(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782859
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】有害物質を検出するための蒸発密閉室
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20201102BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
G01N1/22 C
G01N1/00 101R
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-556361(P2019-556361)
(86)(22)【出願日】2018年8月2日
(65)【公表番号】特表2020-527223(P2020-527223A)
(43)【公表日】2020年9月3日
(86)【国際出願番号】CN2018098218
(87)【国際公開番号】WO2020000574
(87)【国際公開日】20200102
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】201810682620.6
(32)【優先日】2018年6月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512265766
【氏名又は名称】東莞市升微机電設備科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】夏可瑜
【審査官】
長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第108152451(CN,A)
【文献】
中国実用新案第206074564(CN,U)
【文献】
中国実用新案第205982221(CN,U)
【文献】
中国特許出願公開第106226483(CN,A)
【文献】
西独国特許出願公開第2102439(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉室(1)と吸気装置(2)を含み、前記吸気装置(2)が密閉室(1)の内部に連通しており、前記密閉室(1)に排気管(3)が接続されており、前記密閉室(1)にサンプリング口(4)が開設されている有害物質を検出するための蒸発密閉室であって、
前記密閉室(1)には、ガスのサンプリング過程で密閉室(1)内部のガス容積を補償するガス補償装置(5)が設けられており、前記ガス補償装置(5)は、密閉室(1)の1つの面又は複数の面に設けられており、前記ガス補償装置(5)は、オリフィス板(6)、押圧プレート(7)、駆動装置(8)及び弾性フィルム(9)を含み、前記オリフィス板(6)は密閉室(1)の任意の1つの面又は複数の面に装設されており、前記弾性フィルム(9)は対応するオリフィス板(6)の外側面に設けられており、前記押圧プレート(7)は対応する弾性フィルム(9)の外側面に設けられており、前記駆動装置(8)は、対応する押圧プレート(7)に伝動接続されて、押圧プレート(7)を前後に運動させるよう駆動することで、弾性フィルム(9)をしっかりと押圧してオリフィス板(6)に接触させ、前記吸気装置(2)は、第1送風機又はポンプ(16)、フィルタ(17)及びバルブ(18)を含み、前記第1送風機又はポンプ(16)、フィルタ(17)及びバルブ(18)は密閉室(1)の内部と連通していることを特徴とする蒸発密閉室。
【請求項2】
前記密閉室(1)のカバーには断熱ジャケット(10)が設けられており、前記断熱ジャケット(10)に温度制御システムが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項3】
前記ガス補償装置(5)の外側面には保護カバー(11)が覆設されており、前記保護カバー(11)は押圧プレート(7)の外側面に覆設されていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項4】
前記密閉室(1)には密閉室扉(12)が設けられており、前記密閉室(1)の内部又は外部には温度制御又は/及び湿度制御装置(13)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項5】
前記密閉室(1)内には撹拌器(14)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項6】
前記密閉室(1)の内壁には、有害物質の吸着を防止するための吸着防止コーティング層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項7】
前記排気管(3)には排気弁(15)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項8】
前記密閉室(1)には内部清浄装置(19)が接続されており、前記内部清浄装置(19)は、清浄回路(20)、吸気口バルブ(21)、排気口バルブ(22)、清浄フィルタ(23)及び第2送風機(24)を含み、前記清浄回路(20)の両端は密閉室(1)にそれぞれ接続されることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項9】
前記密閉室(1)の外部には吸気弁(25)と吸気流量計(26)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【請求項10】
前記弾性フィルム(9)はフッ化物弾性フィルムとすることを特徴とする請求項1に記載の有害物質を検出するための蒸発密閉室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密閉室の技術分野に関し、より具体的には、有害物質を検出するための蒸発密閉室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の燃料タンク、タイヤ、自動車の外装、自動車シャーシといった部品からはいずれも有害物質が揮発する。揮発性有害物質は濃度が一定の範囲を上回ると人体に害を及ぼすことから、自動車の有害物質を収集及び検出することが必要である。
【0003】
現在、工業的には、揮発性有害物質をサンプリング及び検出するシステムが多数存在している。
図3は、密閉室100、内部補償バッグ200及び外部補償バッグ300を含む従来の蒸発密閉室を示している。内部補償バッグ200は、スタンドを介して密閉室100内に固着されるとともに、密閉室100の内部上方に設けられている。また、外部補償バッグ300は、ダクトを通じて密閉室100の内部と連通している。検出開始前には、内部補償バッグ200及び外部補償バッグ300内の一部又は全てのガスが排出される。検出過程では、密閉室100内部のガスの増減に伴って、内部補償バッグ200と外部補償バッグ300が速やかに密閉室100内部のガスを補償する。これにより、気圧の差に起因して密閉室100外部の汚染ガスが密閉室100の内部に出入りするとの事態が防止されるため、テスト精度が向上する。しかし、内部補償バッグ200を設置する場合、内部補償バッグ200は大きく、且つ大型のスタンドで固定する必要があるため、サンプリング及び検出の際に、内部補償バッグ200の外部やスタンドに一定の有害物質が残留し、テスト精度に影響を及ぼす。また、サンプリング及び検出時にガスが外部補償バッグ300に進入するが、外部補償バッグ300の内部はクリーニングが容易でない。そのため、外部補償バッグ300の内部に有害物質が排出されないまま残留し、テスト精度に影響してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における上記の瑕疵を解消し、外部環境又はその他の不確定因子によるテスト結果への影響を回避可能とすることで、検出精度を効果的に向上可能な有害物質を検出するための蒸発密閉室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を実現するために、本発明は、有害物質を検出するための蒸発密閉室であって、密閉室と吸気装置を含み、前記吸気装置が密閉室の内部に連通しており、前記密閉室に排気管が接続されており、前記密閉室にサンプリング口が開設されており、前記密閉室には、ガスのサンプリング過程で密閉室内部のガス容積を補償するガス補償装置が設けられており、前記ガス補償装置は、密閉室の1つの面又は複数の面に設けられており、前記ガス補償装置は、オリフィス板、押圧プレート、駆動装置及び弾性フィルムを含み、前記オリフィス板は密閉室の任意の1つの面又は複数の面に装設されており、前記弾性フィルムは対応するオリフィス板の外側面に設けられており、前記押圧プレートは対応する弾性フィルムの外側面に設けられており、前記駆動装置は、対応する押圧プレートに伝動接続されて、押圧プレートを前後に運動させるよう駆動することで、弾性フィルムをしっかりと押圧してオリフィス板に接触させ、前記吸気装置は、第1送風機又はポンプ、フィルタ及びバルブを含み、前記第1送風機又はポンプ、フィルタ及びバルブは密閉室の内部と連通している蒸発密閉室を提供する。
【0006】
好ましくは、前記密閉室のカバーには断熱ジャケットが設けられており、前記断熱ジャケットに温度制御システムが設けられている。
【0007】
好ましくは、前記ガス補償装置の外側面には保護カバーが覆設されており、前記保護カバーは押圧プレートの外側面に覆設されている。
【0008】
好ましくは、前記密閉室には密閉室扉が設けられており、前記密閉室の内部又は外部には温度制御又は/及び湿度制御装置が設けられている。
【0009】
好ましくは、前記密閉室内には撹拌器が設けられている。
【0010】
好ましくは、前記密閉室の内壁には、有害物質の吸着を防止するための吸着防止コーティング層が設けられている。
【0011】
好ましくは、前記排気管には排気弁が設けられている。
【0012】
好ましくは、前記密閉室には内部清浄装置が接続されており、前記内部清浄装置は、清浄回路、吸気口バルブ、排気口バルブ、清浄フィルタ及び第2送風機を含み、前記清浄回路の両端は密閉室にそれぞれ接続される。
【0013】
好ましくは、前記密閉室の外部には吸気弁と吸気流量計が設けられている。
【0014】
好ましくは、前記弾性フィルムはフッ化物弾性フィルムとする。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0016】
即ち、本発明は構造がシンプルであり、密閉室と、ガスのサンプリング過程で密閉室内部のガス容積を補償するガス補償装置を含む。ガス補償装置は、密閉室の1つの面又は複数の面に設けられている。また、ガス補償装置は、オリフィス板、押圧プレート、駆動装置及び弾性フィルムを含む。オリフィス板は密閉室の任意の1つの面又は複数の面に装設されており、弾性フィルムが対応するオリフィス板の外側面に設けられている。また、押圧プレートが対応する弾性フィルムの外側面に設けられている。駆動装置は、対応する押圧プレートに伝動接続されており、押圧プレートを前後に運動させるよう駆動することで、弾性フィルムをしっかりと押圧してオリフィス板に接触させる。弾性フィルムを設けることで、弾性フィルムが、密閉室の温度の上昇に伴って膨出し、温度の下降に伴って収縮するため、密閉室内のガスを速やかに補償可能となる。また、オリフィス板を設けることで、有害物質がガス補償装置に残留してテスト精度に影響するとの事態が効果的に回避される。且つ、構造全体をよりシンプルに設けているため、外部環境又はその他の不確定因子による検出結果への影響が効果的に回避され、検出精度が向上する。
【0017】
本発明の実施例又は従来技術における技術方案をより明確に説明すべく、以下に、実施例又は従来技術の記載にあたり使用を要する図面について簡単に説明する。なお、言うまでもなく、以下に記載する図面は本発明の実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなくこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明で提供する有害物質を検出するための蒸発密閉室の全体構造を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明で提供する有害物質を検出するための蒸発密閉室の構造の一部を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明で提示する従来の蒸発密閉室の全体構造を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明で提供する有害物質を検出するための他の蒸発密閉室の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明らかとすべく、以下に、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、本発明の実施例における技術方案について明瞭簡潔に述べる。なお、言うまでもなく、ここで記載する実施例は本発明の実施例の一部であって、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて当業者が創造的労働を要さずに取得するその他あらゆる実施例は、いずれも本発明による保護の範囲に属する。
【実施例1】
【0020】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施例1は、密閉室1と、ガスのサンプリング過程で密閉室1内部のガス容積を補償するガス補償装置5を含む有害物質を検出するための蒸発密閉室を提供する。ガス補償装置5は、密閉室1の1つの面又は複数の面に設けられている。また、ガス補償装置5は、オリフィス板6、押圧プレート7、駆動装置8及び弾性フィルム9を含む。オリフィス板6は密閉室1の任意の1つの面又は複数の面に装設されており、弾性フィルム9が対応するオリフィス板6の外側面に設けられている。また、押圧プレート7が対応する弾性フィルム9の外側面に設けられている。駆動装置8は、対応する押圧プレート7に伝動接続されており、押圧プレート7を前後に運動させるよう駆動することで、弾性フィルム9をしっかりと押圧してオリフィス板6に接触させる。以下に、図面を組み合わせて、本実施例について詳細に説明する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、吸気装置2が密閉室1の内部に連通しており、密閉室1には排気管3が接続されている。また、密閉室1にはサンプリング口4が開設されている。密閉室1には、ガスのサンプリング過程で密閉室1内部のガス容積を補償するガス補償装置5が設けられている。ガス補償装置5は、密閉室1の1つの面又は複数の面に設けられている。また、ガス補償装置5は、オリフィス板6、押圧プレート7、駆動装置8及び弾性フィルム9を含む。オリフィス板6は密閉室1の任意の1つの面又は複数の面に装設されており、弾性フィルム9が対応するオリフィス板6の外側面に設けられている。また、押圧プレート7が対応する弾性フィルム9の外側面に設けられている。駆動装置8は、対応する押圧プレート7に伝動接続されており、押圧プレート7を前後に運動させるよう駆動することで、弾性フィルム9をしっかりと押圧してオリフィス板6に接触させる。弾性フィルム9は、密閉室1内の温度の上昇に伴って膨出し、温度の下降に伴って収縮することで、密閉室1内のガスを速やかに補償可能とする。また、オリフィス板6を設置し、且つ、オリフィス板6上の孔径を大径とすることで密閉室1内のガスを自在に流動可能としているため、有害物質がガス補償装置5に残留してテスト精度に影響するとの事態が効果的に回避される。且つ、構造全体をよりシンプルに設けているため、外部環境又はその他の不確定因子による検出結果への影響が効果的に回避され、検出精度が向上する。
【0022】
吸気装置2は、第1送風機又はポンプ16、フィルタ17及びバルブ18を含む。第1送風機又はポンプ16、フィルタ17及びバルブ18は、順に接続されるとともに密閉室1の内部と連通する。また、排気管3には排気弁15が設けられている。テスト開始前の準備作業において、第1送風機又はポンプ16は密閉室1内部に送風し、密閉室1内部の空気を置換し直す。換気が完了すると、バルブ18を閉止して送風を停止するとともに、排気管3の排気弁15を閉止して排気を停止することで、準備作業を完了する。検出開始前に、密閉室1に清浄なガスを導入し、密閉室1内の元々の汚染ガスを排出することで、密閉室1のガス洗浄及び換気を行う。これにより、検出のための標準的且つ安定したテスト環境が提供されることから、検出精度が効果的に保証される。
【0023】
好ましくは、密閉室1のカバーに断熱ジャケット10が設けられ、断熱ジャケット10に温度制御システムが設けられている。断熱ジャケット10を設置することで、密閉室1の温度が効果的に維持されるため、検出精度が保証される。
【0024】
好ましくは、ガス補償装置5の外側面に保護カバー11が覆設されている。保護カバー11を押圧プレート7の外側面に覆設することで、弾性フィルム9の破損が回避されるため、機器の使用寿命が効果的に保証される。
【0025】
本実施例において、密閉室1には密閉室扉12が設けられている。また、密閉室1の内部又は外部には、温度制御又は/及び湿度制御装置13が設けられている。温度制御又は/及び湿度制御装置13を設置し、密閉室1内の温度及び湿度を調節することで、有害物質の検出のために安定的なテスト環境が提供されるため、検出精度が向上する。また、密閉室1内には撹拌器14が設けられており、撹拌器14を設置することで、密閉室1内部のガスを均一に攪拌する。
【0026】
好ましくは、密閉室1の内壁に、有害物質の吸着を防止するための吸着防止コーティング層が設けられている。これにより、有害物質が密閉室1の内壁に吸着してテスト精度に影響するとの事態が効果的に防止される。
【0027】
好ましくは、弾性フィルム9をフッ化物弾性フィルムとする。具体的には、該フッ化物材料をポリテトラフルオロエチレン又はその他のフッ化物とすればよい。フッ化物材料からなる補償バッグは、補償バッグの外壁が揮発性有機化合物を吸着するとの事態を防止可能なことから、テスト精度が向上する。
【0028】
好ましくは、密閉室1に内部清浄装置19が接続されている。内部清浄装置19は、清浄回路20、吸気口バルブ21、排気口バルブ22、清浄フィルタ23及び第2送風機24を含む。吸気口バルブ21、排気口バルブ22、清浄フィルタ23及び第2送風機24は、清浄回路20を介して順に接続されている。清浄回路20の両端は、密閉室1にそれぞれ接続される。
【0029】
有害物質を検出するための蒸発密閉室は、以下の検出ステップを含む。
【0030】
(1)排気弁15を開放し、第1送風機又はポンプ16又はバルブ18を運転することで、外気がフィルタ17により濾過されて密閉室1の内部に進入し、密閉室1内部の汚染ガスを清浄なガスに置換する。且つ、密閉室1内部の撹拌器14を起動するとともに、温度制御又は/及び湿度制御装置13を起動してもよい。
【0031】
(2)試験対象物を密閉室1に載置する。また、内部清浄装置19を運転することで密閉室1を清浄化する。
【0032】
(3)内部清浄装置19を停止するとともに、吸気口バルブ21又は/及び排気口バルブ22を閉止する。
【0033】
(4)駆動装置8が押圧プレート7を運動させるよう駆動して、弾性フィルム9をオリフィス板6にしっかりと押圧する。また、密閉室1内部の温度をt1となるよう制御する。このとき、密閉室1内部の容積はV1となる。
【0034】
(5)駆動装置8が位置回復するとともに、密閉室1内部の温度をt2まで上昇させる。すると、弾性フィルム9が膨張する。このとき、密閉室1内部の容積は、V2=(273+T2)/(273+T1)*V1となる。
【0035】
(6)密閉室1内部の温度を引き続きt3まで上昇させると、弾性フィルム9は膨張を続ける。このとき、密閉室1の容積は、V3=(273+T3)/(273+T1)*V1となる。
【0036】
(7)調節の完了後、密閉室1内部の温度がt1からt3の間となるよう運転制御する。試験対象物は、異なる温度への変化過程で汚染物質を密閉室1に排出する。サンプリング口4から密閉室1内部の汚染物質の濃度が検出されることで、試験状態における試験対象物の汚染物質排出量が得られる。
【0037】
このように、テスト前に密閉室1内部の汚染ガスを排出して清浄なガスに置換し、テストのために清潔且つ汚染のないテスト環境を提供することで、テスト精度が効果的に向上する。サンプリング過程では、弾性フィルム9が温度の変化に伴って収縮又は膨張し、密閉室1内部のガスを補償する。これにより、気圧の差に起因して外部の汚染ガスが密閉室1の内部に進入するとの事態が効果的に防止されるため、テスト精度が更に向上する。
【実施例2】
【0038】
図4に示すように、本発明の実施例2は、有害物質を検出するための他の蒸発密閉室を提供する。密閉室1の外部には、吸気弁と吸気流量計が設けられている。本発明の実施例2における有害物質を検出するための蒸発密閉室は、上記実施例1における有害物質を検出するための蒸発密閉室の構造と大部分が同じであるため、同一箇所については改めて詳述しない。
【0039】
本実施例において、密閉室1の外部には吸気弁25と吸気流量計26が設けられている。密閉室1の温度をt1となるよう制御するとき、密閉室1の容積はV1となる。駆動装置8が位置回復した後、吸気弁25以外のバルブを閉止するとともに、密閉室1内部の温度をt2まで上昇させると、密閉室1の容積は、V2=(273+T2)/(273+T1)*V1となる。吸気流量計26は、進入する空気の流量が(V2−V1)となるよう制御する。弾性フィルム9が膨張すると吸気弁25を閉止し、密閉室1内部の温度をt3まで上昇させる。そして、密閉室1内部の温度がt1からt3の間となるよう運転制御する。試験対象物は、異なる温度への変化過程で汚染物質を密閉室1に排出する。サンプリング口4から密閉室1内部の汚染物質の濃度が検出されることで、試験状態における試験対象物の汚染物質排出量が得られる。
【0040】
このように、テスト前に密閉室1内部の汚染ガスを排出して清浄なガスに置換し、テストのために清潔且つ汚染のないテスト環境を提供することで、テスト精度が効果的に向上する。サンプリング過程では、弾性フィルム9が温度の変化に伴って収縮又は膨張し、密閉室1内部のガスを補償する。これにより、気圧の差に起因して外部の汚染ガスが密閉室1の内部に進入するとの事態が効果的に防止されるため、テスト精度が更に向上する。
【0041】
上述したように、本発明は構造がシンプルであり、密閉室1と、ガスのサンプリング過程で密閉室1内部のガス容積を補償するガス補償装置5を含む。ガス補償装置5は、密閉室1の1つの面又は複数の面に設けられている。また、ガス補償装置5は、オリフィス板6、押圧プレート7、駆動装置8及び弾性フィルム9を含む。オリフィス板6は密閉室1の任意の1つの面又は複数の面に装設されており、弾性フィルム9が対応するオリフィス板6の外側面に設けられている。また、押圧プレート7が対応する弾性フィルム9の外側面に設けられている。駆動装置8は、対応する押圧プレート7に伝動接続されており、押圧プレート7を前後に運動させるよう駆動することで、弾性フィルム9をしっかりと押圧してオリフィス板6に接触させる。また、弾性フィルム9を設けることで、弾性フィルム9が、密閉室1内の温度の上昇に伴って膨出し、温度の下降に伴って収縮するため、密閉室1内のガスを速やかに補償可能となる。また、オリフィス板6を設けることで、有害物質がガス補償装置5に残留してテスト精度に影響するとの事態が効果的に回避される。且つ、構造全体をよりシンプルに設けているため、外部環境又はその他の不確定因子による検出結果への影響が効果的に回避され、検出精度が向上する。
【0042】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記実施例に制限されない。本発明の本質及び原理を逸脱することなく実施されるその他あらゆる変形、補足、置き換え、組み合わせ、簡略化はいずれも等価の置換方式とみなされ、本発明による保護の範囲に含まれる。