特許第6782866号(P6782866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6782866
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】飲料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20201102BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20201102BHJP
   A23F 3/14 20060101ALI20201102BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20201102BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20201102BHJP
【FI】
   A23L2/52
   A23L2/00 B
   A23L2/00 F
   A23F3/14
   A23F3/16
   A23L33/105
【請求項の数】5
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-37651(P2020-37651)
(22)【出願日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2019-46442(P2019-46442)
(32)【優先日】2019年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-107100(P2019-107100)
(32)【優先日】2019年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
(72)【発明者】
【氏名】霜田 祐一
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−291441(JP,A)
【文献】 特開2007−282632(JP,A)
【文献】 Analytica Chimica Acta,2011年,Vol. 685,p. 204-211
【文献】 LIU, Yan et al., Effects of brewing conditions on the phytochemical composition, sensory qualities and antioxidant a,Food Chemistry,2018年,269(15),pp.24-34
【文献】 鶴永陽子ら,市販柿葉茶22種類の総アスコルビン酸含量、アストラガリン含量、ポリフェノール含量およびラジカル捕捉活,日本家政学会誌,2011年,62(7),pp.437-444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F3/00−5/50,
A23L2/00−2/84,33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII),
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS (STN),
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.030〜0.10質量%
(B)エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種以上、及び
(C)アストラガリン
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.060〜2.0であり、
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が1.0×10-3〜20×10-3である、飲料組成物。
【請求項2】
成分(A)の含有量が0.045〜0.088質量%である、請求項1記載の飲料組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量が0.0020〜0.20質量%である、請求項1又は2記載の飲料組成物。
【請求項4】
成分(C)の含有量が0.50〜20質量ppmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料組成物。
【請求項5】
茶飲料又は酸性飲料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非重合体カテキン類は、Camellia属の茶葉に含まれるポリフェノール化合物の1種であり、様々な生理活性を有することから、飲食品への応用が注目されている。中でも、生活習慣として手軽に摂取できることから、茶飲料の需要が増大しているが、茶本来の香りが豊かで、甘味が引き立ち、苦味や渋味が抑えられた茶飲料が好まれる傾向がある。
【0003】
従来、カフェイン含有量を低減させた茶飲料に、一定量のエタノールを含有させることにより、茶本来の甘味が改善された茶飲料が得られることが報告されている(特許文献1)。また、非重合体カテキン類含有飲料を、非重合体カテキン類とエタノールとを特定量共存させた状態で加熱し、当該飲料を容器に充填して密封した後、容器詰飲料を徐々に冷却することで、茶風味の香り立ちの豊かな容器詰飲料が得られるとの報告もある(特許文献2)。更に、茶飲料にメチルメチオニンスルホニウム塩を特定量添加するか、あるいは茶飲料にエタノール又はプロピレングリコールを特定量添加して、該茶飲料を特定条件にて加熱殺菌をすることで、加熱殺菌により低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、その香味及び旨味を長期間持続できる容器詰茶飲料が得られることも報告されている(特許文献3)。
【0004】
一方、アストラガリンは、柿の葉や桑の葉に含まれるポリフェノール化合物の1種であり、抗アレルギー作用を有することが報告されている。このようなアストラガリンの生理作用に着目し、飲食品への応用が検討されており、例えば、アストラガリンに、果糖、ガラクトース、乳糖及びブドウ糖からなる群から選ばれる糖の1種又は2種以上を配合することで、アストラガリンの吸収性が向上することが報告されている(特許文献4)。また、桑葉抽出エキス、玄米エキス及び緑茶エキスを混合したブレンド茶飲料も提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−122968号公報
【特許文献2】特開2016−123416号公報
【特許文献3】特開2016−154500号公報
【特許文献4】特開2002−291441号公報
【特許文献5】特開2007−282632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非重合体カテキン類を強化した飲料組成物とすれば、生理効果の増強が期待できるが、非重合体カテキン類は渋味を有することから、非重合体カテキン類の高濃度化には限界がある。
本発明の課題は、非重合体カテキン類を強化しつつも、渋味が抑制された飲料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、非重合体カテキン類を強化した飲料組成物に、非重合体カテキン類に対して、渋味物質として知られるアストラガリンと、特定のアルコールを、それぞれ一定の量比で含有させることで、非重合体カテキン類を強化しつつも、渋味が抑制された飲料組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.030〜0.10質量%
(B)エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種以上、及び(C)アストラガリン
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.060〜2.0であり、
成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が1.0×10-3〜20×10-3である、飲料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非重合体カテキン類を強化しつつも、渋味が抑制された飲料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲料組成物は、成分(A)として非重合体カテキン類を含有する。ここで、本明細書において「(A)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称である。本発明においては、上記8種の非重合体カテキン類のうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、成分(A)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、非重合体カテキン類を含有する植物から抽出したものでもよい。
【0011】
本発明の飲料組成物は、成分(A)の含有量が0.030〜0.10質量%であるが、非重合体カテキン類の強化の観点から、0.035質量%以上が好ましく、0.045質量%以上がより好ましく、0.052質量%以上が更に好ましく、また渋味抑制の観点から、0.095質量%以下が好ましく、0.088質量%以下がより好ましく、0.086質量%以下が更に好ましい。成分(A)の含有量の範囲としては、本発明の飲料組成物中に、好ましくは0.035〜0.095質量%であり、より好ましくは0.045〜0.088質量%であり、更に好ましくは0.052〜0.086質量%である。なお、成分(A)の含有量は、上記8種の非重合体カテキン類の合計量に基づいて定義される。また、成分(A)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィーで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0012】
本発明の容器詰茶飲料は、成分(A)の種類に特に限定はないが、渋味抑制の観点から、非重合体カテキン類中のガレート体の割合(ガレート体率)が0〜85質量%であることが好ましく、20〜75質量%がより好ましく、30〜65質量%が更に好ましく、35〜60質量%がより更に好ましく、40〜55質量%が殊更に好ましい。ここで、本明細書において「ガレート体率」とは、非重合体カテキン類8種に対する上記ガレート体4種の質量比率をいう。
【0013】
本発明の飲料組成物は、成分(B)としてエタノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種以上を含有する。これら3種のアルコールは、単独で含有しても、2以上を任意に組み合わせて含有してもよいが、渋味抑制の観点から、プロピレングリコールを含有することが好ましい。
【0014】
本発明の飲料組成物中の成分(B)の含有量は、渋味抑制の観点から、0.0020質量%以上が好ましく、0.0030質量%以上がより好ましく、0.0060質量%以上が更に好ましく、0.0075質量%以上がより更に好ましく、また異臭抑制の観点から、0.20質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.12質量%以下が更に好ましく、0.080質量%以下がより更に好ましく、0.060質量%以下が殊更に好ましい。かかる成分(B)の含有量の範囲としては、本発明の飲料組成物中に、好ましくは0.0020〜0.20質量%であり、より好ましくは0.0030〜0.15質量%であり、更に好ましくは0.0060〜0.12質量%であり、より更に好ましくは0.0075〜0.080質量%であり、殊更に好ましくは0.0075〜0.060質量%である。なお、本明細書において成分(B)の含有量は、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンの合計含有量とする。また、成分(B)の含有量は、通常知られている方法により分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0015】
本発明の飲料組成物は、成分(C)としてアストラガリンを含有する。ここで、本明細書において「アストラガリン」とは、ケンフェロールの3位にグルコースが結合した化合物である。成分(C)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。また、成分(C)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、アストラガリンを含有する植物から抽出したものでもよい。成分(C)の市販品としては、例えば、Kaempferol 3-beta-D-glucopyranoside(シグマアルドリッチジャパン合同社製)等を挙げることができる。
【0016】
本発明の飲料組成物中の成分(C)の含有量は、渋味抑制の観点から、0.50質量ppm以上が好ましく、0.70質量ppm以上がより好ましく、0.90質量ppm以上が更に好ましく、1.1質量ppm以上がより更に好ましく、1.5質量ppm以上がより更に好ましく、2.5質量ppm以上が殊更に好ましく、そして20質量ppm以下が好ましく、15質量ppm以下がより好ましく、8.0質量ppm以下が更に好ましい。かかる成分(C)の含有量の範囲としては、本発明の飲料組成物中に、好ましくは0.50〜20質量ppmであり、より好ましくは0.70〜15質量ppmであり、更に好ましくは0.90〜15質量ppmであり、より更に好ましくは1.1〜15質量ppmであり、より更に好ましくは1.5〜15質量ppmであり、殊更に好ましくは2.5〜8.0質量ppmである。なお、成分(C)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィーで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0017】
本発明の飲料組成物は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.060〜2.0であるが、渋味抑制の観点から、0.070以上が好ましく、0.090以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましく、また異臭抑制の観点から、1.8以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.4以下が更に好ましく、1.2以下がより更に好ましく、1.0以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、好ましくは0.070〜1.8であり、より好ましくは0.090〜1.6であり、更に好ましくは0.10〜1.4であり、より更に好ましくは0.10〜1.2であり、殊更に好ましくは0.10〜1.0である。
【0018】
本発明の飲料組成物は、成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が1.0×10-3〜20×10-3であるが、渋味抑制の観点から、1.1×10-3以上が好ましく、1.3×10-3以上がより好ましく、1.5×10-3以上が更に好ましく、そして18×10-3以下が好ましく、15×10-3以下がより好ましく、12×10-3以下が更に好ましい。かかる質量比[(C)/(A)]の範囲としては、好ましくは1.1×10-3〜18×10-3であり、より好ましくは1.3×10-3〜15×10-3であり、更に好ましくは1.5×10-3〜12×10-3である。なお、質量比[(C)/(A)]は、成分(A)と成分(C)の含有量の単位を揃えて算出するものとする。
【0019】
本発明の飲料組成物は、所望により、甘味料、酸味料、ビタミン、ミネラル、エステル、乳化剤、保存料、調味料、果汁エキス、野菜エキス、花蜜エキス、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0020】
本発明の飲料組成物は、例えば、液状でも、固形状でもよく、適宜の形態を採り得る。
例えば、本発明の飲料組成物が液状である場合、飲料の形態は、RTD(ストレート飲料)のみならず、濃縮還元飲料、ゼリー状、濃縮液状、スラリー状等の形態でもよい。中でも、利便性の観点から、RTD(ストレート飲料)が好ましい。ここで、本明細書において「RTD」とは、希釈せずにそのまま飲用できる飲料をいう。ゼリー状である場合、容器に備え付けられた吸い口やストローから飲料を吸引できれば、その固形分濃度は特に限定されず、適宜選択可能である。また、本発明の飲料組成物が固形状である場合、常温(20℃±15℃)において固体であればその形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の種々の形状とすることができる。本発明の固形状飲料組成物中の固形分量は通常95質量%以上、好ましくは97質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
なお、本発明の飲料組成物が濃縮物又は固形物の形態である場合、前述の成分(A)の含有量が上記範囲内となるように水で希釈してRTD(ストレート飲料)としたときに、質量比[(B)/(A)]及び質量比[(C)/(A)]が上記要件を満たせばよい。
【0021】
本発明の飲料組成物は、茶飲料でも、酸性飲料でもよい。ここで、本明細書において「茶飲料」とは、Camellia属の茶葉を茶原料として含む飲料をいう。
Camellia属の茶葉としては、例えば、C.sinensis.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶葉(Camellia sinensis)が挙げられる。茶葉は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。Camellia属の茶葉は、1種又は2種以上を使用することができる。また茶葉は火入れ加工が施されていてもよい。
不発酵茶としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が挙げられる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、茶原料として不発酵茶又は半発酵茶を使用することが好ましく、不発酵茶が更に好ましい。
【0022】
また、Camellia属の茶葉以外の茶原料として、穀物やCamellia属以外の茶葉を使用してもよい。穀物としては、例えば、大麦、小麦、ハト麦、ライ麦、燕麦、裸麦等の麦;玄米等の米;大豆、黒大豆、ソラマメ、インゲン豆、小豆、エビスクサ、ササゲ、ラッカセイ、エンドウ、リョクトウ等の豆;ソバ、トウモロコシ、白ゴマ、黒ゴマ、粟、稗、黍、キヌワ等の雑穀を挙げることができる。また、Camellia属以外の茶葉としては、例えば、イチョウの葉、柿の葉、ビワの葉、桑の葉、クコの葉、杜仲の葉、小松菜、ルイボス、クマザサ、ドクダミ、アマチャヅル、スイカズラ、ツキミソウ、カキドオシ、カワラケツメイ、ギムネマ・シルベスタ、黄杞茶(クルミ科)、甜茶(バラ科)、キダチアロエ等が挙げられる。更に、カモミール、ハイビスカス、ペパーミント、レモングラス、レモンピール、レモンバーム、ローズヒップ、ローズマリー等のハーブも用いることができる。Camellia属以外の茶葉は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0023】
中でも、本発明の効果を享受しやすい点から、茶飲料としては緑茶飲料又は烏龍茶飲料が好ましく、緑茶飲料が更に好ましい。茶飲料が緑茶飲料である場合、全茶原料中で緑茶葉を最も多く使用する緑茶飲料がより好ましく、茶原料として緑茶葉のみを使用する緑茶飲料が更に好ましい。なお、抽出方法としては、例えば、ニーダー抽出、攪拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。また、抽出条件は特に限定されず、抽出方法により適宜選択することができる。
【0024】
本発明の飲料組成物が茶飲料である場合、pH(20℃)は通常5〜7であるが、風味バランスの観点から、5.1以上が好ましく、5.3以上がより好ましく、5.5以上が更に好ましく、そして6.7以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.4以下が更に好ましい。かかるpHの範囲としては、好ましくは5.1〜6.7であり、より好ましくは5.3〜6.5であり、更に好ましくは5.5〜6.4である。なお、本明細書においてpHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定するものとする。
【0025】
また、本明細書において「酸性飲料」とは、pH(20℃)が2以上5未満である飲料をいう。酸性飲料のpH(20℃)は、好ましくは2.5以上、更に好ましくは3以上であって、好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下である。かかるpHの範囲としては、好ましくは2.5〜4.5、更に好ましくは3〜4である。このような酸性飲料として、例えば、炭酸ガス及び/又は酸味料を添加することで酸性化した飲料、果汁、果実酢又は穀物酢を添加した飲料、乳成分をビフィズス菌や乳酸菌等で発酵することで酸性化した飲料を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸等の有機酸及び/又はその塩が挙げられる。
【0026】
本発明の飲料組成物が酸性飲料である場合、炭酸酸性飲料でも、非炭酸酸性飲料でもよいが、本発明の効果を享受しやすい点で、非炭酸酸性飲料が好ましい。好適な非炭酸酸性飲料として、果汁飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、ゼリー飲料、乳清飲料等を挙げることができる。ここで、本明細書において「スポーツ飲料」とは、運動や日常生活等で発汗等によって失われた水分、電解質、ミネラル、エネルギーを効率よく補給することを目的とした清涼飲料水であり、ナトリウム濃度が0.010質量%以上の酸性飲料をいう。
【0027】
本発明の飲料組成物がスポーツ飲料である場合、飲料組成物中の成分(D)としてナトリウム濃度を0.010質量%以上含有する。スポーツ飲料中の成分(D)の含有量は、渋味抑制の観点から、0.013質量%以上が好ましく、0.015質量%以上がより好ましく、0.018質量%以上が更に好ましく、0.020質量%以上がより更に好ましく、また塩味の観点から、0.080質量%以下が好ましく、0.060質量%以下がより好ましく、0.055質量%以下が更に好ましく、0.050質量%以下がより更好ましい。かかる成分(D)の含有量の範囲としては、本発明の飲料組成物中に、好ましくは0.013〜0.080質量%であり、より好ましくは0.015〜0.060質量%であり、更に好ましくは0.018〜0.055質量%であり、より更に好ましくは0.020〜0.050質量%である。なお、成分(D)の含有量は、通常知られている方法により分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0028】
本発明の飲料組成物がRTDである場合、容器詰飲料でもよい。容器としては通常の包装容器であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等が挙げられる。
【0029】
また、本発明の飲料組成物がRTDである場合、加熱殺菌済でもよい。加熱殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されない。例えば、茶飲料を容器包装に充填し、密栓若しくは密封した後殺菌するか、又は自記温度計をつけた殺菌器等で殺菌したもの若しくはろ過器等で除菌したものを自動的に容器包装に充填した後、密栓若しくは密封すればよい。より具体的には、レトルト殺菌法、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)等を挙げることができる。
【0030】
また、加熱殺菌は、容器内の中心部の温度を85℃で30分間加熱する方法、又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うことができる。例えば、F0値が0.005〜40、好ましくは0.006〜35、更に好ましくは0.007〜30となる条件で加熱殺菌することができる。ここで、本明細書において「F0値」とは、飲料組成物を加熱殺菌した場合の加熱殺菌効果を評価する値で、基準温度(121.1℃)に規格化した場合の加熱時間(分)に相当する。F0値は、容器内温度に対する致死率(121.1℃で1)に、加熱時間(分)を乗じて算出される。致死率は致死率表(藤巻正生ら、「食品工業」、恒星社厚生閣、1985年、1049頁)から求めることができる。F0値を算出するには、一般的に用いられる面積計算法、公式法等を採用することができる(例えば谷川ら《缶詰製造学》頁220、恒星社厚生閣 参照)。本発明において、F0値を所定の値になるよう設定するには、例えば、予め得た致死率曲線から、適当な加熱温度・加熱時間を決定すればよい。
【0031】
本発明の飲料組成物は適宜の方法で製造することができるが、例えば、成分(A)、(B)及び(C)、必要により他の成分を配合し、成分(A)含有量、並びに質量比[(B)/(A)]及び質量比[(C)/(A)]を調整して製造することができる。
【実施例】
【0032】
1.非重合体カテキン類の分析
純水で溶解希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムODS、4.6mmφ×250mm 粒子径5μm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定する。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行う。なお、グラジエント条件は以下の通りである。
【0033】
濃度勾配条件(体積%)
時間 A液濃度 B液濃度
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
60分 97% 3%
【0034】
2.エタノールの分析
エタノールの分析は、次に示すガスクロマトグラフ法にしたがって行う。
分析機器は、GC-14B(島津製作所社製)を使用する。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :FID
・カラム :Gaskuropack55、80〜100mesh、φ3.2mm×3.1m
【0035】
分析条件は次の通りである。
・温度 :試料注入口及び検出機250℃、カラム130℃
・ガス圧力:ヘリウム(キャリアガス)140kPa、水素60kPa、空気50kPa
・注入量 :2μL
【0036】
以下の手順にて分析用試料を調製する。
検体5gを量りとり、これに水を加えて25mLに定容する。その溶液をディスクろ過し、試料溶液とする。調製した試料溶液をガスクロマトグラフ分析に供する。
【0037】
3.プロピレングリコール及びグリセリンの分析
プロピレングリコール及びグリセリンの分析は、次に示すガスクロマトグラフ法にしたがって行う。分析機器は、GCMS−QP2020(島津製作所社製)を使用する。分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :MS
・カラム :InertCap WAX一HT(30m(長さ)、0.25mm(内径)、0.25μm(膜厚))
【0038】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度 :40℃(3min)→20℃/min→250℃(10min)
・カラム圧力 :定流量モード(49kPa)
・カラム流量 :1mL/min(He)
・注入口温度 :250℃
・注入方式 :スプリット(5:1)
・検出器 :MS
・イオン源温度:230℃
・イオン化方法:EI(70eV)
・スキャン範囲:m/z10〜800
・定量イオン :プロピレングリコール m/z76
グリセリン m/z61
【0039】
以下の手順にて分析用試料を調製する。
検体5gを量りとり、これにテトラヒドロフランを加えて25mLに定容する。その溶液を0.2μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液lμLをGC/MSに注入する。定量はプロピレングリコール、グリセリンをTHFで希釈して濃度既知の溶液を調製する。そして、その溶液標品のピーク面積と調製濃度から検量線を作成し、試料のプロピレングリコール及びグリセリン含有量を求める。なお、定量は測定される定量イオンのピーク面積を用いる。
【0040】
4.アストラガリンの分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式LC−20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD−C18(粒子径 3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度40℃にてグラジエント法により行った。移動相C液は酢酸を0.05質量%含有する緩衝溶液、D液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は360nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。
【0041】
濃度勾配条件(体積%)
時間(分) C液濃度 D液濃度
0 85% 15%
20 80% 20%
35 10% 90%
50 10% 90%
50.1 85% 15%
60 85% 15%
【0042】
また、アストラガリンの標準品を用いて濃度既知の溶液を調製し、高速液体クロマトグラフ分析に供することにより検量線を作成し、アストラガリンを指標として、前記試料溶液中のアストラガリンの定量を行った。
【0043】
5.pH測定
検体30mLを50mLのビーカーに量り取り、pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、20℃に温度調整をして測定した。
【0044】
6.ナトリウムイオンの測定
試料2gに10%塩酸5mLを加え、水浴上で蒸発乾固する。さらに10%塩酸5mLを加え、加温した後、全量をメスフラスコに濾過し、水で定容する。1%塩酸を用いて、検量線の範囲内に入るように、適当な濃度に希釈し、20000ppmのストロンチウム液2.5mLを加え、定容したものを試験溶液とする。原子吸光光度計を用いて、試験溶液の吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線からナトリウムの定量を行う。
【0045】
・原子吸光光度計:AA−7000(島津製作所製)
・フレーム:空気−アセチレン
・測定波長:589.0nm
【0046】
製造例1
茶抽出液Iの製造
煎茶葉(宮崎県産、鹿児島県産)30gを90℃の熱水2000gに投入し、3分間抽出を行い、茶殻を除去した後、液温20℃まで冷却し、茶抽出液Iを得た。得られた茶抽出液Iは、非重合体カテキン類の含有量が80mg/100mLであった。なお、アストラガリンは検出されなかった。
【0047】
参考例1
製造例1で得られた茶抽出液Iと、イオン交換水とを表2に示す割合で配合し、次いで重曹でpHが5.8となるように調整し、次いでイオン交換水にて全量を100質量%に調整して緑茶飲料を得た。次いで、得られた緑茶飲料を容量200mLのPETボトルに充填し加熱殺菌した(ポストミックス方式)。殺菌条件は、85℃、30分で行い、F0値は0.0074であった。そして、得られた容器詰緑茶飲料について分析を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
比較例1、4
更に、茶抽出物II(Teavigo、太陽化学社製、エピガロカテキンガレート94質量%、ガレート体率100質量%、以下、同様である。)を表2に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。そして、得られた容器詰緑茶飲料について分析を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
比較例2
更に、茶抽出物IIと、エタノールを表2に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について参考例1と同様に分析を行った。その結果を表2に示す。
【0050】
比較例3
更に、茶抽出物IIと、アストラガリン試薬(シグマアルドリッチジャパン合同社製、Kaempferol 3-beta-D-glucopyranoside、アストラガリン97質量%、以下、同様である。)を表2に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について参考例1と同様に分析を行った。その結果を表2に示す。
【0051】
比較例5
更に、茶抽出物IIとエタノール、アストラガリン試薬を表2に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について参考例1と同様に分析を行った。その結果を表2に示す。
【0052】
実施例1〜6
更に、茶抽出物IIと、エタノールと、アストラガリン試薬を表2に示す割合で配合したこと以外は、参考例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について参考例1と同様に分析を行った。その結果を表2に示す。
【0053】
官能評価1
実施例1〜6、比較例1〜5及び参考例1で得られた各容器詰緑茶飲料の「渋味」について専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、参考例1の容器詰緑茶飲料に表1に示す量の茶抽出物IIを配合して「渋味」の強さを9段階に調整した「渋味標準容器詰緑茶飲料」を調製した。そして、専門パネル4名が各濃度の「渋味標準容器詰緑茶飲料」について、表1に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルが評点の数値が高い「渋味標準容器詰緑茶飲料」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各容器詰緑茶飲料を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準容器詰緑茶飲料」の中から「渋味」が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。その結果を表2に示す。なお、評点は、数値が小さいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
比較例5に示す通り、非重合体カテキン類濃度が低い場合にはエタノール、アストラガリンによる渋味改善効果は確認できなかった。これに対し、実施例1〜6に示す通り、非重合体カテキン類を強化した飲料組成物において、エタノール、アストラガリンによる渋味改善効果が特異的に奏されることがわかる。
【0057】
実施例7
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0058】
実施例8
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、実施例4と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例4と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0059】
実施例9
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、実施例5と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例5と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0060】
比較例6
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、比較例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0061】
比較例7
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、比較例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0062】
比較例8
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、比較例3と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例3と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0063】
比較例9
茶抽出物IIを表3に示す割合で配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例10
茶抽出物IIを表4に示す割合で配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。
【0066】
実施例11
茶抽出物IIを表4に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。
【0067】
実施例12
茶抽出物IIを表4に示す割合で配合したこと以外は、実施例3と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例3と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。
【0068】
比較例10
茶抽出物IIを表4に示す割合で配合したこと以外は、比較例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。
【0069】
比較例11
茶抽出物IIを表4に示す割合で配合したこと以外は、比較例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。
【0070】
比較例12
茶抽出物IIを表4に示す割合で配合したこと以外は、比較例3と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例3と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例13
茶抽出物IIを表5に示す割合で配合したこと以外は、実施例4と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例4と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表5に示す。
【0073】
比較例13
茶抽出物IIを表5に示す割合で配合したこと以外は、比較例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表5に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
実施例14〜16
茶抽出物IIに加え、更に茶抽出物III(カテキン水和物、Cayman Chemical社製.、カテキン98質量%、ガレート体率0質量%、以下、同様である。)を配合して表6に示すガレート体率としたこと以外は、実施例8と同様の操作により、容器詰緑茶飲料を調製した。得られた各容器詰緑茶飲料について実施例8と同様に分析を行った。また、官能評価は、官能評価1に基づいて行った。分析及び官能評価の結果を、実施例8、比較例6、7及び参考例1の結果とともに表6に示す。
【0076】
比較例14、16、18
茶抽出物IIに加え、更に茶抽出物IIIを配合して表6に示すガレート体率としたこと以外は、比較例6と同様の操作により加熱殺菌済容器詰緑茶飲料を調製した。得られた各加熱殺菌済容器詰緑茶飲料について比較例6と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例8、比較例6、7及び参考例1の結果とともに表6に示す。
【0077】
比較例15、17、19
茶抽出物IIに加え、更に茶抽出物IIIを配合して表7に示すガレート体率としたこと以外は、比較例7と同様の操作により加熱殺菌済容器詰緑茶飲料を調製した。得られた各加熱殺菌済容器詰緑茶飲料について比較例7と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例8、比較例6、7及び参考例1の結果とともに表6に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
実施例17〜19及び比較例20
エタノールを表7に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表7に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
実施例20、21
エタノールを表8に示す割合で配合したこと以外は、実施例10と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例10と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例10、比較例10〜12及び参考例1の結果とともに表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
実施例22〜24
エタノールの代わりに、プロピレングリコールを表9に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表9に示す。
【0084】
実施例25
エタノールの代わりに、エタノール及びプロピレングリコールを表9に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表9に示す。
【0085】
比較例21
プロピレングリコールを表9に示す割合で配合したこと以外は、比較例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表9に示す。
【0086】
【表9】
【0087】
実施例26〜28
エタノールの代わりに、グリセリンを表10に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表10に示す。
【0088】
実施例29
エタノールの代わりに、エタノール及びグリセリンを表10に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について実施例2と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表10に示す。
【0089】
比較例22
グリセリンを表10に示す割合で配合したこと以外は、比較例1と同様の操作により容器詰緑茶飲料を調製した。得られた容器詰緑茶飲料について比較例1と同様に分析を行い、官能評価1に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例2、比較例1〜3及び参考例1の結果とともに表10に示す。
【0090】
【表10】
【0091】
参考例2
市販粉末飲料(ポカリスエット、1L用粉末、大塚製薬株式会社)をイオン交換水にて全量が1Lとなるように希釈して非炭酸酸性飲料を調製した。次いで、得られた非炭酸酸性飲料を容量200mLのPETボトルに充填し、加熱殺菌し(ポストミックス方式、)容器詰非炭酸酸性飲料を得た。殺菌条件は、85℃、30分で行い、F0値は0.0074であった。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について分析を行った。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について分析を行った。その結果を表12に示す。
【0092】
比較例23
更に、茶抽出物IIを表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0093】
比較例24
更に、茶抽出物IIと、エタノールを表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0094】
比較例25
更に、茶抽出物IIと、プロピレングリコールを表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0095】
比較例26
更に、茶抽出物IIと、グリセリンを表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0096】
比較例27
更に、茶抽出物IIと、アストラガリン試薬を表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0097】
実施例30
更に、茶抽出物IIと、エタノールと、アストラガリン試薬を表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0098】
実施例31
更に、茶抽出物IIと、プロピレングリコールと、アストラガリン試薬を表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0099】
実施例32
更に、茶抽出物IIと、グリセリンと、アストラガリン試薬を表12に示す割合で配合したこと以外は、参考例2と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例2と同様に分析を行った。その結果を表12に示す。
【0100】
官能評価2
実施例30〜32、比較例23〜27及び参考例2で得られた各容器詰非炭酸酸性飲料の「渋味」について専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、参考例2の容器詰非炭酸酸性飲料に表11に示す量の茶抽出物IIを配合して「渋味」の強さを10段階に調整した「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」を調製した。そして、専門パネル4名が各濃度の「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」について、表11に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルが評点の数値が高い「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各容器詰非炭酸酸性飲料を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」の中から「渋味」が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。その結果を表12に示す。なお、評点は、数値が小さいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。
【0101】
【表11】
【0102】
【表12】
【0103】
参考例3、4
酸味料(クエン酸)以外の表14に示す各成分をイオン交換水にて配合し、次いで酸味料で所定のpHになるように調整した後、イオン交換水にて全量を100質量%に調整して非炭酸酸性飲料を得た。次いで、得られた非炭酸酸性飲料を容量200mLのPETボトルに充填し、加熱殺菌し(ポストミックス方式、)容器詰非炭酸酸性飲料を得た。殺菌条件は、85℃、30分で行い、F0値は0.0074であった。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について分析を行った。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について分析を行った。その結果を表14に示す。
【0104】
比較例28
更に、茶抽出物IIを表14に示す割合で配合したこと以外は、参考例3と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について分析を行った。その結果を表14に示す。
【0105】
比較例29
更に、抽出物IIを表14に示す割合で配合したこと以外は、参考例4と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。そして、得られた容器詰非炭酸酸性飲料について分析を行った。その結果を表14に示す。
【0106】
実施例33
更に、茶抽出物IIと、エタノールと、アストラガリン試薬を表14に示す割合で配合したこと以外は、参考例3と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例3と同様に分析を行った。その結果を表14に示す。
【0107】
実施例34
更に、茶抽出物IIと、エタノールと、アストラガリン試薬を表14に示す割合で配合したこと以外は、参考例4と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について参考例4と同様に分析を行った。その結果を表14に示す。
【0108】
官能評価3
実施例33、34、比較例28、29及び参考例3、4で得られた各容器詰非炭酸酸性飲料の「渋味」について専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、参考例3の容器詰非炭酸酸性飲料に表13に示す量の茶抽出物IIを配合して「渋味」の強さを10段階に調整した「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」を調製した。そして、専門パネル4名が各濃度の「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」について、表13に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルが評点の数値が高い「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶する。次いで、各専門パネルが各容器詰緑茶飲料を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準容器詰非炭酸酸性飲料」の中から「渋味」が最も近いものを決定する。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。その結果を表14に示す。なお、評点は、数値が小さいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。
【0109】
【表13】
【0110】
【表14】
【0111】
実施例35〜37
食塩を表15に示す割合で配合したこと以外は、実施例33と同様の操作により容器詰非炭酸酸性飲料を調製した。得られた容器詰非炭酸酸性飲料について実施例33と同様に分析を行い、官能評価3に基づいて官能試験を行った。その結果を、実施例33、比較例28及び参考例3の結果とともに表15に示す。
【0112】
【表15】
【0113】
参考例5
酸味料以外の表17に示す各成分を配合後、10分間撹拌して溶解させた。その後、酸味料でpH3.8になるように調整し、耐熱性容器に充填してゼリー飲料を得た。次いで、得られたゼリー飲料を加熱殺菌(85℃、30分、F0値:0.0074)して容器詰ゼリー飲料を得た。そして、得られた容器詰ゼリー飲料について分析を行った。その結果を表17に示す。
【0114】
比較例30
更に、茶抽出物IIを表17に示す割合で配合したこと以外は、参考例5と同様の操作により容器詰ゼリー飲料を調製した。そして、得られた容器詰ゼリー飲料について分析を行った。その結果を表17に示す。
【0115】
実施例38
更に、茶抽出物IIと、エタノールと、アストラガリン試薬を表17に示す割合で配合したこと以外は、参考例5と同様の操作により容器詰ゼリー飲料を調製した。得られた容器詰ゼリー飲料について参考例5と同様に分析を行った。その結果を表17に示す。
【0116】
官能評価4
実施例38、比較例30及び参考例5で得られた各容器詰ゼリー飲料の「渋味」について専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験は、次の手順で行った。先ず、参考例5の容器詰ゼリー飲料に表16に示す量の茶抽出物IIを配合して「渋味」の強さを10段階に調整した「渋味標準容器詰ゼリー飲料」を調製した。そして、専門パネル4名が各濃度の「渋味標準容器詰ゼリー飲料」について、表16に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネルが評点の数値が高い「渋味標準容器詰ゼリー飲料」から順に摂取し、「渋味」の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各容器詰ゼリー飲料を摂取し、「渋味」の程度を評価し、「渋味標準容器詰ゼリー飲料」の中から「渋味」が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。その結果を表17に示す。なお、評点は、数値が小さいほど、「渋味」が強く感じられることを意味する。
【0117】
【表16】
【0118】
【表17】
【0119】
表2〜10、12、14、15、17から、非重合体カテキン類に対してアストラガリンと、特定のアルコールを、それぞれ一定の量比で含有させることで、非重合体カテキン類を強化しつつも、渋味が抑制された飲料組成物が得られることがわかる。
【要約】
【課題】非重合体カテキン類を強化しつつも、渋味が抑制された飲料組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.030〜0.10質量%
(B)エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種以上、及び
(C)アストラガリン
を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.060〜2.0であり、成分(C)と成分(A)との質量比[(C)/(A)]が1.0×10-3〜20×10-3である、飲料組成物。
【選択図】なし