特許第6782871号(P6782871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6782871
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】静電噴出装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20201102BHJP
   B05B 5/053 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B05B5/025 A
   B05B5/053
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-89186(P2020-89186)
(22)【出願日】2020年5月21日
【審査請求日】2020年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-103328(P2019-103328)
(32)【優先日】2019年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大沢 清輝
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−521941(JP,A)
【文献】 特開2009−39608(JP,A)
【文献】 特表2005−518278(JP,A)
【文献】 特開2005−288212(JP,A)
【文献】 特表2014−534900(JP,A)
【文献】 特開2013−94719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−17/08
D01D 5/00− 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液収容部と前記液体を噴出させる噴出部とを有するカートリッジの前記液収容部を収容可能な静電噴出本体を備え、前記静電噴出本体により前記液体に電圧を印加して前記液体を噴出させる静電噴出装置であって、
前記カートリッジは、前記液収容部の少なくとも一部分に導電性を有し、
前記静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部の導電性を有する部分に接触し、該導電性を有する部分を介して前記高電圧を該液収容部内の液体に印加する接触部とを備えている
静電噴出装置。
【請求項2】
液体を収容する液収容部及び前記液体を噴出させる噴出部を有するカートリッジと、前記カートリッジの前記液収容部を収容可能な静電噴出本体とを備え、前記静電噴出本体により前記液体に電圧を印加して前記液体を噴出させる静電噴出装置であって、
前記カートリッジの前記液収容部は、少なくとも一部分が導電性を有しており、
前記静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部の導電性を有する部分に接触し、該導電性を有する部分を介して前記高電圧を前記液収容部内の液体に印加する接触部とを備えている
静電噴出装置。
【請求項3】
前記噴出部は、前記液収容部から流入する前記液体を流通させる流路を有しており、前記流路を形成する流路形成部材は絶縁性の樹脂により構成されている
請求項2に記載の静電噴出装置。
【請求項4】
前記静電噴出本体には、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部に向けて前記接触部を付勢する付勢部が備えられている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項5】
前記液収容部は、収容している液体組成物の量の減少に応じて変形可能な可撓領域を有しており、
前記付勢部は、前記接触部を前記可撓領域に対して付勢するよう構成されている
請求項4に記載の静電噴出装置。
【請求項6】
前記液収容部は、複数のシート体を重ね、周縁部を接合して形成した袋状の液収容袋である
請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【請求項7】
前記各シート体は、袋状とされた際の内面を形成する内層と、外面を形成する外層と、内層と外層との間に配された導電層とを備える積層体からなる
請求項6に記載の静電噴出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電気力によって液体を噴出する静電噴出装置が知られている。例えば、特許文献1には、使用者の手で握ることができる寸法に作られたハウジングの内部に、モータ、高電圧発生器、フィールド電極及び電池等を備えた静電噴霧装置が記載されている。この静電噴霧装置では、高電圧発生器から高電圧が供給されたフィールド電極により、液体組成物を静電チャージ(静電的に帯電)し、静電チャージされた液体組成物をノズルから対象物に向けて噴出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−521941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の静電噴霧装置では、液体組成物が収容される容器の全体を覆うようにフィールド電極が配置され、液体組成物にほぼ共通の電位を与えるよう構成されている。このため、特許文献1の静電噴霧装置は、フィールド電極が大型にならざるを得ず、ハウジングの寸法(体積)が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、装置を小型化することができる静電噴出装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を収容すると共に少なくとも一部分が導電性を有している液収容部と前記液体を噴出させる噴出部とを有するカートリッジの前記液収容部を収容可能に構成された静電噴出本体を備え、前記静電噴出本体により前記液体に電圧を印加して前記液体を噴出させる静電噴出装置であって、前記静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部の導電性を有する部分に接触し、該導電性を有する部分を介して前記高電圧を該液収容部内の液体に印加する接触部とを備えている静電噴出装置に関する。
【0007】
また本発明は、液体を収容する液収容部及び前記液体を噴出させる噴出部を有するカートリッジと、前記カートリッジの前記液収容部を収容可能な静電噴出本体とを備え、前記静電噴出本体により前記液体に電圧を印加して前記液体を噴出させる静電噴出装置であって、前記カートリッジの前記液収容部は、少なくとも一部分が導電性を有しており、前記静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部の導電性を有する部分に接触し、該導電性を有する部分を介して前記高電圧を該液収容部内の液体に印加する接触部とを備えている静電噴出装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る静電噴出装置によれば、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の一実施形態に係る静電噴出装置を示す斜視図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る静電噴出装置を、キャップを外した状態で示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る静電噴出本体を示す分解斜視図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る静電噴出装置の噴出部の装着体を分解して、その一方の部材を示す構成図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る静電噴出装置の噴出部の装着体を分解して、その他方の部材を示す構成図である。
図4】本発明の一実施形態に係る静電噴出装置のハウジング内に備えた構成を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
[静電噴出装置の全体構成と動作概要]
本実施形態に係る静電噴出装置10は、図1A図1B及び図2に示すように、液体を収容するカートリッジ100と、該カートリッジ100を挿脱可能な静電噴出本体200とを備えている。また、本実施形態に係る静電噴出装置10は、静電噴出本体200に装着されるキャップ11を更に備えており、使用時にはキャップ11を外し(図1B参照)、使用後にキャップ11を装着するようになっている(図1A参照)。
【0012】
本実施形態に係る静電噴出装置10は、使用者が手で握ることができる形状と大きさになっているハンドヘルドタイプの装置であり、静電スプレー法により、液体組成物(液体)を対象物に向けて噴出する。静電スプレー法とは、液体組成物(例えば、高分子化合物を揮発性の溶媒に溶解した溶液)に、高電圧(例えば、数kVから数十kV)を印加して液体組成物を静電チャージし(静電的に帯電させ)、帯電した液体組成物と対象物との電位差に基づく静電気力によって、液体組成物を対象物に向けて噴出する方法である。静電スプレー法により噴出された液体組成物は、極細の糸状になって対象物に向かって送り出される。噴出された液体組成物は、噴出されてから対象物に向かって送り出されている過程、及び、対象物に付着した後に、揮発性物質である溶媒が乾燥することで、対象物の表面に被膜を形成することができる。なお、本実施形態に係る静電噴出装置10は、静電紡糸用の原料を含む溶液すなわち紡糸用液を、対象物に向けて噴出する静電紡糸装置としても使用することができる。
【0013】
液体組成物として、例えば、揮発性物質と繊維形成用水不溶性ポリマーと水を含む溶液を採用した場合には、使用者が静電噴出装置10を手で握り、この液体組成物を使用者の皮膚に向けて噴出することで、使用者の皮膚の表面に被膜を形成することができる。被膜は、繊維を含む堆積物である。
【0014】
静電噴出本体200は、図2に示すように、ハウジング210と、このハウジング210に装着されるカバー250とを備えている。ハウジング210は、カートリッジ100及びカバー250が着脱可能となっている。
【0015】
これらハウジング210及びカバー250は、絶縁性材料、すなわち、電気を通し難い性質を有する材料により形成されている。なお、ここでいう「絶縁性」又は「電気を通し難い」とは、例えば1012Ωmを超える体積抵抗率(ASTM D257, JIS K6911)を有することをいうものとする。ハウジング210及びカバー250に用いられる絶縁性材料としては、例えば、合成樹脂等の絶縁性の有機材料、又はガラス若しくはセラミック等の絶縁性の無機材料等が例示される。絶縁性の有機材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、モノマーキャストナイロンなどを用いることができる。一方、導電性材料とは、電気を通し易い性質を有する材料、すなわち、例えば10-2Ωm以下の体積抵抗率を有する材料をいうものとする。
【0016】
[カバーの構成]
図1B及び図2を参照してカバー250の説明をする。カバー250は、一方の開口251と他方の開口253を有し、一方の開口251から他方の開口253に向かうにしたがい開口面積が絞られていく筒形状となっている。このため、一方の開口251は他方の開口253よりも広くなっている。カバー250のうち一方の開口251に沿う部分が当接縁部252である。この当接縁部252が、後述するハウジング210の第2の係合段部225に嵌合することにより、カバー250がハウジング210に装着される。後述するカートリッジ100が装着されたハウジング210に、カバー250を装着すると、カートリッジ100のノズル123が、カバー250の他方の開口253を貫通し、ノズル123の噴出孔123aが、カバー250の外側に臨む状態になる。つまり、カバー250は、ハウジング210に装着されていても、カートリッジ100の噴出部120からの液体組成物の噴出を許容するように構成されている。
【0017】
カバー250がハウジング210に密接に装着されたときであっても、カバー250の当接縁部252と、後述するハウジング210の着脱面222に形成した第2の係合段部225との間には、微小な隙間が存在してしまうことがある。つまり、カバー250がハウジング210に密接に装着されたときであっても、両者の境界部分(分割線部分)に微小な隙間が存在してしまうことがある。
【0018】
[カートリッジの構成]
カートリッジ100は、液体の供給対象となる装置に交換可能に装着される使い捨て容器であり、その使用用途は特に制限されるものではないが、本実施形態では、静電紡糸装置に用いられる静電紡糸装置用カートリッジである。具体的には、図2に示すように、カートリッジ100は、液体を収容可能な液収容袋(液収容部)110と、液収容袋110内の液体を噴出させる噴出部120とを有している。
【0019】
液収容袋110は、同形同大の2枚のシート体を重ね、両者の周縁部を接合(本実施形態では熱融着)して形成した扁平な袋状の密閉容器であり、その内部に液体組成物が収容されている。
【0020】
各シート体は、袋状とされた際の内面を形成する内層と、外面を形成する外層と、内層と外層との間に配された導電層とを備える積層体からなり、これら外層及び内層が導電可能な薄さに形成されることにより、導電性を有している。なお、これら内層と外層との間に更に任意の層、例えば、PETフィルム等の接着層等が設けられても良い。
【0021】
内層は、収容される液体組成物に耐性を有すると共に、シーラント効果(熱融着性)を有するシーラント層で形成されることが好ましい。具体的には、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、LDPEとLLDPEのブレンド、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセンポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合フィルム(EVA)等を用いることができる。その中でも低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、LDPEとLLDPEのブレンドが好ましい。内層の厚さは、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。また、内層の厚さは、150μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。
【0022】
外層は、内層よりも機械的強度の優れた材料で形成される。外層の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)及び延伸ナイロン(ONy)等が例示される。その中でもポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。外層の厚さは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、外層の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。外層は、導電層との界面に印刷層を有していてもよい。印刷層は、通常、高揮発性溶剤液体組成物に溶けやすい着色剤を主成分とするインキによって形成される。
【0023】
導電層は、外層側から印加された電圧を内層を介して液体組成物に印加させることが可能な導電性を有する材料で形成される。導電層としては、例えばアルミニウムシートを用いることができる。アルミニウムシートの厚さは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましい。アルミニウムシートの厚さは、15μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましい。
【0024】
また、導電層としては、PETフィルムやポリプロピレン(PP)フィルムなどの樹脂フィルムにアルミニウム、酸化アルミニウム、導電性シリカ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)又は二酸化スズ(SnO)等を蒸着させた蒸着フィルムを用いることもできる。樹脂フィルムの厚さは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0025】
樹脂フィルムと蒸着層の材料とは、適宜組み合わせて蒸着フィルムを構成することができる。なかでも、樹脂フィルムとしてPETフィルムを用い、蒸着層としてアルミニウムを用いることが好ましい。
【0026】
導電層は、液収容袋110内の液体組成物に十分に電圧を印加することが可能な体積抵抗率を有している。具体的には、導電層は、例えば10-2Ωm以下の体積抵抗率を有することが好ましく、10-7Ωm以下の体積抵抗率を有することが更に好ましい。
【0027】
また、導電層は、液収容袋110内の液体組成物に十分に電圧を印加することが可能な範囲に亘って設けられている。具体的には、導電層は、液収容袋110全体の5%以上の範囲を占めることが好ましく、10%以上の範囲を占めることがより好ましく、30%以上の範囲を占めることが更に好ましく、液収容袋110の全面に亘って設けられることが一層好ましい。導電層が上記範囲を占めるよう設けられることにより、使用に伴い液体組成物の残量が減少した場合であっても、液体組成物と導電層とが離れてしまうことを防ぐことが可能となるため、液体組成物に対して安定的に電圧を印加することが可能となる。また、導電層が部分的に設けられる場合には、その一部(導電部分)は、液体組成物の収容箇所に設けられることが好ましく、また、その位置は、噴出部120寄りに設けられることが、使用に伴い液体組成物の残量が減少した場合であっても液体組成物に十分に電圧を印加する観点から好ましい。さらに、導電層(導電部分)は、液収容袋110の片面のみに設けられても良いが、使用に伴い液体組成物の残量が減少した場合であっても液体組成物に確実に電圧を印加する観点から、液収容袋110の両面に設けられることが好ましい。
【0028】
導電層は、液収容袋110内の液体組成物が外層へ浸透することを抑制するバリア層として機能しても良い。このように導電層をバリア層として機能させることにより、液体組成物(揮発性液溶剤)の蒸散を抑制することができるため、液体組成物に溶解しているポリマーなどの析出を抑制することができ、効果的に内容物の安定性を向上させることができる。また、導電層にアルミニウムシートや蒸着フィルムを用いた場合は、導電層自身に遮光性があるために、内容物を効果的に保護することができる。さらに、印刷層に遮光性を付与する必要がないため、印刷に用いることができる色数を増やすことができる。さらに、光沢性があるために、デザイン性を向上させることができる。
【0029】
液収容袋110は、接合された周縁部よりも内側の領域が、内容物の体積変化(例えば、収容している液体組成物の量の減少)に応じて変形することが可能な可撓性を有している。すなわち、液収容袋110は、内容物の体積変化に応じて変形しない周縁部と、内容物の体積変化に応じて変形可能な可撓領域とからなる。液収容袋110の可撓領域は、液体組成物が十分に収容されているときには、外側に膨らんだ膨満形状になっているが、収容されている液体組成物が減少してくるとこれに追従して次第に膨らみ量が減ってきて、最終的には平面状になる。なお、ここでいう「内容物」とは、液収容袋110に収容されている液体組成物と、液収容袋110内部に封入された気体(空気)との総称である。
【0030】
液収容袋110に収容される液体組成物は、特に限定されるものではないが、例えば、静電紡糸装置において使用される紡糸用の液体組成物が例示される。また、そのような液体組成物としては、例えば、繊維形成の可能な高分子化合物が溶媒に溶解した溶液を用いることができる。そのような高分子化合物としては、水溶性高分子化合物または水不溶性高分子化合物のいずれも用いることができる。
【0031】
水不溶性高分子化合物を用いる場合、液体組成物は、アルコール及びケトンから選ばれる揮発性液剤を50質量%以上含有する。揮発性液剤は、液体の状態において揮発性を有する物質である。揮発性液剤はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。
【0032】
揮発性液剤のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC1−C6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC4−C6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n−プロパノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
揮発性液剤のうち、ケトンとしてはジC1−C4アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
揮発性液剤は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種であり、形成される繊維の感触の観点から更に好ましくはエタノールを含有する揮発性液剤である。
【0035】
液体組成物における揮発性液剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。また、95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが更に好ましい。液体組成物における揮発性液剤の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上94質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上93質量%以下であることが更に好ましい。この割合で液体組成物中に揮発性液剤を含有させることで、静電スプレー法を行うときに液体組成物を十分に揮発させることができ、皮膚又は爪の表面に繊維を含む被膜を形成することができる。
【0036】
また、エタノールは、揮発性の高さと形成される繊維の感触の観点から、揮発性液剤の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが一層好ましい。また100質量%以下であることが好ましい。エタノールは揮発性液剤の全量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、65質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが一層好ましい。
【0037】
また、液体組成物は、繊維形成用水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。繊維形成用水不溶性ポリマーは、揮発性液剤に溶解することが可能な物質である。ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。
【0038】
繊維形成用水不溶性ポリマーとしては、揮発性物質に可溶で、水に対して不溶なポリマーである。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が溶解しない性質を有するもの、言い換えれば溶解量が0.5g未満の性質を有するものをいう。
【0039】
水不溶性である繊維形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリ乳酸(PLA)、ツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらの水不溶性ポリマーのうち、アルコール溶媒への分散性、繊維の感触の観点等から、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂がより好ましく、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂がさらに好ましく、皮膚又は爪の表面に繊維を含む被膜を安定して効率的に形成することができる点、被膜の耐久性、被膜の形成性、皮膚への追随性と耐久性との両立の点からポリビニルブチラール樹脂が殊更に好ましい。
【0040】
液体組成物中の繊維形成用水不溶性ポリマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。また、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。液体組成物の繊維形成用水不溶性ポリマーの含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以上20質量%以下が一層好ましい。この割合で液体組成物中に繊維形成用水不溶性ポリマーを含有させることで、繊維状の被膜を安定して効率的に形成することができる。
【0041】
また、液体組成物は、水を含むことが好ましい。水は、エタノール等の電離しない溶媒に比べて電離し荷電するため、液体組成物に導電性を付与することができる。そのため、静電スプレーにより皮膚や爪の表面上に繊維状の被膜が安定して形成される。また、水は、静電スプレーにより形成される被膜の皮膚や爪への密着性の向上、耐久性の向上、外観に寄与する。これらの作用効果を得る点から、水は、液体組成物中に0.2質量%以上25質量%以下含有することが好ましく、0.3質量%以上20質量%以下がより好ましく、湿度の高い環境においても繊維状の被膜の形成性の観点から0.4質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
液体組成物は、更に他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えばポリオール、液状油、繊維形成用水不溶性ポリマーの可塑剤、液体組成物の導電率制御剤、水溶性ポリマー、着色顔料、体質顔料等の粉体、染料、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。液体組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の含有割合は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
更に、液体組成物中にグリコールを含有することができる。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。静電スプレー法を行うときに揮発性液剤を十分に揮発させる観点、繊維形成性の観点、形成される繊維の感触の観点から、液体組成物中に10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が好ましく、実質含まないことが好ましい。
【0044】
液体組成物の粘度は、繊維状の被膜を安定して形成する点、静電スプレー時の紡糸性の観点、被膜の耐久性を向上する観点と、被膜の感触を向上する観点から、25℃で2mPa・s以上3000mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以上1500mPa・s以下がより好ましく、15mPa・s以上1000mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以上800mPa・s以下がよりさらに好ましい。液体組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される。E型粘度計としては例えば東京計器株式会社製のE型粘度計(VISCONICEMD)を用いることができる。その場合の測定条件は、25℃、コーンプレートのローターNo.43、回転数は粘度に応じた適切な回転数が選択され、500mPa・S以上の粘度は5rpm、150mPa・S以上500mPa・S未満の粘度は10rpm、150mPa・S未満の粘度は20rpmとする。
【0045】
噴出部120は、装着体121と、接続体122と、ノズル123を有しており、本実施形態では樹脂により形成されている。
【0046】
装着体121は、その内部に、流路、ポンプ(例えば、歯車ポンプ)を有している。流路は、液体組成物を流通させる通路である。ポンプは、流路の途中に配置されており、駆動されることにより液体組成物を吸引して流路内を流通させる。流路やポンプの詳細については後述する。
【0047】
接続体122は、液収容袋110に機械的に接続されると共に、液収容袋110の内部に連通しており、液収容袋110内の液体組成物を、装着体121の流路に導く。ノズル123は、装着体121と共に一体的に形成されており、先端に噴出孔123aを有すると共に、噴出孔123aと装着体121の流路とを接続するノズル流路を有している。詳細は後述するが、帯電した液体組成物は、ノズル123内に形成したノズル流路を通過した後、噴出孔123aから噴出される。
【0048】
[噴出部の装着体の内部構成]
図3A(a),(b)及び図3B(a),(b)を参照して、噴出部120の装着体121の内部構成を説明する。図3A(a),(b)は、装着体121を分解したときの一方の部材121aの内面を示しており、この部材121aの外面側(図3A(a)の下側の面)に接続体122が配置されている。図3B(a),(b)は、装着体121を分解したときの他方の部材121bの内面を示しており、この部材121bの外面側(図3B(a)の下側の面)にノズル123が配置されている。
【0049】
部材121aと部材121bは、絶縁性の樹脂により形成されている。そして、部材121aの内面側と部材121bの内面側とが密接に接合されることにより、装着体121の外殻筐体が構成される。
【0050】
図3A(a),(b)に示すように、一方の部材121aの内面には、流路形成板(流路形成部材)131が備えられている。この流路形成板131には、流路溝132が形成されている。この流路溝132の流入端132aは、接続体122を介して液収容袋110に接続されている。流路溝132の吐出端132bは、他方の部材121bの孔134a(図3B(a),(b)参照)に接続される部分である。流路溝132の途中には、歯車133a,133bにより構成された歯車ポンプ133が配置されている。
【0051】
図3B(a),(b)に示すように、他方の部材121bの内面には、封止板(流路形成部材)134が備えられている。この封止板134には、流路形成板131の吐出端132bに対応する位置に、ノズル123に通じる孔134aが形成されている。部材121aの内面側と部材121bの内面側とが密接に接合されると、封止板134は、流路形成板131に密着して流路溝132を封止する。これにより、流路溝132に沿った流路が形成される。このため、流入端132aから流入した液体組成物は、流路(流路溝132)内を流通して吐出端132bに至ることができ、更に、孔134aを通ってノズル123に流入することができる。
【0052】
これら流路形成板131、歯車ポンプ133及び封止板134は、液収容袋110に収容される液体組成物に耐性を有する材料からなる。一方、本実施形態に係る静電噴出装置10では、後述するように、カートリッジ100の噴出部120には電圧を印加せず、液収容袋110に電圧を印加することで液体組成物に対する静電チャージを行う。このため、噴出部120を構成する樹脂材料(特に、流路形成板131、歯車ポンプ133及び封止板134を構成する樹脂材料)には、カーボン等の導電性を付与する機能剤を添加する必要がない。すなわち、噴出部120は、絶縁性の樹脂(所謂カーボンレス樹脂)により形成することができる。なお、「絶縁性の樹脂」とは、金属やカーボン等の導電性材料を含まず、また、電気抵抗が高く、電気が流れにくい一般的な樹脂をいい、例えば、1012Ωm以上の体積抵抗率を有する樹脂のことをいう。
【0053】
本実施形態では、流路形成板131、歯車ポンプ133及び封止板134は、PP(ポリプロピレン:polypropylene)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート:polyethylene terephthalate)、PE(ポリエチレン:polyethylene)樹脂、PОМ(ポリアセタール:polyacetal)樹脂など、エタノール等の溶媒に対して耐溶媒性を有する、絶縁性の単品樹脂により形成されている。
【0054】
このような耐溶媒性を有する絶縁性の単品樹脂により、流路形成板131、歯車ポンプ133及び封止板134を形成しているため、流路形成板131、歯車ポンプ133及び封止板134は、エタノール等の溶媒に接触しても膨潤したり変形したりする虞は殆どなくなる。このため、エタノールを溶媒として採用した液体組成物、例えば、エタノールにポリビニルブチラール樹脂(PVB:Polyvinyl Butyral)を溶解した液体組成物を用いる場合でも、歯車ポンプ133を含めて機器の良好な動作性を確保することができる。また、導電性樹脂(例えば、カーボンを含有する樹脂)を使用する場合と比較して、製造コストを低下させることが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態では、流路形成板131に絶縁性の樹脂(所謂カーボンレス樹脂)を用いているが、これに限定されず、導電性樹脂(例えば、カーボンを含有する樹脂)を採用することも可能である。なお、「導電性樹脂」とは、金属やカーボン等の導電性材料を含み、また、電気抵抗が低く、電気が流れ易い樹脂をいい、例えば、10-2Ωm以下の体積抵抗率を有する樹脂のことをいう。この場合には、例えば、流路(流路溝132)内に流れる液体組成物を、装着体121内において帯電させる技術を採用することが可能となる。また、この場合において、液収容袋110と流路形成板131とが同電位となるようこれらに電圧を印加することにより、電位を均一化し、液体組成物に対してより十分かつ安定的に電圧を印加することが可能となる。なお、液収容袋110と流路形成板131とを同電位とする構成としては、例えば、液収容袋110と流路形成板131とを電気的に接続し、液収容袋110を介して流路形成板131に高電圧を印加する構成が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0056】
[ハウジングの外部構成]
図1A図1B及び図2に示すハウジング210は、使用者が手で握ることができる形状と大きさとなっている。具体的には、ハウジング210は、扁平な形状、すなわち、ノズル軸(ノズル123から液体組成物が噴出される方向に沿う軸)に直交する断面が長軸と短軸を有する形状を有している。また、ハウジング210は、ノズル軸に沿う方向の長さが、例えば、3cm以上11cm以下である。このハウジング210内には、カートリッジ100の液収容袋110を収容可能な収容空間220(図2参照)が形成されると共に、液体組成物を静電チャージ(静電的に帯電)する帯電構造や、装着体121内に備えたポンプを駆動する駆動部等が配置されている。帯電構造や駆動部等の詳細については、後述する。
【0057】
なお、本明細書では、ハウジング210の表面のうち、カバー250が装着される面を「着脱面222」という。また、この着脱面222のうち、カバー250の当接縁部252が接触する外周縁部を「周縁221」という。以下、この着脱面222に施されている構造を、図2を参照して説明する。
【0058】
着脱面222は、図2に示すように、楕円状の周縁221により囲まれた、略楕円状の面となっている。この着脱面222には、楕円の長軸に対して略平行な状態で挿入孔223が形成されている。挿入孔223は、ハウジング210内の収容空間220に連通しており、カートリッジ100の液収容袋110が、挿入孔223を挿通して収容空間220に挿脱することができる形状及び大きさになっている。本実施形態において、挿入孔223及び収容空間220は、楕円の中央位置ではなく、周縁221の一部分に近寄った位置に形成されており、これにより、周縁221の他の部分側に、帯電構造や駆動部等の収容スペースを広く確保することが可能となっている。
【0059】
着脱面222には、その周縁221に沿って第1の係合段部224が形成されていると共に、第1の係合段部224の内周側に第2の係合段部225が形成されている。キャップ11は、その開口縁部11a(図1B参照)が、第1の係合段部224に嵌入することで、ハウジング210に着脱自在に装着される。カバー250は、その一方の開口251に沿う部分である当接縁部252(図2参照)が、第2の係合段部225に嵌入することで、ハウジング210の周縁221に沿った部分に着脱自在に装着される。
【0060】
着脱面222には、マウント凹部226が形成されている。このマウント凹部226は、カートリッジ100の装着体121が嵌入してくると、この装着体121を位置合わせした状態で保持する形状になっている。このため、カートリッジ100の液収容袋110が挿入孔223を介して収容空間220に挿入されてきて、装着体121がマウント凹部226に密接に嵌入して位置保持されると、カートリッジ100が、ハウジング210の規定位置に正確に装着される。
【0061】
着脱面222には、防電壁230が立設されている。本実施形態では、防電壁230は、絶縁材である樹脂により、ハウジング210と共に一体的に形成されている。なお、防電壁230の配置位置や構造等の詳細については後述する。
【0062】
[ハウジングの内部構成及び動作]
図4を参照して、ハウジング210内に備えた帯電構造や駆動部等について説明する。ハウジング210には、主電源操作部241と作動操作部242が、ハウジング210の外部から操作しうる状態で取り付けられている。ハウジング210の内部には、電源部243、高電圧発生部244、接触部245、付勢部246及び駆動部247が備えられている。なお、液体組成物が収容される液収容袋(液収容部)の全体を覆うフィールド電極は配置されていない。
【0063】
接触部245は、高電圧発生部244からの高電圧を接触対象物に対して伝導させることが可能な導電性を有しており、カートリッジ100の液収容袋110が、ハウジング210の収容空間220の規定位置に収容されたときに、接触部245の先端面が液収容袋110に接触する位置に配置されている。すなわち、接触部245は、静電噴出本体200に収容された液収容袋110の導電性を有する部分に接触し、該導電性を有する部分を介して、高電圧発生部244からの高電圧を該液収容袋110内の液体に印加することが可能に構成されている。なお、液収容袋110の外層及び内層が非導電性の材料で形成される場合であっても、これら外層及び内層の厚さが薄く、外層を介して中間層である導電層に対して導電可能で、かつ、内層を介して液体組成物に対して導電可能であれば、これら外層、導電層及び内層をまとめて、「液収容袋110の導電性を有する部分」と評価することが可能である。
【0064】
接触部245は、可撓領域(中央の広い面部分)に対する圧迫に起因する液漏れを抑制する観点から、液収容袋110の可撓領域(中央の広い面部分)ではなく周縁部に接触する位置に配置されることが好ましい。また、これに限定されず、カートリッジ100をハウジング210に装着する際、液収容袋110の周縁部が変形して接触不良を防止する観点から、接触部245は、可撓領域(中央の広い面部分)に接触する位置に配置されても良い。接触部245は、任意の形状を採用することが可能であるが、液収容袋110の挿入方向に沿って傾斜したテーパ面を有する形状、例えば先端面が丸い柱状の導電材により形成されることが好ましい。
【0065】
液収容袋110に対する接触部245の接触面積は、確実に接触させ、且つ液収容袋110の破れ等を防止する観点から、2mm以上が好ましい。
【0066】
付勢部246は、接触部245をハウジング210の収容空間220側に向けて付勢する付勢部材246aを有するとともに、接触部245の前進後退移動動作を許容しつつガイドするガイド構造246bを有している。付勢部246は、例えばコイルスプリング等の弾性部材からなる。
【0067】
接触部245は、付勢部246により、収容空間220側、すなわち、収容空間220に収容されてくる液収容袋110に押し付けられる方向に、液収容袋110内の液体組成物がノズル123を介して漏出しない程度の小さな力で付勢されている。このため、接触部245は、液収容袋110の状態に応じて、次のような移動動作をする。
(1)カートリッジ100の液収容袋110が、ハウジング210の挿入孔223を介して収容空間220に挿入されてきたとき。このときには、接触部245は、挿入されてきた液収容袋110により付勢方向とは逆向きに押されるため、液収容袋110との接触を保ちつつ、後退移動する。
(2)カートリッジ100の液収容袋110が、ハウジング210の収容空間220の規定位置に収容されたとき。このときには、接触部245は、液収容袋110の周縁部又は可撓領域(中央の広い面部分)に接触する。
(3)接触部245が液収容袋110の可撓領域(中央の広い面部分)に接触する場合には、液体組成物が使用されてきて、カートリッジ100の液収容袋110が、外側に膨らんだ膨満状態から次第に膨らみ量が減ってきて平面状になっていくとき。このときには、接触部245は、液収容袋110の変形に応じて付勢方向に前進移動していき、液収容袋110との接触を保つ。
【0068】
主電源操作部241と作動操作部242を操作することにより行われる動作を説明する。この動作の前提としては、次に示す(a),(b),(c)の状態になっていることとする。なお通常の使用時では(c)の状態になっているが、(c)の状態になっていなくても、主電源操作部241と作動操作部242による操作に基づく動作は可能である。
(a)カートリッジ100の液収容袋110が、挿入孔223を介して収容空間220に収容され、カートリッジ100が、ハウジング210の規定位置に正確に装着されている。
(b)上記(a)により、接触部245が導電性の液収容袋110に接触している。
(c)カバー250がハウジング210に装着されている(図1B参照)。
【0069】
上記(a)の状態になると、駆動部247は、カートリッジ100の装着体121内に備えた歯車ポンプ133の歯車133aに機械的に連結される。また、上記(b)の状態になると、接触部245を介して、高電圧発生部244と液収容袋110とが電気的に接続可能となる。
【0070】
主電源操作部241をオフ(OFF)にしておくと、電源部243から高電圧発生部244や駆動部247に給電がされることはない。このため、高電圧発生部244から高電圧が発生することはなく、また駆動部247が駆動することもない。したがって、主電源操作部241をOFFにしておけば、使用者が間違って作動操作部242を操作しても、液収容袋110に収容した液体組成物に静電チャージがされることはなく、液体組成物が噴出されることもない。
【0071】
作動操作部242は、例えば、オン(ON)状態とオフ(OFF)状態とを切り替えることが可能なスイッチにより構成されている。
【0072】
主電源操作部241がON状態になっているときに、作動操作部242をONすると、電源部243から高電圧発生部244と駆動部247に給電がされる。そうすると、駆動部247が駆動して回転力を発生し、この回転力は、カートリッジ100の装着体121内に備えた歯車ポンプ133の歯車133aに伝達され、歯車ポンプ133が駆動する。歯車ポンプ133の駆動により液収容袋110内の液体組成物が噴出部120側に吸引される。また、高電圧発生部244は正の高電圧(例えば、数kVから数十kV)を発生し、発生した高電圧を接触部245に送る。接触部245が接触している導電性の液収容袋110は、接触部245を介して高電圧が印加されることにより、液収容袋110内に収容された液体組成物を静電チャージする。
【0073】
つまり、導電性の液収容袋110は、液体組成物を収容する機能のみならず、液体組成物を静電チャージする電極としての機能も果たしている。しかも、液収容袋110は、液体組成物を収容できる程度に大きく、また、液体組成物に直接接触しているため、効果的に静電チャージをすることができる。このように、導電性の液収容袋110を用いて液体組成物を静電チャージするため、大きな電極が不要になり、ハウジング210を小型化することができ、ひいては静電噴出装置10の小型化を図ることができる。
【0074】
このようにして静電チャージされた液体組成物が、液収容袋110から噴出部120に流入し、ノズル123の噴出孔123aにまで達すると、帯電した液体組成物と対象物との電位差に基づく静電気力によって、液体組成物は対象物に向かって噴出される。その後、作動操作部242をOFFにすると、液体組成物の噴出が停止する。
【0075】
ハウジング210には、主電源操作部241及び作動操作部242に加え、液体組成物の噴出量を多段的(例えば大/中/小の3段階)に調整できる切り替えスイッチ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0076】
上記の例では、作動操作部242は、ON/OFFの2状態のみを選択するスイッチであったが、これに限定されず、例えば、押し込むことによりオン(ON)になり、押し込みをやめるとオフ(OFF)に戻り、更にON状態において押し込み量を変化させることができるスイッチであってもよい。作動操作部242が、ON状態において押し込み量を変化させることができるスイッチである場合には、その押し込み量の変化により、ノズル123から噴出される液体組成物の噴出量を調整することが可能であっても良い。すなわち、作動操作部242の押し込み量を増やしていくと、電源部243から駆動部247に給電される電圧が高くなり、駆動部247の回転数が増加する。そうすると装着体121内に備えた歯車ポンプ133の回転数が増加し、液収容袋110から噴出部120側に吸引されてくる(流入してくる)液体組成物の量が増加し、噴出される液体組成物の噴出量も増加する。一方、作動操作部242の押し込み量を減らしていくと、電源部243から駆動部247に給電される電圧が低くなり、駆動部247の回転数が減少する。そうすると装着体121内に備えた歯車ポンプ133の回転数が減少し、液収容袋110から噴出部120側に吸引されてくる(流入してくる)液体組成物の量が減少し、噴出される液体組成物の噴出量も減少する。
【0077】
上記の実施の形態では、先端面が丸い柱状の導電材により形成した接触部245を採用しているが、板ばね状の接触部を採用することもできる。この場合、板ばね状の接触部が、液収容袋110の周縁部(2枚の薄層アルミフィルムを接合した部分)、すなわち、液収容袋110のうち液体組成物の収容量にかかわらず変形がほぼ発生しない部分に接触するように、板ばね状の接触部を配置しても良い。板ばね状の接触部は、それ自体のばね力により、液収容袋110側に付勢されるので、良好な接触状態を保持できるとともに、付勢のための別部材が不要になるため装置構成を簡単にすることができる。
【0078】
また上記の実施の形態では、液収容袋110は、全面に亘り導電性を有しているものであったが、少なくとも、接触部245が接触する部分が導電性となっている液収容袋を採用することも可能である。例えば、液収容袋110の片面のみが導電性を有する構成としても良く、この場合において、他方の面の全面又は一部を、内部を視認可能な透明性を有する構成としても良い。このような内部を視認可能な構成とすることにより、液収容袋110内の液体組成物の残量を視覚的に確認することが可能となる。
【0079】
更に、上記の実施形態では、液収容袋110は、薄層アルミフィルムで形成した導電性を有するものであるが、液収容袋110を他の導電材により形成したものであっても、本発明を適用することができる。また、液収容袋110の代わりに、硬質及び導電性樹脂を用いたハードケースの容器を採用してもよい。更に、液収容袋110の代わりに、導電性を有するシリンダ型の液収容部を採用することも可能である。シリンダ型の液収容部では、この液収容部から液体組成物を押し出すため、歯車ポンプ133を用いなくてもよい。
【0080】
[防電壁の構成及び機能]
図2を参照して防電壁230について説明する。防電壁230は、ハウジング210と共に絶縁性の樹脂により一体的に形成されており、ハウジング210の着脱面222に立設されている。この防電壁230は、着脱面222のうち、挿入孔223と周縁221との間の位置に配置されており、周縁221に沿って延びている。より具体的に説明すると、挿入孔223と、周縁221のうち挿入孔223に近い部分との間の位置に防電壁230が配置されている。本実施形態では、ちょうど、挿入孔223と周縁221とを仕切る位置に、防電壁230が配置されている。
【0081】
ここで、防電壁230の高さについて説明する。この説明において、カートリッジ100の液収容袋110のうち、噴出部120に近い部分を肩部111と称する(図2参照)。また、「高さ」とは、ハウジング210にカバー250が装着されている状態において、ハウジング210側(着脱面222側)からカバー250側に向かう方向の寸法をいう。
【0082】
カートリッジ100の液収容袋110が収容空間220に収容され、カートリッジ100が、ハウジング210の規定位置に正確に装着されている状態において、防電壁230の高さは、液収容袋110の肩部111よりも高くなっている。防電壁230の高さの限界は、ハウジング210にカバー250が装着されている状態において、カバー250に接触しない程度の高さである。
【0083】
防電壁230の先端面には、周縁221に沿って延びる溝231が形成されている。本実施形態では、2本の溝231が直列状に並んで配置されている。
【0084】
このように、挿入孔223と周縁221との間の位置に防電壁230を設けているため、挿入孔223と周縁221(特に周縁221のうち挿入孔223に近い部分)との間の絶縁距離(沿面距離)は、防電壁230が存在する分だけ長くなる。つまり、防電壁230の立ち上がり距離及び立ち下がり距離(防電壁230の高さの2倍の距離)、及び防電壁230の厚さ分の距離、並びに、溝231の立ち下がり距離及び立ち上がり距離(溝231の深さの2倍の距離)に略相当する絶縁距離の分だけ、挿入孔223と周縁221との間の絶縁距離が長くなる。
【0085】
カートリッジ100をハウジング210に装着すると共に、カバー250をハウジング210に装着して静電噴出装置10を使用している際には、挿入孔223の近くには、接触部245から高電圧が印加されて高電位になっている液収容袋110や、帯電した液体組成物が存在することになる。このとき、カバー250の当接縁部252とハウジング210の第2の係合段部225との間、すなわち、カバー250とハウジング210との境界部分(分割線部分)に微小な隙間が存在してしまったとしても、挿入孔223と周縁221との間の絶縁距離が長いため、高電圧の電気が隙間を通って外部に漏れ出てくることを防止することができる。
【0086】
更に、防電壁230の高さが液収容袋110の肩部111よりも高くなっていることも相まって、高電圧の電気が隙間を通って外部に漏れでてくることをより確実に防止することができる。つまり、高電位になっている液収容袋110や帯電した液体組成物から、高電圧の電気が隙間を通って外部に漏れ出てくる現象、すなわち、放電現象としては、絶縁物の表面に沿って放電が進む沿面放電と、空間を伝わって放電が進む空間放電がある。このとき、防電壁230の高さが液収容袋110の肩部111よりも高くなっていることにより、空間放電を確実に防止することができるのである。もちろん、防電壁230の高さが高いことにより、沿面放電も防止できる。
【0087】
結局、挿入孔223と周縁221との間の位置に防電壁230を立設することにより、良好な放電防止性能を確保することができるのである。
【0088】
このように、高電圧が印加されて高電位になっている液収容袋110等から高電圧の電気が外部に漏れ出ることがなくなるので、使用者は電気刺激を感ずることなく快適に静電噴出装置10を使用することができる。
【0089】
更に、デザインを良くする観点から、本実施形態のように静電噴出装置10全体を扁平な形状とした場合について説明する。この場合には、着脱面222は扁平が強調された楕円面となり、この結果、挿入孔223と周縁221とが近づく構成となる(図2参照)。このときにおいても、挿入孔223と周縁221との間の位置に防電壁230を配置しているため、高電圧の電気が外部に漏れ出ることを防止できる。逆に言えば、防電壁230を設けたことにより、静電噴出装置10全体を扁平な形状とすることができ、デザイン性を向上させることができる。
【0090】
なお、本実施形態では防電壁230の先端面に溝231を形成しているが、防電壁230の立ち上がり面(挿入孔223側の面)や立ち下がり面(周縁221側の面)に、周縁221に沿って延びる溝を形成してもよい。更に、溝231の代わりに、または、溝231と共に、周縁221に沿って延びる凸部を防電壁230に形成することにより、挿入孔223と周縁221との間の絶縁距離を長くすることができる。
【0091】
溝231や凸部を備えて、挿入孔223と周縁221との間の絶縁距離を長くすることにより、放電防止性能をより向上させたり、放電防止性能を確保しつつ防電壁230の高さを低くしてコンパクトな構成にしたりすることができる。なお、防電壁230に、溝231や凸部を設けない構成とすることも可能である。
【0092】
以上、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0093】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の静電紡糸装置を開示する。
<1>
液体を収容する液収容部と前記液体を噴出させる噴出部とを有するカートリッジの前記液収容部を収容可能な静電噴出本体を備え、前記静電噴出本体により前記液体に電圧を印加して前記液体を噴出させる静電噴出装置であって、前記カートリッジは、前記液収容部の少なくとも一部分に導電性を有し、前記静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部の導電性を有する部分に接触して前記高電圧を該液収容部に印加する接触部とを備えている静電噴出装置。
<2>
液体を収容する液収容部及び前記液体を噴出させる噴出部を有するカートリッジと、前記カートリッジの前記液収容部を収容可能な静電噴出本体とを備え、前記静電噴出本体により前記液体に電圧を印加して前記液体を噴出させる静電噴出装置であって、前記カートリッジの前記液収容部は、少なくとも一部分が導電性を有しており、前記静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部の導電性を有する部分に接触して前記高電圧を前記液収容部に印加する接触部とを備えている静電噴出装置。
【0094】
<3>
前記噴出部は、前記液収容部から流入する前記液体を流通させる流路を有しており、前記流路を形成する流路形成部材は絶縁性の樹脂により構成されている<1>又は<2>に記載の静電噴出装置。
<4>
前記静電噴出本体には、前記静電噴出本体に収容された前記液収容部に向けて前記接触部を付勢する付勢部が備えられている<1>〜<3>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<5>
前記液収容部は、収容している液体組成物の量の減少に応じて変形可能な可撓領域を有しており、前記付勢部は、前記接触部を前記可撓領域に対して付勢するよう構成されている<4>に記載の静電噴出装置。
【0095】
<6>
前記液収容部は、複数のシート体を重ね、周縁部を接合して形成した袋状の液収容袋である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<7>
前記各シート体は、袋状とされた際の内面を形成する内層と、外面を形成する外層と、内層と外層との間に配された導電層とを備える積層体からなる<6>に記載の静電噴出装置。
<8>
前記内層はシーラント層である<7>に記載の静電噴出装置。
<9>
前記導電層は、アルミニウムシート、又は樹脂フィルムにアルミニウム、酸化アルミニウム、導電性シリカ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)又は二酸化スズ(SnO)から選択される材料を蒸着させた蒸着フィルムである<7>又は<8>に記載の静電噴出装置。
<10>
前記導電層は、10-2Ωm以下の体積抵抗率を有する<7>〜<9>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<11>
前記導電層は、前記液収容部全体の5%以上の範囲を占めることが好ましく、10%以上の範囲を占めることがより好ましく、30%以上の範囲を占めることが更に好ましく、全面に亘って設けられることが一層好ましい<7>〜<10>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<12>
前記液収容部は、内容物の体積変化に応じて変形しない周縁部と、内容物の体積変化に応じて変形可能な可撓領域とからなる<1>〜<11>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【0096】
<13>
前記静電噴出本体は、液体組成物が収容される前記液収容部の全体を覆うフィールド電極は配置されていない<1>〜<12>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<14>
前記接触部は、前記液収容部の内容物の体積変化に応じて変形しない周縁部に接触する位置に配置されている<1>〜<13>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<15>
液収容部に対する接触部の接触面積は、2mm以上である<1>〜<14>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【0097】
<16>
前記静電噴出本体は、前記カートリッジの前記液収容部を収容可能な収容空間及び該収容空間に該液収容部を挿脱させる挿入孔を有するハウジングと、前記ハウジングの前記挿入孔が形成された側の面に装着されるカバーとを備え、前記カバーは、前記ハウジングの周縁に沿った当接縁部を有し、かつ、前記ハウジングに装着された状態において、前記噴出部からの前記液体の噴出を許容するよう構成されており、前記ハウジングは、前記挿入孔と前記周縁との間に立設された絶縁性の防電壁を有している
<1>〜<15>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【0098】
<17>
前記防電壁の高さは、前記液収容部が前記収容空間に収容されて前記カートリッジが前記ハウジングに装着されている状態において、前記液収容部のうち前記噴出部に近い側の部分である肩部の位置よりも高くなっている
<16>に記載の静電噴出装置。
<18>
前記防電壁の高さは、前記ハウジングに装着された前記カバーに接触しない高さである
<16>又は<17>に記載の静電噴出装置。
<19>
前記防電壁は、前記ハウジングの前記周縁に沿って延びている
<16>〜<18>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
<20>
前記放電防止壁には、前記ハウジングの前記周縁に沿う方向に沿って延びる溝が形成されている
<16>〜<19>のいずれか1項に記載の静電噴出装置。
【符号の説明】
【0099】
10 :静電噴出装置
100 :カートリッジ
110 :液収容袋(液収容部)
120 :噴出部
121 :噴出体
121a,121b :部材
122 :接続体
123 :ノズル
123a:噴出孔
131 :流路形成板(流路形成部材)
132 :流路溝
133 :歯車ポンプ
134 :封止板(流路形成部材)
200 :静電噴出本体
210 :ハウジング
220 :収容空間
223 :挿入孔
243 :電源部
244 :高電圧発生部
245 :接触部
246 :付勢部
247 :駆動部
【要約】
【課題】装置を小型化することができる静電噴出装置に関する。
【解決手段】液体を収容する液収容部と液体を噴出させる噴出部とを有するカートリッジの液収容部を収容可能な静電噴出本体を備え、静電噴出本体により液体に電圧を印加して液体を噴出させる静電噴出装置であって、カートリッジは、液収容部の少なくとも一部分に導電性を有し、静電噴出本体は、高電圧を発生する高電圧発生部と、静電噴出本体に収容された液収容部のうち導電性を有する部分に接触し、該導電性を有する部分を介して高電圧を液収容部内の液体に印加する接触部とを備えている。
【選択図】図4
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4