(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1誘導具は、仮固定部材または点付け溶接により、前記対向部に仮固定された状態で前記第2誘導具に接続される、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の嵌合治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、例えばクレーン等で吊り上げた後行鋼矢板の継手部を、地盤内に打設された先行鋼矢板の継手部に嵌合させる際、先行鋼矢板の継手部上方の位置に後行鋼矢板の継手部を誘導した後、後行鋼矢板を下降させて各継手部を嵌合させる。このとき、作業員が手で後行鋼矢板を支持する等の位置保持を行う必要がある。このため、後行鋼矢板が強風等で揺動した場合において、後行鋼矢板の位置保持を安定させることが難しく、嵌合作業が難渋するという事情がある。従って、鋼矢板の嵌合作業の容易化が課題として挙げられる。
【0009】
この点、特許文献1の嵌合用補助具では、先行鋼矢板の継手部上方の位置に、後行鋼矢板の継手部を誘導することが難しい。このため、特許文献1の嵌合用補助具では、上述した課題の解決が難しい。
【0010】
また、特許文献1〜4の嵌合治具等では、後行鋼矢板を下降させる際、後行鋼矢板の継手部が嵌合治具等から外れる虞がある。このため、特許文献1〜4の嵌合治具等では、上述した課題の解決が難しい。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであって、その目的とするところは、鋼矢板の嵌合作業を容易にすることができる嵌合治具、
嵌合治具付き鋼矢板、および鋼矢板の嵌合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]地盤に打設され、連続壁の一部を構成する第1の鋼矢板の継手部に、第2の鋼矢板の継手部を嵌合させるための治具であって、連続壁の壁延長方向に交差し、第2の鋼矢板の導入方向に向けられる第1面と、連続壁の壁横断方向に交差し、第1面に隣接する誘導面と、壁横断方向に交差し、高さ方向で誘導面の下方に位置する導入面と、壁延長方向に延在し、導入面に離間して対向する対向部と、壁延長方向における対向部の先端側から導入面側に突出する突出部と、壁延長方向における対向部の基端側に接合され、第1の鋼矢板の第1側面に沿って延びるように配置される第1接続部材とを備える嵌合治具。
[2]嵌合治具は、第1面、誘導面および導入面を有する第1誘導具と、対向部、突出部および第1接続部材を有する第2誘導具とを含み、対向部は、第1誘導具と接する当接部と、当接部と突出部との間に形成され、第1誘導具側に開口する凹部とを含む、[1]に記載の嵌合治具。
[3]第1誘導具は、第1面を形成する第1板部材と、壁延長方向の一端で第1板部材に接し、誘導面および導入面を形成する第2板部材と、第2板部材における壁延長方向の他端に接し、第1面に対向する面を形成する第3板部材とを含み、壁横断方向に沿って、突出部と第2板部材との間における第1最短距離、および、突出部と第3板部材との間における第2最短距離の少なくともいずれかは、第2の鋼矢板の幅方向と直交する方向における、第2の鋼矢板の継手部の最大長さよりも小さい、[2]に記載の嵌合治具。
[4]第1板部材、第2板部材、および第3板部材の少なくともいずれかは、高さ方向に対して傾斜し、第1誘導具は、全体として高さ方向の下側から上側に向かって拡開する、[3]に記載の嵌合治具。
[5]前記第1誘導具は、仮固定部材または点付け溶接により、対向部に仮固定された状態で第2誘導具に接続される、[2]から[4]のいずれか1項に記載の嵌合治具。
[6]第1誘導具は、第2誘導具に対して相対的に旋回可能であるように接続される、[2]から[4]のいずれか1項に記載の嵌合治具。
[7]第1の鋼矢板の第1側面に対向する第2側面に沿って延びるように配置される第2接続部材をさらに備え、対向部は、第1接続部材と第2接続部材との間に挟まれる、[1]から[6]のいずれか1項に記載の嵌合治具。
[8]対向部は、導入面よりも高さ方向の下方まで延在する、[1]から[7]のいずれか1項に記載の嵌合治具。
[9]第2の鋼矢板に連結された索状部材を挿通する挿通部をさらに備える、[1]から[8]のいずれか1項に記載の嵌合治具。
[10][1]から[9]のいずれか1項に記載の嵌合治具を用いて、第1の鋼矢板の継手部に第2の鋼矢板の継手部を嵌合させる方法であって、第1の鋼矢板の継手部に隣接するアーム部の上端部に嵌合治具を載置する載置工程と、壁延長方向から見て第1面と重なり、壁横断方向から見て誘導面と重なる位置に、第2の鋼矢板の継手部の下端を、吊り下げた状態で誘導する誘導工程と、導入面と、対向部との間の位置に、誘導面および導入面に沿って第2の鋼矢板の継手部の下端を降下させる降下工程と、高さ方向に沿って、対向部の下側に設けられた第1の鋼矢板の継手部に、第2の鋼矢板の継手部を嵌合させる嵌合工程とを含む、鋼矢板の嵌合方法。
[11]嵌合治具は、第1面および誘導面および導入面を有する第1誘導具と、対向部、突出部および第1接続部材を有する第2誘導具とを含み、嵌合工程の後に、第1誘導具と対向部とを仮固定する仮固定部材または点付け溶接を取り除き、その後、第1誘導具および第2誘導具を、第1誘導具、そして第2誘導具の順に撤去する撤去工程をさらに備える、[10]記載の鋼矢板の嵌合方法。
[12][1]から[9]のいずれか1項に記載の嵌合治具が継手部に隣接する部分の上端部に載置された
嵌合治具付き鋼矢板。
【0013】
上記[1]〜[12]によれば、嵌合治具は、第1面、導入面、誘導面、対向部および突出部を有する。このため、第1面および誘導面により、嵌合治具内に第2の鋼矢板を容易に誘導させることができる。また、第2の鋼矢板を下降させる際、導入面、対向部、および突出部により、継手部が嵌合治具から外れることを抑制することができる。これにより、鋼矢板の嵌合作業を容易にすることが可能となる。さらに、嵌合作業の容易化に伴って、鉛直性確保や嵌合角度調整を目的とした第2の鋼矢板打設前の位置調整をも容易にし、施工精度の向上が期待できる。
【0014】
特に、[2]によれば、対向部は、凹部を有する。このため、第2の鋼矢板における継手部の下端を凹部内に配置した状態で、第2の鋼矢板を下降させることができる。これにより、第2の鋼矢板を下降させる際、継手部が嵌合治具から外れることを容易に抑制することが可能となる。
【0015】
特に、[3]によれば、第1最短距離および第2最短距離の少なくともいずれかは、第2の鋼矢板の幅方向と直交する方向における、第2の鋼矢板の継手部の最大長さよりも小さい。このため、第2の鋼矢板を下降させる際、導入面と対向部との間から、第2の鋼矢板の角度によらず継手部が抜け出すことを防ぎ、容易に位置保持することができる。これにより、鋼矢板の嵌合作業をさらに容易にすることが可能となる。
【0016】
特に、[4]によれば、第1誘導具は、全体として高さ方向の下側から上側に向かって拡開する。このため、第2の鋼矢板を下降させるために導入できる第1誘導具内の範囲を、容易に広げることができる。これにより、第2の鋼矢板の誘導を容易に実施することが可能となる。
【0017】
特に、[5]によれば、第1誘導具は、仮固定部材または点付け溶接により、対向部に仮固定された状態で第2誘導具に接続される。このため、第1誘導具と、第2誘導具とを、容易に脱着可能とすることができ、別個の部材として取り扱うこともできる。これにより、各継手部の嵌合後における嵌合治具の撤去等を容易にすることができ、嵌合後における第2の鋼矢板の打設等の作業を円滑に実施することが可能となる。
【0018】
特に、[6]によれば、第1誘導具は、第2誘導具に対して相対的に旋回可能であるように接続される。このため、第1誘導具と第2誘導具とを分離することなく、第1誘導具と第2誘導具との位置関係を変化させることができる。これにより、各継手部の嵌合後における嵌合治具の撤去等を容易にすることができ、嵌合後における第2の鋼矢板の打設等の作業を円滑に実施することが可能となる。
【0019】
特に、[7]によれば、対向部は、第1接続部材と、第2接続部材との間に挟まれる。このため、嵌合治具を鋼矢板の継手部上に、容易に仮置きすることができる。これにより、嵌合治具を載置する作業を容易化することが可能となる。
【0020】
特に[8]によれば、対向部は、導入面よりも高さ方向の下方に延在する。このため、第2の鋼矢板を下降させる際、第2の鋼矢板の継手部下端の位置を導入面の下側から目視することができる。すなわち、第2の鋼矢板を鋼矢板に嵌合させる際の嵌合状況を目視で確認できるため、各継手部を嵌合させるときの位置調整をさらに容易に実施することができ、嵌合作業をより正確に行うことが可能となる。
【0021】
特に、[9]によれば、嵌合治具は、第2の鋼矢板に連結された索状部材を挿通する挿通部を備える。このため、索状部材を用いて第2の鋼矢板を嵌合治具内に誘導することができ、作業員が第2の鋼矢板に直接触れる機会を減少させることができる。これにより、第2の鋼矢板の導入等の作業を安全に実施することが可能となる。
【0022】
特に、[10]によれば、鋼矢板の嵌合方法は、[1]〜[9]における嵌合治具を用いる。このため、誘導工程、降下工程、および嵌合工程を行う際、作業員への負荷低減や、安全性の向上を図ることができる。これにより、鋼矢板の嵌合作業を容易にすることが可能となる。
【0023】
特に、[11]によれば、撤去工程は、第1誘導具および第2誘導具を、第1誘導具、そして第2誘導具の順に撤去する。このため、嵌合工程後における嵌合治具の撤去を容易にすることができ、第2の鋼矢板の打設工程等を円滑に実施することが可能となる。
【0024】
特に、[12]によれば、鋼矢板は、[1]〜[9]のいずれかにおける嵌合治具を備える。このため、作業員への負荷低減や、安全性の向上を考慮した鋼矢板の嵌合作業を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した嵌合治具、鋼矢板、鋼矢板の嵌合方法、および連続壁を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(実施形態:嵌合治具1、鋼矢板4、連続壁9)
本実施形態における嵌合治具1は、
図1に示すように、複数の鋼矢板4を継手部5で嵌合させ、複数の鋼矢板4が壁延長方向X(鋼矢板4の幅方向)に連結された連続壁9を構築するために用いられる。
【0028】
本実施形態における連続壁9は、複数の鋼矢板4が壁延長方向Xに連結されて地盤内に順次打設されることで、壁横断方向Yの両側を隔てるように構築される。連続壁9は、高さ方向Zに所定の延長を有する複数の鋼矢板4が、地盤内の所定の深度まで打設されたものである。
【0029】
本実施形態における鋼矢板4は、嵌合治具1を備える。なお、鋼矢板4の備える嵌合治具1は、例えば他の鋼矢板4と連結された後に撤去されてもよい。
【0030】
鋼矢板4は、例えば
図2に示すように、ウェブ部61と、一対のフランジ部62と、一対のアーム部63と、一対の継手部5とを有する。各継手部5には、互いに隣り合った継手部5の嵌合爪5aを嵌合させるための嵌合溝5bが形成される。鋼矢板4として、例えばハット形鋼矢板が用いられる。
【0031】
ウェブ部61は、壁延長方向Xに延在し、例えば略平板状に形成される。一対のフランジ部62は、ウェブ部61における壁延長方向Xの両端から、壁横断方向Yに傾斜して形成される。一対のアーム部63は、各フランジ部62における壁延長方向Xの片端から、ウェブ部61と略平行に形成される。一対の継手部5は、各アーム部63における壁延長方向Xの先端(鋼矢板4の幅方向外側の片端)に形成される。
【0032】
連続壁9は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、第1の鋼矢板41と、第2の鋼矢板42とを有する。第1の鋼矢板41は、先行して地盤8に打設され、既に連続壁9の一部を構成している。第2の鋼矢板42は、第1の鋼矢板41よりも後に打設される。各鋼矢板41、42は、第1の鋼矢板41の継手部51に、第2の鋼矢板42の継手部52を嵌合させることで、連続壁9の壁延長方向Xに隣り合って連結される。
【0033】
嵌合治具1は、例えば
図4Aから
図4Cに示すように、第1誘導具2と、第2誘導具3とを備える。嵌合治具1は、例えば第1誘導具2と、第2誘導具3とを接続させた状態で用いられる。
【0034】
第1誘導具2は、第1面21aと、第2面22aとを有する。第1面21aは、連続壁9の壁延長方向Xに交差し、第2の鋼矢板42の導入方向に向けられる面である。第2面22aは、連続壁9の壁横断方向Yに交差する面である。
【0035】
例えば
図4Bに示すように、第2面22aは、誘導面22aaおよび導入面22abを含む。図示された例において、導入面22abは、壁横断方向Yから見た場合に後述する第2誘導具3の対向部31と重複する部分である。誘導面22aaは、壁横断方向Yから見た場合に導入面22abよりも上方に位置し(すなわち、導入面22abは誘導面22aaの下方に位置し)、第1面21aと隣接する部分である。なお、誘導面22aaおよび導入面22abは、連続して形成されるほか、例えば離間して形成されてもよい。
【0036】
第2誘導具3は、対向部31と、突出部32と、第1接続部材33とを有する。対向部31は、連続壁9の壁延長方向Xに延在し、第1誘導具2の第2面22aに含まれる導入面22abに離間して対向する。突出部32は、壁延長方向Xにおける対向部31の先端側から第2面22a側に突出する。第1接続部材33は、壁延長方向Xにおける対向部31の基端側に接合され、対向部31から第1の鋼矢板41の側面に沿って延びるように配置される。このような第1接続部材33によって、壁横断方向Yで第1の鋼矢板41に対して第2誘導具3を位置決めすることができる。
【0037】
第1誘導具2は、例えば第1板部材21と、第2板部材22と、第3板部材23とを有する。第1板部材21は、第1面21aを形成する。第2板部材22は、連続壁9の壁延長方向Xの一端で第1板部材21に接し、第2面22aを形成する。第3板部材23は、第2板部材22における壁延長方向Xの他端に接し、第1面21aに対向する面を形成する。
【0038】
例えば第1板部材21の幅(連続壁9の壁横断方向Yにおける第1板部材21の長さ)は、第3板部材23の幅(壁横断方向Yにおける第3板部材23の長さ)よりも大きい。例えば壁横断方向Yから見て、第1板部材21の少なくとも一部は、対向部31よりも上方に位置する。例えば高さ方向Zに沿って、第2板部材22および第3板部材23は、対向部31の下端と略等しい位置から、第1板部材21の上端と略等しい位置まで延在する。
【0039】
第1誘導具2は、例えば第4板部材24を有してもよい。第4板部材24は、高さ方向Zで第1板部材21よりも下方に設けられ、第2板部材22における壁延長方向Xの一端に接する。第4板部材24は、第3板部材23に対向して設けられ、第1板部材21よりも第3板部材23から離間する。第4板部材24は、対向部31と接する接続面24aを有し、第2誘導具3は、接続面24aを介して第1誘導具2と接続される。接続面24aは、例えば溶接等により対向部31に接合されるほか、例えば締め付け金具(例えばC型クランプ)もしくは磁石等の仮固定部材、または点付け溶接により、対向部31に仮固定されてもよい。なお、例えば第1誘導具2が第4板部材24を有さない場合、第1板部材21に接続面が形成されてもよい。
【0040】
各板部材21、22、23、24として、例えば普通鋼、鋳鋼、鋳鉄、またはFRP(Fiber-Reinforced Plastics)が用いられる。なお、材料として鋳鋼が用いられる場合、部材表面の摩擦係数が0.2程度となり鋼材の摩擦係数(0.45〜0.55程度)の半分以下となることから、第2の鋼矢板42のスリップ性が向上し、嵌合治具1内における第2の鋼矢板42の導入等を容易に実施することができる。また、例えば鋳鋼からなる鋳造一体造形とする場合、形状最適化を容易とし、溶接ビルドアップや切削加工のコストを削減することが可能となる。
【0041】
各板部材21、22、23、24の厚さは、例えば6mm以上25mm以下である。各板部材21、22、23、24の厚さは、特に9mm以上17mm以下が好ましい。この場合、強度および溶接性の確保ができかつ、人力で取扱い可能な重量範囲内とすることができ持ち運び時の負荷を低減することができる。第1面21a、第3板部材23における第1面21aと対向する面、および第4板部材24における第1面21aと平行する面は、例えば第2面22aと略直交する。
【0042】
高さ方向Zに沿って、第2板部材22および第3板部材23の高さH1は、例えば60mm以上であり、例えば100mm以上300mm以下程度である。壁延長方向Xに沿って、第2板部材22の上端側の幅W1は、50mm以上である。幅W1は、特に100mm以上200mm以下が好ましく、この場合、嵌合治具1内に第2の鋼矢板42を誘導し易くかつ、持ち運び時の負荷を低減することができる。なお、第2板部材22の下端側の幅は、幅W1よりも大きくてもよく、例えば対向部31の形状や、対向部31と接続面24aとの接続位置に合わせて設計できる。
【0043】
高さ方向Zに沿って、誘導面22aaの高さH1aは、例えば30mm以上である。高さH1aは、特に50mm以上150mm以下程度が好ましく、この場合、嵌合治具1内に第2の鋼矢板42を誘導し易くかつ、持ち運び時の負荷を低減することができる。なお、高さ方向Zに沿って、第1板部材21の高さは、高さH1aと同程度であるほか、例えば高さH1aよりも大きくてもよい。
【0044】
高さ方向Zに沿って、導入面22abの高さH1bは、例えば30mm以上である。高さH1bは、特に50mm以上150mmが好ましく、この場合、第2の鋼矢板42の継手部52を、第1の鋼矢板41の継手部51との嵌合位置に調整し易くかつ、持ち運び時の負荷を低減することができる。なお、第4板部材24の高さは、高さH1bと同程度であるほか、例えば高さH1bよりも大きくてもよい。
【0045】
対向部31は、例えば
図4Cに示すように、当接部31aと、凹部31bとを有する。当接部31aには、例えば第1誘導具2の接続面24aが当接される。凹部31bは、当接部31aと、突出部32との間に形成され、壁延長方向Xに沿って第1誘導具2側に開口する。すなわち、凹部31bは、その内面が第2板部材22に対向している。このため、第2板部材22、第3板部材23、第4板部材24、突出部32、および凹部31bに囲まれた空間が形成され、第3板部材23と突出部32との間に隙間が形成される。
【0046】
対向部31および突出部32として、例えば鋼矢板4からアーム部63および継手部5を切り出し、高さ方向Zの長さを適宜除去した後、継手部5の嵌合爪5aの一部(
図4Cの除去部32aに相当)を除去したものが用いられる。なお、対向部31および突出部32として、継手部5の嵌合爪5aの一部を除去しないもの(すなわち、鋼矢板4からアーム部63および継手部5を切り出し、高さ方向Zの長さを適宜除去したもの)を用いてもよく、この場合、凹部31bは、嵌合溝5bに相当する。ただし、継手部5の嵌合爪5aの一部を除去したもの(
図4Cの第2誘導具3)を用いる方が、導入面22abと凹部31bとの間の空間を広げることができるため、嵌合治具1内に誘導された第2の鋼矢板42を第2誘導具3の凹部31b内に導入することが容易になりかつ、当該第2の鋼矢板42の下降を容易に行うことができ、好ましい。また、対向部31および突出部32として、例えばアーム部63および継手部5に類似した形状の部材が用いられてもよい。
【0047】
第1接続部材33は、例えば対向部31に溶接等により接合される。第1接続部材33と接する対向部31の面は、当接部31aと対向する面のほか、例えば当接部31aと同一の面でもよい。第1接続部材33として、例えば各板部材21、22、23、24と同じ材料が用いられる。第1接続部材33の厚さは、各板部材21、22、23、24の厚さと同程度である。
【0048】
高さ方向Zに沿って、対向部31の高さH2は、例えば高さH1bと同程度である。高さ方向Zに沿って、対向部31よりも第1接続部材33が下方に延在する高さH3は、30mm以上である。高さH3は、特に50mm以上100mm以下が好ましく、この場合、第1の鋼矢板41に対して嵌合治具1を安定し易い状態で載置することができかつ、持ち運び時の負荷を低減することができる。
【0049】
壁延長方向Xに沿って、対向部31の幅W2は、例えば200mm以下であり、突出部32、凹部31b、当接部31a、および第1接続部材33と接する部分を確保できれば、任意である。壁延長方向Xに沿って、第1接続部材33の幅W3は、例えば30mm以上である。幅W3は、特に40mm以上80mm以下が好ましく、この場合、第1の鋼矢板41に対して嵌合治具1を安定し易い状態で載置することができかつ、持ち運び時の負荷を低減することができる。
【0050】
上記の例のような寸法の第1誘導具2および第2誘導具3を組み上げた場合、嵌合治具1全体の大きさは、連続壁9の壁延長方向Xで200mm、壁横断方向Yで200mm、高さ方向Zで300mm程度である。この範囲に収まる大きさとすることで、ハンドリング性が向上する。また、上記の例において嵌合治具1の総重量は25kg程度であり、1人の作業員が容易に持ち運ぶことができる。
【0051】
嵌合治具1は、例えば
図5Aに示すように、嵌合治具1内に第2の鋼矢板42の継手部52を誘導した後、第1の鋼矢板41の継手部51と嵌合させるために、第2板部材22と対向部31との間に、継手部52を導入する。このとき、例えば強風等によって継手部52が嵌合治具1の外側(
図5Aおよび
図5Bの矢印方向)に移動した場合、継手部52に突出部32または第3板部材23が接触する。このようにして、継手部52を第1の鋼矢板41の継手部51に嵌合させる際、嵌合治具1を用いることで、連続壁9の壁延長方向Xで継手部52の抜け出しを抑制することができる。
【0052】
特に、連続壁9の壁横断方向Yに沿って、突出部32と第2板部材22との間における第1最短距離D21、および突出部32と第3板部材23との間における第2最短距離D22の少なくともいずれかを所定の値にすることで、継手部52の抜け出しを容易に防ぐことができる。より具体的には、壁横断方向Yに沿って、第2板部材22と対向部31との間に導入される継手部52の最大幅D1(第2の鋼矢板42の幅方向と直交する方向における、第2の鋼矢板42の継手部52の最大長さ)が、第1最短距離D21、および第2最短距離D22の少なくともいずれかよりも大きい場合、例えば継手部52の導入される角度によらず、継手部52の抜け出しを防ぐことができる。
【0053】
(実施形態:鋼矢板の嵌合方法)
次に、本実施形態における鋼矢板の嵌合方法の一例について、
図6Aから
図6Cを用いて説明する。本実施形態における鋼矢板の嵌合方法は、嵌合治具1を用いて、複数の鋼矢板4を継手部5で嵌合させるために用いられる。鋼矢板の嵌合方法では、クレーン等に吊り下げた第2の鋼矢板42を嵌合治具1内に誘導し、第2の鋼矢板42を下降させることで各継手部5を嵌合させる。鋼矢板の嵌合方法は、載置工程と、誘導工程と、降下工程と、嵌合工程とを備える。
【0054】
載置工程は、例えば
図6Aに示すように、地盤8(
図3B参照)内に打設された第1の鋼矢板41における未嵌合側の継手部51、およびこれに隣接するアーム部63の上端に、第2誘導具3の対向部31および突出部32の下端が当接するように、嵌合治具1を載置する(
図6Aの矢印)。この際、第1接続部材33は、対向部31と、第1の鋼矢板41のアーム部63の側面(例えば第1側面41a:
図8C参照)に沿って配置される。これにより、第1接続部材33がアーム部63の側面に接触し、壁横断方向Yにおける、第1の鋼矢板41に対する嵌合治具1の位置決めがなされ、第1の鋼矢板41に嵌合治具1を容易に載置できる。
【0055】
その後、載置工程では、例えば締め付け金具もしくは磁石等の仮固定部材、または点付け溶接により、第1の鋼矢板41に第1接続部材33を仮固定する。なお、載置工程では、例えば溶接接合等により、第1の鋼矢板41に第1接続部材33を接合してもよく、例えば溶接接合および仮固定部材を用いてもよい。なお、載置工程において用いられる仮固定部材の数は、任意である。
【0056】
誘導工程は、例えば
図6Bに示すように、第1の鋼矢板41に嵌合させる第2の鋼矢板42における継手部52の下端を、吊り下げた状態で嵌合治具1内に誘導する(
図6Bの矢印)。継手部52の下端は、壁延長方向Xから見て第1面21aと重なり、壁横断方向Yから見て誘導面22aaと重なる位置に誘導される。なお、誘導工程では、継手部52の下端を所定位置に誘導する際、例えば第1面21a、誘導面22aa、および第3板部材23の少なくともいずれかに継手部52の下端を接触させてもよい。
【0057】
嵌合治具1には、誘導面22aaに対向する位置に、部材等が設けられていない。このため、嵌合作業中における嵌合治具1の位置等を壁横断方向Yから視認することができると共に、壁横断方向Yに沿って、嵌合治具1内に継手部52の下端を容易に誘導することができる。例えば、誘導面22aaおよび第1面21aの少なくともいずれかには、磁石が設置されてもよい。この場合、磁石によって継手部52の下端の誘導が補助され、誘導工程の時間短縮を図ることができる。設置された磁石は、例えば継手部52の下端の誘導が完了次第、撤去する。
【0058】
降下工程は、例えば
図6Cに示すように、導入面22abと、対向部31との間の位置に、第2面22aに沿って第2の鋼矢板42における継手部52の下端を降下させる。この時、例えば
図5Aおよび
図5Bで示したように、壁延長方向Xについて継手部52の抜け出しを抑制することができる。また、対向部31は、導入面22abに対向して設けられる。このため、壁横断方向Yについても継手部52の抜け出しを防ぐことができる。
【0059】
嵌合工程は、高さ方向Zに沿って第2の鋼矢板42をさらに下降させ、対向部31の下側に設けられた第1の鋼矢板41の継手部51内に、第2の鋼矢板42の継手部52を導入し、これら鋼矢板41、42の継手部51、52同士を嵌合させる。対向部31の形状は、第1の鋼矢板41の継手部51の形状と類似または一致する。このため、降下工程における第2の鋼矢板42の継手部52の位置から微調整するだけで、各継手部51、52の嵌合を容易に行うことができる。
【0060】
本実施形態における鋼矢板の嵌合方法は、例えば嵌合工程の後に、撤去工程を備えていてもよい。撤去工程では、まず第1誘導具2と対向部31とを仮固定する仮固定部材または点付け溶接を取り除き、その後、第1誘導具2、そして第2誘導具3の順にこれら誘導具を撤去する。第2誘導具3は、例えば除去部32aを設けることで、第2の鋼矢板42の継手部52から壁横断方向Yに沿って容易に撤去できる。撤去した嵌合治具1は、例えば第2の鋼矢板42における未嵌合側の継手部52に隣接するアーム部63の上端部に載置することができるため、上述した載置工程等を同じ嵌合治具1で繰り返し実施することができる。
【0061】
以上により、本実施形態における鋼矢板の嵌合方法が完了する。なお、上述した鋼矢板の嵌合方法を繰り返すことで、連続壁9を形成することができる。
【0062】
<嵌合治具1の第1変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第1変形例について、
図7を用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第1変形例との違いは、第1誘導具2が、高さ方向Zの下側から上側に向かって拡開する部分を有する点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0063】
第1変形例では、例えば
図7に示すように、第1板部材21、第2板部材22、および第3板部材23の少なくともいずれかは、高さ方向Zに対して傾斜する。傾斜した各板部材21、22、23は、高さ方向Zにおける下側から上側に向かうにつれて、第1誘導具2の内側から外側に向かうように傾斜する。
【0064】
第2板部材22が傾斜する場合、第1板部材21および第3板部材23における壁横断方向Yの幅は、下端から上端に向かって大きくなる部分を有する。このとき、第2の鋼矢板42が嵌合治具1内に誘導された後、例えば傾斜した誘導面22aaに第2の鋼矢板42を接触させて下降させることで、導入面22abと対向部31との間に第2の鋼矢板42を導入し易くすることができる。これにより、第2の鋼矢板42の誘導性を高めることが可能となる。なお、「第2板部材22が傾斜する」とは、第2板部材22が、壁延長方向Xおよび高さ方向Zを含む平面に対して傾いて設けられることを示す。
【0065】
また、第1板部材21または第3板部材23が傾斜する場合、例えば
図7Bに示すように、誘導面22aaにおける壁延長方向Xの幅は、下端から上端に向かって大きくなる。このため、第2の鋼矢板42を嵌合治具1内に誘導できる範囲を、容易に広げることができる。なお、「第1板部材21または第3板部材23が傾斜する」とは、第1板部材21または第3板部材23が、壁横断方向Yおよび高さ方向Zを含む平面に対して傾いて設けられることを示す。
【0066】
第2板部材22および第3板部材23として、例えば傾斜する部分と、傾斜しない部分とで、それぞれ異なる部材が用いられてもよい。この場合、傾斜する部分の部材と、傾斜しない部分の部材とを、溶接接合等により接合したものが、各板部材22、23として用いられる。
【0067】
<嵌合治具1の第2変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第2変形例について、
図8Aから
図8Cを用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第2変形例との違いは、第2誘導具3が、第2接続部材35を有する点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0068】
第2変形例では、例えば
図8Aから
図8Cに示すように、第2接続部材35は、対向部31から、第1の鋼矢板41の側面に沿って延びるように配置される。第2接続部材35は、例えば
図8Cに示すように、第1接続部材33が配置される第1の鋼矢板41の第1側面41a(第1の鋼矢板41のアーム部63の一側面)と対向する第2側面41bに沿って延びる。この場合、対向部31は、第1接続部材33と、第2接続部材35との間に挟まれる。このため、嵌合治具1を第1の鋼矢板41の継手部51上に仮固定等を行う前に、強風等により嵌合治具1が壁横断方向Yへ転倒等することを防ぐことができ、第1の鋼矢板41上に嵌合治具1を安定して自立させることができる。これにより、嵌合治具1の載置を容易に行うことが可能となり、例えば1人の作業員でも載置する作業を行うことが可能となる。
【0069】
第2接続部材35として、例えば第1接続部材33と同じ材料、具体的には丸鋼や異形鉄筋のような棒状部材が用いられてもよい。第2接続部材35の厚さは、第1接続部材33の厚さと同程度であり、例えば第1接続部材33の厚さより薄くてもよい。高さ方向Zに沿って、第2接続部材35の高さは第1接続部材33の高さと同程度であってもよく、第1接続部材33の高さよりも低くてもよい。
【0070】
<嵌合治具1の第3変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第3変形例について、
図9Aおよび
図9Bを用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第3変形例との違いは、導入面22abの高さH1bが、対向部31の高さH2よりも低い点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0071】
第3変形例では、例えば
図9Aに示すように、対向部31は、導入面22abよりも高さ方向Zの下方まで延在する。導入面22abの下端は、対向部31の下端よりも高い位置に設けられ、例えば
図9Bの矢印により示す空間が形成される。この場合、壁横断方向Yにおける第1誘導具2側から嵌合治具1を見たとき(
図9Aの矢印方向)、対向部31の延在面S1を目視することができる。このため、嵌合治具1内に誘導した第2の鋼矢板42を下降させる際、第2の鋼矢板42の継手部52の位置を、導入面22abの下側から目視することができる。すなわち、第2の鋼矢板42を第1の鋼矢板41に嵌合させる際の嵌合状況を目視で確認できるため、各継手部51、52を嵌合させるときの位置調整を容易に実施することができ、嵌合作業をより正確に行うことができる。なお、第3板部材23および第4板部材24の下端の位置は、図示された例のように導入面22abの下端の位置と等しくてもよいし、他の例では対向部31の下端の位置と等しくてもよい。
【0072】
<嵌合治具1の第4変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第4変形例について、
図10Aから
図10Cを用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第4変形例との違いは、挿通部11をさらに備える点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0073】
第4変形例では、例えば
図10Aおよび
図10Bに示すように、挿通部11が第1誘導具2に設けられている。挿通部11は、例えば第1板部材21の表面を貫通する貫通孔である。なお、挿通部11は、例えば第2誘導具3に設けられてもよい。
【0074】
また、挿通部11は、例えば
図10Cに示すように、第2誘導具3の、対向部31上に取り付けられた、孔を有する部材であってもよく、当該部材が第1誘導具2に設けられてもよい。なお、挿通部11の数、設けられる位置、および形状は、任意である。
【0075】
挿通部11は、第1の鋼矢板41に嵌合する第2の鋼矢板42に連結された索状部材27を挿通するために用いられる。索状部材27は、例えば第2の鋼矢板42における継手部52の下端付近に連結される。索状部材27として、例えばワイヤ、ロープ、またはチェーン等が用いられる。挿通部11を介して、第2の鋼矢板42に連結された索状部材27を牽引することができ第2の鋼矢板42の誘導等を容易に実現することが可能となる。
【0076】
さらに、例えばウィンチ等の装置を用いて索状部材27を牽引し、第2の鋼矢板42の誘導を実施してもよい。ウィンチを用いることで、鋼矢板4の大型化や長尺化に伴い重量が重くなる場合や、強風等の環境下で鋼矢板4を静止させることが困難な場合に、作業負荷を大幅に軽減することが可能となる。ウィンチを設置する位置として、例えば第1の鋼矢板41の近傍で、地盤8から反力を取れる位置が好ましい。上記のほか、例えば第1の鋼矢板41の上部に固定板を設置し、その上にウィンチを設置してもよく、この場合は、持ち運び可能な小型のウィンチを用い、反力を第1の鋼矢板41で取れるように、ウィンチを固定板にボルト等を用いて脱着可能な状態で仮固定してもよい。また、クレーン等で吊り下げられた鋼矢板4を所定の位置にウィンチ等の装置を用いて誘導する手法に関しては、施工機械を第1の鋼矢板41の上に載置する圧入工法にも適用できる。この際、ウィンチ等の装置の設置位置としては、圧入施工機械に直接取り付けるなどして、反力を取るようにする。
【0077】
<嵌合治具1の第5変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第5変形例について、
図11Aおよび
図11Bを用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第5変形例との違いは、第1誘導具2が接続板部材25を有する点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0078】
第5変形例では、例えば
図11Aに示すように、接続板部材25は、第4板部材24の接続面24aと、対向部31との間に挟まれ、接続面24aおよび対向部31と接する。即ち、第2誘導具3は、接続面24aおよび接続板部材25を介して、第1誘導具2と接続される。
【0079】
接続板部材25は、例えば溶接等により対向部31に接合されるほか、例えば締め付け金具(例えばC型クランプ)もしくは磁石等の仮固定部材、または点付け溶接により、対向部31に仮固定された状態で接続されてもよい。接続板部材25を設けることで、仮固定部材の取り付けまたは点付け溶接を行うための面積が広くなり、第1誘導具2と第2誘導具3との接続を容易に実現することができる。
【0080】
また、例えば
図12Aから
図12Dに示すように、仮固定部材として、ボルト等の軸部材36が用いられてもよい。軸部材36は、対向部31および接続板部材25を貫通して設けられる。
図12Bに示すように、接続板部材25には貫通孔251が形成される。この場合、第1誘導具2と第2誘導具3との接続を維持した状態で、軸部材36を軸として第1誘導具2が第2誘導具に対して相対的に旋回可能になる(
図12Aの矢印)。このため、嵌合治具1の持ち運びや、第1誘導具2の角度調整が容易になる。
【0081】
また、
図12Cおよび
図12Dに示されるように、嵌合治具1を用いて第1の鋼矢板41に第2の鋼矢板42を嵌合させた後、軸部材36を軸として第1誘導具2を例えば90°以上旋回させることで、第1誘導具2を第2の鋼矢板42の継手部52から容易に撤去できる。第1誘導具2の旋回作業をより容易に行うため、事前に第1誘導具2を軸部材36の軸方向に沿って第2誘導具3と離間させてもよい。第1誘導具2と第2誘導具3との接続を維持した状態で嵌合治具1の撤去工程を行うことができ、撤去工程の簡略化および嵌合治具1の一体化により作業性を向上させることが可能となる。
【0082】
<嵌合治具1の第6変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第6変形例について、
図13Aおよび
図13Bを用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第6変形例との違いは、第2誘導具3の突出部32の断面形状が、継手部5に類似するが同一ではない点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0083】
第6変形例では、例えば
図13Aおよび
図13Bに示すように、対向部31は、3つの板部材で形成され、対向部31の先端には、板部材で形成された突出部32が設けられる。この場合においても、対向部31は、凹部31bを有する。なお、対向部31は、例えば凹部31bを有しなくてもよく、壁延長方向Xに延在する板状でもよい。対向部31として、例えば第1接続部材33と同じ材料が用いられる。
【0084】
対向部31は、第1の鋼矢板41の継手部51と類似する形状を有する。この場合においても、上述した嵌合治具1と同様に、例えば強風等によって継手部52が嵌合治具1の外側に移動したとき、継手部52に対して突出部32または第3板部材23が接触する。このため、継手部52を第1の鋼矢板41の継手部51に嵌合させる際、嵌合治具1を用いることで、壁延長方向Xの抜け出しを抑制させることができる。なお、「継手部51と類似する形状」とは、上述した継手部52の抜け出しを抑制できかつ、各継手部51、52を嵌合させるための空間を確保できる形状であればよい。
【0085】
<嵌合治具1の第7変形例>
次に、本実施形態における嵌合治具1の第7変形例について、
図14および
図15を用いて説明する。上述した嵌合治具1と、第7変形例との違いは、第1誘導具2は、第3板部材23および第4板部材24を有しない点である。なお、上述した嵌合治具1と同様の構成については、説明を省略する。
【0086】
第7変形例では、例えば
図14に示すように、第1誘導具2は、高さ方向Zから見てL字状に形成される。この場合も、第1板部材21によって形成される第1面21aは連続壁の壁延長方向Xに交差し、第2の鋼矢板42の導入方向に向けられる。また、第2板部材22によって形成される第2面22aは、連続壁の壁横断方向Yに交差する。対向部31の当接部31aは、第1板部材21と接する。
【0087】
また、例えば
図15に示すように、第1誘導具2は、高さ方向Zから見て湾曲状に形成されてもよい。この場合、湾曲状の第1板部材21のみが設けられ、第1板部材21が、第1面21aおよび第2面22aの両方を形成する。この場合も、第1面21aは連続壁の壁延長方向Xに交差し、第2の鋼矢板42の導入方向に向けられる。また、第2面22aは、連続壁の壁横断方向Yに交差する。対向部31の当接部31aは、第1板部材21と接する。
【0088】
上記のように、第1誘導具2がL字状、または湾曲状に形成された場合においても、上述した嵌合治具1と同様に、例えば強風等によって継手部52が嵌合治具1の外側に移動したとき、継手部52に対して突出部32が接触する。このため、継手部52を第1の鋼矢板41の継手部51に嵌合させる際、嵌合治具1を用いることで、壁延長方向Xの抜け出しを抑制させることができる。
【0089】
なお、嵌合治具1は、例えば上述した各変形例を組み合わせた構成を備えてもよい。一例として、例えば
図16Aから
図16Cに示すように、嵌合治具1を、第1誘導具2が、高さ方向Zの下側から上側に向かって拡開する部分を有し、かつ接続板部材25を有する第1誘導具2と、第2接続部材35を有し、導入面22abの高さH1bが対向部31の高さH2よりも低く、挿通部11をさらに備える第2誘導具3とを組み合わせた構成としてもよい。
【0090】
また、本実施形態における嵌合治具1は、例えば
図17Aから
図21Bに示すように、鋼矢板4として、Z形鋼矢板、またはU形鋼矢板が用いられた場合においても、上記同様に用いることができ、嵌合治具1を備える鋼矢板4、嵌合治具1を用いた鋼矢板の嵌合方法、および鋼矢板の嵌合方法による連続壁9の形成を実現することができる。
【0091】
ここで、例えば
図22Aおよび
図22Bに示すように、Z形鋼矢板またはハット形鋼矢板は、雄型継手部5fと、雌型継手部5sとを一対の継手部5として有してもよい。この場合、一方の鋼矢板4の有する雄型継手部5fと、他方の鋼矢板4の有する雌型継手部5sとを嵌合させることで、一対の鋼矢板4が連結される。
【0092】
雄型継手部5fは、例えば
図22Aに示すように、嵌合溝5bよりもアーム部63側に形成された突部5tを有する。突部5tは、アーム部63から嵌合爪5aと枝分かれして形成され、嵌合爪5aと同じ方向に延在する。嵌合溝5bは、突部5tと嵌合爪5aとの間に形成される。
【0093】
雌型継手部5sは、例えば
図22Bに示すように、嵌合溝5bよりもアーム部63側に形成された屈曲部5nを有する。屈曲部5nは、アーム部63と嵌合爪5aとの間に形成され、嵌合爪5aと同じ方向に延在する。嵌合溝5bは、屈曲部5nと嵌合爪5aとの間に形成される。嵌合爪5aは、屈曲部5nを介してアーム部63と一体に形成される。
【0094】
鋼矢板4として、雄型継手部5fおよび雌型継手部5sを有するZ形鋼矢板を用いて連続壁9を形成する場合、一対の鋼矢板4を嵌合させる順序として、
図17Aおよび
図17Bに示す第1順序、または
図18Aおよび
図18Bに示す第2順序のいずれかが用いられる。
【0095】
第1順序は、例えば
図17Aおよび
図17Bに示すように、第1の鋼矢板41の雌型継手部51sに、第2の鋼矢板42の雄型継手部52fを嵌合させる。この場合、
図17Aに示す矢印の方向に沿って各鋼矢板4が連結される。
【0096】
第2順序は、例えば
図18Aおよび
図18Bに示すように、第1の鋼矢板41の雄側継手部51fに、第2の鋼矢板42の雌側継手部52sを嵌合させる。この場合、
図18Aに示す矢印の方向に沿って各鋼矢板4が連結される。
【0097】
また、鋼矢板4として、雄型継手部5fおよび雌型継手部5sを有するハット形鋼矢板を用いて連続壁9を形成する場合、一対の鋼矢板4を嵌合させる順序として、
図19Aおよび
図19Bに示す第1順序、または
図20Aおよび
図20Bに示す第2順序のいずれかが用いられる。なお、各順序の詳細については、
図17Aから
図18Bを参照して上述した各順序と同様のため、説明を省略する。
【0098】
上記の通り、本実施形態における嵌合治具1は、鋼矢板4として、雄型継手部5fおよび雌型継手部5sを有するZ形鋼矢板、またはハット形鋼矢板が用いられた場合においても、上記同様に用いることができ、嵌合治具1を備える鋼矢板4、嵌合治具1を用いた鋼矢板の嵌合方法、および鋼矢板の嵌合方法による連続壁9の形成を実現することができる。
【0099】
図23Aおよび
図23Bは、本発明の実施形態に係る嵌合治具の他の例を示す図である。図示された例において、鋼矢板4の継手部5に載置される嵌合治具101は、連続壁の壁延長方向に交差し、鋼矢板4に連結される別の鋼矢板の導入方向に向けられる第1面121aと、連続壁の壁横断方向に交差し第1面121aに隣接する誘導面122aaと、同じく連続壁の壁横断方向に交差し高さ方向で誘導面122aaの下方に位置する導入面122abと、連続壁の壁延長方向に延在し、導入面122abに離間して対向する対向部131a,131bと、先端側の対向部131bから導入面122ab側に突出する突出部132と、基端側の対向部131aに接合され、鋼矢板4の側面に沿って延びるように配置される第1接続部材133とを含む。
【0100】
また、嵌合治具101は、索状部材を挿通することが可能な挿通部111を有する。導入面122abは、対向部131aに旋回アーム134およびボルト等の軸部材136を介して連結された板部材135によって形成される。旋回アーム134および板部材135を軸部材136の回りに旋回させることによって、導入面122abが対向部131bおよび突出部132に対向した状態でなくなり、別の鋼矢板が上方から嵌合治具101に挿入されて継手部が鋼矢板4の継手部5に嵌合した状態でも、嵌合治具101を撤去することができる。
【0101】
以上で説明したような本発明の例示的な実施形態によれば、第1誘導具2は、第1面21a、および導入面22abと誘導面22aaとを含む第2面22aを有する。また、第2誘導具3は、対向部31および突出部32を有する。このため、第1面21aおよび誘導面22aaにより、嵌合治具1内に第2の鋼矢板42を容易に誘導することができる。また、第2の鋼矢板42を下降させる際、導入面22ab、対向部31、および突出部32により、継手部52が嵌合治具1から外れることを抑制することができる。これにより、鋼矢板4の嵌合作業を容易にすることが可能となる。さらに、嵌合作業の容易化に伴って、鉛直性確保や嵌合角度調整を目的とした第2の鋼矢板42の位置調整をも容易にし、施工精度の向上が期待できる。
【0102】
上記に加え、鋼矢板4の大型化や長尺化に伴い、1枚の鋼矢板4の重量が増えた場合においても、継手部5の嵌合作業を容易にし、施工スピードを向上させることができる。
【0103】
また、いくつかの実施形態によれば、対向部31は、凹部31bを有する。このため、第2の鋼矢板42における継手部52の下端を凹部31b内に配置した状態で、第2の鋼矢板42を下降させることができる。これにより、第2の鋼矢板42を下降させる際、継手部52が嵌合治具1から外れることを容易に抑制することが可能となる。
【0104】
また、いくつかの実施形態によれば、第1最短距離D21および第2最短距離D22の少なくともいずれかは、第2の鋼矢板42の幅方向と直交する方向における、第2の鋼矢板42の継手部52の最大長さ(最大幅D1)よりも小さい。このため、第2の鋼矢板42を下降させる際、第1誘導具2の導入面22abと、第2誘導具3の対向部31との間から、第2の鋼矢板42の角度によらず継手部52が抜け出すことを防ぎ、容易に位置保持することができる。これにより、鋼矢板4の嵌合作業をさらに容易にすることが可能となる。
【0105】
上記に加え、第2の鋼矢板42の継手部52を、第1の鋼矢板41の継手部51に嵌合させるときの位置調整が容易となる。このため、壁延長方向Xの打ち伸び、または打ち縮みの管理や、継手回転角の管理も容易となる。これにより、施工精度の向上を図ることが可能となる。
【0106】
また、いくつかの実施形態によれば、第1誘導具2は、高さ方向Zの下側から上側に向かって拡開する。このため、第2の鋼矢板42を下降させるために導入できる第1誘導具2内の範囲を、容易に広げることができる。これにより、第2の鋼矢板42の誘導を容易に実施することが可能となる。
【0107】
また、いくつかの実施形態によれば、対向部31は、第1接続部材33と、第2接続部材35との間に挟まれる。このため、嵌合治具1を第1の鋼矢板41の継手部51上に、容易に仮置きすることができる。これにより、嵌合治具1を載置する作業を容易化することが可能となる。
【0108】
また、いくつかの実施形態によれば、対向部31は、導入面22abよりも高さ方向Zの下方まで延在する。このため、第2の鋼矢板42を下降させる際、第2の鋼矢板42の継手部52下端の位置を導入面22abの下側から目視することができる。すなわち、第2の鋼矢板42を第1の鋼矢板41に嵌合させる際の嵌合状況を目視で確認できるため、各継手部51、52を嵌合させるときの位置調整をさらに容易に実施することができ、嵌合作業をより正確に行うことが可能となる。
【0109】
また、いくつかの実施形態によれば、嵌合治具1は、第2の鋼矢板42に連結された索状部材27を挿通する挿通部11を備える。このため、索状部材27を用いて第2の鋼矢板42を嵌合治具1内に誘導することができ、作業員が第2の鋼矢板42に直接触れる機会を減少させることができる。これにより、第2の鋼矢板42の導入等の作業を安全に実施することが可能となる。
【0110】
また、いくつかの実施形態によれば、第1誘導具2は、仮固定部材または点付け溶接により、対向部31に仮固定された状態で第2誘導具3に接続される。このため、第1誘導具2と、第2誘導具3とを、容易に脱着可能とすることができ、別個の部材として取り扱うこともできる。あるいは、第1誘導具2は、第2誘導具3に対して相対的に旋回可能であるように接続されてもよい。これにより、各継手部の嵌合後における嵌合治具1の撤去等を容易にすることができ、嵌合後における第2の鋼矢板42の打設等の作業を円滑に実施することが可能となる。
【0111】
また、上記の実施形態によれば、鋼矢板の嵌合方法は、上述した嵌合治具1を用いる。このため、誘導工程、降下工程、および嵌合工程を行う際、作業員への負荷低減や、安全性の向上を図ることができる。これにより、鋼矢板4の嵌合作業を容易にすることが可能となる。
【0112】
また、いくつかの実施形態によれば、撤去工程は、第1誘導具2および第2誘導具3を、第1誘導具2、そして、第2誘導具3の順に撤去する。このため、嵌合工程後における嵌合治具1の撤去を容易にすることができ、嵌合治具1を障害とさせずに、第2の鋼矢板42の打設工程等を円滑に実施することが可能となる。
【0113】
上記に加え、簡便に着脱可能な嵌合治具1であるため、各作業の負荷とならず、例えば大型の導枠等を用いる場合に比べて、安価に施工できるとともに、嵌合治具1の載置工程等においてクレーン作業等を伴わないため、他のクレーン作業を要する工程と平行して作業ができる。これにより、工程の遅延を防止することが可能となる。
【0114】
また、上記の実施形態によれば、連続壁9は、上述した鋼矢板の嵌合方法により形成される。このため、作業員への負荷低減や、安全性の向上を考慮した連続壁9の形成を実現することが可能となる。
【0115】
また、上記の実施形態によれば、鋼矢板4は、上述した嵌合治具1を備える。このため、作業員への負荷低減や、安全性の向上を考慮した鋼矢板4の嵌合作業を実現することが可能となる。
【0116】
また、上記の実施形態によれば、上述した各変形例を組み合わせることで、作業員が直接目視可能な状況で嵌合作業ができる。また、嵌合治具1が誘導性能を有することで、作業員が直接鋼矢板4に触れることなく玉掛け棒や胴巻きロープのみで嵌合作業を実現することができる。これにより、安全に施工することが可能となる。
【0117】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。
地盤に打設され、連続壁の一部を構成する第1の鋼矢板の継手部に、第2の鋼矢板の継手部を嵌合させるための治具であって、連続壁の壁延長方向に交差し、第2の鋼矢板の導入方向に向けられる第1面と、連続壁の壁横断方向に交差し、第1面に隣接する誘導面と、壁横断方向に交差し、高さ方向で誘導面の下方に位置する導入面と、壁延長方向に延在し、導入面に離間して対向する対向部と、壁延長方向における対向部の先端側から導入面側に突出する突出部と、壁延長方向における対向部の基端側に接合され、第1の鋼矢板の第1側面に沿って延びるように配置される第1接続部材とを備える嵌合治具が提供される。