特許第6782922号(P6782922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6782922-ブレースユニット 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782922
(24)【登録日】2020年10月23日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ブレースユニット
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20201102BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   E04H9/02 311
   E04B2/56 643A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-91324(P2019-91324)
(22)【出願日】2019年5月14日
(62)【分割の表示】特願2015-188063(P2015-188063)の分割
【原出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-124123(P2019-124123A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】門脇 秀宜
(72)【発明者】
【氏名】松森 博孝
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−134714(JP,U)
【文献】 特開2010−043523(JP,A)
【文献】 特開2014−020176(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0141890(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 2/56
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造体の一部をなす上部鉄骨梁を有するブレースユニットであって、
逆V型に配設される一対の補強ブレースと、
該補強ブレースの上端部が接続され、建物に配置された際に該建物の大梁として構成される前記上部鉄骨梁と、
前記建物に力の伝達がされない一対の縦材と、該一対の縦材の下端部に連結された横材と、を有する枠体と、を備え、
前記一対の縦材の上端部を前記上部鉄骨梁の両端部側にそれぞれ接続し、かつ、前記一対の補強ブレースの下端部をそれぞれ前記枠体に接続して形成されたブレース構造を有していることを特徴とするブレースユニット。
【請求項2】
前記横材には、複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレースユニット。
【請求項3】
前記補強ブレースと、前記上部鉄骨梁と前記縦材との接続部と、の間に補剛部材が架け渡されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレースユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の構面に設置されて建物の耐震性(耐振性)を高めるためのブレースユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の耐震強度を高めるための対策として、すなわち、建物に制振性能を付与するために、建物の架構内に補強ブレースを架設する手法が多用されている。
【0003】
また、並立する一対のコンクリート柱と上下一対のコンクリート梁で形成される架構空間に枠付きの補強ブレースを配設し、枠付き補強ブレースの枠体の外周面とコンクリート柱、上下のコンクリート梁との間にモルタルを充填し、硬化したモルタルを介して枠付き補強ブレースを架構内の所定位置に支持させて固定し、且つコンクリート躯体からの応力を効果的に補強ブレースに伝達するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−211315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の建物の耐震補強構造(建物の耐震補強工法)においては、ブレース材が大型化するほど、補強ブレース仕口のボルト本数及び列数が多くなり、現場ボルト接合前の建方時精度確保に多大な時間を要する。特に現場作業の削減を図る必要がある場合には建方時精度を確保することが工程計画上の問題点となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、現場作業を大幅に省力化することを可能にするブレースユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明のブレースユニットは、建物の構造体の一部をなす上部鉄骨梁を有するブレースユニットであって、逆V型に配設される一対の補強ブレースと、該補強ブレースの上端部が接続され、建物に配置された際に該建物の大梁として構成される前記上部鉄骨梁と、前記建物に力の伝達がされない一対の縦材と、該一対の縦材の下端部に連結された横材と、を有する枠体と、を備え、前記一対の縦材の上端部を前記上部鉄骨梁の両端部側にそれぞれ接続し、かつ、前記一対の補強ブレースの下端部をそれぞれ前記枠体に接続して形成されたブレース構造を有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のブレースユニットは、前記横材には、複数の貫通孔が形成されていてもよい。
【0010】
さらに、本発明のブレースユニットは、前記補強ブレースと、前記上部鉄骨梁と前記縦材との接続部と、の間に補剛部材が架け渡されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のブレースユニットにおいては、上部鉄骨梁と補強ブレースを予め一体にユニット化されており、当該ブレースユニットを建物の架構面内に配設し、上部鉄骨梁の両端部をそれぞれ柱にボルト接合することで、補強ブレースを所定位置に精度よく配設することが可能になる。
【0012】
これにより、補強ブレースをそれぞれ所定位置に配設してボルト接合する従来と比較し、補強ブレースの建方精度の向上を図ることができ、ボルト孔合わせによるプレート変形等の不都合が生じることを回避できる。
【0013】
また、効率的に補強ブレースを設置できるため、現場労務費削減によるコストダウンを図ることができるとともに、補剛部材の数量の削減、補剛部材の省略を図ることも可能になる。
【0014】
さらに、現場労務省力化による工期短縮を図ることができ、また、現場労務省力化による安全性向上を図ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る建物の耐震補強構造(建物の耐震補強工法)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るブレースユニットおよび建物の耐震補強工法について説明する。
【0017】
はじめに、本実施形態は、建物の柱と梁の間の架構面内に補強ブレースを設置して建物の耐震性能を向上させるための耐震補強工法(耐震補強構造)に関するものである。
【0018】
具体的に、まず、本実施形態の建物の耐震補強構造Aは、図1に示すように、略逆V字型の一対の補強ブレース(鉄骨ブレース/山形ブレース)1と、鉄骨材の上梁材(上部鉄骨材)2と、H形鋼などの鉄骨材の枠体3とを備えて構成されている。
【0019】
そして、本実施形態の建物の耐震補強工法(建物の耐震補強構造A)では、一対の補強ブレース1の各上端部を鉄骨材の上梁材2の所定位置に予めボルト接合などによって接続し、上梁材2と一対の補強ブレース1を一体にユニット化する。
【0020】
さらに、本実施形態では、上梁材2の両端部側にそれぞれ上端部を溶接などによって接合し、一対の縦材3aを設け、さらに一対の縦材3aの下端部に溶接するなどして横材3bを一対の縦材3aに連接する。これにより、一対の縦材3aと横材3bからなる枠体3が上梁材2に一体に接合される。また、枠体3の各縦材3aと横材3bの接合部分にガセットプレート4を設け、このガセットプレート4に各補強ブレース1の下端部側をボルト接合する。
【0021】
このようにして、本実施形態では上梁材2と一対の補強ブレース1に加え、枠体3を一体に設けて予めブレースユニット5を形成する(ブレースユニット形成工程)。
【0022】
そして、上記のように形成したブレースユニット5を、クレーンなどの揚重機を用いて建物の架構面の所定位置に配設する。
【0023】
また、ブレースユニット5を所定位置に配置するとともに、上梁材2の両端部をそれぞれ柱6にボルト接合する。さらに、床コンクリート7を打設し、枠体3の横材3bを下梁材(下部梁)8と一体化させる(ブレースユニット接合工程)。
これにより、山形の補強ブレース1を建物の架構面内に設置することができる。
【0024】
なお、上梁材2は両端で柱梁接合部と現場ボルト接合とし、軸力伝達を考慮した設計とする。また、枠鉄骨(横材3b)は下部梁8上のスタッド9を弱軸で覆うように設置した後、床コンクリート7を打設する。このとき、横材3bのウェブに貫通孔を複数設けておくことにより、床コンクリート7と確実に一体化させ、せん断力を好適に伝達させるようにする。
【0025】
また、枠鉄骨(縦材3a)は本体と直接の力の伝達をさせない。すなわち、この縦材3aは、簡便のため、補強ブレース1の定規としての仮設的機能を有するものとしてもよい。したがって、この場合には、補強ブレース1からの水平力はすべて水平材で負担するため、RCの鉛直スリット壁のような設計的な配慮が必要である。
【0026】
したがって、本実施形態の建物の耐震補強工法(建物の耐震補強構造A)においては、上梁材2と補強ブレース1を一体にユニット化したブレースユニット5を建物の架構面内に配設し、上梁材2の両端部をそれぞれ柱6にボルト接合することで、補強ブレース1を所定位置に精度よく配設することが可能になる。
【0027】
これにより、補強ブレース1をそれぞれ所定位置に配設してボルト接合する従来と比較し、補強ブレース1の建方精度の向上を図ることができ、ボルト孔合わせによるプレート変形等の不都合が生じることを回避できる。
【0028】
また、効率的に補強ブレース1を設置できるため、現場労務費削減によるコストダウンを図ることができるとともに、補剛部材10の数量の削減、補剛部材の省略を図ることも可能になる。
【0029】
さらに、現場労務省力化による工期短縮を図ることができ、また、現場労務省力化による安全性向上を図ることも可能になる。
【0030】
また、補剛部材10を設けることも工場製作で容易なため、補剛部材10によるブレース断面の有効活用による鉄骨数量削減も期待できる。
【0031】
以上、本発明に係る建物の耐震補強工法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0032】
例えば、ブレースユニット5は、上部鉄骨梁2と一対の補強ブレース1で略K型にして構成してもよい。この場合には、ブレースユニット5を架構面内に設置し、上部鉄骨梁2の両端部を柱6にボルト接合した後、適宜手段を用いて補強ブレース1の下端部を下部梁8及び/又は柱6に接続すればよい。そして、このように構成しても本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 補強ブレース(鉄骨ブレース)
2 上梁材(上部鉄骨梁)
3 枠体
3a 縦材
3b 横材
4 ガセットプレート
5 ブレースユニット
6 柱
7 床コンクリート
8 下部梁
9 スタッド
10 補剛部材
A 耐震補強構造
図1