加方向に垂直な方向にy方向及びz方向を設定して求めた値である。
【0085】
<繊維径の評価>
炭素フォームを構成する線状部(炭素繊維)の径dは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)像を画像解析することによって求めた。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍の倍率で炭素フォームを観察し、得られた観察像から、炭素繊維の太さを無作為に20か所測定した。断面形状が円形であると仮定して、この平均太さを算出した。
【0086】
<酸素原子の割合(質量%)の測定>
炭素フォームの酸素含有率は、蛍光X線測定から求めた。蛍光X線測定は、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSX−100E(波長分散型、Rh管球)を用いた。サンプルは20mmφ以上のサイズを用いた。
なお、実施例、比較例に記載の、炭素化処理した後の、酸化処理の前後の試料を用いて、酸化処理前の酸素原子の割合、及び酸化処理後の酸素原子の割合を測定した。
【0087】
<炭素含有率の評価>
炭素フォームの炭素含有率は、蛍光X線測定から求めた。蛍光X線測定は、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSX−100E(波長分散型、Rh管球)を用いた。サンプルは20mmφ以上のサイズを用いた。
なお、実施例、比較例に記載の、炭素化処理した後の、酸化処理の前後の試料を用いて、酸化処理前の炭素含有率、及び酸化処理後の炭素含有率を測定した。
【0088】
<大貫通孔の数>
炭素フォームの単位表面積に対する直径1mm以上の大貫通孔の数は、目視検査及びピンホール検査機(オムロン社製シート検査装置)を用いた検査により、貫通孔を検出することで評価した。
【0089】
(実施例1)
炭素フォームの材料としてメラミン樹脂フォーム(寸法:270mm×270mm×1mm、BASF社製、商品名「BASOTECT W」)を2枚重ね、厚さ0.2mmのSUS板をスペーサーとしてサンプルの周囲に配置し、上下から厚さ10mmの黒鉛板で挟み込んで北川精機社製真空熱プレス機(KVHC−II)に導入した。次いで、真空ポンプにて減圧排気しつつプレス機内の温度を昇温速度:5℃/分で360℃まで昇温し、10分間保持した。昇温中及び360℃で保持する間、2.0MPaの圧力でプレスを行った。その後、機内の温度を40℃まで降温した後、真空ポンプを停止し、プレスを解除した。
次いで、プレスしたメラミン樹脂フォーム上に、270mm×270mm×4mmの黒鉛板を載置して、70Paの圧縮荷重を印加し、この圧縮荷重を印加した状態でメラミン樹脂フォームを熱処理炉内に導入した。続いて、炉内に窒素ガスを流量:2.5L/分で供給し、炉内の温度を昇温速度:5℃/分で1100℃の熱処理温度まで昇温した後、1時間保持してプレスしたメラミン樹脂フォームを炭素化した。その後、炉内の温度を室温まで降温し、炉から炭素化したメラミン樹脂フォームを取り出した。その後、別の加熱炉に移し、乾燥空気流速:1L/分の気流下で300℃にて1時間熱処理することにより、表面を酸化させた積層炭素フォームを得た。こうして実施例1による積層炭素フォームを作製した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0090】
(実施例2)
寸法:270mm×270mm×1mmの実施例1と同様のメラミン樹脂フォームを5枚重ね、厚さ0.5mmのSUS板をスペーサーとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてプレスを行い、プレスしたメラミン樹脂フォームを得た。
次いで、プレスしたメラミン樹脂フォームの上に、270mm×270mm×4mmの黒鉛板を3枚載置して、210Paの圧縮荷重を印加し、この圧縮荷重を印加した状態でメラミン樹脂フォームを熱処理炉内に導入した。真空ポンプにより炉内を減圧排気して炉内の真空度を1Pa未満とした。続いて、減圧排気しつつ炉内に窒素ガスを流量:2L/分で供給し、炉内の温度を昇温速度:5℃/分で800℃まで昇温した。炉内の温度が800℃に到達した時点での炉内の減圧度は約700Paであった。炉内の温度が800℃に到達した時点で窒素ガスの供給を停止し、昇温速度:5℃/分で1500℃の熱処理温度まで昇温し、1時間保持してプレスしたメラミン樹脂フォームを炭素化した。炉内の温度が1500℃に到達した時点での炉内の減圧度は10Pa未満であった。その後、炉内の温度を室温まで降温した後、真空ポンプを停止し、炉から炭素化したメラミン樹脂フォームを取り出した。その後、別の加熱炉に移し、乾燥空気流速:1L/分の気流下で500℃にて1時間熱処理することにより、表面を酸化させた積層炭素フォームを得た。こうして実施例2による積層炭素フォームを作製した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0091】
(実施例3)
寸法:270mm×270mm×0.5mmの実施例1と同様のメラミン樹脂フォームを2枚重ね、スペーサーを0.1mmにしたこと以外は、実施例2と同様にして積層炭素フォームを作製した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0092】
(実施例4)
寸法:270mm×270mm×1mmの実施例2と同様のメラミン樹脂フォームを10枚重ね、スペーサーを0.3mmにしたこと以外は、実施例2と同様にして積層炭素フォームを作製した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0093】
(実施例5)
寸法:270mm×270mm×10mmのメラミン樹脂フォームを単層で、スペーサーを0.5mmにしてプレスしたこと以外は、実施例2と同様にして単層炭素フォームを作製した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0094】
(実施例6)
寸法:270mm×270mm×5mmのメラミン樹脂フォームを単層で、スペーサーを0.5mmにしてプレスしたこと以外は、実施例2と同様にして単層炭素フォームを2枚作製した。その後、真空熱プレス機(KVHC−II)に導入し、スペーサーを0.2mmにして、真空ポンプにて減圧排気しつつプレス機内の温度を昇温速度:5℃/分で150℃まで昇温し、10分間保持した。150℃で保持する間、2.0MPaの圧力でプレスを行った。その後、機内の温度を40℃まで降温した後、真空ポンプを停止し、プレスを解除して積層炭素フォームを作製した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0095】
(比較例1)
寸法:120mm×90mm×2mmの実施例1と同様のメラミン樹脂フォームを1枚用いて、積層を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして単層炭素フォームを作製した。
炭素化した単層炭素フォームを取り出す際に、炭素フォームが一部破断した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0096】
(比較例2)
寸法:120mm×90mm×1mmの実施例1と同様のメラミン樹脂フォームを1枚用いて、積層を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にしてプレス処理、炭素化処理を行い単層炭素フォームを作製した。
炭素化した単層炭素フォームを取り出す際に、炭素フォームが全面で破断した。
得られた炭素フォームの詳細を表1に示す。
【0097】
【表1】